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聖戦 暗闇と激戦

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南十字



!!注意!!

この小説はグロかったりエロかったりする戦記物です。
作者の文章力により内容はとっても残念なことになってます。
ネーミングセンスもタイトルセンスもないのです。







 朝日を体に受け、伸びをするリーフ。その新緑の葉はハクタイ南部を吹く温かい風によって静かに揺れる。
 新緑の戦士の帰還であった。


「あら…? リーフ? リーフなのかしら……?」
 風にその身を撫でさせていたリーフに声をかけたのは朝の早いエイリンであった。その瞳には驚愕の色が満ちている。生還を願っていなかったわけではなかったが、こうも無傷の姿で帰ってこられると驚きを隠してなどいられないのだろう。速足にリーフの元へ歩み寄りしばらくその顔をじっと見つめた後ににっこりと微笑んで見せた。
「……おかえりなさい」
「うん。 ただいま。エイリン」
 その短い会話の中には確かなる絆を感じた。共に戦場で命を預け合うものたちが持つ絆だった。しかし、ここにもう一つ確かな絆があることに誰が気が付いたであろうか。それは意外にもミヅキの口から出たものであった。
「咏凛…姉」
「え? ……もしかして…その声は……」
 エイリンが再び驚き小さきブラッキー、ミヅキの姿をその目に映した。
「……美月? 美月なのかしら?」
「そう…だよ……」
「あ…あなた、なんでこんなところに……」
 エイリンが考え込みそうになるのをストップしてリーフは口を挟んだ。
「ちょ、ちょっと。2匹は…どういう関係?」
「……姉弟よ」
「うん……」
 悩みながらもそう言ったエイリン。それに引き続いて力強く首肯して見せるミヅキ。ハウンドも何故だか頷きリーフを見る。
「幼いころに色々あったのよ。 …それで、別々の地で住んでいたのに…どうしてかしら?」
「……姉さん、の、名前…。薬で……聞い、た」
 ぼそぼそとミヅキがそう言うとエイリンは頭を抱えて納得したような表情を見せた。
「なるほど、理解したわ……」
「……ところで、エイリンとミヅキはどれだけ年が離れてるの…?」
「双子よ」
 フレイの何気ない質問にも驚愕の答えが飛んで出る。ミヅキとエイリンが同い年に見えそうもなかった。エイリンが大人っぽいだけなのか、それともミヅキが子供っぽいだけなのやら。もしや両方のせいなのではないかとハウンドを除き全員が驚いていた。
「……とにかく、ボクも…軍…入る。 咏凛姉……守る」
「ま、まあ、そう言うことだ。よろしく頼む」
 歯切れ悪そうにハウンドがリーフにそう言うとくるりと体の向きを変えて立ち去ろうとする。何もお礼もしていないというのに去られてしまっては申し訳なさすぎると呼び止めようと思ったリーフ。しかし、それよりも早くにハウンドを呼び止めた者がいた。
「…まって」
「ん…。どうした? ミヅキ」
「ハウンド……行っちゃ、ヤダ」
 そう言ってハウンドの後脚を小さな前足で掴む。ハウンドが振り向いた瞬間に黒い眼差しを使用したのはミヅキとサマエルだけしか知らなかった。ハウンドは頭を掻くとしばらく悩みながら言った。
「……いいのか?」
 迷いを振り切れていない様子でリーフの言葉を待つハウンド。こう見えて結構慎重なのか、それとも優柔不断なのやら。苦笑を堪えながらリーフは頷いて見せた。リーフの首肯を確認して覚悟を決めたのか。ミヅキの前足を退け、リーフの前へと歩んで行く。
「……じゃ、じゃあ、よろしく頼む。リーフ隊長」
 そう言って軽く頭を下げる。リーフも「ありがとう」と言いながらその頭を下げる。その様子に頷くサマエルと流れに完全に置いてけぼりを食らったフレイ、ハウンドの姿に満足そうなミヅキが眺める。
 こうして、リーフ部隊は復活と共に新たな戦力を得ることとなった。

 彼らの能力は未知数。期待に胸を弾ませながらリーフはディアルガの元へと赴く。帰還報告も兼ねて入隊申請を行うのが果たしてよいかどうかはともかくとして、これからがとても楽しみでならなかった。  ミヅキとハウンド。いったいどんなポケモンで、どんな戦いを見せてくれるのだろう。それを思うと足取りは軽くなる。
 ディアルガ本陣の番にリーフは予備のスカーフと予備の小隊長の証であるバッチを見せる。番のポケモンはさっさとテントの中へと入り、ディアルガへと伝えている様子であった。すると、中から何やら躓いたような音や物が落ちる音が聞こえたかと思った途端に中からディアルガが飛び出した。
「あ、あぁぁ……! 本物だぁッ! 本物のリーフ隊長だぁッ!!

 おかえりぃっ!!」

 本陣に今にもうれし涙を流しそうな震えた声で帰還報告を受ける神がそこにはいた。








「おい、ここだよな?」
「ああ……。おい、寒気がするぜ…」
「俺もだ…空気が重いって言うか」
「吸い込むだけで胸がもやもやする……」

 中隊規模のパルキア連合軍の兵が領地視察で見つけたという洞窟へと踏み込んでいた。近辺のポケモンからは「戻ノ洞窟」と呼ばれ、一種のホラースポットのように扱われていたようである。しかし、噂ではさほど大したことはなくいくつかの柱が立っているだけだという話であった。

「は、話がちげぇじゃねぇか……」
「馬鹿、ビビってどうするよ?」
「そのために俺ら悪タイプのポケモンがいるんだろ?」
「元気を出すのだ。気を病めば満足なパフォーマンスはできなかろう」
 ヘルガー、スカタンク、ドンカラスが足を震わせるライチュウにそう声をかけて励ます。だが、悪タイプの洞察力をもってすればこの洞窟の雰囲気がおかしいことぐらい気づいて当然であった。妙に空気がピリピリと張り詰め臨戦態勢を取りたくて仕方がなくなる。分かりやすく表現するならそわそわして落ち着かないといった感じであろうか。

「……ぷっ、はははっ! あ~ははははははっ!!」
「! だ、だれだ!?」
 ヘルガーが闇の中で聞こえた明るい笑い声に怖じ気づきながらも奥を睨む。すると、そこにはつい先ほどまであったはずのない台座が姿を現しその後ろに8つの赤い目が見えた。
「敵は4だな…」
 ドンカラスは妙な黒い霧に視界を鈍らせながらも冷静に判断する。しかし、目の前の赤い目2つが再び笑いだした。
「あ~っはははっ! 残念~。数は~、2だよ~」
「なに…?」
「でもね~、忙しいから~…てぃなはいくよ~? 任せるね~、だんちょ」
「了解だよっ♪」
 洞窟に響いたのはのっぺりとした声と明るくはきはきとした声の二つ。この声、パルキア連合軍なら一度は絶対に聞いたことのある声だった。なぜなら……
「まさか……まさかだ」
「なん…で……」
 暗闇で銀色のタクトが舞った。演奏家を失くした彼女が奏でるは虚無の鎮魂歌か、あるいは――――


「あなたは死んだはずでは……!」
 ヘルガーがタクトを左腕の先の口で器用に回している目の前のポケモンに向けてそう呼びかける。すっとタクトを咥え直して彼女の姿に唖然とするポケモンたちを見る。じっと中隊のポケモンたちを眺めた後にそのポケモンは首を傾げ、言った。
「…だれ~?」
「なっ……」
 茫然とその場に立つポケモン達を前に少しだけ微笑みながら浮いているドラゴン。しかし、中隊のポケモン達は彼女を知っていた。彼女も赤いスカーフが意味する物を知っているはずだったのだが、それすらもきれいさっぱり忘れたのか一向にこちらへ来ようとしない。
 そんな彼女を前にしてエスパー隊員がダークライと作戦の打ち合わせをしていたが、ダークライから出てきた言葉は中隊を震撼させたのだった。
「おい、連絡は付いたか?」
「は、はい……。ですが……」
 エルレイドはためらった後に指示の内容を隊員に伝えた。
「『洞窟内の敵は残らず始末しろ』だそうです。たとえ相手がミヤビ隊長でも……」
「なに?」
「死ねと言ってるようなものではないか!」
「…見破れないので、アレは正真正銘のミヤビ隊長です…」
 一気に顔を青くしてゆく中隊のポケモン達。なぜかこの戻ノ洞窟に現れたミヤビ。ヨルノズクが見破れない存在は実在しているものに限られている。その彼女は死亡しているはずだった。間者がミヤビを埋葬していたのを間違いなく見たと言っているのも知っているのだった。しかし、目の前にいるのは紛れもない指揮者ミヤビ。顔つき、声色、話し方。全てにおいて本人としか言いようがなかった。
 兵たちの中に迷いが広まる中、中隊長キリキザンがすっと宙に刃を振りぬいた。それから両腕の刃を更に振りぬき戦いの舞をその場で舞いだす。周りの兵が慌てているかと思えばその右腕を高々と振り上げ地面を殴りつけた。地面に亀裂が生まれ、それがミヤビの真下までまっすぐと伸びてゆく。そこから地面は急激に崩れ出し、先端に殺意の込められた鋭さを持つ岩が吸い込まれるようにミヤビへと向かって飛んで行った。しかし、ミヤビは6つの翼を巧みに操りその岩から大きな体を避けて浮遊する。
「……危ない危ない。仕返しだよっ♪」
 そう言うが早いか翼を動かし空中に浮かせていた体をミヤビは地に落としたのだった。尻もちをついたような格好を見せながらミヤビも負けじと技を放つ。
「地震っ!」
 ミヤビを中心として円状に広がってゆく振動。それは前線で怯えていたライチュウを吹き飛ばし、ヘルガーをその場にひざまずかせつつ中隊全てのポケモンにダメージを与えてゆく。キリキザンも自身のダメージを受けつつストーンエッジを再び放つ。しかし、すぐにミヤビ飛び上がってしまったために岩は明後日の方向へ飛び天井に突き刺さってゆく。さらに横合いから冷凍ビームやシグナルビームといった命中力の安定している技を放ってゆくがそれすらも巧みにかわし、当たる気配を見せない。
 遠距離では無駄だと判断したキリキザンは大きく飛び上がり両腕の刃を十字に構えミヤビに向けてその2本を振り下ろした。虫の力を宿し、剣の舞によって威力の高められたシザークロス。しかし、ミヤビはその場から動かずにいた。このままいけば首をかき斬ることに成功する。もう少しで当たる。その瞬間、ミヤビはシザークロスを宿してある右腕の刃に噛みついたのだった。左腕の刃は振り切ったがミヤビに当たるはなかった。右腕の刃は動くことなくその牙で刃を完全に止められてしまった。
「……遅い、弱いよ…」
 右手の頭が唸るようにそう呟いた。
「l…fの方が強いよ」
 ポケモンの名前を言ったように聞こえたが掠れているように聞こえその名を聞きとることはできなかった。ミヤビはキリキザンの刃を離し、ふらついたキリキザンの腹部にドラゴンテールを叩き込み中隊の方へと吹き飛ばした。
 そこへ2発目の地震を放ち、追い打ちと言わんばかりに両腕から竜の波動を前方へと発射する。粉塵が辺りを包みこみ視界を奪ってゆく。ミヤビは身がまえたまま砂煙が晴れるまでその場を動かないでいたが、視界が開けたその先には何とも無様な姿を晒す中隊がそこにいたのだった。キリキザンはなんとか持ちこたえていたようだったが、他の前方に構えていた隊員はほとんどが伸びてしまっていた。壊滅的ともいえるその状況を前にキリキザンは歯噛みしながらも撤退を選んだのだった。傷つき、負傷した兵を後方の兵が背負いそそくさと戻ノ洞窟から出てゆこうとする。追い打ちをかけてこないところを見ると争うためにミヤビがいるわけではないようであった。
 退きながらキリキザンは考えていた。ミヤビと言えば楽団の団長であり、攻撃隊長であり、あっけなく殺されたのだと。しかし、今戦った分ではとてもそうとは思えなかった。多分、あれから陣を展開して取り囲んだところで戦闘不能にまで持ち込めたであろうか。如何なる敵にもそれなりの戦いを展開できるように編成された混成部隊では彼女にまるで歯が立たなかった。近接戦闘でもまさか強化済みの相性の悪い技を正面から受け止めて無力化させてしまうとはその力強さも驚きである。
 戻ノ洞窟から抜けだし、ほっと溜息をつく兵士達。しかし、たかが一匹に追い返されるとは思わずにキリキザンは今後のことを考える。失態以外の何物でもないこの撤退の理由をどう説明つけようかと考えあぐねていた。


