writer is 双牙連刃
作者復帰に伴い何か書こうかなーと思って書き始めた作品でございます。
ポケモン×ポケモンの描写もありますので、それは嫌だ! って人が居たら閲覧注意でございます!
仕事仕事の合間の貴重な休日。僕は、ある物を注文して今日がそれの配達日なので、配達員のペリッパーさんが来るのを今か今かと待っているところです。
実際は普段使っている物なのですが、通販で大量に安値で売ってるのを発見して今回はネット通販をしてみたのです。これで、当面は購入しなくてもよくなります♪
「こんにちはー、ペリッパー郵便でーす」
「あ、はーい!」
来た来た! もう買い溜めしておいた分が尽きてたから、今日来てくれなかったら無駄な出費が増えるところでしたよ。
ハンコを持ってと、よし、行きましょう!
玄関の扉を開けると、そこには私の頼んだ物が入った段ボール箱と、それを持ってきてくれた配達員、ペリッパーさんが居ました。
「えっと、エンさんでよろしいですか? 荷物をお運びに参りましたー」
「はい、ありがとうございます!」
「おぉ、珍しいですね。牝のバクフーンで独り暮らしですか。大変じゃないですか?」
「あ、あはは……まぁ、あまり危険もありませんから」
……一応言っておきますけど、僕は牡です。でも、大抵初見の方は牝だと言います。原因ははっきりしてるんですがね。
僕、世に言う色違いのバクフーンなんです。つまり、背の毛の色が桃色なんですよね……これの所為で、大抵は牝だと言われてしまうんですよ。
で、買った物はこの毛を隠す為の毛染めなんです。これが無いとさっきの通り牝に間違えられてしまうんですよ……まぁ、普段はそれでもいいんですけど、それじゃいけない場面というのも結構あるんで、これが必要になると言うわけです。
さて、それじゃあ受け取り印にハンコを押してと。これで荷物を受け取れますね。
「はい、ありがとうございます! それではお届けの荷物二つ、ここに置いていきますね~」
「は~い。……ん?」
二つ? ペリッパーさんが飛び去っていくのを見送りつつ玄関から顔を出すと、おや、確かにダンボール箱が二つありました。
一個は間違いなく私の注文した毛染めですね……もう一つはなんでしょう? なんか妙に大きいですけど。
贈り主は……特に書かれてませんね。っていうかそもそも送り状みたいのが付いてないんですけど。間違いで送られたのかな?
ともかく一先ず部屋に入れてしまいましょう。……うっ、二つ目の箱、結構重い……。
一応バクフーンですから、パワーはそれなりにありますからなんとかなりますよ。でも重いなぁ。
今日は出掛ける予定は無いけど、とりあえず毛染めの確認だけしちゃいましょう。うん、箱にばっちり詰まってます。30個もあればしばらく買わなくて済みそうです。
問題のもう一個の箱、どうしましょう? こういうのって、基本的には郵便局に連絡して引き取ってもらうべきですよね。
でも、ちょっとだけ覗いて見るだけならいいでしょうか? 開けちゃっても、テープを貼り直しておけばいいですよね。
「それじゃ、失礼しま~す」
軽く爪を出して、ぴーっとテープをカット。ではでは、ご開帳です。
……え、えぇ!? こ、これって……。
「ぅ、うーん……むにゅ……」
「ら、ライチュウ、だ……」
寝てはいますけど、間違いなくネズミポケモンのライチュウという種族で間違い無いようです。な、なんでポケモンが配達されてるんでしょう?
ど、どうしよう。えっと、鼠身売買って事でしょうか? 犯罪の香りがやけにするんですが。これは……郵便局の方にテイクアウトしてもらうしか無いですよね。
「ぅうん? ふわぁぁぁ…」
「へ? わわっ!」
お、起きちゃった! 慌てて箱を閉じてテープまでしちゃいました。いやあの、どうすればいいか分からなかったんで。
「は!? ちょっ、何ここ狭いし真っ暗なんだけど! こらー! 出せー!」
「ひぇぇ、ど、どうしよう……」
うわわ、箱がバタバタしてる。だ、出そうにも暴れられたらどうにも出来ませんよぉ。
「あーもうめんどくさい! だー!」
「え、ぎゃー!」
箱から電撃が飛び出して、ダンボール箱はバラバラになりました……も、燃えたりしなくてよかったですよ。
纏わり付いたダンボールの残骸を掃いながら、周りをキョロキョロと見回しだしました。と言っても、ここは私のワンルームですから、見る物なんてそんなにありませんけど。
「えっ、ここどこ?」
「あの……僕の家です」
「ん? あれ、あなた誰?」
「この部屋を借りてる者で、バクフーンのエンって言います」
「部屋? 借りてる? おっかしいなぁ、私工場で働いてて、品物詰めるのに飽きちゃって昼寝してた筈なんだけどなぁ?」
いやそれ駄目じゃないですか。というか、工場ってもしかして……。
「あの、工場って、毛染めのカラーのですか?」
「そうそう。ん? なんかいつの間にか手紙持たされてる。なんだろ?」
あ、本当にライチュウさんの体に手紙が貼られてる。なんて書いてあるんでしょ?
……お前クビ。邪魔だったから適当に荷物に混ぜて送ったから。と書かれてますね。……え?
