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聖戦 集結する仲間たち

/聖戦 集結する仲間たち

南十字


!!注意!!
官能表現が含まれます。
流血や死に関する表現、戦闘描写があります。
駄文です。「そんなのいやだっ!」って人はお戻りください。





「……で、それどうしたの?」
リーフが訝しげな顔をしてフレイの後ろに隠れている青い魚のような姿をしているのか哺乳類型の姿をしているのか判断に難しいポケモンを見て言った。しかもそのポケモンは荒縄によって自由を奪われていたのだったのだ。もしやフレイが変な性癖に目覚めたのかと一瞬心配になるリーフだったが、フレイに至ってそんなことはないだろうと思いなおしフレイの答えを待った。
「食料が保管してあるテントの中で盗み食いしてたところを捕まえたの」
「なんだ、彼女でも連れてきて束縛露出プレイでもやってるのかと思った」
いたって真面目に答えるフレイに横からレイが話を引っ掻きまわす。雄同士の下ネタの会話(一方的にレイが発言したことだが)に縛られているポケモンとリーフは呆れた。
「そ、そそそそ、そんなんじゃないよっ」
口調をラップ調にしながら慌てるフレイ。誰も本気になどしてはいなかったのだがレイをスルーしておきながらリーフに弁解を始めた。私に言われても困るんだけど、とリーフが思いながらも大慌てで弁解するフレイの様に不覚にもかわいいと思ってしまった。

「さてと、いつまでもふざけているわけにもいかないからね……。
 そこの君、名前は?」
話の軌道修正と共に縛られているポケモンの名前を聞くリーフ。疑うことはいやだったがいくつかの質問をしてパルキア連合軍の偵察か、それともただこの辺に住んでいるポケモンなのか、それをはっきりさせなければならなかった。
「私はスプラッシュと申します。  昔の友達はスープと呼んでおりましたが」
そう言うと縛られていながらもぺこりとお辞儀をした。いくら礼儀をわきまえていて態度がなっていたとしてもまだ偵察じゃないかはどうか分からない。リーフも軽く頭を下げると次の質問に移った。
「それで、どこに住んでいるの?」
「今は、どこにも住んでいないんです…。  以前までこのあたりに住んでいました」
つまり家を失くしたということなのか。リーフが首をかしげるとスープは付け足した。
「なんかよく分からない大勢のポケモンたちに踏み荒らされちゃったんです。
 大勢で山を登ってくるからですよ…。まったくもう………」
そう言って俯くスープ。どうやらついこの間あったパルキア連合軍の移動の際に家が巻き込まれてしまったようだ。そこへ丁度よくテントが張ってあって食料も置いてあったからついつい……っていうところが正しいのかな?そんなことを思いながらリーフはスープの方へ向き直る。受け答えから全く不自然な点も見当たらないし先ほどからスープがどんどん表情を暗くしている。これ以上質問するのもかわいそうだと思ったのか、リーフはスープの扱いについて考えた。
「う~ん……。  それじゃあ…とりあえず私の小隊の捕虜ってことでいい?」
「ほ、捕虜!?」
スープが急に怯え始めた。いったい何をされると思ったのであろうか、フレイとレイを交互に見て首をぶんぶんと横に振る。
「い、いやです!それならいっそ殺してください!」
何やら突飛なことを言い出しさらには大粒の涙を流しながら小声でぶつぶつと今までの思い出を自分に向けて語り聞かせているスープを宥めるとリーフは荒縄をほどきながら言った。
「私の目の届く範囲にいてくれればそれでいいの。  要するに、自由なの」
リーフの言葉にきょとんと呆けた表情を見せたスープの頭をリーフは優しくなでる。もともときつく縛られていたわけでもない荒縄おほどき終えると予備用に手渡されていた新世軍の証である青いスカーフを持ってきてスープの尻尾へ巻きつけた。
「じ、自由……ですか?」
「そう。家もなくなっちゃったんでしょ?   ここで寝泊まりするといいよ」
「こ、ここにいてもいいんですか……?  あ、ありがとうございます!」
再び涙を流すスープの涙を自分のスカーフで拭うリーフ。しかし、スープは悲しそうな顔はしておらずとてもうれしそうな顔をしていた。














「………寝れない」
隣ではレイがすぅすぅと気持ちよさげに寝息を立てている。別段環境が悪くて寝苦しいわけじゃない。年頃の雄ならだれでも考えてしまうであろう雌のこと。隣のレイは僕よりも年が上なだけではなく相思相愛の彼女のことをよく話す。彼女もいないで独り悩んでいるフレイにしてみれば羨ましいことこの上ない。
レイの隣にいるとそんなことばかり考えてしまう。フレイはレイを起こさないようにそぉっとテントを出た。山の麓だからかいつも平原で見ていた夜空とは少し違って見えた。星がいつもより輝きを増しているように見えた。手を伸ばせば届いてしまいそうな星や月明りで足元をよく見ながらある場所を目指す。リーフとスープが寝ているであろうテントを横目で見るとなぜか顔が熱くなった。この歳での共同生活はどうにも処理ができないという辛い面があってこんな些細なことでも反応してしまう雄の悲しい性に自然とため息が出た。
一人感傷にでもふけろうかと夜空のよく見える小高い丘につくと意外なことに先客がいた。その先客は……泣いていた。フレイはあわてて彼女のもとへ駆け寄る。彼女が泣くのを見るのは初めてではない分心配になったのだった。
「リーフさん……。大丈夫?」
「……っ。  フレイ?」
涙で潤んでいる目をフレイへと向ける。フレイはリーフの隣に寄り添うように座ると心配そうな面持ちでリーフの顔を覗き込む。リーフはフレイを心配させまいとしたのか目をごしごしと擦りにっこり笑って見せた。その笑顔に心を動かされているフレイに気がつかずにリーフは落ち着いてからフレイにぽつりぽつりと話し始めた。
「ちょっとにいのことを思い出しててね……。心配させてごめん」
「にい?」
聞いたことない単語に疑問を抱いて思わず訊き返すフレイ。訊かなかった方が良かったかも。そんなことを訊いてしまってから思い始めたフレイにリーフはあわてて付け足した。
「にいっていうのは私のお兄ちゃんのこと。名前は翡翠」
「翡翠……どこかで聞いたことがあるような………。  って、有名な剣士だよね?ハクタイ出身の……」
「そう」
リーフの素っ気ない答えにフレイは驚いていた。普段自分のことをあまり話したがらないリーフがただ単に今で言ってこなかったのだから知る由もなかったのだが。
「で……なんで翡翠さんのことで泣いてたの?」
でも、なんでそれでいてなんで泣く理由があるのか。それを思わず口に出してしまってから後悔した。触れられて辛いことなのだから泣いていたんじゃなかったのか。何をやっているんだ僕は。と、自分を叱責しつつも目の前で俯いてしまったリーフを見てさらに焦燥感を募らせる。
「にいは………死んだの。……私の目の前で……ね」
「あ…………。ご、ごめん……」
まさかすでに亡くなっていたとは思わずにとんでもないことを訊いてしまいリーフに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。しかし、それとは反面にフレイの謝罪に静かに首を横に振りせつない笑顔を浮かべてリーフは続けた。
「気にしないで。  ……さびしかったの。私、独りでいるような気がして……」
「リーフさんは独りじゃない」
リーフの言葉にはっきりとフレイは言った。普段の穏やかな口調は捨て去り強く諭すように言った。独りでいるだなんてそんなことを思ってほしくは無かった。
「僕が傍にいる。リーフさんを絶対に守りきって見せる。約束するよ。
 だから、寂しいだなんて感じてほしくない」
フレイの言葉に驚くリーフ。フレイの目は慰みや憐れみなどの感情は混じっていない真剣と覚悟そのものの目つきであった。その瞳がどれほど頼もしく感じたのか。リーフはフレイの腕の中に安心感を求めるかのように顔をうずめ再び溢れ出してきた涙はフレイの腹部の体毛を濡らしていった。
その時に気がついた。前にフレイに抱きつきながら泣いていた時にはわからなかったこの感触の懐かしさ。兄の姿と重なってしまうフレイの姿。全く違う姿を持つはずなのに温かさは兄と同じように感じた。以前、無意識のうちにフレイに抱きついてしまったのはこのせいなのかもしれないと思った。
泣きじゃくるリーフの頭をそっとなでるフレイ。相当辛かったのだとフレイでも分かった。そんなリーフを守りたい。それは初めて同じ戦場に出向いたときに心に決めていたことでもあった。初めから惹かれていた。異性としても同じポケモンとしても。リーフの小隊に所属することのできた幸運をどれだけ喜んだことか懐かしく思った。
「……落ち着いた?」
フレイはリーフを撫でる手を止めることなくリーフにそう訊いた。リーフが力なく頷くのを確認すると今度はフレイからリーフを抱きしめた。フレイの突然の行為に驚いたリーフは思わず顔を上げる。フレイは優しく微笑んでいた。その表情は兄のそれと何ら変わりもなかったように思えた。そんな風に見えたフレイはそっと気恥かしげに言った。
「僕がお兄ちゃんの代わり、っていうのは………無理があるかな?」
リーフは元気良く首を横に振りフレイの首に前足をまわした。既に涙は乾き始めており屈託のない笑顔をフレイに見せるのだった。その笑顔は今まで見てきた笑顔の中で最高のもののようにフレイは感じた。 自分の愛する者が自分を頼りにしてくれている、笑ってくれている。それだけでうれしかった。