 時を同じくしてディアルガの本陣。カンナギを落とすための作戦をクレセリアと練っているところにおかしなものが突如現れたのだった。それは、果てしない闇、形容しようもない黒。不安にさせるような色をした穴が地面にぽっかりと開いたのだった。クレセリアは驚いて身構えていたが、ディアルガはため息をついてその穴を見つめた。
 その穴から姿を現したのはギラティナ、まさにそのポケモンであった。初めて見るクレセリアは結局驚きっぱなしでディアルガとギラティナを交互に見る。何となく雰囲気が似てるこの2匹はクレセリアを置いて話を始めてしまった。
「…ギラティナ、どうしたの?」
「ん~……、パルキアに~、襲われた~……のかな~?」
「えぇっ!?」
 素っ頓狂な声を上げるディアルガ。それを目の前になおもまったりゆっくりな話し方でギラティナは言う。
「てぃなの家~。壊れた~」
 ギラティナが若干項垂れているのはわかるのだが声のせいで全く残念そうに見えないクレセリアであった。そんなクレセリアにギラティナは気が付くとこれもまたスローな動きで翼を振って見せた。クレセリアは苦笑してすっと頭を下げる。
「…ん~、なんでだろうねぇ……」
「しらない~」
 会話が成り立っているのかそうでないのか疑わしいやり取りにクレセリアはため息をつく。しかし、確かにパルキアの思惑が見えないのは確かであった。今この状況でギラティナを敵に回していったいどうするというのか。運悪くすれば新世軍側についてしまう筈なのに。それとも、ギラティナのついた新世軍側に勝つ術があるとでも言うのであろうか。兎にも角にも、今それを考えたところで何にもならない。ギラティナをいったいどうするか。それをディアルガは考え始めた。

 結局、ギラティナは多くの魂がとどまっているハクタイの森のあたりが気に入ったらしく、そこに住居を構えて過ごすことになった。ギラティナが新世軍へ入軍することに関してはまだ考える時間が必要であるようだった。
 画してギラティナも、新世軍へと身を置くこととなり自然と士気も高くなった。リーフ隊の士気の上がり様には到底及ばなかったがそれでも軍全体の士気はかなり高かった。この高い士気とそれなりの物資があれば電撃戦を仕掛けることが可能とクレセリアは判断したのだろう。すぐさま部隊を編成、出撃日時を定めた。

 出撃の命令の通達が行われたのは出陣の前の日、お昼時であった。万一に情報が漏れたところで対処の難しい時間を狙ってクレセリアがテレパシーで部隊へと出撃命令を下す。
 リーフ隊が受けた命は、先行部隊であった。最も早くに敵地へ乗り込み、危険を顧みずに戦端を切り開く者たちへと再びリーフ隊が指名された。喜ぶ半面、まだ戦い方のわからない兵が約2名ほど。仕方なしに先行部隊の小隊の中でも後方に2匹を配置することに決めたリーフはその日、ゆっくり休むこととした。




 当日、陽の昇りきる前にリーフは目を覚まし、体をほぐす。昨日伝えられた進軍の内容は以下のとおりである。
 リーフ隊含む先行部隊はテンガン山を再び洞窟から抜けカンナギへと向かう。この際、上空からの飛行部隊がテンガン山山中に忍び、陸上で交戦が始まるのを合図に空からさらに攻撃を加える。それに乗じて本陣からまっすぐと向かうルギアを軸にカンナギを落とすつもりでいた。カンナギには不死のサンダースが陣取っているともっぱらの噂であったが流石に軍一つ相手に1匹ではどうしようもないであろうと評価されこの作戦が決行されることとなった。
 リーフ隊一早いエイリンもすっかり目を覚ましており、軽い朝食を部隊の分作って待っていた。エイリンの用意してくれた木の実のサンドを頬張りながら部隊の兵たちの様子を見ていると一つのテントの中からしきりに声が聞こえた。そのテントはリーフが用意したハウンドとミヅキの寝ているテントであったのだが…。ちょっとテントの様子を見ようと顔を近づけて中をうかがう。どうやらなかなか起き出さないミヅキをハウンドが起こそうとしているようなのだが、ハウンドの起こし方が甘いのであろうか全く起きる気配を見せないミヅキ。何となく微笑ましい光景を前に苦笑いしたリーフはそっとテントに入った。
 ハウンドはリーフが来たのに気が付くとぺこりと頭を下げる。その後すぐに頭をかいて言うのだった。
「…出発までまだ間に合うか?」
「うん。……でも、私が起こしておくからハウンドくんは早くご飯食べに行った方がいいよ」
「あ、あぁ。すまん。 ……じゃあ、任せていいか?」
 リーフが首肯して見せるとハウンドは軽くお礼を言うとテントの外へと出た。問題のミヅキであったがハウンド以外の気配を感じ取ったのかうっすら目を開けてリーフを見ていた。リーフがぎこちなく朝の挨拶を伝えると消え入りそうな声で挨拶を返してきた。のっそりとミヅキが起き出すとふらふらと外へ覚束ない足取りで出てゆく。元来、ブラッキーというものはエーフィとは対に夜を象徴するポケモンのひとつであり、その多くの個体は夜の活動を得意としている。ようするに彼は夜行性なのである。普通は朝日が昇れば眠くなるはずのミヅキを朝日が昇る頃に起こすというのは確かに酷かもしれない事であった。

 結局、半ば寝ているようなミヅキにハウンドが朝食を食べさせていた。うっかりこぼしてしまいそうな手つきにハウンドが自分の前足を添えてやっている。傍から見ればさながら親子のようにも見える。
 それを横目でチラチラと見ながらエイリンがいくつかの怪しげな液体を用意していた。リーフがエイリンの元へ歩み寄っているのに気が付くとエイリンは作業の手を止めてリーフを見た。
「あら、どうかしたかしら?」
「ん、いや。 何やってるのかなー、と思って」
 リーフはそう言って液体を眺める。見れば見るほど目に悪い色ばかりである。エイリンはくすりと微笑んでいった。
「一応、自分の身を守るためにいくつか薬を用意していたのよ」
「……自分が飲むの?」
「まさか、相手にぶっかけるにきまってるじゃない」
 当たり前のように言うエイリンに一瞬寒気のようなものを感じながら再び作業に戻るエイリンの様子をリーフは眺めていたのだった。


 少しだけ明るみが出てきたシンオウ地方。その日の出を本陣から眺めていたのはレシラムであった。右翼は骨が砕けていたらしく今も全く動かない。切り傷程度なら数日で治癒するのだが骨はそう簡単には治ってくれない。少しでも動かせば全身を駆け巡る激痛にゼクロムとの戦いを思い出させる。情けないの一言であった。いいように蹂躙され、ゼクロムに傷すら与えられなかった自分がたまらなく嫌であった。
 まだ自分は甘いのだ。ゼクロムに依存しきっていたあの頃とまったく何も変わっていないのだ。3000年も己を磨き続けても何が変わったというのだ? 自問自答を繰り返すたびに見えてくる自分の弱さ、ゼクロムの強さ。
 気が付けばその瞳から一筋の滴が零れ落ちた。  強くなりたい。まるで子供のようにそう強く願った。







 さて、朝日も昇り始めた頃。リーフ小隊は中隊、大隊を背に敵地へと急ぐ。以前通った道とは別の洞窟を進み行く。レイのフラッシュを頼りに道を確保し後続部隊への道しるべとする。
 洞窟出口、そこに差し掛かった時に警邏の兵に見つかった。数は15匹ほどであろうか。2,3匹が踵を返し林の中へと逃げ込む。増援を呼ばれようがこのまま突っ切る予定でいるのだ。リーフを先頭に敵を斬り倒してゆく。目立った損害なく警邏兵をなぎ倒し林の中へと入ってゆく。上空もテンガン山よりの空は新世軍が陣取り始めている。今回の作戦は日を跨いでいるなどという余裕はない。林を抜け少し開けたちにリーフたちは足を踏み入れる。後ろの中隊は展開しながら進むためにまだリーフ隊には追い付いていない。そんなリーフ隊を待ちかまえていたのはリーフを生かしてくれたライト隊であった。
 リーフは身構えライトと目を合わせる。リーフ隊の一部の隊員はライト達がリーフを助けていたことを知っているのだが、ここは戦場。出会えば情を捨てるようにリーフからも言われている。ここで手加減するのは逆に失礼である。そうリーフはライト達を見据え考えていた。
「よお。決着、つけに来たぜ」
「……いい勝負にしようね……っ」
 互いに言葉をかわすとリーフは大きく跳躍してライトへと飛びかかる。

 激戦の始まりだった。




 リーフは右へ払い左へ振りぬき攻撃の手を緩めることなくライトを追いつめてゆこうとする。しかし、サンダースとリーフィアでは元々の素早さが違う。屈んで避けられたかと思えばバックステップで間合いが狂わされる。草結びを発動しようにもその足を捉えることが難しい。
 リーフが攻撃を当てられずに無駄にリーフブレードを使っているうちにライトが急に大きく横へ跳んだ。リーフの対応が少し遅れライトの目覚めるパワーが襲いかかろうとする。以前の戦いのときに重傷を負った目覚めるパワー。当たるものかと不思議な色をした球体にアイアンテールをぶつけ相殺する。氷の結晶のようなものがその場に舞い、不思議な光を放つ。

 リーフが地を踏み体に力を溜め始める。ライトは何をするつもりなのかと身構えリーフの様子を窺う。しかし、徐々に様子がおかしいのに気が付いた。リーフの体が淡く光り始めている。若葉のような薄い緑色の光は徐々に強くなり始め前足に集約されてゆく。
「お、おいおい、ヤバくねぇか…?」
 ライトが少しだけ後ずさるのを見てリーフは身を屈め一気に接近する。ライトは何か今までの技と違うのを感じ取って横っ跳びに飛ぶ。リーフが放った一撃。それは空を斬るも、何かが違った。ただのリーフブレードではない。ライトが少し冷や汗を垂らしたその瞬間、更にリーフがもう一撃とライトに向けてその前足を振りぬく。先ほどよりも速く、そして重い一撃のようだった。かろうじてかわしたライトが更に横へと飛ぶ。当たればそれなりに痛いに決まっている。それに、先ほどからリーフの光が強くなる一方なのだ。ライトも技を混合、連結させたものを使えるのだが技が終われば体の光は消えてなくなる。その光が消えないというのは発動時間が長い技か、もしくはリーフが連続発動しているかのどちらかであった。
 3回目、その凄まじい剣を避けたときにリーフの体の光がより一層強くなって初めてリーフがその技の名前を口にした。
「新緑の……舞!」
 明らかに今までとは違うフットワークを前にライトもぎりぎり回避するので手いっぱいになってきた。おまけにリーフが振りぬくたびに切れ味の鋭い木の葉が舞い散り、それがじわじわと体力を削ってゆく。しかもリーフの使っている技が最初のリーフブレードと明らかに違うのだ。先ほどから避けるために使っている木が何本も切り倒されている。ライトが頭の中でリーフブレードと剣の舞を混ぜて使っているのかと推測しているうちにリーフの剣の間合いにその身を置いてしまったのだった。

