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赤い頬の黄色い悪魔

/赤い頬の黄色い悪魔

官能表現・人×ポケ・視点変更

赤い頬の黄色い悪魔 


 赤いほっぺたに、黄色のチャームな二足歩行の体。そしてギザギザの尻尾の先に、ハート型の模様がその性別を露に――と言いたい所なんだけど。そうは問屋が卸さずに。
 僕の性別は……そう、雌だよ。だけど唯の雌じゃ無いみたいなんだ。
 大体の性別を持つポケモンは、その身体の特徴で本来雄か雌かを見極めるもの。例外な状況を除いて、ね。
 あ。その例外な状況は僕の口からは語らせないで――
 そうそう話を戻すと。いわゆる「ピカチュウ」という種族の場合、雄はギザギザの尻尾が身体的な最大の特徴と成り得るワケで、反対に雌の場合だと雄と似たギザギザの尻尾の先が、ハート型のマークに形付けられているのが最大の特徴になってる。
 これ以外に区別を付ける方法は――夜に。そう夜なんかにね……あぁ、僕の口からはとてもじゃないけど無理だよ。ねぇ、サト――
 コホン。さて何が問題かと問うたならば、それは僕が雌なのに一人称が「僕」……という事じゃ無くて! 僕が「ギザギザの尻尾」なのに雌だと言う事。
 何故なのかは、僕にも分からない。生まれた時(前)からの先天的な異常だという事は間違い無いみたい。
 不便は……そうだなぁ、例を挙げるとミミロルの雌に言い寄られたり、何故か僕をひたすらストーキングし続ける奴らに完全に(未だに)性別を間違えられていたり。
 R団……だったかな。Rって、何の略なんだろうそういえば。
 R――ロリコ……なワケないか。いくら僕が可愛い雌だからって、そりゃあねぇ。
 まぁ奴らの手持ちの、一般人語を理解する「無駄に」特異なニャースは、その気が無くもなさそうだけど……
 まぁ、そろそろいい加減、懲りて欲しい所ではあるかな。
 正直、邪魔なんだよ。僕とサトの仲を幾度と無く(無意識に)引き裂こうと空回りしてる彼らは。本当、良い迷惑だ。……今度、十万ボルトなんてもんじゃなく、雷でも落としてやる。そうすれば、全治一週間以上負わせる事が出来て――
 ゲフン。ゲフン。
 さて、サトと言うのは――僕の世界一大切な親友、兼パートナー。
 でも、お互いにパートナーという意識は全く存在しない。他のサトルの手持ちのポケモンは、皆友達って事になってる。
 一見変わったトレーナーかも知れないが、その実力は未知数かつ発展途上にあるから、変にストーカーされてる僕なんかよりよっぽど優れた逸材なんじゃないかと(僕だけが)密かに思ってる。
 そして――これは僕の完全なる一方通行ってのは分かってるんだけど。
 僕はサトの事を――ずっと前から「想ってる」。掛け値無しに。
 いいんだ。報われない恋だとしても。好きになってしまった事実は変えることが出来ない。運命なんて、得てしてそんなもんさ。
 思えば、旅を始めて間もない頃から、僕は多くの仲間の(異性)のポケモンと出会ったというのに……何の感情も抱かなかった。
 友情はまた別として。特に仲が良いのは、なじみの深かった、フシギソウのシードとゼニガメのコウ。それに進化してイヤにプライドが高くなったけどやっぱり良いヤツなリザードンのリッド。
 皆、今は離れ離れだけど大好きだった。否、大好き『だ』。
 皆元気に過ごしているだろうか……
 今も昔も雄が大半を占めるサトの手持ちだけど、やっぱり友情はすぐ育めても、何故だか恋心が一切湧かないのは何故だろう。
 今の手持ちの準エースのブイゼルのリゼルなんて、カッコイイとは思えるんだけど……そこからの感情が特に湧いて来ない。
 い、いやでも雄に興味が無いからといって、雌に興味が有るワケでももちろん無くて。
 でも自分でも変わってるとは思う。尻尾を含めた、僕の特異な体質の為なのか……
 僕は尻尾の件の他にも変わった所があって。それは僕の能力、もとい個体値について。
 僕の個体値は、サトが仲間と会話してるのをいつかに拉致ったニャースに翻訳して貰い、その事実を知る事が出来た。ニャースにも余計な情報を与えてしまったけど、それは仕方が無かったかな。殺すワケにもいかないし……ひたすら邪魔なヤツなんだけど、憎めないヤツでもあるから。
 そして僕の件に話は戻って。僕の個体値は、攻撃・特攻・素早さが異様に高く、データ計測許容範囲を超えてるみたいで、何だか自覚は未だにまるっきり無いけどなんだか凄いらしい。
 でもいい話ばかりでは無いのが現実。
 それによって、僕の体にはいくつかの異変が有り、分かっている事は防御・体力・特殊防御の個体地が異様に低いことらしいという事実だった。
 なるほど。道理で、長旅を続けてるにも関わらず、勝敗が全然安定しないワケだ。自分で言うと何だか虚しくなるね……それでも、エースの地位は揺るぎ無いから、そこにサトの信頼と愛情を感じれるワケなんだけど。
 でも、ね。
 信頼は良いとして、愛情の件。これはサトにとって、いわゆるかけがえの無い友達。と言う物だよね。うん、それには凄く満足してる――――筈だったのに。自分を、抑えてたのに。