ひとしきりの甘い時間が流れたと思うとフレイはじっと抱いていた前足を離しリーフを見つめた。端整な顔立ちをしているリーフの顔は本当に軍に所属している小隊長なのかと疑いたくなってしまう風貌であった。どんな雄も魅了してしまうかもしれない雌が真夜中、フレイの目の前にいると言うだけでフレイを興奮させるには十分だった。
しかし、理性というのは時に厄介なもの。多くの生物は本能の中で生きる中ポケモンだけがもつ考える力。それがフレイの中でこれから先を想像しフレイの感情を静めようとする。フレイはリーフにこの気持ちを告白したかった。容姿だけでなく性格も何もかも好きだった。フレイがはじめて恋という気持ちを味あわせてくれたこの雌に自分の気持ちを伝えたかった。だが理性はそれを許さずに次々とプロポーズに失敗した後の惨めなフレイを揺らぐ心に囁きかける。

じっと俯き心の中で葛藤を続けるフレイ。リーフは急に俯き始めたフレイを心配したのか声をかけようたと口を開いたときにさっと顔を上げたフレイを見て開いた口を思わず閉じてしまった。フレイの顔は真剣なものそのものだったがどことなくその瞳は揺らいでいた。
「リーフさん……」
話を切り出したフレイの声は震えていた。それが緊張のためなのか恐怖ゆえのものなのかはリーフにはわからなかった。ほんの少しためらった後フレイは再び口を開いた。
「その……えっと………。
 ぼ、僕………、  …リ、リーフさんのことが………好きですっ!」
なぜか最後の方にだけ力を込めて行ってしまったフレイ。フレイの言葉に顔を赤くするリーフ。フレイはリーフを正面から見つめた。どんな答えが来ようとも揺るがないようにと。しかし、リーフの心の中で出た答えはとても複雑なものだった。リーフはそれを口に出そうと必死に言葉を探していた。
「えっと……、フレイ…?」
「は、はい……」
リーフはとてもフレイに申し訳ないと思った。今、大事な気持ちを打ち明けてくれたフレイにこんなことを言っていいのかと。しかし、リーフはすでに決めていた。
「フレイの気持ち、確かに受け取ったよ。   でもね、私の気持ちを伝えるのはこの戦争が終わってから……。
 だから………」
そう言うと一息入れて言った。
「あなたも生き残って」
そう言った。力強く。はっきりと。それがリーフの願いであった。リーフもフレイが好きでないわけではなかった。しかし、フレイと結ばれる前にリーフにはやることがあった。
「うん…ぅ……っ!?」
曖昧な答えに困っているフレイにリーフは軽く口づけをする。リーフはすぐ離すつもりだったがフレイに抱き寄せられて軽い口づけのはずが濃厚なキスへと変わっていった。フレイの舌がリーフのほんの少し開いた唇の間から口内に入り込みリーフの舌にフレイの舌が触れあう。
リーフは正直ここまでフレイが積極的だとは思わずに今の流れに身を任せる他に手段がなかった。それどころか、キスによって興奮してきてしまったのか鼓動が速くなり体が熱くなっている自分自身に心の中で悪態をついていた。
抱きよせていただけのフレイが徐々にリーフに体重をかけているということに気がついたのはリーフの意識が半ば飛びそうになっている時であった。未だに濃厚なキスは続きリーフは自分がどうにかなってしまいそうなのを薄々感じ取っていた。そして目を閉じかけた瞬間にフレイの体重が一気にかかった。
「きゃっ!」
口内に舌が入れられたままリーフは小さく悲鳴を上げた。フレイに押し倒されてしまった。あまり背の高くない植物の上に仰向けという無防備な状態をフレイに曝け出している。今現在の状況を考えるとかなりまずい状況に陥っていることをリーフは把握した。しかしリーフはなぜ今の状況がまずいのかいまいちよく理解はできてなかった。フレイに体をゆだねてもきっとひどい仕打ちはしないだろうしフレイのことは好きだ。でなければキスもできなかった。1匹で考え込んでいるとフレイがリーフの胸へ顔を押しあてた。フレイのような長毛ではないために温かくは無いのだろうがその分毛の下に隠されているものはよくわかってしまうはずだ。
「リーフさん…。ここ、やわらかいね」
胸に頬ずりしているフレイを見てリーフは真っ赤になった。自慢できるほどの大きさではないのをリーフは分かっていたのだがこうも幸せそうな表情をされると逆に恥ずかしくなってきてしまうもの。リーフはそっぽを向いて対処することしかできなかった。
「ふぁっ!?」
そっぽを向いたのをいいことにフレイは体の向きを変えリーフの恥丘のあたりを撫でまわし始めた。リーフがあわてて向き直ると顔のすぐ近くには長く、太く雄らしい匂いを漂わせるフレイの一物がフレイの股間から伸びていた。リーフはそれを見た途端顔がこわばった。ただでさえフレイの方が体が大きいのにこんなのはいるわけがない。そう思っていると自分が入れられることを望んでいるのかと感じ何も考えないように目を閉じた。
しかしリーフは閉じた目をすぐに開けることとなった。フレイがリーフの秘所に舌を這わせたのだった。びくんっと体がはね反射的に口から甘い声が漏れる。本当は抵抗しなければいけないとわかっていながらも心のどこかでフレイにこのまま好きにされたいと願うリーフがいるのを何となく感じ取ってしまい抵抗できなかった。そもそもフレイに体重をかけられ敏感なところを責められている中から抜けだせるほどリーフは強くはなかった。
フレイは初めてここまで深く触れた雌の体にすっかり興奮しきっていた。リーフが明確に体を委ねてきたわけではないとわかっていながらもフレイはこの行為を止めることはできなかった。初めて触れる雌の秘所をじっと眺め、舌を這わせ、前足を使って広げたりもした。リーフのものはなかなかきれいなもので外から見ると桜色の小さな割れ目がちょこんとあるだけ。しかし、中はかなり発達しているようで前足で広げたときに思わず感嘆の声を漏らしてしまうほどであった。
フレイはリーフの秘所を前足で広げたまま鼻を押しあてる。雌の魅力的な匂いを放つ愛液が鼻先をしっとりと濡らす。その匂いと目の前の光景でさらにフレイの雄の象徴は固くなっていく。そっとリーフの様子をうかがうとかたく目と口を閉じ、今の状況に耐えているかのように思われた。このまま、最後まで。フレイの本能が彼の心にそう語りかけるとフレイは素早く体の向きを変えるとリーフと正面から向かい合うかのように覆い被さった。
既にフレイの一物からは先走りが溢れ出しリーフの秘所をさらに濡らしていく。このまま繋がりたいという気持ちを懸命に抑えつけ荒い息遣いを整えてフレイはリーフに訊いた。
「……いくよ?リーフさん……」






リーフは許可も拒絶もしなかった。ただただ目を瞑り震えるのみであった。フレイはリーフの頬を舐めると前足で一物を押さえリーフの秘所にその亀頭を埋めた。
「あっ……」
リーフが声を漏らすのとほぼ同時にフレイは堪え切れなくなったのかリーフの中へその猛り立った一物を突きさしたのだった。 瞬間、リーフの下腹部を襲った鋭い痛み。それが全身に広がるのと同じに全身の毛が逆立つのをリーフは感じた。
「あっ!  あぁぁッ………んぅっ!?」
フレイはリーフが大声で叫びそうになったのを察したのかリーフの口を前足でふさいだ。必死に発音できるはずのない声を出そうとフレイの前足の隙間から息を漏らすもそれは声にはならずフレイには届かなかった。
瞳を潤ませたリーフの荒い呼吸を感じながらフレイはこれ以上動かす気にはなれずにいた。何とも強引な方法で貫いてしまった自分に嫌悪感を覚え少し前の自分を思い切り殴りたいと後悔していた。
リーフと目を合わせるのがとても気まずくフレイはリーフから顔をそむけた。抜いてあげた方がいいのだろうかと悩み始めていた。しかし、そう簡単に欲望という生物の生きるための本能にさらえるはずもなく抜くために腰を後ろへ引いても体がリーフの中を欲しているのか再び膣内を突いてしまう。その前後運動は次第に早くなりフレイが理性を捨てて腰を振りだしたのは悩み始めてからそう時間はたっていないころだった。

