大会は終了しました。このプラグインは外していただいて構いません。
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書いた人 LuckyAsu
さて、まだ世界にポケモンという存在が発見されていなかった頃の話から始めよう。
場所は北京国際スタジアム。eスポーツタイトル英霊伝説、その世界大会予選Dリーグ最終戦、
彼が所属するチームキュベレイは決勝リーグ進出をかけた戦いの最終盤。
彼とは誰だって? ――所属のツイッチ選手だよ。
後世に残る試合ではなかったが……確かにスタジアムは燃えていた。
チームキュベレイの存続をかけた重要な試合だった。
「さあ3回目のレジェンドエネミーの出現です」
レジェンドエネミーを討伐して相手チームを倒せば決勝リーグ進出。
しかし勝たなければチーム解体、ツイッチは除名される事をコーチから告げられている。
「先に攻撃を始めたのはキュベレイです、相手チームDNAを寄せ付けません。
おっとここでDNAのえびふりゃー選手のダイブです! キュベレイの前衛を捕まえました! 有利になったのはDNA」
キュベレイの前衛が崩壊。チーム全体が終わったなという空気で包まれる。
遠距離ダメージ型のキャラを使用していた彼にとっては絶体絶命のその一瞬、全スキルを使用して前へ出る。
「おーっと! ツイッチ選手死にません! DNAの激しい攻撃をすべて回避してダメージを出しています!!」
目の前が真っ白になりそうなくらいの集中力で彼はチームメイトの声が耳に入らなかったと聞いた。
引き返せと声が聞こえた気がするが、マウスを動かす手は止まらなかった。
それでも、ツイッチはラルド選手の声だけは聞こえていた。
ラルドの操作するキャラへ追従し的確にサポートスキルを使用する。
「行け!! ツイッチ!!」
アドレナリンが駆け巡り息が荒くなりそうなはずなのにツイッチの呼吸は静かだった。
針に糸を通すような繊細な操作、相手の行動に一瞬で反応するその瞬発力判断力、これらすべてをもって全身全霊を捧げたプレイ。
しかし勝利には一歩届かなかった。
間合いスレスレのスーパープレイをえびふりゃー選手は見逃さない。
確実なツイッチ狙いでダンクシュートを叩きつけた。
「えびふりゃー選手、ツイッチ選手を捕まえたーー!! そのままノックダウン!! エース獲得したのはDNA、決勝リーグ進出です」
それからさ、試合が終わってから世界は変わってしまったんだ。
リーグD3位通過により帰国のチケットをコーチから手渡されたツイッチ。
目の前が真っ白になりぼんやりと配信者としてやっていくかと考えていたところ、奴らがやってきた。
「テンセント社が僕に何の用ですか」
テンセント本社ビル上層階、出入り口から黒服のガードマンがこちらを睨んでいる気がする。
ガラス張りの壁に社長机に社長椅子、今まさに社長と思わしき人が立ち上がる。
「突然呼び出して何が何だか分からないようだな。それも無理もない、だがこれを見れば一目瞭然だ」
社長は机に置かれたモンスターボールを手に取りツイッチに投げ渡す。
「スマホも使えないだろう。我社の新モデル、サメハダーG3をぜひ使ってくれたまえ1」
スマホが使えないってどういうことだとツイッチは疑問を抱くが、ポケットから取り出したスマホが圏外な事に気が付いてしまい事態の異常性に気が付く。
「サメハダーG3には最新のロトムシステムも内蔵されているからね。モンスターボールの使い方は分かりますか?」
はっ? と一瞬反応してしまうが、ツイッチは堪えてボールを開けようと試みるが開く気配はない。
「赤と白の間に丸いボタンがあるのわかるかな」
「は、はい」
「押したまえ」
ツイッチはボタンを胸元に向け、親指を押し込んでボールを開ける。
「ピッカ!!」
ボールの中から胸元へ現れたピカチュウに驚きそのまま倒れこむ。
目は見開き感触を確かめる。毛並みを感じる……ふわふわの体にハムスターをそのまま大きくしたような肌の感触を感じて、これが夢だと思い込む。
「何なんですか、これ……かわいいですね」