 ***

 サトは、僕にだけミドルネームを付けてくれてる。それはポケモンにとって、主人またはトレーナーからの最大の名誉なこと。
 僕の名はジャン=リュック=ピカチュウ。
 普段はピカチュウと呼ばれてるけど、サトと二人っきりの時だけ、「ジャン」と彼は僕の耳元で――囁いてはくれないけど、そう呼んでくれるのは確かで。
 リュックは、主にポケモンの仲間内で呼ばれている名前。でも僕はリュックに関しては正直そんなに気にいってはいない。だって、リュック→荷物入れ→自分、荷物みたい→ピカチュウは荷物。の様な図式が頭の中で展開される事がままあるからだ。
 そんなのは、イヤだ。
 大体サトが呼ばない名前なんて……いくらミドルネームが名誉ある名前でも、当の本人が呼んでくれないんじゃ……
 なんて、ワガママにも程があるか。感謝しなくちゃいけないんだ本当は。「人を好きになる」という事を教えてくれた彼に対して――

 僕は、旅を始める前。かなり重度の人間恐怖症を患っていた。
 これは後にニャースから教えて貰った事で、とどのつまりはこの病気は名の通り、人間に異様な恐怖感を誰かれ構わずに抱いてしまう病気だった。
 でも当時の僕はその病気を特に意識しては無く、これが当たり前の事だと思う様にいつしかなっていた。
 R団はまだマシだと思う。世の中には、えげつない違法な手段を持ってしてポケモンを捕まえようとする輩が少なからず居る。そんな奴らに標的にされたポケモンの中の一匹が、僕だった。
 余りに恐ろしかった為か、「その時」の記憶は今は一切存在しない。
 ……サトのおかげでもあるんだ、もちろん。
 彼の命を張った、無償の愛のお蔭で、今の僕がある。性別の違いを後に知った時も、一瞬の驚きはあったものの、イヤな顔一つせず僕を唯一無二に親友として、その傍らに置いてくれた。……僕のこの世で最も嫌いなモンスターボールにも一度も入れずに。

