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謎との決戦2

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赤いツバメ ?です

「謎との決戦」の2話目です。未熟ながらがんばりまーす。

3 微かな警告 


「(フフッ。アル君たらもう寝ちゃってる。じゃあボクも側で寝させてもらうよ♪)」
アルはベットの上で丸くなって子供のようなあどけない寝顔で寝ている。シェネーはその様子を見て「クスッ」っと笑い、アルの側で寝転んだ。
彼女は隣でずっとアルを黙って凝視していて部屋には沈黙の空間が辺りを包む。
「(アル君・・・・・ボクはずっと3年前から君一筋なんだよ?勿論これからも・・・
  でも貴方にはフェリさんがずっと居る。大切なフェリさんが・・・ずっとフェリさんが側にいて貴方は純粋だ
  ある意味では純粋すぎている。そんな純粋で強くて誰にでも優しくできるクールな貴方だからこそボクは貴方に深く惚れたのよ・・・・
  でもやっぱり貴方にはフェリさんが居る・・・貴方に相応しい人はフェリさんしかいない・・・・・でも私は)」

彼女は心の中でアルに語りかけていた。その表情は適わぬ恋をする乙女といったところか・・・
長い時間がたったあと彼女は眠くなってきたらしく目がウトウトしていて
何を思ったのか丸くなって眠ってるアルの間に入って自分も丸くなったのである。
「(ふあぁ・・・アル君の体・・・暖かくてお日様の匂いがする・・・・・)」
全身をアルの少しフサフサの体に付け温もりを感じつつまた、アルと同じように眠りに付いた。
窓から差している日差しが二匹を眩しく、そして暖かく照らしていた・・・・。



「・・・ぅうう・・・んんん。」
グッスリと良く寝た・・・これは昨日も思ったことだ。今度こそは疲れは無くなったと思う。
「ふぅ・・・・(ん!!?)」
俺はその状況は見えていたが理解ができなかった・・・・。
「何で?」
考えるより先にその状況から抜け出そうと俺は動いていた。何しろシェネーが俺に・・・・
動揺していたがその事はさて置き、ちょうど今はだいたい昼頃だろうか・・・そんな事を思い部屋を出た。

「あ。アル!いつまで寝てると思ってるの!?」
丁度その時フェリの声がして向いてみると何かと怒ってるようで心配てる表情だ。
「ねぇ、昨日もかなりの睡眠とったんでしょ・・・体とか悪いの?なんか最近のアル・・・おかしくない?」

「ん、ああ。俺もなーんか調子悪いと思ってたんだ。でも今はもう大丈夫だよ大分疲れも無くなったし。
 フェリこそ最近疲れてないか?俺ばっかり寝てて・・・・シュルは大丈夫そうだけど。」

シュルはライアの上で気持ちよさそうにしてうっとり寝ている。お陰でライアはずっと立ちっぱなしであるらしいが・・・

「ううん。全然疲れてないよ?今日は私も昼寝したしね。」
「そうか。なら良いんだ。」

「シッカリしてよね?昨日の朝なんてアル凄いことs・・」
フェリの口から昨日の朝という言葉が出てきて
「(なっ!まさかアレの事をいうのか!?アレの事か!?アレだ・・・絶対アレだ!あんなこと確実に人前で言うことではない!)」
という考えが瞬時に俺の頭の中で考えられた。
「わああああ!!!!まてまてまて!!!」
と言いながらフェリの口を手で無理やり押さえる。これがその時のベストな1つしかない選択肢だった。
フェリは驚いた様子もなく、むしろからかうかのように笑っていた。
その様子に「Vs」達は無言で二人を見ているしかない。

「・・・・(おい!)」
俺は心の中でフェリにそう言い手を離した。だが気付いてしまった。エミーの存在を・・・。
「(あいつ心読めるんだっけ?読めるよな、てことは昨日の事も?今も読んでるのか?こう考えていることも読めるんだよな!?)」
焦りに焦ってしまう。

