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長い兎には巻かれろ

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※本作は官能小説です。また、特殊なプレイマミフィケーションプレイ(ミイラ拘束)も含みますので、ご注意ください。





 すっかり陽は彼方へと沈み、僕の住処である洞穴には微かな灯火が照らされていた。視界には特に他のポケモンの姿は見受けられず、傍から見れば僕が1匹で、自分の住居にてのんびりしているように映るかもしれない。
 だが、この洞穴にいるのは僕だけではない。もう1匹、ここにはポケモンが潜んでいる。いや、ポケモンだったものと表現した方が正確なのかもしれない。
 準備を終えた僕は身体の一部である棺桶を開き、僕の中に納まっていた”ポケモンだったもの”を取り出す。それは、頭の天辺から足の爪先まで僕の包帯で包まれている、ミイラであった。そのミイラをゆっくりと、傷をつけぬように仰向けに寝かしつける。
 元々はザングースであったそのポケモンは、元々美しい純白の毛色が特徴的なだけに、白の包帯で全身を包まれても色彩的にはさほど変化を感じないかもしれない。だが、包まれる包帯の隙間から微かに呼吸音はするものの、視界は塞がれ手足は完全に拘束されている状態だ。動こうとしてもケムッソのように全身を微かにくねくねさせることしかできず、もはやザングースとしての面影など無きに等しかった。
 僕はしばらくの間、ザングースであったミイラの、息を切らしながらモゾモゾと身体をうねらすさまを満足げに眺めていた。だが、これで終わりではない。まだ僕にはやるべきことが残っているのだ。
 手始めに僕はミイラの頭を優しく撫でてあげた。包帯越しに、かすかにミイラがピクンと反応するさまが伝わってくる。そしてそのままその手は、ミイラに触れながら下半身の方に向かっていき、最終的には両足の付け根部分。もとい、大事な雌の部分を漁ると、微かに淫らな音色が洞穴内に響き渡る。予想通りのミイラの反応に満足感を抱きながら、僕はその箇所の包帯をピンポイントで切り裂いていく。
 白い包帯の中から姿を現したのは、果実のような桃色の割れ目であった。そしてその果実には、既に艶やかな蜜が怪しげに輝いていた。
「よし……じゃあ、いきますよ」
 ミイラとなった彼女に一言告げ、僕は右手の指で割れ目に触れる。まずは優しくソフトタッチに。そして、ミイラの反応を伺いながら次第に割れ目に沿って撫で上げていく。初めは小さく包帯を震わせていたミイラは、僕の動きが強くなるにつれて全身を何度も仰け反らせるように、激しい反応を示し始める。ミイラの興奮は包帯越しからも十分過ぎる程伝わり、呼応するように僕の手の動きも勢いを増す。
 夜中の洞穴内に響き渡る嬌声と水音。永遠と加速し続けて大きくなっていくそれらは最後に――どでかい打ち上げ花火のような轟音を響かせると、やがて収まっていった。




長い兎には巻かれろ
作:からとり



 強い陽射しがこの森の開けた休憩場所に強く突き刺さる中、僕たちは腰を下ろしていた。
「今回も依頼主には満足してもらえたのね。流石ゴルト。じゃあ、有難くいただきます!」
 半分茶化すような朗らかな口調で、僕の差し出した掌から木の実を受け取る1匹のポケモン。澄んだ瞳に、種族の特徴でもある大きな耳。そしてその耳の先や手首の付近、膝の下には淡黄色でふんわりとした体毛が美しく整っていた。
「うん。終わった後のザングースさん。とっても明るい顔をしていたよ。日頃のストレスを癒して、これでまた明日から頑張れるって笑顔で言ってくれたからね。木の実も沢山貰えたし……ミップ、その木の実は美味しい?」
「うーん。まあまあ……っていったところかしら。もう少し甘い方が私の口にはあってると思うけどね」
 一見素っ気ないような態度に見えるけど、目の前のミミロップの尻尾は微かに左右に揺れて反応を示していた。これは、ミップが嬉しい気持ちをひた隠している際に出る仕草。幼い頃から一緒にいる僕だからこそ分かる、彼女の特徴的な癖であった。表面上の態度と尻尾の仕草の対比に気づいてしまうと、ついつい苦笑してしまう。彼女が木の実を堪能している姿を眺めつつ、僕も自分用に取っておいていた木の実を取り出し、その味を噛みしめ始めていた。

****

 僕がまだデスマスの幼い頃に、僕はミップと出会った。
 この自然豊かな森に、1匹でただ意味もなく佇んでいた僕にミップは声を掛けてくれたのだ。
 その時の僕は状況が全く理解できていなかった。突然、デスマスには不釣り合いな見知らぬ自然の森に放り込まれていたのだから。
 タマゴから生まれた記憶も、そのそばで微笑んでいる両親の面影も――僕の記憶には残っていなかった。いや、もしかするとそんなものは最初から存在していなかったのかもしれない。後から聞いた話だが、デスマスという種族は、他の生物の魂が転生された存在であると言われているらしい。ただの噂話、ということにはなっているのだが。もしかすると僕には両親などはおらず、強い魂の想いからこの地に生を受けることになったのかもしれない。
 何はともあれ、そのような右も左も分からぬ状況。このままでは間違いなく野垂れ死して僕は大地へと還ってしまっていただろう。そんな僕を助けてくれたのが、ミップであった。
 まだミミロルだった幼い彼女が、同じく幼かった僕の話を至って真剣に聞いてくれて。ここでの暮らし方を教えてくれて。そして、同年代のポケモンにマスクを奪われてメソメソと泣いていた時には、僕を叱責しながらも反撃するわざを教えてくれて。そして一緒になって取り返してくれて。――お姉さんのような強くて温かい彼女がいてくれたからこそ、僕はこの地でデスカーンとして進化を遂げて、1匹でも暮らしていけるようになったのだ。


