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身体計測

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身体計測 

writer――――カゲフミ

 白一色で統一された壁と床、そして部屋の奥の机にはノートパソコンが置かれている。その反対側には大きな白いベッド。
 後は入り口付近の角に、空いたスペースを埋め合わせるかのようにして身長計と体重計がそれぞれ設置されていた。
 簡素な診察室。即席で用意したことがすぐに分かる。機材を移動してしまえば別の部屋としてすぐに使用できるだろう。
 出来る限り経費を削減したい気持ちは私としても同じこと。だけど、あまりに設備が安っぽいとここに来たトレーナーを不安にさせてしまう。
 この部屋はそうなってしまわないぎりぎりのラインを保っているように思えた。上手く間取りを考えたものだと感心する。
 さて、約束した時間まであと数分。そろそろ依頼者が来てもおかしくない時間帯だ。この人が時間を守る人ならいいのだけれど。
 別に切り詰めたスケジュールでもないし、五分や十分くらい遅れるのは別に構わない。ただ、ごくたまに三十分以上遅れてくる人もいるから困りもの。
 予約の電話で会話した限り今回の人は丁寧に受け答えてくれたし、そんな雰囲気はしなかったけど。こればっかりは分からない。
 時間通りに来てくれることを願いつつ、私は依頼者のデータをもう一度確認しようと机に向かってパソコンの画面に目を通す。
 依頼人の名前、ポケモンの種類、ポケモンのニックネーム等。しっかり把握しておけば診察の進行もしやすいはずだ。
 と、そこへノックの音が響く。よかった、ちゃんと私が伝えた時間に来てくれたらしい。私はどうぞ、と声を掛けて部屋に入るように促した。
「こんにちは」
 ドアを開けて入ってきたのは若い女性だった。二十代になるかならないか、きっとそれくらいの年齢だろう。
 そして彼女の後ろから顔を出したのはダイケンキ。ドアの枠の位置を確認しつつ慎重に部屋の中へ入ってくる。
 もともと大きめに作られているのでそんなに心配しなくても大丈夫だとは思うけど。もしかすると自分の家で体をぶつけたことがあったのかもしれない。
 まあ、ダイケンキは割と体の大きなポケモンだし、ここには衝撃に弱い機材もある。慎重になってくれる分にはありがたいかな。
「今日はよろしくお願いしますね」
「ええ、こちらこそ」
 女性は軽く会釈をする。隣にいたダイケンキも頭を下げているトレーナーに習って、ぎこちない動きで頭を下げてくれた。
 人間同士での礼儀のようなものをポケモンがどこまで理解しているかは私には判断しかねるけど、こうしたやり取りは微笑ましい。
 何となく好感の持てるトレーナーとポケモンだ。受け答える私も自然と笑顔になっていた。
「私は本日担当させていただくサレット、こちらは助手のエルゼです」
 軽く自己紹介をして私は隣に視線を移す。私が彼女たちを待っている間からずっとそこにいたゴチルゼルの方へ。
 エルゼは必要に迫られない限り無駄な動きはほとんどしない。あまり気配も感じさせないため、トレーナーの私ですら存在に気付かなかったこともあった。
 紹介を受けたエルゼは無表情のまま彼女とダイケンキの方を一瞥する。会釈はせずに目を合わせただけ。基本的に無愛想なのである。
 女性もダイケンキもエルゼが動いた瞬間、何やら不思議そうな表情をしていた。置物だと勘違いでもされていたのだろうか。
「それではさっそく始めますが、少々お時間をいただくかもしれませんので計測が終わりましたらお呼びいたします」
「分かりました」
 今日何を行うかは事前に説明してある。お互い早く済ませてしまうに越したことはない。女性はドアの方へ向かう。
 初めて来た場所に自分だけ残されることに不安を覚えたらしく、彼女の方を目で追いかけるダイケンキ。
 外見だけを見れば貫録ポケモンの名に恥じない風格がある分、余計にそうした行動がちぐはぐに思えてしまう。案外寂しがりやなのかもしれない。
「またあとでね、カトラ」
 女性が何度か喉元を撫でてやると落ち着きを取り戻したようで、程なくカトラはドアでなく私たちの方を向いてくれたのだ。
 ドアが閉まり部屋の中には私とエルゼ、そしてカトラだけになる。自分のトレーナーのいない中、見知らぬ人間と見知らぬポケモン。