「君には我社考案の《ユナイトシステム》を使用してチャンピオンになってもらいたい」
「……え? でも僕、ポケモンとかやったことないですけど……」
ふむぅと社長は一呼吸おいてから指を鳴らす。
出入り口は開き黒服が衣類品が乗ったカートを持ってきた。
ツイッチはゾッとした、チームキュベレイのユニフォームに使い込まれたスマートフォン、腕時計に財布パスポート……共に戦ったラルド選手の物。
――テンセントの力は強大で、圧倒的な財力で出来ないことは無かった。
ツイッチが抱きかかえたピカチュウこそラルド選手他ならない。
「ピカッチュ!!(ツイッチ!! おい!!)」
「夢にしては悪趣味すぎない、もういいよ」
「どう受け取るかは君の自由だが…… ああユナイトシステムならチュートリアルがあるから――」
喋る気も起きないツイッチは言われるがままにピカチュウをモンスターボールに戻し、社長机の上に置かれたスマホを乱暴に手に取り部屋を後にした。
最初は夢だと思っていた、しかし打ちのめされる現実。
「悪い夢なら覚めてくれよ……なぁ」
空にはキャモメ、道にはリザードンを連れて歩くトレーナーにワンパチと散歩するおじさん。
気が付かない内にツイッチは、人とポケモンが暮らす世界へ誘わられていた。
そして後を付けてきた社長がツイッチの肩に手をのせてこう言ったらしい。
「真実を知りたければ、友を救いたければ天辺まで上がってきなさい」
覚めない夢はまだ続く。
皮肉なことに中国リーグは猛者が集う素人お断り状態で、ツイッチは門前払いを食らっていた。
その帰り、屋台が並ぶ香辛料の匂いがする路地で、プラスチックの椅子に腰かけメニューを確認する。
幸いスマホに振り込まれた活動資金は豊富で活動には困らなかったようだ。
「ポケモンってポケモンフードを食べるんだよな……」
「ぴか?」
「まあ多分大丈夫だよね、担々麺2つ」
ツイッチはスマホで情報確認を終えると、テーブルに伸びながらピカチュウに話し始める。
「チームメイトの誰とも連絡が取れないなんて……おかしな話だよね。配信サイトのアカウントも消えていて、僕の名前も何処にも載っていないんだ」
ピカチュウ――ラルドは返事をしようと口を開くがすぐにピカピカと鳴き声が漏れ出し口を閉じて尻尾をしおらしくさせる。その様子をツイッチは感じ取ったのか、少し表情が明るくなった。
「ピカチュウ、ラルドの行方とかチームキュベレイとか知ってないよ、なぁ……」
顔を上げて笑顔をを見せたと思ったらすぐにテーブルに顔面を押し当てる。
ピカチュウはペットボトル1本分くらいの間合いでまじまじとツイッチを見つめ続けていた。
なんて話していると担々麺2杯が運ばれてくる。
「ピカチュウは関係ないんだよな……ごめんな、こんな話して。食べよ!」
お題をスマホで支払い、ふたりはプラスチックのフォークを握りしめ、麺をすすり始め話を続ける。
「実力を見せろって言われたね。ジムバッチを集めろとも言われたし……スマホで調べれば何かわかるかな」
「ちゅぅぅっ! ぴかぁ……(まだ調べてなかったの……)」
ツイッチは担々麺を食べながらスマホを弄り、周辺の検索を検索した。
「ジム、結構あるみたい。ご飯食べたら行ってみようピカチュウ」
「ピカピカ!」
テンセントに中国リーグへの文句のLINEを送信するとシンガポールか日本か選べと聞かれ、ツイッチは日本を選んだ。
飛行機に乗って数時間、ピカチュウと共にカントーの大地に降り立った。
向かう先は都市から少し離れた田園が見えるチームバサラのトレーニングジム。
改変前の世界では有名だった彼だがこの世界は無名。
突如現れた白人はあまり歓迎されていなかった。
――実力を見せつけるまでは。
「ジムバッチ4つを3日で……ユナイトの成績も申し分ない……」
「契約していただけないでしょうか?」
バサラのオーナーはデコに拳を当てて困っている。
この感触は中国チームでは門前払いだったツイッチにとって嬉しい反応だった。
が、しかし。オーナーはペンを机に置き、ツイッチに下した案は期待通りではなかった。
「確かに腕はいいが如何せん年齢が……選手としてよりコーチとして雇いたい」
――それじゃダメなんだ……!!
