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注意:この小説には触手姦、肛門姦、それに伴う内臓姦(?)の描写があります。
Writer : 朱烏
蕩酔い
ふわふわとして、心地の良い気持ちだった。甘ったるい匂いのする靄が立ち込め、視界はおぼつかない。
その靄は快楽を誘起させ、呼吸をするたびに私の中をゆっくりと侵食する。遅効性の毒のような、緩やかな催淫。
身体の力は、縛りの甘い風船から抜ける空気のように、ゆるゆると、しかし着実に抜けていった。
四肢に巡る神経はすべての働きを止めたようで、だが毛先は靄の流れを敏感に察知し、麻薬のような快感をもたらす微弱な電流を、体の芯に伝える。
「あぁ……」
吐き出した空気、それに伴った熱が、靄の中に広がり溶けてゆく。
仰向けになり半覚醒、そしてまどろみを繰り返しながら、私はこの仄暗い、明瞭な光源をもたない空間を彷徨っていた。
夢うつつ。現実か、それとも幻か、まるで判別がつかない、曖昧な空間と意識。
しかし、それがまさに夢であった。
四足を地につけ暮らす私が、翼も妖術もなしに宙に浮けるはずがないのだ。
今、私は夢を見ている。その意識だけは、このおぼろな世界の中でただ一つ確実なことだった。
堕ちよう。
心の中で唱えると、私の身体はかすかな重力に引かれ、ゆっくりと下降していく。
暗褐色の空は一向に遠ざからず、靄も相変わらずまとわりついてくる。景色はまるで変わらない。
しかし、身体は確かに深いところへと吸い込まれていった。表層意識は剥ぎ取られ、私の精神もまた、浅いまどろみから眠るように深い底へと沈んでいく。
それからしばらく経ったころ、
背中から、不思議な熱気、別次元の熱をもった靄が吹きつけられた。
私は六本の尾のうちの一本を手繰り寄せ、ぎゅうと抱いて身体を縮こめる。
迫り来る、官能的な何か。私はクルマユになりきるように、身体を丸め、来たるそれに備える。
どぷり、と体が浸かった。
粘性の高い、原初の海のような、煮えたぎる液体。
私はそのまま沈んでいき、ついには頭から尻尾の先まで、すべてが海の中に入った。
ひたすらに熱い。炎ポケモンである私でさえも焼けてしまいそうなほどに熱かった。
けれども、苦しくはない。息は止まっているが、不思議なことに、生命の維持に必要な代謝は滞りなく行われていた。むしろ、呼吸という煩わしい動作から解放されたことが喜ばしい。
どろどろとした液体が口から流れ込み、食道、胃、肺、腸、そして血管へと、隅から隅まで侵してくる。
それは一種の気味悪さを伴った脈動を開始し、私の全身を蝕む。
思考を鈍麻させる愉楽だった。体は液体そのものとなり、海の脈動に同調し、四方八方から脳髄に直接快楽を与える。
「ん、ふぅ……う」
とろりと溶けてしまった私の身体のどこかには、まだ発声器官があるらしかった。
夢とはかくも恐ろしく悦ばしいものだったか。
ぶつり、ぶつりと口から幾ばくかの気泡が浮き上がって、しかし液体の粘性のためにその場に留まった。
私の身体だけは、抗い難い重力により、緩慢に沈降する。
溶けきった身体がじわりと再構成されたころ、唐突に海は終わり、私の落下速度は急激に速くなった。
真っ暗で、右も左もわからない。重力がどの方向に働いているのかもわからなくなり、上下の概念も消失した。
むしろ、落下していたと感じていたのはただの思い込みで、実は無重力に身を委ねていたということが真実であるような気さえした。
気がつけば、空間を満たしていたはずの、一切合切の靄は立ち消えていた。別の次元から流れ込んでいたような不思議な熱も消失していた。
この無感覚は、前触れだ。まだ、夢は深くなっていく。
私は背中から、軟らかな何かの上に着地した。
それはクッションのように包み込んでくれるものでもなく、ましてや私に熱を与えた粘度の高い海でもない。
ぬめらかに動くそれに、私は静かに沈み込んでいった。
「ユレイドル……」
ずっと心の底で想っている相手の名前を呼ぶ。
うぞうぞと動くものの正体は、ユレイドルの桃色の触手だった。
「ロコン……」
脳髄に響き渡るような甘い声が、私の肢体を脱力させる。
無数の触手に身体の自由を奪われながら、私は求める。