 ここで緊張するかそうでないかはポケモンの性格による。ポケモンによっては、私やエルゼに自ら近づいてきてくれた愛想のいい子もいた。
 ただ、ざっと観察した限りだとこのダイケンキはそんなタイプではない。未だにその場から動かずに私とエルゼの顔をちらちらと見ている。
 どちらかというと人見知りする方で、自分のトレーナー以外とはやや距離を置いていそうな雰囲気がした。
 だけど警戒心が剥き出しの野生のポケモンってわけじゃない。ある程度は人にも慣れているでしょうし、とりあえずはいつも通りでいいかな。
「こんにちは、カトラ君。今日はここであなたの身体を計測します」
 私はカトラの方を向いて聞き取りやすいようややゆっくりした口調で言う。よかった、ちゃんと私の目は見てくれた。
 トレーナーから説明を聞いているとは思うけど一応。喋ることが出来ないポケモンでも、伝えようという意思があればある程度は分かってくれるはず。
 私の所属する研究グループではポケモンの身体の調査を行っていた。調査と言っても内容は至って単純だ。
 主にポケモンの身長と体重を測って、その結果を図鑑に登録されているデータと比較していく。図鑑に登録されているのはあくまでも一般的な値。
 ポケモンによって大きい個体、小さい個体。重い個体、軽い個体、様々な個体が存在する。
 一度図鑑に登録された値でも月日が経てば平均値が変わってくる可能性もある。ポケモンの身体は一定ではない、常に変動しているのだ。
 そして、私たちが測定した平均値が図鑑と大きく異なってくるようであれば値を改定する必要性も出てくる。
 多くのトレーナーが利用するポケモン図鑑は出来る限り正確でなくてはならない。私は、図鑑の値に誤りがないかの調査を行っている研究員の一人だった。
 測定するポケモンはは一般トレーナーから募集する。無料で、しかも協力いただいた方には豪華記念品をプレゼントと宣伝すれば案外集まったりする。
 ひょっとすると今回のトレーナーも記念品とやらが気になって応募したのかもしれない。まあ私としては、調査に協力してくれるなら目的は何だろうと構わなかった。
「じゃあまずはここに来てくれるかな?」
 私は立ち上がって椅子の背に掛けていた白衣を羽織ると、身長計の元まで歩いていく。
 人間用のと比べると立つスペースが大分広く、計測するバーもかなり長い。ポケモン用に改良されたものだ。
 今回のダイケンキのように奥行きがあるポケモンは結構場所を取る。人間のように二足で測れるポケモンばかりではないのだ。
 馴染みのない身長計に少々訝しげな顔つきをしていたカトラだったが、やがて私の指示通りその上に乗ってくれる。慎重ではあるけど聞き分けは良いみたいね。
「そうそう、そのまま首を伸ばして……」
 ダイケンキくらいの大きさなら私でも何とかなる。計測用のバーをするすると徐々に下ろしていく。
 角の先端ではなく頭の部分で計測。その方が身長としては正確なデータになる。高さは、こんなところでいいかな。
「身長147.6センチ。エルゼ、よろしく」
 机の上にあった記録用紙を手に取ったエルゼ。慣れた手つきでさらさらとペンで値を記録していく。やっぱり二足歩行で両手が使えるポケモンはありがたい。
 ふむ。カトラは平均的なダイケンキの高さより多少低いくらいか。だけど進化してからまだ一年も経ってないとトレーナーからは聞いてるし、まだまだ成長の余地はある。
 後は予備データとして角と、髭の長さも測っておく。身長とは関係ないかもしれないが、もしかすると役に立つときが来るかもしれない。
 私は身長計のバーを上げると白衣のポケットからメジャーを取り出してカトラの角に宛がう。身長計で測りきれない部分は小回りの利くメジャーの出番。
「角は29.3センチ。それから……」
 私はカトラの一番長い髭にメジャーを当てる。髭に触られるのは嫌だったらしく、少し顔をしかめるカトラ。
 これも調査の一環だから悪く思わないでね。私の申し訳なさそうな態度がうまく伝達したのか、渋々ながらも彼は私の計測を許可してくれる。
「髭は52.7センチね」
 補足として念のために取っておくデータ。角や髭の平均値に関しては現在調査中。カトラの場合、見た目のバランスとしては両方とも丁度いい長さのように思える。
 よし、次は体重だ。身長計の向かい側にある体重計に乗るよう、私は彼を促す。今度はそこまで躊躇うことなく体重計の上まで移動してくれた。
