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貴方は今、大切な人がいますか?

/貴方は今、大切な人がいますか?

赤いツバメ ?の短編二作目です。ちょっとした思い付きで作ってみました。

今回はポケモンのみの世界で、ポケモン=人という言い方です



『ようこそ皆さん、ムウマージの不思議なお話の部屋へ・・・どうぞそんなに御硬くならずに
 ・・・早速ですがお話に入りましょう。

 不思議といえば世の中には不思議な事って探すと結構近くにありますよね。特にポケモンの世界は不思議なことだらけです。
 そのひとつをかたっていきましょうか・・・勿論本当にあった新しい話ですよ。

 今回のお話の主人公は、普通のサービス業に霊媒がちょっぴり掠っている少し変わった会社の社員で若い二十歳のブラッキー。名前はオルクさんです。
 このアームシティの2丁目にはお墓があり、それが噂で「あそこは出るらしい」とか色々いわく(・・・)つきだったそうですよ?
 目を閉じていてください。じゃあまた後でお会いしましょう。』


そういって目の前にいたムウマージは自分たちに怪しげな波動を送り「スッ」と消えていなくなった。



薄暗い曇天の大雨の日。
それもまだ午後になってもいないのに結構な暗さであった。

「(今日は仕事が午前中に終わったから久々に家でのんびりできるな)」
久しぶりの仕事の早上がり。家に帰ってから何をしようかな
と考える前に会社の頼みで行かなければならないところがある。

こんな天気の中でこの道は歩行者などの人気は結構少なくなるもの。その理由はその道路の隣にある墓地がいわく(・・・)つきだからとは分かっている。
だが、その最近、人が避けるというその場所が今の僕の向かう目的地なのだからわざわざ行く。
会社の頼みとはそこに行くことなのだ。

今この道にいるのは真っ黒い傘を差した真っ黒い僕だけ・・・
僕は元々小さな体つきであるブラッキーだとしても、二十歳になったとならば標準よりちっぽけな体をしていると自分自身で自覚するほど小柄だ。
会社では二十代前半の僕みたいな小さなポケモンは上司からもいじられているが僕は何時も孤独にいる。そんな理由なんて大体わかるでしょ?

僕は暗いから・・・

まあ仕事以外に疲れなくて別にそれはそれで構わないけどね。

そんな自分の体格とか性格なんてどうでも良くて・・・
こんなひどい天気のときは特に人はここを怖がるらしい。でも僕は逆にそういう話を聞くと好奇心が沸いてくるから別にそれほど怖くは無い。
だって僕の仕事はそんな心霊とかいわくなどを調べる事が仕事なのだから。といってもまだまだこの仕事に就いたばかりだし今回みたいな仕事なんて滅多にないしね。

仕事関係の一部なのに忘れた頃になると何処からもなく上司から頼まれるんだけど、なんか僕が会社に入ってからそういう仕事が僕にしか来てないような・・・
まあ、そんな変わった一部のある職を選んだからには僕は霊感が勿論もの凄く強いという訳だ。

「(ここが今話題のアームシティ2丁目の墓地か・・・あまり感じないけどな)」
聞いた噂では曇天の大雨の日に出たとか聞いていて、まさに今の天候で合っているからここに来たのに現に何も感じない。
「(誤報かなこれも・・・)」

ふと空を見ていたつもりが、気付いたらじっと見上げていた。
なにか上に乗れそうなほど太くて怪しい雲で今日は空がとても近く感じる。

どんないわくかって?
う~ん、この話はあまりまとまって無くてね。しかもまだハッキリと「出た!」とは言えないかな・・・調査なんて今日僕が立ち寄ったくらいだし。
今のところ会社(うちら)でまとまった話だと・・・

今みたいな曇天の日に傘を差してここを通りかかると草タイプのポケモンが摂り付くって言う話が1件だけあった。
・・・摂り付くっていうのは大げさだと思うよね
まあその人は瞬間を見たといっているから経験済みで一応入れると。

もうひとつ。
同じようにこんな天気のときで、前から歩いてきた歩行者と通りかかる寸前にその歩行者の隣に草ポケモンが現れた。
そして驚いて振り返ってみるとその草ポケモンが薄~くなっていって消えた。
という話が2件

そして今の話に似たようなものが1件。
それらが1ヶ半月くらい前の日に2件、2週間くらい前に2件と分かれていて天候が大雨の降る曇天の日なのである
だから今こうして状況に合った天候の今日、誰の姿の無いこの墓地に足を運んだのだ。自宅とは反対方向というわけではなく遠回りなだけで別に好奇心もあるので悪い気はしない

「(でもってこの場所が噂になって人もさらにいなくなるわけか・・・おしゃべりな世の中だな)」

あ、草ポケモンの正体は何かって?
いやそれがひとつじゃないらしく・・・傘に入ってきたベイリーフとリーフィアで両方とも女性だそうだ。
その件数の全てが人気(ひとけ)が無かった時というから、もう既にその報告してきた人たちの経験よりも早くその場所は噂になっていたという訳で
もしそうだった場合はその霊が出始めて随分経ったということになる。

