ポケモン小説wiki
細波は謡う

/細波は謡う

誓いの翼の続編となっております。
いきなりこの物語を読むと分かり辛い表現があるかもしれません。

細波は謡う  

writer――――カゲフミ

―1―

 静かな海だった。天気は良く風も穏やかで、白波が荒立っている様子もない。たまに高い波が立つこともあったが、ほとんどは緩やかな青い波だ。
ごつごつとした岩が海面からぽつぽつと顔を出している。鋭く尖った荒々しいものや、平たくて潮が満ちれば波に呑まれてしまいそうなものなど形は様々。
突きだした無数の岩々の真ん中辺りに、ひときわ大きな陸地があった。とは言ってもそれは岩と比べればの話で、島と表現するならば小さな部類に入るだろう。
白い砂浜に囲まれていて、緩やかな波が寄せては引いてを繰り返している。砂浜を離れ、島の中心に向かうにつれて徐々に木々が立ち並び始める。
もともとの島の大きさもあってか、一度足を踏み入れたら迷子になりそうなほど入り組んでいるわけではなかったが、それなりに緑は豊かであると言えよう。
この島の他にもいくつか周辺に島らしき影はあった。しかしどれもかなり小さく、切り立った岩肌をしており鳥ポケモンでもなければ上陸することはできない。
仮に岩場を越えられる翼を持っていたとしても、すぐ傍に居心地の良さそうな美しい砂浜と緑を湛えた島があるのだ。
わざわざ小さな島を選ぶ物好きなポケモンはほとんどいないだろう。彼もまた、例外ではなかった。

 風を切り裂く音。翼を羽ばたかせるたびに、勢いを増して自分の耳に侵入してくる。飛んでいる最中はそれが騒がしくて、とても誰かと会話できたものではない。
だが、音が大きくなればなるほど、自分が風に近付けたような気がして。目指すものとの距離がまた一歩縮まったような気がして。嫌ではなかった。
山間を越えて海辺まできたけど、今日は海辺特有の強い風が少ない。
おかげで風の抵抗をあまり気にすることなく飛ぶことができた。でも、ずっと羽ばたき続けてちょっと疲れたな。
眼下に休むのにちょうど良さそうな島も見えることだし、少し休憩を入れるとしよう。彼は翼の角度を変え、空中から一気に海面すれすれまで急降下する。
足元の波が風圧でざわめく。この辺りを泳いでる水ポケモンがいたら、いったい何事かと胆を潰すことだろう。
もし驚かせちゃったらごめんね、と彼は心の中で謝罪しておいた。
空からでははっきりしなかった島の大きさも、同じ目線で見ればある程度把握できる。
そこまで大きな部類ではないにせよ、砂浜で一休みするぐらいの広さは十分にあった。
目標は定まった。あの小島の砂浜まで。後はそこまで一直線。まっすぐに飛べばいい。減速するタイミングを見誤らないように。
静かに揺れている幾多の小さな青い波を切り裂き、彼は矢の如く直進していく。何も考えずに、無心に翼をはばたかせ、強く、強く。
海が終わり、ちょうど砂浜に差し掛かるか差し掛からないかの地点で、再び翼の角度を変え、今度は速度を落とすために何度か柔らかく羽ばたいた。
足もとのきめ細かい砂が、翼で巻き起こった風にあおられてふわりと舞い上がる。粉雪だと言われても違和感がないくらいに、白い砂だ。
翼を羽ばたかせるうちに、さっきの神速を思わせるようなスピードはどこかへかき消えてしまった。
緩やかな前進をしながら、彼はゆっくりと砂浜に降り立つ。自分の体重で足元の砂が沈み、鈍い音を立てた。
短時間の急激な加速は飛ぶ速度に緩急をつけるトレーニングにはなるが、その分疲労も大きくなる。翼を畳むと、彼はふうと大きく息をついた。
「悪くない、かな」
 今日の飛翔は自分なりに納得がいくものだったのか、どこか満足げに彼――――ウィランは頷いたのだ。

