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花束の夜空

/花束の夜空

赤いツバメ ?の短編3作目です。


春、ある街の大きな商店街に新しくフラワーショップが建った。

夜空の下、街の店の屋根に一匹のポケモンの影があった。それは今夜だけとは限らず毎日同じ場所に現れる。



この季節の夜風は人々にとっても、ポケモンにとっても過しやすいです。

私の住む街の商店街はかなりの大きな規模で、いつも夜遅くまで営業しているお店が多いです。
私はその景色を夜、眠る前にベランダから屋根に登って、そこから眺めるのがとても気に入っています。一日を終える日課になっているくらいですから。
その夜景は綺麗と言うほどの景色ではありませんが、一日の中で一番私の気持ちが癒され落ち着くひと時なのです。
はっきりといえば単なるリラックスなんですけどね。

今日もお花でいっぱいのベランダから私は飛び出して、こうしてこの街の夜景や夜空のお星様をのんびりと眺めています。
先程も言いましたが、この時期になると夜風がなんともいえないほど心地よくて・・・なんだかその場所で眠ってしまいそうになります。
今年の冬はあまりにも寒くて寒くて・・・。
今年ほど春が待ちどうしく思えた年は無かったでしょう。
そして今年の春は今まで過ごしてきた中で一番心地よい春だと感じています。この季節にうっとりしちゃって・・・。
一年中春だったらなぁ、なんて望んじゃうくらいです。

「リーフィア、そろそろ戻ってらっしゃい。」
おっと。あんまり遅くまでここの場所にいると、ご主人が心配して私を呼ぶ声が聞こえてくるのです。
私は呼ばれると直ぐにベランダに降りてご主人の元に戻ります。

「もう寝なきゃねリーフィア、今日はお昼寝しないで出かけてたんでしょう?」
この人が私のご主人様です。名はアオイ・カナと申します。

私は下を向いてご主人に気持ちを察してもらおうと。
「・・・早く寝なさいリーフィア、夜遅いと明日疲れちゃうよ。」

分かりましたご主人・・・。
確かに今日はお散歩がいつもより長くなって帰りも大分遅くなってしまいましたので疲れました。
私はそのご主人の言葉に頷き、ご主人のベッドの隣にあるポケモン用の一回り、いえ、二周りか小さなベッドに横たわった。
「じゃあ、お休みリーフィア。」
ご主人は薄い毛布を私にかけてくれました。おやすみなさい、ご主人。

ご主人が部屋を出る際に電気を消す、スイッチの音がしたと同時に部屋の明かりが消えた。
・・・しかし真っ暗という訳ではありません。街明かりが窓から射していて少しばかり明るいのですよ・・・ふぁぁ・・・。
床に就いちゃうと・・・眠い・・・な・・・。
おやすみなさい・・・。


これは、大きな商店街に引っ越してきたばかりのリーフィアの生活をつづった小さな物語。


―朝―

ぅぅ・・・目が覚めました。まだ半開きの目を擦り辺りを見回す私です・・・。
今日も昨日と変わらなく暖かくも涼しい清々しい晴天ですね。天気予報は嘘をつかない。私はずっとそう思っていますよ。
・・・ふぁぁ~。気持ちの良い朝です。・・・よいしょ。
この時間なら主人はとっくに朝早くから下のお店で働いていてます。

私のご主人は二十三歳で、最近この街に私と引っ越してきて一人でフラワーショップの経営を始めました。
私も時々、お店の沢山のお花の手入れをさせてもらっています。私にできるお手伝いはこれくらいしかありませんが・・・。
え、わ、私の歳ですか・・・私は・・・べ、別にいいじゃないですか。

さ、さて、今日は何をしようかな・・・。
ふとベランダにある花壇に目が行く。その花壇を囲むは青々とした空の色。
う~ん、ベランダの花壇にお水をあげてお手入れをしてからしばらく下のお店にいることにしましょうか。
たまに忙しい日が続くと、ご主人のお花の手入れの時間も減ってしまいますから・・・そういうときは私がやっています。
ご主人のお手伝いも私にとっては一つの楽しいことなのですよ。



