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ダルマッカの人=空蝉

Doble Parkのチラ裏スレにちまちまと書いていた小ネタです。なんとか完結したのでこちらにまとめました。
タイトルを裏切ってエロなしです。無念だ……w






 ダイレクトメールより質の悪いのが来た。
 宛先は確かに俺の住所氏名。ご丁寧に電話番号まで書いてある。まったく、どこから名簿が漏れたんだか。
 発送元は聞いた事のない会社。ラブポケモンカンパニー?最悪なネーミングセンスだな。
 箱の中には、定番のボール一個と伝票。なになに、『ご注文ありがとうございます』……注文してねぇっての。『本商品の試用期間は、7日間となっております。試用期間を過ぎて返品されない場合は、弊社の銀行口座まで商品代金をお振り込み下さい』……試用?

 箱の中に転がったままのモンスターボールをちらりと見る。……ポケモンだよなぁ、コレ。
 『なお、本商品は皆様の性的嗜好やニーズにマッチするよう、弊社独自のリサーチと研究のもと躾を済ませてありますので、どうぞご安心ください。お届けしたラブポケモンが皆様に可愛がられ喜ばれることを確信しております』

 ……ハァ!?

 うっわ。話には聞いた事あるけど、まさかうちに来るとは……こんな強引な商売してんのかよ、くそったれだな。
 確かに世の中には、ポケモンを性的興奮の対象にする人間が居る。異常性愛とかそんなのの一種だと思う。それがどれだけの割合で居るのか判らないが、闇雲に数撃って数パーセントでも購入があれば成り立つのかもしれない。

 ……が。生憎俺はポケモンをどうこうしようなんて趣味は全くない。彼女居ない歴は年齢と同じだが、自分でやるときもおかずは普通に……うぅ、普通じゃないか、美少女アニメだったりアダルトゲームだったり、要は二次元オタって訳で……いや、それはともかく。

 ボールに目を遣る。
 この中、何入ってんだろ。
 普通に考えれば抱き心地良さそうな可愛いコが入ってんだろうな。躾済みか……まあそれは眉唾物かもしれないが。うーむ、何だろう、いきなり誘って来たりするのかな。それとも何されても我慢するように言い聞かされてんのかな。

 ……いやいや、待て俺。何興味津々になってんだ。
 そうじゃない。期待してるんじゃないぞ。おれはただ対面したときに何があっても対処できるようシミュレーションしてるだけだ。うん、そうだ。紳士的に対面するんだ。
 しかし発声第一が「抱いてくださ──い!!」とかだったら対処しようがないかもな。
 ……って、アホな想像するのはよそう。気力の無駄遣いだ。

 とりあえず会うだけ会ってみるか。
 何もしないぞ。何がラブポケモンだ。

 ぽむっ。

 可愛い音で、そいつは出てきた。
 丸い体。まんまるな目の───ダルマッカ。
 がっくり力が抜けて俺は倒れそうになった。

「……無理すぎだろ、そりゃ……」

 脱力しながら思わず呟いた俺を、ダルマッカは出てきた格好のままで見つめている。
 あれ? ひょっとして……固まってる?

「おい……」
 声をかけようとした途端、見事なまでの反応でびくうぅッ!と震え上がり、ダルマッカは転がるように(ってか、転がりながら)部屋の端まで逃げて行った。
 そしてあからさまに怯えた目で、俺を見上げている。

 完全に、怖がってる……

 ドコが躾済みなんだよ──!とツッコミそうになったが、そんなことをしたらダルマッカが恐怖で狂乱状態になってしまうかもしれないので、そこはグッとこらえた。
 静かに、静かに。そおっと。
 怖くない、こわくないよぉ~~と心の中で呟く俺はまるで変質者だ。

「ダルマッカ」
 怪しすぎる猫なで声で呼ぶと、またしてもびくうッとして、まんまるな体がぷるぷる震えだした。
 どんだけ怖がるんだよ?