 きょろきょろと辺りを見回しながら、ウィランは波打ち際まで歩いていく。
ざっと見た感じでは近くにポケモンの気配は感じなかった。数に入れるなら、遥か上空を幾羽かのキャモメが飛び交っているくらいか。
緑豊かな島だから、ここを縄張りにしているポケモンがいてもおかしくはないのだけれど。これだけ派手な訪れ方をしたのだ。気づかれていてもなんら不思議はない。
もしかすると、島の周辺は海の中に住む水ポケモンか、林に住む鳥ポケモンばかりで、この砂浜は直接的な縄張りにはなってない可能性も考えられる。
それならばありがたいことこの上ないのだが。疲れたからちょっと休憩させてもらうだけで、縄張りを荒しにきたわけではないのだ。無闇な衝突は避けたかった。
「……静かだなあ」
 慎ましげな波の打ち寄せる音。打ち寄せては引き、また打ち寄せる。どこか定まったリズムのようなものを感じさせ、聞いていると心が落ち着く。
ウィランはもともと山を住処としている。住処のすぐ近くに湖があるため、水と触れあう機会はあるものの、このような海と接する機会はあまりない。
いつもの山の谷間で飛翔の鍛練をするのは少し飽きてしまったので、気分転換も兼ねて今日は思い切って遠出をしてみたというわけだった。
その結果、こんな綺麗な砂浜に巡り合えたのだ。移動距離が長かったため、若干普段よりも疲労感があったが、それを差し引いてもこの景色には十分な価値があるように思える。
 ガノフとの約束がいつになるのかは分からない。だけど、出来る限り万全の状態で挑みたいところ。後腐れのない勝負にしたかった。
あれから一週間以上経つけど、彼はどれくらい調子を取り戻しているのだろうか。しばらくしたら、また様子を見に行ってもいいかもしれない。
でも、いきなり競争する流れになっても大丈夫なよう、自分の調子がいい日にしておいた方が無難かな。
我ながら打算的な考えだなと苦笑しつつも、やはり自分の中で勝ちたいという気持ちが強いことを再認識させられる。
表面上は穏やかでいるつもりだけど、生まれ持った負けず嫌いな性分は変えられそうになかった。
「ふあぁ」
 波音とうららかな陽気も手伝って、ふわりと眠気の波がウィランの元に押し寄せる。せっかく素敵な砂浜なんだし、一眠りしていくのも悪くないか。
ウィランはどかりと砂浜に腰を下ろし、そのまま寝っ転がって仰向けになる。両手両足、翼、尻尾までも砂の上にだらりと投げ出した。
足の裏だけでなく全身で感じる砂のベッド。体重を掛けると少しだけ沈む。絶妙な柔らかさがあって、寝心地はなかなかだ。
ガノフの住んでる高原の草もふかふかしていていい感じだけど、それとはまた別の良さが。ああ、もう瞼が重くなってきた。これはすぐに寝付けそうだ。
そういえば、まだ誰かの縄張じゃないって確定したわけじゃないけど、まあ、大丈夫だよね。寝てる相手にいきなり攻撃してくるような乱暴者はいないと信じて。
今は他のポケモンへの警戒よりも、この眠気に身を委ねていたい。ウィランは静かに目を閉じると、波の子守歌に耳を澄ませたのだ。

