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育てやと少年

/育てやと少年

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この物語には

 ・BL要素 
 ・パロディ(弱) 
 ・メタ

        が含まれております。

 苦手な方は逃げて、超逃げて! 





「それじゃあ、ハクリュウとドリュウズを預かるね」

「お願いします!」

 育てや、俺が知っているのは、ここはポケモン同士で交尾し、
 タマゴを作るところということだ。

 だというのに、あの小僧は俺と一緒にこのハクリュウを預けていった。

 いったい何を考えているんだ……

 とりあえず、交尾でもすればいいのか?

「えーと……まぁ、よろしくな」

「うん、ボクの方こそよろしくね♪」

「……もしかして、おまえ……雄か?」

「そうだけど……?」

 なんてこった。俺の知ってる育てやと違う。


     育てやと少年
      作者はこいつでした



 俺が捨てられなかったのは奇跡としか言いようがなかった。


 タマゴから産まれてすぐにみたのはウルガモスの「ほいくき」さんの顔。

 周りを見回せばどこかの海を渡る橋の上。

 俺に続いて4体の兄弟が産まれるとすぐにウルガモスさんに乗って、駅のようなところに連れて行かれた。

 そこでよくわからない男に見てもらったかと思うと、今度はポケモンセンターに飛んだ。

「ちくしょー……俺のしたことが、変わらずの石を持たせ忘れるとは……」

 そう呟きながら主人は俺を残してすべての兄弟をポケモンセンターの機械の中吸い込ませる、
 そして、消えていった。 たぶん、逃がすというのがあの事の名前なんだろう、でもそれは嘘だ。

 俺の兄弟は、たった数分であの機械に消されたんだ。

 続いて街をでると、変な帽子を被らされていろいろな所でバトルを見せられた。
 主人は、何回バトルしたかを数えているようだった。

 バトルとバトルの間は「ほいくき」さんにいろんな事を教わった。

 主人がやってきたこと、主人は強いポケモンを求めてること、他にも俺が繁殖に回されることも見据え、偏った性知識や
 主人がよく与える漢方薬の苦みを我慢する飲み方、そして、……最悪の場合、俺は弱ければ捨てられることを。

 俺は死にたくない一心で強くなろうとした。
 だけど、俺は一切戦闘には出してもらえず、ただ仲間の戦闘を見るだけだった。

 ある時にはダイケンキの「たびよう」先輩が
 ハイドロカノンで野生のポケモンを吹き飛ばしたり、
 また、あるときにはゼクロムの「バリバリダ」先輩が
 雷撃で虫取り少年の手持ちを倒したり
 さらに、あるときはブースターの「ゆいつおう」先輩が
 なぜかフレアドライブを撃ったにも関わらず、ヒヒダルマに負けてたりするところだったり……

 そんな勝負を何回も見せられたあと、今度は変な青いキャンディを食べさせられた。
 すると、すぐに身体は進化した。

 これで俺は捨てられないのだろう、そう思った矢先に主人は育てやというところに飛んでいった。

 なんどもタイミングを見計らうかのようにうろうろして、じいさんからタマゴをもらう。

 そのときにこっそりと柵の中を見るとドリュウズとビーダルが交尾しているのを見た。

 今思えば、あれが両親だったんだろう。

 そして、4個のタマゴをもらうとまた橋の上、それを何度も繰り返した。

 数日後、主人はとある一体を駅の男に見せ、その後焦るように海の近くのお祭りのような建物*1の近く、またもや変な男に見せた。

「めざめるパワーは悪!」

聞いた直後、大声で叫んだ。

「よっしゃーっ!! 性格一致6V来たー!!
 改造無しでやんの疲れたけど、やっと大会に出せるぜー!!」

 そして、何度目かのポケモンセンター。

 主人は三体の兄弟を消して、そして、俺のボールに手をかけた。

「万が一出なかったら使おうと思ってたけど……こいつも、もういらねーなー」

 俺は死を覚悟した。

 そのときだった。

「んあ? ライブキャスター?
 この名前だと……隣んちのタケルか?」

 俺を再びボールホルダーに戻し、ライブキャスターで通話を始める。

「やっほー、聞こえてるー?けん(にい)?」

 主人の名前、ケンタをよく知っているように話しかけてくる。
 いったい誰だろうか? 俺が産まれる前からの友達だろうか。

「おぅ、たける。 ついにBW2買ってもらったのかー」

「ううん、残念だけどホワイトだよー、誕生日だから買ってもらったんだー」

「そっかーもう誕生日かー、そろそろ俺んとこの高校上がんだろー」

「そうだよー、一年ぶりに学校でも遊ぼうねー」

「おいおい、高校生になってもそれかよー。
 まっ、とりあえず今日中にライモンまで進めとけよー、誕生日限定アイテムがあるかんなー」

「そうなんだー、わかったー、今度対戦しよーねー」

「おぅ、というか、もう二月なんだし余裕ってもちゃんと入試勉強しろよ~
 ……そうだ、使わないポケモンいるんだけど送るかー?」

「ほんとー!? それなら欲しいなー♪」

「おっけー、じゃあポケセンでなー」

「うん、お願いねー。 じゃねー」

「おぅ、じゃーなー」

 短い通話を切ると、主人は一度外にでて、ヒウンシティに向かった。

 こんな時に授けられた初めての名前、それを携えて向かったのは
 夕暮れ時のヒウンシティのポケモンセンターの二階の一室。
 そこにははみたこともないトレーナーが待っていた。