しかも報告が全部最近されたものだから天候もそう簡単に合う訳もないから調査なんて中々できず
ずっとこの天候になる日を待っていたのに・・・

少々ガッカリした。
けど少し入って此処を立ち寄れば、何か分かるかもしれない
それにひとつ気がかりなことがあってこの墓地から立ち去れない。

「・・・・リーフィア・・か。」

ここの墓地に眠るリーフィアはただ一人だけなのか調べたかった。

何秒間かぼけっとしていたが我に返る。
「よし、」

考えた結果、墓石の名前の字を見て回ることにした。
墓地に足を踏み入れると雨のせいで地面が柔らかく「グチョッ」っとしていて少し不快な感触が歩くたびに4つの足の肉球に伝わってくる。
こんなじめじめした怪しい天候の中の墓地は普通なら気味が悪いと思われそうだ。まして誰一人とて周りにはいないのだから・・・
でも僕はなかなかの緊迫感だと思える。
・・・変わってるよね僕。あ、ベイリーフの墓石だ・・・[リネィ]って言う人だったのかその霊は

一通り墓石の名前を回ってリーフィアの墓石は1つしかなかった。

「やっぱり・・・・あいつか」
僕は哀れんでいるのか悲しんでいるのか溜息がでる。
こういう天候はあの日から嫌いになった。物理てきに雨が冷たいとか寒いとかではない。
理由は・・・ん?

あるものが僕の目に入った。それは古い大きな石。墓石が並んでる隣にある。

「あれ・・・これは・・・古い墓石?」
近づいて良~く見てみると何か書いてある。これも古い墓石らしい。
今までいろんな古い墓石を見てきたけどこんなに苔むして削れて丸くなった小さな墓石は初めて見た。
字が所々もう完全に読めなくなっている
〔リーXX種・XXX〕


「え!?、リー・・・種って・・」

リーフィア種と最初は思ったが
・・・リーシャン種とも当てはめられなくも無い・・・けどリーフィア種であってほしいと僕は必死でそう願っていた。

「(これはまた上司に告げたほうがいいかな」)
・・・でも急ぎじゃないしいいや。
家でゆっくりと今日と明日のんびりしていよう。
そう、明日も休暇なのだ。

僕は墓地を出てもう一度振り返った。あの墓石がリーフィア種であるようにとまた願って・・・
さあ帰ろうと思い顔を戻したら・・・



「へ?・・・・・?・・・あ、あ・・」

(出た!!)・・・僕はそう思った。

目の前に

ずぶ濡れの女性らしきベイリーフが立って僕を見ていた。

「あ・・・・・・」

いざというときに僕は何も動けない、僕は何も声が出ない、僕は何もできない、僕は怯えている。
でもどんな驚きでも顔には出さないのが僕だった。
随分な時間が過ぎても金縛りのようなものにあっている

「あの、スミマセンが・・・傘を・・・傘を忘れたんで入れてもらえませんでしょうか?」

「は、い。(か、傘って・・・)」
それが何も考えられずに出た言葉だった。しかもたった二文字の発音も繋げられなかった。

「あ、まさか私をベイリーフだからって幽霊だと思っているのでは?・・・まあこんな感じで見られてたら間違うのもアタリマエですよね・・・」

落ち着け僕!相手は幽霊じゃないと言っているし普通に会話できてるじゃないか
「え・・・と。あ!風邪を引いちゃいますよ!?どうぞ、あなたが良ければ結構です」

「良いのですか?有難う御座います!」
「あ、あなたはどちらまで?」
「隣のラルムシティです。あの・・・来る際にも徒歩で来ましたし途中までで良いのです。
 あなたがこの街の三丁目の小さな一階建ての家に御住まいなのは分かっていますから・・・」
「え?知っているんですか僕のこと?」
「・・・・・・」
彼女は無言のまま微笑んで僕の傘の中に入ってきた。いわゆる今の質問は無視されたということ?
「お邪魔します」
「(ん?今彼女が二回アタマを下げたけど・・・気のせいかな)」

「えー・・・、お名前は?」
名前くらい聞いておこう。どうせなら傘も貸しても良いしね
「リ・・・。リフィニー・・・歳は21です」
「(ぼ、僕よりひとつだけ年上か。でも歳なんて聞いてないけど?。)」

そんな感じで!
突然の出来事で僕はこんな展開になってしまった。周りの人は今はいないけど僕たちは仲の良いカップルみたいな相合傘をして見えるに違いない!
恥ずかしいかも・・・とか思って会話が無いまま歩き始めて5分くらいか経った。
それにしても彼女の歩くペースが遅くて僕と合わないから非常に歩きにくいが彼女の歩幅に合わせるしかないが・・・


「あの~・・・何故あんなところに立っていたんですか?僕もう幽霊が出たと思ってビックリしちゃいましたよ。」

僕は5分前の事からまだ心臓がドッキンドッキンしていて、それは動揺以外のなにものでもない
思い切って隣でくっついて歩く彼女に聞いてみた。本心はまだ幽霊じゃないか疑っていたけどよく考えてみたら触れている。
証拠に彼女が歩いているにもかかわらず寒そうに自分の首をペッタリ僕の背中にくっつけている。
体がとても近い・・・体が暑くなりそうなほど恥ずかしくて・・・でも彼女の首はとても冷たくて
・・・だから僕はお陰で余計に寒いのですよホントに

