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脇道6 Carnage

/脇道6 Carnage

writer is 双牙連刃

構成を練っていた脇道が形に出来る程度には纏まったので書き出した作品にございます。
お楽しみ頂ければ幸い、とはいえまだまだ書き手として力量不足なところもあるかと思いますので、何かあればご報告頂ければ幸いです。それでは……



 これは、私が現役のレンジャーだった頃の物語。いや、たった一つのある出来事についての、私の記録だ。
それは、私が現役を離れ、後世のレンジャーを育成する立場になろうと決めた切欠となる出来事……出会い、だった。
その者の事を思い出す度に私は、『レンジャーとは何か』という疑問を考えずにはいられない。レンジャーとは何か、どういう存在であるべきなのか……今もなお、私の記憶の中にはっきりと存在するその者は私に問い掛けてくるのだ。
……願わくば、この手記が読む者にとって何かを問う物である事を祈る。私に考える機会を与えてくれたあのポケモン……カーネイジと呼称されるようになってまで、己ではなく他の者を守り救う為に戦った、そして今も戦っているであろうあの者のように……。



 始まりは、たった一報の出動命令だった。それは、使用頻度の高くない、けれど出動の中ではトップレンジャーでも油断を許されない、そういう事態を知らせるものだった。
危険度SSSクラス……放置しておけばどんな災いを生み出すかも分からないポケモン達が位置付けられる、レンジャーが定めているそのポケモンの危険度を簡略的に表示するそれの中でも、伝説のポケモンと近い……いや、定められたポケモンの一部はそれすらも超えているとされる、文字通り災厄とまで考えられる危険度を誇るポケモンが羅列されたランク。
出動命令は、そのSSSランクに該当していると思しきポケモンが私達の警備エリアに現れた可能性がある事を告げるものだった。
そのポケモンは、通称『白い陽炎』と呼ばれるポケモンではないかと第一報では伝えられた。確証が無かったのにも、きちんとした理由がある。
そもそもその通称自体、レンジャーが保護か救助をしたポケモンが口にした事があるが故にレンジャーでも呼ばれるようになったものだった。そう……噂と行いのみが情報として横行する、実態の掴めないまさに陽炎のような存在、それが白い陽炎というポケモンだった。

「はぁ? 白い陽炎が現れたぁ? 有り得ないだろ。そもそも誰がそのポケモンを見たって言うんだ?」
「なんでも、野生のポケモンでそのポケモンを見た、そのポケモンに倒されたという証言が上がってきたそうなんだ」

 一緒にその出動命令を受けた者達は、口々にそんな話を出していた。当たり前だ、存在こそ知っていても誰も出会った事の無いポケモンなんて、そもそも居るのかも怪しむのが当然だろう。
けど……その白い陽炎がSSSランクに登録されるのには、理由があった。それも、SSSランクにされても当然だとも言える事が。
PRL、正式名称はポケモンリサーチラボラトリー。そういう名称の私達レンジャーとも繋がりのある、ポケモンの能力や生態を調査する研究機関が存在する。
が、ここ1~2年の間に、そのPRLの研究所が次々に襲撃されるという事件が起きている。それを行った者はまだ見つかっておらず、今もなおポケモンレンジャーや警察が行方を追っているというのが現状だ。
しかし、全く犯人についての情報が無い訳ではなかった。襲撃を受けた研究所の研究員や、その近くに生息しているポケモン達から情報を集めることで、朧げながらも僅かに犯人に繋がっているであろう情報は入手出来ていた。
それのどれもが、明確にはどんなポケモンがそれを行ったという証言ではなかった。ただ、たった一つだけ確かな証言があった。
研究所を襲ったのは、一匹。たった一匹のポケモンが、もう数箇所の研究所を壊滅させている。それだけは確かだと伝えられていた。でもそれが、よりレンジャー達の疑いを増す要因になっているのも事実だった。
ごく単純に考えて、ポケモンを研究している機関をポケモン一匹がどうこう出来るだろうか? ポケモンを研究対象にしている以上、それに対する防衛手段が無い訳じゃない。しかも研究員にも自分のパートナーを連れている者も少なくない。なのに、だ。

「ま、どうせデマ情報だろ。それに仮に居たとしたら、そんな噂が立つくらいのポケモンなら捕獲すれば相当な戦力になるだろうな」
「そんなに楽観視してて大丈夫なのか? もし本当に居たとしたら、本部に連絡して応援要請を受けないと」
「噂だけじゃあ本部も動かないだろ。相手がかの有名な『紅蓮の翼』なら、本部もすぐにトップレンジャーを派遣してくれるんだけどな」

 紅蓮の翼……呼称ではディザスターと呼ばれている一匹のリザードン。白い陽炎の存在が噂される前からSSSランクに登録されていて、未だ捕獲されていない危険なポケモンだ。
数多くの人やポケモンを傷付けて今もなお何処かに潜伏している凶暴なポケモン、というのが一般のレンジャーに閲覧出来る限りの情報だ。けど、この紅蓮の翼には実際のところ本当にただの危険なポケモンなのかと疑問視がされている。
このポケモンに倒された者達……それは全て指名手配をされているポケモンであったり、要注意とされるポケモンハンター達ばかりだ。実際、この紅蓮の翼であろうリザードンに助けられたと言う野生のポケモンも数多く存在しているのも調べられている。……そんなポケモンが、本当にただの凶暴なポケモンとして処断されていいのだろうか?

「とにかく出動命令が出た以上、白い陽炎についての調査開始だ。実際、この町の近くにもPRLの研究所がある。何かあってからでは遅い、先手を打ってレンジャー数名は研究所の警備に回るように」
「了解ー」
「了解しました」

 この時、もし私が研究所警備ではなく調査に回っていたら……私はあのポケモンに出逢う事は無く、もしかしたら仲間を打ち倒した相手と憎んで必死に追い掛けるようになっていたかもしれない。そう思うと、例え現役のレンジャーを辞める切欠となったとはいえ、研究所警備に選ばれた事を幸運と考えるべきなんだろうなと、今は思う。

「あーぁ、ついてないな俺達、居るかも分からない相手から研究所を守れって? 退屈な仕事そうだ」
「そうか? 楽でいいじゃないか。来ないなら単に研究所に詰めてるだけで給料は出るんだし、仮に本当に研究所が襲われたって相手は一匹なんだろ? 数で圧倒してやればなんて事は無いだろうさ」
「ついでに強力なポケモンを捕獲出来てラッキー! みたいな?」

 同じく研究所警備に回されたレンジャー達は口々にそんな話をしている。確かに、捕獲したポケモンのアフターケア等は捕獲したレンジャーに一任される事になっている。そこでポケモン側と意思疎通が出来れば、そのまま自分のパートナーに加える事も許されているから、もし白い陽炎を捕獲出来れば、そのレンジャーは白い陽炎を自らのメンバーとして迎えられると言う訳だ。最も、相手がそう簡単に行く相手ならば、という事にはなるが。
楽観視をしている同僚達を横目に、私は研究所へ向かう支度を始めていた。正直に言うと、その時の私も白い陽炎なんて者は存在しないだろうと思っていた。PRLが襲われたのは、大方研究所のポケモンを狙ったハンターの仕業だろうくらいにしか思っていなかった。
だからこそ、私は白い陽炎なるポケモンではなくそちらへの警戒を強めていた。もし襲撃を仕掛けてきたらどう対処するか、警備の手薄になり易い場所を調べなければ……そんな風に。

「おいアルフ、なんでお前はそんなに気難しそうな顔してるんだよ? もっと気楽に行こうぜ」
「……ふぅ、何にしろ、警戒すべき何かがあるのは確かだろ? 皆もう少し危機感を持って職務に当たるべきだと私は思うけどね」