・・・ふぅ、ベランダのお花のお手入れ、これでおしまいっと。

朝の爽やかな微風が度々リーフィアの体毛を靡かせ、花を傾げさせ吹き抜けていく。
朝も夜も明かりが絶えないこの商店街は、外に出れば人とポケモンの賑やかな声が飛び込んでくる。
しかし彼女はこのような賑わいが嫌いではなく、寧ろ賑やかなことは好ましく思っていた。

ここのベランダの花壇には彼女の一番大好きな花が多く咲いている。
それはリーフィアの彼女にしては意外な薔薇。花の中で最も有名であろう薔薇だった。
しかし、真っ赤なものはなくピンクやクリームなどの優しそうな色のものばかりであった。
その理由は・・・。
(・・・クレス君・・・。今頃どうしているのかな・・・。)
彼女は唯一真っ赤な薔薇を見つめ、しばらくの間何かを思っていた。

ぅ・・・ふぁぁ・・・。
ちょっと朝のリラックス・・・です。屋根の上で・・・。

本当を言うと私は夜に限らず朝でも屋根の上が大好きなのです、やっぱり私の一番落ち着く場所なのですから。
夜とは違う爽やかな空と風。ここからだと地平線の向こうの山々がとても綺麗に見えます。一度でも近くから見上げてみたいものです。
ここに引っ越してきて1ヶ月は過ぎましたでしょうか?
しかしまだ私は、この街を覚え切れていません。前までずっと住んでいたご主人の実家の近くはとても自然が多く、この街とは対照的に
人が賑わない静かで小さな町でしたから・・・。
私も少しずつこの賑やかな街に慣れて来ましたが、今になっても出かける度に新しい発見があります。
お散歩好きの私はこの町に来てから、なおさらお散歩が大好きになり帰ってくる時間が少し遅くなったりします。ご主人に心配を掛けない程度には帰ってくるようにしますが・・・。
只、少し残念なことに、この街にはお花などの自然が少なすぎると私は思っています。
賑やかな街に行けば行くほど緑がなくなっていくと、ご主人から聞きました。詳しくは聞いてはいませんが・・・。
でも、この街のように賑やかで自然が少な目のところに暮らしている人たちでも、お花の変わらない魅力は忘れていないようで良かったです。
あ、ほら・・・またお客さんが来ましたよ。そろそろ私もご主人のところへ行ってきますね。


階段を降りていってご主人のいる元までたどり付くのに時間は要らないです。
何故なら部屋の真下が店なんですから。
「あらリーフィア、おはよう。」
一声鳴いてお返事なのです。ご主人朝から忙しそうですね、ご主人に手伝っても良いか聞いて見ましょうか。
私がご主人のズボンの裾を前足で引っ張っると、ご主人は私の伝えたいことが通じているように笑ってくれるのです。
「あら手伝ってくれるのリーフィア。ありがとう~。」
といっても私はお花のお手入れだけで・・・ということもご主人は分かっているのですよ。毎回同じパターンですからね。


リーフィアが手入れを始めてしばらくすると、忙しかった店内が少しばかりの間、静かになった。
用が済んでしまえば人も居なくなる。リーフィアとその主人だけの空間は広く感じられた。
静寂を破ったのは扉の音。お店の出入り口から《カランカラン》と、よく響く音がした。
そこに少し太った陽気そうなおばさんが店に入ってきた。
「いらっしゃいませ~。」

私はこのときのご主人が一番好きなのです。何故って・・・どうしてでしょうね?元気なご主人だからでしょうか。
「にゃ~ぅ」
私も、いらっしゃいませと一言。
「あら可愛いらしいリーフィアちゃんだこと。」
そんな、・・・リーフィアならみんな誰もがこんな姿ですよ。

《カランカラン》とまたまた出入り口の戸の開いた音が響く。

今度は親子連れの方ですか。何か今日は朝から忙しいですね。
「いらっしゃいませ~。」
「にゃ~ぅ」
「ああ!リーフィアだよママ、綺麗だな~。」
えっ?
「あらコージ本当、可愛いねぇ。」
え、私はそのようなこと・・・あまり言われないし・・・自分でも思ったことも・・・あれ?まさか私赤くなってますか?
このような一言で、私ったら何・・・けほっけほっ。