「フゥ。・・・あ!そうだアルも起きたんだしシェネーちゃんも起こさなきゃね~♪」
まったく何を言い出すんだ。・・・・あ゛!?
今フェリはシェネーを起こしに俺の部屋に行った。
「へ?皆知ってるの?・・・」
たぶんもう知っていると自分自身でも思ったが思わず聞いていた。
「・・・・すいません、アルさん、姉が申し訳ない事を。」
と返答したのはエミー。
「あ~あ。アイツ何かしなかったよなアルに?」
とモーント。
「ちょっと危ないわね~。」
と相変わらずの無表情なフルス。
「ハラ減ったー。シュルちゃん重いよ~。」
・・・一人だけ別の話題のライア。シュルも起きたんだ・・・
「皆見たのかよ。俺は何もしていないぞ・・・」
奥のキッチンから食べ物の匂いがしているからそろそろ昼食ができる頃だろう。
俺は朝食と昼食の間の時間がまったく感じられなかった。はっきり言って腹が減っていない。
なにしろ朝食のあとにすぐ寝て今起きたばかりではやはり時間の感じ方に違和感があった。


そして二人が部屋から出てきてシェネーは「にはっ」と苦笑いをしていながら俺を見て、モートンはあきれた様な眼差しでシェネーを見る。そしてフルスはじっとその様子を見ている。
「う~ん・・・(俺にとっては気まずい雰囲気だ)」

「ちょっ!シュルちゃん痛!痛い!」 
「キャハハ♪」
シュルのいたずらはまるで子供のようだ。今回も最初はライアの体のフワフワを随分と感じていたが次第にいたずらと変わっていき
ライアの耳をオモチャのように引っ張ったり両耳を結んだりしている。
「(何故あの二人だけ空気が違うだよ!?)」
俺は心の中であの二人にツッコんだ。

「よし。ソロソロ出来たね。皆お皿持ってきて~!」
いつの間にかフェリはキッチンに居た。
今は食事にあまり気が進まない。それは同じ意味でシェネーもそう思っているだろう。

フェリが皆の皿に盛り付ける。・・・・・やっぱり俺は食欲がない。
「あれ?フィス君は?」
フェリが料理を盛り付けながら隣にいたライアに聞いた。
そういえばフィスの姿が見当たらないことは俺もさっきから少し気になっていた。
「あいつまだ帰ってきてないよな?どこまで行ったんだよ!。」
と不満そうな顔のライアにその隣にいたエミーが静かに答えた

「たしか緑の草原にスケッチしに行くとか言ってたような・・・。」
フィスはとても絵が好きで風景や絵を描くのが上手く、趣味らしい。
皆がテーブルに着いた後にもフィスは帰ってこない・・・。
「もう食っちまおうぜ~。俺は訓練所にクロ兄と行ってきてハラ減ってるんだ~。」

訓練所とはゲルプ村の「ガラガラ道場」のことだった。探検隊の訓練所は最近から少しずつ増え始めている。
ガラガラ道場は、中でも一番最初のほうの訓練所で有名になりこの前に少し場所を変えて
探検隊連盟の大きな援助により、かなり大きく立て直した事は聞いている。
「(・・・・今頃訓練所かぁ?)」
俺はゴールドランク以上実力のあるの探検隊は訓練は必要ないと思う。・・・まあトレーニングには激しすぎるくらいといったところか。
「うーんもう待っていられないしね~、じゃあもう食べちゃいましょうか。」
「アタリマエだな。昼になっても来ない自分が悪いんだから。」
珍しくモートンが兄弟に厳しいことを言った気がする。これも兄弟への優しさと言うものなのかどうかは俺には知らないが。
フェリの号令で全員が・・・もとい、フィスを除いて全員が朝と同じように
《いただきます!》
と言って食べ始める・・・・・一人だけライアが凄い。
「はぁ・・・」
短い溜息を吐く俺。何度も思うがやっぱり食べる気があまりしなく少しずつ時間をかけて食べているうちにライアが完食・・・。
ヤツならまだ満腹ではなさそうだ。
「なぁライア。」
俺はそんなにも深刻な顔をしてたのか話しかけられたライアは態度が改まる。
「俺の飯・・・食えるか?」
「へっ?アルの料理?」
「いや、そう言う意味じゃなくてあまり食欲がないんだよ。」
「・・・あぁ。そういうこと!別にいいけど?」
「そうか、悪いな。」
俺は自分の飯をライアの方に寄せた。