 なんて私の一言も、大袈裟だの一言で笑い話にされてしまった。それほどまでに、白い陽炎は……文字通り陽炎、幻のような存在だった。
けれど、陽炎には明確な噂話なんてものが立つ訳が無い。あの時の私がもっとこの問題を危険視していればと思ってしまう。私は油断していたんだ。だからこそ……あの過ちを起こした。いや、起こさせてしまったんだと思う。

 PRLのポケモン生体研究所……そこの警備の任に就いた事で、私は初めてそこに入る事となった。
無論レンジャーに友好的に協力をしてくれている研究機関であったから、その存在の事は知っていた。が、研究所の敷地内は彼らのテリトリーだ。レンジャーとはいえ、そうそうお目に掛かれる機会は無かった。
どんなものかと到着まで想像を膨らませていたけれど、着いてみたらそこは意外にも素っ気ない場所だという印象を受けた。
真っ白な壁に手入れの行き届いているであろう研究設備。所員が接するポケモン達も皆何処か安穏とした印象を受ける、研究なんて物々しい言葉の似つかわしくない場所だ。そんな風に私は感じた。

「あぁ、お待ちしてました! レンジャーベースから派遣して頂いたレンジャーの皆さんですよね? 私は所長のレイルスと申します」
「あ、はい。失礼します、ポケモンレンジャー四名、本日よりこの研究所の警備に着任します」
「助かります。いやぁ、この研究所の近くで他の研究所を襲ったポケモンが見つかったなんて噂が流れて怯えてしまってる研究員も居ましてね? 今回はレンジャーの皆さんのご助力を受けようと思った次第なんです」

 この時私は、もっとこのレイルスという男に疑問を持つべきだった。けど、大らかそうな見た目と語調だけで危険視する事は無かった。何も知らなかった以上、仕方なかったのかも知れないけれど……。
ただ……何故PRL襲撃者がこの近辺に潜んでいるかもしれないというのを、この男が知る事が出来たのか……それだけは僅かに疑問を抱いた。あくまでその存在の情報を掴んだのはレンジャーであり、一般人には出回る筈の無い情報だったのだから。

「それでは一度研究所内をご案内させて頂きます。始めてしまっても?」
「え? あぁ、お願いします」

 疑問を言葉にする前にこの研究所の説明が始まってしまった為、私の僅かに生まれた疑問は頭の片隅に追いやられる事となった。あくまで私達の仕事はこの研究所を守る事、余計な詮索はしない方がいいだろうと思う事にした。
この研究所で行っている研究は、なんのことは無くこの地域に生息しているポケモンの能力を調べるといった事。無論ポケモンを傷付けるような事は無いし、ポケモンも進んで研究に協力しているものばかりだそうだ。
見た限りでは説明された通りだった。研究員とポケモンも友好的だし、特に問題がある様子も無い。言ってしまうと、少し退屈な印象さえ受ける程だった。
この様子から、私には先程とは違う疑問が湧いてきた。何故襲撃者はこんな問題の無いように見える研究所を襲うのか、何故、PRLという研究機関に拘るのか、だ。
PRL以外にもポケモンを研究している機関、人物は居る。なのに、何故PRLだけが執拗に襲われているのか……疑問に思ったところで答えが出る訳は無いのに、こうして思案するのは私の癖のようなものなんだろう。

「特にこれといった面白みは無さそうだなぁ……で? どういう警備プランで行くんだ、アルフ」
「そうだな……交代制で研究所内警備、周辺の見回りをするっていうのが確実かな。夜は二人体制で警備に穴が開かないように回して行くようにしよう」

 何故か一番やる気があるように見えてしまったらしい私が、この警備任務のリーダーをする事になってしまったのでこうして段取りを決めていたりする。他の三人からも特に異論は無さそうだから、そう問題も無く任務は開始となった。
あまり長く話し合っていても仕方無いという事で、それぞれに分担した持ち場へと着いた。私はまず、研究所周辺に異常は無いかを調べる為にフィールドワークへ向かう手筈になった。

「さて……出てきてくれ、ワイス」
「……ん? ここは? それにバトルでもないみたいだな」
「あぁ、ちょっといつもの哨戒任務以外の任務に就く事になってな。今からこの周辺の見回りがてら説明する為に出したんだ」
「あ、そういう事か。っていうか、見回りの間の話し相手に出したんだろ」
「あははは……まぁ、半分は」

 私のそんな返答を聞いて溜め息を吐いたのが、私のパートナーであるダーテングのワイス。タネボーの頃からの付き合いだから、お互いに気心は知れた仲だ。
ワイスに説明をしながら、研究所の周囲を確認していく。これと言って大した問題は無さそうだが、少しだけ引っかかるものを感じたので、一緒に見て回っていたワイスにその引っ掛かりを訪ねてみる事にした。

「ワイス、私の勘違いならそれでいいんだけど、なんだか異様にポケモンが少ないと思わないか? ここ」
「うーん、確かに……ただ姿を現さないってだけなら気配はある筈なんだが、それすらもしないからな。勘違いで済ませるには、ちょっとばかし気になるところではある」
「そうか、お前もそう感じたか……ずばり、その原因となりそうなのは?」
「いや、それを調べてるんだろ!? けど思いつくかと言われれば……なんかヤバイもんがこの辺にあるとか?」

 ポケモンは、特に野生のポケモンは危機察知能力が高い。自然の中で生きていく上で身につけた能力なのだろうとは思うが、特に強い相手や危険なものに対しては敏感に反応し危険を回避する。だからこそ、ワイスの言った事もあながち間違いとは出来ない。
だとすれば、何かしらのポケモンにとっての驚異がここにはある、と思っていた方がいいんだろうと判断出来る。まずはそれを見つけてしまうのが賢明か……。
なんて思案を私がしている時だった。それは、突然私達の前に現れた。

「! アルフ、逃げろ!」
「ん? ワイスどうし……!?」

 気が付いた時には私の背後には何かの気配があり、強い衝撃を受けて体は弾かれるように吹き飛ばされた。
木に叩きつけられるのをなんとか体勢を整えて避け、気配の正体を確認した。

「くっ……!? サワムラーだって?」
「大丈夫か! こいつ、いきなり襲いかかってきやがって……!」
「待てワイス、私なら大丈夫だ。済まない、君の縄張りに入ってしまったのなら謝罪しよう。ただ、私達は君に危害を加えようとしている訳じゃな……」
「え? うぐぉっ!?」

 襲い掛かられたとはいえ、レンジャーである自分が野生のポケモンといきなり戦闘に入るというのはあまり頂ける話ではない。だからこそ私は襲いかかって来たサワムラーを説得しようとした。
が、サワムラーは私の事など無視して、ワイスに襲いかかった。私の説得を待っていたワイスは、唐突の奇襲に反応しきれずにサワムラーの蹴りの一撃をまともに受けてしまっていた。

「ワイス!?」

 先に蹴られた私は、身に付けているスタイラーのダメージフィードバック機能のお陰でなんとかすぐに体勢を整えられた。が、ワイスにはそんなものは無い。回し蹴りの直撃を受けてそのまま叩きつけられれば無事では済まないだろう。
私の声に反応しないワイスは、ぐったりと項垂れている。恐らく気絶してしまっている。が、そのワイスに向かってサワムラーはなおも襲いかかろうとしていた。