 斬られる。
 まさにその瞬間、リーフも確実に斬れると思ったのであろう。渾身の新緑の舞を決めるために大きく振りかぶり恐ろしい速度でライトへとその剣を叩き付けた。ライトは歯を食いしばり全力で守るを繰り出す。どんな技を模受け止めるはずの守るだが、リーフの攻撃力はまさに規格外そのものであった。数秒もしないうちに使用者を守るための壁にひびが入る。ライトが慌てて後ろに下がろうとしたのだが、一瞬遅かった。
「うぉぁぁぁぁっ!!?」
 壁が壊れるとともにリーフの剣がライトの体に当たった。かなりの力で振りぬかれたライトは吹っ飛び、林の中の木へと背中をしたたか打ちつけその場にうずくまった。リーフはやっと新緑の舞を解除する。疲れはたまっていたが滾る力、戦いの鼓舞を踊った影響は未だに残っている。ライトを探しきょろきょろと林の中を見る。すると、木の下に黄色い何かがうずくまっている。リーフは捕縛していこうと勝ち誇った顔でそれに近づく。しかし、それに届く一歩手前。まさに足がそれに触れようとした瞬間に脇腹に激痛が走った。見れば脇腹が凍っている。
「い゙ぃぃっ……!!」
 目を見開き凍りついた脇腹を押さえるリーフ。しかし、前回とは違い致命傷とまではいかない。きっと茂みの一角を見ると相変わらず血を流しているのにもかかわらず平然と立っているライトがいた。そういえば、ライトはこういうポケモンだった。リーフは真剣なまなざしで彼を見つめる。そんなリーフに向けてライトは悪戯っぽい笑みを浮かべて見せたのだった。




 フレアはライトとリーフが戦いを始めるのを見て内心どちらも応援していた。ライトは自分にとって大切なポケモンであるし、リーフは友達である。うんうんと頷き目の前に立つブースターへと視線を移す。
 敵のブースターは真剣な表情で身構えている。なるほど、彼がリーフの恋人かとフレアが内心にやついていると、フレイが先に名乗った。
「僕の名前はフレイ! ……君の名前は?」
「僕はフレア。 …リーフちゃんの彼氏だし、手加減してあげようか?」
 フレアはクスクス笑ってみせるとフレイは顔を真っ赤にしてい返した。
「て、手加減なんていらないって。 そんなことよりどうしてそれを……」
「リーフちゃんに惚気られちゃったからね~。僕もカッコいい彼氏がほしいなぁ」
「…うぅ、リーフさんはもぅ…」
 更に顔を赤らめるフレイを見てふふふっと笑うフレア。しかし、お互いに肩の力を抜くと戦いの前の緊張感を作り出してゆく。
 この場だけ、妙に温度が上がるような感覚を覚える。実際に熱を放出しているブースターが2匹もいるのだ。確かにこの場は暑かった。しかし、それを超越した熱い勝負が今始まろうとしていた……。

 2匹の炎の王者がお互いに地を蹴った。
 風景が熱気によって歪んで見えるほどに温めた2匹が見せる勝負はどれほどのものか。
 敵見方問わずにその勝負の行方を固唾を飲んで見守るのであった。


 先に仕掛けたのはフレアであった。火炎でその身を包みこみ地を踏みしめる。そんなフレアの構えを見てフレイはニトロチャージの構えを見せる。原則、ブースターはフレアドライブなんて技を使うことができない。それを見越してのフレイの判断であったのだろう。
 しかし、それは大誤算であった。確かに普通のブースターであればその読みは間違えていなかっただろう。だが生憎フレアは特別であった。明らかにちらつく炎の様子が違うとフレイが気が付いた時にはフレアが突進寸前であった。フレアドライブとニトロチャージ。その力の差は圧倒的である。フレイは急遽ニトロチャージを回避に使おうと試みる。

 横っ跳びにフレイはニトロチャージを使用する。横目でフレアの位置を確認しようとしたところ、フレアの姿が見えない。否、既にすぐ横に接近されていたのだった。それを確認した途端に視界が歪み、気が付けばフレイは妙な浮遊感と共に空を見ていた。
 飛ばされていた。
 それに気が付いたのは背中を地面に打ち付けてからだった。フレアドライブの強烈な突進が直撃したとはいえ桁違いの破壊力に脇腹を押さえるフレイ。これでもし自分が貰い火でなかったら……、そう考えると今意識があることが奇跡のように思えてならなかった。いきなりの大ダメージに痛む四肢に鞭打って立ち上がるフレイ。顔を上げると前には涼しい顔をしたフレアがいる。せめて傷のひとつでも、そう歯を食いしばったフレイの周囲が熱気により更に歪んで見えた。
 フレイは痛む背中を気にせず爪を構えてニトロチャージにより加速した素早さでフレアに接近する。フレアも隙を見せまいとフレイに背後を取られないように動くが同族では素早さが上がっているフレイに追いつけない。すっと横を取られると爪で攻撃される。脇腹を引っ掻かれ呻き声を上げる。更に後ろへと回り込もうとするフレイに大きい尻尾を活かしたアイアンテールをぶつける。前足でそれを受け止めようとするフレイだが案の定後ろに吹っ飛ばされる。今度はしっかり受け身をとったものの痛み右前脚をさする。
 今のままでは火力で勝てない。フレイが歯ぎしりする。どうするべきか、フレイの中に迷いが生じた。しかし、そんなことをフレアが知るはずもなく電光石火で間合いを詰るべくその技を発動させる。フレイはなんとか間合いを狂わせようとバックステップをとるがすぐにその間合いは詰められてゆく。仕方なくフレイも電光石火で後ろへと下がってゆくがその内にもフレアとの距離は縮み、フレイの迷いも大きくなってゆく。

 ……もう、いいじゃないか。
 彼の心の中でそんな声が聞こえた。諦めに近くも、最も勝利に近づくための一手。これほどの相手ならあるいは……。 フレイは迷いを拭うために牙が折れんばかりに歯を食いしばる。
 覚悟を決めたのか、フレイが逃げる足を止めフレアと向き合った。フレアは戦いを楽しんでいたようであったが、今のフレイにはそんな余裕は微塵もなかった。自分の力を解放させるべく右前脚を前に踏み出し姿勢を屈める。
 フレアも同じように姿勢を屈めフレアドライブの準備をする。いったい彼が最後にどんな技を見せてくるのか。フレアが考えているうちにフレイの様子がおかしいのに徐々に気づき始めた。ニトロチャージと大して変わらない構え方ではあったものの、先ほど感じた熱気とは比べ物にならない程の熱量が目の前にあったのだ。
 何事かとフレアも驚きフレアドライブのためを大きくしてゆく。
 そして、2つの声が戦場に木霊した。
「「フレアドライブ!!」」

 2匹は地を蹴りその膨大な火力を体ごとぶつけあった。
 瞬間、大爆発が巻き起こり、辺りの兵士をことごとく吹き飛ばしていったのだった。



 黒煙と巻き上げられた砂煙が晴れ、焦げ臭い大地の上に立っていたのは……フレアであった。目の前では力を出し切りうつ伏せに倒れているフレイがいた。口元に前足を当ててみる。息があるのを確認してフレアはほっとする。
 全力のフレアドライブをぶつけあった瞬間、フレイの捨て身に近い突進に押されるかと思ったが、そこから引き起こされた大爆発からこうして見るとどうやら勝ったようである。
 どうにも腑に落ちないような気がしながら辺りを見た。誰もいない。早く味方の応援に回らねば、そう思い自然と落としていた腰を持ち上げる。途端に体に激痛が走った。思わず声をあげて再び座り込むフレア。どうやら先ほどの一撃でだいぶ消耗してしまったようだと腹部をさする。
(もう……。結構いい技もってるじゃん…)
 苦笑いながらフレイの頬を撫でた。
(なんで、最初から使わなかったんだろうね……)
 ふとわいてきた疑問の答えを探しながらフレアは回復を待つのであった。








「こ、ここから先は行かせませんっ」
「だ~か~ら~っ、うちはリーにゃんと戦うんやっ」
「それはできません~っ!」
「自分が通せんぼしとるからやろっ!」
 困った声と怒ったような声が響く林の中。スープはその責務を全うしようと一匹のリーフィア、フォレスの行く手を塞いでいた。一方フォレスはリベンジを兼ねての再戦に燃えていたのにもかかわらず分からず屋に通せんぼを食らい苛立ちを隠せなかった。
 今にも飛びかかって斬ってやらんとばかりにスープに詰め寄るがなんだかんだいってもスープも退かないのである。フォレスはいったん距離を置くと溜め息をついて言った。
「……しゃーないわ。ここで自分倒して、リーにゃんのとこまで行くで!」
「へっ? にゃぁぁあああああああっ!?」
 少々不意打ち気味ではあったもののフォレスのリーフブレードがスープにきれいに決まった。非常に情けない声をあげて吹っ飛ぶスープ。かなりの手応え感じる攻撃にフォレスはうんうんと頷き歩を進めようとする。所詮は水タイプである。草タイプのフォレスにいったい誰が敵うと言うのか。
 フォレスが一歩を踏み出そうとしたその時、距離を置いて倒れ込んでいたスープがむくりと起き上がったのだった。確かにリーフブレードは当てたにもかかわらず目の前のシャワーズは立っているのである。
「…えらいタフなんやなぁ……」
「取り柄はこれくらいですので」
 少し声音を高く答えるスープ。一撃見舞われた後とは思えない程の元気にフォレスの闘志が燃えたのだろうか、身構えて言った。
「自分、名前なんて言うんや?」
「私はスプラッシュです。スープって呼んでくださいね」
「スープか、なんや、うまそうやなぁ。 うちはフォレスや」
「フォレスさんですか……いい名前ですね」
「そうやろっ。 それじゃ……はじめよかっ」
「勝負ですーっ」

 ここでもまた、激戦が繰り広げられのであろうか。フォレスはリーフブレードを構え直し、スープはおどおどしながらもしっかりと身構えている。
 フォレスが大きく跳躍した。勝負の始まりであった。



 フォレスがブレードを振るいスープへその刃を刻みつける。リーフのような素早さをもたないスープは急所を外すように動くのみで完全に避けてゆくような動きは無い。防戦すらできているのか怪しいこの状況であったが、直にフォレスの頬にスープの胸元を斬った時の拍子に飛んできた何かが付着した。攻撃の手を止めて頬に触れる。それは完全な液体のようであったが、色が海を見ている時のような青であった。よく見ればスープの足や尻尾のあたりがら水が垂れている。血が薄くなったその水は地面に吸い込まれていっている。
「な、なんや……? 自分溶けてるで…?」
「………」
「き、気味悪いわぁ……」
 フォレスが少しだけ顔を青くしていたがスープの方は割としゃきっとした表情を浮かべていた。よく考えればもうすでに何回リーフブレードを当てたのかわからない。目の前のスープは水タイプであるはずなのにもかかわらずこれ程までに受けていて立っていられるはずがない。
(……なんやあの水は…)
 フォレスがそう考えているうちにスープの願い事が時間差で発動し体の傷を消してゆく。激しく攻め立てていたフォレスであったが目の前の難攻不落の砦をどう攻略するか、それがまったく掴めなくなってしまっていた。このまま闇雲に斬っていては無駄に体力を消耗するだけである。
 フォレスはいったん距離をとり、先ほどまでリーフブレードに使っていた葉を口元に当てふっと息を吹きかける。高音から始まって綺麗なフレーズを形作るその音色は眠りを誘う子守唄。スープが大きな欠伸と共にこっくりこっくりと首を前後に揺らす。フォレスが草笛を終えた頃にはぐっすりと寝息を立てて寝るスープがそこにいた。