 僕がデスカーンとして今の洞穴を住処に迎えて過ごしていたある日、僕の運命を大きく変えてしまう事件が起こった。いや、これは今でも信じられない、夢のような出来事ではあるのだけれど。
夜の静寂を迎えた頃に、僕の住処に訪れた見知らぬサーナイトが、間髪入れずに呟いた突然の一言。
「私をミイラにして、あなたに責め立てて欲しいの」
 どこかうっとりとした表情で語りかけた彼女のその言葉に、僕は何を言っているのか分からないような顔を浮かべて、呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。ただ、すぐに僕の身体の棺桶は勢いよく開き、彼女は自らその棺桶の中に納まっていく。入りきったことを確認すると棺桶は閉ざされ、中では僕の包帯が嵐の如く暴れまわっていた。ここまできてようやく僕は我に返って気がついた。彼女のサイコキネシスによって僕は好き勝手に操られているのだと。
 必死に抵抗しようとも、サーナイトのサイコキネシスの威力は凄まじいもので、全く抵抗することができなかった。成すがまま、僕は彼女を包帯でぐるぐる巻きのミイラにして……そして、彼女の雌を責め立てて、彼女を絶頂へと導いてしまっていた――
 その後すぐに記憶は途切れ、住処に入り込む朝の陽射しで僕は意識を取り戻した。この時には既にサーナイトの姿は消えていたし、もしかしたらこれは悪い夢だったのかのかもしれない。そう、自分自身に強く言い聞かせていた。まあ、そのあとすぐに、大量に残った包帯と独特な癖のある匂いが充満していることに気がついて、絶望の淵に立たされたのだけれども。
後々聞いた話だと、あのサーナイトはフェチプレイを追い求めるフェチハンターとして、世界各地を転々として被害者を出し続けているらしい。この時の僕は、そんな恐ろしいポケモンもいるものだと、ゴーストタイプであるにも関わらず身体を思わず身震いさせてしまった。ただ、1度襲われたらもう二度と姿を現さないとも言っていたから、ホッと安堵の息を漏らしたものだ。これでこの悪夢は終わり。この時の僕は、そう信じ切っていた。


 どことなく広がっていく噂というものは、とても恐ろしいものだ。
 あの悪夢のような出来事から幾日かして、夜に僕の住処を訪れてはミイラにして責めて欲しいと依頼してくるポケモンたちが出てきたのだ。あのサーナイトが僕の行為の噂を広げたのかは定かではないが、どちらにせよとても衝撃的で、そして何より真っ赤な羞恥心が僕の心を一杯に埋めていった。
 だが、不幸中の幸いと言うべきか。この噂はごく一部のポケモンたちのとあるグループにしか広まっていないようだった。とある、とは主に一風変わったフェティシズムを好み、楽しみたいポケモン達の集まりだそうだ。そんな世界など知る由もなかった僕としては、とにかく愕然としてしてしまい、恐怖心を抱いてしまったのだけれども。
 勿論僕にはそのようなフェチなど持っていなかったし、そんなポケモンたちに頼まれた依頼など引き受けるつもりもなかった。……だけど、ちょっと話を聞いてみると、僕の拒絶する心は薄れていき、逆に癒してあげたいと思えるようになったのだ。
 最初に僕の元を訪れたニドクインは、普段は少し離れた地方の森を見回っては、困っているポケモンの手助けをしたり、弱っているポケモンの介抱をしたりするなどとっても心優しいポケモンであった。何でも元々は、夫であるニドキングが発案して一緒に見回りをしていたのだけれども。悲しいことに、数年前にそのニドキングが病に倒れてそのまま息を引き取ってしまったらしく、今では彼女1匹で夫の意思を継いで見回りを行っているのだそうだ。ポケモンたちを助け、喜んでくれることは彼女からしてもとても嬉しいことなのだが、やはり1匹だけでは心身共に負担がのしかかってくる。そして何より、夫がこの世にいないことへの寂しさや悲しさがどうしてもつきまとい、夫の肌が恋しくて毎晩涙をこぼすようになってしまったらしい。そんな身の上話を打ち明けられて、今夜だけでもこの寂しさを愛の包帯で包んで埋めて欲しいと哀願されたのだ。
 その心苦しそうな表情をするニドクインの様子を見て、僕はその依頼を受けることに決めた。正直、本当にこんなことをしていいのかという葛藤はあったのだけれども。こんなにも一生懸命に生きているポケモンの辛い哀しみを、僕の行為で一瞬だけでも取り除いて、快楽を感じてもらえるのであれば。その一心が、僕の背中を一押しさせていた。


 行為中のニドクインの深い喜悦の声に、終えた後のどこか吹っ切れたような、幸せそうな笑みを浮かべて感謝の気持ちを伝えてくれたことは今でも忘れられない。僕にしか出来ないであろう行為で、頑張っているポケモンを癒して活力を与えられる。報酬として木の実をどっさりいただいたのも勿論嬉しいけれど、それ以上に相手の心から喜んでいる顔を生み出せることに、僕自身も強い快感を得られていた。
 それからというもの、僕は夜に木の実を持って行為を望む依頼主をミイラにしては、快楽を与え続けてきた。訪れてくるポケモンは本当に多種多様であり、それぞれの悩みや事情を抱え、期待を持ってこの洞穴へと足を運ぶ。ある時は、常に睨みを利かせる小生意気そうな雄のゼブライカがやって来て、本当に大丈夫なのかと冷や汗をかいてしまったこともある。だが、実際に行為を始めると彼は生まれたばかりの赤ん坊のような微笑みを浮かべて、最後には雌のような喘ぎ声を漏らしながら絶頂を迎えてくれた。そんな姿を見ていると、同性であることなど一切関係なく、僕自身も変わらぬ喜びを得ることができた。