「バイバイ!」

 主人の手から俺の入ったモンスターボールが離れ、不思議な空間を飛び、新たな主人、タケルの手に俺は収まったのだ。

「かわいがってあげてね!」

 それが、ケンタから聞いた最後の言葉だった。



「世界ってどうなってんだろうなー……」

 夜、俺は育てやの中で割り振られた木造の小屋の寝床に転がって呟いた。

「ったく……どうなってるんだよ……」

 まったくもってわからない。

 新たな主人、タケルと共にポケモンセンターを出ると、そこはサンヨウシティ。
 前まで三色兄弟*2んとこのジムは辞めたばかりだったはずなのに、
 なぜか、新人ジムリーダーとしてジムを開いてるし、
 他の人間が話している事を聞いていると、元主人がトドメを刺したはずのプラズマ団が初めて動き始めているみたいだし。

 ほんとになにがなんだか俺は意味がわからない。

 ただ、話を纏めてみると、ここは俺が居たイッシュから二年前らしいのだ。

「まぁまぁ、よくある話だって~♪」

 ついでにいうと、さっきから小屋の中を彷徨いているこいつもよくわからない。

「はぁ……なにやってんだか……
 なんかさ、おまえ知ってたりしないの?」

「交換ならよくあることだよ~」

 その馬鹿デカい身体をウネウネさせて天井や壁の間をがさがさやっている。

「俺は交換に出されたのは初めてなんだが……おまえはどうなんだ?」

「うーん、ボクは三回目かなー。 地方越えもカウントしたらだけどー。
 ……あっ、やっと見つけたー、えい!」

 がしゃ、そんな音がしたと思ったら、そのデカい身体の後ろからもくもくと上がる黒煙。

「おいおい、おまえなに壊してんだよ……じいさん達に怒られるんじゃねーのか?」

「カメラだよ~♪ この地方じゃご主人の端末に映像を送るやつじゃなさそうだし~」

 盗撮、ってとこか。
 まさか、そんなことをやってたとは侮れないじいさん共だ。

「それと、ボクはハクリュウのドランだよ。おまえじゃないからね♪」

「あぁ、すまんな……
 それより、さっきのよくあることだっていうのはなんなんだ?」

 デカいの……ドランは俺の隣にとぐろを巻き、話し始めた。

「時が遡るって言うのは結構あることなんだよね~、ボクも経験者だし~」

「いや、でも俺の周りじゃ時渡りしたなんて話聞かないぞ?」

 そもそも、時渡りは特定のポケモンしかできなかったはずだ。

「それがね~♪ なんか特別な素質を持つトレーナー同士だと、
 ボクたちが交換された時に世界が変わるみたいなんだよね~」

 世界が……変わる?

「わからないって顔してるけど、ボクもよくわからないんだよね~」

「わからないんかい……」

「でもね~、前の世界でいろいろな世界に行ったことのあるメタモンさんは、人の数だけ世界があるっていってたから、そうなんじゃないかな~」

 人の数だけ世界がある。

 こいつが言う言葉はきっと本当なのだろう。

 俺は体を起こして外にでた。
 そして、二年後と同じ夜空を見つめて一言呟いた。

「これからどうなっちまうんだろうな……俺……」

 ドランも小屋から顔を出して俺の隣にそっと並んだ。

「まずは、新しいご主人……タケルがボクたちを扱うにふさわしい力を備えるまでは……ここでのんびりかな~
 ……それまで、ボク達はパートナー同士! 明日から一緒に頑張ろうね♪」

「お、おぅ……」

 この世界はよくわからない。
 何かを知っているようなこいつもよくわからない。

 わからない事だらけの世界の中で、新しい俺の生活が始まった。



「まじかよ……」

 俺は心底驚いた。

「見てばかりじゃなくてさ……もっと触ってよ……」

 俺はそっと手を伸ばす。

「どう……?」

「どうって……なんでこんなにカチコチなんだよ」

「へへ、すごいでしょ……♪」

 たまらず、俺はそれに抱きついた。

「わっ! もう、いきなりなんてびっくりするじゃない……」

 俺は爪をたてないようにそっと抱え込みながら呟いた。

「すげぇ……筋肉……」

 配られた朝メシはすぐに喰い終わった。
 そして、気になっていた本来の育てやの説明をドランから聞くことにした。

 俺も知っていることだが、トレーナーは最大6体しかポケモンを連れ歩くことは出来ない。

 そこで他に最大2体まで、ここ育て屋に預けられ、各自でトレーニングをすることでレベルアップを図る施設だというのだ。

 そこで試しにレベルを聞いてみたら、俺より相当高いレベルだったので、そのレベルを実感しているところ。

 やっぱり、元の主人の影響か、どうも強いポケモンには憧れちまうようだ。

「基本的に蛇体型のポケモンは全身が筋肉の塊だからね~♪」

 聞いた話によるとドランは今まで訪れた地方では数度に渡り、育てやに入ったことがあるらしい。

 それに加え、ミニリュウ時代に野生のポケモンとギブスをつけて戦うといった特訓もしたらしく、戦闘には自信があるそうだ。
 ……いったい、どんな形のギブスなのかは、まったく想像できなかったが。