「不味い! 仕方無い……キャプチャ、オン!」

 キャプチャ、それはポケモンにレンジャーの気持ちを伝える行為。気持ちを通わせる事で、ポケモンと自分とを繋ぐ手段だ。私の場合、説得が不可能なポケモンにだけ使用すると自戒を定めて使用を極力避けるようにしていた。どうであれ、一方的にポケモンに自分の気持ちを伝えて、後からポケモンの話を聞くというのはフェアじゃないと考えての、ただの自己満足ではあったけど。
ただ、このサワムラーには言葉は届かなかった。致し方無いと思ってキャプチャを試みる事にしたのだが……キャプチャ・ラインでサワムラーを包んだ私は更に驚愕させられる事になった。

「!? キャプチャ・リングがかき消される!? 気持ちが全く伝わらないなんて……」

 そのサワムラーを包むリングは、まるでサワムラーに反応しないかのように消えてしまった。そんな事は、レンジャーになって初めてだった。
ワイスは行動不能になり、キャプチャも出来ない。その瞬間に、私はレンジャーとして完全に無力化された事を意味する。
私は動揺した。かつてない事態に思考が追いつけなくなっていた。
だから……サワムラーが放ってきた蹴りを、咄嗟に防いでしまった。それによって、事態は更に悪化するとも知らずに。

「くぅぅ! ……? な、スタイラーのバッテリーが!?」

 腕に付けたスタイラーから光が失われているのに気付き確認すると、たった二発のキックによってスタイラーのエネルギーが尽きた事を知らせるかのように、スタイラーはその機能を停止していた。
私も、その頃既にレンジャーになって五年は経っていた。それ相応の経験は積んできたつもりだし、スタイラーのエネルギーバッテリーだってその分拡張されている。なのに、だ。
それに驚いている間にも、サワムラーはゆっくりと私に近付いて来ていた。が、私にはもう成す術が残っていなかった。スタイラーも失って、仲間に救援要請を出す事もままならない。
ゆっくりとキックの動作に入るサワムラーに対して、私は身構える。が、スタイラーの補助も無しで受け止めるのはほぼ不可能だろう。覚悟を決めて、来るべき衝撃にせめて耐えようとした。

「……やれやれだな」

 サワムラーの攻撃に身構える私の耳にそんな声が聞こえてきたのは、一瞬幻覚かと思った。が、それは幻でもなんでもなかった。
目を瞑って耐えていたその目を開いて飛び込んできた状況に、私はまた驚く事になる。私とサワムラーの間に、立ちふさがるように一匹のポケモンの姿があった。サワムラーのキックは、そのポケモンの上げた前足で止められていた。

「巻き込まれたくなかったら少し下がってろ。すぐに終わる」
「君は……」

 一体と言葉が続く前に、目の前のポケモンは動いた。受け止めていたキックを払い除け、よろけたサワムラーに一気に詰め寄る。
閃光一閃、瞬きをするような一瞬には、サワムラーはその場に倒れていた。私には何があったか分からない程に、そのポケモンの一撃は鋭く、速かった。

「こいつもか……急がないとな」
「あの、えっと……とりあえず、助けてくれてありがとう」
「見てられなかったんでね。あんた、レンジャーとは言え油断し過ぎだ、こいつの様子がおかしいのに気付かなかったのか?」

 いきなりの手厳しい駄目出しをしてくれたのは、一匹のサンダースだった。そう、これが私の運命を変える出会いだったとは、その時の私は夢にも思わなかった。
彼の一言に私がキョトンとしてる間に、彼は私に近付いてきてそっとスタイラーに触れた。少しすると、スタイラーが再起動するのが確認出来た。

「キャプチャは出来ないだろうが、これで他の機能は使えるだろう。早くベースに帰って本格的なメンテを受けな。そして、ここにはしばらく近付かない事だ」
「あ、あぁ……いやダメだ、まずはこのサワムラーの治療を」
「そいつにそれ以上関わるのは止めておけ。殺されかけたのを忘れたのか?」
「でも、やっぱり放っては……あ」

 話をしてる間にサワムラーは起き上がって何処かへ行ってしまった。結局、謎だけを残して。
それに見蕩れてる内に、サンダースの方もこの場を後にしようとしていた。けど、彼まで行かせてはなんの情報も得られず終いになってしまう。それだけは避けなければ、そう思って私は再び彼に声を掛けた。

「待ってくれ! 君は一体何者なんだ!?」
「見ての通り、ただのサンダースだ。気まぐれにあんたを助けてやったが、それ以上関わるつもりはねぇよ」

 それを聞いてしまって、私はそれ以上何も言えずに彼を見送る事しか出来なかった。研究所を包むように広がる林の中へ消えていくのを。
しばらくはそのまま呆けていたけれど、気絶させられた私の相棒の事を思い出してそれの介抱をする事にした。相手は格闘タイプでこちらは悪タイプ、一撃でやられるのも無理はない話だ。

「ワイス、ワイス! 大丈夫か?」
「うっ、う……? あれ? 俺、どうしたんだ?」
「良かった、気絶してた以外は大丈夫そうだな」
「気絶? あ、そうだあのサワムラーは!? アルフ、お前は大丈夫なのか?」
「まぁ、かなり危なかったけどなんとかなったよ。予想外の援護があって」

 本当に、あのタイミングで彼が助けに入ってくれていなかったら私は命を落としていたかもしれない。まさに、命の恩人……いや、恩ポケとでも言おうか。
立ち上がったワイスも、怪我は無さそうだった。一撃でやられたのが逆に功を奏したのだろう。

「予想外の援護って? 何があったんだ?」
「なんというか……野生のポケモンが俺達の様子を見てて、助けてくれたらしい。さっと何処かへ行っちゃったけど」
「野生のポケモンが? あのサワムラーを倒したって言うのか?」
「あぁ。驚いたけど、確かに倒したところを見てたし……」

 確かにこの時既に気付いて良かった筈だった。ワイスでさえ一撃で無力化してしまう相手の一撃を、タフさとは無縁のサンダースが倒せた事に。そして、サンダースの言った一言がどういう意味だったのかを。
あのサワムラーの様子はおかしかった。キャプチャすら出来ない、まるで意思を持たないような挙動、まさかあれがこの辺りの異常の正体?
なんて思っていても事態は好転する訳もない。考えるのは後にして、一先ず研究所の仮詰所に戻る事にした。ワイスも立ち上がったとはいえ万全とは言えないし、スタイラーもサンダースに動くようにして貰えたとはいえ、バッテリー残量は1だったのだから。

「いや、まずは詰所に戻ろう。スタイラーのバッテリーも限界ギリギリしか残ってないし、お前も休ませないとな」
「うっ、すまん……」
「いいって。じゃ、一旦ボールに戻ってくれ」
「頼んだ。戻る間にまた襲われないでくれよ?」
「分かってるよ」

 ワイスをボールに戻して、急ぎ目に戻る。この状態でまたあのサワムラーのようなポケモンに襲われたら、まず助からなかっただろうと思う。



 その出来事から二日、幸いにもなんの問題も起こらずに警備の仕事を続けられている。相変わらず外回りをしてもポケモンに出会えず、あのサワムラーのようなポケモンにもサンダースにも再会は出来ていないが。

「初っ端のあれ以来、なんも起きねぇな」
「そうそうあんな事起こられたら、こっちの身が持たないって。でも、あのサンダースにはきちんとお礼がしたいんだけどなぁ」
「それずっと言ってるけどよ、本当にサンダースだったのか? だっておかしいだろ、野生のサンダースなんて。イーブイならまだ分からなくもないけど」