 とにかく、この重装甲の魚をどう料理するかを考え始めたフォレスであったが、意外にも答えは単純に出てきたのだった。
「なんや? ウチも強なればええんやないん?」
 これ名案と言わんばかりににっこりと笑顔を浮かべると寝ているスープの前でその草の剣で宙を斬って戦いの舞を踊り始める。
 流れるような刃の道、力を求めたリーフとは違う軽くステップを踏むような舞。その舞で強化されるのは力ばかりではなかった。ステップを踏むたびにその身は軽くなってゆく。剣の舞を踊り終え、スープを見据えるがスープは相変わらずすやすやと寝息を立てている。口から涎が若干垂れているのに気が付きフォレスは苦笑いを浮かべる。スープが起き出す気配も見せないことであるし、狙いをしっかり定めスープへ飛びかかり連撃を決めるための一閃をスープに浴びせたのだった。
「に゙ゃぁあああああっ!?」
 先ほどよりも一層感じられる手ごたえに剣を乗せ二撃三撃へとつなげるフォレスのリーフブレード。それを前にして寝顔から文字通り叩き起こされて余裕の表情が一気に無くなったスープ。痛みから逃げ出すように冷凍ビームを口から乱射してフォレスを遠ざけようとする。しかし、狙いを定めずに放たれる直線的な攻撃が当たるはずもなく更なる追撃を許す結果となる。
 力のコントロールを行いつつのリーフブレードは絶え間なくスープに襲いかかってゆく。二度目の願い事も叶ったのだろうが焼け石に水だったようである。厳しい状況は変わらずに出血ばかりが増えてゆく。急所はどうにか守りながらも、そろそろ限界が近い。
「にゃああああああっ!!」
 叫びながらも地面のスープの体が溶けたためにできた泥を前足で掴むとそれをフォレスの顔に投げつけた。まさか口以外から攻撃、妨害をされるとは思わなかったのかそれを顔に受けたフォレス。攻撃の手を止め一歩後ろへと下がる。
「ぺっぺっ、うわぁ、何やぁ!?目ぇ痛いわぁ……」
 その隙に再び願い事を使用するスープ。フォレスが目に入った泥を落としているのを確認してスープは腰を落ち着け水の力を自分の後ろに溜め始める。その水は汚れ、濁り、渦を巻き、流木すら巻き込む強大なもの。
 濁りきったその濁流を背にスープは声高に叫ぶ。
「行ってくださいぃ! 濁流!」
「な、なんやっ、何が来るんや!?」
 目の泥を落とし切れていないうちに地響きが聞こえるフォレス。開けるだけで目の痛いフォレスが見た物は…。
「うわあああっ!!?」
 まるで爆発でも巻き起こったかのような轟音の中フォレスは濁流に呑まれ流されてゆく。スープとの間合いを大きく離された揚句スープは回復を終了する。フォレスがやっとのことで濁流から解放された時にはすっかり体力を減らされていた。地面も水も相性的には今一つではあるのだがこの状況の中でスープに狙いを定めることすら難しいフォレスであった。
 ずきりと痛んだ左目を瞑り右目でスープの姿を探す。さっさと蹴りを付けるはずがここまで手こずらされるのは悔しさと憤りで半々であった。未だにあらゆるものを斬り倒す強靭さを保つリーフブレードを構え直し、願い事のために体を光らせているスープへ全力で駆けてゆく。
「あ、あれ…。 まだ倒れてくれないですか…」
「まだや…。勝つのはうちやで!」
 スープが驚きの表情を見せつつ水の力を溜めようとしている。ここでさらに攻撃されるのは危険と判断するフォレス。大きく跳躍しスープの懐へと突っ込む。速さではやはりリーフィアの方が断然早い。懐にそのリーフブレードを振り下ろす。スープが防ごうとするが既に遅かった。スープの豊かな胸に剣が食い込んでいた。
 そのまま下へ振りぬかれ、スープは声にならない悲鳴を上げる。勝ちたいという執念がスープの守りを破り急所を仕留めた瞬間であった。ふらつくスープにフォレスの追撃が浴びせられた。脇腹に刃が入り横に倒れるスープ倒れた瞬間に口から血が零れる。それが口内を切ったものなのかそれとも内側のダメージなのかはスープですらわからなかった。
 スープが倒れたまま虚ろな目を開けるとそこには目を赤くはらしたフォレスがスープの顔を覗き込んでいた。
「フォレス……さん、……強い…です…ね」
「……自分も強い癖に何言うとるんやっ。 ……また戦いたいぐらいやで」
「ふ、ふ…。私も…です………」
 掠れた声でそこまでいうとスープの体から力が抜ける。スープの名前を呼び掛けてフォレスが体に触れる。そこにはしっかりと強い鼓動の振動が前足に感じられた。
「……やっぱりな、えらいタフやなぁ」
 フォレスは笑いそう言うと新世軍の救護班がこちらに向かっているのに気が付きとっさに身をかくす。目や体は痛むがこのままじっとしていられる性分でも無かったフォレスは時折見える電撃を頼りにリーフの元へゆっくりと歩いてゆくのだった。






「さ、寒い……!」
「いててて、霰が……」
 兵士が困り顔を浮かべ撤退してゆく中、一匹のポケモンはその場に強く立った。霰を味方につけ戦う氷ポケモン。グレイシアのミスリルであった。
 この霰自体はミスリルが起こしたものではなかったが敵の用意したこの状況を活用しない手はなかった。霰の中を散策し敵兵を探しきょろきょろとする。

 しかし、ミスリルはこの時気が付いていなかった。霰の中に紛れ、自分を狙うポケモンがいることに…。
 雪隠れ。それは霰の中に擬態し、敵の発見を遅らせ技の精度を鈍らせるものである。草むらの間から顔を出したグレイシアは赤いスカーフこそ身に付けていなかったが明らかに青いスカーフのポケモンを狙っていた。この霰という戦場の中、どちらがこれを活かせるか。草むらの間のグレイシアが口元に冷気を溜め始めそっと呟いた。
「かさどーる…ふろすと!」
 口元から発射されたのは冷凍ビームのようなものではなかった。冷凍ビーム並みの高密度な氷を氷の飛礫と同じ速さで射出しているものであった。恐るべき速さの氷は空気抵抗により先端がとがってゆく。それはミスリルの背中をかすめ木に付き刺さったのであった。
「!?」
 ひりひりと痛む背中を見ると鋭利な何かできられたような跡が残っていた。幸い傷は浅くどこから来たのだと辺りをきょろきょろと見る。草むらから先ほどの氷を打ち出したポケモンはこそこそと木に登ってゆく。
 ……しかし、やはり手慣れていなかったのか。後足を滑らせ草むらへと落ちてゆく。落下音にミスリルは反応しその草むら一体に吹雪を吹き付ける。すると、向こうからも同じ程度の力が放出されミスリルの吹雪を相殺せんとする。
 ミスリルが吹雪をやめると向こうも同じようにやめた。ミスリルが草むらに身構えながら近づき、霰に紛れて見えにくくなっているそれを軽く小突いた。
「わっ、わぁっ!」
「……何やってるの?」
「え…えと。えと……。 かさどーる・ふろすと…?」
「??」
 ミスリルが頭の上に疑問符を浮かべて目の前のグレイシアの受け答えについて考えてみる。しかし、よくわからない。何を言っているのかどうかよりも会話がかみ合っているのか。その根本的なところを疑ったミスリルはため息をついて訊いた。
「…その、カサドール・フロストって……何のこと?」
「うん。すっごく早い氷なんだよっ! ……あっ…」
「へぇ……、すごく早い氷ね…。それ、ついさっき見た気がするんだけど……」
 ミスリルの威圧感に後ずさるグレイシア。震えている彼女を追いつめると言った。
「……名前は何?」
「シ……シシ、シアン……」
「へぇ…。シアン? 私はミスリル。 ………覚悟なさい」
「わあああああああっ」

 大動物から逃げるように再び草むらの中に飛び込むシアン。それを追いかけてゆくミスリル。雪隠れシアンの恐るべき速さの遠距離攻撃にいったい何をもって対抗するのか。ミスリルの戦いが今始まろうとしていた……。





 早速姿をくらまされてしまったミスリルはきょろきょろとあたりを見る。先ほどの氷の威力を見る限りでは直撃すればただでは済まされないと言うのはよくわかっていた。遠距離から一方的にじわじわ体力を減らされるのも危険であった。しかし、シアンが霰の中に自分の存在を霞ませる術を持つのと同じようにミスリルの体にも徐々に変化が現れる。
 先ほどかすり傷のようなものを受けた背中の傷。それが見る見るうちに治っていくではないか。シアンの雪隠れと同じように霰の恩恵をその体に受けその身を癒す。アイスボディの特性は霰がその身を包む限りミスリルを守るための盾となる。ミスリルは背中の痛みが完全になくなったのを感じながら全身の神経を気配察知に使い辺りを睨む。ミスリルの足が早くないのと同じようにグレイシア種は足がお世辞にも早いと言えるようなレベルではない。一度気配を察知してしまえば一気にミスリルの優勢となる。
 ただ、見つけるまでが問題なのであった。前方を一掃できる吹雪は集中力と精神力を多く使う。もし外しては今後の戦いに影響が出る上にどさくさにまぎれて動かれれば更に場所が掴めなくなる可能性もあった。 当のシアンはと言えば、先ほど飛び込んだ草むらの中に息をひそめていた。灯台下暗しもここまでくれば逆に安心できるほどである。この状況でミスリルの急所を狙うことなど造作もないことではあるのだが。生憎雪隠れは技のエネルギーまでも隠蔽してくれるほど、ありがたいものでもなかった。身を隠す術のないポケモンからすれば贅沢のように聞こえるが今まさにジレンマに陥っているグレイシアが草むらの中で息をひそめているのだ。
 ミスリルが離れるまで撃てない。しかし、ミスリルは妙な確信もあるのか迂闊に動くことに警戒しているのかでその場から動かない。

 しばらく辺りを見回すミスリルであったが攻撃が全く来ない。妙な膠着状態の中でミスリルが歩きだす。それもシアンの潜む位置に背を向けて移動を始めたのだった。徐々に弱まり始める霰を再び発動させると不安そうにあたりを見回すミスリルに狙いを定める。先ほども使った狙撃専用の技、カサドール・フロストの狙いをミスリルの足へと向ける。
 そして、静かに力を口の前へと集中させミスリルが感づく前にその氷を射出する。
「……っ! 凍える風……」
 しかし、射出する直前にミスリルが異変に気が付いたのか、振り向きざまに氷を吹き付ける。その直後に鋭く尖った氷がミスリルの右足をかすめる。背中の時と同じように直撃は免れたものの傷の深さは今回の方が深かったようでぐらりと体勢が崩れそうになる。シアンは技の直後でうまく回避がとれずに凍える風にその体を晒したのだった。関節が凍り上手く足が動かなくなるシアン。だが、ミスリルも足を負傷し動きが鈍っている。このタイミング、逃すものかと2匹が同時に叫んだ。
「「吹雪!!」」

 氷結地獄、とでも言えばいいのだろうか。辺りの木々はキッサキでも稀に見る樹氷のように凍りつき、地面はそのまま冷凍されている。草むらは冷気を纏った強風でなぎ倒され起き上がることなく凍らされている。
 その中心で2匹のポケモンが未だに睨み合っている。正確に言えば睨みつけているのはミスリルだけであったが。 ミスリルは耳や脇腹などが凍りついていたがそのダメージはそこまで危険なものではないと割り切りシアンを睨む。対するシアンは吹雪の撃ち合いに押し負けていたのか疲労の色を隠せてはいなかった。体もかなりの個所を氷が覆っている。荒い息を付きミスリルを見るがその焦点が合っていない。もう、反撃する力は残っていなかった。
 狙撃し、急所を外れ姿を見られた時点でこうなることは薄々わかってはいたのだが、それでも悔しかった。ほとんど何もできずにこうして倒れてしまうことを。