 ……でも、これだけ人を怖がるぐらい───こいつ、辛い目見て来たのかな……
 そう思うと、なんだかものすごく可哀想になってきた。


 俺はそれ以上ダルマッカに近付くのはやめて、その場に胡座をかいて腰を落ち着けた。
 そのままじっと見つめ合う。
 まんまるな目が、俺を見ている。試されているような気分だ。いや、本当に試されてるんだろう。俺が信用に値する人間かどうか。

 信じてくれよ。俺はお前を傷付けたりしない。
 大丈夫だよ。

 いつの間にか、ダルマッカの震えは止まっていた。
 見上げてくる顔の、可哀想なぐらいの怯えた表情も、いくぶん和らいできたように思う。

 俺は片手をそおっと前に伸ばしてみた。
 ダルマッカは不思議そうに、その手を見つめている。

「おいで」

 ゆっくり、言い聞かせるように言った。
 ダルマッカの丸い目が、さらにまんまるになった。その目は躊躇いに揺れている。

 しばらくそうして時間が流れて。
 ヒョコ……、と短い足が動いた。
 一歩、二歩、こちらに寄って……固まる。そしてまた俺をじぃっと見上げてくる。
「おいで」
 言葉をかけると、また一二歩近付く。

 はっきり言って狭い部屋だ。いくらダルマッカの短い足でも、何度かそんなことを繰り返せば、もう手の届きそうな所まで来てくれている。
 それでも、俺はそれ以上手を伸ばすことはしなかった。ダルマッカのペースで、近付いて来てほしかった。

「おいで」
 最後の一歩で、ダルマッカは俺の手の内にまで来た。
 見上げてくる目が、必死の願いを伝えてくる。
 大丈夫だよ。
 そう伝えたくて、目の前のダルマッカに笑いかけた。
 もう片方の手も差し出し、両手でゆっくりダルマッカの丸い体を包んだ。
 こちらが驚くぐらい、ダルマッカの体がびくうぅッと震えたが、嫌がる様子もなく俺を見つめてくる。

 ダルマッカの体はほかほかと暖かい。
 思わずぎゅうっと抱きしめたくなる衝動を抑えて、そっと抱き寄せる。安心させたくて頭を撫でていると、ダルマッカの小さな手が俺の手に触れてきた。
 熱い手がぺたぺたと俺の手を触っている。探っているようにも見える。

 珍しいものを見るようなダルマッカの行動は、俺にとっては逆に珍しくて面白い。
 俺が人差し指を立てると、すかさず握ってくるのが可愛い。
「握手」
 そう言って握った手を小さく動かすと、ダルマッカは初めて嬉しそうに笑ってくれた。

「はじめまして。俺はユウキ。よろしくな」
 紳士的に対面。たぶん、達成だ。
 挨拶というのがよく判らないのか、ダルマッカは小さく首を傾げている。そんな幼い仕草に、思わず苦笑がもれた。

「おまえ、可愛いなぁ」
 笑いを含みながら言うと、ダルマッカはしばらくキョトンとして、それからいきなりモジモジし始めた。
 上目づかいに俺を見ては恥ずかしそうに顔を伏せ……そんな仕草を繰り返すダルマッカは、元から赤い顔が心なしかさらに赤くなって、ほかほか加減も増したような気がする。

 どうしたんだろう? ちょっと心配になってきた。
 すると、ダルマッカはおずおずと俺の顔に手を伸ばしてきた。
「なんだい?」
 顔を触ってみたいのかと思って、ダルマッカに頬を寄せてみた。

 熱い手がぺたりと頬に触れる。
 うんっと体を伸ばして(伸びないけど)ダルマッカが俺の顔の真ん前に来る。
 それから。

 ……チューされた。


「!!!」
 な、な、何なのいきなり───ッ!?