リーフは困惑しきっていた。恋愛感情をそこまで強く抱いているわけでもないフレイに初めてを半ば無理やり奪われた上に中をかき回され、乱れ切った姿を曝け出しているというのに嫌な気持ちが湧き上がってはこないのだった。むしろ喜んでしまっている自分がいることに気がついて余計に自分が分からなくなっていた。
リーフは次第にそんなことすらも考えられなくなり何度も何度もひいては押し寄せてくる快感を感じフレイにされるがままでありたいと思うほどだった。  もっとも、この時リーフも一緒になって腰を動かしていたのに気が付いていたのはフレイだけだったのだが。

「んぅっ!  んぅぅ~っ…!」
フレイは未だにリーフの口を塞いだままで傍から見れば立派な強姦に見えるほどであった。今、前足をどければ部隊の兵士が起きだしてくるのも確かであったがこの激しい運動の中で口で息ができないのはリーフにとってつらいものであった。
それを知る由もなくフレイはリーフの中を貪るかのように腰の動きをはやめ何度も何度もついたのだった。リーフの中はとても熱かった。ひょっとしたら自分の放熱時よりも熱いのではないかとフレイが一瞬疑ったくらいであった。

そんな2匹の行為もそろそろ終わりを告げようとしていた。フレイの表情に余裕がなくなって来た。フレイの一物から放たれようとしているものを必死にフレイは堪えながらなるべくリーフと一つでいたいと強く思っていた。
「うぅっ……。もう…ダメかも………っ」
フレイが言い終えるか言い終えないかのうちにリーフの中にフレイの熱い子種を注ぎ込んだ。どくどくとフレイの一物が震えるたびにリーフの中へ精液を流し込んでいった。フレイよりも一回りほど小さいリーフの体にその量は多すぎたのかリーフの下腹部は膨れ上がり結合部から行き場のなくなった精液があふれ出した。
フレイがゆっくりと一物を抜くと秘所から少量の血と精液が混ざり合った液体が逆流し流れてきた。それがリーフの寝転がっていたあたりの草を濡らすのを見るとフレイはリーフの横に倒れるようにして寝転んだ。もう立っているのも体力の限界が近く無理であるほどにつかれていた。フレイがよく見るとすでにリーフは少し乱れた寝息を立てていた。
フレイはリーフの横に寄り添うと重くなったまぶたを閉じたのだった。






「あ~ぁ、お盛んなこって」
テントの隙間から顔を出して一部始終を目撃してしまったレイはため息をついた。
「俺も早く帰ってユウとやりてぇな~………」
そう言うとリーフの姿がユウと重なって見えたような気がして急いで顔を横へ振った。そのまま高ぶる気持ちを静めようとテントの中で横になると目を瞑った。







「おいっ!リーフ!起きろぉっ!」
乱暴に体を揺すられ眠りから覚めたリーフはリーフの顔を覗き込むようにして焦っているレイの顔を見てきょとんとしていた。そんな呆けた様子の隊長を見てレイはため息をつくと言った。
「ディアルガが麓でテンガン山に攻め入ろうとしているパルキア連合軍の対策を立て始めている。
 ディアルガからの使いが来た時に隊長が熟睡じゃあ面目が立たないだろ。ほら、顔洗いに行くぞ」
そう言っておもむろに前足を掴まれてリーフはレイに起こされた。立ち上がると同時に気だるさが一気にリーフを襲ってきた。このまま寝てしまえるのなら丸1日は眠れてしまいそうなほど疲れ切っていたリーフはふらふらと右に傾き左によろけながらレイの後について行った。歩いている最中ずっと下腹部に違和感を感じていたのも重なって自分の足で転んだりと今日のリーフはどことなく変だと兵士たちは疑問に思った。
事情を知っているフレイとレイは特に何も言うことなくいつも通りリーフと接していたがどことなく3匹ともぎこちないのであった。
そんななか、朝食を食べ終えると同時にディアルガからの使者がリーフたちの駐屯する地へやって来た。生真面目そうな表情をしているユキメノコを迎えるとユキメノコはのんびりすることもなく落ち着きはらった声でリーフたちにディアルガから任された役をきいた。
「えー。リーフ小隊には前線に出て大いにその力をふるってもらいます。
 総大将のゲンガーさんの言うことをしっかり聞いて新世軍に貢献してもらいますよ」
そう言い終えるとともにフレイとレイの顔はみるみると青ざめていった。こんな状態のリーフを連れていくだなんてたまったもんじゃないと2匹は思っていた。足を引っ張られる分にはいくらでもかまわないのだがリーフを守りながら敵地で戦うことに関しては2匹とも自信は全くなかった。
そんな2匹の表情を不思議そうな顔をしてユキメノコが見ていたが他の部隊にも伝えなければならないことがあるようで特に気に留めることもなく去っていった。





そして特に対策を立てる間もなくテンガン山の自然が作り出した洞窟の中へとリーフ小隊は送りこまれてしまったのだった。流石に戦場ではふらふらとよろけてたりはしていなかったのだがいまいち技に切れがなくテンポが悪いとレイは横目でリーフの準備運動を見ていて思った。
「リーフ、体調がおもわしくないなら後ろで休んでた方がいいぞ~」
「うん、そうだよ。無理して怪我でもしたら困るからね?」
レイとフレイがリーフに後方で構えていてほしかったのだが半ば諦めた状態でリーフにそう伝えた。
「ううん。隊長なのに後ろで縮こまってなんかいられないよ。今日も前に出るからね」
そう言って笑顔を見せたリーフだったがその笑顔がどことなくやつれているようにレイとフレイには見えて仕方がなかったのだった。
直にゲンガーの指示でいくつかの部隊に分かれて入り組んだテンガン山の中へと進んでいったのだが………
「結局この小隊だけにねぇ…」
レイがため息をつくと分かれ道のまえで嫌そうな顔をした。最初はゲンガー率いる大部隊だったもののテンガン山の中の入り組んだ地形によっていくつも部隊を分けて進んでいったところリーフ小隊は先ほど全く面識のない小隊とも別れ、たった一つだけの部隊で先に進まねばならないのだった。
「……しかたないよ。心細いけどいくしかないでしょ」
リーフが暗闇の中進もうとするのを見てレイが体に電気をまとわせその光が微妙に放電する時の明かりを頼りにリーフ小隊を導いていった。
常に周りの音に気を配っていた彼らはこの音の反響する洞窟の中で騒がしい音がしていないのを感じると自然と安心感に包まれてしまうのだった。いくら明かりがあるとはいえ暗闇の中、敵と戦うのはなんとも恐ろしいものがあるのだった。
そんな中、洞窟の奥から聞こえてきた獣の咆哮。ただ威嚇の時とは何かが違う空気の振動を察しレイが耳をそば立てると空気の振動が直接脳に刺激をもたらしたかのように頭はきりきりと痛みぐらぐらと視界が揺れ足がふらついた。 めまいが収まるまでのしばらくの間なるべく風景を見ないようにと目を閉じていたレイが苛立たしげに言った。
「ちっ…。ただの威嚇じゃないな……、こりゃあバークアウトだな。厄介な技使いやがって……」
無意識のうちに相手の神経に恐怖を植え付け攻撃を弱化させる技。自分の足がすくんだのに気がついてレイはため息をつき前を見た。
「あ、あれ……?」
そこにはいたはずの姿が消えていた。目をこすりもう一度前を向いたときにレイは事の重大さを思い知らされた。
「リーフ!リーフがいない!」
「なんだって!」
フレイがふらつく足を無理やり動かしてレイの先へと進んでいく。そこには微かに匂う若葉の香りが空しく残っているだけだった。