****

 そうして、昨日来たザングースも行為を終えた後には、日頃の鬱憤が吹き飛ぶくらいに気持ち良かったと本心で僕に伝えてくれて、沢山の木の実を置いて嬉しそうな足取りで洞穴から立ち去っていった。そのいただいた木の実を今、ミップと一緒にゆっくりと味わっている。
 一部のフェチを持つポケモンたち以外の間で、僕のこのミイラ行為を知っているのはミップだけだ。まあそれは、僕から伝えたという訳でもなく、僕が住処でその行為をしている姿を彼女にハッキリと見られてしまったからなんだけど……。


 このミイラ行為を始めるようになってからは、ミップには陽が沈んだら僕の住処に来ないでとは伝えていた。だが、その理由を詳しく説明することはなかったし、彼女もそこまで深刻なものであるとは思っていなかったのだろう。急いで聞きたい要件とかがあったようで、彼女は夜に僕の暮らす洞穴へと足を踏み入れていき、そこでその現場を目撃してしまったのだ。
 僕と目が合った時の彼女の顔は、まるでバケモノを見るかのように怯えきっていて――信じられないように首を何度か左右に振った後、一目散に洞穴から逃げ出していった。僕は思わず、大声でミップの名前を叫んだが、どうすることもできなかった。終わった――ただただがっくりと項垂れていた僕は、そのままミイラとなって永遠と眠り続けたいとも思った。
 ただ、それでもミップは最終的に、僕のミイラ行為に理解を示してくれたのだ。翌日になって少しだけ冷静さを取り戻した僕は、せめて彼女にこの行為の真意を伝えたいと思っていた。いつもミップと落ち合っている場所へと赴くと、既に彼女の姿はいた。彼女の方も1日経って、僕に事情を聞きたいと思ってくれたのかもしれない。
 一通り頭を下げてから、誠心誠意理由を説明している間もミップは僕の話を真剣に聞いてくれた。話を終えて、彼女はふっと一息ついてから、口を開いた。
「僕を頼ってくれたポケモンを助けてあげたい、か。ふふ、ゴルトらしいね。本当に優しいんだから」
 ミップは静かに微笑んで、僕の頭を少し強めに、撫でてくれた。


「しかしまあ、そんなに気持ちの良いものなの? ミイラになるってことは」
 一通り木の実を食べ終え、他愛のない会話を続けていると、ミップはふとそんな疑問を僕にぶつけてきた。
「どうなんだろうね。全身を包まれているから、何だか温かみを感じるんじゃないかな? 詳しくは分からないけれども」
「分からないって……ゴルト。あなたがポケモンをミイラにしている元凶だってのに、なんで知らない訳?」
 元凶とは、中々表現がきつい言葉だな。まあ、表立って言えることでは勿論ないのだけれども。僕がミイラ化の気持ち良さを詳しくは知らない理由……そんなのは決まっている。
「そりゃあ僕自身はミイラ巻きにされたことなんてないし。実際になってみないと分かる訳ないもん」
「ああ……たしかにそうかも。じゃあ、ゴルトはどうなの? ミイラになってみたいと思っているの??」
「う、んまあ。1回はどんな感じなんだろうって興味はあるし、なれるのであればなってみたいかな。ただ、無理だとは思うけど」
 ミイラ化するポケモンは必ず、僕の棺桶の中に入って包帯を巻いているのだから。現実的に、僕自身がミイラになることはほぼ不可能であろう。ただ、いつも僕の手でミイラ化されるポケモンたちは本当に嬉しそうな顔をして、快楽を感じているのだ。自らの手で起こしているその幸福を、僕自身が体験してみたいと思えるのは当然であった。
 僕の返事に、ミップはふーんと小さく相槌を返す。そこまで膨らませたい話でもなかったようで、ミップはまた別の話題を切り出してきた。僕もこの話を続けたいとも思わなかったので、ミップの話の流れに乗って、変わらぬ談笑を続けるのであった。