 慌ててダルマッカから顔を離した。
 ダルマッカの両脇を持ったままだから至近距離でご対面という状態なのだが、ダルマッカはおろおろじたばたしているし、俺は呆然としてしまって、どうリアクションすればいいのか判らない。
 そうしているうちに、ダルマッカのじたばたが止んだ。
 まんまるな目が、うるうると滲んでくる。

 ……うわ、泣くっ!
 俺は咄嗟にダルマッカを抱きしめた。
「ち、違うんだ、ダルマッカ! 泣く事ないんだよ。えっと……えっと、俺は嫌がった訳じゃないんだ。えーっと、そうじゃなくて」

 何とか宥める言葉を探しているうちに、ふっとそれに気付いた。
「そうじゃなくて……」


 ダルマッカは。
 『そうするように躾られて』きたのだ。
 買ってくれた人間に、ひたすら奉仕するように。


「おまえは、そんなことしなくて良いんだ……」
 『そうすること』しか知らないのだろうダルマッカに、俺は、そう言ってやるのが精一杯だった。

 抱きしめた腕の中から、ダルマッカが困ったように見上げている。……そりゃまあ、困るよな。そうするために来たんだから。
 そんなダルマッカの不安を除いてやるために、俺はゆっくりダルマッカの頭を撫でてやった。


 人間を見てあからさまに怯えていたダルマッカ。それでも人間に奉仕しようとしたダルマッカ。人間をそういうふうにしか知らないダルマッカに、教えてやりたい。怖がらなくていい人間も居るんだってことを。
 でもどうやって?


「ダルマッカ、腹空いてないか? 何か食べる?」
 安直な方法だが、これが一番かな。
 ダルマッカの目が途端に輝くのを見て、俺はちょっと可笑しくなった。判りやすい奴……

 さて、食べさせるとして、何を? 送られてきた箱には飼い方の説明書など当然入っていないし、ポケモンを持ったことのない俺は生態なんてよく知らない。
 というか、そもそも清貧独り暮らしの台所に、ポケモンに食わせるモンなんてある筈なかったんだ。
「しょーがね、買い物行くか。ちょっと入ってな」
 キョトンとしているダルマッカをボールに戻し、軽く身支度して安アパートを出た。
 本当は連れて歩いてみたかったけど、生憎ここはポケモン禁止アパートだ。それに慣れないせいか、ちょっと気恥ずかしくもあった。




 近所に最近出来た大型スーパーで、普段はスルーするポケモン用品コーナーへ直行する。
 ポケモンフーズと一口に言っても、徳用大袋から高級缶詰までいろんな種類があるもんだ。しかも当然タイプ別の食性別にあるから、何が何だかわからない。
 とりあえずは『ベーシック』のラベルのあるポケモンフーズを手に取った。『すべてのポケモンの基本食』って書いてあるし、腹壊すことはないだろう。

「ポケモンフーズをお探しですか?」
 フーズの成分表を見ていたら、販促エプロンのお姉さんに声をかけられた。
「え、ええまあ……」
「ポケモンはご一緒ですか? 良かったら試食させてあげてください」
 にこにこと可愛い営業スマイルで淀みなくしゃべりながら、手元のワゴンからいくつかのフーズを試食皿に入れていく。
 目の前でじゃんじゃんと手際よく試食の準備が進んでいくので、なんだか申し訳ないような気持ちになって、俺はモンスターボールを取り出した。まあ試食して決めるなら間違いないだろうし。

「出ておいで」

 ぽむっ。

「まぁ、可愛い! ダルマッカですね」
 大袈裟に可愛がる台詞がリップサービスだと判っていても、なんだか嬉しく照れ臭い。
「ちょっと小さいですね。まだ子供ですか?」
「え、ええと、多分……。こいつ、まだ大きくなるんですか?」
 聞かれた俺が、逆に聞いていた。お姉さんはちょっと「ん?」という顔をしたが、さすがは販促プロらしく、スマイルを絶やさずにワゴンから何やら小さいモニタのようなものを取り出した。