「ねえ、ユレイドル。私を犯して……」
現実でなら一向に花開く様子をみせない私の願いも、ここでなら簡単に叶う。
「ああ。言われなくてもそのつもりだ」
少し、強引さが垣間見えるくらいでちょうどいい。
「お前をずっと、こうしてみたいと思っていたんだからな」
私も、あなたにずっとこんなことをされたいと思っていた。
誰よりも好きだから、あなただけにこの身体を明け渡したい。
「ロコン、好きだ」
世界中で一番望んでいた言葉が私の鼓膜を震わせる。それが始まりの合図のように、この空間の明るさを吹き消した。
辛うじて自分の四肢が見える暗さの中で、私はユレイドルの触手のベッドにさらに埋没していく。
六つに分かれた尻尾の一本一本に、触手が絡みついていく。
次いで、左前足、右前足と絡んでいって、後ろの両脚にも熱を帯びた触手がゆっくりと巻きついてくる。
これで、私の身体はほとんど自由を失った。背中やおなかを幾本もの触手がうねって這いまわり、ぬめりのある液体を塗りつけていく。
私の身体はすでにユレイドルの触手のようにぬめぬめとしていて、それだけで感度が高まっているようだった。
ユレイドルはまだ満足しないのか、触手を私の首にまで巻きつけてくる。
きっとユレイドルの愛情表現は私と同じような四足の雄とはまったく異なるもので、それでも難なく受け入れてしまえるのは、心に秘めていた、ユレイドルに対する愛のためだった。
「ユレイドル……苦しい……」
息がしにくい。触手を首に巻きつけているだけとはいえ、ユレイドルはおそらく加減の具合がわからないのだろう。
それどころか、責め方すら知らないのかもしれない。触手は、私の秘部に直行せず、私の口元にやってきたのだ。
「んぐ……」
首に巻きついていた触手が、口内に侵入していく。それは想像以上に太く、熱かった。
文字通り、私の身体は、ただの淫らな接触にとどまらず、内部の隅から隅まですべて犯されようとしていた。
「ロコンの中、熱い……」
ユレイドルの触手が、口から食道、続いて胃へと、進んでいく。
その苦しさで、思わずユレイドルの触手を噛んだ。
しかし、ユレイドルはそれを構いもせず、一心に触手を進入させる。
息が完全に止まる。酸素を欠乏した脳は、一切の思考を茫漠の向こうへと追いやろうとした。これが夢でよかったと思う。現実なら窒息して絶命していた。
さらに口から二本目の触手が入った。私の小さな口を無理矢理こじ開けて、ユレイドルは欲望のままに私の体内を蹂躙していく。
もはや、声すら出すことができない。ユレイドルが私の小さな身体にその印を刻むまで、ただただ責め立てられる。
やがて、胃の中に折り畳まれて収められた触手によって、私のおなかは膨れていった。
破れることなく膨らんだそのおなかは、まるで妊婦のそれだった。
首をこごめると、そのぬめらかな質感と、触手の形が張り出している自らのおなかが愛おしく感じた。
私の身体は紛うことなく、ユレイドルそのものを内包していた。
非日常的な悦楽に身を任せる私の意識は、蕩けるように酔っていた。
「今度はこっちからいくぞ」
そして、ユレイドルの目標はついに私の秘部に向かう。
触手は淫らな動きで私の秘部の周辺を撫で、粘液でしとどに濡らした。
さらに蜜壺から漏れた愛液が、より膣口のぬめりを加速させる
「準備完了だ」
ユレイドルは、私の口から入れていた二本の触手をゆっくり引き抜いた。
そして、私の内部を犯していたその触手は、私のお尻にまわり、いやらしく撫で始める。
秘部も、お尻の穴も、まだ誰にも許したことがない。
それが、触手という淫靡なもので、今まさに穢されようとしていた。
「入るぞ……」
愛撫により十分に湿りきった蜜壺と、お尻の穴。ぬめぬめとした触手。進入はたやすかった。
「ああっ」
加減もなく押し入ってきた太い触手に、私は悲鳴を上げる。
快いと感じるにはまだ慣れが足りていなかった。押し寄せる痛みに、歯を食いしばる。
「ロコン……!」
初めてなのは、ユレイドルも同じだった。嵐のような触手の前後運動に、私の身体はがくがくと揺さぶられる。
ぐちゅぐちゅと私の膣肉を蕩かしてゆく触手の動きは、やがて快感に限りなく等しい痺れを生み出した。
「あぁあ……そんなぁ……激し……!!」