 あれから数日程が経ち、僕は自分の住処で静かに身体を休めていた。ミップはしばらく遠出をするとか何とかで、あの日以来会えていない。また、ミイラ化を望む依頼主もここ数日は姿を見せず、僕はしばしの平穏の時を過ごしていた。とはいえ、やはり平穏というものは続けば退屈なもの。ミップとはほぼ毎日のように顔を合わせるのが当たり前になっていたから、何だか生活のリズムも狂ってしまいそうだった。ああミップ、頼むから早く帰って来てくれ。陽が既に沈んでしまったから、今日はもう会えないのだろうけど。
 陽が沈んでから、もう随分な時間が経過している。こりゃあ、今日も依頼主は来ないだろうな。そう思うと、思わず両手を伸ばして大きく欠伸を繰り出してしまう。うん、そろそろ眠りに着く頃合いかな。そう思い僕は重い棺桶の身体を仰向けにして寝転がった。
 丁度その瞬間に――足音と思わしきものがこの洞穴内に響き渡った。一歩一歩ゆっくりと、段々とその音が大きくなっていくのがわかる。ふーむ、依頼主がついに来たようだ。ちょっと眠気は襲ってきたのだけれども、僕を頼ってくれるポケモンを追い返すことなど出来るはずもなく。勢いをつけて半ば強引にその身体を持ち上げ、既に足を止めていた依頼主の顔を見張る。……うん? えっ……!?
「ハロー、ゴルト。もしかして寝てた? 寝てたならゴメンね」
 僕の目に飛び込んできたのは、依頼主ではなくいたずらっぽく舌を出しながら笑っているミップの姿であった。夜に僕の住処を訪れるとは珍しい。僕のミイラ化行為を見てしまってからは、ミップがこの時間に来ることは一度たりともなかったのに。
「こんな遅くにミップが来るなんて珍しいね。で、遠出はどうだったの?」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました。今回の旅先で入手したモノをゴルトに渡したくてね」
 そう言ってミップは、肩に掛けていた風呂敷のようなものを地面に降ろし、その中身を僕に見せつけた。
「えっ……これって、き、金塊じゃないか!? それも3本も!!?」
 先ほどの眠気は何処へやら。僕は思わずこの洞穴内に響き渡るくらいの大声で叫んでしまっていた。
 それもそのはず。金塊は僕らデスカーンにとっては超一級品のご馳走なのだ。僕は1度だけ、依頼主から金塊を1本だけいただいたことはあるが、その重厚な風味と歯ごたえはどんな他の食べ物でも代用など出来ず、本当にほっぺたが落ちるのではないかと思えるほど美味しかった。だが金塊はこの周辺では一切見つかることはなく、かなり遠方にある遺跡方面にまで赴かなければ入手することはできない。いや、遺跡に行ったとしても、隠されている金塊を入手するのは至難のわざだ。それが3本も目の前にあるのだから、眠気など遥か彼方へ吹き飛んでしまうのは当然の帰結であろう。
「まあ、たまたま見つけたからさ。ゴルト、好きって言ってたし……良かったらどうぞ」
「いいの? 本当にいいの!? やったーありがとう!! じゃあいただき……」
「ちょ、ちょっと待った! その前に話があるの」
 早速金塊を1本手に取り、口へと放り込もうとした僕をミップは右手で制す。うう、お預けをくらったみたいで凄いもどかしい気分だ。でも、まずはこの金塊の持ち主であるミップの話を聞かなくては。僕は至って真剣な表情で、ミップの言葉を待った。しかし、彼女は意外にも、続く言葉を口に出すことを躊躇っている様子だった。
頬を掻いて少しだけ赤面しているミップの姿は、どこかいつもの調子とは違う。何度か口ごもってしまっていた彼女であったが、僕は急かすこともせず、ただ彼女の言葉を待ち続けた。
 一息つき、ようやく彼女は、意を決したように口を開く。
「これは依頼主としてあなたに渡す金塊なの。だから……これを食べる前に、わ、私をミイラ巻きにして欲しいの!」
 顔を真っ赤にしながらも、僕の顔をしっかり見据えて彼女は強く言い切った。対して、僕はその言葉に対して耳を疑うことしか出来ず、しばらく押し黙ってしまっていた。


「私は本気なのよ。だからいつまでも黙っていないで何か答えてよ。ゴルト!?」
 彼女のその鋭い口調に、ようやく僕は我に返った。だが、我に返ったところで僕の心は動揺で震えるばかり。落ち着け、まずは話を聞かないと。
「え……っと。何でミップは、ミイラになりたいの……」
 いつも以上に声は震えていたが、何とかミップにその理由を問いただす。
「あなたはいつも、依頼主は快楽を感じて笑顔で帰っていくって。いつも楽しそうに私に話すじゃない。何十回もそんなことを聞いたら、そりゃあ私だって興味出てくるわよ……」
 少し顔を背けて恥ずかしながらも、率直な理由をミップは伝えてくれた。たしかに僕は、ミップと会うたびにその話題を持ち出しては楽しそうに語っていた。それは、僕自身がこの行為に全力を尽くして、依頼主を癒せたという誇りがあったからこそだと思う。そして、毎回その内容をミップに聞かせてしまえば、彼女だって徐々に興味を持っていくことは当然なのだろう。
 しかし、このフェチのような特殊な行為に、彼女を巻き込んでしまって本当に良いものなのか。彼女は本当にそこまでの覚悟はあるのだろうか。しつこく問いただして、彼女の覚悟を確認するべきとも考えたが、これまでの経緯を振り返るとどうやらその必要もないように思えた。
 何故ならミップは僕との行為のために、木の実ではなくわざわざ大好物の金塊を3本も集めてきてくれたのだ。たまたま見つけただけと彼女は話していたがそれは嘘。しっかりとした事前準備をして、労苦をいとわずに根気よく探し求めなければ金塊を掘り当てることなど出来る訳がないのだ。そこまでしてくれた彼女の覚悟など、既に固まりきっていることだろう。むしろ、覚悟を決めなければならないのは僕の方なのだ。
 これでもか、というほどの大きい大きい深呼吸――身体の感覚を研ぎ澄ませるように気持ちを昂らせて僕自身の覚悟を固める。そして、ミップの顔を改めて見据えた。彼女の覚悟に、応えるためにも。
「うん、分かった。僕が君を……本当の快楽の世界に案内するよ」


