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誓いのくちづけを

/誓いのくちづけを

官能、流血描写があります。苦手な方はご注意下さい。


 僕の命を懸けてでも君を護り抜くと誓う。


 君は優美なお姫様であって、対する僕は平凡な下僕。取り柄もない僕にでも力になれる事はある。それはずっと側に仕えて君を護る事。そして僕にはそうしなければならない義務がある。
 僕は命を棄てた身であって、この命を拾ったのは君なのだから。
 そして、この命を生かそうとも殺そうとも君に委ねられている。


 僕は元々仕えていた主に見捨てられた屑なポケモンだった。僕のコタイチとか性格が気にくわないのが原因で、我が主にちっとも機能しないと罵られ、終いに僕は廃棄された。
 思えば、極めて自分勝手な主人だった。僕以外のポケモンにもああでもない、こうでもないと数々の言葉を口にしていた。自分の思うようなポケモンにならないと直ぐに棄て、新しいポケモンを補充する。
 僕が棄てられたのもその順番が回ってきただけだ。会って間もなくだけども仕えていた主を失うのは僕には苦痛で堪らなかった。僕の種族は元々主に仕えて、主の為懸命に尽くすという献身的な定めにあった。それが余計に自分を苦しめる要因となった。だから誰にも仕える事が出来ない自分に存在意義なんて見出せる筈が無かった。まして、このホタチを誰の為にも使う事が出来ないなんて。
 誰の力にもなれない自分が憎くて仕方がなかった。やがて怒りの矛先は自分にへと向けられた。このホタチが主の為に使えないならば、自分の腹を斬って死ぬ為に使おう。どうせ僕は生きていてもどうしようもない無力感に襲われるだけなのだから。そうなるくらいならせめて自分の肉体を自然が育む糧となる方がましだと思い始め、僕は自ら死ぬのを覚悟した。

 しかし自分の生に終止符を打つのは不可能だった。
 生きる希望なんて微塵にも無かった。
 だから容易く棄てられると高を括っていた。それなのに死ぬのは無理だった。
 想定外の出来事が発生した。
 見覚えもない君が突然姿を現して、見ず知らずの僕を助けてしまったのだもの。当時ツタージャであった彼女が、わざわざご丁寧にミジュマルだった僕を。彼女は蔦を巧みに駆使して僕の手から真っ赤に染まる筈のホタチを奪い取った。
 死ぬなんて馬鹿な事はお止めなさい。
 これが馬鹿な事であるもんかこっちは本気なんだよ、大切な主を失ったんだぞ僕は。
 ふうん、貴方は捨てられてやけを起こしたと。
 だったらどうするんだよ。
 ならば今から貴方の主はこの私ね、それなら文句は無いでしょう。
 その台詞に、僕は肝を潰してしまう。次に僕は彼女を訝る。何が目的なのか、どうしていきなり下僕になれと命じてきたのかを。懐疑するとはいえ、僕の小さな頭では到底理解し得ない。
 そんな僕の疑いの眼差しを気にする事もなく彼女は続けざまに言った。
 主が欲しいのでしょう? ならば私を主として、貴方は私に仕えて全力で護りなさい。
 それを聞いた途端に、無茶苦茶だ、と僕は感じた。だが、僕が喉から手が出るくらいの欲求を見事に満たしているので、的を射ていて合理的とも取れる。
 おまけに彼女と出逢ってから僕の身体は得体の知れない違和感を感じていた。これは武者震いとも言うべきなのか、僕の皮膚はぴりぴりと過敏に反応している。彼女から漂ってくる気迫は並大抵ではないのかもしれない。
 彼女が堂々としている最中に、僕はじれったくもなかなか決断が出せずにいた。僕のそんな様子を見て、彼女はこう言った。
 貴方に拒否する権利なんて最初から無いのよ。さあ、誓いなさい私を護ると。
 そう言い放った瞬間の彼女の真っ直ぐで鋭い瞳がとても印象であった。何の迷いも無い眼差しが僕とは対照的であったから余計にそう感じてしまったのだろう。そんな彼女に、僕は憧れを抱いていた。彼女ならば自分の主として認めてもいいのかもしれない、と。
 無意識に僕は彼女に跪くように身体を屈めていた。そして忠誠を誓った。
 僕は今日から貴方に仕え、護ります。
 誓いを交わし、僕の命は彼女の物となった。


 それから、彼女に翻弄されながらも僕と彼女の旅は始まった。彼女から目的を伝えられておらず、僕からしてみればただ行く宛てもなく彷徨うような旅である。
 彼女が女王様気質なのは百も承知であったが、それ以外は何も知らなかった。親、生い立ちや故郷等彼女は全く話そうとはせず、僕自身も深く詮索はしなかった。
 しかし一緒にいれば彼女について知る機会は幾らかあった。例えば、彼女は知識の数が尋常ではなく間違いなく博識と呼べるものであった。僕らが住んでる地方の他にまた別の地方がある事、またその地方ではこの地方にはいないポケモンがいる事とか。その他にも僕が知らない事を彼女は沢山知っていて、僕が話を聞いて驚く度々に、そんな事も知らないとはとんだお馬鹿さんね、と頻繁に罵られたものだ。
 旅で行く先々が平和とは限らない。野性のポケモン達は僕らの肉を餓えを満たす為に求め、トレーナー達は僕らを掴まえようと立ち塞がる。気楽な旅ではなく、常に危険を伴う旅であるのだ。
 野生のポケモンやトレーナーのポケモンに襲われる時には、僕が盾となるべく前へと進み、彼女はその後ろにいる形で戦闘体勢を取る。普段はそうして場を切り抜けるのだが、ごく稀に彼女が前線に立つこともあった。すると彼女は圧倒的な力と俊敏な素早さで敵を凪ぎ払っていった。それこそ僕が護る必要なんて無いくらいの強さで僕は驚愕した。それでも戦闘後に彼女は、私の手を煩わせないで頂戴、と自分で勝手に倒しておいて僕に不平を溢したりした。
 だから旅先で出会い偶々仲良くなったポケモンにはよく言われたものだ。あんな我が儘な子とよく一緒にいられるね、と。
 彼女は基本的には身勝手且つ冷淡だが、意外と優しい一面もあるのだ。
 例えば、貴方は既に死んだようなものだから臆さず戦いなさい、といつも僕にきつく言い付けてくる。だが、いざ僕がぼろぼろになるまで傷付くと、まだ死ぬのは赦さない生きなさいよ、と涙をぽろぽろ流しながら矛盾した命令をしてくる。ちょっとした怪我でも手当てをして貰った事だってある。でも僕が元気になれば、心配して損した、とか、こんな傷を負うなんて情けない、と溜め息を吐かれながら言われて普通の彼女へと戻っていた。
 その後に僕は気付いたのだ。彼女を護っているつもりだったのが、実は僕が彼女に護られていた事を。僕が命を棄てる際からずっと。
 彼女が泣いた姿を見てからはなるべく心配は掛けたくなかった。脳裏に焼き付いたその映像が何度も再生され、自分の不甲斐なさを思い知らされる。護るに値しないくらい自分が弱いから彼女を傷つけた。彼女を護るどころか、逆に僕が危害を加える立場となっている。
 強くなりたかった。
 でも僕には元々闘う才能が無いなんて分かりきっている。自分の能力が高ければ、今頃は棄てられずにトレーナーのポケモンだった。そんな僕が強くなる為には、自分を徹底的に変えていくしか手段はない。僕はもう自分の為に生きている必要はないのだから。
 そんな僕に必要なのは真剣に彼女を護る事だ。それこそ、僕の命を懸けてでも。このホタチに懸けてでも彼女に指一本でも触れさせないと心の底から誓った。
 僕は彼女の何でも貫く矛となり、何でも防ぐ盾となろう。彼女がいつしか僕に教えてくれた矛盾の話から取ってそれを目標とした。僕が扱うホタチだって鋭い一撃が放てる矛にも、敵の攻撃を鉄壁に防ぐ盾にもなる。そもそも自分の存在自体が生きてるのか死んでるのか理解できないくらい矛盾しているようなものだったから尚更目指した。
 最初から死んでると思って闘え、でも彼女の側で死んではいけない。
 これはダイケンキになった今でも肝に銘じている事だ。それくらい僕にとって必要な座右の銘だ。
 そして、僕はトレーナーが彼女に向かって投げてくるボールをホタチで瞬時に一刀両断したり、自分だけで相手のポケモンを全滅出来るくらい力をいつしか身に付けた。これまで僕が弱かったのは半端な覚悟で闘っていたからであったからだ。命に代えてでも護るべきものを手にした今の僕には、相手の攻撃全てが手緩いものばかりに見えていた。どれもこれも気持ちの籠っていない攻撃をする相手なんかに負ける訳がない。
 僕の動きが格段に変わってからも、護られている彼女は絶対に僕を誉めようとはしなかった。護衛として当然の働きよね、と単に言うだけであった。それでも僕は彼女のその言葉をお誉めの言葉として受け取っていた。本人は気付いてないだろうが、ほんのりと頬が紅くなる姿が見れるから。それは数少ない彼女の可愛い仕草でもあった。

