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肉体改造の果てに

/肉体改造の果てに

ワンクッション! 


肉体改造(ボディメイク)の果てに 




 前方の観客席から、リングを見つめる。その上で今まさに行われているプロレスの試合。丁度ヒールがベビーフェイスを鮮やかなフォールで沈め、試合終了のゴングがけたたましく鳴らされた場面で観客の歓声が重なり、会場がウオォォォと鳴り響く。俺も全力で吼えてそれに参加した。リングアナウンサーからマイクを奪い取り、リングロープの支柱に足をかけてヒールが煽り立てる。
「見たかお前らァ! 俺様にかかりゃこんなヒーロー面したやつをコテンパンにするたぁわけねぇぜ! やられたくなきゃ素直にひれ伏せ愚民ども!!! ガッハッハッハ!!!」
 豪快な笑い声が会場に響き渡り、再び沸き起こる歓声。俺は目を輝かせ、全力で前足を振って鼓舞した。
「そうはさせるか!」
 颯爽とリングに現れた大物ベビーフェイスの姿に、会場は一層沸き立った。
「お前の好きにはさせないぞ!」
「小癪な! かかってきやがれ!」
 試合開始のゴングが鳴った。両者とも派手に技を繰り出しては、徐々に高く跳び上がるコイキングのように観客のテンションが上がっていく。力を込めて握った前足に汗を滲ませながら、俺はその試合を見守る。ヒールの得意技の延髄斬りやベビーフェイスの得意技のラリアットを始め、時には反則ギリギリの技やリングアウト等のラフプレーも飛び交う中、試合を決したのはベビーフェイスの華麗なブレーンバスターだった。ヒールはリングマットに打ち付けられ、歯を食いしばって立ち上がろうとするも、うつ伏せにされてドンメルクラッチを食らう。ヒールが苦し気に顔を歪めてマットを叩き、試合終了のゴングが鳴り響く。その瞬間、会場の熱気は最高潮を迎えた。
 周りが全力で叫ぶ中、俺は先程とは裏腹に全く吼えず、リングに突っ伏したヒールをじっと見つめていた。鮮やかなやられ方だった。ベビーフェイスなんて眼中にない。ただ彼をじっと見つめていた。汗だくになって肩で息をしている。その顔が微かに笑ったのを、俺の目は見逃さなかった。

 全ての試合が終了していまだ興奮冷めやらぬ中、多くのファンに混じって、関係者出入り口の前で出待ちする俺。この目なら中の様子は一目瞭然だが、見えない楽しみをあえて味わっていた。警備の目が光って物々しい中、関係者出入り口の扉が開く。最初に現れたのは、やられ役のベビーフェイス。この時点でもファンからは大きな声が上がる。次いでヒールの姿が見えるや、黄色い歓声が一際大きくなった。控えめながらもパフォーマンスをすると大盛り上がり。彼のギラついた目が、俺を捕らえた。ニカッと牙を見せて、ワイルドな笑みを向けた。これには思わず俺も胸が高鳴り、口元が緩んだ。後に現れた大物ベビーフェイスに対する割れんばかりの歓声など気にも留めなかった。