ツイッチは汗を垂らし息を飲んだ。
確かにツイッチは26歳で若手として出てくるには年を取りすぎていた。
まあ、元英霊伝説プロプレイヤーなのだからそこは関係なかったはずだ。
「リーグ1はダメでも、リーグ2選手として契約してもらえないでしょうか」
日本リーグには2つのリーグが存在する。
最上級プレイヤーひしめくリーグ1と、リーグ1への参加権を奪い合うリーグ2
無論、ツイッチは最短ルートでリーグ1へ進出して世界を掴みたかった。
「うんん……とりあえず、ポジションを聞こう」
ツイッチは身を乗り出して「Carryです」と申し出た。
Carry、キャリーとは試合を運ぶもの、相手全員を戦闘不能にするチームの火力。
「キャリー枠は丁度空いている、私としてはコーチとして契約したいが……いいでしょう」
「また来ます」
ツイッチは時間いっぱいまで好条件で契約してくれるチームを探した。しかし、年を理由にリーグ1選手として契約を申し出たチームはいなかった。
チームバサラへ戻ってきた彼は練習試合でも頭角を現す。
気が付けばリーグ2が始まっていた。
順調に好成績で突き進むバサラT2。
しかしツイッチには全力になり切れないわだかまりがあった。
試合前の控室で、ピカチュウはツイッチのスマホを触っている。
「ぴっか、ぴっかちゅ(信じてくれるといいけど)」
スマホに『俺はラルドだ』と入力してメモ帳に保存している。
控室に戻ってきたツイッチはその現場を目撃すると
「スマホに悪戯していたのはお前か~~」と赤いぷにぷにほっぺを両手で摘まんだ。
ちゃあちゃあ鳴くピカチュウをぷにりながら、もう一度スマホを覗き入力された文字を確認すると軽くスクロールして、その文字を発見する。
「頑張れ……俺の事は心配するな……」
ピカチュウは目を細めてツイッチの胸元に後頭部を押し付けて耳をぴこぴこ揺らした。
「ぴかぁ~?」
ほっぺを触るのを止めふと目線を下ろすと、上目遣いで見つめるピカチュウと目が合ってドキッとしてしまい、頬を少し赤らめた。
「鳴き声でわかんないけど……ありがと、ラ……」
アナウンスが入り選手が呼び出される。
チームメンバーは会場入りを済ませており、ツイッチもピカチュウを連れに戻ってきただけだった。
「あの時みたいだ、行こう」
リーグ2暫定1位セブンスVS暫定2位バサラの試合が始まろうとしていた。
ヤマブキシティ某所。満員御礼の会場へゆっくりと足を踏み入れる。
心臓を撫でるような緊張感、観客の目線そのどれもが懐かしく心地よかった。
むしろこれが本調子と言うべきだろうか。
ツイッチは笑顔を取り戻し、指定されたユナイトシステムへスマホを接続させる。
遅れて登場したツイッチに対して、隣で鉢巻を締めなおしている顔の濃いチームメイトがヤジを入れる。
「待ってたぜ、いつも遅いけど何やってるんだ?」
ツイッチは軽く笑って「なんでもないよ」と流そうとする。
「ま、遅刻さえしなければ大丈夫だけどな! この試合も勝つぜ!!!!」
パシンッ!!