 他に彼女の可愛い仕草が窺えたのは確か海を渡るときであった。
 とても大きくて立派な橋を渡れば、簡単に向こうの細長い建物がそびえ立つ方に渡れる。だが、彼女には人間の眼につくから橋を使うのは却下された。そして彼女が出した結論は僕に波乗りを使えとの事だった。しかし今まで陸続きだった旅なので水タイプなのにもかかわらず、ろくに泳いだ試しは無かった。いくら僕がフタチマルに進化しているとはいえ、ほぼ同じ大きさのジャノビーである彼女を運ぶには難がある。しかしそんな状況でも彼女は自分の本能を信じて泳ぎなさい、ときつい一言を放つ。おまけに、対岸とはかなり距離があり、早くしないと日が暮れてしまう可能性があるが故、泳ぐ練習も一切させてくれない。
 いざ海を渡るとなっても、僕は彼女を乗せられる程大きくはない。だから仕方なく彼女には僕の背中に掴まって貰う事にしたが、身体と身体同士が密着するので彼女の柔らかいふにふにとした肉体が気になってどうしようもない。泳ぎどころじゃない。おまけに彼女の鼓動までも僕に刻まれる。しかも心なしか刻むのが速い。いくらなんでもそれは反則ではないかと思ってしまう。泳いでる最中に彼女は僕に、ちゃんと泳ぎなさい、とか罵声を浴びさせてくるけど照れ隠しにしか取れない。もう自分でも波に乗ってるのか分からないくらい意識が飛びそうだった。
 かろうじて海を渡り切った時に彼女の姿を確認するとやはり顔を真っ赤にしていた。それをまじまじと見ていた僕は、彼女から直々に蔓の鞭の刑を頂く事になった。海を渡り疲れてる状態からの褒美だったから正直、死線を越えて死にそうになった。
 そういえば、今まで一緒に旅をしてきたというのに、海を渡るときにやっと初めて彼女に触った。それまでは彼女に触れるなんて一度も無かった。まあ、僕は本来彼女の下僕だからそんな機会なんて無いと思っていたけど。でも彼女に触れて実感した。僕はちゃんと生きているんだ、と。だって、死んで幽霊だったら彼女に触るなんて出来ないもの。彼女のお陰で僕はこうして生きている、存在している。その有り難みを僕は改めて噛み締めたのだった。
 そして彼女に初めて触れた所為なのか、僕は彼女についてよく考える機会が増えていった。ミジュマルだった頃はそこまで意識していなかったのに、もっと格好良く彼女を護ってあげようとか、何とかして彼女の気を惹けないものかと頻繁に考えるようになっていた。挙げ句に、僕は彼女の隠された過去についても気になり始めた。彼女は野生のポケモンなのかそれとも飼われていたのか、僕と出会うまでは何をしていたのだろうとか。でもそれらを頭で考えるだけであって、僕には彼女に訊く勇気も権利も持ち合わせていなかった。
 しかしとある日、あれは確か電気を帯びている岩があちこちに転がっている洞窟を抜けた夜だったと思う。前触れもなく、彼女は唐突に自分の事について語り始めたのだ。
 彼女は以前裕福な家のポケモンであった。だが、彼女がいた家はいつしか没落してしまい、追い出される羽目となってしまった。それでポケモンを飼うのが困難となり、彼女は御主人と離れる境遇に陥ってしまった。御主人は彼女を引き取ってくれる人を懸命に探したが見つからず、彼女は野生に帰す運命となってしまう。しかし彼女は今までちやほやされてきた生粋の温室育ちであった。そんな彼女が野生で独り過ごすのは難しいと考えた彼女の御主人はこう言ったらしい。
 あなたを守ってくれる子がきっと現れるから大丈夫、と。
 彼女は嘗ての御主人が話してくれた数々のおとぎ話が好きだった。だから御主人の言葉を疑わずに信じたらしい。しかし所詮はおとぎ話に過ぎなかった。なかなか簡単に事は上手くいかず、彼女が待ち望むポケモンは現れなかった。そんな最中に彼女が出した結論は役目を担う奴を適当に見繕って仕立てるというものだった。その計画に偶然にも僕が選ばれた。彼女も流石に、まさか自殺しようとしていた僕がその役目を務めるとは考えてもいなかったらしい。そもそも僕を助けた理由が、私だって逆境を生きているというのに逃げるように死のうとしていた貴方に腹が立ったのよ、というあくまでも自分本意からであった。
 彼女の話を聞き終えた途端、僕は自分が恥ずかしくなった。彼女だって決して楽な境遇に恵まれていないのに、自分よりもはるかに強いのだと思い知らされたからだ。君は強いんだね、と僕は尊敬の意を込めて言った。でも彼女は何故だか表情を曇らせて沈んだ口調で返答した。
 強くなんかないの、私は独りが怖かっただけ。
 予想外の言葉に僕は驚きを隠せない。思わず、嘘だよね、と彼女に問い掛けてしまった。
 僕にとって彼女は、どんな事にも動じない強い子であると映っていたから、酷く悪い冗談だと思った。
 でも彼女は、嘘なんかじゃない、と言って率直に話してくれた。
 主といつも側にいた彼女は孤独を知らなかった。自分以外誰もいないなんて環境は全く無かったという。だから独りでいた時の夜は寝れないくらいの不安があったそうだ。僕を無理矢理下僕にしたのも絶え間無い孤独を紛らわせる為であると言った。
 独りでいると淋しさが襲ってくるの。不安で不安で心がぎゅっと押し潰されそうで仕方ないの。貴方には悪いと思ったけど気休めでもいいから、貴方を下僕にでもしないと生きていけないと思った。それくらい独りなんて考えられなかったのよ。
 それを聞いて僕は、自分が以前ぼろぼろになった時に泣いていた彼女の姿が鮮明に脳裏に過った。
 ――もしかすると彼女が泣いていたのは僕の心配じゃなくて、自分が独り身に戻ってしまう恐怖心から……。
 僕は一先ず、ごくりと固唾を呑んだ。そうでもしないと気が気ではないからだ。そして、僕はまだ平然を装っている脳内で事実を痛切に受け止めた。
 僕は単なる彼女の孤独を忘れる為の道具でしかない。
 それ以上でもそれ以下でもない。僕はそういう役目だけを背負っている。僕が命を尽くしてまでも彼女を護ろうとも、彼女からしてみれば他愛も無い事なのだ。彼女にとって一番大切なのは、自分が独りじゃないという事なのだから。
 だけど、僕は彼女に付いていくしか術はない。たとえ彼女が僕を物として捉えていても。僕は彼女に忠誠心を誓ってしまったのであって、彼女が僕の主である事実は決して揺るがない。
 僕は主には逆らえない性分であり、下僕が主に刃向かうなんて以ての外なのだから。