さらに、お尻の穴の入り口でくすぶっていたもう一本の太い触手が、直腸を通り、腸内へと侵入する。
「うえぇ……」
もはや嘔吐しているときと変わりがないような声を出し、苦しさを喜びがない交ぜになった感覚を受け入れようとしたが、何も考えられない。
うごめくと表現するには生易しい、激しい勢い。再び触手が腹の中に折り畳まれ、口内からのときとは比べものにならないほどに、おなかは膨らんだ。
それでもなお、ユレイドルは触手の動きを緩めるどころか、猛烈に腸内を犯す。
その間蜜壺に侵入していた触手は子宮口に辿りつき、こじ開ける。
「いやあああ!」
悲鳴は無情にも、無限に広がる空間の中に吸い込まれた。
想像を絶するユレイドルの愛情表現に、私の身体はびくびくと震え、快楽も頂点に達していた。
「ロコン……出すぞ……」
蕩けに蕩け、忘我した私の脳内に、ユレイドルの最後の言葉が挿し込まれた。
「ユ……ユレイ……だめえ!」
びくんと波打つ触手。それに連動して、がくんと揺れる私の身体。
子宮、そして腸に、どくどくとユレイドルの大量の精が注がれた。体に絡みついていたいくつもの触手も、先から精をたっぷりと吐き出す。
爆発的に流れ込んでくる精に、さらに大きく膨らむお腹。
この一瞬の間に、いくつもの卵を孕んだかのようだった。
暗い景色に、触手と私の身体の輪郭だけがはっきりと浮かび上がる。
「ユレイドル……あなたのこども、いっぱい産めるよ……」
お腹を這う触手を抱き込んで、溢れる恍惚感に身体をうずめる。
こんな幸せがあって許されるのか。絶頂から未だ戻らない私は自問する。
やがて、満足したユレイドルが、私の秘部とお尻の穴から同時に触手を引き抜くと、収まりきらなかった精が淫猥な音とともにどろりと噴き出してきた。
お尻を伝う白濁液が流れ落ちるとともに、すべての終わりを悟った。
「ロコン、起きたか」
すうっと引き上げられた意識とは裏腹に、私の身体には依然桃色の触手が絡みついていた。
「……ユレイドル」
「もう夕方だぞ。昼寝なんてこんな長くするもんじゃない」
当のユレイドルは大真面目に触手を動かして私を揺り動かすが、あまりに激しく、かつ甘く蕩ける淫靡な夢を見ていた私には、それはただの夢の続きでしかなかった。
「あんっ……」
「……ロコン?」
いつしか夢であることを忘れていたのは、痛いほどに現実であることを願ったからだろう。
「ねえ、ユレイドル」
「何だ?」
「好きだよ」
「……何が?」
奥手で鈍感なユレイドルと、紆余曲折を経てようやく結ばれたのは、まだずっと先の話だ。
非常に濃厚で満足できる官能小説でした
できればその紆余曲折あったという部分も読んでみたいかなー…? (2014/04/29(火) 22:27)
>>ねっとりした作品にしようと思っていました。短く纏めるつもりだったので紆余曲折のほうは具体的に考えてはいませんでしたが、もしかしたら続くかもしれません(
非常に濃厚な描写と、ユレイドルの触手におぼれていくロコンの描写に思わず……ふぅ。
ということで投票させていただきました。ごちそうさまです。 (2014/04/29(火) 22:49)
>>触手に絡め取られていくって本当に素敵ですよねー触手万歳。ありがとうございました。
なんとも幻想的、触手いいですね。
個人的には2匹がカップルになるとこが見たい。 (2014/05/02(金) 00:09)
>>夢の中なのでひたすら夢幻的な描写を目指しました。もしかしたら後日談も書くかもしれません。
とにかく濃厚でした。 (2014/05/04(日) 00:40)
>>濃厚万歳!
お家芸の遅刻により4票→3.2票になり、懲りずに大切な票の価値を減らしてしまって申し訳なく思います。
触手いいですよね触手。もともとその趣味はなかったんですが、月日は着実に守備範囲を広げますね。怖い。
6位ということで、投票してくださった方々、そして読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
ささやかですが挿絵的な何かも付け足しましたので、そちらのほうも併せてお楽しみください。
台詞無し差分
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