 氷の上にシアンはうつ伏せに倒れた。反撃することはおろか、起き上がる力も残っていないのかとミスリルは近寄ってシアンの様子を見た。氷タイプもやはり猛吹雪には耐えられなかったのか、かたかたと体を震わせている。
 そんなシアンの口元にどこから取り出したのかラムの実をひとつ転がしミスリルはその場に座り込んだ。
「え…へへ。 ミスリルお姉ちゃん……優しいね…」
「ば、馬鹿なこといってないで、速く食べてよね」
 シアンから顔をそむけ凍りついた自分の体から氷を払い始めるミスリル。そんなミスリルを見ながらシアンはその身を口元に運ぶ。シアンには何故こうしてくれたのかは分からなかった。自分のためのものだったはずの木の実を敵に分け与えるのは兵士として間違えた行為である。しかし、シアン達もなんだかんだ言ってリーフを助けているのだった。その行為は、ポケモンという生き物としては間違っていない。

 霰が晴れ、太陽がやっと2匹に光を届けた。清々しい思いの中ミスリルはシアンの体の氷を舐め落としていく。シアンがにこにこと笑いながらお礼やら何やらを言っているのを顔をそむけ照れくささを隠しながらミスリル。

 みんなとこういられたらいいのに。そうシアンは思いながらこの素直じゃないグレイシア、ミスリルの横顔を見るのだった。











「ふぅ、やっぱりここの木の実は流通してなかったわね…」
 ピンク色のかぶり物、いわゆるナース帽をしたエーフィが低木に実る木の実を咥え袋の中へと放りこんでいく。リーフ隊医療班エイリン。一応、前線だったのだがどうしても木の実の数が足りないのでしぶしぶこの林へと赴いたのだった。

 遠くに技と技がぶつかりあい派手な音を響かせている。しかし、その音はまだ遠く、ここは安全だろうと踏んでいたエイリンの身に何者かが忍び寄っていることを彼女は気が付いていない。
 茂みの中に隠れエイリンがすぐ見える場所にその影は到達するとエイリンの脇腹に強烈な一撃を加えるべく茂みから飛び出した。
「騙し討ちっさー!」
 いきなりの強襲に反応を遅らせたエイリンは慌ててしまったのか体勢を崩し倒れ込む。騙し討ちは木の実の入っていた袋に偶然当たりエイリンへとダメージが通ることはなかった。果汁が飛び散り、エイリンの顔を汚してゆく。
 奇襲をしかけたのは赤いスカーフを身に付けたブラッキーであった。ブラッキーは奇襲が失敗したのを見て名乗った。
「俺はライト隊所属のルナっさー。 悪いけれど、ここで倒れてもらうさー」
 目の前に倒れるエイリンがびくりと震えると叫んだ。
「きゃ…きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
 その声に思わず耳を伏せたルナ。叫ぶのと同時にエイリンの口からシグナルビームが飛んでくる。くらったら不味いとルナが思いながらも避け切れる距離ではない。仕方なくその身にシグナルビームを受けたのだが……。
「……っさ-?」
 シグナルビームはルナの右前脚に当たると弾かれ明後日の方向へと弱弱しい光を放ちながら飛んで行った。跳弾に似たよな現象がシグナルビームで起こったのだった。ルナの身には傷も残らなければ痛みすら感じなかった。いったい何のつもりかと目の前のエイリンを見るが目に涙を溜めて息を荒くし見るからにパニックに陥っている。ルナは手加減の意も込めてエイリンに飛びかかった。
「そんな攻撃じゃ効かないっさー!」
 飛びかかっただけでエイリンは仰向けという最も危険な体勢を許してしまった。よっぽど戦場に慣れていないのかとルナは不思議に思いながら前足に悪タイプの力を宿して腹部を殴りつけた。
「駄目押しさー!」
 もちろん、戦場慣れしてないであろうと予想したルナだったがどうやら侮っていたらしい。一度殴りつけただけなのにもかかわらず悲鳴を上げることなく意識を失ってしまった。
 四肢の力が完全に抜け弱々しい呼吸だけ。本当は気絶していないのではないかと疑ってしまうほどに呆気なかった。しかし、その線もないだろうと気が付いたのはエイリンの口元からぽたぽたと血が垂れてきた頃であった。これが内臓からくる出血だとしたらと思うとルナはぞっとしてエイリンの血を拭う。赤いスカーフに染みができてゆくが一向に出血が止まらない。いよいよ不安になってきたルナはエイリンの袋をあさる。何かいいものは入っていないかと淡い期待を込めて探すが見たこともないような草と木の実ばかり。諦めエイリンの方へと向くと、風にあおられエイリンのナース帽が地面へと落ちた。そこから転がりでた小さな入れ物。それには応急薬と小さく、綺麗な文字で書かれていたのだった。


 リーフ隊の中にエイリンの悲鳴をいち早く察知する者がいた。ただならぬ雰囲気を纏わせた悲鳴。それは命の危険を表わす声。リーフ隊のブラッキー、ミヅキはハウンドを置いて駆けだした。
「お、おいっ! ミヅキ!」
 ハウンドの声を聞かずに額に汗を浮かべ走るミヅキ。いつもならばハウンドの言うことを大抵は聞くのだがどうにも様子がおかしい。エイリンの悲鳴が周りの戦いの音で聞きわけることのできずにいたハウンドにとっては余計に理由が分からなかった。いつもはこれほどむやみやたらと走りだしたりはしない上にミヅキは体が小さいだけではなく発達も遅かったようである。筋肉と呼べるような肉の付き方はしておらずにすぐに体力が底をつく。
 立ち止り息を整えるミヅキに追いつきその背中をさするハウンド。今のミヅキの様子を見ればただ事ではないということだけは分かる。ミヅキが息を落ち着かせると再び走り出す。そこは戦場とは離れた林の中であった。


「…薬さー。これを飲ませれば助かるさ?」
 錠剤のいくつか入っている袋をじっと見つめてルナは言う。ルナは地べたに座りエイリンの上体を起こしあたりを見る。水などは特に見当たらないため先ほど騙し討ちの時に潰れなかった木の実を取出し、力なく開くエイリンの口の上で果肉をゆっくりつぶしてゆく。果汁とともにエイリンの持っていた薬を口の中に放り込む。口からぽたぽたと果汁が零れ落ちるのを拭いながらエイリンが飲み終えるのを必死に待つ。
「ふぅ、ひとまずはこれで安心さー」
 ほっと一息。エイリンの口内に何も残っていないのを確認する。華奢な体を再び横たわらせるとついさっきダメ押しを直撃させた腹部を見る。赤く腫れている程度かと思っていたら少しの時間がたつ間に内出血のせいで青黒く色づいた皮膚が乱れた毛並から覗いていた。
「……悪いことしたっさー…」
 まさかここまで弱い体をしているとは思ってもいなかったのだ。別の意味で確かに侮りすぎていたのかもしれないとルナは俯いた。

「キミ……か」
 ルナは一瞬ぞくっと背中に寒気を感じた。掠れたような声でうまく聞き取れなかったのだが威圧感だけは感じる。尋常ではないほど空気が重かった。これはエーフィでなくともきっと分かるものだと思いながらルナは振り返った。
「キミが……。咏凛姉を…」
 そこには自分の体長の2分の1ほどのブラッキーが立ちルナを見ていた。その表情は無表情。言葉に力もこもっていない人形のような存在。しかし、感じられる目の前のブラッキー、ミヅキのただならぬ雰囲気。このプレッシャーが目の前の子供のような存在によって引き出されているとするならば、その歪んだ意志は計り知れなかった。
「許…さない。逃がさない………。  生かさ…ない」
 最後の一語を聞いたとたんにルナの頬に汗が伝った。逃げなければ危ない。冷静に状況を判断し始めたルナの目にもう一匹のポケモンの姿が映った。ミヅキに付き添っていたハウンドである。
 ミヅキが今何を思っているのかを正確に判断することはハウンドでも難しかった。しかし、このままでは良くないことが起こるのを感じ取ったハウンドはミヅキを宥めようと横からミヅキに語りかける。
「ミ、ミヅキ…落ち着け、な? リーフ隊長からも殺すことは止められているだろ?」
「………じゃあ……狂わせる…だけ……」
 無表情でそうハウンドに言い放つ。ハウンドは頭を掻くと一言「やりすぎるなよ?」と言い聞かせ後ろに下がった。このやり取りを聞いていたルナは逃げ出したい気持ちでいっぱいとなっていた。祈るような気持ちで後へと下がろうと右後脚を下げたのだが…。
「黒い…眼差…し」
 ずっと微動だにしないミヅキの目を見ていたルナは目をそらすこともできずにその眼光に射すくめられる。下がりたくとも下がれない。戦う意思のある行動のみが許されるこの状況の中で逃げるという選択肢を失ったルナはどうしていいのかわからずにおどおどするしかなかった。

「待ちなさいあなたたち!」
「……ん?」
 この緊張の中あわてて転がり込んできたエーフィがそう叫ぶ。その首にはしっかり赤いスカーフがまかれている。水を差されたミヅキは表情を変えずにその乱入者を見る。
「あっ。ソルっさー! た、助けてほしいさー!」
「はぁ……。もとよりそのつもりよ」
 喜ぶルナを尻目にため息をつくエーフィ、ソル。ミヅキはハウンドと目を合わせてからミヅキを前線に出したフォーメーションを変えることなく身構える。
「でも、それよりも…。 あなたたちと少し話をしたいわね」
「はな…し?」
 ミヅキが構えを解くことなくそう聞き返す。なるべくなら戦いだけは避けたいソル。諭すようにミヅキに向けて話し出す。
「ええ、そうよ。 ……正直、私たちはあなたと争う理由はないわ。
 戦争だからといっても分かり合える相手とは分かり合えたほうがお互いのためかと思わないかしら?」
「………理由……」
 そうぼそりと呟くとミヅキが牙を見せる。完全に威嚇されていることに驚いてソルがルナにひそひそと話しかける。
「ルナ……あなた何したのよ」
「さ…さー………」
 バツが悪そうに後ろを指し示すルナ。そこには果汁を飛び散らせて倒れているエイリンがいる。全く気が付かずに今とんでもないことを口走ったのかと頭の中を真っ白にしているソル。そんなソルに前足をついて謝るルナ。
「も、申し訳ないさーっ」
「……逃げる…っていうのも無理そうね…」
「黒い眼差しくらったさー…」
「……逃げることも和解することもできないのね……」
 ソルがそう言うと未だ襲い掛かってこようとする気配のないミヅキへと全神経を集中させる。表情のない仮面のような顔をした彼の中でいったい何が渦巻いているのか、それを知ろうと心を研ぎ澄ませる。
 しかし、見えない。何も見えなかった。調子が悪いのかと何度試みるがまったく見えない。ルナに向けてみれば動揺しまくってビビッているのが手に取るようにわかるのだが小さきミヅキにはその技が効かなかったのだった。
「……キミ、なんかに、ボクは……わから…ない」
「っ!」
 逆に自分の行動を読まれていたことに気付き、心を読むのをやめる。正直、気味が悪い。目の前の得体のしれないポケモンに恐怖を抱かざるを終えないソルだった。
「なんと、でも……思え…ば……?」
 少しだけミヅキの瞳が揺れると、そう言い放った。その言葉に含まれる意思は諦めか非難か、それとも…。 自分の心が逆に読まれたことと、ミヅキの瞳が少なからず揺れたのを見てソルは驚く。前者は言うまでもない、ブラッキーが使えないはずの能力を行使していることへの驚きであった。ますますミヅキという名のブラッキーが何者かわからなくなるソルであったが一つ、安心したこともあった。 ミヅキの目が動揺に揺れたということ。その瞳の動きは生き物である証である。迷い、不安、悲しみ。どれも生き物であるからこそ持てる感情であろう。もし、この時も瞳を動かさなければ目の前のブラッキーは化け物か生き物の心を持たぬ何かということになる。そういう点では、気味悪さも多少は薄れたのであろう。