 この旅はどこまで続くのだろうか。どこが終着点なのかも見当もつかない。寧ろ終わりなんて来なければ良い。終わりが見えてしまったら僕は彼女に、以前の主みたいに棄てられるのだから。
 彼女の過去を知ってからはそればかりが常に頭の中に居座り続けていた。僕は棄てられるのが怖くて不安で堪らなかった。
 道中を歩けば、道徳心の無い人間が棄てていったゴミばかりに目がついた。何時しかそうなる筈であろう僕の運命を表しているようであったからかもしれない。自分をゴミに投影すれば、僕の生きてる価値感も所詮はそんなものだと思い始めていた。僕が死んだって世界は普通に廻るんだ。僕が死んだという事実なんて世界からしてみればこのゴミと同然なのだ。気軽にぽいっと棄てられてお仕舞い、そんな取るに足らない存在。
 それは彼女だって同じ事を考えている筈――。

 僕が死ぬよりも苦しいのは、主に棄てられる事だ。
 僕の心に孕んでいる負の感情はホタチにへと包み隠さず露呈していく。そして僕をどんどん蝕む。
 別に大した相手では無かった。いつも僕達に襲いかかってくるポケモンと比べて同じくらいか少し弱いくらいだった。そんな敵に僕が負ける訳が無いと思っていた。しかし時間が経つにつれ、戦況は芳しくないものへとなっていく。普通だったら当たる攻撃が空を切って外れてしまう。何時もだったら避けられる攻撃を直撃してしまう。不安要素が積み重なって気が動転とする。こんな筈では無い、と。その焦りが僕の心を段々満たしていく。焦りが積もり、平常心を喪った僕に待ち受けていたのは、
 あか。
 自分の身体から真っ赤な鮮血がぼたぼたと溢れていた。紅い紅い血が流れを止む事無く、やがては地面にへと滴る。
 僕は自分の眼を疑った。これは一体何の冗談だろう、と。念のために手で触って確認をしてみるが、やはり自分の血である事には変わりない。
 血がこんなにも流れれば、身体は危険だと痛みが訴える筈だった。でも痛くも痒くとも感じない、何も感じないのだ。何も感じないのに少しずつ目の前が暗くなっていく。地面の温かな感触が足から全く伝わらなくなっている。力が入らない。
 ばさっ。
 何かが倒れた音がした。続いて彼女が叫ぶ声が耳へと鮮烈に響き渡った。だが、僕の頭はそれだけで許容範囲を超過してしまう。超過の後、僕に待ち受けていたのは有無を言わせない強制失神であった。

 僕が倒れた後、彼女は僕を背負って逃げたらしい。彼女の懸命な手当てがあって、どうにか僕はこの肉体と精神とを繋ぎ止められたのであった。
 彼女を守って死ぬのが出来たとしても、彼女を守らずして死ぬのなんて有り得ない。あの後から僕が運良く生き延びたのはそれだからと思った。実際、傷口よりも痛かったのは心にぽっかりと空いてしまった穴だった。彼女よりも先に倒れて守れなかった自分への焦燥感が、僕にホタチを手に取ろうという気にさせない。ホタチが握り締められない僕なんてただの駄目な奴にしか過ぎないのに。
 珍しいわね、貴方が倒れるなんて。油断のし過ぎか、自分の実力に溺れていたのかしら。まあこれを機に精進する事ね。
 意識を取り戻した僕に、彼女は普段の厳しい調子で言い放った。いつもの僕であったら普通に受け止めていた筈だろう。確かにそうだ、精進しなくてはならないな、と。でもこの時の僕は僕でいるのに僕では無かった。
 こんな弱い僕なんか棄てて逃げれば良かったじゃない、代わりなんて幾らでも探せばいるのだから。
 口が独りで勝手に動いた。感情を表す余地がないくらいに無意識だった。それを聞いた彼女は蔓で僕の首元を乱暴に掴んだ。僕は掴まれたのだが、やはり倒れた時の様に無反応であった。そんな僕に彼女は痺れを切らしたのか、僕の頬を蔦で強く引っ叩く。すると今度は痛みがじんわりと伝わってきた。そうして彼女は僕に言い放った。
 馬鹿を言わないでよ。貴方は貴方であって、誰も貴方の代わりになんかなれないの。私はもう貴方じゃないと駄目なのよ。逆に訊くけど、貴方は今から私以外の主につけるの? 
 僕とは対照的に彼女の言葉には感情が籠っていた。それに対し、僕は答えられなかった。答えられる訳が無い。沈黙せざるを得なかった。
 僕は彼女を誤解していたのだ。僕は単なる彼女の道具だと思っていた。そんな僕が発言する権利なんて持ち合わせていない。それでも僕はかろうじて首を横に振った。
 彼女が僕の反応を確認すると、ほら貴方だってそうじゃない、と僕に言った。続けて彼女は、良いものあげるからほんの少し目を閉じてなさい、と僕に告げた。僕は素直に彼女に言われた通りに瞼を閉じる。すると僕の口元には温かく柔らかな感触が伝わった。
 日頃の成果のご褒美よ、それともこれだけじゃ不満かしら、足りなかったら蔓の鞭の刑もしてあげる。
 彼女の頬がほんのりと火照っていた。それに加えて眼が紅くなっているのにも僕は気が付いた。彼女は僕の事を本当に心配してくれたのだろう。僕が目覚めるまで、寝ずに看病していたに違いない。
 僕にとっては十分過ぎる褒美だよこれでまた貰ったら釣り合わないよ、と刑の執行だけは丁重に断った。しかし、本当にそれだけで満足していた。僕にとってかけがえの無い物を見つけたのだから。
 僕は自分の側に置いてあったホタチを強く握り締めた。まだ僕の使命は終わっちゃいない。