「この中に入るの……? ちょっと怖いかも」
「確かに棺桶を閉めたら真っ暗だけど……大丈夫、危険はないよ。僕が保証する」
 僕は仰向けになりその棺桶の蓋を開け、左手でミップを中へ手招きする。少しだけ不安そうな表情を見せていた彼女だったが、意を決したように僕の棺桶の中へと足を踏み入れ、ゆっくりと腰を下ろしていく。徐々にその感触に慣れていったようで、程なくして彼女は仰向けに寝転がった。
「思ったより温かい……ゴルトのぬくもりかしら?」
「外面だけ見ると固くて冷たそうだけど、僕の立派な身体の一部だからね。当然、温かいよ」
「うん。ゴルトと一緒だって肌で感じられるから。何だか安心できたわ」
 口には出さなかったが、かく言う僕も彼女のぬくもりを棺桶の中から感じ取っていた。かすかに鼓動に揺れ、生温かいこの感触は素直に気持ち良かった。
「じゃあミイラ化を始めるから、閉めるよ。ちょっとくすぐったいかもしれないけど、我慢してね」
「うん、大丈夫。よろしくね」
 ミップの同意を確認した上で、棺桶の蓋を閉める。そして中から包帯を操って、彼女の全身へ巻きつけていく。柔らかく通気性のある包帯なので、呼吸スペースは確実に確保することはできる。それでもしばらくの間はほとんど身動きが取れず、視界もままならない状態で中に閉じ込め続けることは、彼女に確実な負担を与えてしまう。丁寧に、それでも少し急ぐように僕は包帯を適度な力加減で操っていく。中から微かに聞こえる彼女の激しい息遣いに、ちょっとだけ僕の心が昂っていくのを感じるが、グッとその気持ちを抑え込む。今は、早く彼女をミイラにしてあげなくては。
「よし……ミイラ巻き完了だよ。今から外に出すね」
 そっと棺桶の蓋を開き、棺桶をゆっくりと傾かせてミップを外へと転がりだす。その長い耳から足の先まで、白包帯でぐるぐる巻きにされたミップ。お姫様抱っこで優しくそのミイラを持ち上げ、丁寧に床へ、仰向けの状態で降ろしてあげる。
「準備OKだよ。ミップ、大丈夫かい?」
「う……ん、大丈夫よ」
 少し包帯に籠ってしまうものの、多少のおしゃべりであれば会話自体は普通に行うことができる。僕は改めてミイラとなったミップの、その全身を眺めまわしていた。
 全身を真っ白な包帯に包まれているミップは、一見するとただの白い塊のようにしか見えない。だが、元々スレンダーな身体付きをしていた彼女はミイラと化しても、その体躯を維持し続けておりどこか以前の面影を残している。そして、その美しいミイラは、身体を常にモゾモゾとし続けて少しばかりの抵抗を試みているかのように感じられる。合わせて微かに聞こえてくる、んっんっという呻き声。そのあられもない姿は、まるで一種の芸術作品のようで――永遠と見続けていたい、自分の支配下に置いておきたいと思わせてしまうほどであった。過去の依頼主をミイラ化した行為でも、多少性欲を燻ることはあったが、今回のミップの姿とはとても比になるものじゃない。今すぐにでも、理性を吹っ飛ばして本能のまま突き進んでそのミイラに突撃したいと思えてしまった。
 だがミイラになったとはいえ、これはいつも僕を助けてくれた、一番大切な存在であるミップなのだ。彼女自身を気持ち良くさせるのが今回の大前提。自分の性欲に流されてしまっては取り返しのつかないことになってしまう。グッと理性をふんばって欲望を抑え込み、僕は次のステップへと進んだ。
「じゃあ、今からもっと気持ち良くさせてあげるからね。……いくよ」
 包帯越しから微かに頷いたように見えるミップを見届けてから、僕は彼女の頭を撫でる。そしてその愛撫は頬、口、顎、胸、お腹へと徐々に下半身へと向かっていった。包帯に覆われている中でも、彼女のピクピクと震えているぬくもり。そして微かな喘ぎ声を感じ取ることができる。ミップ自身が僕の手で快楽の一歩を感じ取ってくれていることはとても嬉しく、触れ方に工夫を加えるとその反応が変わっていく様子は、何だかとても愛らしかった。
 そして、僕の手は彼女の大事な雌の部分へと触れる。包帯の上から摩って、軽くつまんでみると彼女は思わず激しい嬌声を漏らし、全身を仰け反らしてしまう。そのミイラの様子をじっくりと堪能した後に、僕は彼女の雌部分の包帯を破り去っていく。
 そこには既に愛液に塗れた雌の象徴が、ピクリピクリと何かを求めて蠢いていた。ミップの雌の艶めかしいその様子に、僕の雄としての本能はかなり限界に来ていたらしい。既に僕の下半身からは、象徴ともいえる雄槍がそそり立ってしまっていた。そのままそれを、彼女の中にぶち込みたい。彼女を、僕のモノにしてみたい――
 寸前のところで僕を踏みとどめてくれたのは、棺桶に入る前に僕のぬくもりを感じて信頼を寄せてくれた、ミップの優しげな笑顔。そうだ。今回のことも、そして過去にも僕の話を信じて、僕のことを本気で想ってくれる彼女を裏切ることなどできない。一刻も早く、彼女に最高の絶頂を味わってもらわなくては。
一向に収まらない雄槍には目もくれずに、僕はミップの桃色の割れ目を優しく手でなぞる。包帯越しではない、直接な刺激に彼女はひゃっ!? と衝撃を隠し切れない激しい喘ぎを漏らす。ミイラ化されているため直接彼女の表情を伺えはしないが、きっととろんとした瞳にだらしなく口を開きながら、快楽の笑みを浮かべているのだろう。そんな想像が、僕の手の動きをドンドン加速させていく。彼女の狂った嬌声は絶え間なく続き、包帯が千切れてしまうんじゃないかと思えるくらいの激しさで全身をくねらせる。ついに我慢の限界を迎えた、僕の雄としての本能は、せめてもの欲求解消のためにその舌を使って彼女の割れ目を舐め回す。両手に舌。槍という雄の象徴で迎え撃てなくとも、それ以外の全てを駆使して彼女の雌を快楽の渦へと誘っていく。既に絶叫に近い声をただ本能のまま発し続けていた彼女は、ついに快楽に全てを満たされて――
「い、イぃくくぅぅぅ!!?」
 割れ目から濁流のような激しい愛液が放出されて、それは僕の顔を激しく塗りつぶしていった。