 感謝、してるんだ本当。
 そして、愛してる。
 サトが一生気が付かなくても、その気持ちは揺るぎ無いと思う。いや、絶対揺るぎ無い。

 だから――
 だから僕は――

 ***

「サ、サト……」
 僕は、ある日のキャンプ中の夜更け、一人寝床を抜け出し、日々拭われる事の無い想いを吐き出す為に、ある行為――自慰に耽(ふけ)っていた。
 いつも苦しかった。これが初めてというワケでは無い。だけどいつもボールにも入らず常に密着してる事の多い僕にとって、この時間帯にこうして想いを吐き出して置かなければ、日中に催してしまたら只事では済まされないだろう。
「ダ、ダメだよ……そんな所」
 仲間には見せられない、僕の醜態。皆寝息をたててるのを余所目に、僕は行為に没頭せざるを得ない。
 人間の仲間の女性を見ると、羨ましくもあり、また嫉妬心が湧き起こる。
 ……サトの貞操を、奪ってないだろうな。と、ボールに入って無いのをいい事に、日々の監視も怠っては無いのだが。
 どうにも心配でたまらない。
 たまらないと言えば、溜まらないで欲しいのが僕のこの性欲。
 この淫らで汚い行為に心では悪態をつきながらも、身体と本能は快楽を求めて仕方が無い。
 今宵も月に見守られながら、僕は自慰をじっくりと堪能する。
 月の光に照らされた、自身の愛液で濡れた手が、厭らしく鈍い光を放っていて何故か直視する事は出来ない。罪悪感を、光が浮かび上がらせる様に感じるからなんだろうか。
 でも止められる筈が無かった。
「はぁ……あぁ……」
 股の割れ目に入れた指が、熱くなってるのか。それとも裂け目が熱を帯びているのか……
 中指を割れ目沿ってなぞると、僕の身体がビクッ、と上下に小刻みに動く。
 割れ目の中に指を出し入れすると、僕の身体は甘い吐息を口から漏らし、その割れ目からは甘い愛液がしたたり地面の芝を濡らす。
 心地よく吹く風は――火照りを鎮めるには、まだ早く。僕はその中指の動きを、まるで電光石火のごとく加速していく。
 その速さにつられ、僕の喘ぎは大きくなる。そして心臓の鼓動は、まるで神速のようだった。
 極みに達するまで、もうそう時間は必要無いと残り少ない理性で考えていた。
「――!」
 ふと、忍び寄る誰かの足音。
 達するまで後僅かだったのに、と思いつつ、急に現実に引き戻された僕は予想外の突然の事態に慌てて言い訳を考える。
 ポケモンならまだいい――けど、もし仲間の人間の誰かだったら……
 