「ところでフェリ。昨日の朝何かあったの?」
「あ!?」
フルスの言葉に咄嗟に声を上げて反応してしまった。
「あったよあったよ~♪・・・・知りたいの?」
フェリは今にも言いそうな会話の仕方でこれに慌てないでいらるはずがない。
「う~~ん、やっぱり教えない♪」

フェリ・・・こういうところはシェネーと同じ性格だ・・・・。フルスは無表情で首を傾げた。
昨日の朝のことは自分でもよく覚えていなかった。が、無意識のうちに自分では変な事をしたと思っている。
「緑の草原」での昼寝の一件もそうだが・・・そっちの方が恥だ。
エミーには既にその事を知られていると思うがエミーがあの性格で良かったと思う。というか安心する。

と思っているうちにフィスがやっと帰ってきた。
「ただいまぁ~。」
玄関。と言うよりもやはり入り口と言ったほうが合っているのだろうが、ここは玄関と言っておこう。
その玄関から入ってきて皆の視線が一気にフィスに集まる。
「ぅう・・・遅くなってすみません。」
「遅いぞフィス。っ・・・・。」

「(いやっ、それだけかよ!?)」
モーントがフィスにその後何か言いそうだったが言葉にする前から頭の中でこんがらがってしまったようだ。
「あるよね~。何気ないことなのに話す前にアタマの中が何故か一瞬真っ白になるとき♪」
モーントは残りのオカズを食べて誤魔化そうとするが軽く赤面している。
フィスの申し訳なさそうな顔が俺を見た瞬間少し驚いたような表情に変わったように見えた。
「あれ?アルさんいつ帰ってきたんですか?」
「何が?」
「え・・・何って。・・・・さっきまで緑の草原に昼寝をしてたんですよね?」
フィスは戸惑った口調で言うが、俺も何がなんだかさっぱり分からない。
「いや。俺はずっと今日この基地から離れてないけど・・・。」
「僕は確かに緑の草原の少し高い丘でアルさんが寝ているところを見たんですが。
 起こしてあげようかと思ったんですがあまりにも気持ち良さそうに寝ていて・・・・人違いですかね・・・。」
妙なことを言う奴だと思ったが、絶対人違いでしかない。
「俺なわけないだろ。ココにいるんだ。」
「・・・・ですよね。」
とは言ったもののまだ気がかりみたいだ。
「(・・・人違いじゃない気がする。あれは確かにアルさんだった。)」



日が落ちて辺りも暗くなりはじめ、少しづつ風が昼間よりも涼しくなってきて窓を開けると涼しい風が入ってきて心地よい。
俺達は昼のうちに少し遠いが港がある「レープハフト街」の探検隊連盟所から船を出してもらう事を契約してきた。といってもリーダーとして俺とモーントしか行く必要がなかったから二人でしか行ってない。
連盟所を連盟所という者は少なく、多くの者は「ギルド」という。
「ダイヤモンドランク以上のまだ若い二組の探検隊が同行する依頼はそれなりの成果がでるだろう」
と所長のワカシャモに期待されまくってしまった。
このワカシャモは何でも話しの分かる人で、年齢は三十代前半らしい。俺達もたまにそうだがここらの探検隊はこの人に毎度世話になっているそうだ。
「Vs」は一旦、今のうちに風呂に入浴してからまたここに戻ると言って自分達の基地に帰っていって戻ってき次第出発するつもりで
今は俺たちも風呂に入ることにしたのだ。たまにフェリはシュルと一緒に入浴することがあり久々にフェリは今日もシュルと一緒に入っていた。
ちなみに風呂場もシュルの部屋の隣にある。

・・・雌の入浴時間はとても長い。というわけで俺はかなり待たされている。

体毛がある炎タイプのポケモンは普通、自身の体温を急激に熱して高熱の体温を保ったまま
毛繕いをすることによって体の汚れなどを落とせやすく清潔を保っている。
だが、炎タイプにも中に水を苦手とした意識と体を克服する者も僅かにいるが、滅多にそれを成し遂げた者は見つからない。
それなりの努力と苦労、そして信念が必要なのだから・・・。
アルはその一人であった。元は人間と言うだけあってマグマラシ・・・つまり炎タイプの全ての本能を完全というほどまでには
備わっていないらしく、弱点に対してもそんなに差は感じなかった。
さすがに努力はそれなりにしなければならなかったが水に対しては何事もなくなって、むしろ泳ぐことができるほどになっていた。
一方、岩タイプや地面タイプの技は人一倍苦手に感じてきてしまったが・・・・。