―2―

 尻尾の先にひやりと冷たい感覚が走り、ウィランははっと目を覚ます。何事かと体を起こしてみると、さっきよりも波打ち際が近くまで迫ってきている。
砂浜で眠っている間に潮が満ち、打ち寄せた波が尻尾の先を撫でたというわけだった。
ぽかぽかとした暖かい陽光とは裏腹に、海の水は思っていたよりも冷たい。なんだか一気に眠気が吹き飛んでしまったような気がする。
どれくらいの時間が経ったのだろう。ウィランは空を見上げてみる。太陽の高さから推測するに、ちょうど午後に差し掛かったぐらいか。空は多少雲が増えた程度。
相変わらずの陽気が降り注いでいる。白い砂浜に光が反射して眩しいくらいに。天気が崩れる心配はしなくてもよさそうだった。
「んー……ふぅ」
 胸を大きく逸らして深呼吸し、ウィランは軽く伸びをする。素敵なベッドで休憩させてもらって、疲れも取れたことだしそろそろ戻ろうかな。
でも、こんなに静かで美しい場所なんだし、これっきりと言うのはなんだかもったいない。山の空気に飽きてしまったら、また訪れてもいいかもしれないな。
そんなことを考えながら、ウィランはゆっくりと腰を上げた。翼や背中についた砂がぱらぱらと落ちていく。
軽く翼を羽ばたかせながら、両手で掃うことで大体は取れた。残りは空を飛んで帰るうちにきれいになるだろう。
さて。今回はどう飛び立てばいいだろうか。右腕を顎に当ててウィランは思案する。普段ならば何気ない動きの中にも、競争に向けての想いが混じっていた。
最初の加速は大事だ。勝負の行方を大きく左右する。どんな形で地面を蹴れば、どんな形で羽ばたけば、風に乗りやすいのか。
まだ、これといった方法は見つかっていない。模索の段階だ。とはいえ、勝負の時までには自分なりに確立させておきたいところ。
やや前かがみになり、こんな感じでいいかなと翼を広げたウィラン。さあ飛び立つぞ、と翼と両足に力を込める。そのときふと、聞きなれない音が耳に入ってきたのだ。
波の打ち寄せる音でも、風が木々をざわめかせている音でもない。一定の律動を保っていて、静かに流れていくような。これは、歌だろうか。
ここからでは途切れ途切れにしか聞こえないが、何となく優しい雰囲気がする。どこから聞こえてくるのだろうか。
歌の主が気になったウィランは、じっと耳を澄ませてみる。波音や風音の隙間を縫うように、それでも確実に流れてくる、歌。
「あっちかな?」
 この砂浜は波打ち際に沿うようにして伸びている。なかなかの距離で、ここからだと砂浜の終わりが見えるか見えないかと言ったところ。
そして砂浜が途切れているであろう個所からは、ごつごつした灰色の岩肌がちらりと顔をのぞかせている。歌はあの岩場の方角からだ。
このまま住処の山に戻ってもよかったのだが、一度耳にしてしまったせいだろうか。なんだか妙にこの歌が気になってしまう。
断片的なメロディーを拾うだけでも、それが良いものだと判断するには十分だった。これは是非、近くで聞いてみたいもの。
まだまだ時間はあるし、天気が変わりそうな気配もない。せっかくこんな遠くまで来たんだし、ちょっと寄り道するぐらいいいか。
彼の中では効率の良い飛び立ち方の模索よりも、歌に対する好奇心の方が優先させられたようだ。
砂浜に大きな足跡を残しながら、ウィランは岩場の方角へと歩いていった。