 ワイスの言い分は最もだった。イーブイがサンダースに進化するには、雷の石が必要になる。鉱石である以上、自然界に存在しない訳ではないが、それを野生のポケモンが手に入れられる機会というのはあまり無いと言えるだろう。
けど、私が助けられたポケモンは確かにサンダースだった。とすると、あのサンダースは一体どうやって進化を? この辺りに雷の石があったのだろうか……。
が、その疑問には後になって答えが出た。もう少し先でその事には触れさせてもらう事にする。

「まぁいいや。助けられたんだからこうして見回りをしてればいずれまた会うだろ」
「そうだといいんだけどな……ん?」

 林を逸れて研究所の外壁沿いを歩いていた時だった。そこの一角に、周囲の緑から浮かび上がるように黄色と白の毛並みが見えた。
近付いてみるとそれはよりはっきりと分かった。間違い無く、あれはサンダースだ。
また会えた、そんな気持ちが先立って、私は確認する間もなくそのサンダースに声を掛けていた。野生のサンダースという物珍しさが私にそうさせたとも言える。

「おーい、君! そこのサンダース君!」

 私の声に気付いてこっちを向いた彼の顔は、何処か少し悲しげにも見えた。けど、その顔は確かに私を救ってくれたサンダースだと確信を何故か私にもたらした。

「あぁ、前に襲われてたレンジャーの旦那か。一度死に掛けたって言うのにまだこの辺を彷徨いてるとはね」

 この少々冷ややかな声が更に私に確信を与える。再会を望んでいたとはいえ、実際に会えるのはやはり嬉しいものだった。

「警告はした筈だ。ここはやばい、早く帰れ」
「なんだぁお前? 前にアルフを助けてくれた事には礼を言うが、随分上から目線の物言いしてくるじゃねぇか」
「はっ、てめぇはそうそうに伸びちまって相棒を危険に晒してた野郎が随分な言い分だねぇ」
「な、や、野郎!」
「落ち着けってワイス! 済まない、別に君にどうこうするつもりは無いんだ。ただ、前の礼をきちんと言いたくて」

 体を横に向けたままこっちを目だけ動かして見ていたサンダースは、私の一言に溜め息を吐いていた。その反応に、正直私は戸惑った。礼を言いたいと言って溜め息を吐かれたのはこれが初めてだった。

「礼なら受け取ったから、何度も言うがここから離れろ。誰のためでもない、あんた等の為に言ってるんだからな」
「ま、待ってくれ。ここから離れろって前も言ってたが、それは一体どういう意味なんだ? ここに、何かあるのか?」
「……何かあったところで、あんた達じゃどうにもならん。あのサワムラー一体倒せない時点でな」
「は? ちょっと待て、それって……」
「あのサワムラーのようなポケモンが、他にも居るって事なのか……?」
「少なくとも、俺が相手しただけで10匹。種族は違うが、どいつも野良のポケモンを襲っては何処かへ攫っていってるって話だ」

 彼の語る言葉、それに私はただただ驚かされた。あのサワムラーのようなポケモンを他にも倒していた事、そしてこの場所で起こっている事を調べていた事に。
野生のポケモンが、そんな事をするだろうか? この時点で既に彼は異質さの片鱗を見せていた。最も……ここで私が彼の正体に迫っていたら、私はとんでもない過ちを犯す事になっていた。そして、彼が何者なのか、真意はどうなのかにも……辿り着けなかった。

「待て待て、あんなのが他にも居たって言うのか?」
「言った通りだ。俺にも奴等がどういう存在なのかまでは分からない、けれど倒した奴は決まってこの研究所へ向かって逃げて行った」
「ここへ? いや、そんなポケモン、ここで見掛けた事は無いが……」
「……一つ聞きたい。あんた達は、この研究所の警備をしてるのか? していたとしたら、何時からだ?」

 不意のこちらに体を向けての問い掛けに、少しだけ私は呆けてしまった。正確には、きちんと見た彼の顔立ちに、だが。
声色や落ち着いた態度に気を取られていた所為か、その容姿にまで気が回っていなかった。が、こちらを見上げる形で視線を向ける彼の顔は、それまでの予想に反して幼さをほんのりと残しているようにさえ見える程、若々しいものだった。

「アルフ? どうした?」
「え、あ、なんでもない。私達が警備を始めたのは、二日前。君が俺達を助けてくれた日だよ」
「そういう事か……知りたい事は分かった。じゃあな」

 そう言ってまた彼はくるりと私達に背を向けた。淡々としているその態度も、どうしてか腹が立つ事は無かった。その代わりに、もう少し話をしたいという好奇心が私には沸いていた。孤高とも言えるその態度や姿勢に、何処か惹かれるものがあった。

「あ、あの!」
「はぁ……なんだ? 俺としても話せる事は話したし、用も無いんだが?」
「いや、折角こうして知り合ったんだし、名前くらい名乗ろうかなと思って。私は……」
「アルフ、だったな。それにそっちのダーテングがワイスって言ったな。別に名乗らなくても、話の流れで出てきてるから問題無いぞ」
「けっ! 面白くない奴だな。こっちの名前を教えたんだからそっちも教えろよ。それくらい言っても罰は当たらないだろ」
「そっちが勝手に言っただけだがな……」

 けれど、また少し話を聞いてくれる気になったのか、木々の影に消えていこうとした彼は足を止めた。が、こちらを向く気は無いようだった。
少しだけ空を仰いだかと思ったら、不思議と苦笑いをその表情は浮かべているようだった。何を思い浮かべていたのかは結局分からなかったが。

「名は……無い。流れ者なんで、名乗るような事も必要無かったんでな」
「はぁ? 名前が無いって? 不便だろそんなの」
「ただのしがないサンダース、それで通ってきたもんでね。そういう訳だ、俺には名乗れる名がない。気は済んだか?」
「そうか……あ、ならこっちで好きに呼んで構わないかな?」
「呼ぶって、もう会う事も無いだろ。なのにそんなの決めてどうするんだ?」

 彼の問いは最もだった。けれど、そのまま別れてしまうのが勿体無い、もう少し彼の事を知りたいという気持ちからの提案だった。
彼の言葉を聞いて、私は恐らく相当残念そうな顔をしていたんだろう。そんな私の様子を見てか、彼はまた溜め息を吐いた。

「……好きにしてくれ。どう呼ばれようが、俺にはそんなに関係無い事だし」
「! わ、分かった、何か良い名を考えておくよ」
「ワイス、だったよな。あんたの相棒は、相当な変わり者だな」
「それには同意するぜ……」

 呆れているポケモン二匹を他所に、私は彼の名前をなんとするかを考え始めていた。どうせ呼ぶなら、良い名を付けてやりたい。そんな風に。
その後は、名前は考えておくと伝えて彼とは別れた。もちろん、またここで会おうと一言加えて。そんな私の一言に彼は、気が向いたらなと言って去っていった。
不思議で、掴み所の無いように感じるサンダース。けれど何処か優しく、冷たくあしらいながらもこちらを気遣ってくれている彼に私は……興味と共に好意を抱いていた。もしいいと言ってくれたのなら、これから共に歩いていけたら、と……。

「えらく気に入ったみたいだな、あのサンダースの事」
「え、分かるか?」
「そりゃあな。けどあいつ、どう考えてもなんか隠してたぞ? 聞き出しておいた方が良かったんじゃないか?」
「確かに気になる事は幾つかあったけど……あの感じだとまた会えそうだし、その時に聞けるだろ」
「そんなに簡単じゃないと思うんだけどな……まぁ、その辺は好きにやってくれよ」
「なんだワイス、妬いてるのか?」
「呆れてんだよ、はぁ……」

 そんな出会いに気を良くした私は、鼻歌交じりに研究所周りの見回りに戻った。彼が提示してくれた、この研究所の影に気付かぬまま……。

 次の日、その次の日……私が見回りをする時間に、彼は姿を表してくれた。そして、他愛ない会話を交わしては溜め息交じりに、少しだけ楽しそうに笑みを浮かべていた。
ただ、私は彼の名を決めあぐねいていた。元来他の者の名前を決めるというのが下手で、ワイスの名だって決めるのに酷く時間が掛かったのを覚えていた。

「で、アルフ? こいつの名前は決まったのかよ」
「うっ、いやその……知ってるだろワイス。私がそういうの苦手なの」
「わざわざ会いに来いって言ってるのに、随分悠長な事だな」
「ほほぅ、それでも律儀に会いに来る辺り、お宅も悪い気はしてないって事か?」

 ワイスのその一言に、サンダースの耳が一瞬立ったのを私の目は捉えた。図星、だったのだろうか?