「……いく、よ」
 掠れた声が聞こえた。それはまさしく目の前のブラッキー、ミヅキから発せられた声である。その眼は相変わらずの無機質なものと変わりルナを見据える。その横のハウンドも身構え戦いの準備が整えられる。ルナは逃げられずに前線に出ているためにソルが後ろで援護するような形となっている。

「……うぅ、仕方ないっさー。いくっさー!」
「そうね。しっかり守りなさいよルナ」
「もちろんっさー!」

「ハウンド……よろ…しく」
「ああ、もちろんだミヅキ。 ただ、本当にやりすぎるなよ?」
「………うん」
 かくしてこの地でも激戦が始まるのであった。 怖いほどの静寂を味方に持つミヅキ。その横に控えるハウンドはどのような戦いを見せてくれるのであろうか。
 互いを思い、嫌な顔一つせずに戦場に立つソルとルナ。その目の前には不気味な黒猫と、それを打ち消すかのような飄々とした猟犬が。この者たちもこの世界でいったいどのような名勝負を見せてくれるのであろうか。




「ルナ、攻めなさい!  ……シグナルビーム!」
「了解っさー! アイアンテール!」
「ミヅキ、そっちは任せたぞっ。悪の波動!」
「………」
 一人沈黙するミヅキに向けられる虫の力を宿した光線。エイリンのそれとは威力が桁違いである。そのシグナルビームを横合いから薙ぎ払ったのはハウンドの悪の波動であった。黒く、螺旋状に渦巻くそれがシグナルビームを掻き消しその役目を果たす。やはり、エスパータイプの使う虫の技よりも悪タイプの使う悪の技の威力が高いというのは致し方ないことなのであろうか。
 一方、大きくしならせたその尾を動かないミヅキの顔面に振り下ろそうとするルナ。回避行動の一つも取らないことに違和感を覚えながらもチャンスはしっかりつかむのが悪タイプ。勢いよく尾を振りおろし、ミヅキの顔面へとお見舞いさせる。 ……つもりであった。当たる瞬間、ブラッキーとは思えぬ速さでその尾を抜け余力で前へと飛び出すルナの背を軽く押したのだった。その拍子に派手に転んだルナに後ろから居合切りを食らわせるミヅキ。大した威力にはならないものの、命中を確信していた技がこういとも容易く避けられ、さらに転がる背中を押されたのだ。読心術を使わずとも全身で悔しさをかみしめているのがわかる。しかし、体の変化がわかったのはルナが起き上がってからであった。足が重いうえに先ほど切られた場所がずきりと痛んだ。普通ならばこの程度の傷は苦にもならないはずなのであるが…。
「……肩透かし…?」
 そうぼそりとソルが呟いた。今のルナの状況を見て考えられることは一つ。そもそも、ブラッキーが何の補助もなくあんなに機敏に動くこと自体"体が小さいから"というだけで片付けられるわけがない。
 ミヅキの肩透かしが発動。ルナの技を受けながし、その耐久力と機動性を奪ったのだった。ルナはこの状況を不審に思いミヅキを見る。
「な、なにをしたっさー!」
「……さあ…?」
 そう答え、ルナを見るミヅキ。その目はやはり、何の光も灯していないように見えたのだった。


 ルナは自身の体に異変を感じながらもミヅキと再び対峙する。ミヅキは相変わらずルナをじっと見ている。ソルはタイプの都合上あまり前には出たくはないこの状況ではルナを後ろに押しやって自分が前に出るわけにもいかない。
 次はミヅキが先に動いた。素早さを奪われたルナに向けて奇妙な色の光を放つ。一度は守るで防ぐものの、もう一度使われてしまっては避けることすらもできなかった。目に悪そうな色の光が眼前に迫った瞬間、ルナの視界からすべてが消えた。

 暗闇。
 その中にルナは立っていた。自分の足が地についているような感覚はありながらも右も左も、前も後も上も下も、光を失った暗闇の中であった。
 なぜ、自分がこんな場所にいるのか、思い出せなかった。思い出そうとすれば頭がずきりと痛む。歩こうとしたが、暗闇の中にむやみやたらと入っていけるほど肝が据わっているわけでもなかった。
「…さ? ソル、どこさー?」
 混乱の症状からか、自分が戦っていたことすら記憶にないようにルナはソルの姿を探すためにふらふらと歩きだした。

「ル、ルナ? しっかりしなさい!」
「ソル、どこにいるっさー?」
 ソルの声も届かず、ルナはふらふらと前へと歩んでいく。ミヅキたちの前へ。ミヅキが無表情のままルナに近寄る。ソルが止めるために攻撃を仕掛けるもののハウンドに再び邪魔をされる。焦燥感を募らせつつルナを見るがルナは歩みをとめない。ミヅキの眼前に立ったところでミヅキが尻尾を硬化させ身構える。対してルナは相変わらずの呆けた表情をするのみ。ミヅキが地面から跳び上がるとルナの左頬にアイアンテールを打ち据えて見せたのだった。
 派手な音が響き渡り後ろへ吹き飛ばされるルナ。何とか不器用ながらも受け身を取ると頬を押さえて叫んだ。
「い、痛いっさー!」
「…ルナ。何やってたのかしら?」
「わ、わからないっさー…。急に誰もいなくなったっさー」
「……本当にさっきのは怪しい光だったのかしら?」
 ソルがぼそりと疑問を呟くとミヅキを見る。ただでさえ雰囲気が不気味なのだがこうも得体のしれない技ばかりを使われてはどう対処していいのかが見えなくなるのだった。
 それに対してのミヅキたちは余裕綽々であった。タイプ相性的にも今現在かなりの優位に立てている。自身を奮い立たせて、意気を高めているハウンドとは対照的にミヅキは眉ひとつ、口元すら微動だにさせないでいた。
 そんな中、ルナが再び動き出した。下がった素早さでも横へステップを踏みながらミヅキへと接近する。ミヅキが怪しい光を放つが動き回られているためになかなか当たらずに躍起になっているその頃。ハウンドへ向けてシグナルビームが撃たれたのだった。間一髪避けると更にシグナルビームが飛ばされてくる。ソルの姿はルナとミヅキが戦っている後ろ辺りにあるのがなんとなくわかるのだが、正確に狙い撃つのはハウンドの持つ技では難しい。横へ駆け前へと出たところに再びシグナルビームが撃たれる。一直線に伸びる光線から再び避けようと試みるものの後ろ脚を掠り唸り声をあげるハウンド。ソルと向き合うと口元から炎をちらつかせた。
「…?」
 ソルが訝しげにハウンドを見るが、その行動を悔やむこととなる。ハウンドが口の中で溜めた火球を勢いよくソルへと飛ばして見せたのだった。突然の攻撃に驚くソルは反射的に横っ飛びで回避を試みるが小さな炎は瞬間的の広範囲に広がり、言葉通り一帯を焼き尽くしたのだった。ソルの右脇腹に炎が届く。技の特殊な力によってか、それとも先ほどの奮い立たせるが引き起こしたのか、ソルのベールのような体毛を焼き、そこに火傷のような跡を作る。
「あぐぅっ……!」
 痛みをこらえるソルの方へとルナは振り向きつつ目の前の戦闘寄りの動きを見せるミヅキを抑える。油断すればルナも倒れてしまう。今はソルを信じて目の前のミヅキを抑えることに集中することにしたのだった。
 ソルに火傷を負わせたハウンドであったが、しばらくして自分の体にも違和感があることに気が付く。脇腹がひりひりと痛む。そこに前足を持って行ってみるとずきりと痛み血が肉球を赤く染めた。先ほどソルを焼いた場所と同じ場所に火傷の跡があるのだった。痛みをこらえつつソルを見ると不敵に笑った。
「毒々!」
 突然横に向けて黒い毒の瘴気を放ったソル。素早い攻撃に避ける術無くその瘴気を浴びるミヅキ。ハウンドが悪の波動を撒きながら速足を発動させミヅキのもとへと向かう。対するソルはでたらめに撒かれた悪の波動を軽くかわしルナを呼び戻し、回復に入る。
「おい、ミヅキ! 大丈夫か?」
「うっ……げほっ…」
 顔を青くするミヅキが地面に血の混じった唾を吐く。ハウンドが背中をさすりながら早急に2匹を倒す考えをまとめ始めた。速足の発動している自身を擲ってでも何とかしなければ、そんなことを考えるハウンドの背中の毛を小さな前足がぎゅっとつかんだ。
 ハウンドの心を読んでしまったのかミヅキが深呼吸するとその横に並んだ。ハウンドがミヅキの頭を軽くなでてやると2匹を見やった。ルナは肩透かしの影響が、ソルには火傷。そこまで悪い状況ではないのだと自分を励ますと覚悟を決めたハウンドの真のスピードでソルへと突っ込んでいった。後ろからはミヅキの怪しい光でも放たれているのであろう。後ろは振り向けなくなったハウンドは再びソルへと勝負を仕掛けるのだった。体中の根気を体当たりに乗せて相手へとぶつける技、空元気。大きく跳躍した先のソルへとハウンドは突っ込んでいった。
「ぅおおおおおぉぉっ!」
「シグナル……ビーム!」
 ハウンドの攻撃とルナの光線がぶつかり合う。捨て身に近いハウンドの攻撃にシグナルビームが押されはじめる。念じる力を強くするソルとハウンドの間で行き場を失った2つのエネルギーが炸裂した。
 白煙が辺りを多うが、その煙の中でさらなる勝負の音が鳴り響く。爪が大地を削る音、技のエネルギーが敵を討つために放たれる音、荒い息遣い、唸り声。
 一方はエスパーで敵の位置を探りつつ、一方は悪の勘を頼りに。その戦いを続けた。



 シグナルビームを距離を取りつつ放つソル。至近距離での悪タイプの技は避けにくい。ロングレンジなソルの技構成に適した距離をハウンドから図り、一気に距離を離した。中途半端に近づけば炎で体力を削られかねない。接近すれば目も当てられないであろう。砂煙から飛び出し木を背後にソルがハウンドを見据える。火傷は体力を削りながらも技を出す分に支障はない。ハウンドの姿を砂煙の中に捉えるとその場へ向けてシグナルビームを放つ。しかし、速足の発動しているハウンドを完全に捉えらえることなどできるはずもなく、寸でのところでそのシグナルビームをかわされる。今のままでは急接近を再び許してしまう。かといって無闇やたらと後ろへ下がればミヅキを食い止めているルナが孤立してしまう。ソルは今一度後ろへ大きく跳躍するとルナに呼びかけた。
「ルナっ」
 ただ名前を呼んだだけだがどういう状況に陥っているのか分からないわけではない。ミヅキの怪しい光を護るで弾き返すとルナがソルの前に立った。ミヅキとハウンドがそこで合流するが、前のような覇気が徐々に薄れて行くのがわかる。ソルとハウンドは動くたびに火傷がキリリと痛む。ルナは相変わらず肩透かしの影響を受け、一撃が痛手となっている。一番この中で顔色が悪そうなのはミヅキであった。普通の毒とは違う、猛毒状態は時間が経過するごとにその体から動くための力を多く奪い取っていく。ルナやソルには悟られていないようであったが、ハウンドはミヅキが月の光で回復しながら戦っているのがわかるのだった。
 ミヅキが再び咳き込む。口元からやはり血が流れているのを見て長期戦には持ち込めないとハウンドが焦燥感を募らせる。ミヅキの体力も確かに他のポケモンよりもある方なのだが体内から侵される毒に体力の多さは無意味である。
 ハウンドがミヅキの背中をさする。ここは、分かれて戦うよりも確実に個々を落とすことから始めようとハウンドが耳元で囁く。ミヅキが耳を揺らし、小さく頷くとハウンドとミヅキは駆け出した。