 神様。どうかサトではありません様に――――

 ***

 神様は、意図も簡単に僕を裏切った。
 近づいてきたのは――そう、サト。
 僕は濡れた手を急いで地面の芝で拭き取り、荒ぶっていた呼吸を出来るだけ整え、心苦しくも彼が近づいてくるのを冷や汗を流しながら待ち耐えた。
 数秒間の間が、何分にも感じる――
「ピカ――ジャン、なのか? どうしたんだよ一体?」
 心配してくれているのだろう。言葉は直接通じなくても、長く付き合ってきた仲。大体の彼の伝えようとしてる言葉は、今はもう理解できるレベルにあった。
 サトの方も同じで、僕の言おうとしてる事はいつもほとんど間違無く汲み取ってくれる。けど、どうも人間は言語理解力がポケモンよりも弱いらしく、僕達ポケモンの方がその言葉を理解するのには長けている事が多い。
 信頼関係等も、もちろん大きく影響はするのだろうけど。
「一人でこんな所に……眠れないのか?」
 サトは言葉を発した後、僕のすぐ隣に腰掛けた。
 ……その辺りは、不味い。
「ん? 何かこの辺り、濡れてる様な……」
「ピ、ピカ!」
 僕は『き、気のせいだよ』と何とか彼を誤魔化そうとし、注意を僕の方に引き付けようとした。
 それが大きな過ちだったとは、この時点では気づける筈も無かったけど。
「! 顔が赤いぞジャン! ――体も熱いし、大丈夫なのか?!」
 暗闇に目が慣れてきてたか。……駄目だよ、今僕の体に触れちゃぁ。色んな意味でイケナイ――
「待ってろ。すぐにタカシ達を起こして――」
 ……。
 僕は、行こうとする彼を引き止めた。
 皆に騒がれたりしたら余計に面倒な事になるし、それに、何だか僕はサトとこのまま離れたくは無かった。
 膝の上にのって、僕は彼に甘えた。
 何故急にそうしたくなったのかは分からない。引き止める方法は、他にいくらでもあった筈だ。なのになんで――
「ジャン? 急にどうし――」
 彼の言葉が突然途中で途切れる。何かに気づいた様な……
 サトは恐る恐る手を僕の股に滑らせてきて、事を確認した。
 完全に、僕の醜態が暴かれた瞬間だった。
「ジャン――お前……」
 もう、駄目だ。おしまいだ。
 サトにばれるのを心のどこかでは分かっていた筈だったのに――なんで?
 もう、とにかく終わりだ。
「ピカ!!」
 僕は彼の手を振りほどこうとし、彼の手の中で必死にもがいた。
 だけど。彼は何故だか僕を離しはしなかった。
 余りの必死さに、微量だが電撃が漏れる。それでも彼は苦痛な顔一つせず、僕をしっかりと掴んで――抱いて離しはしなかった。
「ゴメンな。気づいてやれなくて」
 彼の優しさが、その言葉と腕から僕に染み渡ってきた。
 サトはどこまで分かっているんだろう。僕が誰を想って、こんな行為に耽っていたのかを――
「誰が好きなんだ? リゼル辺りか?」
 彼は屈託の無い笑顔でそう話した。リゼル達は確かにカッコイイけど、違うんだ。僕が本当に好きなのはね――――
「ジャンも、知らない内に大人になって―― !!」
 僕は彼の口の動きを、自らの口の動きで唐突に遮った。
 もう途中下車は出来なかった。
 でもこのまま勘違いされるのも、同じくらい怖かったから。
 僕は、今宵未知の領域に決行する事と、図らずもなった――