「んっ、んん、俺は来いって言われて、他にする事も無いから来てやってるだけだ。勘違いするなよ? いつまでも来るとは限らないからな」
「あぅぅ……そ、そうだ、何か好きな物とか、好きな事とかは無いのかな? 聞けると助かるんだけど」
「好きなもの、か……」

 私の問いに、また彼は寂しそうな表情を浮かべた。その反応に、何か不味い事を聞いてしまったかと私も少し焦った。
けれどそんな私の顔を見たからかは分からなかったが、彼はふっと笑って見せてくれた。

「好きな花は桜、好きな色は……そうだな、炎の赤。そして、あれかね」
「あれ?」
「んん? あれって……太陽か?」
「あぁ。太陽の光を浴びてると、なんだか安心しないか? 温かくて、優しくてよ……」

 眩しくて直接見れはしないけど、彼の話を聞いて、私もワイスも手を挿頭す様にしながら太陽に向き直った。
改めて体いっぱいに受ける陽の光は、確かに優しく私達を温めてくれている。意識していない時は、あるのが当たり前のように思っていた温かさ。それを心地良さそう受ける彼を見ていると、なんだか自然と心が温かくなっていくように感じた。
きっと彼は、その温かさの大切さを知っている、知っていたのだろう。誰もが当たり前のように感じている、大切さを。
そんな光を浴びる彼自身が、私には輝いて見えた。まるで、彼自身が太陽かのように、そして太陽よりも優しく辺りを照らしているように……。

「……またか。あんまりそうやってなんでもジロジロ見るのは、関心しかねるな」
「あ、ご、ごめん。でも……なんだか、名前も閃けそうな感じがするよ」
「そうかい? まぁ、どう呼ぶのも勝手にしてくれって言ったからな。好きにしてくれよ」
「あぁ! 桜や炎だとイメージするのが難しそうだから、光から少しアイディアを貰おうと思ってね」
「光ねぇ? まぁ、サンダースは電気タイプだし、悪くないんじゃないか?」
「俺が光と来たか……ある意味、一番合ってるのかもな」

 少し皮肉ったような言い方に違和感も感じたが、それは聞き捨てる事にした。あまり踏み込んだ事を聞くのも野暮なように、その時は感じた。
不意に彼は顔を上げ、私を見上げた。その顔は、今までのそれよりも真っ直ぐで、真剣さを感じるものだった。

「なぁ、また一つだけ聞いていいか? あんた達には、俺はどう見える?」
「どうって? えっと……」
「よく分からん質問だな? ちょっと変な奴だが、悪い奴では無さそうくらいか?」
「私は……こうして話していて楽しいと感じるし、助けてもらった事もある。悪い印象を受ける要素は無いけど」
「そうか、一応礼は言っておくかな。……ありがとう、それと……」

 何かを言いかけて、彼は私達に背を向けた。そして、こちらを振り向いた顔には、悲しさが浮かんでいるように見える。
口が少し動いた。何かを口にしたのは確かだったが、それが声として私の元へ届く事は無かった。

「……今日はもう行かせてもらう。アルフ、今日の夜もあんたは、ここに居るのか?」
「え? いや、今日は非番だから多分休んでるかな?」
「そうか……いや、邪魔したな」

 そう言って、彼は姿を林へ消した。それがなんだか切なくて、もう彼と会えないような気がして、無性に居た堪れなくなった。
……彼は、私が手を伸ばせば届く距離まで来てくれていた。私を待っていてくれた。私を……少しだけ、受け入れてくれた。けれど、それがどれだけ重要な事だったのかと気付くのは、全てが……終わった後だった。



 微睡んでいた私を一気に覚醒させたのは、けたたましい警報音だった。時刻を咄嗟に確認する。22時18分……忘れもしない、全てが終わり、始まった時刻だ。

「な、なんだ!?」
『アルフ! アルフ、応答してくれ!』

 スタイラーから響く仲間のレンジャーの声。そして、叫ぶように鳴くポケモンの声。寝起きの頭では何が起こっているのか察するのに僅かに時間が掛かった。

「どうしたんだ!?」
『繋がったか、急いで応援に来てくれ! 侵入者だ! そいつが研究所の奥に居たポケモンを……うわぁ!』
「レスター!? おい! くそっ!」

 非番とはいえ仮眠に近い状態だったため、レンジャーの制服を着たままだったのが功を奏した。私はワイスの入ったボールを掴むと、休憩室から飛び出した。
が、そんな私の出鼻を挫くかのような事態が、研究所には起こっていた。
我先にとこの研究所から脱出しようとするポケモン達、それが……廊下を埋め尽くしていた。

「な!? ポケモン!? どうしてこんな数が!?」

 考える暇も無く、ポケモン達を避けながら私は流れを遡っていく。その先に、この事態が発生した原因があるのは明らかだったから。
進んでいくと、ポケモン達の数は少しずつ減っていった。そして、そのポケモン達が何処に居たのかを知らせるように、その扉は破壊されていた。
そこは、案内の時にも一部の研究者以外立ち入りを禁じられているエリアへと通じていると伝えられていた、最重要研究エリアと呼ばれる場所へ通じる扉だった。

「こ、これは……」
「ア、アルフ……」
「! シズか!? 大丈夫か!?」
「体は、な……だが、スタイラーがやられた。全機能が一瞬で破壊されるなんて、ありかよ……」

 仲間の一人、シズというレンジャーの腕にあるスタイラーを確認すると、確かに完全に破壊されていた。バッテリー切れによる機能停止ではなく、内部の回路が破壊されたのか原型を留めつつ爆発させられたようだった。

「一体何があったんだ? 犯人は?」
「分からない。ただ侵入警報が流れたと思ったら、あっという間にここから馬鹿でかい音がしたから駆けつけたんだが……そこで白い影みたいな物が一瞬見えたと思った途端、スタイラーが弾けて、奥からポケモンが飛び出してきたんだ」

 白い影、それを聞いて私の脳裏ではある存在の事が明確に浮かんでいた。影のように実態の無い、あの存在の事が……。

「まさか……白い陽炎?」
「あれがそうだとしたら、追っていった二人が不味い。どんな手段か分からないが、一瞬であの扉やスタイラーを破壊するようなポケモンだ。ひょっとしたらもう……」
「縁起でもない事言わないでくれ。とにかくシズ、お前はレンジャーベースに連絡を。ここの設備を使えば出来る筈だ」
「分かった、気を付けろよアルフ」

 大よその事態を把握して、私は最重要エリアへと踏み込んだ。そして……そこでPRLという機関のおぞましい実態の片鱗を垣間見る事になる。
慎重に歩を進める私の前には、それまでの研究所とは様相を変えた研究所が姿を現していた。装飾も清潔感も感じない無骨な鉄の壁が続く廊下、その壁の合間に見えるガラス窓の先には、牢獄のようになっている部屋が幾つも確認出来た。