 それから負傷した傷も癒え、足踏みしていた僕達の旅は再び歩き始めた。山を越え、川を越えたりと数々の景色をこの目で焼き付けた。その隣ではちゃんと彼女がいた。そして彼女は僕にこう言った。
 私がこうして旅をしているのは、様々な世界が見たいからなのよ。私の世界は今まで本の中や屋敷の中だったから。別に屋敷での生活には不自由が無かった、でも何か物足りなかった。世界を見るのも旅の理由だけど、もしかしたら私はその足りない何かを探してるのも理由かもね。
 彼女でさえ分からないのだから、僕が彼女の求めている何かは分からない。でも、僕はせめて出来る限りの事は真っ当しよう。
 じゃあ、僕は君が満足するまで絶対離れないよ。
 僕がそう言うと彼女は呆れた様に言った。
 当たり前でしょ。貴方に護衛を辞める権利なんて無いんだから。
 言葉と態度とは裏腹に、彼女は嬉しそうだった。僕が単にそう見えただけかもしれないけど。

 そして、僕達はとうとう最後の進化を迎えた。彼女はジャローダに、僕はダイケンキとなった。彼女はより美しく、加えて気品のある姿となり本当にお姫様みたいだった。その反対に僕は二足歩行から四足歩行になり大きく代わり映えしてしまった。彼女に嫌われないかと危惧したくらいである。それでも彼女は、なかなか見栄えのある姿じゃないの、と言ってくれたからほっと安心したのと嬉しくなった。対して、彼女は足が無くなったのを気にかけていた。でも僕が君はお姫様みたいに気品のある姿だね、と言うと、彼女は貴方にそう言われるとこの姿も悪くないわね、と恥じらいながら返事をしてくれた。お互いが自分の進化した姿に気に食わなかった。でも相手が認めてくれたから、この姿が胸を張って誇れるようになった。




「今日でこの旅はおしまいね」
 遂にこの日がやってきてしまった。
 いつかは旅を終える日が来ると分かりきっていた。夢から醒めるのと同じ様に、終わらない旅なんて有り得ないと承知していた。それなのに何気無く口にした彼女の一言が、僕の胸にへと深く突き刺ささるのは何故だろう。それと同時に彼女と過ごした記憶がふつふつと沸き起こるのは何故だろう。彼女と出逢った日から今日に至るまでの思い出が鮮明に蘇って懐かしさで胸が一杯になるや否や、
「……泣いてるの?」
「……え?」
 乾いた地面にぽつぽつと涙が落ちて、染み込んでいた。彼女に言われて目頭が熱くなっているのに初めて気が付いた。僕は泣いてしまっているんだなと。
 僕は彼女に泣いている姿をみっともなくて見られたくなかった。だから強く粋がって、
「違うよ。目になんか入ったからだよ」
 と余りにも見苦しい言い訳を述べた。彼女は涙一粒すら流さないのに、僕だけぼろぼろ泣いている。こんな自分が情けなくて認めたくなんて無かった。
「ふうん、そう」
 彼女はたったそれだけ言って、僕の方を特に見ようとはしなかった。
 この旅が終わるというのは僕と彼女の繋がりが全く無くなるという事だ。僕はもう彼女の側にいて、護る必要が無くなるのだ。それは彼女との別れを意味する。そう思うと心苦しくなり、脚先の感覚が全く感じられなくなる。まるで身体が宙に釣られているような気分。とても不安定で僕の心を表しているみたいであった。