「あら、これは向かいのエダナミさん。」
「こんにちはーアオイさん。今日はこのとおりお花のお買い物をね~。」
成程、正面に住んでいる方だったんですか。私知らなかったです。
「え~とブースター、あなたの好きなお花なんだっけ?・・・ブースター?あらいない・・・どこに行っちゃったのかしら。」
ポケモンもつれて来てたのですか。それにしても炎タイプがお花好きとは珍しいですね。どんなお方なのでしょうか。
「ブースターの一番好きな花は確か薔薇だよママ。赤い薔薇。」
「あ、そうそう。じゃあ人様に差し上げる花束と一緒にブースターに買っていこうか。」

・・・赤い薔薇。
ご主人はそのエダナミさんと楽しくおしゃべり・・・ですね。

「えー、お会計の方ですが30spお預かりしま~す、エダナミさん赤い薔薇はおまけです。どうぞお花好きなブースターちゃんに上げちゃってください。」
「あら、宜しいのですか?これはまぁどうも有難う御座います。」
「ウフフ良いのですよ。これからお世話になるのですからこのくらいはさせて下さい。」
「あら良くさせてもらっちゃいましたね。こちらこそよろしくお願いします。・・・ではこれで失礼させてもらいますね。」
「有難うございましたー。・・・またお越しくださいませー。」

小さい子を連れてお客さんが店から出て行きました。
そのとき出口のドア越しの角に、ふさふさのブースターと思われる尻尾が見えたような見えなかったような・・・。
・・・・・・。
「あれ、リーフィア?どうしたの?」
いえ、なんでもないですよ。
「ん・・・エダナミさん達が気になったの?」
お花が好きなブースターさんですか。少し合ってみたいような気もしますね。
おそらくは雌の方だと思いますが・・・。

さて、お花のお手入れの再開ですね。いつまでもサボっていてはいけないですっ。
私はリーフィアになって植物の声が分かるようになって来ました。
少しずつですが、時が経つとともに何だか正確に伝わってきているようになっている気がします。
植物の声とはですか?植物の声というのは・・・勿論その通り植物がしゃべる訳ではありませんよ。
植物を触ることでその植物の状態を手に取るように把握できるのです。まあ実際に手にとっているのですが・・・しかしもう一つ。
私たちリーフィアなどの草タイプのポケモンは、どんなに疲弱で小さな植物でも発する微弱なエネルギーを近くで感じることで
元気に育っている植物か、もともと体が弱い植物か、などは大体分かるものです。
私はその能力でご主人にも頼りにされてもらっています。イーブイの頃は進化先に興味の無かった私ですが、リーフィアに進化して良かった事が沢山です。

ただ一つ、寒さには元々苦手でしたのに・・・更に草タイプになってしまって・・・。
だから今年の冬はとても厳しかったです。毎日毎日毛布の中で丸くなって動けませんでしたよ。
ですが今は春。それに引っ越してきたばかりの新しい街・・・。
最近は街に出るとワクワクして胸が期待でいっぱいです。・・・私ったら、これじゃあまるっきり田舎者ですね。
さて、ご主人のお手伝いが終わったらまた散歩に行きましょうか。昨日のお散歩で行った街外れですが、そこである方に聞いたとても大きな大木のある場所が少し気になっているので・・・。
「リーフィアもうお昼よ。お手伝い終了~。ありがとね。」
こんなことを思っていたら丁度良くご主人が声をかけてきました。
「そういえばリーフィア朝何か食べた・・・?」
あ・・・そう言われて気付きましたが、まだ何も食べていませんね。
《ぐぐぅ~》
「・・・何も食べてないのね。じゃあ今すぐ昼食用のポケモンフード用意してくるわ。」
「にゃあ・・・。」
ぅぅ、お腹が減ってること今まで気付かなかったです・・・。
人に言われて気付くと、どうして急にお腹は鳴るのでしょうか・・・私ったら。

「リーフィアー、台所に置いておくよ。」
私はご主人の声に従い台所へと行きました。・・・最近はご主人と一緒に食事をした事があまりないのです。
店のお仕事が忙しいということはとても良いことだとは思いますが、少し私としては寂しいときがあります。
しかし何だかんだ言っても今のような暮らしがいつまでも続いて欲しいものですね。
(ぐぅぅ)
うっ・・・では頂きます。

そういえば私達ポケモンは、よく食べ物を沢山食べないと成長できないと言いますが私は食事よりも光合成の方が大切で、光合成さえできるのならば
ある程度の成長はできます。しかし食事をしなければ健康が保てませんしね・・・結局は食事は欠かせないのです。