「な、んなんだ……ここは」

 部屋の様子や、シズの証言から予測して、恐らくここはあの逃げて行ったポケモン達が閉じ込められていた場所なんだというのは容易に想像出来た。だが、何故そんな数のポケモンを隠していたのか? 当然とも言える疑問を抱えながら、私はそれでも進んだ。
そこから先の様子は、私達に見せられていた研究所とは別世界のような空間だった。ぐったりと項垂れて、この騒ぎの中でも体を動かせずにいるポケモン、狂ったように笑いながら、じっと私を見つめてくる者……非日常的な光景が、各部屋の中に垣間見えた。
中でも吐き気を催したのは、目や耳から血を垂れ流しながら絶命しているポケモン達の姿を見た時だった。どう考えても、普通の死因ではない。

「なんで、こんな事に……」
「……これが、PRLの真実、なんだろさ」
「! レクター、ソウン! 無事だったか!」
「あぁ、なんとか。まぁ、スタイラーはダメにされたけどな」

 先行していた仲間のレンジャー二人を発見し、私は少しだけ安堵した。が、やはり二人のスタイラーは先のシズと同様の状態に陥っていた。
憔悴はしているものの、二人共怪我の類は無い。となると、襲撃犯に襲われたという訳ではないと私は予想した。と言っても、スタイラーの破壊状況からして、遭遇したのはシズも言っていた白い影なのだろうとは推理出来たが。

「正直、マジで本物が実在したとは思わなかった。けどレクター……あれ、本当にポケモンだったのか?」
「分からん。だが、白い光に包まれた何らかのポケモンなのは確かだ。遠目だったが、この研究所の扉に触れて回ってるように見えた。恐らく、各部屋の電子ロックを解除してたんじゃないかと思う」
「電子ロックを、解除したっていうのか? ポケモンが?」
「じゃないとここに居たポケモンが逃げ出せないだろ……方法は恐らく、俺達のスタイラーを破壊したのと同じだ。いや、寧ろ俺達が奴に近付き過ぎた所為で勝手にスタイラーが壊れた、と言った方が正しいか」
「どういう事だよ?」
「……電気だ。とんでもなく強力な電気を回路に一気に流して、電子ロックやスタイラーを焼き切った、そう考えるのが妥当だろうな。じゃなければ、扉やスタイラーの壊し方に疑問が残る」

 電気、仲間が口にしたその言葉を聞いて、私の脳裏には一匹のポケモンの姿が何故か浮かんできた。でも、まさか……そんな風に、私は自分の考えを否定しようとした。
けれど、どうしてもその予感を拭えない。強力な電気ポケモン、ただそれだけの情報なのに私は、あのサンダースの姿を思い浮かべていた。

「調べてみたが、扉の電子ロックも内部で俺達のスタイラーのように破壊されていた。つまり……どうした? アルフ?」
「い、いや、なんでも……とにかく、俺はまだキャプチャも出来るしワイスも居る。先へ進んで襲撃犯を確認してくる」
「お、おい! レンジャーベースの応援を待ってからでも!」

 仲間の声は聞こえたが、それに答える前に私は駆け出していた。嫌な予感がする、その予感がもし正しいとしたら……レンジャーの本隊が到着する前に、私が『彼』に会わなければならない。そう思って。
周りも見ずに、彼が進んでいったであろう道を駆け抜ける。奥へ進む度に凄惨な状況が広がるこの研究所は明らかに狂った場所だ、そんな場所に何故彼は来たのか。それを知る為に。
目の前に一際大きな扉が見えた時、その扉の先から凄まじい音と光が漏れ出てきた。……間違い無く、この先にとんでもない何かが居る。そんな予感が、私にワイスの入っているボールを手に取らせた。

「……ワイス」
「ん? ここは……何処だ?」
「地獄の一丁目、かな。この先、恐らく途轍もなく危険なポケモンが居る。……SSSランクの、な」
「トリプルS!? ま、まさか、例の白い陽炎って奴か?」

 これまでの情報から、襲撃者が白い陽炎であるのは間違い無いだろう。それに、扉から漏れ見えた光も、純白とも言える程の白だった。この先に奴が……彼が、居る。
ワイスの表情も緊迫したものに変わり、私達は意を決して目の前の扉を開いた。そして広がる光景の中にやはり、彼は居た。

「ば、馬鹿な……たった一撃で私の自信作が半数以上行動不能にされるとは」
「自信作? 下らないな。そんな操り人形が自信作とは、この研究所の研究成果ってのは前評判通り最低値らしいな」
「PRL内部で噂されていた情報は本当だったのか……原因不明の消滅を起こした第8支部、その研究所の最高傑作とも言える個体は生き残っており、PRLの研究所を潰して回っているというのは」
「巫山戯た呼び方すんじゃねぇ! 俺は、ポケモンは、命は! 物なんかじゃねぇ!」

 彼の叫びと共に、彼の体から猛り狂う雷鳴が放たれる。目を奪われる程に美しいとすら言える、真っ白な雷が。

「どう、して……」
「……やっぱり、来ちまったか。他に三人くらいレンジャーが詰めてたから、ひょっとしてと思ったがな」

 こちらを振り返る事はしなかったが、今の言葉は明らかに私に向けられたものだった。やっぱりあの白い雷を纏ったサンダースは、数日間を過ごした……彼だった。

「あ!? あなたは、アルフさん!?」
「レイルス所長……」
「た、助かった! 侵入者です、早く捕らえて下さい! それに、他のレンジャーの応援を!」
「……ここまでの最重要エリアと呼ばれていた場所は見てきました。レンジャーとして、まずはこの場所についての説明を求めます」

 私の一言に、レイルスは舌打ちをした。私だって、ここまでの様子を見てきて何も考えずにこいつを助ける程馬鹿じゃない。こいつは、間違い無くポケモンを利用して違法な研究をしているんだから。

「馬鹿なレンジャー共なら騙して利用するだけで済むと思ったが、困るんだよ。お前みたいな小賢しい奴が派遣されてくると……ここを見られた以上、お前も消すしか無いじゃないか」

 レイルスが私を指差すと、奴の後ろに控えていたポケモン達が8匹程、私に向かって襲いかかって来た。
それから守るようにワイスは私の前に出てくれた。が、その行為は無駄に終わった。その侵攻を遮るかのように撃ち出された、強大な電撃によって。

「な!? 何故お前がレンジャーを守る!?」
「関係の無い奴を巻き込むつもりは無い。俺の目的はあくまでここに捕らえられたポケモンの開放と、この研究所の壊滅だ」
「君……」
「……巻き込むつもりは無かったんだ。だからここから離れろって警告した、けど……こうなっちまった。本当に……済まない」

 伏し目がちな彼の様子を見て、私は何も言えなかった。それが心からの言葉だと、分かってしまったから。
戸惑うワイスと共に、私は動けないでいた。今は、彼の事を邪魔してはいけないと思ったからだ。
戦闘に巻き込まれないよう、私は彼寄りの位置に移動した。その様子を見て、彼は困ったような顔をしながらも少しだけホッとしていたような気がする。

「この研究所で行われていた実験は、ポケモンに洗脳を施して主人となる人間に完全に忠実なポケモンを作り出す事だ。奴隷にも、兵器にもなるような、な」
「なん、だって?」
「そして、奴の後ろに居るポケモン達。あんたも襲われた事のある奴等が、この研究所の成果って奴だよ」
「ぐ、くっ、余計な事をベラベラと」