 *** 

 どれくらい、そうしていただろう?
 時間で言うと十数秒くらいかな? でもそれよりももっと長く感じるのは、これが余りに緊張する行為だからなのか。
 その際中、サトはただ瞳を閉じて黙って僕を自然に受け入れてくれた。
 危惧していた、嫌な顔なども一切せずに。それが何よりも、僕にとっての安心となった。
「ピ……カ……」
 先程の余韻が僕に残っていたせいなのだろうか。
 四肢に力は入らず、唯、下半身がじわじわと濡れて行くのがはっきりと感じられた。
 こんな淫らな僕でも、果たしてサトは、本当に僕を好きになってくれるんだろうか?
 不安が一瞬脳裏を霞める。
「ジャン……ちょっといいか」
 不意にサトルが僕の下半身に手を伸ばす。
 ――ダメだ。触られたら、触られたら、僕……
「ピ、ピ……カ」
 気持ちいい。サトは本当に初めてなんだろうか、って思えてしまう程に。
 上手で、それでいて丁寧で。
 まさか他の誰かと、もう……
 そう考えると、一旦昂ぶった気持ちが何だか萎えて来てしまった。
「……不安なのか? 俺も初めてだから、その気持ち分かるよ。ジャン」
 サトは穏やかな表情をしていた。でもその目は真剣だった。瞳の奥は僕しか捕らえていなかった。
 長年の付き合いだ。僕には分かる。
 僕は電気を扱うには長けてるけど、念動力まで駆使出来る程器用なポケモンじゃ無い。
 だけど、君が僕だけを見てくれてるっていうのは充分分かった。
 ――ありがと。
 だから、もっと触れてもいいんだよ?
「何だか表情が良くなったな。良かったよ」
 言葉を発したサトの、手の動きが加速する。
 キスも欠かさず、なおかつ僕の核を器用に攻め上げる彼。
 そこに余計に惚れてしまうのは、(おんな)だからなのか。
 何にしても、気持ち良過ぎて、もぅ……
「拙い知識でゴメンな? もし気持ち良かったら、何か返事を―― っておわぁ!」
 僕はサトの服に、愛液を思い切りぶちまけてしまった。
 体格差があるとは言え、今日二度目の放出とは言え。
 サトのお腹から首に掛けてを汚すには充分過ぎる量と勢いだった。
「ピカ……」
 僕は依然サトの腕の中で、サトに対して申し訳無く思いながら、一匹(ひとり)うなだれていた。
「ピ……」
 僕は涙が込み上げて来た。ガマンするべきだったのに。僕一人だけ気持ち良くなってしまって。
 本当に申し訳無くて、本当に――
「ジャン……」
 僕の名を呼ぶサトルの表情は、いつもの様に穏やかだった。
 そしてその可愛らしい舌で、僕の涙を掬ってくれる。
 な、何だかちょっぴりくすぐったいよ? サトル。
「あ、笑ったな。お前は笑ってる時が一番だぜ?」
 はっきりと理解出来なかったその言葉。
 でも何故だか嬉しかった。この状況で褒められてる事が分かったから。
 ――ダメだ。
 また……またこれじゃぁ、僕のココが濡れて来ちゃって――
「ピ……ピ、カ……」
 呼吸が、また荒くなる。
 それをサトは見逃さなかった。
 サトは唐突に、その下半身に(まと)っている着衣のチャックから、雄を向き出しにして僕の秘所に宛がおうとして来た。
 無論。僕に拒否する意思は全く無い。
 むしろ。早くその逸物を僕の物にしたくて、雌の欲望が疼いて疼いて仕方が無かった。