「アルー、お風呂あいたよ~。」
やっと二人が風呂場から上がってきて体をタオルで拭いてる。
「おお。じゃあ俺は今入るからな。」
その二人を通って風呂場へ行ってまず体をシャワーなどで洗う・・・。
そして湯船につかった。俺は普通の炎タイプのやり方もあるが、やはり風呂のほうが気持ちいと言うか疲れがとれると言うか、どちらにせよ風呂の方が利点があった。
湯船につかりながら俺はふと昼間のフィスの発言を思い出していた。フィスもまだ気がかりらしいがその事は俺も気になっている。
確かに今日は夕方までに何処にも外出していなかったが、妙に話が昨日の俺に一致している。
「緑の草原」の高い丘に昼間寝ていたマグマラシ、しかも俺にそっくり?
普通に考えてそれが自分ということは、まずありえない。・・・だがその事が不思議に思えて頭から離れない。
俺は昨日の事だが、おそらく今日フィスが見かけたマグマラシが寝ていた場所と同じところで寝ていたと思う。
しかしそれは昨日の事であって今日ではない。それが別人だということの何よりの証拠であるが・・・フィスはとうとう帰るまでその事を
まだ俺じゃないかと気になっていたらしい。
俺がその事をまだ頭から離れなかった理由はもうひとつ。そのとき見た夢・・・・。

昨日の昼寝に俺が見た夢に一匹のリーフィアが出てきた。
そのリーフィアの体のには、体の色とは似合わない黒い気体が纏ってあり暗黒を思わせる雰囲気であったが
その目は悲しそうにこちらを見つめている。まるで自分に助けを求めているかのように・・・。
何者かと思っているうちにそのリーフィアの姿は消え、同時に自分の意識もなくなっていったのだった。

「(まあその夢とは関係ないよな。・・・いつの間にかそのリーフィアをフィスに例えて考えてしまってたし・・・)」
とにかく不思議なことで何処か奇妙な話である。


「ハァ・・・・。」
と自分の部屋で溜息をついたフェリ。
「今日のシェネーちゃん・・・アルと一緒に寝るなんて。段々行為がエスカレートしてきてるなぁ。
 アルは私のもの・・・・なんては言えないケド実際私はそう思っているんだろうな。だけどアルは気付かないのかな私のこの気持ち・・・。」

もうアルとシュルとの三人での生活はもう7年が経ちそうでありアルと出会う前の、親と別れた日からもちょうどそのくらい経っていた。
私の親は何処かの街に場所は何故か教えてくれないが何処かに住んでいる。たまに住所も書いていない手紙が来るがすぐに親が書いた手紙だとわかる。
内容は・・・ありきたりな事が多いけど・・・・。
住所も書いていないので手紙の返事の仕様が無いからこっちの思いも伝えられないからちょっとばかり悲しい。
私はずっといつか親とまた逢えると思っている。
話を戻すけど、最近はアルのことが気になりすぎているかもしれない
自分でもそのことに気付くほど私はアルのことが好きなのは出会ったときから同じでもはやシュルもアルも家族のようなもの。
ずっと一緒なのになんでだろう・・・最近何かアルのことばかり気になって何時も考えているような気がする。
少しでもはなれている時間があると何か・・・こう、心が落ち着かないような・・・・。