 ミヅキが先ほどから何度も使っている怪しい光が再びルナへと襲いかかろうとする。ルナは再び護るを繰り出すことに成功し、怪しい光を防げると思いきや、その光はルナを避けソルへと進んでゆく。まさか後衛の自分に怪しい光を撃ってくるなどと夢にも思わなかったソルはミヅキの幻覚の手の中へと落ちた。先ほどルナが見せられたのと似たような効力が働いているのであろう。しきりに辺りを見回しルナの名を呼ぶ。ルナがハウンドの攻撃を護るの余力で防ぎながらソルに呼びかけるも気が付く様子がない。
 護るが解除されると共にハウンドのアイアンテールがルナの頭上、耳の少し上の辺りをかすめる。混乱とは少し違った様子のソルをかばうように再びその前に立ちふさがるルナ。
「…今……」
 ミヅキが口の中に残った血を地面に向けて吐きだすとそう言った。ハウンドが速足で強化されたスピードに上乗せしてニトロチャージを発動する。黒い体毛によく映える赤い炎を前面に展開してルナへと突っ込んでいく。護るを使うこともできないルナは普段は隠れている右前脚の爪を露わにしてハウンドへと居合切りを放った。ハウンドの左前脚に浅い切り傷ができた直後にハウンドのニトロチャージがルナへと当たる。肩透かしで下げられている耐久力だったがその場に踏みとどまると焦げ臭い臭いを振り払うように体を振るった。それと同時であった、ソルが混乱から回復したのは。
「!? ソ、ソル…平気さー?」
「え、えぇ……。ルナの声が聞こえたら、あたりが明るくなったような気がして……」
 ソルが曖昧な記憶から必死に答えを探ろうとしているうちにルナはふらりと大きく体を揺らすと前のめりに倒れた。
「ル、ルナ! しっかりしなさい!」
 呼びかけるソルに視線で答えながらも立ち上がる気力すら削られてしまったルナは荒い息をつくだけであった。思えば勝負の初めに肩透かしを食らわされたのにもかかわらず敵の攻撃を受け続けていたのだ。こうなっても仕方がない状況なのではあった。

「おい! ミヅキ!」
 ソルがルナに気を取られている中ハウンドの慌てふためいた声が聞こえた。慌ててソルが顔を上げるとルナと同じようにうつぶせに倒れているミヅキがいた。とうとう猛毒に体力を底の底まで削られてしまったようで目を瞑り、口から弱々しく空気を吸い込んでは吐く作業を繰り返している。
 どうしようもないハウンドが泣きそうな顔をしてミヅキに呼びかけるがミヅキは起き上がってはくれなかった。そんな中ソルが立ち上がり、ルナのもとから離れた。火傷跡を刺激しないように軽く走り向かったのはエイリンのもとであった。エイリンはその場にすやすやと寝ている。どうやら傷は全く治ったようで特に目立った外傷がない。ついさっきまでルナの不意打ちにより倒れていたのが嘘のようである。
 そんなエイリンを軽く揺さぶる。エイリンが細くその目を開けるとすっと起き上がった。
「…………」
 訝しげにエイリンが赤いスカーフを見る。もうパニックになったりはせずに深刻そうな顔をしている目の前の同族の様子を見た。殴られたはずの傷が治っていたことに少々の疑問を感じて顔に飛び散った果実を拭くエイリンは口をつぐんでいたがやがてソルが話を切り出した。
「2匹倒れてまともに動けないの。 ……見たところ、医療関係のポケモンよね?来てくれるかしら」
 早口に言うソル。それを聞くとエイリンは地面に落ちたナース帽をかぶりなおすと言った。
「敵の指示に従うくらいならここで舌を噛み切るわ」
 その言葉を聞いて悔しそうな顔をするソルが言った。
「……あなたの所の兵も一緒なの」
「そう……わかったわ。 あなた、敵なのにお人よしね」
 そう言ってそっけなくソルに塗り薬を渡すとソルが指示した方にエイリンは歩いて行った。ソルが手渡された塗り薬に目をやると綺麗な字で『火傷用』と書かれていた。
「お人よしはどっちよ……」
 ため息をつくソルは薬を脇腹に塗りつけながらエイリンの後へついて行った。



「ミヅキ! あなた薬持っていかないからこうなるのよ、心配かけないでくれるかしら! もう……っ」
 エイリンの泣きそうな声がその場に響いたのはルナもすっかり元気になり、ハウンドの火傷も直し、ミヅキの毒を抜き去って傷を治した直後であった。
 結局、この戦いはお互いに引き下がることで決めたのだった。ルナとミヅキが解せないような顔つきをしたのだがエイリンが明らかに毒々しい色をした液体を取り出して威圧したため、これ以上の無駄な争いを避けることができた。ソルとルナはカンナギ兵の支援へ戻り、ミヅキとハウンドは潰れてしまった分の木の実集めをするエイリンの手伝いと護衛を務めることとしたのだった。






「この熱気……近くにいますね」
「この威圧感……すぐ近くにいるようじゃな」
 2匹のイーブイが風に乗って運ばれてくるライバルの微弱な気配を頼りに林を歩く。さほど時間をかけることなく2匹は開けた場所に出て、そこで互いの姿を見た。

 もはやこの2匹に戦う前の言葉など必要ない。他方は以前の雪辱を晴らすため、他方はただこの特殊な同族に強きを求めて。それをお互いはわかっている。
 辺りの兵士がそそくさと逃げていくほどこの2匹の間には近寄りがたい雰囲気があった。それが今から混ざり、ぶつかり、爆ぜようとしている。
 他者を凌ぎ、種族の限界を超越した2匹が戦う。片方は大胆に、片方は繊細に、全く異なる性質を持ちながらもその大元を力としている2匹が対峙する。

 空気が張り詰めた。それを合図に、2匹は同時に身構え、その力を解放した……。



「火炎弾!」
「いきなりですか……」
 電光石火で迫る火球を避けるアルト。サマエルは既に口元の布を捨て電光石火で回避するアルトの姿を確認すると眼前に再び火球を形成し、それを飛ばす。まさか火炎弾などという高火力の技を続けて出せるほどだとは思ってはおらず、電光石火で再び回避を試みる。
 火炎弾が着弾した時の爆風を利用し、サマエルとの距離を詰めようと一気に加速するアルト。このまま離れて避けるだけの戦いは彼女の性にはあっていなかった。
「相変わらずワンパターンですね」
「それはそなた自身のことをさしておるのかのぅ?」
 赤みを帯びていたサマエルの目が青く光るのに気が付いたアルトは横へ飛び飛びにサマエルへと接近していく。サマエルは念力でアルトを捕らえようとしているものの、軽いフットワークの前に連続で出すには不向きな念力では分が悪い。サマエルは念力で跳躍力を増幅させると後ろへ大きく飛んだ。接近戦はサマエルが苦手とする分野でもある。
 アルトは電光石火を間に挟みつつサマエルへと接近しようとする。サマエルは近づけさせまいと念力を発動させつつ後ろへ退く。互いが味方とする間合いの違う戦いでは自然、間の取り合いとなる。互いにスピードスターや火炎弾で敵のペースを乱そうとするが他方は敵の技を力でねじ伏せ、他方は華麗にその技を避ける。

 凍ったように動かない戦局を先に動かしたのはアルトであった。サマエルの足をからめ捕るためのスピードスターを拡散させながら連続で撃ち込んだのである。サマエルの火炎弾がいくら強力といえども拡散しながらこちらへ向かってくるスピードスターをすべて蹴散らせるほどではない。前方に念力を放ち、サマエルに襲いかからんとするスピードスターを叩き落としてゆく。スピードスターに気を取られたサマエルのその一瞬のすきにアルトは自身にスピードスターを纏わせると電光石火で横合いからサマエルへの急接近を試みた。
 サマエルがアルトの突撃に気が付いたのはすでにサマエルが避けきれないであろう位置まで接近された後の事だった。歯を食いしばるとサマエルは念力でアルトの動きを抑止しようとする。しかし、勢いのついたアルトをとめることはかなわず、念力の壁は突き破られた。
「この…程度ですか!」
 サマエルに近づいた瞬間に八つ当たりを浴びせようとするアルト。しかし、むざむざと直撃するわけにはいかないと電光石火を発動して何とかアルトの攻撃から身を守ろうとするサマエル。しかし、やはり避けることかなわず右後脚に八つ当たりがぶつかる。
「ぐぅっ……」
「…直撃は無理でしたか」
 痛みを堪えつつ八つ当たり後の小さな隙にサマエルは炎を繰り出し叫んだ。
「煉獄…!」
 サマエルの繰り出した炎は霧散したかのように見えたが、次の瞬間アルトを取り囲むように炎が一斉に燃え上がった。その炎は渦を巻き、アルトを巻き上げようとする。この炎の中で焼かれれば身が持たないであろうことを悟ったアルトはスピードスターを打ち上げ、炎の渦に出来た小さな穴に向かって電光石火で跳び上がった。
「熱っ…」
 体に纏わり付く火の粉を振り払うと空中でサマエルを見る。そこには口元で火球を形成しているサマエルがいた。空中で急な回避などできるはずもないアルトに向けて火炎弾が放たれた。

 爆発音が辺りに響いた。それは地面を揺らし、空気を震わせた。火炎弾が空中で炸裂した場所には灰色の煙がその一帯を隠していた。爆発音の後に軽い何かが地面へと落ちてきた。それは真っ黒に焦げ、何が元だったのか判別がつかないような色をしていた。
「……こんなものなのかのぅ?」
 あの強敵がいとも簡単に倒れるはずがない。それを信じての渾身の火炎弾だったのだが、現実はひどく違うものなのだとサマエルは未だに煙の残る空を見上げた。小さくため息をつくと焦げ臭いこの場から立ち去ろうとした。



「何を勘違いしてるのですか?」
 凛々しい声が耳に届いたのと同時に脇腹にアルトの右前脚がめり込んだ。気配を消し、十分な間合いから放たれた八つ当たり。それは、サマエルの体力を削りきるのには十分だった。ぐらりと体の重心が傾くと同時にアルトの方へとサマエルはよろける。歪む視界の中で先ほど落ちてきた黒い塊、否、アルトの身代わりが風に吹かれた塵のように空気に溶け込んでいくのを見た。
「……勝負ありですね。 ……?」
 よろけていただけなのかと思えば意識まで失ったようでパタリとアルトの目の前に倒れた。アルトが少し驚いた顔をした後にすっとサマエルの左後ろ脚に前足を振り上げた。防衛戦である以上、敵の兵の数は減らさなくてはならない。ましてや、火炎弾や煉獄を操る兵を野放しにはできない。しかし、アルトはサマエルの息の根を止めようなどとは思えなかった。そんなことをしてしまえば、フレアたちに合わせる顔がない。そう感じたアルトは前足をサマエルの右前脚に振り下ろそうとした。

「や、やめろぉっ!!」
 そこに雄の子供のような声が響いた。急に空気の中から浮き上がるようにして現れたそれはアルトの振り上げた前足を掴んだ。
「!?」
 呆気にとられているアルトとサマエルの間にその小さき者は立ちふさがって叫んだ。
「僕はビクティニ! サーちゃんのトモダチだ!」
 ポケモンの雄叫びと技の衝突音が交わるその戦場で、そのポケモンはアルトの目をまっすぐ見つめ、声高にそう言った。