 時間は絶対に僕と彼女をそのまま置いてくれない。それどころか僕と彼女を無理にでも引き裂こうとする。
 太陽は西の方に逃げ隠れしてしまい、あっという間に最後の夜を迎えてしまった。
「……君は辛くないの?」
 僕は堪らず彼女に訊いてしまった。彼女も僕と同じ気持ちだったらならば、考え直してくれるのではないかと心の片隅で期待していたからだ。
 でも彼女は僕の気持ちも知らずに冷たく即答した。
「ええ、平気よ」
 乾いた声に加え、彼女は顔色一つ変えなかった。あんなに一緒にいたのに、彼女は別れを惜しむ素振りをちっとも見せない。彼女の素っ気ない態度に、あらゆる感情がぶつかりせめぎあい、僕は自分の心を抑えられなくなった。
「僕は辛いよ! だって、だって!」
 僕は君に必要とされて嬉しかったのに!
 自分に初めて存在意義を見出だしたと言うのに。
 僕は君と一緒にいてしあわせだったのに。
 僕は君と離れたくないのに。
 僕は君を心から信頼していたのに。
 彼女に伝えたい言葉が山程あって、でもなかなか声にならない。
 それもその筈だったのだ。僕は別の事が我慢出来なくて、そちらに気を取られてしまったのだから。
 視界が淀んで彼女の姿がはっきりと映らない。声が詰まる。水が頬を滴る。
 彼女は僕のこんな情けない姿を見てどう感じるのか。僕を軽蔑するのだろうか。そう思った矢先に、
 ぺろ。
 頬に優しい感触。僕の頬を伝う水の流れが止まっていた。
「貴方は少し誤解してるわ。旅は終えると言ったけれども、護衛を辞めろと言った覚えはないわ」
「……それじゃあ」
「そう、貴方は一生私の側に仕えなければいけないのよ」
「は、ははっ」
 僕は彼女の言葉を聞いて咄嗟に笑ってしまった。ほんの少し前まであんなに沈んだ感情だったのに、今は夜空に浮かぶ月まで届きそうな程に舞い上がっている。
「じゃろーだぁっ!」
「えっ、ちょっ、ちょっと!」
 僕は思わず彼女に飛び付いた。だってそうせざるを得なかったのだから。彼女に抱き付きたくなるくらい嬉しくて仕方がないのだ。
 抱き付いた拍子に勢い余って、彼女は後ろ向きにごろんと倒れて、僕の下敷きとなってしまう。その時になってようやく酔いが覚めた。馴れ馴れしくも彼女に触ってしまい、挙げ句の果てに押し倒してしまった。流石にこれは度が過ぎてしまったと思うと、身体が正直に反応して冷や汗を流し始める。
「ご、御免」
 僕は直ぐ様に謝るのだが、対する彼女は何も言ってはくれない。赦しを貰えない。
 彼女は自身の身体を僕の身体にへと巻き付けてくる。僕は抵抗力を奪われてしまう。そうして締め付けられると思った矢先であった。
「っ――」
 今度は僕の口を奪われて、呆気に取られた。その束の間に、彼女は舌を僕の口にへと捩じ込んでくる。
 僕がこの行為が分からない訳ではない。彼女と僕、共に成熟した者同士ならばこれが意味するのは――。
 彼女は目を瞑りながら、舌で舐め回して僕の口内を堪能する。頬をほんのり紅く染めながら。彼女のその姿に僕はいとおしいと思った。
 僕もゆっくりと目を閉じて、神経を集中させていく。絡み合う舌、触れ合う身体、たったそれらだけで彼女を感じ取り、また自分を彼女に伝える。
 ねっとりと執拗に絡み付いてくる彼女の舌。彼女が僕を欲しいと訴えている。そんな僕も彼女の側から離れたくないと、舌を懸命に動かす。すると唾液が混ざり合ってどちらが自分のものなのか判断出来なくなる。それくらい僕らはお互いに貪りあって、自分達が欲するものを身体を通して獲ていく。
 彼女が僕の身体を締め付けてくる威力が徐々に増す。それにもかかわらず僕は彼女にくっつこうと自ずから過度な力を抜く。それでも痛いとは感じない、感じるのは彼女の温もり。彼女の温もりが僕を包み込んでいく。
 この温もりは僕にはとても大切な繋がりなのだ。自分の温もりなんかいらない、その代償にこれさえあれば僕はまだ生きていける。骨が粉々になろうと身体がぼろぼろになろうとも、僕の命よりも大事な彼女を護っていける。
 彼女がそっと口を離す。それに気付いた僕はゆっくりと瞼を開けた。すると彼女の顔が目に入ると共に、誰のものかも分からない唾液が僕と彼女の間で糸を引いていた。それは今まで何度か見た事のある橋を連想させる。だけどもその唾液でできた橋は次第に形を崩していき、遂には彼女の身体に墜ちた。
 壊れてしまった橋。
 所詮は唾液だから、とても脆弱であるのは当然である。でも、それがとても頑丈であったなら――。
「これはまだ序章に過ぎないの。……さあ、楽しみましょうか」
 僕は今頃、この豹変した彼女の姿にお目にかかれないだろう。
 月明かりに照らされた彼女は艶やかにそして妖しく僕の目に映る。昼間の高貴な美しさとはまた違う彼女の様子に戸惑った僕は瞬きをしてしまう。
 どすんっ。
 自分の身体が勝手に円運動し、そして背中に走る衝撃に、響く地面。
 瞬きをしてしまうなんて不覚なのだ。相手に隙を見せてしまうので、してはならないとわざわざ彼女に言いつけられていたのに。
「私がもしも敵だったら貴方は今頃死んでるでしょうね」
「……仰る通りで」
 仰向けにさせられた挙げ句に、僕の身体は彼女の長い身体で締め付けられてしまい手も足も出ない。とは言うものの、手なんて進化してからは無くなってしまったが。
「まあ、君に殺されるなら僕は心から歓迎するけど」
 誰かに殺されるくらいならせめて君に殺されたい。この身体が朽ちて消えようとするならば、せめて最期は君がうんと深く突き刺して欲しい。彼女に殺されるなら、きっとこの世に未練なんて無くなるから。
 僕の言葉を聞くなり、彼女は怪訝な顔をする。そして僕に冷たく一言。
「……もしかしてマゾ?」
 それを聞いて僕は思わず無言になる。あながち否定は出来ないのだが、いきなりひっくり返されたような話題に戸惑ってしまう。仕方がないから僕も返す言葉で、
「そういう君はサドの気質が十分備わっているよね」
 僕がそう言うと、彼女は黙って考え始めたが少しするとまた口を開いて、
「そう? 気のせいじゃないかしら」
 全く思い当たる節が無いと彼女の顔に書いてあった。
 まさか自覚症状が無いとは。もう鈍感というか天然というか。
 現に今だってそうじゃない。僕を地べたに押し付けて、彼女は優越感にでも浸るように僕にのしかかっている。これのどこがN、すなわちノーマルであると言えるのか。はっきりと白黒つけてやりたい。君は間違いなくサドだよ、と。
「さてと、お喋りはこの辺でお終い。貴方は少し私の玩具になりなさい」
 おんなのこっておにんぎょうあそびがすきなのよ、ごぞんじ?
 彼女にそう言われても意味がいまひとつ良く分からなかった。“にんぎょう”とは何か。人間が使うものだったら先ず分からないし、彼女が教えてくれなければ知る由もない。
 しかし、彼女は僕が言葉にせずとも理解の場を設けてくれる。どうせ僕に学が無いと分かりきっているから。妖しく笑いながら彼女は、
「にんぎょうって可哀想な物なのよ。満足するまで弄られ続けられなければならないの、勿論抵抗なんてもってのほか」
 あなたはわたしのとるにたりるおにんぎょうになってくれるのかしら?
 彼女が言い終わった矢先に、僕の敏感な部分に違和感を覚えた。やがてそれは僕の意思とは関係無く勝手に大きくなって、むくむくと起き上がる。僕は己の肉刀を主である彼女に突きつけてしまった。
「主君に向かって刃を向けるとはとんだ無礼を働くわね。そんな貴方には罰を与えなくては」
「いや、君が勝手に僕のそこを――くっ」
 うるさいこはきらいよ。
 彼女は尾を駆使して、ぐいっと僕の肉刀を先端部で乱暴に押し潰してくる。他の場所でなら痛覚が機能するが、敏感な所だけあって、否応無しに快感が伝わる。それ故に、僕は堪らず声を漏らしてしまう。
 僕の喘ぎ声を聞き取った彼女はご満悦な表情で、
「尻尾で感じるなんて本当、はしたない子だこと」
 まあ、あなたにはしっぽがおにあいね。
 そう言いながら彼女は更にぐいぐいと尾を動かしてくるので、僕の肉刀が折れないかと心配になってくる。そんな中でも身体は馬鹿正直に快楽的な刺激だけを感じ取る。雑に尾を動かしているだけにも拘わらず。