「え、えぇー!? そんなぁ、あそこクビにされたら住むところも無いのにー!」
「荷物に混ぜて送ったって……無茶苦茶過ぎる……」
「うぇーん、これからどうしよぉー」
うわぁ、急に泣き出しちゃった。どうしよう、何とか泣き止ませてあげないと話も聞けません。
とりあえず、お茶でも準備しましょうか。落ち着けば泣き止む事を信じて。
「はぁ……お茶、ありがとー」
「いえいえ。でも、その手紙の文面からしてお仕事が無くなってしまったようですけど……」
「そうなのよねぇ……あ、私はライチュウのライチ! さっき名乗らなくてごめんね、エンちゃん」
……もう慣れましたけどね。でもやっぱり地味に傷付きますよ。
これ、間違えられる原因に僕の声が牡にしては高過ぎるっていうのもあるんですよねぇ……毛の色も声も生まれつきだからどうしようもないんですけど。
それはもういいとして、ライチュウさん……いや、ライチさんもどうにか落ち着いたみたいですね。よかったよかった。
「それにしても、仕事が無くなったのはまだいいけど、住む場所が無くなったのがかなり痛いわ」
「それって、働いてた工場に住み込んでたって事ですか?」
「そうそう。田舎から出てきたのはいいけど、私の取り得ってバトルが強いくらいなのよねー。でもそれだと働くのには向かないから、住み込みで働き手を雇ってるっていう工場の情報に食い付いたの。工場の警備も兼ねてね」
「はぁ、なるほど」
いや納得出来るかは微妙かな? そもそも語感とかからして牝の子であるのは間違いないようですし、住み込みで仕事とは些か危険なのではないでしょうか。
しかし、それもクビになってしまった以上どうにもなりませんね。ある意味、平和になったと言えなくもないかも。
「それにしても、これからどうしようかなぁ。ねぇ、ここってなんて町なの?」
「え? あぁ、ここはアムナシティってところですよ」
「うーん、聞いた事無いわね。地図とか無い? 私が居たのメアルシティって所なんだけど」
メアルシティですか……こっちは私が聞いた事無いですね。一体何処にあるんでしょう?
一応地図はありますけど、記載されている範囲にあればいいのですが?
本棚にある地図を取り出すして広げると、ライチさん、というよりライチちゃんも地図を覗き込みました。メアルシティって記述は……あ、あった。でもこれはちょっと……。
「うわっ、何これ地図の端じゃない! そんなに遠いの!?」
「みたいですね……これは何か移動手段が無いと戻るの無理ですよ」
「そんなぁ、こんな長距離移動する方法を使えるお金なんて無いよぉ」
というか、そもそもお金を持ってるんでしょうか? 見たところ、ライチちゃんは特に何も持ってないみたいですけど。
バラバラになった段ボール箱にも何も……ん、残骸の中に何かありました。これは携帯用の金庫、ですかね?
「ライチちゃん、あなたの入ってた段ボール箱の跡にこれが……」
「え? あー! 私の財産貯金箱~! よかったぁ、工場長これは私と一緒に入れててくれてたんだ~」
貯金箱っていうレベルの物ではない事は飲み込んでおいて、私の勘が『開けられないし邪魔になるから入れられた』と告げております。ダイヤル回して開けるタイプですしね。
ライチちゃんが中を確認してるのを覗くと……うーん、輸送屋さんに移動を頼むにしても、ちょっと額が足りないですかね?
「これでメアルに……戻るのは無理かなぁ。メアルに戻れないと故郷にも帰れないし、これからどうしよ?」
「いや、僕に聞かれても困りますよ。とりあえず、部屋の掃除しちゃうんでゆっくりしててください」
「あー……私がやっちゃったんだよね、これ。ごめん、私も手伝うよ」
「あ、それは助かります。じゃあ、お願いします」
唐突に知り合う事になりましたけど、悪いポケモンではないみたいです。せっせとバラバラになってる段ボール箱の残骸を拾ってくれてます。
それじゃ、僕は掃除機でも掛けましょうか。この分なら、すぐに片付きそうですね。
二匹でサクサクと作業をこなし、部屋は元の状態に戻りました。元々段ボールが散乱してるだけでしたし。
「よーし、完璧!」
「助かりました。っと、もうお昼ですね。何か作りますから、またゆっくりしてて下さい」
「え、いいの? 自分で言うのもあれだけど、素性の知れないポケモンを家に上げるのはどうかと思うよ?」
「あはは、確かに。でも、話した感じで悪いライチュウさんではないみたいですし、行く当ても無くて困ってるのでしょう? 困った時はお互い様って言いますし」
「あ、ありがとー。エンちゃんが良いバクフーンで助かったよー」
呼ばれ方はもうエンちゃんでいいです……。訂正するにも、僕が牡である事を明かさないとなりませんし。ライチちゃんとしても、僕は牝のままの方がいいでしょう。
それじゃあ有り合わせで二匹分のチャーハンでも作りましょうか。これでも、腕は悪くない……つもりですから。
まずはコンロに火を点けて、フライパンを十分に熱する。そして油を十分にフライパンに伸ばして、卵を落とすと。
僕が働いてるの、小さな喫茶店なんです。と言っても、僕はそこのホール係なんですけど。まぁ、そこでついでに料理も教わってるって事です。
ベーコンや玉葱も炒め終わったし、後はご飯を加えて仕上げに味を整えるっと。うん、まずまずの出来かな。
「はい、出来まし……うわぁ!?」
「へぇ~、手際良いね。ご飯に火を通す具合も丁度良いし、料理上手なんだ」
そ、傍まで来て見られてるとは思いませんでした……。危うくフライパンをひっくり返すところでしたよ。
「ねぇねぇ、私も何か作っていい? ご馳走してもらうだけって言うのも悪いし」
「え? えぇ……まだ買いに行ってないんで、あるだけしか食材はありませんけど」
ありがとうって言った傍から冷蔵庫の中身を物色しだしましたよ……。野菜やなんかを取り出して、何を作るんでしょう?
……おぉ!? 食材切るの速い! 手頃な大きさにあっという間に寸断された食材達がフライパンに放り込まれて、ジュウジュウと音を立て始めました。
そのまま炒め物が完成……僕なんかよりずっと料理が上手いって事だけは十分に伝わってきました……。
「ま、こんな感じかな」
「ライチちゃん凄い、僕なんかよりずっと料理上手じゃないですか」
「独り暮らし出来るように大体の事は随分練習したからね。じゃあ、食べよっか」
「そうですね。それじゃ、頂きます」
「いっただっきまーす」
こうやって家で誰かと食事をするなんて何時ぶりでしょう。四、五年……うん、それくらいぶりですね。
あ、この炒め物美味しい。あっさり作って見せたのにしっかりと味も付いてる。うぅ、僕もこれで結構練習したんだけどなぁ。
「このチャーハン美味しい! エンちゃんも上手だね」
「ライチちゃんには適わないみたいですけどね……羨ましいなぁ、こんなに上手で」
「えっへへー、それほどでも」
とりあえず談笑しながらご飯を食べて、軽く一休み。後で買い物しないと晩御飯の分の食材が無いかなぁ。
「はぁ……ご飯を貰えたのはいいけど、これからどうしようかな。住むところも無いし、お金もそんなに無い。……エンちゃん、格安のアパートとか知らない?」
「うーん……知らない事はないですけど、ライチちゃんの所持金では一月保たせるのも無理だと思いますよ」
「そんなぁ、このままじゃ私、行き倒れって事!?」
うな垂れちゃった。事実にしても、もうちょっとソフトな表現すればよかったかな?