左手で拳を叩き活を入れている。彼の使うポケモンはルカリオ、とても彼らしい。
「さっさと調整を済ませてこい!!」
「わかった」
ツイッチは軽く返事をしてスマホを操作してユナイトシステムを起動する。
――ようこそ、ポケモンユナイトへ
ツイッチの周囲にホログラムが展開され、球体型の操作コントローラーが浮かび上がる。
スマホとモンスターボールの接続を確認して、動作を確認する。
ポケモンユナイトは全く新しいポケモンバトルの形、テンセントの高性能シミュレーターによる超高速進化バトルを売りにしている。
トレーナーは見下ろし視点でポケモンに指示を行う。
ツイッチの握るコントローラーを操作するとピカチュウが動き出す。
「……よしっ どう? ピカチュウ」
システム越しにピカチュウに声をかけるとぷいっと振り返り、目を細め少し低い声で「ぴーかぴーかっ」と返事をした。
「問題なしかな……トレモ切断。大会エントリー……」
周囲がホログラムで覆われ歓声が薄っすら聞こえるだけの空間から、
自分と同じようにユナイトシステムに接続した4人のチームメイトと合流した。
試合が始まる5分前、
テンセント支給の巨大ホログラム装置に贅沢に参加選手の手持ちのポケモンが映し出され、公開された。
――BANは無いんだっけな
ツイッチは英霊伝説を思い出してちょっとムズかゆくなった。
会場が試合開始を前に歓声が上がり、ユナイトシステムの中に居る自分にも聞こえる。
――この高揚感を感じると全てを忘れて気持ちよくなれるんだ
「レベルノーマライズ完了、野生ポケモン配置完了、ゲート……解放!」
実況が身を乗り出し開幕のコールを始め、開戦の狼煙を上がる。
『さあ間もなく始まりますユナイトジャパンリーグウィンター! バサラVSセブンスです!!』
「始まったな」
そう呟いたのはピチュー、見かけによらず声は渋い。
人間の頃のラルドは男前という言葉が似合う男だった。ポケモンになっても何も変わっていない様だ。
ユナイトは5対5で戦う新しい形のポケモンバトル。
両者チームのポケモン選択は
バサラ《ピカチュウ・ルカリオ・カビゴン・ゲンガー・ニャオニクス》
セブンス《フライゴン・サーナイト・シャンデラ・ギルガルド・ウインディ》
全ポケモンがたねポケモンへと引き戻され、フィールドに配置された野生ポケモンを倒し捕まえることにより急速にレベルアップを行う。
例えば、熱血漢の彼はルカリオでエントリーしているが、試合が始まるとリオルから始まる。
「1Lvでキテルグマ倒すよ!」
リオルの周囲にピチューとゴンベが待機している。
「草むら警戒どうする?」
「うーん……マスターどうする?」
リオルはキテルグマが出現するまでの数秒でマスターにアイコンタクトを送るが、返事は帰ってこないようだった。
「ガーディがちょっと怖いけど僕の方が強いと思うから大丈夫!」
「わかったー」
「……なんかあったらすぐに呼べよ」
「うんっ!」
ピチューは呆れてたが、すぐに真剣な表情に戻る。
キテルグマが登場すると、ゴンベはワイドガードで攻撃を防ぎ、ピカチュウは電気ショックでダメージを稼ぎ持ち場の下レーンへと戻っていく。
上レーンと下レーン、そしてレイドポケモンが登場する中央レーンの3つに分かれており、
その間にジャングルと呼ばれる危険地帯が存在するのがユナイトバトルフィールドの特徴だ。
リオルは仲間と協力して早期レベルアップを狙う。6Lvのキテルグマを倒したことによりレーンに向かったポケモンよりも強い時間が訪れている。
野生ポケモンや相手ポケモンを倒すと経験値だけでなくポイントが手に入る。
制限時間は10分、ポイントが多かった方のチームの勝利となる。
しかし敵も同じくキテルグマを倒しているだろう。