俺はたった今、風呂から上がってきて気分も良い。
びしょ濡れの体毛は濡れて体にまとわり付いているが、このときに体を熱せば一瞬にして体を乾かせることができることは炎タイプの便利なところでもある。
それ以前に普通の炎タイプは体が濡れることを嫌うと思うが・・・。
体を乾かしてから広間にあった時計を見る。広間といってもリビングだがそれなりに結構広いところだ。これからは普通に「リビング」ということにしよう。
時間的に「Vs」がまたここに戻って来るまでにもう少し時間がありフェリもシュルもリビングにはいないから自分の部屋に居るだろう。
ふとテーブルの上にある手紙が目にはいり手に取ってみると、封筒にはいつもの「フォーゲル郵便」の翼の形をしたマークが描かれてあった。
「(依頼書か?連絡や何かの記事か・・・・)」
とりあえず封を切ってみる。
『ビリッ・・』という渇いた音がして紙が二枚入っていた。どうでもいい話だがこういう音がなんか俺は嫌いだ。
一枚は「おたずね者逮捕」の依頼。そしてもう一枚はそのおたずね者の似顔絵だった。

「・・・・あ・・あ」
そのおたずね者の名前と似顔絵を見て思わず声が漏れてしまい俺は驚きのあまり似顔絵を見張っている。嫌な冷たく感じる汗までもでてきてしまっていた。
そいつを名前、姿、特徴。全て書いてあるとおりに知っている。

名前:ズィルバー 種族:ヘルガー 特徴;異色種で白銀の体 依頼難易度★9

《「白銀の闇狼」と世間では言われているおたずね者ではなくもはや凶悪犯の中の凶悪犯である銀色のヘルガー
  ずっと一匹で生きていることから「孤独な暗殺者」と言われ続けている危険極まりない奴
  最近の被害は西のメルクヴュルディヒ大陸に姿を現したとの情報が入ってきた。そこで何人もの命が絶たれているらしい
  今まで逮捕のために全力で指名手配をしてきたが奴の情報は記しただけの事しかない
  唯一もう一つの情報がる
 「奴が姿を現すときは必ず誰かが命を落とすときだ」と噂されているが事実である
  マスターランクの探検家の諸君。一刻も早く勇のあるものが立ち上がることを一刻も早く祈っている》
                                                 ―探検隊連盟本部―


ここに記されている情報で誤報があった。しかもその情報は強調されているように感じられた。
「奴が姿を現すときは必ず誰かが命を落とすときだ」とあるが違う。
人の前に姿を現すときは必ず誰かを殺すというが、それは一人の前に姿を現したならばその者は必ず殺されているはずだが
現に殺されていない・・・

俺が今も生きているのだから
・・・そう。俺は奴に出くわしてしまったのだ。ズィルバーという「孤独な暗殺者」に・・・。不幸中の幸い生きては帰れていたが
命に関わるほどの重傷を負ったのは言うまでもない。それでも今も俺が生きていられるだけ奇跡的な事でもあったのかもしれない。
その出来事は約1年前探検隊連盟からの依頼で「未開の荒野」という場所を調査に行ったときの事だった。

俺は自然とその事についての全てを思い出していた。
あのときの事を・・・・。

4 跡命の傷・前(記憶) 


目的地についてみると、それは「荒野」と言うだけあって広いところだったが、かなり崖が多く入り組んでいて荒野と言うには程遠いところだった。
依頼での誤報はそんなに珍しくもないがここまで現地の情報が違うことなど俺達の経験からして過去には無かったことだった。
あまりにも入り組んでいるのでフェリが提案した三人で分散する事を実行した・・・つまり手分けしてそれぞれ分かれて調査することにしたのだった。
最初はフェリの意見に反対していた俺だが広さと地形を考えてみると得策かもしれないと思い納得した。
得策のそれが大きな命取りになるには予想もしなかったが・・・・。

「しかしまあ・・・霧まで出てくるとは入り組んでいる上にあたりが見えづらい。
 ・・・・ダンジョンにしては殺気どころか生き物の生気が感じられないのはどういうことだ?。」
俺は独り言をブツブツも文句をでも言うように歩いていた。進んでも進んでも同じ景色・・・気が狂いそうなところだ。
通常のダンジョンの場合は気付かず足を踏み入れてしまう事がよくある場所もあるが
俺達は今までの6年半の探検隊活動で他のものよりも「気」にかなり敏感になっていた。

「あー。イヤになってくるなもう・・・。」
さっきまで最近の事でフェリと喧嘩していた件を引きずってむやみに意見に反対した自分のことを思うと恥ずかしくて
自分も嫌になっていたしこの地形も嫌になっていし、・・・そのことによりまた独り言をしてしまった俺。
この辺は岩の質が鉄に近いとか、草木が少なくとも所々生えているなど、他にも一番大切な危険な場所などを抜かりなくこの地を回って
順調かどうかはこの状況じゃ分からないがとりあえず順調に黙々と調査を進めていった。