「それは・・・友人の家の帰りに突然雨が降ってきたのですから」
「友人の家の帰りって?突然の雨?そんなに遠い友人の家なのですか?それに何故そんなに遠いのに歩いて来られたのですか?・・・」

・・・普段から僕は疑問があると理解しきるまで質問する悪い癖がある。
さすがにこのときは自分で気付くことができたから

「あ、・・・そんなこと私にはどうでも良いですよね。すみません。」
「・・・・」

ふう、でもこの人・・・気になるな。
さっきから自分から喋ってくれないから結構大人しい性格なのかも・・・・


20分くらい歩いて
僕の住む家がある三丁目に入った。

さっきから二人とも黙り込んでいてなかなか会話が無い。

そしてまあ、こんな空気は気まずいな~っと思って何か話題を出そうとするけどなかなかその話題が出てこない。
もともと初めて会った人と直ぐに楽しく話すなんて僕には・・・

「えと、オルクさんでしたよね。一人暮らしをなさっていて霊媒のお仕事も・・・やられてますよね?」

どこまで僕のことを知っているんだこの人は・・・
気付いたことに僕は自分の名前すら名乗っていなかった。それなのに住所など職業までも知られているってどういうことなのだろうか?

「はい。でも何故僕のことを?」
「・・・・・・」

あれ、また無視されちゃったのか・・・でも言いにくいことでもあるのかこれって?
やっぱり不思議な人だなこの人
って考えるうちに家の近くまで着いちゃったんだけどどうしようか、ここで傘を貸せない訳にはいかないもんね。

でもこの雨も激しくなってきてそれだけじゃ気温も寒くなってきて厳しそうだな・・・
ラルムシティまで歩くなんてちょっと可哀想だし・・・

「あの、雨も凄くなってきた訳ですし少し静まるまで家によっていきませんか?お茶くらいなら出せますし・・・・それに相当寒いですよね、これ絶対・・・」

今もリフィーニさんがまだペッタリ僕の背中に首を付けて擦り寄っていたのだ・・・
とても冷たく僕に擦り寄っているにもかかわらず一向に暖かくなっていないような彼女の体を不思議に感じつつ、まあ僕はその彼女の行為が不快だったけど文句を言わない。
そんな事だったら僕の心の方こそが冷たいだろう。
でもその心はあの日から・・・

そう、
あの日からだ。

僕の心はもう冷えきっていたと思ったが
仕事関係外の人と接し、少しでも、ほんの少しでも自分の心の温かさを今に実感できて・・・ちょっと嬉しかった。

「あ、えっと・・・すみません。とてもオルクさんが暖かかったので・・・つい」

つい・・・か、
ここ20分間歩きながらくっ付き続けていたのにもかかわらず「いつの間にか」とかの一瞬の出き事みたいな感じに聞こえたんだけど・・・。それだったら僕だって寒いよ、特に背中がね・・・

でもさっき言ったとおり心のどこかで、できるだけ人に親切にできるようにしたいと思っている。
昨日までは全然自分でもそんな感情なんて無かったハズだったのに
こんな感情なんて久しぶり・・・あれ

なんか今日は自分のことで妙な感じがするな・・・というの置いて

「で、どうします?このまま傘を貸すというのも良いですが・・・」
「お言葉に甘えさせて頂きます。正直とても寒いので・・・」

やっと家の前に着いた。
玄関で足を止めて傘をたたみリ、玄関の鍵を開けてリフィニーさんに目をやると彼女が寒さで震えている。
それをを見るとここで放っておく奴がおかしい!と思えた。

そう強く思ってからなんか昔の自分の感情が戻ってきたようで
といっても本当に普通の人並みの感情なんだけどね。

あの日の僕は自分の全ての感情が崩壊したような感じがして「もうどうにだってなれ、いっそ死ぬのも悪くないかな」とまでも思った程の事だった。
けど・・・

今もこうやって頑張って働いていけてる。
それでも、自分はあの日から心の一部が死んで性格までもが暗いものに変わってしまったと自分でも自覚していた・・・
仕事のことくらいしか生活に考えられなかった自分が少しでも・・・
この人のお陰で、こんなにも簡単に普通の自分を過去から拾えたようなな感じがして・・・
やっと何か大きく欠けていた普通の感情というものが見つかり・・・
ただ、懐かしく・・・。嬉しく・・・
「じゃあ、お邪魔しま・・・・・って、どうしたんですか!?」

なんで彼女は僕を見て驚いたのかな・・・
すぐに分かった。目に移る光景の全てが滲んで見えるからだ。
ちょっと自分の何年ぶりかの感情に感動してしまい涙が出てしまったらしい。
涙を流すのも本当に久しぶりのことだった。

流す程のことじゃないのに・・・

「いえ・・・なんでもないです。って言うと嘘になりますね。でも、今は・・・あなたにお礼を言いたくて・・・」
それが無理だった。そこで僕は急にものも言えなくなって涙を流し彼女と顔を合わせられず下を向いてしまっていた。
玄関のコンクリートに涙が落ち、そして落ちた場所だけ色が黒っぽくなっていった。一滴だけでは留まらない。二滴三滴と・・・
僕らの周りにはうるさい程の雨の音・・・