 帰宅する頃にはすっかり宵闇が迫っていた。
「お疲れさん」
 先に家に入った者に、さり気なく言葉をかけた。そこにいたのは、先程までリングに立っていた文字通りのヒールポケモン、ガオガエン。
「ありがとな」
 牙を見せて笑う彼は相変わらず豪快ではあるが、あの極悪ぶりは影を潜めていた。ヒールって柄じゃねぇよ、は彼の常套文句。なのにちゃんとヒールを務められているのは素直にすごいし尊敬する。
「今日の試合、どうだった?」
「技にキレがあったし、見てて胸が躍った。やられ方もきれいだったし、さすが俺の愛方だな!」
「嬉しいこと言ってくれるぜ、レントラー!」
 愛しのガオガエンに抱き締められ、ごわっとした毛とその下のムキムキな筋肉の感触、汗臭さと熱々の体温が一気に伝わる。ひとえに彼と出会って結ばれたのも、俺が必死になってライ〇ップで肉体改造を成功したお陰だ。プロレスには詳しくなかったが、存在は知っていたヒールから見初められるとは思いもせず、当時は夢かと疑った程だった。付き合ってからは筋肉への情熱に意気投合して、試合で見せる姿を見てからは全力で支えになると心に決め、一緒に暮らすようになってから充実した日々を送っている。
「お前に一目惚れして正解だったって、心から思ってる。お前がいて、筋トレや食事とか色々サポートしてくれるおかげで、俺様は輝ける力をもらってるって実感してるんだぜ」
 俺の筋肉質な背中を、赤く大きな掌がわしわし撫でた。俺の喉がゴロゴロ鳴ってしまう。
「俺も、お前と出会って、そばで支えて試合を見守って、ヒールという役回りの美学を知れたし、それを追い求める姿がかっこよくて、悪役(ヒール)だけど俺にとっては英雄(ヒーロー)になった。そんなお前に惚れたからこそ、全力で支えられるんだ」
 見上げた先には精悍な顔つきの愛方。それが徐々に近づき、口が重なる。ざらつく舌同士が戯れ、絡み合う。息苦しさが昂りを一層促す。夢中になって接吻を続ける。突如彼の方から口を離す。口元を結ぶ糸が灯りを拾って煌めいた。
「もっと近くに感じてぇよ……」
 俺に見せ付ける、彼の立派なチンコ。ギンギンにそそり立って、俺と同じく細かな突起だらけの先端は、既にぬるぬるしている。
「俺もだ……」
 やおら立ち上がり、俺も興奮した証拠を見せ付ける。長い夜が、俺たちを待ちかねていた。

 ――体力のある屈強な雄猫同士だと、必然的に愛に満ち溢れたナイトゲームが長時間繰り広げられる。この夜も俺たちは雌雄入れ替わり立ち替わりで交尾に興じ、その痕跡たる白くべとつく大量の雄汁に汚れた体を寄せ合っていた。どうせ翌日はオフだから問題ない。
 彼が攻めだとレスラーだけあって射精の威力が高く、俺の中で雄々しく果てると、チンコのデカさと体が持ち上がる錯覚のする強烈な躍動、痛みを伴う精の射出を味わえる。彼の屈強ぶりを強く実感できるので、痛いけど幸せな気分になる。一方で俺が攻めだと、四足ならではの覆い被さった重量感と筋肉、気持ちよかったり射精したりすると発してしまう電流を大層気に入っているようだ。それに締まりも強く、抜き挿しだけでもガクガク足が震えてしまう。この通り体の相性はかなりいいから、満足感の高い交尾を楽しめている。
 引き締まった尻が雄の営みで汚れているのを厭わず、うつ伏せになって大きな背中を見せるガオガエン。先の行為で活躍した彼の腰に、前足の爪を少し出して押し当て、電気を流す。
「うあ~そこぉ~……」
 彼は喉を鳴らしつつ、脱力している。このときばかりは精悍な強面が情けない程に緩んでいる。そんな顔を曝け出すのも、俺を心から信頼しているからに違いない。試合時のかっこよさとの大きなギャップがとっても愛おしい。
「お前の電気マッサージは最高だぜぇ~……」
 自ずとにんまりしてしまう。彼が所属するプロダクションからも公認を受けた、爪先から電気を流してコミュニケーションを取る、ルクシオの習性を最大限に利用したこのマッサージ。この技術もライ〇ップにて置かれていた本を読んだり、インストラクターから話を聞いたり実践を交えたりして会得したものだ。いつか手に職をと思ってはいたが、こんなところで役に立つとは思いもしなかった。施術の際に触れる盛り上がった筋肉、精液の匂いに混じって香る雄のフェロモンに、俺もうっとりメロメロ状態になる。未明の静かな、幸せのひとときだった。



