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赤い彼女三節

/赤い彼女三節

やっぱりつまらないところで終わってしまいました。すいません…


外には日射しが激しく照りつけている。寝起きの俺には眩しすぎる程の快晴だ。俺は家の鍵をかけるとカバンを自転車の前カゴに置き、自転車の鍵を開けた。
「…っぱりだりぃわ…ほんとならもぅちょっと寝れてんのに…」
そう俺は一人で愚痴を言いながら自転車をこぎ始める。
土曜日の朝っぱらだからだろうか、いつもの朝に比べて通行人はあまりいない。やはり皆休みの朝はゆっくり寝てるんだろう。
そう思うと思わず大きなあくびがもれてしまう。
自転車をこぎ始めて20分もするとレウロ港が見えてくる。その先には膨大な青い海が広がっていた。
まったく港が家から近い事だけでも不幸中の幸いだ。
俺は港に着くと自転車を小さな駐輪場にとめた。
辺りを見渡してもやはりほとんど人はいない。
俺は自転車に鍵をかけると港にいる受付に声をかけた。
「すいません、アルレ水島行きのチケットはいくらっすか?」
そう言いながら俺はカバンから財布を取り出す。
「アルレ水島行きの片道切符は2250円になります。」
『2250円…往復で4500円か。親父は全くぴったりの交通費を俺に渡してんだな。少しくらい余分に渡してくれてもよかったのにケチ親父が…』
そんな事を思いながら俺は金を受付に渡した。
「はい。」
「3000円お預り致します。750円のお返しになります。」
「ども、それと船はいつ来るっすか?」
俺はそう言って受け取ったチケットをポケットにしまい、財布に釣り銭をしまってカバンに入れた。
「次のアルレ水島行きの船は9時です。こちらの時間表を渡しておきましょう。」
「あざ〜す…にしても9時か、後10分ぐらいあるな。よし…」
俺は携帯電話を見ながら受付から受け取った時間表の書かれた紙をカバンにしまうと、ラキの入っているモンスターボールに手をかけた。
「出てこいよラキ!海だぞ!」
俺はそう言ってインカムの電源を入れるとボールのボタンを押して空中に放り投げた。
そしてポンッ、という音と同時に中から勢いよくラキが飛び出してきた。
「あれ?もう着いたの?随分早くない?」
ラキは着地するとキョロキョロと辺りを見渡し始める。
「いや、船が来るまで後10分くらいあるからさ。ここ来るの久しぶりだろ?」
俺もそう言ってボールを再び腰にしまうと、辺りを懐かしむように見渡しながら海の近くに歩いていく。そしてそのあとを俺と同じ様に辺りを見ながらラキもついてくる。
俺達が住んでるレウロシティにある港なのに、ここに来たのは随分久しぶりだ。
俺達にはこの何とも言えない潮の香りがやけに懐かしい。
「お前がまだイーブイだった頃はお前を自転車のカゴに入れて学校帰りによくここに来てたよな。
『海にいるポケモンを見るんだ!』
って言いながら必死こいてここから2人で海覗きこんでたっけな!こんな所にポケモンなんてエサでもなけりゃ来る訳ねぇのにな!」
俺は海を覗きこみながら昔の自分を思い出して思わず声を上げて笑ってしまう。
笑っている俺を見て、ラキも俺の隣で海を覗きこむ。
「ボクがイーブイだった頃は進一が学校に行く時以外は移動の時だってずっとボールから出しててくれたのになぁ…」
ラキは笑う俺に対して若干文句をつけるような目で俺を横目で見てくる。俺は予想外の反応に少し戸惑ったが、ふぅっ、と溜め息をついて軽くラキを睨み返した。
「あのなぁ…お前はもぅイーブイの時と違って体もデカいしチャリのカゴに入るにはボールより窮屈だろ…」
「まぁそうなんだけどね!でも自転車の前で風を浴びるのはすっごく気持ち良かったなぁ。」
ラキは結局いつも俺の一言で意見が変わる。いい加減意見が変わるならめんどくさいから文句を言わないでほしい…
そしてそんな話をしていると海から白い何かが近付いて来る。
「ねぇ進一、あれ何かな?」
「ん?あぁ…船だな。そういやそろそろ9時になるっけな。にしてもなんか結構でけぇな…」
ラキの目線の先には定期船の割にはかなり大きめの白い立派な船が近付いてくる。
そしてかなり近くにくると段々ゆっくりになって港からコンクリートの出っ張った部分の横に停止した。
「お待たせしました!アルレ水島行きでお待ちのお客様はこちらの乗り込み口からお乗り下さい!」
受付がそう叫ぶと朝来た時と比べてかなりの人が列をつくって並び始めた。
俺もチケットをポケットから出すとラキを抱えて列に並ぶ。
「なんか随分人が増えてんな。土曜で子供連れが多いから俺なんかと違って純粋に観光に行く人が多いんだろな…はぁ…」
そう言うと俺の口から思わず深い溜め息が漏れてしまう。
「まぁいいじゃない!ボクは進一との冒険は楽しいよ!」
面倒臭がる俺に対して笑顔でそう言ってくるラキを俺は顔をぐいっと近付けて軽く睨む。
「だ・か・ら!冒険じゃねぇって!それにお前が楽しくても俺は面倒臭いの!」
「分かったよう!それにしてもボクをボールに戻さなくていいの?」