 画面を見ながら、ダルマッカに向ける。
「ええと、ダルマッカ……そうですね、三十から四十キロぐらいまで成長するみたいですから、あとふた回りぐらいは大きくなるようですよ」
 そ、そんなにデカくなるのか……これぐらいが可愛いのに。
「ところで何ですか? それ」
 お姉さんの手元のモニタをちょっと覗かせてもらう。
 モニタには一般的なダルマッカの基本情報とともに、目の前のダルマッカの状態も表示されていた。
 『♀、約十五キロ。おすすめフーズはベーシック5+スペシャル2+バーンプラス3』とか書いてある。そうか、雌だったんだ。いやまあ、そういう目的の仔なんだから当然かもしれないが。

「これは私どもポケフード社と、スキャン技術で有名なポケデジ社が共同開発して作った新製品なんですよ。これをポケモンにかざせば、その日の体調だとかを瞬時にスキャンして、最適なフーズ配合を表示してくれるんです。ポケモン初心者にも安心! このスーパーでも毎日二百個ほど売れてる超人気商品なんですっ!」
 うぉ、来た来たセールストーク。しかしワゴンに貼ってある値札を見て、俺は苦笑いしかできない。
「そ、そう……便利だね。ところで試食って……」
「あっ、そうですね。ダルマッカちゃん、お待たせしましたー」

 お姉さんはすぐに試食を出してくれた。良かった、しつこい人じゃなくて。
「今食べてるのがベーシック。お客様の籠にも入ってますね。次はスペシャル。栄養強化してあるのと、食味が良いので大人気です。それから次が……」
 何種類か食べさせてもらったが、どれもダルマッカは喜んで食べてくれた。たくさん試食できてご機嫌のようだ。

「なるほど、配合ねぇ……」
 各種類の成分表を見比べながら呟いた途端、お姉さんがずいっと寄ってきた。
「配合に迷った時、便利なんです!」
 そう言う手には、さっきのモニタ。お姉さん、絶妙。……でも高いしなぁ。
「うん、ありがとう。でもいいよ。こいつは……ええと、ちょっと訳あって少しの間預かってるだけだから」
「あら、そうなんですか」
 お姉さんのテンションが目に見えて下がる。申し訳ない。
「とりあえず、一週間分あればいいんだ」
「一週間ですねぇ、それじゃあおすすめは……」

 そうやってお姉さんとやりとりしていた俺は気付かなかった。
 足元でダルマッカが、ぷるぷる震えていることに。


 籠に一通りのフーズを入れて、ダルマッカを見下ろす。
「じゃ、行こうか。……ダルマッカ?」
 何か様子がおかしい。
 しゃがんで顔を覗き込もうとした途端、ダルマッカはいきなり駆けだした。
「えッ!? え、待って! ダルマッカ!」
 丸い体でどんどん走っていく。俺は慌てて籠を置き、追いかけた。

 駆け出す直前に見たのは、多分泣き顔……

「ヤバい、追いつかないっ」
「お客様! ボール!」
 後ろからお姉さんが叫ぶ。あっ、そうか。慣れてないってこーゆー時出るんだな。
 俺は逃げるダルマッカにモンスターボールをかざした。
 光が出て、あっけなく捕獲完了。
「お客様、大丈夫ですか?」
 お姉さんが俺の買い物籠を持って来てくれた。少し心配そうに俺のモンスターボールを見ている。
「ダルマッカちゃん、泣いてましたねぇ。ひょっとして寂しかったのかしら」
「え?」
「だって、一週間分って言ってらしたときでしょう? 泣いちゃったのって」




 木枯らしが吹く帰り道をトボトボと歩く。
 もっと一緒に居たいのかもしれませんねぇ、と言ったお姉さんの言葉……ちょっと、ぐさっと来た。

「ふぅ」
 何となくそのまま家に帰り辛くて、公園の冷たいベンチに腰を下ろす。なんだかリストラ親父のワンシーンみたいな侘びしいザマだ。
 手の中のボールをじっと見下ろす。ボールまでほかほかしてるのはやっぱり炎タイプだからかな。
 また逃げだすかも……と思いつつ、ボタンを押した。もし逃げたらまたボールに戻せばいい。何故か無性に、ダルマッカの顔が見たかった。