 手も足も拘束されているミイラ状態のミップは、絶頂後はただ小刻みにビクンビクンとその白の身体を震わせ続けていた。息も絶え絶えの状態が続き、改めて感じたその快楽の大きさを噛みしめながら少しずつ身体を落ち着かせているのだろう。僕はそのミイラの反応を、ちらりちらりと伺っていた。彼女の体調に問題がないかどうかを、しっかりと見届けなければならなかったのだが、直視し続けることはどうしてもできなかった。ずっと覗き込んでいると、もう下の雄槍を抑え込むことができないだろうと思ったから。
 幸いにもある程度の時間が経過すると、ミップの身体の震えは収まっていき、そして呼吸もゆっくりと落ち着いたものとなっていった。僕はゆっくりと、彼女をミイラの姿へと変えたその包帯をほどいていく。ミイラだったモノは徐々にミップの姿を取り戻していき、最後に顔を覆っていた包帯を取り除く。まだ少し息は荒く、目の焦点も定まっていない様子の彼女は、それでも恍惚として満たされた表情をしていた。


「ようやく落ち着いたみたいだね。僕のミイラ化……気持ち良かった?」
 僕は身体の拘束をとかれたミップの隣に座り、彼女の反応を伺った。彼女は少し頬を染めながらも、コクリと頷いてくれた。
「ほとんど動くこともできなくて、視界も塞がっている状態だったけれど……あなたが言ってたとおり、何だか温かかった。はっきりとは言えない感覚なんだろうけど……ミイラになったからこそ、ゴルトに全てを委ねることができて、その癒しを全部堪能することができたのかもしれないわね」
 ミップはとても素直に、ミイラとなった感想を僕に伝えてくれた。彼女の尻尾も揺れているし、何よりそのどこか嬉しそうな口ぶりからも、本気で僕の快楽を感じてくれたのだろう。一時はどうなることかと思ったりもしたが、ここまで上手く事を進めることができて本当によかった。
 心からの安堵の後に、襲ってくるのは忘れかけていた空腹感。そういえば、ミップにいただいた金塊を食べようとしたら、彼女に止められてあの依頼を頼まれたんだっけ。よし、今度こそ心ゆくまで金塊を味わってみよう。僕は改めて、近くに置かれていたその金塊に手を伸ばす――のだが
「えっ……?」
 不意に、視界が反転する。気がつくと、僕は仰向けに押し倒されてしまっていた。
 そして、天を見上げていた僕の視界に映ったのは――先ほどの様子とは一転して、まるで小悪魔のような顔つきで怪しく笑っているミップの姿であった。


「……どうしたの、ミップ?」
 あまりに突然なこの状況に、頭の整理が追いついてこない。ただ、明らかに様子がおかしい彼女に対して、僕は震えてしまいながらも何とか問いかける。
「これだけ気持ち良くさせてもらったのだもの。私も、ゴルトに対してお返しをしなくっちゃ」
「お、お返しって……」
「ほら、あなたも言ってたじゃない? 1度はミイラになってみたいって。私も協力してあげるから、ゴルトもミイラになろ?」
「え……えぇー!!?」
 ミップの言葉の意味を理解した瞬間、思わず叫び声を上げてしまった。たしかに、ミイラになってみたいとミップに話したことは事実。ついこないだの出来事であるし、それははっきりと覚えている。でもまさか、こんな唐突にこの願望が実現するなんて思いもよらなかった。
「遠慮しなくてもいいじゃないの。それにほら、あなたの雄も元気みたいだしね」
 あっ……!? 気がついた時には、もう僕の雄槍は彼女の右手に握られてしまっていた。どうやら彼女に押し倒された際に、僕の雄は再び反応を見せてしまったようだ。怪しげな笑みを浮かべ、僕の雄槍を覗き込む彼女。つい先ほどまでの、僕の芸術作品となって掌で踊っていたミップはもういない。今は逆に、僕が彼女の芸術作品と成り果てて、その快楽を享受する番になっているのかもしれない。
 全く怖くなかった訳じゃない。それでも、先ほどの彼女は同じ立場で僕を信頼して、僕に全てを委ねてくれたのだ。ならば、僕も彼女を信じて、彼女に巻かれてみよう――


 仰向けになった僕は、棺桶の中で生み出される包帯を隙間から外へと伸ばしていく。
 ミップはその包帯を受け取り、僕の身体をくるくる巻きにし始めた。これまでにいくつものミイラを手掛けてきた僕と違い、ミップは包帯を使うことすら初めてな状況。にも関わらず、ぎちぎちに固めすぎることもなく、逆に緩すぎて巻かれている感触が薄れてしまうこともない。正直、天性のセンスというものを感じてしまった。その、かなり程よい包帯の巻き加減が、僕の身体に一種の安らぎを与えてくれていた。
 やがて、その白い包帯を持つ手は顔へと移る。視界は完全に塞がれ、呼吸はできるもののどこか息苦しい。僕はこの時点で、全てを彼女に委ねている感覚が強くなっていくことを実感していた。それでも、驚くくらい不安は襲ってこなかった。きっとそれは、ミイラにしてくれるのがミップだからなのだろう。
「さて、棺桶型のミイラができたわよ! ミップ、調子はどうお?」
「うん……何とか」
 ついに僕自身がミイラとなってしまった。その事実が、何だか気分を高揚とさせてくれる。包帯越しには、ミップの手が優しく身体を摩る感触が広がってくる。ちょっとくすぐったいけれども、どこか温かく穏やかな気持ちになれる感触に、ついつい産声に近い呻きを漏らしてしまう。
「じゃあ私も、あなたの雄を気持ちよくしてあげるね」
「ふあっ!?」
 元々勃ってしまっていた雄槍部分には、最初から包帯は巻かれていなかった。その部分をミップの指がそっと触れる。つい突拍子もない悲鳴なような声を上げてしまったが、彼女はむしろそんな僕の反応を楽しんでいるようで、手の動きをより巧妙にさせていく。そしてそれは、唐突に湿り気のある生暖かいものに変化していった。
「あっっ……! ミッップ!?」
 ミップの舌で舐める攻撃は、僕の雄槍には効果は抜群であった。僕の喜悦の声は激しさを増すばかりで、何とか暴発を免れていた雄槍もはち切れんばかりに膨張していくのを感じ取った。その反応を感じ取った彼女は、さらにピンポイントに舌をペロペロと繰り出してくる。ああ……身体だけじゃなく、脳裏の中も真っ白になりかけそうだ――だめだ、もう耐えられない。でてしまう!? で、でっ――
 その瞬間、雄槍に続いていた攻撃がキュッと収まる。へっ……? あまりに突然の虚無の感触に、僕はつい拍子抜けした声を上げる。なぜ、絶頂を迎える瞬間に、ミップはその舌を離してしまったのか。
「ごめん、ゴルト。私……もう我慢できない」
 ハァハァと、彼女の興奮しているような息遣いが包帯越しからも伝わる。次の瞬間、僕の雄槍は――とても熱くて、既に湿っていて、そして雄をギュッと締め付けてくるそれに埋まっていた。
 その時僕の耳に突き刺さってくるのは、彼女の淫らな喘ぎ声。この時点で僕は察してしまった。今僕の雄槍を包んでいるのは……先ほどの僕があれほどまで挿れたいと感じていた、彼女の雌の中であると。その事実が鮮明になった時点で、既に限界を迎えていた僕の雄に耐える術など存在しなかった。