 見上げた赤と黄色の目に映る建物。充実した日々を送る今も、俺は日帰りコースで定期的にここに通っている。受付のライチュウに会員証を見せると、個室に通された。しばらく待っていると、ノックの後にやおら開く扉。

「お待たせ。さあ、始めようか」
 変わらぬ明るい笑顔で入って来たせいれいポケモン。その手にはトレーニングウェアと、忌々しいはずだった金属製のあれがあった。
「キミもホントに物好きだよな。あんなに嫌ってたこれを着けなきゃ気が済まないってよ」
「そう焼き付けたのはどこの誰だと思ってるんですか……」
 不満に頬を膨らませる。その元凶となったシングレット姿のマッチョなインストラクターが、慣れた手つきで股間に装着する。それからトレーニングウェアを着せてもらった。体形の変化に応じてリサイズしてもらったウェアによって、俺の胸から下半身にかけての誇らしいボディラインが強調される。例のあれはぱっと見わからない。
「よし、ここで手に入れたこの体に、もっと磨きをかけていくぞ!」
 フライゴンはやる気十分。俺もそれに応えてトレーニングに臨んだ。

 肉体に存分に負荷をかけ、汗に濡れたトレーニングウェアをフライゴンに脱がせてもらい、同時に股間を覆う金属を外してもらった。汗臭い体をきれいにすべく、シャワールームに入ってぬるめのお湯を浴びる。体が慣れたら、湯温を少しずつ下げて火照りを冷ました。室内の鏡に映る俺は自慢の立派な鬣が水を含んで垂れ下がり、黒髪のルージュラみたいな様相。さすがにこのまま出るのは恥ずかしいから、体を大きく震わせてありったけの水気を飛ばした。タオルを持ったフライゴンに体を拭いてもらい、ブラシで鬣を整えてもらう。これで一段と雄々しくなったな、と背中を叩かれ、得意げに鼻息を吹いてすました。
 帰る前に個室で一休み。フライゴンも次のトレーニーが来るまで時間があるらしく、俺と一緒にいた。
「ところで、愛方のレスラーさんとはどうなんだ? 最近試合があったんだろ?」
 タオルを首にかけ、俺にマッサージを施しながら尋ねるフライゴン。伴侶ができたことはすぐに伝えたので彼も知っているし、あのガオガエンと知って大層驚いたのも脳裏に焼き付いている。至って順調であることと、負けはしたが魅せられる試合運びをしたことを伝えると、彼は自分のことのように喜びを露にした。
「……感慨深いな。ここに来たときは浮かない表情で覇気が感じられなかったのに、今はこんなに目を輝かせてるんだ。色々不安だったけど、キミを担当してつくづくよかったと思ってるぞ」
「俺の方こそ色々とお世話になったし、今になると感謝しかありません」
 はにかみがちに牙を見せて笑った。
「フライゴンは最近どうっすか?」
 逆に俺から訊いてみると、変わらず楽しい日々を送っているという。その言葉に、内心ほっとする。
 伴侶持ちの先輩として、大げんかしたときの仲直りの仕方とか、気配りのポイントとかを教えてくれたりする一方で、俺の惚気話やちょっとした悩みを聞いてくれたりする。一生物の思い出を作ってくれた相手にもかかわらず、関係が拗れたり疎遠になったりすることなく続いているのは、俺が良縁に恵まれて比較的早く所帯持ちになったことだけじゃなく、仕事だからと割り切れるようになった俺自身も、大人になれたからなんだろう。
 マッサージのお礼として、今度は俺が彼の肩回りや翼の付け根を揉み解す。残念ながら地面タイプだから電気マッサージは効果がないが、それでも彼は心地よさそうにゆっくり呼吸をしている。
「プロレスラーに施術しているだけあって、腕を上げたな」
「ありがとうございます!」
 素直に喜びが溢れ出た。何せ力加減の目標にしていた張本人から褒められたんだ。願わくは彼に電気マッサージを施したいが、みずびたしやまほうのこなみたいな、一時的にタイプを変える技がない限り実現は厳しかった。
「そろそろ時間だぞ」
 フライゴンの声で、ぼんやり考えごとをしていた俺は我に返る。
「今日もありがとうございました! また次回もよろしくお願いします」
「次は四日後だな! オレもキミが来るのを待ってるぞ」
 彼に見送られながら個室を後にして、受付で手続きを終えてからジムを出た。帰ったらガオガエンのトレーニングに付き合うことになっていた。きっと痺れを切らして待っているだろう。鬣を何かに引っ張られているような気がしたが、それを無視して筋トレ中の彼の生き生きした表情を思い浮かべながら、まっすぐ家路についた。