ピチューはガーディに警戒しながら、レーンに出現したポケモンを倒して素早くピカチュウに進化しなければならない。
「こっちの方が序盤構成だから早くケリをつけないとな。ゴンべ、ガーディの火炎車からのニダンギルの連続切りに細心の注意を払うんだ」
「ふえ?」
「だめだ……早くカビゴンに進化しような」
「うんー」
ポケモンによってはレベルノーマライズによって知能指数が落ちる者もいるらしい、その例がこの元カビゴンのゴンべだろう。
そんな中身とは対照的に指示を出すのは上級者プレイヤー、何も考えてなさそうな表情を見せるゴンべはラルトスの遠距離攻撃を確実に回避している。
と、ここで上レーンでガンク――ガーディの干渉が発生した。
チームメンバーには聞こえないが、実況の声が会場に響き歓声が上がる。
『ガーディの素晴らしい火炎車!! ニャスパー打ち上げられ何もできずノックダウン!! ゴースもイージーキルです』
この時ピチューはにやりと微笑んでいた。味方がやられてスカッとするやばい奴とかではなく、ピチュー――ラルドは理解していたのだ。
「おい、行くぞゴンべ!」
「あ、うんっ」
対面のヒトツキとラルトスが平和にファーム――経験値稼ぎをしていたところをリオルが猪突猛進する。
「いっけえええ!!」
リオルの電光石火からのメタルクロー
、突然現れたリオルに対してラルトスはねんりきからのテレポートで赤色の1stゴールへ逃げた。
陣地のゴールに入るとHPの肩代わりをしてくれるシールドが付与され、
ゆっくりとHPの回復が始まる、しかし……
「いいぞゴンべ! 体当たりだ!!」
「うおーー」
ゴンべのやる気のない声と共に赤色の敵陣ゴールへ突撃する。
「いいぞ最高だツイッチ!!」
敵陣ゴールスレスレで器用に電気ショックを撃ちこむ。
ラルトスは体当たりからの連撃でノックダウン、取り残されたヒトツキもリオルがノックダウンさせた。
『下レーンでもガンク発生!! 離されたキル差を埋めていきます!!』
「よっしゃああああ!!」
今のガンクでリオルはルカリオに進化、ガッツポーズを取りはっけいを空打ちした。
「今のうちにゴール忘れるなよ」
「おう!」
ゴールという名の回復ゾーンなわけがない。
このユナイトでの得点は、敵陣ゴールに侵入して一定時間待機しないと獲得されたことにならない。
沢山ポケモンを倒してもゴールしなければ0点というシステムだ。
そしてポイントを所持している時に倒されると所持ポイントがマイナスされてしまう。
ラルトスとヒトツキが稼いでいたポイントも今の戦闘で少し失ったことになる。
つまり相手ポケモンを倒せば倒すほど有利になるという具合だ。
『両者ポイント獲得! 得点差はほぼ誤差です』
試合時間2分経過、両者ポケモンの進化が始まり戦闘は激化する。
上レーンで発生した敵チームのダブルキルでナックラーはビブラーバに進化。
加速的に急成長を遂げ、遠距離攻撃のシャンデラ、近距離のフライゴンとウインディと抜群の布陣を構えていた。
試合時間残り3分30秒。中央に現れるレイドポケモンを倒すために中央レーンで5対5の睨み合いが発生していた。
ピカチュウは十万ボルト、ゲンガーはシャドーボールと遠距離攻撃で相手チームのHPを削り突破口を作ろうとするが決定打に至らない。
近距離型のフライゴンがエアスラッシュで味方チームのHPを削ってくるのが厄介で、敵は終盤構成と言うのもあって非常にやりずらい。
ツイッチはピカチュウの技の確認をする。十万ボルト・エレキネット・電光石火・ボルテッカー・そしてユナイト技
ユナイト技とは数分1回しか打てない超強力な必殺技。
5対5の集団戦に置いて非常に重要とされる要素で、今まさにフライゴンのユナイト技を受けてはいけないと選手の間で意思疎通を取っていた。
だからこそツイッチはこの窮地の突破口を考えていた。