「ん〜、こんだけデカい船だったら別にラキぐらいなら入っても大丈夫じゃないかな。」
俺が船を見上げながらそう言うと、ラキの表情が満面の笑みに変わる。
「わ〜い!やったぁ!」
ラキは俺の言葉に声を上げて喜んだ。
「でも静かにしてろよ。それと勝手に船の中を走り回ったりするなよな。」
「分かってるって!」
俺は嬉しそうにそう言うラキを左手で抱えて右手で受付にチケットを渡すと、チケットの下の部分をちぎって再び俺に渡してきた。
そして船の中に入ると俺のテンションはラキ以上に高まった。
「うは!すげぇ!なんかめちゃくちゃ良い感じじゃん!」
そう言いながら俺はチケットに書かれた席の番号を探した。
「えぇと…Eの5番席…Eの5番席……あ、ここか。ラッキ!窓際じゃん!」
俺は席に座ってチケットをカバンにしまうと、カバンを下に置き、ラキを膝の上に乗せて窓の向こうを見た。
港の向こう岸まで見渡せる程の大きな窓。動き出すとかなり良い景色が見れそうだ。
「良いね良いね最高じゃん!」
「うん!早く動かないかなぁ?」
俺達はそう言いながら窓に張りついてずっと外を見ていた。
『まもなく出発します。席について下さい。』
船内にアナウンスが響き渡る。それを聞いて立っていた人が次々と席につく。そしてしばらくすると船のドアが閉まる。まもなく出発の様だ。
『出発します。ご注意下さい。』
そのアナウンスの後に船がゆっくりと後ろ向きに動き始めた。
子供達は皆窓際にくっついて外を眺めている。
俺とラキもそうなのだが…
「うおっ!動き始めた!」
「ほんとだ凄い凄い!」
俺とラキは更に窓にへばりついて他の子供以上に外に夢中になった。
そして船ら少し離れた所にくるとゆっくり旋回し、前向きに動き出す。
段々船の速度が上がるにつれ、俺のテンションも上がっていく。
「おおおぉっ!すげぇ!半端ねぇなこの速さ!マジスゲェよ!!」
俺は窓に額をおしあて、声を張り上げてしまう。なぜ同じ様な海の景色を見るだけでこんなにテンションが上がるかが自分でも分からなかったが、この時の俺は窓の外に夢中過ぎて、他のものが見えていなかった。
「ヤバイヤバイヤバイ!!船ってこんなに早いんだ!!」
「ねぇ進一…」
この時の俺はテンションが上がり過ぎていてラキの声も全く聞こえていなかった。
「この揺れ方もたまん…」
「進一ってば!!」
俺は思わずはっ、とした。ラキの大声でやっと我に戻る事が出来たのだ。
「んだよッ!良いとこだったのに!」
俺がそう怒鳴るとラキが無言で何か合図するかの様に目でくいくいっと後ろを見る。
渋々辺りを見渡すと、俺は思わず言葉を失なってしまった。
乗客全員が嫌な目で俺に注目している。テンションが上がり過ぎて大声を出しすぎてしまっていたのだ。
「え…あ……はは…すいません…」
赤面する程恥ずかしくなった俺はかすれる様な声で謝ると静かに前を向いた。
すると乗客も前を向いてくれたが、やはり恥ずかしくてたまらない。
「おい!何で言ってくれなかったんだよ!」
俺は声のトーンを最小まで下げてラキに問い掛けた。
「何度も声かけたけど進一がこっち向いてくれなかったんだって!」
同じくラキも声のトーンを下げてそう言ってくる。でも他にインカムをつけている人はいないからそんなに小声で喋らなくてもいいと思うが…
「そうかよ悪かったよ…」
「にしても船に乗る前はボクに静かにしてろよなんて言ってたくせにうるさかったのは進一だよね…ププ……」
ラキの言う事はもっともだったが、最後の吹き笑いにイラッときた俺は赤面しながら無言でラキの頭を割とキツめにどついた。
「痛ッ!ほんとの事なのに何で殴るのさ!」
ラキはそう怒るとスネてそっぽを向いてしまった。
そして俺は静かに外を見ていると、段々海の向こうから何かが見えてくる。
アルレ水島だ。
『まもなくアルレ水島に到着いたします。』
そのアナウンスと同時に船の速度が段々下がっていく。
「これがアルレ水島かぁ…」
「楽しそうな島だね…」
俺とラキは段々見えてくるアルレ水島に思わずみとれてしまう。
海から見るアルレ水島はまるでインテリアの置物の様に美しい。
そして俺達がみとれている間に、船の速度は更に減速し、アルレ水島の港から出っ張った部分の横に停止した。
『到着いたしました。足下にご注意してお降り下さい。』
そのアナウンスと同時に船のドアが開き、次々と人が出ていく。
そして俺とラキもアルレ水島の地面を踏みしめた。
「ここが…アルレ水島…?」
俺達は辺りを見て思わず立ち止まってしまった。


赤い彼女四節[グ]へ続きます。


またしてもつまらないところの話でしたが感想や指摘があればお願いします。



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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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