(う……あれ?)
リーフは暗い洞窟の中で目を覚ました。足が全く動かせなくなっており口には布をかませてあった。
(うぅっ……。確かレイたちと洞窟の中を進んでて……。ポケモンの鳴き声聞いてたらふらふらしちゃって……
 その時殴られて気を失って………)
今までの記憶をたどっていって自分の身が敵の中に落ちていることに気がついたとき暗闇の中から爪と地面がこすれる音、体毛が砂を撫でる音が複数聞こえリーフはいよいよ震えだした。死の足音が自分の身へと近寄ってくるのを感じぎゅっと目を瞑った。
目の前にありありとわかるポケモンの気配。リーフは目を開けるのが怖かった。そのままお互い無言を保っていたが直に目の前のポケモンが乱暴にリーフのスカーフを手繰り寄せた。
「おぉ~。兵を捕まえて人質かなんかにしようかと思ってたけど、あんたは隊長さんかぁ~♪」
言い終えると同時にかまされていた布が目の前のポケモンによって斬られたのかはらりと地面へと落ちる。リーフはすぐに目を開けた。目の前でケタケタ笑っているのは全身黒い体毛に覆われ目や口の端、体毛の先の方はくすんだ赤色をしている狐のような姿をしたポケモンだった。その後ろにはいろんな種類のポケモンが並んでいた。
リーフの目の前にいるポケモンはしばらく品のない笑いを続けた後にそのポケモンは意地悪く言った。
「それじゃあ人質にするのは後回しだね…。ちょっと顔借りるよ♪」
そう言い終えるが早いかの内に目の前のポケモンはみるみる形を変えるとリーフそっくりの姿形となったのだった。これには流石のリーフも驚きを隠せなかった。水を覗き込んでいるのではないかと思うほどそっくりのリーフが目の前にいたのだった。
今目の前で起こっていることの整理もつかないうちに後ろに控えていた兵が歩み寄り目の前のポケモンに言った。
「アークァ様、敵のブースター、サンダースがこの近辺を嗅ぎまわっておりますが……」
「フレイ…?レイ?」
「なるほど隊長さんの配下ってわけだ♪」
にやりと薄気味悪い笑みを浮かべたリーフの姿をしたアークァは2匹の名前を繰り返しつぶやいていた。リーフはしまったと真っ青な顔になって口をつぐんだ。もうどうしていいのかもわからずに半泣きになっている。そんなリーフの顔を覗き込んだアークァは囁くように言った。
「泣いちゃだめだよ~♪   涙はあたしがあんたを人質として使うまで取っておくんだ。その時に思いきり泣き叫ぶがいいさ」
再び意地の悪い笑いをリーフに聞かせるとアークァと呼ばれたポケモンは悠々と暗闇の中へと戻っていった。







「あ、リーフ!」
レイが歓喜の声を上げたのは言うまでもない。応援を要請するか諦めて帰ろうかの2たくに迫られてフレイが泣き出しそうになっているのを一生懸命宥めている最中にリーフが暗闇の中からよろよろと戻って来たのだから。2匹はリーフに駆け寄って再会を喜び合った。
「いや~。もう駄目じゃないかって思ってたよ。リーフはすごいな~」
レイがリーフと喜び合っているのを見てフレイは訝しげな表情を浮かべながらもとりあえずリーフを労った。リーフの姿をしたアークァはことがうまく進みすぎて必死にその意地の悪い笑い声を我慢しなければならなかった。内心大爆笑していたのは言うまでもない。
レイが本体と合流しようとリーフのスカーフを引こうとした時、フレイはレイを突き飛ばした。
「うわっ!  なにすんだフレイ!」
いきなり突き飛ばされて派手に転げたレイは怒気を露わにしてフレイにどなった。しかしフレイはそんなレイを無視するとリーフに向き直った。
「やっぱり……変だよ!   お前はいったい誰だ!」
アークァに向けてフレイはそうどなりつけた。レイは仰天してフレイを見た。目の前のリーフがリーフじゃなかったらいったい何なんだと言いたげな表情を浮かべフレイをなだめようとしたところリーフは涙目になって答えた。
「なんで。私はリーフよ…。ずっとそばにいた私の顔を忘れたの?」
「うるさい!お前みたいな得体のしれないやつがリーフさんの真似をするなぁぁぁっ!!」
リーフの答えを聞くや否や間髪いれずにフレイがリーフに向けて赤々とした炎を吹き付けた。レイはあっけにとられるしかなかった。ここまで怒り声を荒げたフレイを見たこともなかった。声にもならない悲鳴と炎の燃え盛る音が洞窟に響いた。
レイはリーフが避けていることを祈って炎を見つめたがどうにもそう言った様子がない。それにレイはその身で感じたことがある。フレイの吐いた炎がどれだけ的確に相手に吸い込まれていくのかを。レイですら避けるか避けられないか分からない炎をリーフが避けられるはずがない。レイが観念して俯こうとした時に炎の中から何者かが飛び出してきた。
「ちぃっ。  試し撃ちのバークアウトのおかげで助かったよっ……」
体中の体毛をちりぢりにして炎の中から飛び出してきたのはリーフの姿とは似てもつかない黒い狐の姿であった。
「ゾ、ゾロアーク!」
レイが目を丸くして相手を見た。名前を叫ばれた途端にアークァは一目散に逃げ出した。
「追いかけるよレイ!  きっと先にリーフさんがいるはずだよっ!」
「わかってらぃっ!」
辺りを照らすためにフレイは炎をまといながら、レイは電撃を迸らせながらアークァを追って2匹は稲妻のように走った。ちりぢりに焦げた結わえてあったはずの体毛は振りほどかれ焦げ臭いにおいをまき散らしながら懸命に逃げるアークァ。フレイとレイを振り切る手段をずる賢いことを今までやって来たその頭を使って考えていたが後ろから迫る2つの恐怖、焼かれた体の痛みに特になにも思いつかずに自分の小隊の待つところへまっすぐ向かってしまったのだ。
奇跡的にフレイとレイに追いつかれなかった。ほんの少しだけ開けた洞窟の部屋まで逃げ込んだアークァは大声で味方にどなった。
「おいっ!あんたたち! 隊長さんを早く人質にでも何でもとりないっ!!」
「はい?  ……っぐぅっ!」
リーフによろうとした黒い影に向けて間髪いれずにレイが電磁波を放つ。フレイはアークァが動けていないのを確認するとリーフに寄ろうとするポケモンの影に向けて突っ込み普段は隠してある爪をめいっぱいに出すと同時に足の先に炎を纏わせる。後足に力を入れると大きく飛び上がり炎によりさらに殺傷力の高めた爪を容赦なく敵へと振りおろした。体毛を濡らしていく敵のポケモンの返り血を炎で一気に蒸発させると再度飛び上がりよろけ怯えているポケモンたちへ尻尾を大きく振り横へとなぎ払った。
「はぁぁあああっ!  Thunder Vortex!」
フレイの後に続きレイがどこで覚えてきたのか、なかなかいい発音の異国語でそう叫ぶと四肢でしっかり大地を踏み電撃を身にまとわせた。さらに多くの電撃を体の外へと放出をしていき直にレイの放出していた電撃は流れを作り渦のようにレイの周囲を回り出した。レイ自身にもかなりの負担を要する分その電撃の威力は計り知れないものであった。少しでも空気中の塵の間を火花を立てて流れる電撃に触れた者は悲鳴を上げる暇すらなくショックで倒れるのだった。
鮮血が熱せられ蒸発した匂い、皮膚が焼け爛れる音と匂い。炎による高温と電撃による轟音が入り乱れ絶え間なくに悲鳴が響く。正直、命の保証などできない程の暴れようであった。特にフレイは無我夢中で敵を斬っては焼き体をぶつけては尻尾で薙ぎ払った。
リーフはこの間ずっと目を閉じ耐えていた。本当は耳も塞いでいたかったのだが前足が縛られている以上嫌でも音は聞こえてきてしまう。そして鼻を突く悪臭。辺りの湿気をどんどん奪い去っていき毛が逆立つかのような高温でピリピリとした空気。ああ、これが戦場なのだとリーフは実感した。血と泥が混ざりあって恐怖と戦慄がごちゃ混ぜに絡み合う。リーフはただただ震えることしかできなかった。非力な雌は地面に突っ伏しているだけで震えてしまうのだとリーフは己を嘲った。そして音が止むのを必死に祈った。戦いが終わるのを必死に待ち続けたのだった…。




リーフが震えているうちに気がついたら戦いの音は止んでいた。2つの足音がこちらへ向かっているのを感じた。しかしリーフはそちらへ視線を移せなかった。右の頬は涙でぐしょぐしょに濡れているのを見せたくなかったからかもしれない。ふわふわの体毛がリーフの背中を撫でたと思ったら前足と後脚を縛られていた縄が切れていた。自由になった前足を軽く動かすとふらつきながらも立ち上がった。