「だけどさ~、君も……よいしょ♪」

 唐突に身体を絡めとられて持ち上げられる。

「のわっ、降ろせ降ろせっ!!」

「うん、筋肉の自体は素質がありそうだね~♪
 鍛えたら相当強くなるんじゃない?」

 全身を、まるで搾り取られるように探られる。
 手足に巻き付かれているため、暴れることもままならない。

 すると、そこに足音が聞こえてくる。

「おやおや、雄同士で仲が良いとは珍しいのぅ」

 現れたのは育てやのじいさん。
 以前会ったときより、僅かに若々しい。

「じゃが、もうそろそろ外でトレーニングでもしんさい。
 おまえさんらが出かけてるうちに掃除はやっとくけんのぅ」

 早い話、朝メシの皿片づけついでに俺たちをさっさと外に出そうとしに来たわけか。

 まぁ、それもそうだろう、このカップリングなんだし、レベルアップが目的なのに、寝床でグータラしてたら問題だろうしな。

「じゃあドラン、外でも行くか」

「そーだねー、この地方の育てやは初めてだし、ちょっと見て回ろうか~♪」

 俺とドランはじいさんに一鳴きして陽の光に満ちた、この世界で初めての朝に飛び出していった。



「……で、出てきたのは良いものの、俺たちはどうすればいいんだ?」

 とにかく広い、広すぎる。
 途中に柵があるかどうかはしらねーが、見た感じでは遙か遠くに見える山の麓まで草原が続いているように見える。

「さぁ?」

「さぁって、おまっ……、他んとこの育てや行ったことあるって言ってたじゃねーか」

「行ったって言っても、ちょっとだけだよ。
 次の朝にはすぐに帰ったし~」

 ついでに言うとクソ暑い。夏だからって朝から暑いと動く気力も削られる。

 ひとまず、しゃべりながら進んでいくドランを追いかけるように、俺も歩みを進める。

「とりあえずさ~、水飲み場探そ~♪」

「そうだな、他にやることもなさそうだし」

 しばらくの間、二人は無言のまま歩き続けた、片方はうねっているのだが。

 ふと、俺は気づいた。

 空に浮かぶ太陽、足下に感じる草、
 なによりここがボールという名の監獄ではない、自由な外の世界であるという事。

 思えば、俺は消える運命だったのだ。

 あの閉じた世界の中で、終わるはずだった俺の命。

 僅かに生き長らえた俺の奇跡は、新たな奇跡を呼んで、この新たな世界へと繋がった。

 一体、何人の兄弟があの箱に消されてきただろうか。

 そして、運命のいたずらは俺をどこに誘うのだろうか。

 そんなことをぼんやり考えていると、頭の上から声がかかる。

「ねぇ、ねぇってば!! どうしたの? フラフラしてるけど?」

「……ん、あぁ、わりぃな少し考え事してた」

「ふーん、……それよりさ水飲み場についたよ」

 水飲み場があったのは俺たちの小屋から川を渡った、受付を行った小屋の近く。
 すでに何匹かのポケモンが集まってるが、意外と大きくまだスペースがあるようだ。

「じゃあ早速飲もっ!!」

 その隙間に馬鹿デカい体を押し込んで水分補給に勤しむドラン。
 その姿をぼんやりと見ていると視界の隅、柵の外にタケルとじいさんの姿。

「おーい、水飲まないの~?」

「……いや、俺はいいよ。
 元々地面タイプだから、そんなに水いらないし」

「そっか~、じゃあボクはもう少し水飲んでるからね~」

 飲んでる……というか、すでに体ごと突っ込んでるドランはほっといて、こっそり柵に近づく。

 僅かに聞こえてきたのは話し声。

「おぉ、タケルか。 二匹はげんきじゃぞ!
 雄同士では珍しいことに二匹の仲はとってもよいようじゃ!」

「そうですか、ありがとうございます!」

「……それにしても、なぜお主はあの二匹を預けたんじゃ?
 レベルもそこそこあるし、これ以上ここで預かっててもお主の財布が痛むだけじゃろう」

「それはわかってますが……でも、せっかく友達やお父さんにもらったポケモンですし、
 二匹に認めてもらえるまでボックスに閉じこめたままにしておくのはかわいそうな気がして……」

「ふむ……変わった奴じゃ……、まぁいい、がんばりなさい」

「はい!」

 俺は建物の陰から二人の話を聞いていた。

 タケル、俺の新たな主人。

 ――――悪い奴ではなさそうだ。

 俺は心の中でそっと呟いた。


 ……盗み聞きの後も暑い日差しを避けるように建物の陰で一休み。

 すると俺の横の通用口が開き、ばあさんが出てくる。

「おや、昨日ウチに来た子けぇ?
 こんなところでなにをしとるんじゃ?」

 ……そんな曖昧な質問されても、会話できるわけじゃないし、答えられないんだけどな……

「腹減ったんか? 昼飯はまだ後じゃぞ?」

 ふむ、こんな質問なら大丈夫だ、俺は首を横に振る。

「なら……気分でも悪いんか?」

 同じく、首を横に振る。

「……んむむ、あぁなにをすればいいかわからんのけぇ?」

 おぉ、やっと当ててくれたか。
 俺は首を縦に振る。

「そっけぇ、おめぇさんは育てや初めてだったかぁ。
 ここはな、奥の方が野生のポケモンも住んでるとこでな
 そこで勝手に勝負でもしてくればいいけぇ。
 他にも筋トレや瞑想、薪割りに崖登りも用意してあるけぇのぅ
 バトルがやならそっちで特訓しんせぇ」