一方こちらはシュル。
シュルは小さい体ながらも身のこなしはアルにも負けないくらい素早い。
だが今回のような霧が深いところは無論、慎重に進まなければならないのであたりの気配を感じながらこの場所を
簡単なスケッチとこの地の特徴などを手際よくメモをとる。
「(なんかだれも居ないね・・ココ・・・!?)」
前方の道に何か小さい物が光った。
シュルはその光った物のところに行ってみるとそれは驚くことにとても身近なもので意外なものだった。
「これ・・・探検隊バッジ!?・・・・」
それは別のものとは考えられないタマゴに翼が生えたような形の物おそらく色からして探検家の駆け出しを卒業したあたりの階級であるブロンズランク
しかも時間が経っていないらしく汚れなどが付いていない。
こんなところに落ちているなど落し物である確率など極めて低いと思う。考えられることからしてここでその探検家は・・・・・・。
「・・・・さて調査続行よ、続行。」
シュルは気を取り直してそのバッジをポーチに入れ調査を再開した。


・・・・・結構時間がたったと思う。この地に入って3時間あたりはたったのであろう
この場所は「気」つまり雰囲気の空気が違うのはいくら鈍感なヤドンやドンメルなどナマケロでさえ気付くと思うほど空気が違う。
アルは空気の異変に気付いていた。ついさっきから今も感じている妙な空気、微かに恐怖を感じる・・・これは殺気だ。
「(誰か近くにいる!フェリたちじゃない・・・誰だ!?)」
すぐ先が見えないくらいにまで霧は一層深さを増していた。まるで何もない空間のように見えるが一歩踏み出せばまた別の近くの風景が変わるが
遠くなど真っ白で何も見えく、ずっと霧だったため感覚が少し鈍り想像すらできない。
そうアルの感は当たっている。・・・確実に誰かいる・・徐々に徐々にと音を立てずに確実にアルに何者かが近づく。獲物を狙う狼が・・・・
「誰かいるのか!」
普段の俺なら冷静に考えられたものだが、この時はこの殺気に少々気持ちが安定せずにいたので声を上げるという危険な行為をしてしまった
その自分がとった判断が危ないと気付いたのはその次の瞬間だった。
真っ白い霧の中でゆっくりと動く影はその声で声の主の正確な場所を捉えたとばかりに不敵な笑みをし・・・一気にアルを目掛けて飛び掛かった。
俺はその僅かな時間の間に背後からの空気の乱れ、そして一瞬にして強くなった殺気を感じ取ることができ瞬時に後ろを振り返った。
やはり誰かいたと確信したがその気配は近すぎたものであった。
「(誰だ!・・・っ!!)」
その者は白銀の体のヘルガーの姿ではないか・・・。
もうその姿を目で捉えられたときには白銀のヘルガーの右足の鋭利な爪が少しばかりフサフサの俺の毛を掠めたが、それでもハラハラと大量に毛先が落ちた・・・。
「ぐあぁ!!?」
その様子を確認する間もなく、次の瞬間に回り込まれて既に後ろの左足の鋭爪が俺の背を深く切り刻まれていたのだ。
いきなり襲ってきた白銀の狼との間合いを舌打ちをしながら素早く取る。
その風の抵抗で俺の斬られた背中から真紅の血が飛んだ。だがそんな事は今気にしていられない。
「ヘルガー!?何故こんな場所に・・・うぐ!」
痛みが激しい・・・大分傷が深いようだ。俺はその場に倒れ崩れてしまう

「・・・・・何故こんな場所に居るかって?死ぬ奴に深く語ることは意味を示さない。それだけだ・・・。」
その声は相手の気持ちを鎮圧するほどの恐ろしい気迫がある。ゆっくりとこちらに向かって歩みだす白銀の体を持つヘルガー・・・・まさに銀狼。
この世界は弱肉強食の世界から人権を尊重する世界へと変化しようとしてる。いや、もはや今大体は変わることに成功しているのだ。
だがいつだって本能に任せればこういうように他人の命を平気で絶やす者がほとんどだ。ポケモンとはそういう生き物・・・。