……大家さん、確か申請すれば二人で暮らしてもいいって言ってたよね。なら、これも出会った縁、かなぁ。
「まだ、そこまで悲観するのは早いかもしれませんよ」
「ふぇ、どういう事?」
「僕も生活があるんで長居をさせてあげれるかは分かりませんけど、とりあえず落ち着いて生活出来るまでって事なら住む場所を提供出来るかもしれません」
「えっ! そんなところあるの!? どこどこ!?」
「えっと、この部屋です」
「……うぇぇ!? いいの!? いやでも、そうさせてもらえると凄い助かるけど」
「はい。住む場所があれば、仕事も探せますよね? 布団なんかは僕の分しか無いんで買ってもらう事になりますけど」
「全然オッケー! よーし、こうなったら新天地で一旗上げちゃうわよ!」
こうして、僕には同居者が一匹増えましたとさ。独りで少し寂しいなと思ってたし、ライチちゃんは明るくて元気だから楽しくなりそうだなぁ。
それじゃあ、ライチちゃんも必要な物を揃えたいって事だし、お買い物に出掛けようかな。……ま、毛染めはしていかなくていいか。
「エンちゃーん、ナポリタン一つ頼むわー」
「はーい、畏まりましたー」
オーダーを聞いて厨房へ。厨房では、この店の店主であるヤスタカさんとそのパートナーであるキリキザンのジンさんがせっせと注文された料理を作っております。
「店長、三番テーブルナポリタンでーす」
「あいよー」
「……って言うか、いい加減僕を看板『娘』として起用するの止めてくださいよ」
「いいじゃねぇか、華が無い時に造花を飾るなんてよくある事だろ?」
僕は造花ですか……まぁ、牝じゃない以上妥当な表現かもしれませんけど。
あ、因みに牡として働く時は毛染めを使用します。そしてその時は名前もモウカと呼ばれるようになってます。(店長が決めた偽名です……)
牝では異性からの、僕からして見たら同性からの受けはいいんですけど、その逆の客受けを考えると牡のホールも必要だそうで。どっちもやれるって言うのは得なのか不得なのでしょうか。
まぁ、常連さんにはどっちも僕だってバレてるんですけどね。声なんかも変えようとしてるけど、そこまで変えれるものじゃないですし。
「よし、ナポリタンお待ち。行け、造花」
「変な呼び方を定着させようとしないで下さい。行ってきますよ」
出来たてのナポリタンの盛られた皿を持ってお客さんの下へ。口は悪いけど、店主のヤスタカさんの腕前は凄腕ってレベルですよ。賄いを食べさせてもらってるから分かります。
玉葱、ピーマン、ソーセージにベーコンと。少しスパイスの効いたトマトソースがこの店のナポリタンの売り。下手な洋食屋で食べるよりこの店に来た方が美味いし速いしおまけに安い、そんな噂があるくらいです。
良い食材を使ってる訳じゃないので、洋食屋さんには洋食屋さんの美味しさがあると思いますけどね。庶民の味方なのはどうやらこっちみたいです。
せっせとホールの仕事を続けて早13時、ランチタイムを過ぎれば客足もまばらになります。こうなったら僕も食事休憩です。
「ふぅ……」
「お疲れ。ほら」
「あ、ジンさん。お疲れ様です」
今日の賄いはジンさんが作ってくれたみたいですね。チキンライスだ、美味しそうだなぁ。
早速一口。……あ、これナポリタンのソース余ったんだ。でもチキンライスにしても美味しい。
「こうしてあいつに捕まってから始めた調理だが、ここまでになれば大したものだろう?」
「え、ジンさんって元は野生のポケモンだったんですか?」
「まぁな。今でこそこの生活に慣れたが、最初はかなり苦労させられたよ」
ポケモンが人間の社会に溶け込むようになってから大分経ちますけど、今でも野生のポケモンは居ます。もちろん、ポケモン達が造った町とは別にです。
僕は、人は居なかったけど町育ちだったんでこうして人とポケモンが共存してる町で生活するのも違和感無いですけど、今でも野生の生活をしているポケモンにはやっぱり理解し難い事みたいですね。
「でもま、今のお前さんよりは気楽だったかもな。大変だろ、牝の役なんかさせられるの」
「諦めにはなりますけど、昔からですからね。子供の頃なんか、周りからあまりにも言われるんで自分でも牝だと思ってたくらいですから」
実話です。だって両親も僕が生まれて牡だって聞かされて驚いたって言ってましたからね。本当、損な毛色ですよこれ。
まぁ、お陰でこうして牝の真似なんてことが出来るようになったんですけど。正直、あまり牡から人気が出るってよろしいと思ってないんですけどねぇ。
「そうだエン、お前、料理が得意な知り合いって居ないか?」
「え? どうしたんですか急に?」
「ヤスタカの奴が言ってたんだよ、ホールと調理場にスタッフ増やすかなーなんて。最近客足も増えてるし、ホールも大変だろ?」
「んー、確かに僕だけじゃきつくなってきてるのは確かですね」
「ヤスタカが面白半分でサイトなんか立ち上げた所為で、口コミでこの店の噂が広がってるらしくてな。それで最近客が増えてるらしいんだ」
へー、インターネットサイトですか。我が家にもパソコンはありますけど、そんなサイトの存在は知らなかったですね。
「しかも、看板娘のところにお前の写真まで貼ってある。よく許したな?」
「ぶっ!?」
「……もしかして、何も聞かされてないのか?」
「し、知りませんよそんな事!? もー、店長も勝手なんだから!」
「ま、まぁヤスタカのやる事は大体いい加減だからな。知り合いが居たら連れて来てみてくれ」
あ、ジンさんがそそくさと逃げていった。……後で店長には事の次第を聞き出すとしよう。
しかし料理が得意な知り合いかぁ……ん? なんか最近そんな子と知り合ったような?