そして贅沢を言うわけではありませんがご主人の料理、最近あまり口にしてませんので恋しくなってきましたね。
やはり仕方の無いことなんですがね。何せご主人の作る料理はとても美味しいので、ついそんなことを思ってしまいます。
でも今はお腹も空いていて、ポケモンフードいつもより美味しく感じられますっ。

リーフィアが食事をしているときでも、店のお客は決していなくなることは無くアオイは店で忙しそうだった。
本人はリーフィアに最近かまってあげられていないことを分かっていたが・・・。
「いってらっしゃ~い。」
「にゃぁ。」
このようにリーフィアが毎回楽しそうに散歩に出かけていく姿を見ているので、彼女はそれほど心配してはいなかった。


店を出ると見渡す限りの歩行者、ポケモン・・・人々の賑わいの声が一段とざわめかしく耳に入ってきます。そういえば今日は祝日でしたっけ。
ご主人はそれでも働いていたのですっかり忘れていました。。。
この街の大商店街付近にはいつも人々でいっぱいで車が少ないので空気もわるくありませんし、住みづらい街とは思いません。
しかし商店街を抜けると少しづつ空気が汚れている感じがしてきます・・・。
街の狭い空を見上げると雲一つない蒼い空、大丈夫ですね。
さて、今日は少し遠いところに行く予定なので早速そこに向かいますか。


花屋から出てきたリーフィアは、歩き出すとすぐに人混みに紛れ姿が見えなくなっていった。
そんな彼女の様子を向かいの家の窓越しから眺めているものがいた。
「ブースター、ご飯よー。」
そう呼ばれたポケモンはのっそりと動き、真向かいに花屋が見える窓から立ち去ったのである。




まさしく絶景と呼べる場所。リーフィアはそこにいた。
彼女は13時あたりに家を出発し、それからこの街のはずれにあるクリュウ山に登り始めた。約一時間、たどり着いたところがここだった。
とにかく見晴らしの良いところだ。まるで草原とも思わせるようなとても大きく広い地、これがこの山の中間地点。
ここから見える景色は誰もが絶景と認めるであろう街と自然が調和した風景。
しかし今彼女は景色よりもほかの事に心魅かれていた。それは今自分が立っている大地。
さわさわと草が静かに揺れ風も心地よい。

今は大体15時くらいでしょうか。二時間程ずっと歩いてきましたが、そのような苦労なんて忘れるほどの心地よさです。
・・・ご主人にも、一度はここに来てもらってみたいものですね・・・。

その願い。リーフィアは本当はアオイにも、ではなくアオイと一緒に来たい・・・というような思いであったが、最近のリーフィアはアオイに対しどこか遠慮しがちなところがあった。
表に出す感情、つまりアオイへの遠慮が増える度に、逆に裏の感情、甘えたいという気持ちが強くなる反比例した心境に彼女はあった。

・・・おっと、いつまでも誘惑に負けてこんなところでのんびりしていられませんね。あの木の所に行かなくては行かなくては。
聞いた話ではここからもう少し進んだ場所に、私の目的の大きな木があります。
再び私はこうして歩いているのですが・・・、木々や草たちが生き生きとしていると誰が見てもそう感じられる程に爽やかな自然ですね。
もっとも、私には植物達の声を聴くことができるのですけどね。
・・・それにしてもこの山に住むポケモンたちは居ないのでしょうか、今まで一度も見かけませんが・・・。
こんなにも空気の澄んでいて自然豊かな山はポケモンたちで活気あふれているものですが、どうも寂しいですね。
そう・・・いつかあの人と登った、前に住んでいた町の山・・・。そこはこの山のようにとても自然豊かで美しい山、そしてなにより賑やかでした。
しかしこの山は、静かです・・・。いえ、それもまた美しさなのでしょう。

ただ私の隣には彼がいない。・・・クレス君が。
ずっと幼馴染で親友だった、ひんやりしているものの温かかった彼が・・・ただいないだけ。

ふぅ、こんなこと。もう過ぎちゃったことですし、今頃感じちゃダメですよね。
おや?あそこに見える木はもしや・・・おそらくあれですね例の神木とは。こんなにずっと遠くから見ているのにあんなにも大きいなんて。
まだもう少し時間が掛かりそうですが行きましょうか。
期待がリーフィアの顔を微笑ませた。