体の力が抜ける・・・激痛のあまり神経が一時的におかしくなったのか痛みを微かにしか感じない。深い傷よりも力が入らないことで俺は焦っていた。
些細な判断ミスで一瞬で命を落としかねないという心得は常識であるが油断しないときは生き物には誰にでもある。
あっけなく自分に「死」がそこまで迫ってきていた事を覚る
「落ち着け・・・・こんなところで死んでたまるか!。」
体全体に渾身の力を込めて立ち上がり体勢を立て直し、また白銀の狼との距離を更に置いた。
目の前にいる狼は只者ではないだろう。避けたつもりがまともに不意討ちを喰らってしまったが冷静さを取り戻せたが幸いとでも考えよう
今頃痛みが増してきた。というより痛みが戻ってきたのだろう。
戦いたくは無い・・・・。
なら避ければいい。
逃げ切れるか・・・。
速さには自信がある。

再び全身に力を込め一歩後退し・・・・次の瞬間には後ろに振り向き全力で走っていた。霧のため前が見えなく危うく岩などに衝突してしまうかと思っていたが
そんな考えは一瞬で頭から吹き飛んでしまい走り出してから十歩も満たないうちにアルは立ちは止まろうとした。
何故ならまた視界の中心の先にはさっきの狼の姿が・・・。
だが早くも突風のようなスピードに乗っていたので急には速度を落とせないものだ。
「二人!?いや、影分身か!?まさか先読みをしていたとでも・・・(止まらない!)」
【ズザザザザ】
止まろうと全力で地面に足を踏みしめてスピードを殺そうとするがなかなか直ぐには止まれない。アルの足は血が滲んで赤くなった。
もう狼は動いていなかったが姿は目の前まで来ている。そしてようやくそのときに速度が急減してきた時に・・・。
「!!・・・・ぐぐ!!」
狼に突き飛ばされていた。
おそらく衝撃がもの凄かったから《捨て身タックル》あたりだろう。だが相当な早さだった。
などと考えながら突き飛ばされた俺は地面に二、三度叩きつけられ見えている光景は上下に空と大地が何度か入れ替わり
視界の動きが止まったかと思うと仰向けになり真っ白い空を見ていた。
突然頬にも激痛を感じて手を当ててみるとその手には真っ赤な血が付いている。
「(何時の間に!?)」
頬に攻撃を受けた瞬間など無かった筈・・・。
「じゃあな!」
白き空に白き狼、その声と共にまた鋭い爪が降ってきてそれを間一髪のところで横に転がりかわした直後に地面を蹴り狼に《突進》をして、もろ脇腹に喰らわせた。
その狼は体勢こそは崩していないが受けた衝撃で後方に引っ張られているかのように下がっていく。だが直ぐに力強く大地に足の爪を踏みしめて止まった。
それなりのアルと狼の距離が生まれ、その隙にアルは探検隊バッジの両翼を外しそれを力の限り空に向かって投げた。天高く昇ったそれは空一面に大きく強い光を円状に一度放ったあと
地上と天を繋ぐかのような一筋の大きな光になって輝き続ける。    
「(これでフェリたちが早く来てくれればいいが)」
そのときにはもう再び狼が駆け出していた。狼とは視界外の光を確認していた性でその動作に対しアルは一瞬反応が遅れてしまいよけるのが精一杯だった。
・・・そう思った
「な!!?」
結果は予想も付かない背後を狼に取られ体を絞められている状態になっていた。
「フン。オレが実力の速さを出したらこんな様か?英雄の【アルタイル】さんよ・・・・」
「くそ・・・。そんな!今のが脚で走った速さだったのかよ!?」
本当に何も見えなかったのだ。時間を遅くして狼の姿が見えたとしてもアルは何も動いていなかっただろう。