うーん、まぁ家に帰ってから思い出せばいいかな。さてと、そろそろ休憩も終わりにしてホールに戻りましょうか。
……家に帰ってきて思い出しました。現在床に伏せってる一匹のライチュウの事を。
ライチちゃん、多分また仕事見つからなかったんですね。
「ライチちゃん、大丈夫ですか?」
「エンちゃん……私って何がダメなの? うぅ」
ここに来て早2ヶ月、まだライチちゃんの仕事は決まってません。問題はライチちゃんにあるというか、チョイスする仕事にあると思うんですけどね。
だってライチちゃん、警備系の仕事しか受けにいかないんですもん。牝に警備は門戸が狭いと思うんですよ。
「元気出していきましょうよ。諦めなければ必ず仕事見つかりますから」
「そだねー……うん、エンちゃんが励ましてくれるんだもん、頑張らないとね」
「その調子ですよ。ライチちゃんは元気で笑ってる方が似合ってます」
「ありがと。よーし、それなら晩御飯作っちゃうね。エンちゃんは寛いでて」
「じゃあ、お願いします」
とことこと台所に歩いていくと、冷蔵庫の中を探って食材を取り出していく。
見える食材からして、今日はカレーですね。ご飯は確か冷凍したご飯があるから大丈夫でしょう。
……うん、食材を切るのも早いし、炒めるのも味付けもしっかり出来る。料理のレシピも多分覚えられる。これは適材なんじゃないでしょうか?
ご飯食べながらでもライチちゃんに勧めてみましょうか、僕のお店で一緒に働いてみないかって。
あ、でもそうすると僕が牡だって分かっちゃうかな? ……でももう二ヶ月も一緒に暮らしてるんだし、隠しておく事も無いのかなー……。
食卓で頬杖を突きながらそんな事を考えてると、カレーの良い香りがしてきます。
「うん、出来たよー」
「相変わらず早いですねライチちゃん。羨ましい腕前だなぁ」
「はぁ、これを活かせる仕事に就ければよかったのになぁ」
今の一言を聞いてきょとんとしちゃいました。あれ、ライチちゃんそっちの仕事でもよかったんだ?
「就ければよかったって……就けばいいじゃないですか」
「えー? だって私ライチュウ、っていうかポケモンだよ? 飲食業とかアウトでしょ」
「……僕がやってる仕事って、前に言いましたっけ」
「え? 確か喫茶店のホー……ル!?」
「えっと、つまり一応飲食業ですけど」
明らかにショック受けてますね。そっか、今まで気付いてなかったというか、変な勘違いしてたみたいですね。
「えー、そんなのありなの!? メアルでは全然ダメだったよ!?」
「うーん、まだそういう偏見が残ってるところがあるとは知ってましたけど、ここは特にそういう事ありませんよ。現に店長のパートナーのキリキザンさんが調理してますし」
「マージーでー。それなら変に仕事絞ってめっちゃくちゃ損してたなー……」
解凍されたご飯とカレーの盛られたお皿が目の前に置かれて、ライチちゃんが向かいの席に座りました。まずはご飯食べましょうか。
「とりあえず冷める前に食べよっか」
「そうですね」
頂きますと声を揃えて、食事開始です。
「んぐ、でもそうかー、それならそれで色々仕事探しの幅が広がるなー」
「はむ、んぐ……それなんですけど、実はうちの店でスタッフ募集してるんですよ。調理とホールで一人ずつくらい」
「そうなの!?」
「はい。それで、ライチちゃんさえ良ければ紹介しようかと思ってるんですけど」
「されちゃうされちゃう喜んでー!」
「じゃあ、明日辺り一緒にお店行きましょうか」
「行く行くー♪」
うん、ライチちゃんの腕前があれば店長もノーとは言わないでしょう。後はライチちゃんがやるって言うかどうかですね。
それなら……あれも言っちゃった方がいいかな。同じお店で働く事になるなら、いずれ知られる事ですし。
「それなら時期もいいですし、ライチちゃんに言っておかないとならない事があるんですよ」
「ん? なぁに?」
「僕が実は牡だったって言ったら、ライチちゃん信じます?」
「え? そうなの?」
「はい」
スプーン咥えたままちょっと考えてますね。やっぱり信じられないかな?
「んー……会ったばっかりならそれで驚いてここから飛び出してたかもしれないけど、エンちゃんが良いバクフーンだっていうのはこれまでで分かってるしね。そうでもそんなに驚く事は無いかなぁ」
「謝った方がいいですよね。ごめんなさい、今まで言い出せなくて……」
「いいよいいよ。エンちゃんの事だもん、私の為に牝だって事にしてくれたんでしょ?」
「勝手だとは思うんですけど、はい」
「ま、私も確認もしないで牝だって決めつけてたからね。気にしない気にしない」
はぁ……よかった、これで悲鳴でも挙げられてたらショックでしばらく落ち込むところでしたよ。
「でも……本当に牡なの? 話を聞いてもエンちゃんが牝にしか見えないんだけど?」
「あー、よく言われます。こっちとしてもかなり勇気の要るカミングアウトなんですよね、これ。過去にこれでかなりショックを受けてる相手が多く居て……」
「って事は、本当に牡なんだ。へぇ~」
改めてまじまじと見られたりすると恥ずかしいんですけど。なんというか、視線がくすぐったい。
「……世の中なんか間違ってる! 私より全然可愛い子が牡なんて!」
「えぇ!? ライチちゃんだって可愛いじゃないですか。笑ってるところなんか、僕は好きですよ?」
あ、不味い、なんか綺麗に地雷を踏み抜いた気がする。現にライチちゃんの顔が今の一言で赤くなりました。
「き、ききき急にそんな事言わないでよっ!」
「ぅあばばばばばば!?」
「うわぁ!? ごめんエンちゃん大丈夫!?」
は、恥ずかしくて漏電って……勘弁してください……。
「い、いいいらっしゃいませー!」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。今日は接客を見ててもらうだけですから」