 一度計測を体験してしまえば後はスムーズに動ける感じか。何にせよこの調子で進んでくれれば早めに終わってくれそうだ。
 体重計もポケモン用に改良されたもの。五百キログラムまで測れるデジタル式の優れものだ。身長計と違って細かな値が表示されるのは非常に助かる。
 カトラが乗った直後は揺れ動いていた数値の振れ幅が徐々に小さくなり、一点で停止する。きっと彼は私たちの雰囲気を察して動かずにいてくれているのだろう。
「93.1キログラム、ふむ」
 こちらも平均よりも下ではあったが許容範囲。発育不良とかそういった心配はない。成長途中であるため平均的な個体よりやや小柄、と考えるべきか。
 身長と体重の平均値からの差を考えても、痩せすぎや肥満とは無縁の標準で健康的な体格。トレーナーの管理がちゃんと行き届いているようだ。
「カトラ、ちょっとこっちに来てくれるかな」
 私は手招きをして彼を体重計から降ろして近くに呼び寄せる。隣にはエルゼが立っていて、彼女と目が合う形に。
 そういえばゴチルゼルもダイケンキと身長が同じだったっけ。偶然ではあるけど、エルゼにとっては都合がいい事柄だ。
 身長も体重も測り終えて、やるべきことは一通り済ませたように思える。他に何かすることがあるんだろうか、とカトラは不思議そうな顔をしている。
 当然と言えば当然。これからやろうとしていることは私もトレーナーには伝えていないのだから。彼が事前に知らされているはずもない。
 それじゃあエルゼ、よろしくね。と私が目で合図をすると彼女は小さく頷き、カトラの頭にそっと手をかざして瞳を閉じる。
 途端、エルゼの手が鈍い光を放ち始めた。桃色とも紫ともつかない、淡い色の光。エスパーポケモンの念力が具現化したものなのだろうか。
 エルゼにはこれからのことをカトラにテレパシーで伝えるように頼んである。私が直接説明したところで理解してもらうのは難しいだろうし、説明しきる自信がない。
 面倒な役割を全部エルゼに丸投げしているようで申し訳ない気持ちもあったけど、彼女は嫌な顔一つせずに引き受けてくれている。
 もっとも、エルゼの嫌な顔がどんなものか私には想像がつかない。エルゼが表情を崩すところを見てみたいと思えるくらいに彼女は無表情なのだ。
 しばらくの間黙ってエルゼのテレパシーを受け止めていたカトラだったが、やがて驚いたかのようにはっと目を見開く。
 やっぱり直接あんなことを伝えられたらびっくりしちゃうんだろうな。彼はぽかんと口を開けて、信じられないと言った顔をエルゼに向けている。
「カトラ」
 私の呼びかけにびくっと身を竦ませたカトラは数歩だけ後ずさる。さすがに部屋から出ようとはしなかったけど、明らかに私を警戒しているのが分かった。
 エルゼから伝えられた言葉は私の意向。だとすればそのトレーナーである私も、ということなのだろう。無理もないか。
 これも調査だからと強引に通してしまうのはカトラに申し訳ない。本気で嫌がっているのなら私も強要はしないつもり。
「もう少しだけ協力してくれないかな。大丈夫、痛いことはしないから」
 私はゆっくりと手を伸ばして彼の喉元に触れると、トレーナーの女性がやっていたように撫でてあげる。
 わさわさとした髭が何とも言えぬ感触だった。ふさふさの体毛を蓄えたポケモンを撫でたときとは手触りが微妙に違っている。
 おそらくダイケンキが撫でられて心地よく感じるのはここなのだろう。僅かに彼が目を細めたのを私は見逃さなかった。
 優しく撫でられて、語りかけられて心が揺れたのだろうか。張り詰めたカトラの表情が少しだけ緩んだように思える。
 何度も調査を続けてきた私の直感からするとこの子は協力してくれるタイプだ。エルゼが内容を伝えて、その後に私が接したときの反応で大体は察しが付く。
「ちょっと横になってもらうからね。エルゼ、お願い」
 どうしようか迷っていた感じのカトラ。拒絶されてないならば話は早い。あとは背中を押してやるまで。私はエルゼに指示を送る。
 かっと大きく目を見開いたまま両手を上げたエルゼ。同時にふわりとカトラの身体が浮かび上がる。念力だ。
 エルゼのサイコパワーが強力だとはいえ、私もあまり彼女に負担は掛けたくないのだ。危ないと思ったら無理はしなくていい、と伝えてはいる。
 まあ、彼が浮いたということはそれほど抵抗はされていないのだろう。念力は当てる対象に激しく抗われると効果が鈍くなるからだ。