 ……どうも他の世界の猫的な何かがやりそうなメニューだがとりあえずやることはわかった。

 ばあさんに軽く頭を下げ、俺はドランを呼びにいくために日向に出る。

 そういえば、実際に体を動かすのは、初めてといってもいいだろう。
 与えられた進化による体は成獣(ドリュウズ)でも、心は幼獣(モグリュー)のままだ。
 そんな初めてに俺は心を踊らせた。

 俺の体を照らす朝日は、今まで俺を縛り付けていた世界を溶かしてくれるように感じた。




 それから始まった毎日、それは何事もない日常。

 しかし、それすら自分にとっては初めてだった。

 なにもないというのは、平和だからこそ感じられる感覚だろう。

 明日、消されるかもしれない。
 そんな不安が消えただけで、俺はなにもないという充実している、そんな矛盾しているような毎日を過ごしていた。


「おぅ、もどったぞ」

「あー、おかえりなさーい♪
 夕飯のきのみ先食べてるよー」

 ここに来てかどれだけの日にちが過ぎたのだろうか。
 なぜか終わらない夏が続く日々の中で特訓の毎日。

「はぁ~、なんか鍛えてんのにぜんぜん経験として伴ってない気がすんだよな~……」

「まぁ、よくある事じゃない? いっそのこと滝に打たれたら経験値あがるかもよ~?」

「そんなんやったら滝に打たれてみずタイプ克服の前にギブアップ必至だな。
 というか、それで経験値が上がんのはどこぞの戦闘チョロネコぐらいじゃねぇのか……?」

 ひとまず俺は地面に置かれたきのみの入ったバスケットに近寄り、迷わず好物のナナのみを手に取る。

「……あぐ……んぐっ……ふー、やっぱ栄養補給はナナのみに限るぜ」

 とても固いその皮を爪ではぎ取り、中のにだけを食していく。
 甘い果実にほんのりとした苦み、こんなうまいものがあるとはちょっと前の自分では信じられなかっただろう。
 なんせ、前の主人は特殊な効果が無いきのみは持ち歩かない奴だったし。

 一つ、また一つと頬張りながらナナのみを食べているとドランの視線がこちらに向いているのに気づいた。

「……ごくっ、どうしたんだ、ドラン?」

「へっ? あっ、い、いや、べ、別に何でもないよ?!」

 珍しくドランがあわてている。
 まぁ、別に用があった訳じゃなそそうだし、食事食事っと。

「うぇっ!? 渋っ! なんだこれ、まだ熟してねぇぞ……」

 苦手な味に当たり、つい吐き出してしまう。
 咀嚼されたナナの果実は白くドロドロとしていて、
 なんだかさっきまで口の中にあったのにも関わらず、とても汚らしく見えた。

「えーと、すまねぇなドラン、今片づけるからよ……、ドラン?」

 なぜかわからないが、ドランは俺の方をみてぼーっとしている。
 とりあえず吐き出したそれを、周りの土ごと削り外に捨ててくる。

 やがて、食事も終わり就寝の時間。

「じゃ、おやすみな」

「……うん、おやすみ~」

 ドランはどこかうわのそらだったが、かまわず俺は瞼と体を閉じた。


 そして、再び起きたのは深夜。
 ふと聞こえた、カサ…カサ…という音が俺を眠りから引き戻した。 

 そっと体を閉じる爪の隙間から外を窺ってみると、そこにはこそこそと外に出ていくドランの尻尾の姿。

 ――こんな夜中に一体なにを?

 空は月の光さえも遮る雲に覆われ、まさに暗闇。
 しかし、いつも地中を掘り進む自分にとっては充分すぎる明かりだ。

 つけていくと、ドランは林の中の茂みに身を潜めていく。
 近くは暗闇が濃くなっているように感じるも、その闇が俺を手招きしているようにも感じた。

 俺は抗うこともせずに、少しひんやりした空気に満ちる林へと進んだ。




 茂みに入られてからはすぐに撒かれてしまった。
 それもそのはず、余計なものが無いあいつの体なら草木の間を縫って遙か先に進んでいるだろう。

 音を立てないように、慎重に林の奥へ奥へと進んでいく。

 ……おそらく林の中心辺りまで来ただろうか。
 茂みから顔を出すとそこには少し小さいが湖が広がっている。
 そして、すぐ近くには浅瀬に体を(うず)めたドランの姿があった。

 ――こんな時間に水浴びだろうか?

 もし、そうであればわざわざこんな林の中でなくても、敷地内に流れる川で充分なはずだ。

 ……見ていると、やはり様子がおかしい。
 体を洗うためにくねっているいつもの動きではなく、なにか腹をこすりつけるような動き。
 それに息も荒く、青い頬にはここからでもわかるほどに赤くなっている。

「……ふぅ……ふっ……んんっ」

 途切れ途切れの声も響いてくる。
 熱を帯びたという表現がふさわしいその動きは次第に速度を増していく。

 俺はその姿に見とれてしまい動くことが出来ないでいた。
 そうしているうちにドランの息はさらに荒くなり、呼吸は常に口を開け無くてはままならないようだ。
 すると今度は腹部を水面に浮かばせる。

 そこには二つに分かれた大きなペニスがスリットからはみ出していた。
 そして、ドランは己のソレにゆっくりと口を近づけて……くわえた。


 それにしても……
 ……いったいドランはなにをしているのだろうか?