「で、でもこういう仕事って始めてで……」
「リラックスして、お客様からのオーダーをしっかり覚えて厨房に伝えれば問題ありませんから」
今、僕は新しくホールスタッフになったゴトウさんのトレーニングに駆り出されております。今日が初日なんですよ。
当人が言うように、どうやらこういう仕事は始めてみたいですね。まぁ、そこまで難しい事を要求される訳じゃないんでなんとかなると思いますけど。
まずは各席を回ってオーダーを聞いて、何処の席のお客が何を注文したかを覚える。それを厨房に伝えるっと。
「オーダーです! ハヤシライスとカツカレー、それとナポリタンとシーザーサラダ、お願いします!」
「はーい!」
厨房から元気な声が聞こえます。そう、ライチちゃんです。もちろん店長やジンさんも居ますけど。
あの日の翌日、ライチちゃんを連れて店に行って紹介すると、まさかすぐに何か一品作れと言われて驚きましたよ。
まぁ、ライチちゃんはさくっとチキンソテー作ってみせて合格貰ってましたけどね。それで、今は厨房で調理スタッフとして働いてます。
あぁ、今でも僕の部屋で一緒に暮らしてますよ。稼げるようになったとは言っても、まだまだお金は足りませんからね。
「はい、まずはハヤシライスとシーザーサラダ。よろしくね、エンちゃん!」
「了解!」
牡だって事を明かしても、呼び方はエンちゃんのままです。呼ばれ慣れちゃうと気にならないし、この職場ではちゃんて呼んでもらわないと困りますからね。ちょっと複雑な気分ですけど。
作られた料理をそれぞれのお客へ出して、次が出来たらそれを運ぶ。で、その間に来たお客を空いている席に誘導してまたオーダーを受けて……。その間にレジをやって空いた席を清掃してっと。
慣れてる僕は特に何も無くやってますけど、ゴトウさん的にはかなりきついかもしれません。慣れるまでは大変なんですよねぇ。
そんな感じで仕事をこなしつつランチタイム終了。あ、因みに僕は基本的に朝から夕方までです。忙しい峠を過ぎちゃうとあまりやる事無いんですよね。この喫茶店自体は18時がラストオーダーですよ。
これから入る休憩が終わったら、後二時間程はコーヒーなんかを飲みに来るお客に接客して終わりですね。
「お、お疲れ様です、エンさん。凄いですね、あんなに色々な事をスイスイと……」
「この辺りは慣れですね。ゴトウさんはまず、一席一席のオーダーを取って、厨房に伝える事から始めましょう。トレーニング中は必ず誰かと一緒にホールに立ってもらいますから、その間にしっかり練習して下さいね」
「あ、はい!」
「ゴトウさんもエンちゃんもお疲れ様。今日の賄いは私の手作りだよ」
「え、これ食べていいんですか!?」
「働いてる私達だってお腹は空きますからね。遠慮無くどうぞ」
「じゃあ、頂きます!」
うん、残った食材で作ったピラフですね。良い香りです。
ゴトウさんも一口食べて、パァッと顔が明るくなりました。やっぱりライチちゃんの腕前は一流って言っても差し支えないですね。
「しっかし、良い飯作る奴を紹介してくれたもんだな、エン。大助かりだ」
「あ、店長。お店の方に行ったんじゃないんですか?」
「ジンに任せた」
……ジンさん、ご愁傷様です。
「いやぁ、私のご飯なんかお店に出していいのかなーと思ってたけど、美味しいって言ってくれるのはやっぱり嬉しいな」
「謙遜するなって。こんな美味い飯を家でまで食えるとは、エンも贅沢な奴だな」
「え、ライチさんとエンさんって一緒に暮らしてるんですか?」
「まぁ、ちょっときっかけがあって、成り行きみたいにではありますけど一緒に暮らしてます」
「本当、エンちゃんと知り合ってなかったらこの仕事とも出会ってないし、エンちゃんには感謝しっぱなしよ」
そんな風に言われると僕も照れちゃいますよ。まいったなぁ。
「まぁこいつ等の事はいいとして」
「「ちょっ」」
「ゴトウ君も、休憩中はこういう飯も食えるし、こいつや他のスタッフも良い奴だから、まぁちょっと頑張ってみてくれや」
「そうですね……はい、頑張ります!」
基本的に大雑把だけど、店長も良い人なんですよ。ポケモンでもスタッフとして平等に扱ってくれますしね。
ゴトウさんも元気出してくれたみたいだし、この分ならすぐに辞めちゃうって心配は無さそうですね。これでモウカが仕事に出なきゃならない事は減りそうですね。
って言うか、もう殆ど毛染めも使ってないんですけどね。ライチちゃんと一緒に送られてきた毛染めも半分くらい残ってます。
元々毛染めはただ単に僕が牝で一匹で暮らしてると思われるのを防ぐ為にやってた事ですし、ぶっちゃけ自己満足みたいな事ではありました。毛染めしてる間は一応牡として見られるってね。
でも、それもライチちゃんと一緒に暮らしてる間にどうでもよくなってきました。僕の事を牝だと勘違いしてて、僕が牡だって事を打ち明けても変わらずに一緒に暮らしてくれてる。そんなライチちゃんが居てくれたから、どっちで居ても僕は僕だと思えるようになったのかもしれません。
ライチちゃんと過ごす時間、それが大切でないなんて言えません。
「? どしたのエンちゃん?」
「え? あ、いや、なんでもないですよ」
もう一緒に暮らしてるんなら、いっその事とは思った事があるんですけどね。どうも踏ん切りが付かないと言うか……。
そもそもライチちゃんは僕の事をどう思ってるんですかね? ただの同居者? それとも、困ってるところを助けてくれた恩人? って人じゃないですけどね。
でも、僕達の仲はそれだけなんですよね。偶然出会って、一緒に暮らすようになって、一緒のお店で働くようになって……。
僕だって牡です。異性と一緒に暮らしてて、その子が可愛くて、心の中でその子の事が大きくなっていって。
大切だって、これからも一緒に居たいって、ずっと傍に居たいって……そう思ってしまうのは、間違った事でしょうか?