「そろそろ死んでもらおうか。」
その言葉を狼が言い終った直後に激しい苦痛があるの体を襲った。
「!!ぐわぁぁ・・・く!・・・・・ぁあああ゛あ゛」
絞められている。しかももの凄い力で・・・。
体が全体が悲鳴を上げていろ気がしたがそんな考える暇も無く子の状況から脱け出す事しか今はない。だがやはり体格の差がありどんなに力を入れても狼はビクともしない。
奴の特性の体質がが「貰い火」でなければ《火炎車》など自身に炎をつけられて脱出できたかもしれない。
その狼がアルの苦顔を見て不適な笑みを浮かべさらに力を加えようとしたそのときアルも苦痛のなか僅かに笑みを浮かべ、無数の小さな☆が狼に向けて飛んできた。

「ぬ!星か!?チッ!!」
その(ホシ)の数は相当なものでしかも狼の体を確実に捉えていて全て当たっていて流石にこれには狼も耐えれずアルを放してしまった。
このときアルの体は出血した血だらけでその状態で戦っていたので汚れた赤が目立っていた。



そう、これは《スピードスター》。
どこからも無く飛んできたのではなく、あの探検隊バッジが放っている光の中に仕込んでいたもので
さっきあるが見せた光の確認はこのための事であって油断なんかではなかった。・・・だが隙は隙である・・・・。

狼はまだ自分を狙う(ホシ)の数が残っていて防ぐ体勢から動けなかった。この隙を逃さずアルは「煙幕」を撒き散らし自分も暗闇の中《捨て身タックル》を喰らわす。
そのことにより黒煙の中から白銀の狼が出てくる。今度は体勢を崩すどころか背後からの攻撃により無防備のまま突き飛ばされ体が倒れてしまったのだ。

「何者なんだお前は!何故俺を襲う!!」
「さっき言ったとおりだ。死の奴にまたものを深く語ることとなるとはない。癇に障る奴だな。
 まあ流石に星の停止を喰い止めた英雄があっさり殺されてしまえばとんだ面白い話だがな・・・・。」

その狼は落ち着いた口調で話しているがさっきまで感じ取れなかった心の底からの憎悪が伝わってきた。とてつもない怒りや憎しみなどが感じれる。
だがその中にも悲しみのようなものも薄っすらと・・・・本当の悲しみの意味はどうゆうものなのか・・・。

両者は随分と睨み合っていたが心理的にはアルの方が押されていた。予想外の展開と奴の只ならぬ威圧感・・・というより殺気に自分の気持ちが圧倒されていて
恐怖のあまり嫌な冷汗が出てきている。炎タイプは暑さにより汗など掻かないが感情的な冷汗なら別だ。
白銀の闇狼が先に《電光石火》を繰り出してきた。
この狼の動きは俺も予想がついていて遅れをとらずに自分も同じく《電光石火》を繰り出し彼に向かってかける。一瞬にして距離は短くなり
両者はほぼ同時に地面から離れ、目にも留まらぬ速さで空中で交わり二人が立っていた場所が入れ替わった。

一瞬、時が止まったような感じがした。
「・・・・・・・がはぁ!!?」
次の瞬間にはどちらかが断末魔のような声で叫び倒れた。紺色の体毛が紅く染まっていき白い霧で色が薄くなっている地面に夥しいほどの大量の紅い血を周りの地面に染めていく動かない
・・・・アル。
湿った空気に真っ白な霧が立ち込めている天候。さらに霧は静かに深みを増す・・・・・。
動かないアルの隣で銀色に輝く体を持つ狼が経ち尽していて、その顔の左目に縦の傷ができていて血を涙のように流し醜く潰れていた。白銀の体に血というものがすごく目立つ。
さっきの擦れ違いざまは確実に両者とも互いに相手の身を切り裂いていた。が、白銀の狼の方はアルの重傷を負っている背中の深い傷口を再度より深く切り裂き抉っていたのだった。
アルには既に意識がなくもう立ち上がることなどできなかった・・・・。


しばらくの時間が過ぎても白銀の狼は何を思っていたのかずっとそこで立ち尽くしていた。
そこで誰かの声が聞こえてきて狼はやっと動きゆっくりとその場を去っていった。
霧は今になって薄れてきて静かになったその場所に残ったものは動かないアル、白い天に吸い込まれているかのような一筋の光。これも段々と消えかかってきている。
血の匂い、そして近づいてきている・・・・フェリのアルを呼ぶ声だった。



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Last-modified: 2010-01-10 (日) 00:00:00
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