 ぽむっ。

 何度見ても、出てくるときこのポーズは可愛い。ふさぎ込んでいた気持ちが、一瞬明るくなった。
「ダルマッカ」
 呼ばれてキョトンと俺を見上げる。一瞬の間があって、はっとしたような顔をして(って、忘れてたのかよ……)途端に悲しげな目になる。

「おいで、ダルマッカ」
 手を差し伸べるが、寄ってこない。それどころか、涙を溜めた目でそのまま俯いてしまった。
 思わず溜息が漏れる。俺……なんて迂闊だったんだろう。


 あれだけ人間を怖がってたダルマッカが俺に懐いてくれた。信頼してくれたってことだ。
 それなのに一週間だけ……なんて言われたら。そりゃ、悲しいよな。
 裏切られたって思ったかもしれない。優しくしておいて突き放すぐらいなら、始めから冷たくされた方がまだマシだ。
 優しさをチラつかせて、ぬか喜びさせて。
 それで俺は……一週間経ったら返品しようとしてた。

 最低野郎だ。


 俯くダルマッカの頭を見ながら、いろんな事がぐるぐると頭を巡る。
 返品しないという選択をしたらどうなるか。
 お金を振り込んだら途端にカモ扱いされて次々変なのが送りつけられてくるかもしれない。いやそもそもポケモン禁止のあのアパートにはもう居られないか。物件探し。引っ越し費用。バイトも変えなきゃならないかも。生活費も苦しくなるな。ますます彼女も持てなくなる。

 ───ええい、しっかりしろ俺!
 そんなことは……そんなことは、もうこの際どうでもいいんだ!
 腹くくれ! 根性見せろ!
 イザって時は、やれる男だ。そうだろう?


「ダルマッカ」
 必死の思いで呼んだ声は、我ながら堅く緊張した音になっていた。
 ダルマッカはびくうぅッとして、でもおずおずと顔を上げてくれた。疑うような目が……痛い。

「一つだけ聞いていいか?」
 ゆっくり、ゆっくりと心に言い聞かせながら、一番大事な事に話を向ける。ダルマッカは俺の真剣さに気付いたのか、小さく頷いた。

「お前さ……あのカンパニーに、帰りたい?」
 どんな反応をするかとドキドキして待ち構えていたが、何の反応もない。少し首を傾げているようにも見える。あ、そうか。
「ええと、お前がウチに来る前に居たトコ。そこに、帰りたい?」
 そうやって説明して、やっとダルマッカは目を丸くした(もとから丸いが)。
 ぷるぷる……震えてるのか、首を振ってるのか、よく判らなかった。
 しばらくして、涙がぽろりと落ちた。ぽろぽろ泣きながら、今度ははっきりと、首を横に振った。子供のようにイヤイヤを繰り返した。

「ん……そうか、そう、だよな。……おいで、ダルマッカ」
 呼ぶと、飛び込むように寄ってきた。熱い顔を、俺の腹に擦り付ける。
 あったかい。……あったかいよ、おまえ。
 必死に擦り寄ってくるダルマッカを、両腕で抱きしめる。
 もう、腹は決まった。

「帰りたくないなら、帰らなくていい」
 ダルマッカが、ぱっと顔を上げる。
 その目には、驚きとか、疑いとか、喜びとか、戸惑いとか……いろんな感情が溢れてる。ごめんな、素直に喜びだけじゃないのは、きっと俺のせいだな。