とは思っても、今どうこう出来る事は無し。もう休憩も終わりますし、仕事に集中しましょうか。
仕事も終わって、夕日もかなり傾いてきてます。仕事はもっと早くに終わってたんですがね、仕事終わりにお買い物してる内に結構時間が経ってしまいましたよ。
「うーん、今日も結構お客来たねー」
「ライチちゃんが厨房に入ってからは、またお客が増えた気がしますね」
「まっさかー。それならエンちゃんの人気の方がまだ理由として妥当じゃない?」
「そうだとしたら、また複雑な心境になるんですけどねぇ……」
こんな談笑をしながら帰るのにも慣れてきました。今では、ライチちゃんとはもっと前から友達だったような気がするくらいですよ。
沈んでいく夕日を見送りながら歩くこの帰り道、以前はもっと寂しく感じていたんですけどね。隣に誰かが居てくれるって言うのは安心出来るものですよ。
「……あーあ、もっと早くエンちゃんと知り合ってたらなぁ」
「どうしたんですか急に?」
「ううん、もっと普通に、幼馴染とかだったらどうなってたのかなと思ってね」
幼馴染ですか。ふふっ、そうだったらきっと、牡じゃなくて牝の友達として一緒に過ごしてたでしょうね。
「多分、私はエンちゃんの事気付かないで牝の友達として一緒に遊んでただろうね」
「あ、やっぱり。僕もそうだと思いました」
「だよねー。どうやっても、異性として好きにはなってなかったと思うなー」
……え? 今、なんて?
ライチちゃんは歩いたままだけど、思わず僕は立ち止まっていました。
ライチちゃんも何も言わずに、僕の少し前で止まりました。
「えと、あの……」
「わ、私だってその……牝だしね? 優しくされれば嬉しいし、一緒に居れば意識するよ。その、相手が牡だったら尚更ね」
後ろ手にした手をもじもじとさせながら、ライチちゃんは話を続けてます。
「自分でもこんな感じになるの始めてだし、よく分からないけど、この気持ちの相手がエンちゃん……ううん、エン君だって事は分かる」
ライチちゃんの声が聞こえる度に、自分の体温が上がってるのが分かります。鼓動も早くなってるし、背中から今にも炎が出そうです。
「だから……」
不意に振り向いたライチちゃんの顔が一気に迫ってきて、視界一杯に広がります。
そのまま、唇に柔らかくて温かいものが触れました。
「ん……エン君に恋しても、いいよね?」
ぼ、ぼぼぼ僕ききききき!?
お、落ち着かなきゃ。落ち着いて、落ち着いて……。
視線を少し下げると、恥ずかしそうにしながら僕に笑いかけてるライチちゃんが居ます。
ライチちゃんが気持ちを言ってくれたんだから僕も何か言わなきゃ。でも、何を!?
「ぼ、」
「え?」
「ぼ、ぼぼぼ僕もライチちゃんの事が好きですっ!」
……言っちゃった。男らしくもないし噛み噛みで格好悪いけど。
でも、口にしたら少し冷静になりました。
ライチちゃんが好き。大好き。なら、続けて言う事はこれでいいですよね?
「……一緒に暮らしませんか? その、これからも……僕と」
返事は言葉じゃなく、行動で示してくれました。
ライチちゃんが僕に抱きついてきて、僕はそれを受け止めました。
「あはは、エン君もこういうところは牡らしいね」
「そうです?」
「うん♪」
触れ合った温かさの余韻を感じながら、また歩き出しました。
ちょっと照れくさいけど……手を繋いで。
夕飯を食べて、食卓に使ってるテーブルに向かい合って座ってるんですが……。
ついさっきあんな事があった後だと、何をしていいか分からないんですよね。いつもならテレビでも見て談笑でもしてるんですけど。
「ねぇ、エンちゃ、君?」
「いやその、いつも通りでいいですよ? で、なんでしょう?」
「その……ね」
ね、っと言われましても。一体どうしたんでしょう?
「やっぱり付き合うって言うか、もう同棲するんだし、キスもしてるんだから」
「はい、そうですけど……」
「ならさ、その次って、してみたいと思わない?」
え、同棲でキスしててその次って……!? ま、まさか!?
「うぇ!? いやでもあの、そ、そういう経験が僕まったく無いですし」
「そんなの私も無いけど、もっとエン君の事知りたいし、このままこうしてても仕方ないでしょ?」
「それは、まぁ……」
すっくと立ったライチちゃんは僕の隣まで来て、振り向いた僕にキスを……。
「どっちも始めてなんだし、ほら」
「うぁ、はい……」
引っ張られるように僕が使ってるベッドまで連れて来られて、そのまま押し倒されちゃいました。
「……うーん、ここからどうしよ?」
「と言われましても……」
何かを思いついたようにライチちゃんの耳がピンとなった後、にやりと笑って僕の体の上に覆い被さりました。どうする気でしょう?
またキスをして、今度は触れ合った唇の間から僕の口の中へ何かが入り込んできました。ま、まさかこれ、ライチちゃんの舌?
つ、つまりこれは、大人のキスって奴でしょうか? 口の中を誰かに舐められるというのは妙な感じがします。
自然と意識を口に集中する為に目を閉じていました。柔らかいものが口の中を動き回る感じ……なんだか癖になりそうです。
「んぷ……何やるか分からないなら、やりたい事、全部やろ♪」
「ぜ、全部って……」
「全部は全部だよ。遠慮しないからねー」
ライチちゃんがくるりと反転すると、尻尾の方が僕の目の前に顕になります。こ、これは、その、かなり刺激が強いと言いますか……。
!? な、ちょっとライチちゃん、何処触ってるんですか!?
「へぇ~、牡の子のここってこんな風になってるんだ。エン君もちゃーんと牡なんだね」
「そうだって言って……ひゃん!?」
「えへへ、声を聞くとそんな感じしないんだけどね」
だ、ダメ、そこ、そんなに掴んだりしちゃ……力が……。
!? な、ライチちゃん!? そ、そんなところ丁寧に擦っちゃダメですって! こ、これは我慢が!
「わー、凄い凄い、こんな風に大きくなるんだぁ」
「か、感心してないで止め……ひょぁ!?」
何!? 今度はなんですか!? なんかぬるっとするものが僕のに当たって……ま、まさか?
「んちゅ……変な感じだけど、そんなに美味しくないって事も無いかな」
「あぁぁ! だ、ライチちゃん、吸っちゃ!?」
な、舐めてる!? それに先端から吸われてる!?