 ***
 
 サトの肉茎が僕の花芯を貫こうとしているその最中。
 どうもサトルの挙動がぎこちない様に思えた。
 ふいに秘所では無い、もう一つの穴に鈍い刺激が走った。
「ピ、ピッカ!!」
 僕は少々怒って、危うく軽く電撃を浴びせる所だった。
 でもそれと同時に嬉しかった。わざとではなさそうだし、本番に慣れてないという事なら例の裏付けも取れるし、ね。
 仕方ない。いや別に慣らしてからなら、こっちの穴でも僕は別に……
 いやいや。僕は雌。せっかくの雌特有の穴が付いてるんだから、そっちを使って貰いたいのが本音ではあるかな。
 ――慣れてないサトルも可愛いけど、僕、もう限界だよ。
 サト? 早く――入れて――
「ここ……か!」
 ふいに花芯に何とも言えない衝撃が走る。快感と痛みが入り交ざった、何とも言い難い感じ。
 僕はその未知の感覚にただ戸惑っていた。――初めは。
「ピ……ピ……」
 次第に余裕が出始める。身体的にも気持ち的にも。
 怖くは無い。サトの脈動に合わせ僕の花が彼自身を包み込むのが分かる。
 体格差もそんなには気にならなかった。繋がれた嬉しさが苦しみという感情を麻痺させてた様に思える。
 サトも、快感に悶えた顔をしてくれていて、それがさらに(おんな)の情欲を掻き立てる物たなったのは間違い無い。
「ジャン……いいよ、ジャン……」
 サトが僕の名前を連呼する。だから僕も声――喘ぎで応える。
「ピカぁ! ピ、ピカぁ!」
 サト――サト――
 もっと突いてよ。もっと呼んでよ。
 呼応するから。何度でも。あぁ…………
「ジャン……もぅ」
 サトの体動のペースが速くなる。僕の秘所もそれに合わせて収縮を強め、よりそこを濡らす。
 呼吸の乱れが激しい事から、本能的にサトの絶頂が近い事が推測出来た。
 ――ガマンしないで?
 僕の中にいっぱい出してよ。ヒトと違って、何も気にしなくていいんだから、ね。
 いっっぱい――出し、て――
「リュック! リュック!!」
 ここでその名前を呼ぶんだ。卑怯だよ? サトル。
 僕の方が本番は余裕があったのに。その名前を今サトに呼ばれたら、僕、それだけで先に――
「ピ…………ピカぁぁぁぁ!!」
 ……。
 あっ……サト……
「で、出る! リュッ……うっ……」
 サトのがいっぱい僕の中に入ってくる。
 体格差のせいか、サトルの量が多かったのか。
 サトのが、僕の中からこぼれ落ちていく。サトの服の一部を白に染め上げて。
 くぅ……気持ち良い。
 温かいよ、サト。血も出なくって良かった。
 サトを無駄に汚さなくて済んだし。痛がる顔は見せたくなかったから。
 でも、それは(杞憂)*1に終わった。
 良かった……サトの気持ち良さそうな表情が見れて。僕も、初めての君と繋がる事が出来て。本当に――
「……リュック。大丈夫、か?」
「ピカ!」
 僕は余韻に浸っていて若干呂律が回らないと思ってたけど、意外としっかりと返事をする事が出来た。
 ――ふと空を見上げると。薄くオレンジにそこに在る空が染まって、朝の訪れを段々と迎え入れようとしている所だった。
 ホーホーはもう鳴いていなくて、代わりにムックル達が辺りで鳴き始めていた頃合いだった。
 何故だか、とてもすがすがしく感じられた。
 (だいだい)が見守る僕らは、とても満足そうな表情をしていたに違いない。
 ね? サト?
「……気持ち良いな、リュック。
俺、お前をもう親友だとは思わない」
 言葉を発したサトは、僕のミドルネームを呼んで、僕を抱きしめて離さなかった。
 ムックル達の囀り(さえずり)の中で、僕らは新しい繋がりを手にした事を実感していた。

