進化の石。それはメガシンカのような一時的なものではなく、ポケモンの姿かたち果てには覚える技や習性すら変えてしまう強い力を持った石のこと。
太古の昔より存在し、今もポケモンに影響を与え続けている。一体この石たちは、どこからやってくるのだろう。
これはいつだったかもう忘れてしまったのだが、私がどこかの誰かから伝え聞いた話だ。
遥か昔、血気盛んな炎タイプのポケモンが多く生息する火山地帯では、燃え盛る炎の恩恵を巡り頻繁に縄張り争いが起きた。勝利すれば生活は安泰、敗北は死すら意味する土地で、命を懸けた激しい戦いが繰り広げられていた。
ある時ぶつかり合った衝動が炎に包まれ一つの石になって、弱り切ったガーディの前に落ちてきた。触れたガーディはみるみる生気に満ち溢れ、大きな唸り声を上げて戦線に舞い戻り、見事勝利を収めた。風の如く駆け抜ける姿は後に伝説になったという。石によって進化するポケモンは情熱をその身に宿し、好戦的で力強いポケモンになるといわれている。
水の石は悲しみが高まったポケモンの涙が固まってできたものらしい。
昔々、川辺の村で水ポケモンと人間が仲良く暮らしていた。ある時傷を負って泣いているシャワーズの涙が石となって零れ落ちていくのを村人が見つけ、風の噂で知った悪徳業者がポケモン達を虐げ人為的に石を作らせようとした。特に捕まえやすいコイキングやヒンバスが主な犠牲となり、いつしか川にはポケモンが棲まなくなり村は寂れ今は廃村になってしまった。この事件の後水ポケモンは陸上では決して涙を見せず、海の深いところでしか泣かなくなり、水の石は海中へ潜らなければ取れなくなったのだという。
雷の石はポケモンの喜びが固まってできたものらしい。電気タイプのポケモンがはじけるような嬉しさを感じた時火花と共に散ってできたものだから、雷の模様が入っているのだという。
その昔ある旅人の連れていたピカチュウがたった一匹でポケモンリーグ制覇を達成した時、嬉しさのあまり三日三晩雷の石を雨あられと降らせた。という逸話も残っているという。この石によって進化するポケモンは、その時の嬉しさに感化され刺激的なポケモンになるのだという。
リーフの石は心地よい安らぎが固まってできたものらしい。だから草タイプのポケモンはアロマセラピーやくさぶえなど、自分や相手に癒しを与える技が使えるのだという。
しかしその反動なのか、石によって進化するポケモンは奇妙な姿をしていたり、気性が荒くなったり、猛毒を持つようになったり、邪なものになるのだという。この石にまつわる話は、けなげな草タイプのポケモンが人を愛した分だけ呪ってしまう話になることが多いそうだ。
月の石は空の向こう、遠い遠い星からやってきたらしい。ポケモンが乗っていた宇宙船の破片とも、住んでいた星の欠片とも言われている。
関わるポケモン達は満月の夜になると空を見上げ、元々自分たちが住んでいた惑星に想いを馳せているのだという。野生のルナトーンが稀にこの石を持っていることがあるのは、彼自身もまた遠い星からやってきた訪問者だからだ。と言われている。
太陽の石は恵み豊かな南の島で生まれたらしい。太陽の光を燦燦と浴びて育ったポケモンの感謝の気持ちが集まり固まって石になったのだという。
この石によって進化するポケモンは日当たりと水はけのよい土地を好んで住むという。とある島では太陽に一番近い場所にある岩が恩恵を受けソルロックとなって、島に住むポケモンたちに太陽の石を分け与えて回っているのだという民話が残っている。
その昔愛する人も国もポケモンも失い、人生に絶望した男がいた。男は世界を恨み、憎み、悲しみ、妬み、呪いの言葉を吐きながら生きていた。その黒い感情は次第に数多のカゲボウズを寄せ集め、喰われていった。たらふく喰ったカゲボウズの副産物が年月をかけ集まり固まって石になったという。
紫の外殻が、引き摺り込まれそうになるほど魅力的な、先の見えない闇を内包している。この石によって進化するポケモンは闇に惹かれて自然とやってきて、夜を羽ばたく凶悪な大烏、生けるものの魂をも燃やし尽くすシャンデリア、戦地へ王を誘う剣、月のない夜を飛び呪いを歌う魔女になるのだという。
昔々、聖なる土地で巫女として生まれ、人とポケモンの安寧を願い続けたタブンネがいた。外部からの雑音がない狭い環境で育てられた彼女の純粋無垢な願いは、隣国から攻められもうすぐ落とされようとした時天から降り注いだ光を浴びて石になった。放つ光は彼女の瞳のように優しくしかし荘厳で、一切の迷いをかき消してしまうと言われている。
この石によって進化するポケモンは、石に負けぬほどの美しい輝きを放つと言われている。あるものは究極の幸せをもたらすものとなり、あるものは女王となり、あるものは豪華な花束となり、またあるものは人間を魅了してやまないポケモンになるのだという。
昔々、なにかが始まるとされる場所で盲目のポケモンのポケモンが生まれた。彼は目が見えない代わりに過去や未来を見る能力にめざめ、神として崇め称えられるようになった。何百年が過ぎ寿命が尽きる時、長年側に仕えていた♂と♀のポケモンに石となった左右の目を与えたという。この石によって進化するポケモンは従者の子孫であり、進化の際過去の記憶に触れると言われている。片方は人を守る騎士のようなポケモンになり、もう片方は人を惑わし時として命を奪うポケモンになるのだという。
進化石ではないけれど、ある特定の地域に存在する岩にもポケモンを進化させる効果があり、その岩も伝え聞いた話がある。
昔々、深い森には珍しくダンゴロが棲んでいた。彼はタイプは違えども森のポケモン達と楽しく暮らしていたのだが、ある日地下から毒ガスが吹き出して森のポケモン達を苦しめた。ダンゴロはみんなを守るため開いた穴に自分の身体を押し込みそこから動かなくなり、長い時が過ぎて苔むした岩になった。今でも森に住む生き物を守護する役目を果たしているのだという。岩の力で進化するポケモンは新緑のように生き生きとし、呼吸をするたび澄んだ空気が辺りに広がっていくのだという。
昔々、氷タイプでありながら炎タイプのロコンに恋をしたカチコールがいた。当時両タイプは敵対しており、二匹の中は裂かれてしまった。その時もうどちらも互いを攻めることができないよう領地の境目にカチコールは自分自身を埋め込み、どんな温度も炎も寄せ付ず、またこれ以上冷たさを領域外へ出さないようにした。数百年を経て凍結した岩となった今でも、その結界のような効果は残っているのだという。岩の力を受けて進化するポケモンは氷のように青く、周囲の空気を凍らせて自由自在に操ることができるようになるのだという。
便利になった現代。進化石はデパートで簡単に買えるようになり、イベントの景品としてもメジャーになったが、自分のポケモンに使う前に思い出してほしい。物言わぬ石に秘められた、この物語の数々を。
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