「大きい・・・空が緑色に染まってる・・・。」
彼女はただそう呟いた。まさにその通りである。今リーフィアの目の前には6畳あたりの幹の太さの巨大な木が
威厳を放っているかのように力強く立っているのだった。
彼女がその巨大な木の下に立っていると、とても小さく見えるのだろう。
枝の数も太さも相当なもので、その葉や芽が空を覆い隠していた。
まるで深い森にいるかのような場所・・・。彼女はそう思った。
そして暫く彼女は目を瞑りそこから動こうとしなかった。木との会話である。会話といっても今までこの木が見てきた年月を感じるということ。
彼女はその大きな大きな木から何を感じているのか・・・。

彼女がこの木から出会って随分な時間がたった。静寂な時間。・・・およそ一時間はここの周りから動いていないだろう。
そして彼女が目を開く・・・。

「ふぅ・・・。そろそろ帰りましょうか。・・・あ。」
大事な事を忘れていました。昨日ここの場所を教えてくれた方から聞いた話・・・。
この神木に山の安全をお祈りすると、願い事が叶う。という誰もが良く聞いた事のあるような内容です。
私もお祈りしてから帰りましょうか・・・。


山の麓に着いたときは18時あたり。
「うう、もう日が沈みそうです。少し急いで帰らなければいけませんね。」
といっても急ぐのは危険なので急ごうにも急げないのですけど。
夕焼け、昨日より綺麗ですね・・・。
私の悪い癖です、景色などに気を取られていると足が止まってしまいます。どうしたらよいのでしょうか、困ったものです。
彼女は帰り道を少しでも急いだが、その思いとは裏腹に急げば急ぐほど辺りは暗くなる一方っだった。

19時にもなれば大商店街もすぐ近くになってきました。しかし・・・もう空は真っ暗です。

彼女に何かが付いて来る。

でも街の明かりは帰り道を照らしてくれて、夜でも危険ではないですね。
嗚呼、またご主人が心配してるでしょう・・・。

彼女に危険が迫っている。

今日はなんて誤ったらよいのでしょうか?
それとも今日のところはお手伝いをしたので許していただけるでしょうか?
・・・そんなわけないですよね。

彼女に何者かが襲い掛かった。
「…!?」



何が起きたか分からない・・・。えっと、ここは?
街の中?そうだ。街の中の帰り道・・・。じゃあどうしてこんな薄暗くて狭い路地に・・・。
そんな私の思考はある声で途切れた。
「ヘッヘッヘ、良く見たらやべぇ可愛いじゃーかコイツ。」
「だから言ったでしょヘルガー。僕の目に落ち度は無いさ。」
「さて、まずはどう可愛がってやろうか・・・。」

何が・・・何が起きてるの?
目の前にいるヘルガーとグラエナは誰?分からない・・・。もの凄い怖い感じ。
・・・逃げなきゃ。
彼女は身の危険を察し、逃げよう決めた。
いくら鈍い私でも、この者たちの殺気が・・・危険を感じさせている。

私は私の今できる一番強い威力の高い技「はっぱカッター」でヘルガーを振り払い、思いっきり走って明るい街中に出た・・・・・ハズだった。
しかしすぐに後左脚をグラエナの鋭利な牙に捕らえられ転んでしまう。
「痛っ!」
「逃げないの。これから僕達と楽しいことが待ってるんだよ?」
言葉に棘が無いグラエナだが、本当に言葉だけだった・・・。
(なんとか・・・しないと。)
「おうおう怪我しちゃったのか?可愛そうだろ怖がってるじゃないかグラエナ。ヘッヘ。」
「あぅ・・・あぅ。痛いよぉ」

脚からは血が流れていく、激痛が体を走り力が入らない。
どうして、どうしてこんなことに・・・。
「逃がさないよ・・・」
私に被さってきた嫌な毛並みのグラエナは耳元で威圧するように囁いた。
それで一瞬で私の心が折れそうに・・・。
(もうだめだ・・・)

急に後方から爆音がして眩しいくらいに辺りが明るくなった。そして熱気。
建物の窓ガラスが次々に割れる音がして・・・。
私は完全に怯え、それはヘルガーの炎かと思っていた。
「何!?どうしたのヘルガー!?」
「俺じゃねぇ!誰だ!?」