「さ、歩ける?」
フレイの優しい声が聞こえてきた。それに混じってフレイの体毛からは血のにおいがきつく漂って来た。仕方がないことなのだとリーフは自分に言い聞かせるとフレイの手を借りてよろけながらもレイの方へと寄った。
「リーフ、平気か?」
レイの質問に軽く頷くと血だまりの中にいるレイが敵のポケモンの腕やら首に手を置いているのを見た。
「……安心しろ。誰も死んじゃいない」
レイがそう言うと血を軽く体毛から飛ばしもと来た道へ引き返そうと光を放って辺りを明るく照らした。フレイはリーフがしっかりとした足取りで歩いているのを見て安心したのかリーフの後ろからついていくことにした。レイを先頭に地面にある焼け焦げた跡をたどって小隊を置いてきてしまったところまで戻っていくのだった。
少し開けたところに出るとリーフの小隊を見つけたわけだが………
「う、うそぉっ?」
レイが見たのはみんなきれいに伸びているリーフ小隊の兵たちであった。先ほどの戦いのように流血などで無理やり意識を飛ばしたような様子は無く急所を強打して意識を飛ばしたかのようであった。

「ふふんっ。ぬるいぬるい♪」
「それには同感~」
「む~。手ごたえがなぁ………」
唖然としているレイたちに3匹のポケモンの話し声が聞こえてきた。暗闇の中から6つの赤い目が見えたのと同時に暗闇の中から1匹のポケモンが姿を現し言った。
「お、この部隊の隊長かな?」
暗闇から姿を現したのは3つの頭を持ち右の腕で銀のタクトをリズムに乗せて振っているドラゴンだった。右腕に赤いスカーフが巻かれているのを見る限り敵であることに違いないようだ。レイが目の前のドラゴンを見るなり「げ、凶暴ポケモンサザンドラだ……」となかなか失礼なことを呟いた。
「ここの部隊の隊長と勝負したい。 ここの隊長は誰?」
おもむろにサザンドラというらしい種族名のポケモンが言った。どうやらレイの失礼な言葉は聞こえていなかったようでそう言うと3匹をそれぞれ眺めていた。ドラゴンの後ろからは2匹のポケモンが前へと進み出た。2匹はカイリューとフライゴンであった。2匹ともグダグダと前に出た。
「フォルテ、スフォルツァ。  私の勝負には手を出さないでよ?」
サザンドラが後の2匹のポケモンの名前を呼ぶと念を押すように行った。フォルテと呼ばれていたフライゴンはため息をつくと言った。
「手を出さなくてもいつもだんちょが壊滅させちゃうじゃん」
「まあそうだけどね♪  さ、隊長さんはでないの?」
そう言われるとリーフが黙ってサザンドラの前へと歩み出た。レイは止めようかと考えたがどうせリーフは言い出したら聞かないだろうと思い黙っていた。リーフはそのままかがむといつでも飛びあがれるように構えた。
「ふふ、リーフィアねぇ……。   まあいいや。
 私はパルキア連合軍所属亜空楽団最高指揮者兼攻撃隊長、ミヤビ」
何度か噛みそうになりながらもミヤビと名乗ったサザンドラはそう言った。そしてリーフに向けてタクトを突きつけた。何の変哲もないただのタクトなのでそれを武器にしようとしているわけではなさそうであったが。
「私はリーフ。新世軍小隊長のリーフよ」
「リーフ、ね。  私に敵うかなっ?」
そう言うと同時に戦いの火蓋は切って落とされた。タクトをフォルテに渡すと右腕の口から龍のエネルギーを凝縮した青紫色の光線がリーフに向かって吐き出される。リーフはそれを軽くかわしたが地面に当たった光線の威力は凄まじく砂煙と共に強い風がリーフを襲った踏ん張らなければ飛ばされてしまいそうなほど強い風が吹き止むとミヤビはリーフに向けて突進していた。特にポケモンに備えられている不思議な力を駆使することのない体当たり。しかし体の大きなポケモンが力を温存しながら繰り出す攻撃手段としては威力、素早さともに申し分ないものであった。
だが当たらなければ意味がないのはポケモンの持つ技と変わらない。リーフはミヤビに向かって飛ぶとすれ違いざまに脇腹を斬りつけ無防備な背中にアイアンテールを叩きこんだのだった。ミヤビの体が地面にたたきつけられると地面が大きく揺れたのを様子を見ていたフレイとレイは感じた。一筋縄ではいかないと軽く起き上がって背中をぽんぽんと叩いているミヤビを見ていたリーフも感じた。
「なかなかやるね…。でもこの程度じゃ楽団の指揮者は倒れないよっ♪」
そう言ってリーフに屈託のない笑顔を見せるミヤビにつられて口元をすこしだけ釣り上げるリーフだった。凶悪と新緑の真剣勝負は始まったばかりであった。







リーフはすぐに後ろへ飛びミヤビとの間合いを開ける。ミヤビのように近遠距離両方とも対応してるのならその心配はないだろうがリーフは根っからの近距離戦を得意とする種族だ。実践的な遠距離として使えるのは葉っぱカッターぐらいしか種族がら覚えないうえにリーフは翡翠が剣士としてやっていたのもあって遠距離技は何一つ覚えていないのだった。そんなリーフに取って勝負を左右するのは間合いである。いかに自分の有利な間合いを維持するかに勝負の勝ち負けがかかわってくる。いつでも敵の懐へ飛べる位置に、しかし敵の繰り出す攻撃を確認し避け切れることのできる位置というのは保つのが難しい。翡翠はそのことをよく知っていたのかリーフに間合いのことを強く叩き込んでいた。
ミヤビの出方をうかがっているリーフに向かって痺れを切らしたのかミヤビが先手を打つ。先ほどの出来事で近距離は危ないと思ったのか大きな口を開けると再び龍のエネルギーを吹きかけた。避けられると踏んでいたリーフだったが先ほどよりも威力と速度が速くなっているような気がし慌てて横へ跳ぶ。しかし宙に浮いたリーフを地面にエネルギーがぶつかった時の衝撃が強風となって襲った。そのまま宙を飛ばされたリーフは洞窟のごつごつとした壁に脇腹を打ち付けるとゴロゴロと壁から転げ落ちた。地面に達する前に何とか受け身をとり態勢を立て直すも体中の擦り傷と脇腹が痛んだ。
しかしいつまでもふらふらしているわけにはいかなかった。きっとミヤビの方へと視線を戻すと痛みを意識の外に追いやり勝負に全神経を集中させた。ミヤビはそんなリーフの姿に感心しつつも3発目の龍の波動を放とうとしていた。ミヤビが力をため始めているのを見てリーフはミヤビの懐へと飛びかかった。飛びかかるにしては少し遠かったが届かない位置ではなかった。腹部に重く硬化させた尻尾を宙返りの勢いをつけて当てる。リーフの上で息が抜けるかのような音がしたのを確認すると重力により地べたへ足がつく前に体重をかけてのシザークロスを腹部へと放った。
「っっっっ!!?」
ざりざりざりと見かけによらず刃などに強い皮膚をしている腹部をリーフの葉が斬っていく。そこまで深い傷にはなっていないものの目の前のミヤビの痛がりようは尋常ではなかった。  ただ、痛がっているのにもかかわらず決して弱音や悲鳴を上げることなく再び構えるミヤビを見て少なからず恐怖のようなものを抱いた。
傍から手も出せずにいたフレイはレイにそっと聞いた。
「ねぇ…。確かあのポケモンって悪タイプだよね…?  リーフさんのシザークロスが効いていないの?」
不安そうに尋ねてくるフレイにレイは静かに首を振ってこたえた。
「ああ、確かに悪タイプだけどな。シザークロスが効いてないわけじゃない。フレイが水ぶっかけられた時みてえな苦痛があるにきまってるだろ。
 ……ありゃあ多分『龍の傲慢(プライド)』を守っている一族なんだろ」
「龍の傲慢…?」
「ああ。  名前の通りだよ。龍としてのプライドを守ろうってやつだよ。
 これを守っている一族は悲鳴を上げたり泣いたり弱音を吐くことを禁じられてるんだ」
「ふぅん……。なかなか大変な決まりだなぁ…」
フレイは苦しがっているミヤビを見てそう言った。
「だけどリーフも警戒している。 自分の技が効いているかどうかが分からないからじゃないからかな?」
「ん~。確かに………」
リーフも警戒して先ほどから動きらしい動きを見せていない。敵を威圧する分にはミヤビの虚勢も有効であったようだ。