 俺にとってペニスとは小便の時か交尾の時に使うものとしてしか知らない。
 だから今、目の前でドランがなにをしているかなんて知る由もなかった。

 だけど、体は僅かにそれが何かを伝えようとしてくる。
 股間の膨張をもって。

「う、うわ……なんで交尾するわけでもないのにおっきくなってんだ……?」

 二つのペニスをくわえたドランはそれを味わうかのようにしゃぶっている。
 そのたびに、体に走る痙攣を見ているとこちらも少しずつ変な気分になってくる。

 数秒くらい後だろうか、体が一際大きく跳ねると、ドランは近づけたときと同じように、ゆっくりと口をはなした。
 口元にドロりと垂れる精液がとても厭らしく感じられる。

 少しの間、ドランは虚空を見つめていた。
 おそらく、これのためにここに向かってきたのだろう。

 となると、そろそろ先に帰らなくては……

 湖に背を向けて、俺は帰路へと進み始める。

 ――刹那、俺の足下から響く乾いた木の枝の音。

「!! ……そこにだれかいるの?」

 呼び止められ、俺の体は固まった。
 下手に逃げようともドランならすぐに追いついてしまうだろう。

 俺はおとなしく湖を囲う背丈の低い草原に歩みでる。

 雲の裂け目から降り注ぐ月の光の元で、二人は向かい合った。




「それで……、ドランは一体なにやってたんだ?」

 おそらく性に関係することだろうが、残念なことに俺の知識は偏りすぎて役に立たない。

「えっと……もしかして、終わる頃に来たとか?」

「ん、いや最初からいたぞ?」

 あ、顔真っ赤にしてうつむいてる。

「ううぅ、それでも言わせようだなんて……なんて羞恥プレイ」

「え?別にそういうつもりはなかったんだが……」

 顔を真っ赤にしたままこちらをにらみつけてくるドラン

「だって……羞恥プレイはわかるのに自慰を知らないなんて変だもん」

「じ、自慰?」

 それに対して俺は、全く知らない性の知識を吸収しようと質問を続ける。

「なぁ、自慰ってほんとにいったい何なんだ?」

「ううぅ~……ほんとに知らないの……?」

 俺はドランをみながらゆっくりと頷いた。

「えっとね……ボクがさっきやってたことだよ」

「それって……ちんこから精液を出すことか?」

「ちょ、ちょっと! そんな風にストレートに言わないでよぉ~!」

 ドランは顔を背け、団子状に丸めた胴体の中に隠してしまう。
 でも、俺にはまだ疑問が残る。

「なんで、交尾してねぇのに精液が出るんだ?」

「ふぇ?」

 ドランは少々驚いたような表情で顔を再び出した。
 俺はふつうのことを聞いたと思ったんだけどな?

「だ、だって……自分でいじってたんだし……」

「でも、精液って雌んなかにちんこ入れて出すもんじゃねぇのか?」

 俺のやまない疑問符にドランは考え込むかのような表情。
 
「もしかして、ほんとに自慰のこと知らないの?」

「あぁ、だからなんで雌がいないのに精液出してるのか知りたいんだが……」

「交尾は知ってるのに、自慰を知らないなんて……ぼそっ(チャンスかも)

 ドランはさっきの表情とは一変し、少し口元をあげニヤリと笑うと俺に近寄ってくる。

「そっか~、君の元ご主人様のところじゃ交尾のやり方しか教わってこなかったんだね~♪」

「だからさっきからそうだって言ってるじゃねぇか……、もったいぶらねぇではやkむぐっ?!」

 突如口がふさがれた、それもドランの口で。
 蛇系の体には似つかわしくない短くも重厚な舌が俺の口に入ってくるのを感じる。

 口内をゆっくりとなめ回すようなキスに対して、俺は動くことすら出来ず、
 夜の闇の中で音も光りも匂いですらも失って、ただドランという存在だけを感じるのみになった頃にその口づけから解放された。

「っんあ……はぁはぁ……、いきなり交尾のキスなんかしてどうすんだ……」

「交尾のキス? これはねフレンチキスって言ってね、交尾の時じゃなくても好意に値する人にするものだよ」

「好意……?」

「好きってこと♪」

 どこかのイケメンが言ってそうなセリフを投げかけるドラン。
 その言葉とともにドランは二日目の朝のように体にからみつき、俺の体を持ち上げてしまう。

「お、おい……なにしてんだよ……?」

「言ってたでしょ? 自慰を知りたいって……教えてあげるよ
 でも、君の手じゃ出来そうにないし、だから……さ、ボクが代わりにやってあげるね♪」

 ドランは俺の下半身、さらにいうと総排出孔であるスリットを溶かすかのように舐め始める。

「っ! そんなとこ汚いぞ!? 口離せって!!」

「教えてくれって言ったのは君でしょ? 大丈夫、気持ちよくしてあげるから……、ね?」

 気持ちよく……その言葉は、体に巻き付いているドランの胴体から響いてくるかのように俺に染み渡る。
 それは、俺の好奇心を呼び起こすこととなった。

「うん、そうおとなしくしててね……♪」

 幾度と無くスリットに与えられる、ドランの舌と吐息のじんわりとしたもどかしさは、
 わずかに開いていた隙間をこじあけて出てきた俺のペニスにも与えられ始める。

「っ……うぅ……」

「そっか~、出すのは初めてくらいみたいだね~」

 ドランの口元にある俺のペニスは月明かりに照らされて澱んだ黄色いカスがべっとりだった。

「出して洗ったこととか無かったりする?」

「あぁ……地面タイプのせいか、あまり水んなかで洗うとかしたくないからな」

「なんでもタイプのせいにしちゃだめだよ? ちゃんと清潔にしないとね」

「う……わ、わりぃな……」

 生まれてからほとんどと言っていいほど外気にふれることの無かったそこからは独特の強い臭気を発している。
 これが俺の体の中にあったと思うとおぞましく感じられるほどだ。
 しかし、次にドランがとった行動はさらに驚くものだった。