 愛しのレスラーを支えつつも自らの肉体に磨きをかける、まさしく「筋肉が切り開いた」果ての満ち足りた暮らしを謳歌している。これも繰り返しになるが、ひとえにライ〇ップでの苦痛、屈辱を伴う肉体改造の日々を乗り越えた俺へのご褒美だと捉え、一日一日を大切に過ごしていた。




 ――フライゴンがスイッチを取り出して押すと、天井から何かが垂れ下がる。呆然としていると、突如前足を掴まれ、持ち上げられる。それは吊り下げられた輪っかに捕らえられた。
「お、おい! 何を……!?」
 続いて胸の辺りを大きな輪っかが締め付ける。上半身を斜めに持ち上げられ、身動きが取れない。その下にうつ伏せでするりと入るフライゴン。捕らわれたマッチョな肉体から突出した先端が、何かに触れる。わざわざ透視しなくても、それが本来「出口」である場所だと即座にわかった。フライゴンの体が押し付けられ、勝手にすぼまった口をこじ開けて体内(なか)へ挿入っていく。
「うぐるるぅ……!」
 鋭い牙を剥き出してチンコからの強い刺激に耐える。体内ではうねりを持つ肉にぐるっと取り囲まれ、招かれた俺を圧迫と摩擦で喜ばせようと働きかける。いつの間にか根元まで包まれていた。
「なっ、なんでこんなこと、すんだよ……!?」
 呼吸を乱しながらフライゴンに訊いた。彼はふふんと笑う。
「キミは実戦経験(中に出したこと)がなさそうだから、オレがリードした方がいいと思ってな――」


 ハッ!!