息を荒くしながら、擦られたり舐められたりするのに耐えるので精一杯です。こんなに凄いなんて思ってませんでした。
上半身からは力が抜けていくんですけど、下半身には力が入りっぱなしです。そんな様子を分かってるのかは分かりませんけど、ライチちゃんは僕のを弄るのを止めようとしません。
「あ、何か出てきた。こんな感じだって聞いた事はあったけど、気持ちいい? エン君」
「すご、い、です。それい、じょう、やられ、たら」
「ふーん……じゃあ、どうなるか見せてもらおうかなー」
ちょっ、うぁぁ!? そ、そんなに早く擦ったりされたら、だ、ダメ、ダメぇ!
「ん、あぁ!」
「ひゃっ! ……わー、こんな風にこれって出るんだね。精液だったっけ」
……答えられません。もう、放心しちゃって。
自分でも一回だけ興味本位でした事ありましたけど、その時はこんな事にはなりませんでした……。
「あれ? エン君大丈夫?」
「らい……ひょうふ……えふ」
「ちゃんと喋れてないよ? んー、まずはこっちを綺麗にしようか」
ひゃん! またあれにヌルっとしたものが……ま、まさかライチちゃん、舐めてる!?
「ま、ままま待って! そんなの舐めなくても!」
「もう遅いよ。変わった味だけど、嫌いじゃないかな」
「味なんか教えられても困りますって。は、恥ずかしい……」
「んー、そろそろこっちだけが弄ってるって言うのもなぁって思ってるんだけどなー」
え? それって……も、もしかしてライチちゃんのここを、僕が?
さ、触ってみてもいいんでしょうか? ライチちゃんの尻尾はさっきからクルクルと宙に円を描いてますけど。
なら、その、や、やらせてもらいます。
ライチちゃんのそこに少しだけ触れると、ライチちゃんの体がぴくりと跳ねました。な、なんだか凄くドキドキする。
わぁ、綺麗に割れ目がある。そこだけ毛は薄くなってますけど、凝視しないと分かりませんね。
ここをちょっと拡げて……本当に綺麗なピンク色です。凄いなぁ。
「ん、ふぅ、ん」
小さくライチちゃんが声を漏らしてる。牡でも牝でも、ここは敏感なものなんですね。
拡げた間に指を入れると、ライチちゃんの体が大きく跳ねました。柔らかい壁が指に吸い付いてくるみたいだ。
ここに、牡のあれが入るんですよね? ど、どんな感じがするんだろ……さっき触られるだけであんなになっちゃったんだからこんなのに包まれたら、どうなっちゃうんでしょう。
「あ、ふぁぁ」
「あの、大丈夫ですか? ライチちゃん」
「大丈夫だから……もっと触って」
いつもの元気な声じゃなくて、聞いてるだけでドキドキしてくるようなしっとりとした声でライチちゃんから頼まれてしまいました。
なら、この中で指を動かしたらどうなりますかね?
「ん、あ、ふぅ、んん!」
ライチちゃんの声がだんだん大きくなって、割れ目からはトロトロと液が流れ出てきました。
い、一応これが何かくらいは僕だって知ってますよ。牝の子がその、牡のあれを受け入れる為の潤滑液として出すものですよね。愛液っていう。
うわぁ、中がくにゅくにゅ動いてる。いや、ライチちゃんが動けばここも動くのは当然ですね。
「やだ、これ、気持ちいいよぉ」
そう言えば、さっきライチちゃんは僕のを舐めてたんですよね。……ライチちゃんのここを舐めたら、やっぱりライチちゃんも気持ちいいんでしょうか。
……全部やってみれば良いってライチちゃんが言ってたんですから、やってもいいですよね?
「え? んぁぁ!?」
不思議な香りがしますけど、飲めないようなものじゃないですね。この香り、嗅いでるともっとドキドキしてきます。
外側だけじゃなく、中まで……。
「やだ、へ、変になっちゃうよぉ」
愛液が溢れてきます、口から溢れちゃうくらいに。少し、吸って綺麗にしましょうか。
「!? 吸っちゃだ、んぅぅ!」
「んぷ!?」
「ダメって、言おうとしたのにぃ……」
び、びっくりしました……愛液が噴き出して、殆ど掛かっちゃいましたよ。まだたらたらと流れてます。
「もぉ、エン君夢中になり過ぎだよ。すっごく気持ちはよかったけど」
「あぅ、その、ごめんなさい」
ライチちゃんの顔が僕の前に戻ってくると、ところどころに白いものが付いてます。……僕の精液ですよね。
「謝らなくてもいいよ。私も同じような事したんだし」
「なんかその……この先も、するんですよね?」
「そりゃあ、ねぇ? 私もあそこがジンジンしちゃって落ち着かないし、エン君もここで終わりにしたくないでしょ?」
「は、はい」
「なら……しよ?」
え、え~っと、やっぱり、するってそういう事なんですよね。
うぁ、ライチちゃんのあそこが僕のあれに触れてる。こ、これからあそこに僕のが入るのか……。
ライチちゃんが少し腰を浮かせて、割れ目の入口と僕のの先端が触れあいました。
「んっ」
「あ、あの、告白してから言うのもなんですけど、その日の内にここまでしちゃっていいものなんでしょうか」
「私がしようって言ったんだからいーの。それに、1回しちゃえばこれからはいつでも出来るしね」
「そういうものですか?」
「そういうものです」
なんて話をしてる間に先端がライチちゃんの中に入り込んで見えなくなりました。
うぁ、触られたり舐められるのとは全然違う。温かくて吸い付いてくる壁に包まれる、まさにそんな感じです。
「うっ、ん、お腹の中に熱いものが入ってくるのって、変な感じ」
「大丈夫、ですか?」
「た、多分」
こ、この、ライチちゃんが僕の上に乗ってる状況ってその……僕のがライチちゃんの中へ入っていくのが見えてなんというか、卑猥です。
感覚でも分かりますけど、こうやって見てるのはまた妙に気分が高揚するというかなんというか。本当に、入っちゃうものなんですね。
「ちょっと、おっきいかな」
「す、すいません、無理しないで下さいね」
「あれ、なんか支えて……これ、どうすれば……えっと、こ、う!?」
「ひぇあ!?」
あ、ありのまま今起こった事を説明すると、ライチちゃんが何かに支えたって言って腰を捻ったら、いきなりストンと僕のものがライチちゃんの中に全部入ってしまいました。
ライチちゃんも僕も、突然の事で何が起こったか分からなくて、ただ口をぱくぱくさせてました。
あ、ライチちゃんの目から涙が……い、一体どうしたのでしょう?