 カトラが完全に成り行きに身を任せてくれればこちらとしても楽なのだけどね。なかなかそうもいかないか。
 床から一メートル程浮いた彼の身体はそのまま宙を移動し、部屋の隅にあったベッドの上に仰向けで横たえられた。
 カトラの重みでベッドが軽く音を立てる。こうした用途を想定しているのでベッドも頑丈で大きなものを準備している。そう簡単に壊れはしないだろう。
 彼は首だけ起こして緊張した面持ちを私たちに向ける。エルゼはもう拘束は解いているはず。それでもベッドから降りようとしないのは、もしかすると。
「じっとしててね。すぐだから」
 私がそういいながらカトラのお腹をさすると彼は仕方ないな、とでも言いたげな表情で渋々頭を下ろしてくれた。
 その瞳にはまだ私たちへの警戒の色が残ってはいたが、ひとまずは納得してくれたということでいいのだろうか。
 どのみち私にはカトラの言葉は分からない。大丈夫だと判断したら勢いで進めてしまうことも必要になってくる。
 念のため隣のエルゼに視線を送ると、彼女はゆっくりと頷いてくれた。同じポケモンである彼女が首を縦に振ったんだし、いいかな。うん。
 心を決めた私は部屋の一番奥、丁度ベッドの影になる部分に用意していた薄手のゴム手袋を装着する。そして隣に置いていた洗面器に軽く浸した。
 手袋全体に万遍なく液体が付着したのを確認すると私は仰向けになっていたカトラの後ろ足の間、股間の部分に指先を滑らせていく。
 触られたのと手袋のぬるぬるした感触が同時に伝わって、彼の身体がぴくりと震えた。震えただけで暴れる気配はない。聞き分けのいい子で助かるわ。
 大半の水ポケモンがそうであるように弾力があってつるつるとした表皮。下腹部を探るように指先を動かしていると、ある個所で引っかかる。
 あ、あったあった。ここか。普段性器が収納されているであろう、スリット。しかしこれは本当にスリットなのだろうか。雌の筋だと言われても違和感がない。
 トレーナーからは測定前にポケモンの情報を教えてもらうことになっている。カトラは雄と聞いているが、雌だったりしたら困るな。
 まあいくら判別がつきにくいと言っても、トレーナーが自分の手持ちポケモンの性別を間違えたりはしないと信じたい。
 それに雄かどうかはすぐに分かる。私はスリットのラインに沿うように指を何度か這わせると、そっと中へと侵入させていく。
 手袋には薄めたローションをたっぷりと含ませてあるので難なく入った。カトラの表情が若干乱れたが、苦痛は感じていないはずだ。
 何となく顔つきが緩んでいるようにさえ思えてくる。きっと痛くしない限り、この子は私にされるがまま。ここに至るまでの彼の反応を見ていて、私はそんな気がした。
 スリットに侵入させた指を中をかき回すかのようにぐにぐにと動かす。ぬちゃりと湿った音。
 カトラの内側に探りを入れているうちに、程なくしてスリットの外へ僅かに出てくるものがあった。
 桃色と赤色を混ぜたような中間色。カトラは雄で間違いなかったみたいね。一旦それを確認してしまえば、後は力加減を忘れないようにすればいいだけ。
 出てきた部分に指先を絡ませながら私はカトラのそれを扱いていく。右手は性器を、左手はスリットの中を。隅々まで余すところなく撫でまわす。
 そう時間が経たないうちに彼のペニスはぐんぐんと膨張していき、完全にスリットの外へ存在を露わにした。
 元気になるのが早いのは彼がまだ進化したてだからかな。ぴんと張った性器も若々しさを感じる。もしかしたらまだ雌との経験もないのかもしれない。
 だとすれば、人間の私が彼にこんなことをしてしまうのは何だか申し訳ない気もしたが、それにいちいち罪悪感を感じていたのでは前に進めないのだ。
 いくらなんでもエルゼに扱いてもらうわけにもいかないし。まあ、なかなか元気になってくれない雄のときはちょっぴり彼女の念力で手助けしてもらったことはあったけど。
 勃起してくれたおかげで触れられる面積が増えた分扱くのは楽になった。力を入れすぎず、なおかつ性器に刺激は伝わるような絶妙な力加減で。
 耐えられなくなったのか、カトラが小さくうめき声を上げる。ちょっと強かったかな。割と防音はしっかりしてるはずだから、声が外に聞こえてしまう心配はないはず。
 手を動かすうち、私は彼のペニスの先から染み出す雫を確認した。いい具合、そろそろか。私は再びメジャーを取り出して、彼のそれに宛がって計測する。