 思わず飛び起きる。時計を見ると午後二時半過ぎ。丁度昼寝の時間帯だった。心臓はバクバク高鳴り、毛皮を濡らす寝汗が臭う。まさかと思って下半身に目をやると、案の定チンコはギンギンに硬さを得ていて、射精へ向かうサインである透明な蜜がトロトロ漏れて糸を引く。大息をついて頭を抱えた。
 普段の生活では気にならないはずなのに、忘れた頃にフラッシュバックする、童貞卒業の一幕(一生物の思い出)。頻繁には起きないが、こうなってしまうと筋肉質な体が熱く疼く。幸い今日はガオガエンが仕事の都合で家にいない。誰か来たとしてもカーテンと鍵を閉めて居留守を使えば問題ない。俺は勃起したまま立ち上がり、もそもそと準備する。戸棚の奥から取り出した、柔らかな素材の円柱状の物体。底面に丸い穴が開いているそれを程よい高さに合わせた器具に取り付け、壁際に置いた。生唾を飲み込む。いけないことだとわかっていながら、こうでもしないと治まりはしない。後ろ足で立ち上がり、前足を壁に着いた。そしてチンコを穴に宛がう。ゆっくり前進すると、入口を押しのけて突き進む。先端を締め付けられ、小さく唸る。それでもどんどん沈め込む。目を光らせると、内側の大小の襞を突起だらけの先端がこじ開け、圧迫と摩擦の快感に膨れて中に漏らす卑猥な汁が程よい滑りをもたらしてくれる。
「フライ、ゴン……!」
 呼んではいけないと思うその名を、口にする。程よい冷たさが彼の低い体温と重なる。取り付けたオナホールも、わざわざ透視能力を駆使して最も近い内部構造のものを選び、密かに買ったのだ。本物には及ばずとも、あの瞬間をフィードバックするには十分だった。淫夢ですっかりその気になった性器の全貌も映し出される。射精()してないのは二、三日間で、あのときの二ヶ月弱には程遠いが、このまま俺の遺伝子を搾り出されるには十分な性感の強さだ。チンコが根元までオナホに食われる。それでも先端は最奥に届いていない。
「ううっ……動いて、くれっ……!」
 喘ぎ混じりに絞り出す声。無論オナホが自力で動くわけではないから、自ら腰を前後する。俺の卑猥な突出を無数の襞が舐り、その刺激でチンコが交尾の喜びに電流を発しながら気持ちよく膨らんで、種付けに向けて中を汚す。袋に包まれた二個の大玉からはまだ何も動く気配がないが、フライゴンの尻マンコによってチンコをより立派にさせられたら、黙っているわけにはいかないだろう。もう二度と訪れないあの瞬間を渇望して、マッチョな体が熱を持って雄臭くなるのを感じながら、喘ぎ混じりにオナホ、否、フライゴンを犯し続ける。ガオガエンとまぐわうときとは異なる熱くジンジンした何かを、この行為で感じ取っていた。
「ちくしょう……たまらない……っ!」
 腰の動きに合わせて、ジュプッジュプッと交尾に励んで汚れる雄の音が立つ。雄膣の扱きを受け続けてぬめりを纏ったチンコは、根元まで打ち付けたときの先端の位置で挿入前よりも膨れているのを実感する。股下で揺れ動く重量感が次第に薄れ、黒々とした立派な鈴カステラが、その表面を硬くしつつある。必死に腰を打ち付けて掻き回すマンコから零れた俺の我慢汁が、玉の表面を流れて床に滴る。
「うぐ……! だめだ、俺……これじゃぁ……!」
 背徳感に苛まれつつも、生殖の衝動を抑えることはできない。あの日、雌として振る舞った熱血ながら心優しいせいれいポケモンを脳内に描き、新たな生命の誕生を予感する雄の甘いむず痒さが生まれ始めた性器を、目を光らせて見続ける。俺の熱に温められて馴染んできた体内で激しく凹凸が絡み合うチンコは、その先端が最奥の大きな襞に届きそう。すっかり中を俺で汚して、種付けの準備万端と言わんばかりだ。
「あぁ、気持ちいい……フライゴン……!」
 開いた口から生臭くネバネバした涎を垂らしながら、激しい喘ぎを交えて思い出を作ってくれた者の名を呼んだ。あのときうつ伏せで攻め立てた彼の、流線形な輪郭に隆起した筋肉の角張りが引き立つ背中と、そこに横たえる菱形の大きな翼が、快楽を与えられた俺の劣情を煽り立てる。しきりに漏らせと唆すような脈動の刺激に、口はすぐ噛み締められて牙が剥き出しになる。俺の体内に持ち上がった金玉から、流れてはいけないものが細長い管を通って行くのを捉え、それに合わせて膨れ続けるチンコが奥の襞を突き始める。下半身を汚す粘液でジュポンジュポンと音を立て、発情した雄の強いフェロモンを放ちながら夢中になって、背徳的な交尾を遂げようとする情けないマッチョなレントラーが、ここにいる。
「うあっ! だめだ、おれっ!!」
 口では駄目だと言いながら、それを止めるつもりなど毛頭なかった。脳内のフライゴンが、いつでもキミを受け止める、と火照った笑みを向けている。胸にこみ上げるものを覚えた。あのときと同じように、前立腺は中を白く染めて体積を増やしていく。チンコと前立腺の膨張がシンクロして強烈な快感に襲われるのは、雄として最も誇らしい瞬間が差し迫る証。突起だらけの先端が最奥の襞に打ち勝って押し破り、血管と太い裏筋が隆々に張り出した立派な電磁砲が、発砲を目前にしてフライゴンの中を完全に犯す。膨れ続けてパンパンになった大きな前立腺の、最も脆弱な出口から内圧に負けて濃厚な白が押し出され、太く広がった尿道を疾走する。正気を失う程の強烈な快楽を受けて、帯電した電磁砲はギリギリまで膨れ続け、熱い流れが先端に達して膣内で白い水玉を作った瞬間に最も立派な姿を見せた。
「フライゴッ、グオォォォォォォッ!!!」
 放電しながら雄々しい肉体をわななかせ、あの名を言い切れず無様に吼えた。俺の遺伝子が詰まった白濁を、フライゴンの体内に力強くぶちまける。
 だが所詮はオナホール。精液溜まりはすぐに満たされ、溢れ出して器具や床を白く汚す。その様子とそこから立ち上る刺激的な臭いを感じ取り、精を漏らした快感と後ろめたさが交互に訪れる。狭い空間に容赦なく押し込めようと、徐々に弱まりながらも力強い律動を続けるチンコ。悔しいけど、ガオガエンと交尾するときよりも一発の量は多かった。交尾だけで愛の強さが決まるわけじゃないとわかってはいるけれど……。