 それが事実だと言う事を、レイルスの反応が物語る。ポケモンを洗脳する、そんな事、許せる筈が無い。そんな、ポケモンの心を踏みにじるような行為を、許していい訳が無い。
不意に、彼の姿が消えた。そしてそれは、一瞬の内にレイルスの目の前にあった。

「ひっ!?」
「あ、待……」
「がは、あ……」
「……こうすれば、もうこのポケモン達に指示を出す奴は居ない。このポケモン達が……誰かを傷付ける事も、な」

 私が話す間も無く、レイルスは倒れた。それと同時に、奴の後ろに居たポケモン達も糸が切れたかのように次々に倒れていく。一体何が?
私が惚けている間に、彼はこの部屋でも一際大きな機械へと近付いていく。そして、キーボードになっているらしい場所に前足を置いていた。

「お、おい待て! てめぇ、自分が何したのか分かってんのか!? アルフもしっかりしやがれ! 奴は人を襲ったんだぞ!?」
「はっ! そ、そうだ! 頼む、動かないでくれ! そして、一緒にレンジャーベースまで同行してもらう!」
「悪いがそれは出来ない。俺は、あんたに捕まってはやれない」

 彼の前足から電気が放たれ、巨大な機械は動き始めた。壁一面がそれに反応し、パソコンの画面が表示された。

「こいつはこの研究所のメインサーバーだ。行われていた実験結果も何もかもが収められてる、だからこそそこの糞野郎はここを守ろうとしてたんだ。……ちっ、研究データはやっぱりコピーして別の研究所に送ってやがったか。オリジナルを消される前に間に合ったのはついてたな」
「おいだから動くなっての! こっち向きやがれ!」
「時間が無い、今からこのデータをメモリーに移す。手伝えとは言わない、邪魔しないでくれ」

 キーボードは叩いていないのに、画面の中ではウインドウが開いたりと確かに操作がされていた。彼は機械に直接電気で信号を送り、それを操作していた。目の前で起こっている事が現実なのかと目を疑う事態だった。
ワイスは俺に指示を出せと言わんばかりに私の顔を見ていた。捕獲しろと指示を出せば、待ってましたと言わんばかりに彼に向かっていくだろう。
けれど、勝てない。ワイスも私も、レイルスの洗脳ポケモンに勝てなかった。それ以上の力を持つ彼を、私達だけで止めるのは不可能だ。
それでも何もしない訳にはいかない。だから、私は質問を投げ掛ける事にした。彼についてを。

「教えて欲しい。さっきレイルスが言った、君も他の研究所に居たという話は、本当なのか?」
「……聞かれちまった以上、隠せない、か。あぁ、こいつ等が第8支部って呼んでたらしい研究所で、俺は生まれた。勘違いしないでくれよ? 実験で生まれたんじゃなく、その研究所に捕まっていたイーブイが産んだらしいぜ」
「だとしたら、このPRL研究所襲撃は、復讐なのか?」
「そう、なんだろうな。俺は許せねぇんだよ、ポケモンを平気で弄り回して、物みたいに使えなくなったら捨てる。そんなやり方がな」

 話をしながらも、画面にはコピー中の表示が出ていて、それの完了を告げるメーターが増えていっていた。これが終われば、恐らく彼はここを離れるんだろう。
もう時間は無い。彼を捕らえるのは、今しか無い。

「やっぱり、レンジャーとして俺の前に立ち塞がるか」
「少しだけど、事情は分かった。けど、それは君がやる事ではない筈だ。然るべきところが調査をして……」
「それがされていれば俺も動かなかったさ。でも、こいつ等は今まで野放しだったじゃねぇか? 誰がこいつ等を怪しんで、調査した? レンジャーか? 警察か? ポケモンセンターか?」
「そ、それは……」
「結局、知ってる奴が動くしかねぇんだよ。そしてそれが俺だった、ただそれだけさ」

 コピー完了と表示されて、彼の前には一つのUSBメモリーが出てきた。非道な実験を全て収めた物としては、酷く小さくて頼りなさげに見えたのを今でも覚えている。
それを口で抜き去って、彼はそれを、私に投げて寄越した。慌ててそれを受け取っている間に、また爆発音が私の耳に届く事になった。

「な!?」
「これで、ここの研究データがこれ以上第三者に渡る事は無い。送られた先の研究所と、あんたの手の中にあるそれ以外は、な」
「メインサーバーを、破壊したのか!?」
「残念だが、こいつ等の研究結果を欲しがる奴は多いだろう。ポケモンを自分の意のままに操る、そんな技術は……出回らせる訳にはいかないからな」

 なら、何故彼はその研究データをコピーして私に渡したのか。その疑問の答えは、続く彼の言葉によって答えが開示された。

「そいつをどうするかは、あんた次第だ。でも……あんたが本当にポケモンを救う為に動けるレンジャーだって、俺は……信じたい」

 そう言って、彼は俺達の横を通り過ぎようとする。
ワイスはそれに割って入ろうとした。けど、それを私は止めた。彼を止める事がレンジャーとしての私の仕事だというのは分かる。けれど、私は彼を止めていいのか分からなくなった。
彼を止めれば、彼がこれ以上罪を背負う事はさせずに済むだろう。けれど、彼が居なければ、PRLの凶行を止められるだろうか? 実際、私や仲間のレンジャーも研究所の実態に気付けはしなかった。PRLの研究所が今も別の場所で動き続けているという事は、他の誰もPRLの真の姿に気付いていないという事を物語っている。
そんな状態で抑止力に成りうる彼が失われれば、PRLの真実を暴く動きが無くなってしまう。ポケモン達も、これからも犠牲になり続ける。
そう思うと、私は彼を止められなかった。レンジャーではなく、ポケモンを大切なパートナーとして思う者として。

「……あんた等と知り合った数日間、悪くなかったよ。本当に、ありがとう」
「なら、これからも一緒に歩いていく事は、出来ないのかな?」
「あんた等はこっち側に来ちゃいけない。俺も、今更あんた等の側に行く事は出来ない。それが答えだよ」

 俯く私を置いて、彼の足音が離れていく。けれど、数歩歩いてまた彼は止まった。

「心残りがあるとすれば、あんたが決めると言った名前を聞けなかった事、かな。まぁ、ヒントは頂いたけど」
「ヒント?」
「光……俺にはちょいと大げさなもんかもしれないけど、それを名にするのも悪くないかもな」

 そう言い残して、彼は駆け出した。そして、それが彼と話す最後の会話となった。
その場に残された私も、少しして彼を追うように研究所の最重要エリアを後にした。
そして耳にした戦闘音……彼が、レンジャー本隊との戦闘に入った事を告げる音が私の耳にも届いた。

「あいつ、真正面から行ったのかよ……」
「多分、襲ったのが自分、白い陽炎だって事を示して私達のミッション失敗の責任を軽くしようとしたんだと思う」
「まさか? いやでも……ありえる、のか?」

 答えは聞く事は出来ない。けれど実際、その後の本部からの追求は軽いものだった。寧ろ、白い陽炎が実在するという事を証明した初めてのレンジャーだとまで言われた。
けれど、そんな名誉は受け取りたくなかった。その後彼は正式にレンジャーから指名手配され、執拗に狙われる羽目となる。その度に彼はレンジャーと戦い、倒し、罪を重ねる事となった。
結果として彼はトリプルSでも紅蓮の翼と並ぶ驚異、通称『カーネイジ』と呼ばれるようになる。そしてその二匹のポケモンは『二大災禍』と呼ばれ、レンジャーが最も警戒し最優先で捕獲、または倒すべき対象だと定められるようになる……。