「ほ、ほんとにどうしたんですかオルクさん!?」

普通の人ならアタリマエのことなのに、そのことで涙を流してしまった自分自身が悲しくも思えてきて・・・
いろんな意味の詰まった感情を今までダムのように溜めていた涙が
その涙腺が崩壊したとの同時に、大粒の涙が四滴五滴とまだ滝のように流れてくるのが自分でも分かった。


不意に頬に生温かみを感じた・・・
「!?・・・」

「さあ、風邪引いてしまいますよ?私もう寒くて・・・」

その顔を赤らめた彼女の言葉に僕はやっと我に返る
「そ・・・そうですね。どうぞゆっくりしていって下さい」

僕は半分涙声で、もう半分は呆気にとられて上ずった様な声を出してしまった。

「(今のは・・・・リフィニーさんの・・・舌?)」

まだまだ呆気に取られそうな僕だったが、幸いにもしっかりとストーブのある部屋へと彼女を連れて歩けていた。



もう1時間くらいがたったのか。
不思議と彼女の話を聞いていたら時間が経つのを忘れていたな・・・
こんなに楽しくお互い溶け込め合って話せたのも本当に久しぶりだった。

「はぁぁ、暖かい」

ストーブの前にリフィニーさんが寒そうに小さく丸まって前足を擦り合わせていた
「(・・・・・・)」

僕はこの家で1人暮らしをしている。
だから自分以外でこの家で動くものが珍しいから彼女を「じーー」と見つめていた。(別に何の意味なんてないけどね)

僕は両親を幼い頃に無くしている。
ブースター種の兄と2年前まで暮らしていたけど、その兄も仕事の都合で遠いところに住んでいる。
僕は高校を卒業して間もなくにこの職場に入った。丁度その時期に兄は随分遠いところに転勤したのだった。

一人暮らしになってから気付けた。

兄は僕の歳を考えてくれていたため2年前まで一緒に暮らしていたんだ・・・兄が高校は絶対卒業しろと強く言ってくれていたのは
僕の将来の視野を考えてくれていたんだと。
でも何か、こう・・・結局仕事はまぁまぁなところで、普通かな。何が普通か聞かれるとまた説明に考えちゃうけど・・・

そして昨年だ。昨年に僕は人生を嫌になった。
今はこうして頑張っているけどその一時期は本当に大変だった。

その理由は・・・
「あの、オルクさんこの写真の方は?」

リフィニーさんが、ほとんど物がなく地味なこの部屋に飾ってある写真を手に取っていた。
「・・・あ、それは・・・」
「オルクさんの彼女・・・ですか」

そう、理由はこれだ。
写真には学校の教室で二人の楽器を持った幸せそうに笑う二人のポケモンが写っていた。
その写真は僕が通った隣町のアームシティの直ぐ北側にある「アヴァンセ高校」高校の吹奏楽部で行った卒業会での写真だ。

一人は僕、クラリネットを抱えて写っているブラッキー。
そして隣の人は満面な笑みで僕とまったく同じようにクラリネットを抱えて写っているリーフィア。・・・中学生の時代からのひとつ年下の後輩でもあり、その頃からの僕の彼女だった

元々、体が弱くてしょっちゅう部活でも休んでいた僕の彼女。
明るくて、それでも大人しいところもあって、そして・・・ずっと両思いだった僕の彼女。

あの日、僕が最後に見た彼女の顔は・・・可愛らしい寝顔だった。
もう、彼女はこの世には・・・・・
「(ダメだ。さっき涙を流したばかりじゃないか、ここでまた泣くなんて・・・)」

「プレリーさんは・・・なおさら切ないですよね・・・」
「!?、え・・・今なんて!?」

こみ上げてきた何かが、また戻っていくような感じがした。

・・・プレリー??辛い??
なんなんだこの人・・・

そして、それとは別の感情がまたこみ上げてきた・・・
「あなたは何者なんですか!?プレリーの・・・プレリーの事まで何故・・・何で知っているんですか!?」

急に頭にきた・・・僕でも何故頭にきたのか分からない。そして僕はまた泣きそうになって目を閉じてしまっている。
「ぅう・・・」


そう、プレリーとは僕の恋人だった人・・・そこの写真に写っている愛らしいリーフィアの笑顔が今、僕の胸を切なく焦がす。とても痛い・・・

彼女は生まれつき体が弱いという病気にかかっていたんだ。
普段は明るい性格なのに病気のため急に気分が悪くなってしまう事がほぼ毎日。
そんな辛い病気を背負っていても、誰とでも笑顔で接することができたからこそ彼女は人気者だった。

中学も高校のときも同じ学校で同じ吹奏楽部だった。その理由のひとつに「僕と一緒に部活がしたかったから」という訳も一理あったらしい。
僕も正直に嬉しかった。
それからは僕らは更に先輩と後輩というのではなく「彼女」と「彼氏」という関係になっていた。

――――――――――

高校も終え、僕と付き合い始めてからのある日に・・・

僕の目の前で吐血までした程に彼女の病気が知らず間に侵攻していたことが発覚。
そのため、その日から彼女は入院してしまった。それからは彼女の家族と僕が付きっ切りになって看病などをして見守っていた。
彼女の家族は、僕と彼女の交際を良く思ってくれていた優しい人たちだったので僕たち二人も嬉しく思っていた。

