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草蛇花姫

/草蛇花姫

mini



・草蛇花姫


ー1ー

もやもやとした空間、色褪せた視界、肩に感じる温かな体温。
その日、僕は昔から一緒に過ごして来たヒトモシの彼女を肩に乗せて
ラリー博士のポケモン研究所へやって来ていた。
「さぁ、此処が父さんの親友ラリー博士の研究所だ!」
堅いの良い父さんが車から降りてそう言った。
ラリー博士と僕の父親は小学校から親友の仲で今でも仲が良い。
そこは良いとして何故、僕は呼び出されたのだろうか……?
先日、ラリー博士から父さんに『次の日曜、君の息子を連れて来てもらいたい』と、メールが届いたのだ。
だから、こうして隣町から父さんの運転する車に乗ってやって来たが
初対面の僕に何の用が有るのだろう?
「ラリー!息子を連れて来たぞ!」
父さんが研究所の扉を開けてそう叫ぶと、研究所の中からバタバタ!
と慌しく白衣を着た男が現れると父さんと握手を交わす。
「久しぶり!」
「よぉ、ラリー!」
その様子を傍で見守る僕。どうやらこの白衣を着てメガネを掛けた男がラリー博士らしい……
堅いの良い父さんと細い体のラリー博士が並ぶと巨人と小人の様だ。
「取り合えず中に入った、入った!」
ラリー博士に急かされ、僕と父さんは研究所にお邪魔する。
雄馬(ゆうま)君、会った事も無いのに急に呼び出して済まないね」
雄馬(ゆうま)、僕の名前を呼び、ラリー博士は歩きながら頭を下げる。
様々な資料が収まっている本棚や不思議な形の機械が並ぶ中を奥へと進んで行く。
途中、何人か忙しく走り回る研究員とすれ違う。
「悪いが今朝入った用事で時間があまり無いのでね、単刀直入に言わせて貰うよ雄馬君」
父さんとアイコンタクトして立ち止まった博士。
ラリー博士は目の前のテーブルに並べられた3つのモンスターボールを指差した。
「この中にはツタージャ、ポカブ、ミジュマルが入っている……」
少し間を開けて博士は続ける。
「一匹、君に上げよう!誕生日プレゼントだ」
驚きの声を上げる僕とは逆に父さんは動じない……むしろ笑顔を浮かべた。
どうやら父さんは知っていた様だ。この日、僕は誕生日を迎えていたのだ。
だけど3匹から1匹を選ぶのか……中々迷う……
そもそも何故、急に僕なんかに?旅に出るとは決まっていないのに……
「ラリーからの誕生日プレゼントだ、良かったな雄馬」
父さんがそう言うと肩の彼女は微笑みを浮かべた。
「強制はしないが出来ればツタージャを選んで欲しい、彼女は♀だという理由で
5回も新人トレーナーにパスされている可哀想な娘なんだ」
「じゃあ……」
と、其処で、もやもやとして色褪せた視界が暗くなって行く……
「ゆ…ぅ……」
視界が狭まり、何だろうと思っていると……
「……ぅ……ぉ」
何だろう、何か聞こえる……
「ゆう……ぉ……!」
と、いきなり耳に激痛が走って飛び起きる!
「雄馬君!」
「!?」
ハッと頭を上げると英語の男性教師、野田先生が俺の顔を覗き込んで俺の耳を引っ張っていた。
「授業中に居眠りはどうかと思いますよ?」
「痛っ!?いたたたっ!ご、ごめんなさい!」
「二度とこの様な事が無いように……!」
「はい……」