 今、此処に。
 種族の隔たりを越え、親友とは違う別のパートナーへと変わりつつ在る、一人と一匹のトレーナーがそこには居た。
 ヒトとポケモン。種族は全く違えど、等しい生き物である事に違いは無い。
 それが僕らの「答え」だった。


 ― fin ―


 ― After (s.side) ―

「おーい! サト~!!」
「ピカチュウ~? 何処行ったのー?!」

 声が、聞こえる。
 何だか肌寒い――
 ここは? キャンプじゃ無い……俺は何を?
 隣にはジャンが寝てる。とても気持ち良さそうに。俺にその愛らしい顔を寄せて。
 ――愛?
「!」
 そうだ、俺はジャンと……ジャン、と……
「あ! おーい、ヒカル~!! こんなとこに居たぞ~~」 
 そう仲間の内のタカシがヒカルに呼ぶと、二人して一斉に俺たちの様に駆け寄ってきた。
 ……まるでケンタロスの突進の様に。
「はぁ、はぁ。何やってたんだよ! 心配したんだぞ? 朝早くヒカルが目をたまたま覚まして、急に二人とも居ないって大声で騒ぎだすから――」
「大声、は余計よ! もぅ、心配させないでよー。どっかの輩に寝込みを襲われて連れてかれたかと思ったじゃない?」
 あのな……寝込みを襲われて連れて行かれるのは、相手がロケット団以外なら、まずはヒカル。お前が一番ターゲットになりそうかと思われるんだけど。
「ピカチュウは……寝てるのか。しかし何だって二人でこんな所に?」
 答えられる筈が無い。
「そうよ! 教えなさいよ!」
 尋問か? まぁそりゃ心配するはな。朝起きて、俺らが居ないとなれば、な。
 しかし真実を言える筈も無いし。
 はぁ……どうしたもんか。
「ピ、カ」
 お、ジャンが起きたか!
 ……すっごい眠そうだなオイ。目の下に珍しくクマなんて出来ちゃって。
 タカシとヒカルが、ジャンの元に歩み寄って、色々話しかけてる。
 ジャンも寝ぼけながらも、段々とテンパって来る様子が見て取れる。しきりに俺にアイコンタクトを送ってくるしな。
 さて。
「えーヒカル、タカシ。実を言うと俺らはだな」
 タカシとヒカルがいやに食い付く。まぁジャンの困った顔を見るよりよっぽど良いけど。
「俺らは……そう、日の出を見に来ようとして、さ。でも案の定、二人して寝ちゃった。っていうオチ」
 ……誤魔化せた……か?
「んーなるほどなぁ。まぁ今度からは一声ちゃんと掛けてくれよ? 全く……。
ちょっと早いけど、朝食の準備するから三人とも手伝ってくれよ。先に行って準備してくる」
 タカシは納得した表情で、一足先にキャンプに戻って行った。
 おかしい。
 ヒカルは無言のままだ。何か言いたそうな表情もしているけど――
「その服のシミ、何?」
 痛恨の一撃だった。いや痛恨の一言だった。
 ジャンも俺もお互い寝ぼけが過ぎてたみたいで「処理」の事まで一切頭が回って無かった。
 最悪、下ろしたチャックなんかはきちんと元に戻っていたから弁解は多少楽かもしれないが、いやでも雨も降っていないのに確かに何で服が濡れるんだろうな。ははは……
「そ、そうだ! お前らが寝てる間にだな。急ににわか雨が降ってだな……それで」
「だったら全身濡れるでしょ? 普通」
 ……ヤバい。
 ジャンもその顔を伏せて、ヒカルの顔見ようとしない。
 それぐらい今のヒカルは負のオーラを何故か開放していた。
 まるで悪の波導の様に――
「あ、勘違いだ! えっとだな、えっと、えっと……そう。ピカチュウ! ピカチュウが俺の上で寝ながら涎垂らしちゃってさ!! 参ったよなーもぅ、コイツにはさ」
 ……ジャンの表情が曇る。こちらを見る目が痛い。恐い。電撃をほっぺに溜めないで、ゴメンなさい。
「俺の上……ね。まぁいいわ。さっさと朝食の支度手伝いに行かないとタカシがうるさいわよ」
 そう言って振り返ったヒカルは、駆け足でタケルの元へと向かって行った。
 何故だろう? 去り際のアイツの声が少し震えていた様に感じたのは俺の気のせいなんだろうか?
 
 置いてかれた俺らは、少し落ち着いてから合流する事にした。
 冷や汗と動悸が収まるのを待ちたいのと、ジャンと少しスキンシップをしてから、というのもあったから。
 ジャンは先程の言い訳に不服なのか、まだ拗ねている。
 でもそんな横顔も可愛い。ましてや昨日の今日だ。内心では、俺をより好きになってくれたに違いない。
 その証拠に、ギザギザの尻尾がフリフリと左右に揺れている。
 だから、俺は余りにその姿が可愛らしくて彼女を抱きしめてやった。
 初めは怪訝そうな表情をしていた彼女も、かるく口付けを交わしてやると、その赤い頬が、より赤く染まるのが見て取れた。
 ――おっと、イケナイイケナイ。
 早く戻らないと、今度こそ言い訳が利かなくなったら困るからなー。
 なぁ……ジャン?
「ピ」
 ? 何でまだ若干不満そうな顔してるんだ?
 キスが軽すぎたか? それとも愛撫が必要――
「ピ! ピカチュ!!」
 ……。
 ……。
 なるほどな。
 そういう事、か。
「…………リュック! 行くぞ!!」
「ピカァ!!」
 
 こうして俺達はキャンプに戻る帰路を、じゃれ合いながら進んでいた。
 もう日はすっかり上り始めていて、辺りは完全に「朝」だった。
 照らす日の光が、どうか俺達の今後を見守って下さいます様に――なんて。柄にも無くふと蒼空を見上げて、そう祈った。
「? ピカ?」
 リュックが俺を不思議な顔で見つめる。
「何でも無いよ。――さぁ、行こうぜ!」 

 
 俺達の旅は、今、此処からまた新たに始まろうとしていた。

 
 END


 

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  • グッジョブ!
    ――ハクマ ? 2012-06-08 (金) 22:57:34
お名前:

*1 取り越し苦労的な

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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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