 刺激を受けた僕の肉刀は反射的にぬるぬるとした透明な液体を帯びていく。肉刀に帯びるという事は彼女の尾にも自然と付着するのが目に見えていた。案の定、その滑りに気付いた彼女は口元を緩めて、ほくそ笑む。
 ほんとう、しっぽがおきにいりなのね。
 そう言われて肯定はしたくないが、否定は出来ない。事実、僕の肉刀は彼女の尾だけで追い詰められてしまっている。僕の肉刀は悲鳴上げるかの如く、苦戦中であるのだから。
 まだ彼女は尾しか使っていない。ツタージャの頃から十八番である蔦はまだ姿を見せてないのだから、尚更状況は芳しくない。まだ彼女は僕に本気すら出していないし、これだって実力の一割、良くても二割しか使っていない事である。
 彼女がぐいぐいと尾を動かすと肉刀に纏わりついた液体の所為でぐちゅぐちゅと音が生じる。それは、僕が感じてしまっているという何よりも証拠となってしまっている。すなわち、彼女が僕は被虐性淫乱症であると決め付けても可笑しくない。
 そして、何より事態がとんでもなく悪い。
「じゃろーだぁっ……ちょっと」
 このまま休み無く尾を動かされると、僕は間違いなく果てるだろう。たかが尾でみっともなく欲求を満たしてしまうのだ。
「ちょっと、って何かしら? 言いたい事ははっきり言いなさいよ」
「だからっ……やめっ、あっ」
 まずい。もう限界が――。 
 僕は彼女に向かって汚ならしいものをかけてしまう――。
「あ、あれ……?」
 そうなる筈だった。しかし現実には不完全燃焼で、完璧に燃焼するにはあと少し、寸前の所で止まってしまった。その証拠に僕の肉刀はひくひくと蠢いて僅かでもいいから刺激を得ようと渇望としている。
 僕自身、この溜まりに溜まった鬱憤を放出しなくては気が済まない。でもそうしたくても身体は依然として束縛されたまま。
「どうしたのかしら? 止めて欲しかったのでしょう?」
 彼女の言う通り、その筈だった。僕は彼女に止めて貰うのを望んでいた。それなのに、今の僕ときたら。
「……っと」
 口が勝手に動いてしまう。それを聞いて彼女は嫌らしく笑う。
「よく聞こえないわね。もっとはっきり喋って頂戴」
 手玉に取られているとは分かっている。でも言わずにはいられないのだ。
「……もっと」
 もう恥ずかしいなんて感情はとうに忘れてしまった。そうでないと言える筈がない。
「もっと、だけじゃ分からないわよ。ちゃんと言いなさいな」
 彼女は本当に意地が悪い。僕の言いたい事なんて分かりきっているというのに。そうでないと、にやにやと憎たらしく笑う訳がない。
「……僕の性器を君の尻尾でもっと擦って」
 僕の言葉を聞いて、彼女はこの上なくほくそ笑んだ。僕の口からやっと待ち望んでいた台詞を聞けたからだろう。
 ふふっ。ふふふっ。
 挙げ句に声を上げて笑い始める彼女。そんな中、僕は黙って懇願の眼差しで彼女を見つめるしか方法はない。
 そして漸く彼女は口を開いてくれた。
「いいわよ。ただ――」
 じょうけんつきだけど。
 彼女がそう言った途端に、僕の肉刀に違和感が生じた。それはやがて違和感どころの騒ぎでは無くなっていた。何かに巻き付かれていて僕の肉刀はかなり窮屈な思いをしてると感じ取れる。
 眼を凝らして見ると、僕の肉刀の根元には幾重にも蔦が絡まっていた。僕の肉刀はあまりの締め付けに苦しそうにしている。
「ちょっと、これっ」
 有無を言わさず、彼女の尻尾が再び動き始めてしまう。本来ならば、今頃僕の願望は達成されるつもりであった。だが事態は彼女の策略により急変してしまった。
 彼女はとても性格が悪いと連れ添っていて存分に理解していたのに、まさかこんなにも容易く謀略に嵌まってしまうとは。
 だってこんなんじゃあ、気持ち良いどころか、
 生殺し、だもの。
 確かに気持ちは良い。気持ちは良いのだが物足りない。僕が求めているのはこれじゃない。この延長線にあるものが欲しいんだ。あと少し自由になれれば僕はそいつを手にする事が出来るのに。
 だけども目先で彼女を眺めるしか出来ない。行動に移したいのに、僕の自由は彼女が奪っているから、そうしなければならない。
 そんな僕のうやむやで晴れない心情を見透かしてか、彼女が一言。
「気兼ねなく存分に感じていいのよ」
 悦の篭った口調であり、彼女の気分は相当良いものだと感じ取れた。口元が緩んでいて、最早ほどけてしまっていると言っても過言ではない。
 僕が何を言いたいのか、彼女は絶対に分かりきっている。それなのに彼女は知らないつもりで、尚も僕の肉刀を虐め続け、優越感に入り浸る。
 それもそうだ、彼女は僕の命運を握っているんだから愉しいに決まっている。僕がどんなに苦しんでいようとも、彼女は高見の見物でもして、自分が愉しめる方に事を運べば良いのだから。
「ちょ、やぁっ……」
 そして彼女の計らいにより、僕に用意されたのはこの生き地獄。当然、僕はこんなのを望んではいなかった。僕が切望したのは開放感に満ち溢れた天国なのに。
 欲求の捌け口を喪った僕の肉刀は今にも破裂してしまいそうなくらいぱんぱんに膨張している。だがしかし、彼女が肉刀の根元に幾重にもなって巻き付けた蔦により、噴出するのは許されてはいない。せめて可能なのは、ぬるぬるとした透明な液体を垂れ流すのみ。しかしその液体は液体で、もう我慢なんて不可能だと訴えている。
 このままでは、肉体的に辛いのは勿論、精神面でも可笑しくなりそうだ。出さなくてはいけないものを出さないのは生理的にも宜しくないし、我慢のし過ぎは身体に毒なのだから。
「じゃろーだっ、もうっ!」
 お願いだから、いい加減に僕を解いてくれ。そうじゃないと僕はもう限界だ。きがくるってしまいそうだ。
 僕の悲痛な叫びを聞くなり、彼女はにやりと笑みを見せつけてきた。僕が必死に懇願しているのが、面白可笑しくて堪らないようだ。
「尻尾を動かしてくれって言ったのは貴方なのよ? ふふっ」
 うふふっ、あはははっ。
 終いに、彼女は声に出して笑い始める。僕を愉快で滑稽な見せ物として楽しんでいる様子。これ程の笑い声を上げたのを見たことがないくらい、彼女は偉い上機嫌だった。
 やがて彼女は笑うのをぴたりと止めた。その代わりにまた別の悪巧みでも閃いたかの如く、やらしい視線で僕の目をじっと覗いた。途端に、僕は更なる拷問を受けるのではないかという恐怖に襲われ、背筋が凍ってしまう。身体を微かに動かすのもままならない。全身が麻痺してしまっているようだった。
「さてと、私もこうしてるだけじゃつまらないし、そろそろ――」
 こちらでたのしませてもらおうかしら。
 そう言って彼女は僕に自身の肉壺を見せつけてくる。それも躊躇する事無く。
 自分の肉刀とは遥かに違う事もあってか、僕の眼は彼女の肉壺をすかさず捉えて焼き付けていく。彼女の肉壺からは触れてもいないのに既に液体が物欲しげに滴っている。すると、僕の中にある欲求をより一層駆り立てるのだ。牡ならば当然の衝動である。
 相手に身体を求められて断る奴なんて何処にいるのか。少なくとも僕はそんな奴ではない。それ以前に彼女が相手なら僕には断る権利すら無いが。
「一応、我慢してるのは貴方だけじゃないのよ?」
 わたしだって、ね。
 彼女がそう言った時、彼女は何処と無く切なそうにしていた。また、こそばゆいのか、頬をかあっと真っ赤に染め上げる。僕が彼女を希有な眼差しでじろじろ眺めていたら、貴方は自分の身を案じなさいよ、と怒鳴られた。
 彼女は僕の身体に巻き付くのを止めた。その代わりに僕の身体にへとのしかかり、自分の身体を乗せてきた。僕は彼女の重みを体感すると心の底で、ジャノビーだった頃に比べて重くなったなあと思った。すると彼女は僕の心を読むように、いま失礼な事考えているでしょと言ってきたので、僕は全力で否定して怒らせないように必死で誤魔化した。
 次に彼女は僕の肉刀を自身の肉壺に納めようと、下腹部を僕に近付けてくる。慎重に少しずつ肉刀と肉壺との距離を縮めていく。