・・・今でも、あのときの彼女の苦しそうな表情が忘れられない。
ついには呼吸器無しでは呼吸もできなくなり意識も消え・・・

そして入院から約一週間後のある日に・・・。
その日はとても眩しいほどの晴天で、こんな良い天気の日は彼女の太陽のように眩しい笑顔が僕の隣にあったのに・・・。
でも、その日のプレリーは昼になっても目を覚まさず気持ちよさそうに眠っていた。
毎日僕より早起きの彼女が・・・

僕の隣にあった機械の画面に映っている彼女の命の表す線は何時間も前から平たく直線を表している・・・。


「おやすみ・・・」

微かに笑んで眠る彼女に、僕がかける言葉はそれしかなかった・・・。
最期に見た彼女の表情は・・・微笑み。


――――――――――

そんな僕を哀れんでいるかのように見つめているリフィニーさん・・・何を思っているのだろうか。


「・・・・・フフ、リフィニーさん。僕を哀れんでくれているのですか?有り難いですね。」
僕は素直に嬉しかった。でも自分の表情はその感情とは裏腹に不敵な笑みを浮かべていたらしく僕を見た彼女の顔は怯えてしまっていた。

「すみません怖い顔してました?。でも哀れんでくれる人がいてホント嬉しいです。」
「最愛の人をなくして一人暮らしをしている方を哀れまずにいられませんよ・・・」

彼女の表情が少しだけ和らいだ。
「あなたは・・・、理由は聞きませんが何でも知ってるんですね」
「は、はい。知ってるというか殆ど見えるんです」
「見える??・・・何故・・・って理由は聞かない事って言ったばかりでしたね。」

僕は雰囲気が雰囲気だったので作り笑いをしてた。最近全然笑っていなかった割りには上出来だな、彼女も「クスッ」と笑ってくれたし。

「・・・じゃあ僕が自殺しそうになったことも分かるんですよね・・・」
「・・・え!?」

驚きが何か激しい、まさかさっきほとんど見えるっていったばかりなのに見えなかったのかな?
「いえ、そればかりは・・・分かりませんでした」
「・・・あ、そうですか。あまり良さそうな話ではないですけど宜しければこの話もお聞きいただけないでしょうか」
「はい、構いませんよ。私のような者に話しても良い話なら。」

「聞いて下さるのですね、ありがとうございます。 
 去年に彼女を病気で亡くしたその日から僕は何もする気になれない日が続いて・・・会社だって何日か休みましたよ。
 そんな僕を支えてくれた人は遠いところから早急に駆けつけてくれた兄と、会社の僅かな人だけ・・・
 普通はそれで十分のはずなんですよね。
 
 なのに僕は・・・人より甘かったんです。
 子供みたいにいつまでも立ち直れなくて、せっかく慰めてくれた人など会社にも迷惑をかけてしまった。
 特に僕より6歳上の尊敬している兄には大変だったと思います。僕は昔から兄に世話になりっぱなしで迷惑をかけてきて
 しまいには自分の命まで兄に救われたんです・・・。
 救われたというより、目覚めさせられた・・・といった方がわかりますか。でも僕は人生を兄に救われました。
 
 その日は兄が僕のことを心配して帰ってきてくれた次の日のことで、帰る兄を玄関まで見送り終わってから直ぐに・・・
 僕はまた孤独感に襲われて・・・
 そして台所にあった刃物をいつの間にか自分が握ってしまっていた事に気付いて・・・
 
 ・・・・正直にそのとき自分自身が怖くなってしまって
 もう自分は気が狂って壊れてしまった・・・。そう思いその時は自分に対する恐怖しか感じられず、本当に正気じゃありませんでした。

 でも死ぬと楽になるのか?悲しくないのか?
 だったらここで何もかも無に感じられるようにするのも悪くないかな。
 ・・・なんて直ぐ後に思って本気でやろうと思ったんですよ・・・」

「そこでワルムさんが?」
突然の彼女の発言は合っていた。

「ふふ、あなたは本当に凄い人ですね。兄の名前まで見えるだなんて」
「え・・・あ、すみません」

謝る理由なんてないだろう?でも全て見通されるというのも良い気分でもないけどね。
本当に不思議な人だ。

「ハハ、その時は吹っ飛ぶくらいな力で顔を殴られましたよ、まあホントに吹っ飛んで壁に叩きつけられたんですけどね。
 一瞬何が起こったのか分からりませんでした。理解した時、そこには頬の激痛に悶える自分と怖い顔の兄がいて・・・
 
 兄は眼を覚まさせてくれたんですよ。鬼のような顔で僕を睨みながら僕の手から飛んだ刃物を拾い
 自分の吐く紅蓮の炎で刃物の刃を熱しながらゆっくり近づいてきたんですよ『痛いか!?死んだら痛みなんて無いぞ!』って言いながら・・・

 僕は声も出ませんでした。
 何時も優しく温和な兄の顔なんて昔から大抵、僕と目が合うと兄らしく微笑んでくるのに
 今、自分が見ている兄の表情は凄まじい殺気が感じられて、その手には真っ赤に熱せられた刃物の刃が握られて
 それを僕に向けて・・・
 