「今日からお前は、俺のポケモンだ」


「えっ、アンタのポケモンなの? そのダルマッカ!」
「!!」
 突然背後から甲高い声が響いて、俺とダルマッカは抱き合ったまま飛び上がるほど驚いた。
 慌てて振り返ると、丸顔のガキが目をきらきらさせて俺のダルマッカを見ている。
 ……アンタ呼ばわりかよ。ったく、かわいくねぇガキだな。
「なあ、なあっ、俺とバトルしようよ! オレね、ポカブもらったんだー! ほのお対決しようよ!」
 いきなりハイテンションでまくしたてる。俺がうんともすんとも言わなうちに、もう自分のポケモンを広場に出してきた。
「なぁってば!」
 バトルやりたくてしょうがないんだな。そっか、トレーナーって、そうなんだよな。
 ガキのポカブもやる気満々で、楽しくてしょうがないみたいな顔してる。

 ああ、そうなんだな───ポケモンって。

 とんとん、とダルマッカをたたくと、呆然としていたのかびくぅッと震えて、慌てて俺を見上げてきた。
「バトル、やりたい?」

 その言葉を聞いたときのダルマッカの顔。きっと俺は一生忘れないだろう。
 今まで見た中で最高の……スペシャルな笑顔だった。


 そうだ。こいつの生き方、変えてやる。
 ポケモンらしく───生きるんだ、俺と。


 俺はベンチから立ち上がり、ガキの正面に立った。
 ダルマッカが自然に俺の前に出る。

「言っておくが、俺はこのトシで新人トレーナーだ。これからこの町を離れて、こいつと修行の旅に出るんだ。おまえとのこのバトルが正真正銘の初陣。よろしく頼むぜ?」
 俺の言葉にガキはびっくりしたような顔をしたが、すぐに闘志をみなぎらせた「トレーナー」の顔になった。相手が新人だからって手抜きも容赦もしない、そんな真剣な顔だ。


 なあダルマッカ。俺も、そんな顔してるかな。




 結果は惨敗。まあ当たり前か。
 バトルが終わった時、ガキは「頑張れば強くなれる。しっかりな!」なんて一丁前に励ましてくれた。
 その生意気なガキも帰ってしまい、誰も居なくなった夕暮れの公園で、バトルの余韻に浸りながらこれからのことを考える。

 旅に出る。勢いで言ったんじゃない。俺は生き方を変えるんだ。
 毎日バイトに明け暮れるだけの生活。それじゃダメだって、ずっと思ってた。でも、踏ん切りがつかなくてずるずるここまで来てしまった。
 一人じゃ出来なかった決心を、おまえがつけさせてくれたんだ。
 その当のダルマッカは、足元で、買ってきたばかりのポケモンフーズを夢中で食ってる。
 その食いっぷりに見とれていると、視線を感じたのかダルマッカが顔を上げて、満面の笑顔を見せてくれた。
 ……こいつには、かなわないなぁ。
 あんまり可愛くて、ぎゅっと抱きしめていた。


 ほかほか、まんまるのポケモン。俺のパートナー。なんだろう、この沸き上がってくるワクワクした感じ。嬉しくて走り出したくなるようなこの熱い感じ。
 道なき道を行く、それでもいい。おまえと一緒なら。

 おまえが来てくれて良かった。
 おまえが居てくれるなら、おれは頑張れる。

「行こう、ダルマッカ」
 立ち上がり、背筋を伸ばす。
 ダルマッカの俺を見上げる目に、信頼を感じる。

 さあ、行こう。旅をしよう。
 どこまでも、どこまでも。───おまえとふたりで。





主人公が自己紹介した意味がまったくなかったとか、ダルマッカの出てくる音何とかならんのかとか、その怪しい機械何だよとか、バトルシーン削りすぎだろとか、ダルマッカでどうやってエロやるつもりだとか、いろいろツッコミどころ満載。
さらにダルマッカがその後「まる子」とかどうしようもないニックネームをつけられた後日談があったりなかったり。

ダルマッカの人=空蝉



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Last-modified: 2011-01-06 (木) 00:00:00
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