 肉刀が肉壺へと宛がわれ、後には退けない状況となる。ここまで近付いてしまえば、僕の肉刀が彼女の肉壺に納まるのはあっという間であった。
 ぐちゅり。
 気がつけば、僕の肉刀は遥かに熱いものに包まれていて、最早熔けてしまっているのではないかと疑ってしまう。しかし、彼女が口をあんぐりと開けて、声にならない喘ぎをしているのを見ると、肉刀はきちんと存在しているらしい。
 彼女は少しの間、息を切らして動かないでいた。僕が下から彼女の顔を覗けば、未だ嘗て見たこともないくらい余裕が無さそうに表情を歪ませていた。でも、僕の気のせいでなければ、
 かのじょはとてもうれしそうであった。
 根拠なんて無いから確証は持てない。単なる僕の直感だ。だから、もしかしたら勘違いなのかもしれない。
 目を凝らしてもう一度確認しようとすれば、いつの間にか判断する材料は消えてしまった。その代わりとして残っていたのは、先程の彼女の姿だった。僕をにんぎょうと称して、自分の欲を満たすまでひたすら弄ぼうとしているその姿。意地の悪い笑みを僕に見せつけて、
「……それじゃあ、貴方は私をどこまで楽しませてくれるか、試させてもらうわ」
「――あっ」
 彼女がそう言った矢先に、僕の肉刀からこれまで以上の刺激が走り始めた。例えるならば、波が突如大波にへと変化したような状況。僕は快感と言う名の荒波へと放り出されてしまったのだ。
 彼女が身体を動かせば、肉壺から肉刀が現れたかと思いきや、肉壺に呑み込まれる。そうして再び肉刀が姿を見せれば、また消えていく。それの繰り返し。単調な動作には違いないが、尻尾で弄られている時とは比べ物にはならない快楽が得られる。寧ろ尻尾と肉壺を同じ土俵に立たせるのが馬鹿げている。
 彼女が上下に跳ねる度々に、ずぶっ、ずぶっ、といかにも卑猥な音が響くのと、身体と身体とが衝突する音が絶え間無く響き渡る。それらの所為で僕と彼女が肌を重ねているのを否応なしに感じざるを得ない。普段はひんやり冷たい僕の皮膚も、今は彼女によって熱を持っている。そうすれば必然と身体の至る所から汗が頻りに滲み出てくる。気候は穏やかなのに、故に蒸し熱いと感じてしまう。
 だからと言って彼女の行為を止めようとするものはない。下り坂で木の実をころころと転がせば、回転し続けて止まらないのと同じ様に、彼女は荒れ狂って僕に何度も身体と身体同士の衝突を続けてくる。
 最も、彼女がこの行為に目をつけてしまったからには、満足するまでは止められない。それどころか嵌まりに嵌まって抜け出せなくなっている。
「ふっ、あぁっ」
「んっ、うぅっ」
 彼女の苦しくも心地好さそうな喘ぎ声が聞こえるのは勿論、熱い吐息までもが僕にへとかかる。それと同様に僕も甲高い声を上げて、熱を帯びた息を吐き続ける。行為により、お互いがそれぞれ反応をして、身体は極上で心地好い感覚に陥っている。それでもまだまだ満ち足りなく、もっと味わいたいと飽きずにまた身体を貪り続ける。まるで神様が、月に太陽を追いかけさせ、また太陽には月を追いかけさせると仕向けたような終わり無き循環。
 しかし僕らは神様によって創り出されてはいないので、全く非の打ち所が無い訳では無い。必ずしも何処かに欠落した部分があり、ある一定の要素が加われば、直ぐに崩壊の一途へと辿る。
 現にどうだろうか。行為によって快感を得ているのだが、そいつが行為の歯止めとなる要因を備えているのだ。快感を求めれば求めるだけ、こつこつと着実に終着へと向かっている。
「うぅっ、もうっ」
「そろそろっ、やぁっ」
 お互い、蓄積された刺激により爆発寸前だった。
 流石の彼女も自分が限界な所為もあるのだろうか。蔦に意識を向けるのは困難だと知ってか、肉刀の根本に縛ってあった蔦が解けた。これにより、僕が待ちわびていた終幕への準備は整った。
 だけども彼女はこの期に及んでまでも強がり、僕に耳打ちしてくる。
「私より先にっ、いったら赦さないからっ」
 彼女が僅かに残された力を振り絞り、これまでよりも素早く上下運動をしてくる。瞬間当たりに身体同士がぶつかる回数が増やし、その増した分だけ比例する如く刺激も強くなってくる。
 とどめの一撃とも言わんばかり、最後は大きく跳ね、そしてうんと深く沈めた。
「あああっ!」
「くううっ!」
 同時、だった。
 彼女が目を閉ざしながらぴくぴくと小刻みに震えるのと、僕は肉刀から凄まじい勢いで白濁液を噴出させるのが。
 気持ち良い所の騒ぎじゃない。
 やっと解放された気分だった。
 まさにごくらく。
 僕の肉刀はびゅくびゅくと脈動しながらも白濁液を放出し続ける。焦らされていた事もあり、肉刀は異常なくらいの量を肉壺へと注ぎ込む。だから彼女の肉壺を白濁液で満たすのに時間は掛からなかった。同じく肉壺から白濁液が漏れ始めるのにも時間は要さなかった。行き場を喪った白濁液は彼女から分泌した愛液と混じり合って、僕の肉体へと滴る。どろどろとした混合液は僕の肉体を汚していきながらも、地面へと垂れていく。
 僕達お互い、絶頂を迎えたが為に、疲れ果ててしまい、息が整わない。ぜえぜえ、と両者共に声を出してしまう程である。疲労のお陰で何もする気にはなれない。最も、絶頂の余韻を味わいたかったというのもあるが。
 疲れた所為か、彼女はふらふらと身体を震わせる。自分で支えるのは困難を窮めてか、彼女は僕に身を任せてくる。僕は慌てて、倒れ込んでくる彼女が自分の角にへと当たらないように抱き寄せて、彼女を胸元へと乗せた。
 僕の胸で瞳を閉じて呼吸をする彼女。とても気持ち良さそうだった。
 それを見ていると、僕は睡魔に襲われる。瞼が泥みたいに重たくなってくる。多分、慣れない事をした為に酷く疲れたのだろう。
 このまま、雰囲気に流されて、うとうととまどろむ――筈だった。
「……そういえば、まだだったわねえ」
 その一声と伴に、意識は現実へと強制的に戻された。
 がぶりっ。
 快い刺激とは似ても似つかない痛みが伝わってくる。僕は我慢出来ずに身体をぶるっと震わせてしまう。しかし震えただけでは簡単に痛みが抜ける事は無い。
 痛みで気付くのが遅れてしまったが、僕の視界から彼女の姿が消え失せていた。その代わりとして、僕の首元には違和感が。
 更にじゅる、じゅるる、と何かを吸う音が聞こえて、生気でもしぼりとられている気分に陥る。血が通ってなくて、力が入らないような感じだ。それなのに欲を吐き出し萎縮していた筈の肉刀には血が集ってくる。
 まとわりつくいたみ。
 取り敢えずは峠を越えたのか、痛みは幾分かましになってきた。それでもずきずきと蠢くような痛みは残っている。決して抜ける事が無さそうな痛み。くっきりと明確に痕が残るような痛み。
 これはもしかすると、
「マゾな貴方にとってその首の痛みは気持ち良かったわよね?」
 彼女が顔を出すなりそう告げられて、僕は漸く彼女に首を噛まれていたのだと理解した。
 意識すると痛覚が休みを忘れそうだったので、
「ノーコメントで」
 僕はそれだけ言って、彼女の質問は適当に流した。
 彼女は僕の素っ気ない返答に、
「残念ね、せっかく感想を聞きたかったのに」
 とつまらなさそうに言った。
 感想、彼女にそう言われて僕が真っ先に思ったのは、きもちよくはなかった。でも、このいたみは――ぐっ。
 ずきずきと痕が疼き、僕は顔をしかめた。意識すればする程、痛みが悪化しそうであったから、僕は感想について考えるのを止めにした。
 しかし、僕に一息吐く暇は与えられない。更なる追い討ちがかかる。
 ぎゅっ。
「ひゃあっ!」
 僕の急所である尻尾に違和感を覚え、奇声を発してしまう。でも、そうしてしまったのは間違いだった。
 ぎゅぎゅっ。
 どんどん敏感な尻尾に被害が及び、それと同時に肉刀が反応してしまう。
 僕の尻尾は彼女の尻尾の先と絡まり、また僕の肉刀は研いだみたいに鋭さを取り戻していた。
「……まだまだ夜は始まったばかりよ」
 彼女はにっこりと笑いながら僕を見下ろす。台詞を聞いて僕は瞬時に悟る。
 今夜は簡単には眠れない、と。
 そして、彼女は肉壺と肉刀を密着させてくる。依然としてにこにこ笑っている。でもその笑顔の裏側に待ち受けるのは――。