次の瞬間に私は何かに投げ飛ばされていた。路地を丁度出たところまでに・・・。
ぁぁ・・・痛い・・・。

人が集まってこないうちにようやくの事で立てたけど。
血が止まる気配は無い・・・どうしよう・・・。
悩むまもなく、先程の路地から何かが飛んできた。それは私に向かってきて・・・ポケモン!?
私はそのポケモンらしきものにぶつかった。いや、ぶつかったんじゃない。・・・抱かれてる?
違う、運ばれてる。ポケモンの背中に乗せられ、もの凄い速さで・・・。あれ、また意識が・・・無くなって・・・。

温かい上に柔らかい。一体・・・誰なの・・・?















意識が戻った・・・のかな。
あ、状況は変わってないけど今度はゆっくり運ばれてるのでしょうか?
えっと、私が乗っているのは・・・ブースター・・・?
この人が私を救ってくれたのでしょうか?
そのブースターの右耳からは血が垂れていた。さっきのグラエナたちとの戦いで?
グラエナに噛まれた私の脚にはいつの間にか薬草と草包帯が巻いてある・・・。
そういえば私に襲いかかってきたグラエナたちはどうなったのでしょう・・・?
一気に疑問が出てきたが、思わず自分の声で思考を断ち切った。
「あの・・・。」
ブースターの耳がピクッと反応し、歩いていたブースターは歩みを止めて私を降ろしてくれた。

「あ、あの。貴方が私を助けて下さったのですか・・・?」
少し、小さめの声でしたけど聞こえましたかな?
ブースターは少しの間を置き、軽く頷いた。
やっぱりこの人が助けてくれたんだ・・・外見からは雄のブースターかと。
「えっと、有難う御座いました!一時はどうなるかと思って・・・あの、せめてお名前でもお聞かせ・・・」
私が喋っている最中、いきなり私に背を向け走り去ろうとした。
「あ、あの!」
私の声が聞こえていないはずが無い。それなのにどうして行っちゃうの?
気付けば私はその人を追いかけていました。街の中、人ごみに隠れて見失いそうにもなりながら彼を追っていました。
脚の痛みも気にしないほどに夢中で、私の視界からどんどん小さくなっていく彼を見失わないために・・・。

・・・そして、ついにリーフィアは彼を見失ってしまった。一度足を止めて辺りを見回しても、その人ごみからはブースターの姿は無かったのだった。
彼女が諦めて歩こうとしたそのとき、彼女は驚いた。
今自分の立っている場所が自分の家の店の前であることに・・・。
「・・・うそ・・・私の家?ということは、あの人は・・・。」
もしやと思い、店とは反対方向にある家を見た。
彼女が目にした光景は、向かいの家の玄関のドアにブースターだと思われるふさふさの尻尾が中に入っていくところだった。
「やっぱり・・・今日のあの人だったのかな?・・・痛たっ!」
ふ、不意にまた脚の痛みが襲ってきました。今まで走ってきたときはどうして痛みが感じなかったのでしょうか・・・またご主人に心配かけてしまいそうです・・・。
彼女はしぶしぶ店の中へと帰っていったのだった


今ご主人は店にはいないようです。奥ですかね?
フラつく後左脚を気にしながら私は店の奥へと・・・。奥といってもそこは普段の家なのですが。えっと。ご主人はキッチンでしょうか?
あ、ご主人。ご主人は久々に料理という料理を作っているらしく、とてもいい匂いがしてきました。

一声鳴いてみるとご主人は私に気付いたようです。
「ん、リーフィア帰ってきたの?お帰りー。遅かったじゃない、心配したよー。」
キッチン越しのため、リーフィアとアオイのお互いの姿は確認できてはいなかった。