「うわっ……おいドラン! いったいなにやってんだ?!」

 まるで蛇が獲物を飲み込むかのように俺のペニスはドランの口へ消えていく。
 そして、先程まで俺の口を侵食していた舌が、今度はペニスを弄んでいる。

「うん、おいひぃよ(おいしいよ)……」

 再び、ドランの口から出てきた俺のペニスはすっかり綺麗になっていた。

「おい、あんなん口にいたら汚いだろ……」

「そんなことないよ、とっても美味しかったもん。 それに……」

 ドランは体を滑らせて、耳元で囁く。

「ボクみたいな蛇ってね、モグラさんを食べるためにこんな体になったとも言われてるんだよ?」

 言葉の最後に首筋をぺろりと舐められる。
 そして俺の顔を覗き込んでくる。

 今、俺の視界に映るのはコイツの姿だけだ。
 今、俺の体に触れてるのはコイツの胴体だけだ。
 今、俺が聞こえてる音はコイツの声だけだ。
 今、俺の口に残っているのはコイツの唾液だけだ。
 今、俺が嗅いでるのはコイツの匂いだけだ。

 おれは……おれは……コイツに……すべてを……

「じゃあ、早速始めようか♪」

 何もわからなかった、何も感じ取れなかった。
 まるで麻痺しているかのような感覚。
 ハクリュウ種は蛇睨みも舌で舐めるも使えないし、電磁波も俺に通じない。

 それはたった数秒だったのかもしれない。
 それは数分に渡ったかもしれない。
 それは俺の時を粉々に破壊するのは容易かったのだ。

 しびれ、そうしびれだ。
 すべてがまどろみの中のようなのに、なぜか体は終着地点へと導かれていく。
 しびれはいままでも味わった感覚、それは恐怖から、それは恐れから。

 でも今は違った。 そのしびれは全く違うところから俺を蝕んだ。
 言葉でしか知らなかった性の快感が広がっていく感覚。
 まるで、すべてが吸い込まれてしまいそうになったとき、何かが決壊したような感覚が俺を襲った。

「っぁぁあああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

 俺の中でマルマインが爆発したような衝撃、それが初めての射精の感覚。

「っんく、っんく……ぷはっ、いっぱい出たね♪」

 正直答える余裕すらない。
 俺の意識は、夜の闇に飲み込まれるように沈んで――






 ――いくことはなかった。
 スリットに鈍い痛みを感じて、また覚醒状態へと引き戻される。

「まだ、寝るのは早いよ♪
 もうひとつだけ、交尾しか知らなかった君に新しい事を教えてあげるからさ」

 ぼんやりとした視界に捉えたのは、地面に寝かされる自分の総排出孔に突き刺さるドランの尻尾

「なにを……するつもりなんだ……?」

「君は普通の交尾しか知らなかったみたいだけどね……」

「ひうっ!!?」

 ぐりっ、そんな効果音でもなりそうなほどに、ドランの尻尾が押し込まれる。

「男の子にもね、……穴は、あるでしょ?」

 ドランのスリットからは先ほど見えたのと同じ、そそり立つ二本のペニスが存在を誇示していた。

「ここにね、ボクのこれを挿入()れるんだよ……」

 話しながらも、俺の中はクチュクチュと尻尾によって掻き回されていく。
 時折引っかかるごとに、体は甘いしびれに襲われて、再びペニスは大きくなっていく。

「や……めろ……」

「ふふ……感じてるみたいだね……、もうそろそろいいかな……♪」

 ゆっくりと俺の中からしっぽが抜かれていく。
 まるで排泄しているかのような奇妙な快感が体に走る。
 
「さて、おとなしくしててよね……?」

「なんで……こんなことを……」

「なんでって……最初に言ったじゃん♪」

 ふたたび、ドランはキスをしてきた。
 舌が絡み合って、そしてすぐに離れていく簡単なもの。
 だけど、俺はそれに込められた言葉を思い出した。

「もしかして、おまえ……」

「やっと気づいてくれたんだ……そう、君のこと好きだよ」

 それは告白だった。

 月明かりに照らされたその表情は嘘も偽りもなく、まっすぐに俺を見ていた。

「なんで雄の俺なんかに……」

「ボクもわからない、でも、これだけは言える」

 そっと俺の体からドランは離れていく。
 そして、深く息を吸って俺に向かって口を開いた。

「君じゃなきゃ、ダメなんだ」

 世界のすべてが止まったような、そんな感覚。
 まるで、俺とドラン、二人しかいないそんな世界。

 数瞬後、静寂はどこか遠くで鳥ポケモンが羽ばたいた音で途切れた。

「ごめん、変なこと言って……、やっぱり、変だよね、こういうの……」

 ドランの頬からは涙が溢れていく。
 もしかしたら、こいつも新しいこの世界が不安だったのかもしれない。
 そして、一番近くにいた俺のことを……

 それは本当の好きなのではないかもしれない。
 でも、数少ない頼れる存在は、この世界で俺だけ。
 一緒にいたい、その気持ちは本物なのだろう。


 ――俺は項垂れてるドランの口元に、自分の口を重ね合わせた。

 今度は俺が舌を入れ、味わうかのようにかき回す。

 そのうちにドランからも舌を入れてくる。

 お互いに染まり合い、混じり合っていく。

 月の光は、俺たちを切り取るかのように、雲を使って湖だけを照らしていた。


 お互いに息が続かなくなってきた頃、ようやく口を離す。

「変なんかじゃないさ、だって……パートナーだろ?」

 ドランは俺の体にゆっくりと絡みついてくる。
 俺はそれに応えるようにハグをし返した。
 そして、耳元に囁いた。

「……続き、教えてくれよ……」

「うん……♪」

 月は雲に隠れた。
 暗闇に包まれ、世界はまた二人だけを閉じ込める。

 周りの目から隠すように湖すらも、水面の煌きは光を消した。
 それでも、その闇の中でお互いを感じていた。
 お互いの鼓動が、気持ちが見えているかのように。




「今度は君の番だよ♪」

 目の前にはドランが横たわっている。
 そして、俺はその上に跨っている。

 その体長からは想像できないほど華奢な体は乱暴に扱えば壊れてしまいそうで
 でも、それゆえに感じさせる美しさのようなものがあった。

「えっと、最初は舐めるんだよな?」

「うん」

 指示に従って、俺はドランの腹部に舌を滑らせた。
 生殖器が収まるスリットの少し下、カイリューに進化するために、既に総排出孔から分化したアナルに舌を差し込む。

「ん、少し酸っぱいな」

「そ、そんなこと言わないでよっ……」

 さっき俺がされたように、ゆっくりとかき回し、ほぐしていく。
 気づけば目の前には、三度目のご対面となるドランのペニスがそそり立っていた。

 ドランの視線も伏せ目がちだがこちらに向いており、なにか言いたげである。

「んっ、こんぐらいで解すのはいいか?」

「う、うん……」

 俺はふと思い出す。
 俺が食事をしているときにもドランの様子がおかしかったことを。

 もしかして……

「あとは次の準備だな」

「えっ?もう挿入れるだけなのに……?」

 少し前にずれて、ドランのペニスにむしゃぶりつく。

「ふぁ!? な、なに!?」

 そして、そのまま体勢が少し辛いが、俺のペニスをドランの中へとすすめる。
 半分ほどで入らなくなってしまったものの、俺は質問してみる。

「ちゅぱ……気持ちいか、ドラン?」

 こんなことを言っているが、実は俺も充分にイキそうな状態だ。
 流石にさっきイってから時間は経つものの、未だに敏感な状態。
 それに、今まで経験したことのないペニスへの感触である。

 しかし、ドランはそれ以上の快感を味わってるという顔だ。

 恍惚とした表情に、よだれさえもたらして言葉にならない喘ぎ声を出している。

「じゃあ……動かすぞ」

 引き抜くときに、ドランの肉壁は俺のペニスを強く締め付けてくる。
 絶対にはなさない、そうドランが言っているかのように。

 そして押し込む時は歓迎の締め付けか、ペニスを飲み込むような動き。
 繰り返すごとに、深く、より深くへと誘われていく。

「あ……あぁ……きもちぃよぉ……」

「んぐ……おい……全部入ったぞ」

 気づけば、完全にくっつくほどにペニスは吸い込まれていた。
 無理な体勢のまま、しゃぶりついていたドランの両方のペニスからも先走りが溢れ、射精が近いことを教えている。

 そして、俺も限界はそこまで来ている。
 俺はペニスから口を離して、体をずらした。

「ドラン……」

「…………なに?」

「本気で行く」

「……へっ?」

 幼い頃、学習装置をつけたままケンタに育てや付近に何度も連れて行かれた結果、学習した事

「あなをほる!!」

「んああぁぁ!?」

 技を性技として転用する荒技だが、ある程度の効果はあるみたいだ。

「ま、まって!! ボク、おかしくなっちゃうー!」

「じゃあ、……んっ、次で、決めるぞっ……」

 もちろん、反動は大きく射精をギリギリでこらえる。
 最後の一撃を決めるために。

「うおぉぉ! ドリルライナァーー!!」

「みゃあああああぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 俺の中から精子が、精液が、俺の証が流れ出していく。

 鼓動に合わせてドランの中は強く締め付けてくる。

 そして、その震えがドランのペニスに達した時、白い水柱が二本、目の前に吹き出した。

 まるでスローモーションのように、その飛び出した白濁は
 俺の目の前を真っ白に染めていった。

 俺の体を染めたドランの精液と、ドランの中を染めた俺の精液

 目のところから精液を擦りとる俺の姿を見てドランは、これでお互いにマーキング完了だね♪ と笑った。

「今日は新しい経験ができた、ドラン教えてくれてありがとな」

「それだけじゃないよ、ボクにとっては一生のパートナーと一緒になれた。
 ボクは、今とても幸せだよ♪」


 いつしか雲は晴れた、鮮やかな月光は二人の世界を鮮やかにしていた。
 そして、いつの間にか息苦しい熱帯夜から、少し肌寒い風の吹く秋の夜へと変わっていた。

 しかし、二人の間だけは終わることもない熱帯夜のままだった。



「……そういえば、君の名前ってなんだっけ?」

「って今更かよ……、まぁ名乗ってなかった俺も悪いけどさ……」

「パートナーなんだから、名前知っとかないとね~♪」

「俺の名前はな……、聞いて笑うなよ?」

「そんな~、名前なんかで笑わないって~」

「そうか、えっと……俺の名前はな――」


 