~放課後~

帰りの支度を済ませて通学バックを持つと……
「よぉ!雄馬。内容が分かって無くてもノート取るお前が居眠りなんて珍しいな?!」
いきなり背中を叩いて話し掛けて来たのは友歳(ともとし)。俺の幼馴染だ。
「で、何の夢を見てたんだ?エロい夢か!?」
全く……相変わらずコイツはこれだから……
教室にまだ残っている少数のクラスメイトに冷たい視線浴びてるぞお前……
「で、どうなんだ?」
「昔の事を思い出していたんだ」
「今は別れたコレ(・・)か?」
ドヤ顏で小指を立てる友歳に呆れた俺は教室を出る。正直イラッと来た。
「ま、待てよぉう!」
友歳は慌ててササッと横に連いて来る。
「冗談だろ、怒るなって♪」
テヘッ☆と舌を出す友歳、残念ながらこの男が俺の幼馴染なのだ……
靴を履き替えて外へ出るとすっかり空は夕日のオレンジに染まっていた……
「今日も終わったな~、一日が……」
「そして、帰ったら彼女達とイチャイチャか!?羨ましいぜ!」
「断じて違うから」
「両手に花とか羨ましいぜ!」
「はぁ……」
溜息しか出ない……友歳には自重という言葉が無いのだろうか?
「で、具体的には何の夢だったんだ?」
いかにも気になる!という様子で返事を待つ友歳。
「ラリー博士のポケモン研究所に初めて行った時の事だよ」
「雄馬が小2の時の事か?」
「まぁ、そうなるな。十年程前の事だよ」
「そう、それは彼女との運命の出会いだったんだ……!」
「黙れ」
冷たいツッコミを入れる事にも疲れて来たな……
幼稚園から高校2年の現在までの付き合いでも疲れるものは疲れる。
「ところでさ、雄馬」
「何だ?」
「明日、明後日と休みじゃん?」
「……そうなるな」
今日は金曜日で週末の土日、高校は休みだ。
「久しぶりにゲーセンとか行かね?」
「まぁ、用事無いしな……良いよ別に」
「サンキュー!じゃ、明日お前ん家に迎えに行くな?」
「分かった」
そう会話していると道が二手に別れた。
「んじゃ!此処でバイビー!」
右の道へ走って行く友歳の後ろ姿を見送り、左の道路へ歩を進める……
すぐに2階建てのあまり大きく無いアパートが目に入る。
階段を上がり、2階へと登って階段から二つ目の扉の前に立つ……
そう、俺の家は此処。アパートで一人暮らしだ。
ん?正確には一人暮らしでは無いな。
「ただいまー」
扉を開けて中へと入った……いや、入れなかった。
飛び出して来た緑色の何かにのしかかられる。何かとエンカウントしたみたいだ。
「きゃー!雄馬ぁ、やっと帰って来た!」
ふにふに柔らかい頬で思いっ切り頬擦りされる。
帰宅早々に突進カマして来たのは今日、居眠りで見た記憶のツタージャだ。
とは言っても今はジャローダだ。大蛇になった彼女は俺の体にくるくると巻き付いて……
「えいっ♪」
「ぐああぁぁ!?」
巻き付いてからの抱き付き(締め付ける)攻撃!▼
雄馬の体が悲鳴を上げた!▼
「ギブ!ギ…ブ……!」
体中がミシミシ……と悲鳴を上げるが気が付いて無いぞこの娘!
紫蘭(シラン)!?またですか!」
俺の悲鳴を聞きつけてシャンデラの彼女、瑠璃(ルリ)が駆けつける。
「雄馬さんが苦しんでいますよ!」
慌ててルリがシランの止めに入って俺は抱き付き(締め付ける)から解放された。
「ゴホッ、ゴホッ……」
四つん這い(orz)で必死に呼吸をする。
シランなりのスキンシップだが、ジャローダの彼女と人間の俺だと殺傷レベルだ。
ルリが居て助かった……居眠りで見た記憶で言う、肩に乗っていたヒトモシがルリだ。
「そうやって雄馬さんを締め付けて、いつか本当に雄馬さんの骨が折れてしまいますよ!」
ルリに説教されて、しゅん……と落ち込むシラン。
自分より小さなシャンデラに怒られるジャローダ、何だか面白い光景だ。
「雄馬さんも何か言ってやって下さい」
気が付くとルリとシランが此方を見つめていた。シランを睨むルリ、ビクビクして涙目のシラン。
まさに蛇と蛙かな(?)この場合逆だが……シランに怒りたい所だが、そんな目で見られては……
「抱き付くのは良いけど手加減して……ね?」
パアァァ!と嬉しそうな笑顔を浮かべるシラン。
「雄馬さんが仰るのなら……、ちゃんと手加減して下さいねシラン」
「うん♪」
そう、俺は一()暮らしだが正確にはこの2匹の同居人が居るのだった……


とりあえず此処までです。


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Last-modified: 2012-10-23 (火) 00:00:00
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