「お、お腹……痛い、痛いよぉ……」
「だ、大丈夫ですか!? すぐ抜いて」
「やだ、ダメ! 今動かないで!」
「は、はい!」
起き上がろうとした僕を、ライチちゃんは覆い被さるようにして制止してきました。
僕の胸元辺りで震えながら泣いてるライチちゃんを、今の僕は抱き支えてあげることしか出来ません。……普通に考えて、痛いと言ってるものをいきなり動かせばもっと痛くなるに決まってますよね。軽率でした。
少ししゃくり上げながら泣いているライチちゃんを支えて、しばらくしたでしょうか? 電気をまだ付けてなかったんで部屋の中は外からの月明かりだけになりました。
「ひっく……ちょっと、落ち着いてきたかも」
「本当に、大丈夫ですか?」
「こんなに痛いなんて思ってなかったから……うぅ、まだお腹の中がヒリヒリしてる感じがする」
「なら、今度こそ抜きますよ? 無理しちゃダメです」
「……ううん、抜かないで。エン君の、温かくて、気持ち良い……」
あ、慌ててたから忘れてたけど、僕のはライチちゃんの中に入ったままだったんですね。
思い出すとまた自分の中の興奮が目を覚ますというか……。脈打つのが早くなってるのは確かです。
「……あはは、エン君の、中でおっきくなってる。私でも誰かを興奮させられるんだねー」
「そ、それは、その……ライチちゃんは可愛いですし、好きな相手とこんな事出来て興奮しない牡なんて居ないですよ」
「ふふっ、可愛いなんて言われたの初めてだよ。……もうエン君も我慢出来ないみたいだし、やってみよっか」
ライチちゃんが体を起こして、ゆっくりと腰を上げていきます。僕のが出て来た……本当に、ライチちゃんの中にあったんですね。
一つゆっくりと深呼吸して、またライチちゃんの腰が降りてきます。くっ、柔らかい壁が僕のと触れ合って、さっきのと比べ物にならないくらい気持ち良い……。
「んんっ! エン君のが奥に当たって、なんか凄い……」
「だ、大丈夫ですか?」
「うん。エン君のって、長いんだね」
「他の牡のがどうなのか分からないですけど、そうなんですかね?」
「少なくとも、私の中はエン君ので一杯だよ。これで根元まで入ってるんだから、丁度良かったのかもね」
確かに、当たってる感覚と見ている状況からして、僕のものはライチちゃんの奥まで入り込んで、根元まで入る大きさだったみたいです。
「ぴったりの大きさって事は、私とエン君の相性って元々良かったのかもね。運命の相手とかだったりして」
「そうだとしたら、こうして出会って、こういう関係になれたのにも納得ですね」
ふふっと笑って、ライチちゃんと僕の唇がまた触れ合いました。こうしていると、本当に心がほっと温かくなります。
運命の相手……もしそれがライチちゃんだったとしたら、僕はとても幸せです。だってライチちゃんは優しくて、笑顔がとても素敵で、僕っていう全てを受け入れてくれた……とても素敵なライチュウなんですから。
ライチちゃんの腰が動く度に僕とライチちゃんは深く繋がって、心地良さと幸せを一緒に感じています。
「んぁ、はっ、エン君、エンくぅん!」
「はぁっ、はぁっ、ライチ……ライチ!」
……最後には、ライチちゃんをしっかりと抱きながら、その中へと僕の想いを注ぎ込みました。
後悔は、ありません。この温かな繋がりを、僕はもう……手放したくない。
明日も、明後日も、一年後も。これから先ずっと、君と一緒に居たい。
ねぇ、いいですよね? ライチちゃん……ううん、ライチ。
僕は君を……愛しています。
「で、お前達結婚するのか?」
「ふぁ!? な、何を言い出すんですか店長!?」
仕事の休憩時間に珍しく店長が話掛けて来たかと思ったら唐突に何を言い出すんですか! 僕達の関係はまだ誰にも言ってないのに!
「ちょ、急に何を言い出すんですか!? 私とエンちゃんはそういう関係じゃないです!」
「別に隠す必要も無いだろ。どのくらい一緒に暮らしてるんだよ? 付き合ってないとおかしいだろ、普通に考えて」
ちらりとライチちゃんの事を見ると、視線が合ってつい赤くなってしまいました。やっぱりバレますよね、どう考えても。
「その分だと、する事もしてるみたいだな。若いってのはいいねぇ」
「ちょ、だからぁ!」
「いいんだいいんだ、俺は別にそういうのは構わん。だが、式を挙げる時は言えよ? 飯くらいは提供してやる」
そ、それは……喜んでいいんですかね? 下手な食事よりも良質なのは間違い無いですけど……。
あ、言いたいだけ言って店長は去っていきました。他の皆も今は居ませんし、ライチちゃんと二匹っきりになっちゃいましたよ。
「……あはは、ついに店長さんにもバレちゃったね」
「そう、みたいですね。上手く隠せてると思ったんだけどなぁ」
「で、どうしよっか」
「何がですか?」
「分かってるでしょ? 結婚式」
け、結婚式ですか……そりゃあやれればやりたいですけど、それには先立つ物がねぇ……。
「私は、どっちでもいいよ」
「え? そうなんですか?」
「だって……」
うわ!? 飛びつくようにしてライチちゃんにキスされちゃいました。び、ビックリしたぁ。
「もう私は、エン君のお嫁さん。でしょ?」
「……それもそうですね」
ライチちゃんを抱き寄せて、もう一度キスをしました。そんな事を言われて、我慢なんて出来ませんから。
結婚式は……挙げられるようになるまで、二匹でゆっくり頑張りましょう。大丈夫、僕とライチちゃんならきっと出来ると思います。
さっ、その為にもそろそろまた頑張りましょうか。……流石に、いい加減看板娘からも卒業はしたいんですけどねぇ。
~後書き~
なんというか、官能を書くのも久々過ぎて色々残念に。離れてると本当にダメになるな、私よorz
とにかく、ここまでお付き合い頂けました皆様には全幅の感謝を! ありがとうございました!
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