そして、再び2匹はお互いの力を尽くして戦いあった。振りかざされる刃を避け、噛み砕こうと向けられる牙をかわす。お互いがお互いの技の限りを出し満身傷だらけになってもまだ対峙していた。ここまでの名勝負を今まで誰が見たことがあったであろうか。戦闘経験の長いレイでさえもうっかり見とれてしまうほどだった。お互いの技が絡み合っては弾き返されまた形を変えて全く性質の違う技が混じりあう。レイはまるで2匹が舞を舞っているかのように見えた。芸術さながらのこの名勝負をいつまでも見てみたいという気分に駆られるのだった。

「……っ。  今日はここまで」
洞窟の奥から法螺貝のようなものの音が聞こえたときにミヤビはそう言ってリーフに向けて構えるのをやめた。リーフも構えを解くと悠々と立ち去ろうとするミヤビに声をかけようとした。なんて声をかけていいのかは分からなかった。ただ、ここまで勝負が楽しいと感じられたのはいつ以来だったかリーフは少なからず感動しミヤビに感謝していた。
「あ……そうだ」
リーフが口を開きかけたところでミヤビが急に振り返って言った。
「……またいつか勝負しよ♪」
「…うんっ!」
リーフはそう微笑んで答えるとフォルテとスフォルツァと共に引き上げていくミヤビを見送った。

「い、いたたたたたた………」
戦闘が終わり自軍の引き上げの合図を耳にした途端に先ほどの戦闘で受けた傷の痛みがじわじわと戻って来た。既に倒れていた兵たちも意識を取り戻していたのかよろよろとよろけるリーフを助けながらテンガン山の洞窟を後にしたのだった。
確かに傷は痛いがそれでもリーフの心は晴れ晴れとしていた。ミヤビという好敵手の存在に少なからず喜んでいたのだった。あんなに楽しい勝負はいつ以来だろうと目を瞑り昔を思い出した………。



【創世歴5000年 6月】
テンガン山 洞窟にてパルキア連合軍と交戦
死者 0匹










「ちがう、そうじゃないってば。こうやって葉で効率よく斬るんだ」
「え~。難しいよにぃ……」


森が焼かれるずっと前。まだ私が進化して間もなかったころ。こうやって翡翠は私によく剣士としての動きを教えてくれた。それは歩き方から敵を斬りつけるときの葉の角度まで細かくがみがみと言われた。
でも、成功すれば褒めてくれたし戦闘技術は雌でも必須とするものだったから特に兄との稽古が嫌なわけではなかった。むしろ兄が自分の身一つで体得したはずの技術を教えてもらえるだけで自分は幸せなのだとずっと言い聞かせてきた。家族に雌に厳しい指導をするもんじゃないと何度も止められてはいたが当の私がこの通りだったから兄の稽古を受け続けていた。
兄が死んだあの日も稽古の帰りだった。その日は兄と剣士としての真剣勝負を初めてした日であった。

「いいか、真剣勝負は1対1が基本だからな?  集団で相手を倒すのは恥だと覚えておくんだぞ…?」
「うん。わかった。  ……て言うかそれはもう何度も聞いたよ?」
「………と、とにかく、今日は、リーフ。本気でかかってこい。俺も本気でお前を斬るからな」

その時兄の放ったオーラというか雰囲気に少なからず私は怖気づいたのを覚えている。私も負けじと兄と目を合わせた。目を合わせて兄の目の奥の何かが燃えたと思った瞬間、勝負は始まった。お互いの間合いを一気に詰め体力をリーフブレードで削ぎあい隙あらば剣の舞を舞いながらシザークロスを間一髪で避け撓らせたアイアンテール同士の鍔迫り合いをはじめ、そして、再び間合いを開ける。それを何度も何度も繰り返した。互いに切り傷が体にでき慣れない傷に私はふらついた。その隙を翡翠は逃さなかった。シザークロスを放たれると直感で分かった。
しかし、何の悪戯か。木々の間から吹きぬけた突風がふらつく私の体を横へ押した。翡翠のシザークロスは外れ地面に十字の形をした傷をつけた。翡翠が攻撃を外したすきに私は振り向きざまにリーフブレードを振った。それが翡翠の体にあたったのはただ単に運が良かっただけなのだと思う。剣の舞を舞い、さらに切れ味の鋭くなった刃の威力は計り知れなかった。翡翠はその場に倒れた。
それから、木の実を使って治療して、足りなくなった文の木の実を集めていた時に起きたあの惨劇…………







「………?」
ふと起きてみると辺りは暗かった。洞窟の中でミヤビと闘っていて………それから寝ちゃったのだろうか。どうやらテントの中らしく隣からはポケモンの寝息が聞こえる。多分スープのものだと思う。そういえば、逃げずに律儀に陣の中にいたんだと考えるとどうやら住処がないのは本当のことらしい。このまま一緒の隊にいられるのかどうか、まだディアルガにも報告してないし。ま、いっか。今はもうひと眠りさせてもらおうかな………。



しかし、その次の日からディアルガにスープのことを報告しようともそうはいかなくなってきたのだった。国境、というとなかなか語弊があるように思えるが両軍が対峙していることでできる軍事的な境界線の間で小競り合いが始まったのだ。おもにパルキア連合軍の兵が洞窟を抜けてか、または洞窟を抜ける必要のない翼などの類を持っていたりエスパーを操る者たちと新世軍の国境防衛隊としてはたらいているいくつかの隊と交戦というには規模の小さい戦闘行為が続いたのだった。それはもちろん両軍の境界線の警備を任されているリーフ小隊も例外ではなかった。
初めの数日は本当に小さな小競り合いでポケモンの集落で見られるような喧嘩と大して変りなかったのだったが洞窟でミヤビと闘ってから丁度5日目。テンガン山山頂からミヤビがリーフ小隊に向かって突っ込んできたのだった。ミヤビの横には洞窟の中でもつきそっていたカイリューのスフォルツァとフライゴンのフォルテがいたがそれ以外の部隊の者たちはいないようだった。
しかし何とも妙でミヤビはリーフに対決を申し出ると他の者へ手を出すことを許さなかった。リーフはもともと剣士としての真剣勝負をやっているつもりであったからそこのところは何ら違和感もないのだが。  どうやらミヤビもリーフとの勝負を楽しんでいるようであった。お互い勝負の間に流れる緊張感を楽しみお互いの技を激しく繰り出す。リーフ小隊の兵、フォルテやスフォルツァ、フレイとレイも例外ではなく誰しもその激しくも美しい勝負を楽しんだ。
しかし役割を忘れたわけではないリーフは結局1日だけ戦闘から抜けてディアルガの元へ向かったのだった。ディアルガは案外あっさりとスープを軍に入れてしまうことを決めると予備のスカーフをいくつか渡したのだった。そして自陣に帰ってくると、なかなかの惨敗ようであった。
リーフが辛勝惜敗を繰り返していたはずのミヤビにあろうことかフレイとレイが2匹そろって敗れてしまったのだ。当然リーフ小隊のポケモンたちもきれいに伸びていて食料庫として使っていたテントの中をのぞくとモモンの実が入っていた籠がなくなっており楽譜に「籠だけ後で返しにくるよ」とだけ書かれた物が落ちていた。
流石にこれには苦笑するしかなかった。レイとフレイが今までにない落ち込みようでリーフの前に申し訳なさそうに頭を下げるのを見てリーフは思わず笑ってしまった。後からリーフがフレイに話を聞いてみると炎も電撃もまるで効かずにうろたえたところを地震で2匹とも力尽きてしまったのだそうだ。
そして、その日の夜。スープに青いスカーフを渡すとリーフ小隊に所属することが決まったのだと伝えた。捕虜というスープの身分をどうにかしたくてリーフが勝手にそうしたのだから少なからずリーフは不安を感じていた。スープの望まない選択だったらどうしようと。 しかし、そんなリーフの考えも知らずにスープはとび跳ねながら喜んだ。戦闘はあまりやらないから強いかわからないですけど、よろしくお願いします! という明るくはきはきした声がリーフ小隊のキャンプに響いた。