『死にたいのか・・・』
 と小さな声で聞いてきました。
 
 僕は本当に兄に殺されそうな感じがしてもう子供みたいに首を横に必死に振りました。
 そうした瞬間に兄の顔が微笑んで・・・
 『じゃあ生きろ。死にたいときは何時でも俺を呼べ』
 とだけ言って去って行きました。」

「優しいお兄さんですね・・・」
「はい。今になってあの時の兄のしたことも優しさだとそう思えます。・・・でも本当にあのときは殺されそうな感じがして心臓が止まりそうでしたよ」


苦笑いの後・・・・・そしてまた沈黙の空気が辺りを包んでしまった。
そういえば激しかった雨の音も無くなったような気がして
「雨止みましたかね?」
などと僕は言って窓をガラリと開けて外に顔を出して見ると、空の色は相変わらず曇天で黒掛かっていたが雨が小雨くらいになっていた。
「結構弱くなりましたよ。小雨くらいです。」
「ではあまり長居するのも悪いので私はそろそろ・・・」

もう帰っちゃうのか、なんか彼女の話は面白いものばかりだったけど
僕って愚痴を聞いてもらっただけのような・・・ホントにダメだな僕。学生時代の僕はどこへ行ったのやらね
「別に僕は全然良いのですよ?雨が止むまで居ても・・・」
「いえいえ、傘の中に入らせて頂いただけでも有難いのに貴方の御自宅までお邪魔させもろらいました。
 それに私そろそろ行かなくては、また雨が激しくなってしまうかもしれないので・・・」

「そうですか・・・、では見送らせていただきます。」

彼女は暖かいここを惜しむように部屋を出た。
家の廊下はやっぱり昼の割には薄暗く、そして寒かった。
僕の家の玄関には何もなく、物があるとすれば傘立てに立ててある一本の真黒い傘しかない。
それは今日の帰りに使ったばかりのもので細かい水滴を被っていた。

「ああ。リフィニーさんこんな色の傘で良ければ持っていって下さい。まだ雨が止んだわけではないですし」
「え、でも一本しかないようで・・・」
「今日は僕もう何処にも出かけませんので気にしないで下さいよ」

明日は休暇なのだけども、別に雨が降ろうが降らまいが出かける予定は無いから構わないしね。
「すみません、見ず知らずの私にここまでして頂いて・・・」
「見ず知らずだから・・・というのもありますかね?」
「さぁ、どうなんでしょうか?」

僕たち二人は顔を合わせて軽く笑いあった。
ああ、ずっと人とこうして笑っていたい。ずっと・・・

「あ、そうだ。リフィニーさんは何かあの墓地のことについてご存知ですか?」
「いえ・・・残念ながら噂のことしか知らないです。お役に立てなくてすみません」

・・・謝られても困る。
「いえいえそんな、あなたなら何か知っていそうだったので、つい聞いてしまいました」
「私からも少し質問していいですか?」
「え?ああ、私に答えられる事ならどうぞ」


「・・・貴方は今、大切に思う人がいますか?」

「・・・・・・」

何故そんな質問をするのか分からない。いないに決まってる・・・いや、僕はどこかで逸れてしまったんだ。
その人の居場所は別の世界。
「いませんよ・・・。いるとすれば天国・・・という世界に居るんでしょうね。僕の大切な人が」

「そう、・・・ですか。変な質問でしたね、すみません。」
また、謝られた。

「両手を出してください」
「へ?あ、はい」

何をするつもりなんだ?両手を出せと言われたけど・・・
僕みたいな四足歩行が二足歩行の状態になって立っていると、少し疲れる上にあまり人に見られたくない体勢なのは誰だって知っているはず。
大体リフィニーさんだって四足歩行ではないか・・・。

「コレを・・・」
彼女が僕に歩み寄ってきて僕みたいに立ったかと思うと両手を僕の手の上に合わせてきた。それは・・・
「(!?)」
何かを渡されたのは分かったが、そんなことより彼女の手がまるで外にいたときのように冷たかった事に驚いた。
あんなに暖かい僕の部屋にずっといて、しかもストーブの前に座っていて、体なんて温まっているハズなのに冷たい・・・何故?
とりあえず自分が渡されたものが何かを見てみると小さな平べったく青い破片がその黒い僕の手にあった。
「これは・・・?」
「パズルのピースです。」
「パズル??」

「はい。それと私は・・・・・
 私は全て知っています。やはり・・・貴方に墓地のことを伝えずにはいられなさそうです。」
「知っているのですか!?」
「全てを」

先程は「知らない」と言われたのが・・・やはり知っていたのか。これも彼女が見えた事なのか?
全ての事を知っているなどと言われて驚いたので、僕は渡された何らかのパズルのピースの事なんて一瞬で忘れてしまっていた。
とにかく知っているならばは仕事として聞きたい。