「21.6センチ、ね」
 私が伝えた値を用紙へ黙々と記していくエルゼ。相変わらずの無表情だけど、ちょっとだけ息が荒くなっていたりする。
 異性のものなると気になってしまうらしく、カトラのそれを時折ちらちらと目で追いかけているようだ。
 らしさを感じることは少なかれど、彼女も雌。本能的な部分での興味はやっぱりあるらしい。
 これで測るべき部分はすべて終えた。ダイケンキの平均サイズについても現在調査中。まだまだデータが足りないのだ。
 私から見た感じだと、彼のものはなかなか立派なように思える。エルゼも満更ではない様子。
 まあダイケンキは身体がそこそこ大きいポケモンだから、私たちの目にも大きく映ってしまうのかもしれないけれど。
 雄ポケモンのペニスの長さの計測を始めたのは研究グループの方針だ。私が個人的に収集しているデータというわけではない。
 なんでも、ポケモン用のコンドームやらオナホールやらを開発して新たなビジネスにする目論見とか。
 当然まだ実現には至っていない。一般的に考えれば馬鹿げた、あるいは狂気染みた発想だと足蹴にされるのがおちだろう。
 ただ、私は斬新で面白い切り口だと思った。その奇抜過ぎる思いつきが今後どう発展を遂げるのか、一人の研究員として見てみたくなったのだ。
 だから私はこうしてグループの方針に協力している。そうでもなければわざわざ計測の難しい勃起状態のペニスを測るような真似はしない。
 こんなことやってるのがトレーナーにばれたら、何かと問題になりそうだし。私も後ろめたさを感じることはある。
 けれどもそれよりは、自身の好奇心の方が勝って行動を起こしている。おそらく同じグループの研究員にも私のようなタイプは多いのではなかろうか。
 本当にポケモンが嫌がっていた場合は強行しないようにしているつもりだ。相手の意志ある程度尊重しつつ、こちらの押しは強く。計測の極意である。
 さてと。計測の目的は果たした。私が少し手を離していた間に、カトラの性器はすっかり勢いを失って頭を垂れてしまっている。
 無理もないか。物理的な刺激で強引に勃起させられたようなもの。精神的な作用が皆無ならばその状態は長続きしない。
 時には勢いがありすぎて収まらなくなった子を処理してあげたこともあるけど、それはほんの一握り。大抵はカトラのようにすぐに落ち着く。
 私はベッドの縁に掛けてあった濡れタオルで彼のスリットの周辺を拭いてやる。ローションが溢れたまま起こすわけにもいかないしね。
 よし、これで綺麗になったかな。まだ少しだけ彼のスリットからはみ出しているものがあったけど、これくらいならいずれ収納されるでしょう。
「お疲れ様。自分で起きられる?」
 カトラに呼びかけると頷くような仕草を見せたので私は数歩ベッドから離れる。カトラは軽く壁側へ反動をつけ、ぐるりと体を反転させ見事床に着地した。
 これだけ動ければ問題なさそうね。多少横に開いたスリットも歩くうちに閉じるはず。身体の内側なので外から見えにくいのが幸いだった。
 自分が何をされたのか分かっているので、恥ずかしがっているのか怒っているのか。どちらともつかない微妙な表情をしているカトラ。
「案外悪くはなかったんじゃない?」
 私の言葉に、彼の目がはっと見開かれる。カトラが視線を逸らしたところを見るとどうやら図星だったらしい。
 ポケモンの雄を元気にさせるテクニックに関してはいつの間にか自信がついてしまった。
 大抵の雄ポケモンならば、勃起状態までになら持っていける気がする。射精となるとちょっと難しいかもしれない。これも職業病のようなものか。
 私は小さく笑いながら、白衣のもう片方のポケットに入れていたハンカチでカトラの鼻先や頬に付いた汗を拭ってやる。
 初めて来た場所で初めて来た人間にあんなことをされれば、そりゃ緊張しないほうがおかしいってもの。今回は穏やかな彼の性格に随分助けられた。
「今日はありがとうね、カトラ君」
 私に続いて隣のエルゼも珍しく小さな声を出して、カトラに感謝の意を伝える。うん、きっと伝えていたんだと思う。
 カトラも最後はちゃんと私たちの顔を見てくれた。さすがに笑ってはいなかったけど、割とすっきりした顔だ。彼なりに納得はできたのかもしれない。
 もう一度カトラにありがとね、とお礼を言って。豪華記念品のスカーフを用意して渡す準備をした後、私は女性トレーナーを呼びに行ったのであった。