 後ろめたい激動が治まり、オナホールからチンコを抜いて前足を壁から離した。重力に負けて垂れる突出した肉から熱が奪われる。座って背を丸め、性器に纏う生命の営みを遂げた証を、ざらつく舌で取り除く。その刺激でまたムクムク大きくなるが、掃除するには好都合だった。味蕾から口全体に広がる苦みとえぐみ、塩気と、控えめながらそれらを(いたずら)に強調する甘み。吐息にもふわりと青臭さが乗った。目に飛び込む、白く駄々洩れるオナホールと、ねっとり滴って床にできた大きな水溜まり。体には、あの熱い疼きが微かに余韻を引いていた。
「情けないな、ホントによ……」
 弱々しく長い溜息をつく。心では割り切っていたつもりでも、この体はまだまだそうではないみたいだ。そういえば雄の恋愛は別名保存、雌の恋愛は上書き保存と、あのジムを紹介したダチが言っていた。気が触れていたあれを恋愛と言うのはどうかと思うが、一生物の思い出にしている時点で切にその通りだと思っている。そもそも、筆下ろしのお膳立てが二ヶ月に及ぶ肉体改造と禁欲じゃ、体にとってあまりに猛烈な代償(インパクト)として染み付いて当然だろうな。


 ……クソッ、結局未練タラタラじゃないか!


 イッシュかぶれのダチなら、こんな俺に対して「Let it go!(諦めな)*1」と喝を入れるだろうが、あいにくあいつもパートナーに恵まれ、その故郷のイッシュ地方へ本当に旅立ってしまったから、しばらく会えない。かといってガオガエンに打ち明けるにはあまりに恥ずかしく、今の満ち足りたと思い込んでいる生活が綻ぶかもしれない恐怖の前では尻込みしてしまう。見た目(ガワ)は雄々しいのに中身が雌々しい自分が本当に情けない。けど今の暮らしを守るには、「思い出」を心の奥底に押し込めて「今」を生き、次はいつ「来る」とも知れない呪いに耐えるしかないんだと思う。今のフライゴンに俺が付け入る余地がないことだけは幸いだった。


 ――カーテン越しの西日が、部屋の奥へと届き始める。いつ彼が帰って来るかもわからない。忌々しく臭う劣情の痕跡を急いで消し始めた。


【作品名】 肉体改造の果てに
【原稿用紙(20×20行)】 25.5(枚)
【総文字数】 8771(字)
【行数】 114(行)
【台詞:地の文】 12:87(%)|1140:7631(字)
【漢字:かな:カナ:他】 37:53:9:0(%)|3286:4669:857:-41(字)







*1 本来の意味合い。「ありのままで」はlet it 「be」。つまりZootopiaでボゴ署長がジュディに言い放ったこれは「お前は警察には向いてないからもう辞めろ」とかなり強い圧をかけている、と個人的には解釈している

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Last-modified: 2022-07-24 (日) 10:32:18
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