「あのリーフィアの霊は本当の霊です。そしてベイリーフも本物の霊・・・
 しかしリーフィアの方は自分がこの世界に留まっていることに気付いていません。」

自縛霊か・・・
でもおかしな事だな。同じ行動をするのにもかかわらず一方の霊は意思がなく、一方は意思があるということは・・・
それにリーフィアの霊には意思がない?それにしては行動が大胆だな。
しかもベイリーフの意思のあって行動している事と同じ行動をしているのは偶然なのかどうかも気に引っ掛かる。
霊は何時だって一人で孤独な奴なのだ。霊同士の存在だって分からないだろう。
「(考えられることは、あの墓地に出る霊の行動は決まってそうなのか・・・あとはー)」

「あの霊は正しく言うと『意思があって意思がない』霊なのです。」
「執念・・・など強い気持ちの魂ということですよね」

「はい。問題は、あのリーフィアの霊ですね・・・」
なんか彼女の方が霊媒師とかに向いてるような気がしてきたよ・・・

「あのリーフィアは執念・・・とは少し違った、たった一つだけ強い意思が残ったものです。それは誰かを思う気持ち、つまりその残してしまった人への『愛』でしょう」
「!?(まさか・・・)」


「それとこれだけは私からいっておきます。貴方が彼女を亡くし、来る日々を悲し見続けた事が貴方の失敗です。それで・・」
「ちょ、ちょ、いきなり何の話ですか!?」
彼女の流れる水のような言葉を僕は慌てて止めた。慌てた理由は・・・他にもあるけれど

「ご、御免なさい・・・本当にイキナリでしたね。本当にすみませんでした・・・。
 ・・・私は何が言いたいのかを一言に言いますと・・・貴方も薄々分かっていると思いますが、あの霊は・・・」

「・・・・・・・・・」
「・・・貴方の恋人だったプレリーさんです。」

・・・別に動揺はしなかった。何故なら彼女の言うとおり僕は半分はそんな気がしていたから。

「リフィニーさんは見えたんですよね?」
「驚かないということは、やはり貴方は分かっていましたか」
「はい・・・あそこの墓地に眠るリーフィア種はプレリーくらいしか居ませんからね・・・一年たった今でも(まれ)にすぐ側に彼女が、プレリーがいる気がしてましたから
 多分この世に留まっている、・・・そんな感じがしていました。」

「プレリーさんが意思がなくとも霊としてこの世に留まっている理由、分かりますか?」

「分かりません・・・知りたければ知ることができたのです。私みたいな極端に霊感の強い人なら直ぐにでも。
 ですが私はどんなにやっても彼女の霊が見えてこない・・・それは心のどこかで彼女の事を忘れたいという気持ちがあるらしく
 気持ちの乱れになって見えないのでしょう。・・・情けないです。」

「いいえ・・・貴方にはそれだけでも理解していた筈ですよ」
「(く・・・どこまでも見えるということか?人の心までもを)」

「さっきはいきなり変なことを話して御免なさい。完全に順序が違いました・・・
 私・・・人が見えない事が見えて、それを人に伝える時が怖いんです。その人にどんな衝撃を与えるかが恐ろしくて・・・」

「大丈夫です。結局僕は彼女の事を忘れられていませんし、ここで全てのモヤモヤしている思いがハッキリ分かれば
 自分がそのことに対して吹っ切れると思えるので・・・知っていることを僕に伝えて下さらないでしょうか・・・」

「・・・分かりました。では先程私が言いかけた事からお伝えしましょうか。
 貴方が恋人であるプレリーさんを亡くし、来る日々をずっと悲しみ続けた事で彼女の魂は貴方から離れられなかった・・・つまり心配で仕方なかったのです。
 しかし意思が無い霊なので今回みたいな感情的な考えは普通は有り得ないのですが、それだけに思いを残しているでしょう・・・
 とはいってもそういう考えだけでは意思の無い霊はこの世に留まれません。意思があれば別ですが・・・」

「とすると・・・」
「貴方が引き止めているのです。」

彼女の口から出る言葉に僕は少しも動揺はしなかった。・・・考えると自分は少しでもこの事にも勘付いていたんだと改めて思う。非常識な理屈だとは思っていたが・・・。
自分が彼女の魂を引き止めていた・・・それは彼女に申し訳ない事をしているということに違いない。

いろんな件を引き受け、この世に留まる魂を見てきたが・・・自分の大切な人に限って見えなかった。しかも原因は自分・・・

彼女にどう償えば・・・

せめてでもの償いとして・・・・
「『さまよえる魂は原因断てば意、有り無しにでも天へ』といいます。僕は彼女を忘れることは・・・一年たった今でも・・・」

「・・・・そのピース、覚えてますか?」
僕の手の中にあるピースのことなんてすっかり忘れていた。正直何のことやら全く分からない。
「いえ、僕はこの事について知りませんけど・・・何ですかこれは?」
・・・?リフィニーさんが笑ってる?
「いえ、何でもないです。(やはりどんな事も生きている物は事を忘れるもの。忘れることで幸せになれる事もある。例えどんな事でも)」

彼女の「何でもないです」は、何かあるということかもしれない・・・何かある。

「話に切りがないですね・・・では最後に貴方に聞きたいことがあります・・・。
 今、プレリーさんに伝えたいことってありますか?」

「・・・どんなつもりでそんな質問を?」
「・・・・・・」

彼女がまた、すまなさそうに俯いた。
う~ん答えれば良いんだよね、答えれば。彼女には言えない何かの理由があるはずだ。

「う~ん、プレリーに伝えたいことですか・・・難しいですね。伝えたい事・・・」

正直なところは何も言いたくなかった。
何故そんなにも僕の考えを知りたいのか・・・怪しい。

「やっぱり僕は君の事を忘れられない、って伝えたいかもしれませんね・・・迷惑な事なのかも知れないけど」
「・・・それが貴方の伝えたいこと・・・ですか」


・・・・・リフィニーさんが今度は考え込んでいる。いったい何を?