 僕と彼女は、本能からの激しい絶叫を上げながら、お互いに快楽の海へと沈んでいった。
 そのパートナーの名前を、呟きながら――




「……」
「…………」
 ミップの行為が終わってしばらくして、彼女は僕の包帯を取り除いてくれた。
 だが、終始無言の状態で、お互い顔を合わせることもできない。真夜中の洞穴には、ただただ永遠とも思える、重い沈黙が続いてしまっていた。
「……ねえ、ミップ……」
「……うん」
 それでも僕は何とか、声を絞り出す。ミップも俯きながらも、僕の言葉に反応してくれた。
「えっと、これで……良かったの?」
「……ごめんなさい」
 彼女の肩は震えていた。そして目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「ミイラになって呻きながら、私の行為で雄を膨らませてくれたゴルトを見ていて……本当に嬉しくて。それと同時に、私の中にある欲望が収まらなくなってしまって。理性で止めようとしても……ダメだった。私……あなたのことが好きなの。ずっと、好きだった。立派になったあなたが、とってもカッコ良かった。だから、どうしても一緒になりたかった」
 いつも僕のお姉さんのように、明るく笑顔を見せてくれた彼女が、弱々しく呟いた告白。その想いが伝えられなかったのは、姉弟のような長い関係性が続いてしまったからかもしれない。この関係が崩れるのは僕にも考えられないくらいに怖い。でも我慢を続けたことが、今回の行為にまで発展してしまったのかもしれない。
 でも、僕はどうなのか? 僕だって、彼女をミイラにした時には、彼女の雌を奪いたいって強く思っていたじゃないか。他のポケモンをミイラ化させた時にも多少性欲が昂ったことはあったが、襲いたいとまで思ったことなどなかった。うん、間違いない。僕を助けてくれて、明るく可愛らしい笑顔を見せてくれるミップのことは僕も……大好きなんだ。
 ずっと我慢をして。そして今は罪悪感に襲われているミップに、今の僕がしてやれることはただ1つ――
「……!?」
 僕はミップの顔を寄せて、その口に僕の口を重ねる。
 自然とお互いの舌は絡み合っていき、その感触が。その唾液が。優しく温かく2匹を繋げていく。
 僕もずっとずっと、このままミップと一緒にいたい――
 心ゆくまでお互いがお互いの愛を貪り合った後、僕は静かに口を離す。
「ミップ、ありがとう。僕もミップが大好きだよ。だから……ずっと、僕と一緒にいて欲しい」
「ゴルト……ありがとう。本当に……嬉しい!」
 気がつくと、僕はミップに抱きつかれていた。尻尾を揺らしながら、すすり泣いて少し震えている彼女を、僕はずっとずっと。彼女が安心しきるまで抱擁し続けていた。




 こうして僕とミップは、正式に夫婦としての契りを交わし、一緒にこの洞穴で暮らすようになった。だからと言って、ミイラ化を望んでくる依頼主のお願いを断る……なんてことはしない。来るものは決して拒まず。僕のミイラ化に癒しを求めている、そんなポケモンたちの活力を与えられて、満面の笑みを生み出せるのであれば……僕は死ぬまでこの依頼を受け続けることだろう。そしてその隣には……僕の一番愛する妻、ミップがいる。
 あれからミップも、依頼主をミイラにするための手伝いをしてくれている。僕にがっつりと触られることに若干の抵抗感があったポケモンも、彼女の手で巻いてもらえれば安心してミイラになってもらえる。ここを訪れる依頼主には、今のこの瞬間だけでも嫌なことを忘れて快楽を心から楽しんでもらいたい。その想いは、僕もミップも同じだった。
 そして今日も無事にその行為は終わる。軽い足取りで帰路につく依頼主のポケモンの姿を見送った後、ミップは僕の手をグイっと引っ張る。何かを待ち望んでいるようなその笑みに、僕は苦笑いしながら頷いた。僕たちのミイラナイトは、まだまだこれからだ。
 色々なポケモンを巻いて、ミップを巻いて、そして巻かれる。ふと、ミップをこの世界に引っ張ってしまって、本当に良かったのだろうかと考えてしまうこともある。それでも僕たちの愛に偽りなどはない。至って純粋な想いがあるのであれば、その行為の方法が少し特殊であることなど、些細なことであろう。
 これからも僕とミップは、深い愛を身体に巻いて、そして巻かれてお互いの幸せを確かめ合うのであった。