「試合終了!! 勝者、カノコタウンのタケル!!」

「おっしゃーー!!やっと勝てたー!!」

「ふふー♪ついに5かいめでまけちゃったかー」*3

 建物の中だというのに、かなり高い場所に位置するバトルフィールド。
 ここソウリュウジムでは、たった今タケルとジムリーダーアイリスの勝負に決着が付いたところだ。

「それにしてもさー、さいごのにひきってこうかんでもらったこたちだよね?」

「はい、そうですが?」

「あのこたち、ふつうはよそのトレーナーのいうことなんてきかないくらいつよいこたちだよ?
 でも、あのこたちはあなたのいうことをちゃんときいてた……これってすごいことだよ!!」

「そうだったんですか……」

 タケルのモンスターボールの中では隣同士、俺とドランが壁をはさんでハイタッチ。
 最後に俺のドリルライナーを急所にあてて、沈めてきたところだ。

「だからアイリスねー!とってもつよかったきみのことぜったいにわすれない!」

 そして俺の新たな主人、タケルはレジェンドバッジを受け取った。
 これで俺も、ドランも、正式に彼に仕えることになる。



 俺はついに、本当に生きていく場所を見つけたのだ。

 ジムを出て、ポケモンセンターに向かうタケル。
 今日の空はどこまでも青かった。

 きっともうすぐ冬だろう。
 長かった夏と違って、秋は予感だが10日もない気がする。

 冬になったら、寒さに弱い俺たちは抱き合ってあったまりたいな。
 そんな考えも頭を通り過ぎていった。

 そんな平和で、ちょっと違う毎日はこれからも続いていくだろう。



      ~END~

































「にしても、どうにかしてこのドリュウズの名前変えらんないかなー……」

 タケルは今ポケモンセンターでレポートを纏めている。
 しかもカウンターの前で。

「姓名判断に出しても最高の名前とか言われちゃうし……」

 そしてタケルは俺の名前に文句があるらしい。
 当然だ、俺も違う名前がいいと思っている。

「まったく……、尖ったツノと口先だからってスネヲはないだろ、スネヲは……」

 ごもっともだ、だからといって俺のモンスターボールを指で弾くのは止めて欲しいのだが。

「あっ、そうだ。 入学式までの書類書いてこないと……」

 そういうとタケルは立ったまままどろみ始めた。

「お客さん……、カウンターのど真ん中でレポート纏めるのはまだしも
 こっち向いたままうたた寝するのはやめていただけませんか……?」

 ジョーイさんに注意されてもポケーっとしたまま立ち尽くすタケル。
 ポケモンセンターではこれが普通のタケルだと仲間のエンブオーに聞いたが、これはなにがどうなっているんだろうか。

 この分じゃ不思議な日々も続いていくらしいな……。



 本日はこちらのページにお越しいただき誠にありがとうございます。
 今回は大会出展作品としてこちらを上げたものの、見事にボロボロ
 二票になって票が減るという事態は結構やばいと感じております。
 もっと、まとまった作品書きたいなぁ……とか。

 さてさて、今回票をくださった三名の方にお礼を申し上げるとともに
 感想に答えさせていただきます。


ゲームの世界と現実の世界をうまく繋げた斬新で面白い作品でした。 (2013/04/01(月) 00:20)

 さらに、ほかの世界とも繋がって、大変カオスになっております。


「モグラさんを食べるためにこんな身体になった」で吹きましたwあなをほる→ドリルライナーもお見事www (2013/04/04(木) 01:56)

 蛇について調べてたら、一部の蛇についてそのような説明があったので早速使用、
 結果的にネタに走りすぎた気がします。


いい作品ですね~ (2013/04/10(水) 20:38)

 お読みいただきありがとうございました。



 さて、いつもならここでクラムのお部屋にて裏話を投稿するのですが
 実は、諸事情でリアルの方で小説を執筆中でして、如何せん期限がある分
 リアルを優先しなければならないのです。
 ちなみに、その作品自体ポケモン二次なので、もしかしたら乗っけるかもしれません。
 ともかく、お待ちいただいている方(いないと思うけど)には大変ご迷惑をおかけします。

 次回更新は相当後になると思います。
 またいつかお会いしましょう!

お名前:
  • >>ラティアス様
    お褒めの言葉ありがとうございます。
    ゲームの中と現実のリンクがこの作品のテーマなので、
    そこをみていただけるのは嬉しい限りです。
    ――チャボ 2013-04-27 (土) 21:34:02
  • ゲームのなかを上手く表現していてとても面白かったです。
    ――ラティアス ? 2013-04-21 (日) 22:44:18

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*1 ホドモエのバトル会場
*2 サンヨウジムリーダー
*3 アイリスの表記は原作に基づいて平仮名表記にしております

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Last-modified: 2013-04-17 (水) 00:00:00
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