それからさらに数日。小競り合いは日に日に激化していった。リーフとミヤビが戦っている最中に乱入してくる敵部隊まで現れたのだ。それはどこの警備隊でも同じらしく敗走してしまった部隊まで出てきたのだという。これ以上境界線をぐらつかせておくのは危険とクレセリアは判断したのか国境へと兵士を送ったのだった。それはちょうど6月も中旬の午前中の出来事であった。
今日も新緑の刃と黒龍の牙がぶつかりあう。昨日惜しいところで負けてしまったリーフは今日こそはと昨日の惜敗を取り返そうと躍起になっていた。基本的に戦っている最中というものは周りが見えなくなる。全神経を相手の動きに集中させ己の体をどう動かすべきかを脳内でシュミレートする。
そのせいで、彼女たちは気が付くことができなかった。青いスカーフを巻いた者達がこの場に駆けつけてきたことに。



「どけっ!」
荒々しくリーフ小隊の兵をどけいきなり割り込んできたのはゴウカザルであった。彼が率いる中隊の一部の兵士はその背についてゆく。ゴウカザルが観衆の最も前まで進み出たところでミヤビはいきなり後ろに飛びのいた。いきなりの後退に驚いたリーフはしばらくしてミヤビが自分を見ていないことに気が付いた。さっと後ろを振り向くとそこにはゴウカザルと数匹のポケモンたちが構えていた。
ゴウカザルは特にリーフに声をかけることもせずに両の手を腰の高さに持っていきそこに橙色をしたエネルギーを作り始めた。何をする気ですか。そう言いかけたリーフの言葉をエネルギー固まった格闘タイプの力を帯びた高威力の球体、気合球が発射されたときの音がかき消した。リーフの横を通り抜けたそれはミヤビへ向かって飛んでいく。ミヤビは落ち着き払って6つの翼を動かし気合球をよける。

「やだなぁ…。お楽しみを邪魔されたくは無いんだけど……っ」
陽気に話すミヤビの頬には冷や汗がたれる。ゴウカザル、ルカリオ3匹、コジョンド2匹。これは何かの嫌がらせかと唇を軽くかんだ。どう考えても部が悪い。尻尾巻いて逃げたいのも山々だがあいにくそれは龍の傲慢が赦してはいないことの一つ。
フォルテとスフォルツァを頼ろうかと思い、後ろを向こうかとしているうちに後ろに控えていたルカリオが前へと進み出た。やだなぁ…。しっかり準備してたわけね…っ。

ルカリオたちはそれぞれ手の内側に膨れ上がった今にも爆発しそうな波導を3つに分かちミヤビに向けてはなった。標的を逃がすことなくどこまでも執拗に追いかけてくる格闘の技である波導弾が計9つ。万事休すかミヤビは固くと目をつぶった。その様子をリーフはただただ見ていることしか出来なかった。いや、リーフだけではなかった。フォルテもスフォルツァもフレイもレイもそしてリーフ小隊の兵たちも動くことは出来なかった。


波動弾が今にも当たる、その瞬間、ミヤビは目を見開いた。ミヤビ自身腹を括ってはいたがこのままやすやすと倒されるのはおもしろくないと急に体をひねった。3つの先行して飛んでいた波導弾は標的が急に動いたのに対応しきれずミヤビに当たることなく後ろへ飛んでいく。にやりと笑ったミヤビは次の波導弾を視認しようと目線をゴウカザルのほうへ向けようとした。
だが、薄ら笑いを浮かべていたはずのミヤビの顔が一気に強張った。3つをよけるのに夢中で次の波導弾を確認することをしなかった自分を今更になって責めた。鋭い痛みが走った右肩を抑え、力なく地べたへとおちてゆくミヤビ。しかし、放たれた波導弾は非情にミヤビの体へぶつかっては爆音を上げる。脇腹、左腕、首、右頬、胸、下腹部そして背中に3つの波導弾を受け、ついにミヤビは倒れた。悲鳴を上げたくとも上げられないほどいっぺんに痛めつけられそのまま前のめりに倒れたのだった。朦朧とした意識の中2つの足音が聞こえた。若葉のにおいがほのかに香りながら何かを必死に言っていた。しかしそれは聞き取ることも出来なかった。少しだけ目を開けるとリーフがこちらに向かって涙を流しながら何かを言っている。ミヤビは少しだけ微笑んだ。正直痛みで微笑めていたかはミヤビ自身分からなかったが。そして、リーフの後ろにいたゴウカザルは無表情のまま拳を振り上げた。ここで終わるのだとミヤビはそっと目を閉じた。

そして腹部への重く鈍い痛みを最後にミヤビは意識を手放した……。







「………ぅ…ぁ……」
ミヤビは再び覚ますことのないと覚悟していた目を開けた。そこは薄暗いいかにも独房といった雰囲気の場所であった。あれからミヤビはどうなったのかというと結局スフォルツァとフォルテも悪戦苦闘し敗走したのだった。それからゴウカザルとリーフがどちらの隊でミヤビを監視するかで言いあった後にゴウカザルの方は拠点を持たない部隊であったのとリーフではミヤビの監視には適していないだろうと判断され全く別の部隊がミヤビを監視していた。
両腕を縛られごつごつとしている岩肌に翼がこすれて何とも不愉快だったミヤビは起きたばかりにもかかわらず派手に技を放とうと力をため始めた。   しかし、いくら力をためようとも全く龍の力が一か所に集約できない。困惑しきっているミヤビの前に独房の入口に置かれていた大きな岩をどけて2匹のポケモンが入って来た。
「よぉ。指揮者さん。気分はどーだい?」
「…………っ」
目の前で意地の悪い笑みを浮かべたカイリキーは懸命に技を出そうともがくミヤビに向けて言った。
「技、でないのかい?」
「あたりまえだよねー。  霊界の布をずっと口元に当てておいてあげたんだからー」
カイリキーの後ろにいたマニューラが顔を出すとそう言った。ミヤビは一瞬相手の言っている言葉の意味が分からなかったがすぐに納得した。霊界の布はゴーストタイプの成長を促すものだがそれ以外のポケモンにとっては力の源である精神力を奪っていくものだと聞いたことがあった。まさかこんな使い方をしてくるとは思ってもいなかったが。

「さてと……、じゃあそろそろお楽しみの時間かな…?」
「せいぜいいい声でなくんだねー」
カイリキーが入口からどけてあった岩を元へ戻す。入口から差し込んでいた光は岩によって防がれ再び薄暗く多少息苦しさを感じる空間へと戻った。ミヤビは自然と息が荒くなっていた。心臓がバクバク脈打ち本能が危険を告げる。このままではいけない。そう思いながらも成す術なく目の前に迫ってくるカイリキー達を見ていることしかできなかった。
これから殺される。数多くの仲間たちの顔が浮かんでは消え仲間と奏でた音楽が頭の中で蘇る。そして最後に思い浮かべたのはリーフの顔。最期まで好敵手でいてくれた彼女にお礼を言いたかった。ミヤビは多くの無念を感じながら目を瞑った。


カイリキーのてとマニューラの鉤爪がミヤビの腹部に触れた。ミヤビが死を実感するには充分すぎる冷たさであった………。






しかし、ミヤビの予想は大きく外れていた。殺されるのだと自分に言い聞かせていたミヤビにとってまぎれもない不意打ち。カイリキーのごつごつとした指がミヤビの尻尾の付け根にある細い筋をなぞったのだった。
「っ!」
ミヤビは大きく体を震わせると目を見開いた。カイリキーの顔は少し紅潮して厭らしい笑みを浮かべている。間違いない。襲われる。 いやだ、こんなところで好き放題に弄ばれて殺されるのか。ミヤビは力の入らない腕を動かし必死に自分を縛りあげている忌々しい縄を斬ろうとしていた。その間カイリキーの気持ち悪い撫で方のせいですっかり鳥肌の立っていたミヤビは進化の過程ですっかり退化してしまったお情けのようについている足をバタバタと動かしもがいた。
しかし非情にも縄はきれず、カイリキーの指も止まることなくミヤビの性器を執拗に撫で上げる。マニューラは幸いに後ろでその様子を見ているだけだった。
「なかなか濡れないな…。  俺が下手なのか…?」
「童貞カイリキーがうまいのも変だよねー。   っていうか捕虜なんだし好きにやっちゃえばー?」
マニューラは意地の悪い笑みを浮かべカイリキーを焚きつける。カイリキーはそれもそうだな、と呟くとミヤビの性器に2本の指を突き立てた。ミヤビは快感だの充実感なんかは微塵も感じることなくただただ恐怖を感じていた。こんな状態で濡れる雌はまずいないだろうと内心呆れた。それを知ってか知らずかカイリキーは濡れてもいない筋に乱暴に指を突っ込みかき回した。
「あっ!  あぁぁああぁぁぁぁっっ!!!」
いくら皮膚の固いミヤビ、サザンドラという種族であっても膣内は柔らかく、そして敏感なのであろう。濡れていない膣壁から伝わる刺激は強烈で掟のこともすっかり忘れて痛みに悶えた。
「あれー?  龍の傲慢はどこいったのかなー?」
ミヤビが苦痛で叫ぶ様子を見たマニューラにからかわれるかのようにして言われた言葉にはっと気が付き歯を食いしばって痛みに耐えようとした。目を固く瞑ると目尻から涙が一筋流れた。それでもなお痛みを耐えようとミヤビは歯を食いしばる。カイリキーはそれをあざ笑うかのように指ではなくあろうことか腕を突っ込んだのだった。
「ひぁっ!?  い、い゙だいっ!い゙だい゙ぃぃっっ!!」
ばりっ、という生々しい音とともにミヤビの純潔の証は無残に破けた。それだけではなく濡れていない膣内に太い異物が入れられ膣壁の一部が裂けた音も混じっていた。
「おっ、入れやすくなって来たぜ」
「えー。それ多分血だよー。   カイリキーさいてーだねー」
「褒め言葉として受け取っておこう」
笑いながら2匹はそう言いあいカイリキーは筋肉質な腕の出し入れを再開させた。わざと指先を曲げているためかカイリキーの爪が柔らかい皮に食い込みさらにミヤビの膣壁を傷つける。洞窟の床にはもう血だまりといっていいほどの血があふれていた。ミヤビは顔を涙でぐしょぐしょに濡らして泣き叫んだ。