「うぉっと、あぶねあぶねー」
 何度目か分からない冷凍ビームをステップで避けたレイが木々の間を見る。
「流石軍師肌ってやつか? シャワーズなのにそうよく逃げ道を確保できるな」
 レイの声を聴いている間にもアクアはこのあたりの地形を思い出しつつ慎重に歩を進める。ある時は隠れつつ、ある時は技を交えながら大胆に。これのためにレイもなかなかアクアを見つけられずにいるのだった。先ほどの冷凍ビームを撃った方角にはもうアクアがいないのは先ほどから繰り返されているこのやり取りで大体わかっている。
「…はぁ……」
 お互い無傷のまま均衡するという珍しい状況の下でレイは無視をしたいのはやまやまなのだが、雄のプライドは時によってとても厄介なもので戦いを避けようとするレイの足を止めてしまう。先ほどから放電も何発か撃っているのだが効き目は無いようである。木の位置を計算しつつ安全地帯を割り出しながら隠れているのだろうが、レイにはよく分からない。自分とは戦闘スタイルが違うのだと割り切りつつ見えないアクアに闘争心を燃やした。
(……ここで足止めできれば上々ですね。フレアたちはうまく食い止めているでしょうか)
 静かに頷くと再び場所を変えるために身を低くしてアクアは歩き出した。レイも片目で辺りを見回し、ポケモンの勘を頼りにアクアの位置を探った。
 静寂の中の勝負、これもまた一つの勝負なのだろう。敵に悟られずにいられたものの制するこの勝負で果たして勝つのはどちらであろうか。


(そろそろ此処の戦いも終わりにしておきましょう)
 アクアが時間の経過を確認しながらそう思い、足元に落ちている手頃な石を咥えた。相も変わらず位置を割り出し切れていないレイの様子をこっそり木の後ろ側から見るとアクアは自身の背中の方を見た。なるべく首を大きく振り、遠くの方に着地するようにその石を背中に方向に放り出した。石の着地を見届けることなく身をかがめ慎重に、かつ早足で歩を進めるアクア。
 後ろで石が乾いた土の上に着地する音が聞こえたその瞬間。
「そこかっ!?」
 まさに一瞬であった。石の着地音が聞こえたかと思ったら木々に電気が走った時の破裂音がすでに聞こえていたのだ。フェイクに引っかかったことに一安心しながらもレイの反射神経の高さからより一層警戒心を強めた。

「ちっ……」
 焼け焦げた茂みを見て舌打ちをするレイ。フェイクだと気が付いたらしく続けて溜息を吐いた。先ほどまでなら再びここでかくれんぼが始まるのであったが、今回は違った。敵の動きを止めるための戦いを繰り広げようと、アクアは口の中にエネルギーを溜める。口の外でエネルギーを溜めた方が威力が高いのだが、そんなことをしていては感付かれてしまう。口の中である程度力を溜めると、冷気に変換してレイへと一直線の光線を放った。
「ぅおっ!」
 間一髪左側へ飛び退いたレイだったが反応が遅れたのだろう。直撃はせずとも感覚を奪う冷たい氷が右足に絡みついて固形を形成した。
「おいおい…。右側から不意打ちってのはひでーんじゃねえか?」
「そういえば…、見えないのは右目でしたっけ?」
 茂みからアクアの声が届く。返事をせずにレイが茂みに向けて電撃を走らせるが、やはりそこにアクアの姿はなかった。凍りついた足に電気を溜め、電気のエネルギーを熱へと変換して氷をさっさと解かす。自由になった足を軽く振るとレイは目を凝らした。次のアクアの攻撃を受けて立つかのように構える。

 アクアは死角となりやすいレイの右側へと歩を進める。正面から行くのは有効的な手段でも何でもない。やはり、タイプ相性も悪ければ素早さの違いの大きいこの戦いでは、こういう小さな弱点を拾って大きな隙を生み出す戦い方を強いられるのだった。
 レイも短期決戦を挑もうとしているのかしきりに小さな電撃を走らせている。これに当たれば体の自由が奪われてしまう電磁波。惜しげもなく使うあたりまだ余力は残っているのだろう。
「……」
 走る電磁波を茂みや木に逃がしながらレイの右側へたどり着くが、レイもじっとしているわけでもない。むしろ、戦いにおいて直立不動というのはただの的である。体の向きを変えるだけでもこういう勝負には大きく影響してくる。
 実際、アクアも攻撃するタイミングが掴みにくいようである。氷を口の中で溜めてはそのエネルギーを霧散させて攻撃を止めている。少しでも角度がずれれば攻撃は防がれるうえに、レイの早さならば反撃も容易に行ってくると脳内でシミュレートする。
 互いにこう着状態を保って10分ほど経つ。攻撃のタイミングを計るアクア、攻撃を見切るためにしきりに辺りを見るレイ。2匹にはこの時間が一時間以上にも感じられるほど長かった。レイがくるりとアクアに背を向け、氷で傷ついていた右前足の先を舐め始めた。アクアはこれはチャンスと言わんばかりに氷を溜め始める。未だにレイは後ろを警戒する様子を見せない。動きを止めるなら今であると、アクアは最速の冷凍ビームをレイの背中めがけて撃ち出した。
 冷気を纏うエネルギーは一直線にレイの背中に伸びる。レイの背中にあたるその瞬間。逃げることをせずに冷凍ビームの行く末を見ていたアクアとレイの爛々と光る左目が合った。一瞬背中にぞくりと得体のしれない寒気を感じるアクア。しかし、それと同時に氷の展開する音とエネルギーの破裂する音が聞こえた。

 霧のようなものが濃くレイの辺りに立ちこめた。成功したのかとアクアは姿勢を低め、目を凝らす。
 しかし、次の瞬間、霧散した水分の間を火花が走った。ハッと顔を上げた時はすでに遅かった。大量の電気が霧を伝ってアクアの体へ流れ込んだ。
「あっ……あぐぅぅ……っ」
 派手な破裂音が聞こえ、アクアの体が茂みの外へ投げ出された。電気は地面に逃げたようだが体の至る所が痙攣を起こしてしまっていて動くに動けなかった。まともに受けた10万ボルトに体が完全に麻痺してしまったようだ。地面についてるはずの左半身も感覚が戻っていない。
 今にも閉じてしまいそうな瞳でアクアの目の前に立ち、少しだけ俯くレイを見た。その時、アクアはレイの声を聞いたような気がした。
「お前、スゲーよやっぱり」

 何かを言い返そうとしたが、アクアはそこで目を閉じ意識を手放した。





『はぁ…はぁ……っ』
 乾いた土が吸い切れるかどうか怪しいほどの汗。その体のところどころに出来ている傷。2匹は身をかがめ、向かい合っている。すでに息は苦しく、足は悲鳴を上げている。目の焦点すらあっているか疑わしいこの状況で2匹は力に任せてぶつかりあった。
 しかし、敵の攻撃を防ぎつつの攻撃のやり取りに2匹はとうとう地面の上に突っ伏した。

 体中の葉が萎れているようにすら見えるリーフ。汗だくになっており、とげとげだったはずの体毛がすっかり乱れているライト。圧倒的攻撃力のリーフでも、絶対的な防御を持つライトでも、自身のスタミナには勝てなかったようだ。
「ひ、引き分けで……いい…か…?」
「う、う…ん……。 も、もう…むり……」
 結局散り散りになった部隊のポケモンたちは戻らなかった上に見物していたポケモンたちはリーフとライトのやり取りに巻き込まれあらかた伸びてしまっていた。
 疲れ切った2匹は背中に一陣の突風を感じるとハッと上を見上げた。
「や、やべっ……」
 ライトが無理やり立ち上がるとふらつきながら内地へと引き上げようとする。リーフが呼び止めると、光の燈った瞳でリーフを見つめ短く言った。
「またな」




 カンナギにそびえ立つ大ぶりな樹木を見下ろし、嵐を巻き起こす水神が敵の本拠地を見下ろす。先手必勝と言わんばかりにルギアは大きく翼をはばたかせるとその場の気流を乱した。轟々と空気の渦巻く中でその乱れた空気の流れを地上に向けて咆哮と共に打ち出した。
 まるで口から撃ちだされたかのように見えるその技、エアロブラスト。激しい風により、敵の叫び声さえその中に霞んで、わずかばかりの悲鳴のみがルギアの耳に届いた。しかし、その嵐の中で電気ポケモンが一斉に電撃を撃ち出した。大気中に走る電気さえもルギアは軽く操り、電気を空気ごと地面にたたき落とす。そんな中、誰が放ったのかルギアの上空に小さな黒雲が浮かんだ。気が付くのに遅れたルギアは強力な雷を繰り出す暗雲を前に右翼を広げた。

 雷は、間違いなくルギアの右翼を焦がしていたはずであった。下にいたパルキア連合の兵もそれを確信していたのだったが、雷はルギアの右翼に触れる寸前に、派手な音と共に電気の走る道を逸らした。ルギアの右翼に残ったのはほんの少し焦げただけの痕。困惑する下の兵を挑発しつつ、威圧するかのようにルギアは言い放った。
「ねえ、君たち。 マルチスケイルって知ってる?」
 下の兵たちがざわつく。その間にはすでにルギアは自己再生を終え、もう一度のエアロブラストを構えた。


 ライトが陣に戻った頃には、空気が激しく地面を抉った跡と、いくらか残っていた兵たちがそこにあった。その兵たちの中にフレアを中心としてライト隊の面々もそろっていた。誰も無傷の者はいないが、誰もひどく落ち込んでいる者もいなかった。
「…帰るか」
「……うん」
 静かにそう短く答えたフレア。ライト達はカンナギよりもさらに内部へ、歩を進めて行った。




 凱旋、というわけにはいかなかったものの、勝利を喜びカンナギの大部分の兵が過ごしていた陣跡地に新たな陣を敷いた。
 その隅の方にリーフ隊も寝るための場所を確保し、気が付いたらサマエルと一緒に違和感なくついてきたポケモンにリーフは声をかけていた。
「君は…だれ?」
「ボ、ボクのことよりも、早くサーちゃんをなんとかして!」
 運よく他の兵が駆けつけてきて、アルトを退かせることに成功したらしいが、なかなか無茶をするポケモンのようで、先ほどからずっとサマエルの身ばかりを案じていた。

「…そう、騒ぐでない」
 困るリーフと焦るビクティニが同時にテントの出入り口を見る。腹部に包帯をさらし状に巻いたサマエルに続いて、今回の戦闘の負傷者もテントに入ってきた。最後にエイリンとミヅキが入ると、一同はビクティニを見て訝しげな顔をした。
「! サーちゃん!無事?」
「う、うむ…。 余の事…じゃろう? 余は無事じゃが……」
 一瞬ためらった後にサマエルは申し訳なさそうにビクティニに聞いた。
「そなたは誰じゃ?」








そして明かされる過去へ。
次章、サマエルとフレイの正体が明らかに。

そして、新たな敵がリーフたちを苦しめる。


というわけでやっとこさ終わりましたよ。
いやー、ブイコレのおかげでスパートかけられたのでブイズに超感謝です。
こんどから進まなかったらクッションに頬ずりすることでモチベを保つ予定です(`・ω・´)
それでは、長かったこの章も終わりです。お疲れ様でした~


新緑の舞
剣の舞で攻撃力を高めつつ、リーフブレードを発動させる技。
その強烈な力により薙ぐ剣に木の葉は従い、敵を切り刻む。

・タイプ 草  ・分類 物理変化
・威力  90~180  ・命中 100

電磁障壁
雷の力を光の壁で霧散させずに保つことができるようになった壁。
あらゆる技の威力を半減させ雷で無力化する最強の盾。

・タイプ 電気  ・分類 変化
・あらゆる攻撃から味方を守る。物理技の場合雷分のダメージを与える。

肩透かし
敵の攻撃を受け流し対象となったポケモンの
防御、素早さを戦闘中1段階下げる。物理技に適応可能。

カサドール・フロスト
冷凍ビームと同等の高密度な冷気を氷の礫に劣らない速度で射出する。
氷塊は空気抵抗により鋭さを増し、対象を射止める。

・タイプ 氷  ・分類 特殊
・威力  95  ・優先度 +1   ・命中 95



アドバイス、コメント、誤字脱字の指摘などありましたら気軽にどうぞです♪
(コメント=みなみのコンティニュー上限)




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Last-modified: 2013-01-10 (木) 00:00:00
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