「ほら、ちゃんと洗いなさいよ」
「ちゃんと洗ってますよ」
 昨晩の赤裸々な行為によって付着した汚れを落とすべく、僕らは寝床から少し離れた小川にいた。浅瀬で水に浸かりながら、僕と彼女はふたりがかりで彼女の長い身体を洗う。普段の僕には彼女をべたべた触る権利等は無いが、今回に至っては僕の力も必要だと言われて、朝一番に駆り出された。
 昨日の今日、という事もあってか僕の肉体にはまだ鈍い疲労感が残っている。その反対に、彼女は疲れている様子は一切見受けられず、それどころか鼻で唄うくらい上機嫌である。
 よくもまあ、昨日あれだけやっといてこんなに元気とはまさに底無しというか……。
「ちょっと、手が止まってるわよ」
 そんな他愛ない事を考えていたら、彼女に指摘された。
 僕は大人しく返事をする。
「はいはい」
 僕は前脚(以前は手だった)を使って、彼女の身体を擦っては汚れを落としていく。口煩い彼女も蔦を駆使して自分の身体を洗っていく。完璧に綺麗になるのはまだまだ先になりそうである。
 こんな地道に洗わなくても僕のハイドロポンプをやればあっという間なのに、彼女は許してくれない。何でも、貴方の口から出る水を掛けられるのは御免、だとか。
「……昨日はあれだけ汚い僕の精液を貪っといてよくも言え――あっ」
「声に出ているけど、後でどうなるのか分かってるのかしら?」
 頭で思っていたつもりが、うっかり声に出してしまった。しかし彼女は聞き逃してはくれなかった。
 ちらりと横目で彼女の表情を窺えば、どす黒い雰囲気を纏いながら笑っていた。目撃するや否やびくりと身動ぎしてしまう。
 ぴりぴりと僕の肌をも刺激するくらい殺意剥き出しの眼差しで言われたら僕に出来る事はたったの一つ。
「御免」
 潔く謝罪する事だ。謝ったどころでは彼女の機嫌なんて容易に戻らないのだが。何時もの様に蔓の鞭の刑が待ち受けている。
 しかし僕の予想に反して、謝ると彼女の背後にあった気味悪い雰囲気は消え失せて、
「それでいいのよ」
 と言って、彼女はにこやかな笑みを浮かべたまま身体を洗う作業を再開する。あっさり赦してくれて、僕は驚いてしまう。彼女が何時もの調子だったら、今頃は刑は執行、蔓の鞭でびしばし叩かれているだろう。
 今日の彼女は変に優しくて気味が悪いが、痛々しい目には遭いたくないので特には言わない。でも、気掛かりであったのが一つあったが故に、僕は口を開いた。
「そういえば、どうして旅を止めるって言ったの?」
 僕が訊いた途端に、彼女の蔦がぴたりと静止した。そして、彼女は蔦を仕舞い、僕の顔を見つめる。
 沈黙の時間が流れる。聞こえるのはせせらぎだけ。
 頑なに閉ざされた彼女の口は容易に開かない。
 僕は前言を撤回しようと口を開こうとしたら、
「貴方はまだ続けたかったの?」
 漸く彼女が喋り、無言の間は破られた。
 質問を質問で返されるとは、予想外だった。
 彼女は期待の眼差しで僕の返事を待っている。
 彼女の望む答えを僕は知らない。だけど、僕は答えなければならない。間違いだろうと正解だろうと関係無しに。
「君が止めると望んだなら、僕は構わない」
 それが僕の導き出した答え。
 ふうん、と彼女は相槌を打つ。気に入る回答だったのか、それとも気に入らなかったのか。僕には分からない。
 彼女は視線を僕から逸らした。逸らした先には、特にこれといった物は無く、何処か遠くを見ているようだった。
「……世界を見るよりも望んだ事ができたからでしょうね」
 彼女の旅の目的は世界を見る為。それは僕だって承知していた。でも彼女が他に望んだ物は、僕は知らない。知らないから、知らされる真実に僕は黙って聞くだけ。
「此処なら食べ物も水も豊かだし、争うポケモンもいないし、ましてや人間達も訪れない。居心地の良い理想郷だから」
 理想郷、そう言うのならば、此処は彼女が密かに求めていた場所なのだ。だったら、旅を止める理屈は罷り通っている。
「この理想郷で、貴方と一緒の未来を見据えたかったから……それが旅を止めた理由よ」
 彼女は話を終えると、ふうっ、と一息吐いた。そして再び僕を見つめてくる。見つめる、と言うよりは覗き込んでいるようだった。
 まるで僕の心を覗くように。
 彼女はうっすらと笑いながらこう言う。
「ねえ、貴方はこの我が儘を死ぬまで聞いてくれる?」
 今更、彼女は何を言っているのだろうか。
 あの日から、僕には断る権利なんて無いと言うのに。
 出逢った時みたいに、僕に命令してくれれば良いのに。全く、今日の彼女は可笑しいものだ。
 勿論、喜んで。
 僕はそっと彼女にくちづけをした。

 誓いのくちづけを。



後書き
作品を読んで頂き有難うございました。

この作品は書くのに色々と手間取り、時間がかなり掛かりました。執筆を始めたのは12月だったり(蹴
元々、こんなに書く予定ではなかったのですが、ダイケンキ×ジャローダはBWで個人的に好きなCPなので自由奔放に書きなぐりました。
某雑誌のインタビューでBW御三家キャラ設定について読み、それにほぼ準拠してダイケンキは武士(ほぼ騎士扱い)、ジャローダは王女扱いとしてこの作品を書きました。彼が彼女にやたらと忠実なのはこの経緯からです。
ちなみに、ダイケンキになるとホタチではなくアシガタナというのを使い、ジャローダには実は手があるとかなんとか。

3月10日追記 私事により、本wikiへの転載が遅れてしまいました。ご迷惑をお掛けした事をお詫び申し上げます。


原稿用紙(20×20) 63.95 枚
総文字数 21508 文字
行数 407 行
台詞:地の文 1391文字:20117文字


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Last-modified: 2011-03-18 (金) 00:00:00
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