ノベルチェッカー

【原稿用紙(20×20行)】 46.2(枚)
【総文字数】 15743(字)
【行数】 222(行)
【台詞:地の文】 13:86(%)|2088:13655(字)
【漢字:かな:カナ:他】 33:59:5:0(%)|5243:9441:934:125(字)


○あとがき

 マミフィケーションって何やねん……
 という方も沢山いたと思います。からとりです。投稿が遅れてしまい、すみませんでした。
 実はこの作品は、今年の変態選手権でエントリーした『くるくるまきまき』が元となっています。
 この時点で8000字程は書き上げていたのですが、どうしてもマミフィケーションやデスカーンの描写が上手くいかずにエントリーを取り消すことになってしまいました。
 ですか、ここまで仕上げた作品を闇に葬るのも登場キャラクターに失礼だと思い、構成を見直しつつ1から書き直し、何とか今大会に投稿することができました。
 (相変わらず描写に苦戦しっぱなしで、結局遅刻してしまいましたが……)
 元々、変態選手権向けだからこそニッチなネタでチャレンジしたこともあり、正直票が入らないことも覚悟していたのですが結果として4票分もいただけたことが大変嬉しいです。
 少しでもマミフィケーションについて興味を持っていただけたなら幸いです。
 
○作品について

 マミフィケーションを知ったのは、比較的最近でした。
 ただ、昔から虫の糸で巻きつけられるシーンとか好きだったので、多分そういった資質があったのでしょう。
 ポケモン小説ですので、マミフィケーション自体のお話はこの辺にして……

 以前書いていたものはゴルトとサーナイトの出会いシーンがやたら長めに描写されていたり、ミップをくるくる巻きにした理由が、ゴルトのマミフィケーション行為をミップが偶然見てしまい、拒絶されてしまうと恐怖し狼狽した結果、思わず巻きつけてしまったという強姦に近い形になっていました。
 今回書き直すにあたり、ニッチなテーマを取り扱う以上、他の部分はシンプルかつ純愛の温かいお話にして、後味良く少しでも受け入れやすいようにと今の流れになりました。
 執筆しながら自分でもゴルトとミップの、巻いて巻かれるような関係性が微笑ましいなあと思えましたので、この流れに修正して良かったなと感じています。

 両親もおらず、不釣り合いな森に放り込まれた経緯もあり気弱なゴルト君。
 それでも慈悲深い心を持ち、依頼者の癒しのためにニッチなことにも全力の彼はとても素敵だと思います。

 ミップちゃんも面倒見の良い姉御って感じでいいですよね。巻かれてる姿も美しいですし
 一度ゴルトのミイラ行為を見てしまっても、すぐに受け入れられたのはゴルトに対しての信頼があってのことでしょうし、
 そこから深みにハマっていくのも良いものです。結果、純粋に幸せであればその方法が少し特殊でも問題ないのです。
 
○コメント返信

 > 一度は体験してみたかったマミフィケーションプレイ。割とニッチな性癖なので、書いてくれて嬉しかったです (2018/10/12(金) 22:30)さん

   マミフィケーションを知っている方がいるとは……私も一度くらいは体験してみたいものです。
   する側の征服欲とか、されている側のあられもない姿とか、何とか想像を膨らませて表現したのですが喜んでいただけたようで幸いです。

 > デスカーンという珍しいチョイスながらその特性をめいっぱい生かした物語の運び方がとても上手だと思いました。 (2018/10/13(土) 20:46)さん

   デスマスの人の魂から生まれた設定や金塊好きな設定など、デスカーンは個性的な側面も多くて良いキャラしていますよね。
   主人公とするからにはデスカーンらしさはしっかり出したいと思っていましたので、そう感じていただけるのはとても嬉しいです。
   
 > 拗らせ系の純愛っていいですよね……。新しい性癖の世界を見せてくれた作品でした。 (2018/10/13(土) 21:17)さん

   いいですよねえ……本当。行為は特殊でも、そこにあるのは純粋な想いというのは本当に好きです。
   予想外のプレイだったとは思いますが、そんな中でも楽しんでいただけたようで良かったです。
   
 > ややアブノーマルながら二人の愛に乾杯 (2018/10/14(日) 23:08)さん

   アブノーマルであろうが、純粋に応援できる愛って素敵ですよね。
   これからも二人が幸せに過ごしていけるように、私も乾杯して祝おうと思います。


最後になりますが作品をお読みくださった皆様、投票いただいた皆様、そして大会主催者様。
本当にありがとうございました!!



感想など。何かありましたらお気軽にどうぞ。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • マミフィケーション、するのもされるのも好きな私にとってはたまらない作品でした。まぁ、別に気持ち良くなったりするわけではないんですけれど、信頼できる相手に自分のすべてを任せて気持ちよくしてもらうってのはとてもそそりますよねぇニフェフェ。
    しかし、信頼できる相手限定だと思っているからこそ、なんというかこう、普通に依頼してくる人たちの性癖は極まっちゃっている感がすごいなとおもいますw
    プロの緊縛師なら信頼できるんですかね、と言うか皆さん見た目は気にならないんですかねw -- リング
  • 需要があるかどうか不安だった身としては、堪らないとまで言っていただけて大変嬉しいです。
    信頼する相手だからこそ委ねられる……わかります。凄くそそりますよね。
    普通に依頼してくるポケモンに関しては確かに、とは思いますがw
    極めているポケモン以外にも興味本位、辛いことへの逃避、明日への活力等色々な目的があって最終的に癒されたいと思っているのでしょうね。
    勿論その行為に不安もあるのでしょうが、それ以上に突き動かされるものがあって来ているのであればまあ良いのではないかとw
    感想、ありがとうございました! -- からとり
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Last-modified: 2018-11-12 (月) 01:03:40
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