「リーフィア?どうかしたの?」
ご主人は私の声で私が伝えようとしている事が殆ど分かってくれます。すぐに私のところへ来てくれました。
そして、すぐに私の後左脚の草包帯を見つけてくれました。
えっと・・・それにしても、少し弱々しく鳴き過ぎたでしょうか。私は少しご主人に笑顔を・・・って、包帯に目がいっているらしく見てくれません・・・。
「どうしたのリーフィア、ちょっと見せてみて・・・草の包帯解くよ。」
私は素直に脚の包帯を見せて解かせてもらいました。包帯って完璧にケガが治ってないと解くときも痛いんですよねぇ・・・痛い!
「どうしたのリーフィア!?」
ご主人が驚きの声を・・・。
それは私も思ったよりものより酷い傷でした。そして包帯をとったことによって包帯に触れていたケガの部分がとれてしまい、また少々出血してきました。
思い返してみればあの流血の量からして、傷もそれないに深くなければ・・・おかしいですよね。
「待ってて、今治療してあげるから。」
・・・ぅぅ。ご主人には迷惑かけたくなかったのですが、頼るしかありませんね。いたたた…。
いっそ今日はご主人に甘えたいです・・・っと、やっぱり今のは無しでお願いします
そんな事を考えているとご主人が救急箱を持って戻ってきました。
スプレー式のキズぐすりなど他にも色々な塗り薬で治療しながら、最後に白いガーゼなど包帯を巻いて・・・。
ああ、前にもご主人以外にこんな感じに治療してくれた人がいましたねぇ、今は近くにいませんが・・・ね。
「こーれで、よしと。・・・一体今日はどこに行ってたの?」
「にゅぅ・・・。」
そんな極限まで心配しているような眼差しで見ないで下さいご主人・・・ぅぅ。
・・・何でしょう、何だかコゲ臭いですね。
「ん、どうしたのリー・・・あれ、何か焦げ臭いような?・・・あー!」
ご主人は飛ぶようにキッチンに向かっていきました。案の定、その後にご主人の短い悲鳴が聞こえてきたからには私は・・・。
そんなぁ、ご主人の料理が久しぶりにご馳走できると思ったのですが、・・・ガッカリです。
何より、御免なさいご主人・・・。


結局、私はその後ご主人の料理を・・・食べる事ができましたのです。やはりとてもご主人の作るものは美味しいものでした。
なにより、ご主人と食を共に取れることが私の一番の安心したひと時で居心地が良い時間なのです。
さて、もう一つ安心できる場所がありますが今からそこに行きます。・・・そう、屋根の上ですよ。
今日も眠たくなるまでそこにいましょうか・・・。
あぅ。やっぱり無理に歩くと痛みますね、静かに歩かなければ。
わぁ、階段キツイなぁ。えっと・・・あご主人が来たです。

「リーフィア?あらあら階段か・・・よいしょっ!」
ご主人はとても私に気を利かせてくれて・・・こうして今日は階段まで抱いて登って下さっていますし、
・・・あぅ。なのに私、迷惑かけすぎですよね・・・ぅぅ。
「そうだリーフィア、今日は一緒に寝ようか。こうしてリーフィア持ってると
 久しぶりにリーフィアを抱いて寝たくなってきちゃった。良いかな?」

ご主人・・・嬉しいです。私はつい大きな声で返事をしてしまいました。
「あはっ、そんな嬉しがる事でもないのに。」
ご主人は二階の部屋まで私を運んでくれました。また降りていったご主人は、その後は台所の後片付けをしてから店に戻るようです。
私はそれまで屋根の上にでも居ましょうか。ベランダに出てみれば今日も花たちは元気、そして夜空を見上げれば星たちも綺麗です。

あれ、誰かこっちを見てる。誰ですかね。
その視線を感じるところを見れば正面の家でリーフィアと向かい合いの家だった。

・・・ブースター?
あ・・・まさかあのときのブースターさん!
こちらと目が合ったブースターさんは、すぐに窓から姿を消してしまいました・・・。

あれ、私を避けてるのかな?それとも、ただの恥ずかしがり屋さんでしょうか?
・・・私はしばらくそのブースターさんが居た窓を眺めていましたが、昨日のように街も星も綺麗なのでひとまず屋根に登るとしますか。
屋根に上がった後、あの窓は丁度隠れて見えなくなりました。

星空を眺めながら私は、ブースターさんとまた一度会ってお話できたらな~。
とか考えてしまいます・・・。

じんじんする脚の痛みは、綺麗な街明かりが優しく撫でてくれているようにも思えるほど今日は夜空も綺麗です。


続きます。






途中保存です。何かあればどうぞ。




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Last-modified: 2013-02-26 (火) 00:00:00
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