  おわり



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最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • ダイケンキのエロイ体型からそんなものを引きずり出すとは、非常にそそるシチュエーションだと思います。ポケモン用の大人用道具の開発という大義名分のために、あんなことが出来るとはうらやましい限り。
    そのまま興奮して収まりがつかなくなるような子の話も、是非詳しく聞きたいと思いました。
    ――リング 2012-09-24 (月) 01:03:11
  • 大会期間中にアニポケでダイケンキがデビューしましたし、何ともタイムリーな作品になりましたね。印象としてはどちらかと言えば水族館の健康診断という感じで、仰向けになりながらただただ扱かれるカトラは疚しいと言うよりも微笑ましかったです。密かに息を荒げるエルゼは受けましたけどねw 

    人間のアレって、調べれば平均値が出てくるのですか?(困惑)
    読んでる時はチン長測定とか変わったアプローチだな程度にしか思って無かったので……カゲフミさんはとてつもなく研究熱心なんですね。何と無く、氏の小説の引出しの多さの一端が分かった様な気がします。 

    決して強制はしないサレット、重量級のカトラを念力でゆっくりベッドに仰向けに寝かせるエルゼ、常に診察ポケモンの事を考えた気配りが行き届いていて、このコンビの冷徹な研究員のイメージとは一線を画する優しさが伝わって来ました。 なんかこう……思わず応援したくなる様な魅力がありますね。
    大会お疲れ様でした。
    ―― 2012-09-24 (月) 23:02:40
  • 全体的に科学的というか神秘的な印象を受けました(何を言っているんだ
    これだけいろんな作品でポケモンが弄られまくってるんですから
    そりゃポケモン用のアイテム(大人)も必要になりますよねw

    それと余談ですけど人間の性器の平均の長さは15cmだそうです
    ――COM 2012-09-25 (火) 00:06:05
  • リングさん>
    ダイケンキはBWでの後ろ姿が特に気になって仕方ないです。
    大義名分があれば何をやってもいいってわけではありませんが行動の理由づけとしては便利なんですよね。
    カトラが発射まで至らなかったのは作者のやる気と尺の問題でry

    二番目の名無しさん>
    まさかアニメに登場するとは思ってもなかったです。割とチョイ役でしたがw
    研究調査の流れでしたので、官能的な表現は極力しないよう淡々と書いたつもりです。
    とはいえエルゼも気になる部分はやっぱり気になってしまうようですね。
    普通に雄と雌をくっつけるだけだと今までに書いた作品と被ってしまう部分がどうしてもでてくるので、大会ならば何か新しいことに挑戦してみようと思い今回の作品を書いてみた次第です。
    苦情が来たらかなり危ない調査なのでその辺はサレットもエルゼも慎重です。強引に進めすぎると逆レイプになりかねませんからねこれ(

    COMさん>
    図鑑のデータって昔のものがずっと使われてるわけじゃないと思うのです。5年10年と経てば生態系も変わることもあるでしょうしね。前半の計測はそういった点に注目してみました。
    後半はまさにそんな感じです。これだけポケモンがあれこれされてるわけですから当然そういう需要も出てくるんじゃないかなーとw

    皆様、レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2012-09-26 (水) 00:08:39
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Last-modified: 2012-09-23 (日) 00:00:00
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