考えはこうだ、敵チームの構成は 接近戦が行えるポケモンによるALLin――全スキルを一気に使用した攻撃を得意とした、
ウインディとフライゴンを起点で動く構成となっている。
ダイブだけが得意でアサシンがいないのなら、ピカチュウでも接近戦をした方が良いんじゃないかと。
ピカチュウはその思考に感づき、空を見る。その先にいるはずのツイッチの目を見るように……
「ピカチュウ……?」
ピカチュウは「やりたいようにやれ。俺がお前なら、前に出る(ぴかぴか……ちゅっ。ぴかぴか、ぴかちゅ)」と言った。
ツイッチには伝わるはずのないポケモン言葉を、ツイッチは親友の励ましの言葉のように感じて、意志を固くする。
――大丈夫だ、行ける。注意するべきはギルガルドだけ。
「みんな聞いて、今回はピカチュウをアサシンとして動かす」
「「「「!?!?」」」」
チームメイトは驚きで操作も鈍る。しかし、すぐに。
「わかった、お前を信じる」
打ち解ける、遠距離火力をアサシン運用するなんて練習でも一度もしていなかった。
でも、チームメイトが信じてくれた、その気持ち、無下には出来ない。
「……ラルド!!」
「ピカッ!!(おう!!)」
出現するレイドポケモン、サンダー。
ポイントは劣勢、徹底した布陣。
ピカチュウは動き出す、強烈に、アグレッシブルに!!
しかし、無情にも目の前に挟み込むフライゴン、必殺ワイルドブレイカーの構えを見せる。
その一瞬、フライゴンの口元が動く。
「おまえ……マスターの言っていた……英霊伝説プレイヤー?」
ピカチュウは目を見開き、ズグンッと心臓が鼓動する。
「何故そのタイトルを知っている」
にやりと悪そうに微笑んだフライゴンは二言話す。
「選手名簿すら見てないだね、僕のマスターの名前は《えびふりゃー》だよ?」
「はっ、それがどうした」
大振りの一撃、ワイルドブレイカーを回避し後方のシャンデラをボルテッカーでノックダウンさせる。
「回避したって……そんな!?」
「俺の親友は《繊細》なんだ、余り怒らせるなよ?」
ふいにルカリオ達が心配になり確認するが、カビゴンのワイドガードがフライゴンのワイルドブレイカーを防いでいた。
「く……たかが電気鼠ごときが!!」
『えびふりゃー選手トラブルでしょうか、焦りの表情を見せています』
時としてポケモンが勝手に動き出してしまう事がある、感情に飲まれたポケモンは、トレーナーの命令を無視するという。
フライゴンは満身創痍にピカチュウを付け狙い、ピカチュウは攻撃全てを回避。
1体ずつポケモンをノックダウン、セブンスの布陣は崩壊した。
「…………!!!!」
限界まで引き上げられた集中力。指示ひとつ間違えたら即アウトのプレッシャーを跳ね除ける何処か味方につけて、ツイッチの指示にピカチュウ――ラルドは応える。
「これでトドメだッッッ……ひっさつのピカチュート!!!!」
激しい轟雷と衝撃波にフライゴンは耐えきれず、ノックダウン。
地面を滑り、前足でバランスを取り照れ臭そうに「ピカチュートは無いよな、ほんと……」とピカチュウは軽く笑った。
ピカチュウは仲間の元へ合流すると「やった、やったぞ、みんな!!」とサンダーを倒しながら喜び。
ツイッチは「ラルド……」と一言残して涙を流した。
試合はチームバサラの勝利で終わったが、ツイッチとピカチュウの戦いはまだまだ続く。
俺は誰だって?
チャンピオンギルガメッシュ。さあ未来のチャレンジャー、頂まで上がってこい。
トッププレイヤーはいつでも君を歓迎する。大舞台で戦えるのが楽しみだ。
Q.5対5なのに活躍しているポケモン少なくない?
A.活躍させたらこの短編が短編じゃなくなる。
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