「彼女を亡くしてからの貴方の気持ちの答えですね・・・」

何を分かったというのだろう・・・
僕のアタマの中は疑問符で埋め尽くされそうになる。

「貴方はまた、彼女に逢いたいと思っています・・・。だから忘れられないんですよね?」
「・・・」

僕はゆっくりと頷く。もうここまで問われると・・・

「貴方の気持ちは今日伝わると思います。お墓の前で祈れば彼女に想いが届きますよ?」
「・・・思いが届く?今日・・・ですか?」
「今日、再びあの墓地に行って彼女のお墓に思っていることを伝えるように祈れば彼女も幸せになれるでしょう。」

成仏するということか・・・
何の根拠があってここまで言い切れるのか・・・?
しかも、また墓地に行くのか?
・・・正直めんどくさいような気がする。
リフィニーさんの目は悲しそうだけど真剣な眼差しで僕を見つめてきているから・・・良く分からないな

でも、それが本当でプレリーが幸せになって成仏してくれるのなら・・・
「分かりました。今の彼女にしてあげられる事なら何でもやれます。・・・たとえ意思が無くても」

リフィーニさんが微妙に頷いて笑った。
その人を哀れむような表情は僕の兄そっくりだった・・・。

「あの・・・では、行くのですね?」
「はい。雨も止みそうですしね。」
「じゃあ、私、やっぱり傘は・・・」
「いえいえ僕は大丈夫です。気にせず持って行って下さいよ。」

「ありがとうございます・・・あ。今日はどんなことがあっても慌てないで下さいね!」
「?」
「え、と。今日の貴方の相に現れていますので・・・」

その言葉に半信半疑で苦笑いをしながら頷いた。こんな僕だけど占いとかの相はあまり信じないから・・・。

「では御邪魔しました。貴方と色々とお話できて嬉しかったです」
「傘はまた、お好きなときにで構いませんよ」

彼女はそれから玄関のドアを開けて振り向き黙って僕に一礼をした。
僕も軽くそれを同じように返すと、彼女はドアを静かに閉めた。


・・・・・・また何時もの孤独が自分を包む。やっぱり今の自分は孤独が一番落ち着くのかな?
「(でも、もう少し話していたかったかな?・・・今ばかりは一段と悲しくて・・・)」
今日で今までの溜めていた涙は、この際にいっそ全て流しきろう・・・


小さな家の玄関の前に黒い傘を抱えたベイリーフが立ち尽くしている。
天気は徐々に極太の雲が薄れて明るくなって太陽も見えるようになり
遠くを見ると、その太陽の日差しが地上に向かって光の柱を立てていた。
ベイリーフはその美しい光景を見ながら悲しい顔をしていた。しかし見方によれば嬉しそうにも見えるその表情は・・・

彼女の耳には玄関越しの中に人の泣いている声が微かに聞こえてくる。さっきまで話していた人の・・・

「(・・・サヨナラ、ワタシ・・・)」

そのベイリーフは願う。どうかあの人に幸せをと・・・


肌寒い玄関に座って俯き僕は泣く。泣けるところまで泣き続ける。・・・何故なら悲しいから。
自分自身のことが悲しいから・・・。


・・・いつまで涙は流れるのだろう?今までの溜めていた涙は先ほど流した量では全然余っているらしく
しかも、さっきとは比べ物にならないくらいの涙を僕は流している。

もうこの世にはいない愛していた彼女のことを孤独の中で思う涙は大きくて、そして多かった。
全然今日までは涙なんて流さなかったのに・・・・




・・・さあ、プレリーに逢いに行こうか。

僕は玄関のドアを開けて外に出る。
そういえば雨が少しだけ降っているけど、やみかけの小雨だから今でもいけるかな・・・
家の鍵を掛けてドアから振り向くと遠くの景色が目に入った。
「(綺麗だな・・・)」

本当に神秘的な光景だったのでまたそこで立ち尽くしてしまう僕・・・
その景色の中には細かい小雨も混じっていて、それもそれでこの光景に合っていて綺麗と感じられた。

「ねぇプレリー。ホント綺麗だよね・・・」

そして僕はゆっくりと歩き始める・・・。彼女の元へと・・・。



『・・・とここで少し休憩を取りましょうか・・・フフ。
 ここから先の話はとても不思議なことが起こります。
 何故リフィニーさんは物事を見通すことができるのか・・・
 何故プレリーさんの霊は意思が無いにもかかわらずオルクさんの側から離れないという事ができるのでしょうか・・・不思議ですね。
 
 ここまでの私めの、話について感想を頂ければとても嬉しいです。
 では後ほど・・・・フフ。」





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Last-modified: 2010-09-05 (日) 00:00:00
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