「いやだっ! やだぁぁっ! あぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁっっ!!!!」


薄暗い洞窟の中には血の滴る音と雌の甲高い悲鳴と品のない雄の笑い声が響いていた。







ミヤビが捕えられてから1週間後。リーフはテントの中で悶々としている日が多くなっていた。ミヤビが敗れたのもあって国境の警備も再び暇が見えていたのだがそれでもミヤビの様子が分からないというのは何とも不安なものを感じていたのだった。そんなリーフが何度もミヤビの様子を聞こうとしたのだがはっきりとした消息もつかめずに日々が過ぎていった。
「リーフ、なんかリーフにあててディアルガから手紙が来たぞ。……テンガン山の麓に来てほしいみたいだけど…1匹で平気か?」
「え? あ、うん…」
テントの中でぼーっとしながらモモンの実をかじっていたリーフにレイがそう声をかける。勝手に手紙の内容を読んだのを咎めるほど頭が回っていなかったのかのそのそと動き出すとテントから出た。
外ではスープが水を作っておりフレイは日向でのんびりとしていた。2匹に麓まで行くことを伝えるとフレイが付いていくと言い出したのでスープとレイに陣の留守を任せるとフレイと共にテンガン山を降りはじめた。


麓に広がる多くのテントが作られている中からディアルガの使っているテントに案内されると曲がっているスカーフを直し中へと入った。フレイは外で待つように言われ今はリーフのすぐ後ろにいる。
「ただいままいりました」
「ああ。リーフか………。わざわざ来てくれてありがとう…」
ディアルガはいつもよりも声のトーンが低く顔色が悪かった。体調でも悪いのかとリーフが心配しているのを余所に話を切り出した。
「昨日、2匹のポケモンを対象に軍法会議を開き降格処分に処した」
「………はあ…」
いきなりそんなことを言われても話の筋が全く見えずに首をかしげていたリーフにディアルガは重い口を開こうか開くまいか戸惑っていた。
重い沈黙が流れること1分ほどでディアルガが話の核心に触れた。

「……昨日、捕虜のミヤビが死んだ」
「…………はい?」
リーフは耳を疑うしかなかった。その言葉の意味を理解すると急に激しいめまいを感じた。



「え……死んだってどういうことですか……っ」
「……ミヤビを捕えていた隊の兵士が1週間乱暴を続け、ろくに食べ物も与えなかったそうだ……。  調査書、見せてあげるよ」

ディアルガはリーフの顔色をうかがおうとはせずに後ろを向くと一つの書類をリーフに見せた。すでに混乱しきっていたリーフの目の前に文字として記されている事実を見せられる。少しは落ち着いて物事をとらえてみようと調査書に目を通したのだった。


『パルキア連合軍所属攻撃隊長ミヤビ。____隊の捕虜となっていた。
 しかし、ミヤビの意識が戻った後に性的暴行を加え続けていた。
 一週間もの間食事も出されずに寝る時間もなく性的暴行を続けられ
 亡くなられた。

 追記
 ミヤビの遺体を調べたところ、膣、子宮等の生殖器が深く負傷していた。
 また、話によれば1週間与えていた水分は精液のみということが明らかにされている。
 

 …………』

これ以上読む気にはなれなかった。嘔吐感のようなものが喉元にまで込み上がる。ミヤビがいったいどういった1週間を過ごしていたのか。そんなことはもう想像もしたくなかった。
にっこりと微笑み「……またいつか勝負しよ♪」と明るく言うミヤビの顔はもう見ることはできないのか。実力の伯仲したあの楽しい戦いはもう二度とすることができないと言うのか。リーフの心の中には悲しみの隙間から明らかに怒りの炎がちらついていた。
そんな中ディアルガのテントにミヤビを捕えたゴウカザルが入って来た。リーフとミヤビの勝負に勝手に割り込みミヤビを任したあのゴウカザルであった。リーフはきっとゴウカザルを睨むと上司であることも忘れていった。
「あの時……あの時なぜ私たちの勝負に手を出したのですか……っ」
「リーフ………」
歯軋りをしながら尋ねるリーフをいさめようとディアルガがリーフの名を呼ぶがそれを聞くこともなくリーフはゴウカザルを見据える。ディアルガもただのやつあたりなのだとは分かっていたがリーフの気持ちもわからないわけでもなかった。ゴウカザルは縦に傷跡のついた左目で睨みかえすと静かに言った。
「リーフ隊長。そなたは確か剣士だとディアルガから聞いている。
 剣士は確か、1対1を大切にするのだったな。 ………くだらんっ!」
「なっ……」
「ゴ、ゴウカザルゥ……」
いきなり剣士の持つ精神を否定して吐き捨てるような言葉にリーフは面食らった。ディアルガはもうどちらをいさめてよいのか全く分からずに困った声を出す。ゴウカザルはため息をつくとリーフに向けて言った。
「だいたい、私達が行っているのは戦争なんだぞ。そこに剣士共のお遊びを混ぜるなどと言語道断だ」
「ゴウカザル……。ここに喧嘩しに来たわけじゃないんでしょ」
ゴウカザルの攻撃的な言葉にリーフが言い返そうと口を開こうとしたがなぜか口が開かずに焦っていた。よくディアルガを見てみると目がほんの少しだけ青く光っている。サイコキネシスでも使っているのかと喋ることを諦めるとディアルガがゴウカザルに話を促すように前足で肩をつついた。
「……単刀直入に言わせてもらうが国境警備隊を私の隊と交換してもらいたいのだ」
「リーフ隊の他にも国境警備隊を総入れ替えしようと思っているんだよ。
 少し内地で休んでいるといい」
ゴウカザルと言いあったばかりなのを考慮してかディアルガが優しく内容をリーフに伝える。
「どうぞっ。私は構いません」
リーフはそう吐き捨てるように言うとさっさとディアルガのテントを後にしようとした。ディアルガはあわてて呼び止めると2枚の書類をリーフに渡した。
「前回の戦いのご褒美がまだだったからね。アークァ撃破の報告はしっかりゲンガーから聞いてるよ。
 今回は昇格とまでは流石に出せないけど人員補充してあげる。治療班から1匹と新入りさん1匹の計2匹ね」
「……はい。ありがとうございます」
それだけ言いさっさとテントから出てきたリーフはゴウカザルに言いかえせないのだと理解しながらも煮え切らず気を逸らすように2枚の紙の方へ眼を移した。しかし涙で視界がぼやけているのかさっぱり読むこともできずに目を擦りながらフレイと共に自陣へ帰ったのだった。





聖戦BGM
聖戦 ~出撃のテーマ~
聖戦BGM
聖戦 ~パルキア軍出撃~

戦争が始まって以来初めての死者かな?



ミヤビ「われらっ!」
フォルテ「亜空楽団!」←フライゴン
スフォツァ「3バカトリオ!」←カイリュー
ミヤビ&フォルテ「ゑっ……?」

#ref(): File not found: "ミヤビたち.jpg" at page "聖戦 集結する仲間たち"



感想、指摘、アドバイス、誤字脱字の指摘などがありましたらお気軽にコメントしてくださいまし♪




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Last-modified: 2014-08-16 (土) 23:48:23
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