 ……懐かしい自分のしたためたレポートを閉じて、椅子にもたれ掛かる。あれから何年経っただろうか? ふとそんな事を思うと、時間の流れは早いものだと思う。

「おいアルフ、次の講義始まるぞ。ん? なんだ、それ読んでたのかよ」
「あぁ、ちょっと懐かしくなってね。それに、これについて生徒の一人に質問もされたから改めて読み直してたんだ」
「ふぅん、また珍しい生徒が居たもんだな? それ、大体の奴にゴシップだって言われてるだろ?」
「まぁ、現実だって言っても、到底信じられる内容じゃあないからね」

 けれど、このレポートはれっきとした真実だ。何故なら、私は今も彼から受け取ったUSBメモリーを持っている。これ自体が揺るがぬ事実そのものだ。
この中に収められたデータ……私はそれを匿名でレンジャー本部や警察機関に送った。この証拠と、彼が戦い続けた結果からか、PRLの実態は次第に暴かれ、組織は瓦解していったそうだ。
……PRLが無くなった今、カーネイジの目撃情報はぱたりと聞かなくなった。それに私も現役のレンジャーを引退し、今はレンジャースクールで後世のレンジャーを育成する身分。どうしても彼の情報を集めるのは難しくなった。

「なぁアルフ、もし今あいつに会えたらさ、お前ならどうする?」
「ん? そうだなぁ……まずは再会を祝して食事、とか?」
「おいおい、相手は今や一級指名手配ポケモンだぞ? それでいいのかよ」
「だって今私はレンジャーじゃなくてレンジャーの講師だし、捕まえろって言われても無理でしょ」
「ったく、あいも変わらずって感じだな。とは言え、正直あれと戦えって言われたら俺も断るけどな」

 お互いに顔を見合って、おかしくなって笑ってしまった。本当に、もし今彼に再会出来たら、あの頃よりもずっと気楽に付き合えるだろうな。
PRLとの戦いが終わって、今彼は何をしているのだろう。……ひょっとしたら、何処かで平和に暮らしていたりするのかもしれない。それならそれで、きっと幸せに暮らしているんだろうな。
それとも、PRLとは違う、似たような事をしている連中と今も戦っているんだろうか? ……いずれにしても、レンジャーではきっと、彼を捕らえる事は出来ないだろうけど。

「っと、世間話してる場合じゃねぇって。マジで次の講義の時間来ちまうぞ?」
「ごめんごめん。じゃあ、行こうか」

 私がレンジャーを止めた理由は二つ。一つは、彼を追う任務を受けるのを断る為。私以外の、あの研究所を警備していた三人は皆その任務を受けて、今や各地で活躍するトップレンジャーの一員として働いている。無論任務通り、彼を追いながら。
もう一つの理由は、後のレンジャー達に『ポケモンレンジャー』とは何か、どうあるべきものかを考える機会を与える者になる為。ようは、今の講師になる為だ。
あの事件で彼と出会い、私はレンジャーという者のあり方を深く考えるようになった。ポケモンを守る者……そう言われてはいるが、果たして本当にそうある者なのか、と。
ポケモンを守ると言いながら、人を襲うポケモンは有無を言わさず捕獲する。そのポケモンがどう考えて、その行動を起こしたかを鑑みもせずに。
確かに、危険なポケモンも少なからず居る。けど……二大災禍の二匹のように、何らかの理由を持って動いているポケモンが居るのも確かだ。そんなポケモンと出会って、どういう選択を下すか。
命令だけで動くのならば、レンジャーはポケモンを守る者ではなく、警察や軍隊とさほど変わらない物に成り下がるだろう。けど、それじゃいけないんだ。
あの時彼がそうしてくれたように、ポケモンに信じられ、ポケモンを信じ、共に歩む道を探す。本来レンジャーは、そういう存在であるべきなんじゃないだろうか。
私は……彼と、それが出来なかった。だからこそ、それが出来る人材を世の中に送り出していきたい。そう、思ったんだ。

「……私は、彼が信じてくれたような人間で、今も居られているのかな」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、なんでもないよ。行こうか」

 答えは分からない。でも、あの太陽に真っ直ぐに胸を張っていられる人間でありたい。
太陽のように、闇を照らす光である彼に、胸を張って再会出来るように……。



~後書き~
今回はライトが一匹で行動していた頃と、名前が決まった頃の昔話をば。なんか脇道が、ライトの昔話みたいになってきてるけど……ま、まぁ、フロストなんかの話もあるし、昔話ばかりにはならない、筈! それに出せる話も減ってきましたし。
と、あまり後書きを長々としても仕方無いですね。ここまでお読み下さった皆様、ありがとうございました! 次回作もまた鋭意製作中ですので、いずれ新作でまたお会いしましょう!

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • お久しぶりです、ライトが一匹で行動していたころのことがあきらかになって、なんだか切なくなりました。ライトは本当に優しい心の持ち主なんですね。双牙連刃さん執筆お疲れ様です。長文失礼しました。
    ―― 2015-05-09 (土) 20:45:59
  • お久しぶりです。最近執筆活動の真似事をしてみましたが、難しさに頭を抱えております196です。
    さて、今回はライトの昔話ですか、この頃から体術が使えたんですね。それにしても、ライトは何故ゼロ助と名乗らなかったのか。もしかして、ラルゴさんから別れてからすぐに止めてそうですね。
    そして、このアルフさん、カランと関係して出てきそうな人ですね。
    それとやはりライトの一発で倒してしまうのはなかなかスカッとしますね。
    では、今回も楽しく読ませていただきました。次の作品も楽しみに待ってます。執筆頑張って下さい。
    ――196 ? 2015-05-09 (土) 22:43:51
  • お久しぶりです。昔のライトがしていた事がこの話で書かれていました。レンジャーとも少し繋がりがあったところには少々驚かされましたが、それもライトらしく、よかったです。これからも執筆頑張って下さい。
    長文失礼いたしました。
    ―― 2015-05-09 (土) 23:36:35
  • おぉ!お久しぶりです!さっそく読ませていただきました!これでライトの過去がまた一つ出て来たわけですね、生徒の一人、ひょっとして妹さんですかね? 執筆の方も大変そうですけど気長に待ってます()
    ――カザウタ ? 2015-05-10 (日) 19:08:02
  • >>05-09の名無しさん
    優しいが故に、誰かに頼ったり弱みを見せるのが苦手なのがライト、と言ったところでしょうか。だからこそ、今の生活や一緒に暮らす皆を大事にしてるところもあるのですけどね。

    >>196さん
    タイミングとしては、恐らくラルゴと別れた辺りで名乗らなくなったのでしょう。研究所で呼ばれてた名でもあるって言うのが、ライト的にもあまり呼ばれて嬉しくはないでしょうしね。
    アルフとカランの繋がりがあるかは……今のところは不明としておきましょう!
    因みにライトの体術はラルゴ譲りですし、別れる頃にはもう大体の知識や技術は教わってたという感じですね。じゃないとラルゴは独り立ちを許しそうにないですしw

    >>05-09の二人目の名無しさん
    なんだかんだ出会った人やポケモンに影響を与えたり与えられるのがライトですからね、こういう人が居てもおかしくないと思ってアルフにはこういう人物になって頂きました。レンジャー関係者の中でも、ライトの事を僅かにでも理解している数少ない(唯一の?)人物です。

    >>カザウタさん
    カランがレンジャースクール生という事も考えると……と言ったところでしょうか。まぁ、まだこの辺りは謎としておきましょう!

    皆さんコメントありがとうございました! すぐにの返信は難しいですが、こうして返事が出来る時はしっかりとやらせて頂きます!
    ――双牙連刃 2015-05-12 (火) 22:33:00
  • イイね! --
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Last-modified: 2015-05-08 (金) 13:14:50
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