 さらさらした白い砂浜とは打って変わって、表面のごつごつした岩が無骨に立ち並んでいる。
およそウィランの胸くらいの高さだろうか。波打ち際からやや沖に至るまで、ぽつぽつと岩々が点在している。
ちょっと場所を変えるだけで、こんなにも地形が変わるものなんだな、とウィランはちょっと感心した。
住処にしている山でも標高によって植物の種類や気候は変わったりするが、目に見えての劇的な変化は少ないため、新鮮だったのだ。
歌が聞こえてきた方角の見当は外れていなかったらしい。さっきよりも遥かに明確な歌声がウィランの耳に響いている。
「どこだろ……」
 ここまで来たのなら、せめて誰なのか確認ぐらいはしたい。立ち並ぶ岩の陰に隠れてしまっているのだろうか。声はすれども姿は見えず。
表面がなめらかな岩もあり、砂浜に比べると安定感が悪かった。慣れない岩肌で足を滑らせないよう、ウィランは慎重に歩みを進めていく。
「ん?」
 視覚と聴覚を研ぎ澄ませながら、何歩か足を踏み出した時だった。何かが僅かに岩と岩の間で動いたように見えたのは。
今のはなんだろう。偶然打ち寄せた大きな波か何かと勘違いしたのだろうか。いや、さっき確かにちらりと青い影が見えたような。
流れてくる歌声を頼りに、海面から突き出た岩をウィランは一つ一つ確認していく。確実に近づいてはいるはずなのだが、今一歩迫ることが出来ずにいる。
見落としたりしないよう、じっと目を凝らす。チェックした岩は彼の両手両足の爪の数を越えたぐらいだろうか。
連なっていた岩が途切れ、少し開けた場所。その真ん中にウィランが探していた声の主と思しき姿は静かに佇んでいた。
「あれは……」
 涼しげな寒色を主とする体色は氷ポケモンの名にふさわしい。澄んだ水色の上に、群青の斑点のような模様がぽつぽつと。
喉元から腹部に至るであろう部分は、白に少し黄色を混ぜたような柔らかい色合いだ。ウィランのような両手両足ではなく、泳ぐことに特化した鰭を携えている。
そして、その背中には小さなポケモンならば何匹も乗せて運ぶことができそうな甲羅を宿しているポケモン、ラプラスだった。
思ったよりも波打ち際に近い場所だ。なかなか見つけられなかったのは、海の青と岩肌の灰色とでちょうどラプラスの体色が保護色になっていたせいだろう。
長い首を微かに前後に揺らしながら、目を閉じて歌を口ずさんでいる。謡うのに夢中なのか、ウィランには気付いていない。
ラプラスの姿を確認できたら、今度はこの歌声の持ち主と話してみたくなってきた。陸繋がりの岩肌を辿って行けば、もう少し近づくことができる。
いくら謡うことに集中しているとは言っても、さすがにそこまで近づけばラプラスもウィランに気が付くだろう。
歌の邪魔しちゃ悪いかな、というウィランの胸中とは裏腹に彼の足は一歩、また一歩とラプラスに接近していく。
聞こえていた歌には心惹かれるものがあったし、そんな歌を謡うことができるラプラスと何か話をしてみたいという気持ちの方が大きかったのだ。
「……!」
 別段足音を忍ばせていたわけでもないのだから、気配を感付かれるのは当然と言えば当然か。
近づいてきたウィランに気が付いたらしい。大きな目を開くとラプラスはぴたりと歌を止め、波打ち際の彼の方を見る。
「こんにちは」
 軽く右腕を上げて、にこやかな笑顔で挨拶するウィラン。初対面の相手に話しかけるときは、出来るだけ笑顔を絶やさないようにするのが彼のやり方だ。
いきなり身構えられたりしたら、話すに話せなくなってしまう。上手く打ち解けるには、まずはこの張りつめた空気を何とかしなければ。
その笑みは心からのものなのかどうかは別として、和やかな印象を与えるという面では悪くない方法だとウィランは思っている。
今までにもまずは笑顔、といった方針で仲良くなることができたポケモンは一匹や二匹ではない。
しかし、笑顔のウィランとは随分と対照的に、ラプラスは見慣れない来訪者に警戒の眼差しを送っていた。

―3―

 まずは挨拶してみたものの、ラプラスが返事をしてくれそうな気配はない。睨んでいるとまではいかないが、やや鋭い目つきがウィランに突き刺さる。
挨拶を受け止めてもらえなかったのは少々寂しかったが、当然と言えば当然の反応だった。
ウィランがこの島周辺に生息している鳥ポケモンや水ポケモンならともかく、ほとんど見かけることがなさそうなカイリューなのだ。
まずは何者なんだろう、と疑ってかかるのはなんら不自然なことではない。素っ気ない反応をされるかもしれないという覚悟はできていた。
これくらいで落ち込んだり怒ったりしていたのでは、先に進めないことは目に見えている。ウィランは笑顔を崩さなかった。
「あなた……誰? この辺りじゃ見かけない顔だけど」
 芯の強そうなはっきりとした声。雌にしては若干低めだ。謡っているときの優しげなそれとは随分と違った印象を受ける。
やはり謡うときと、普通に喋るときでは声のトーンも違うものなのか。とは言え、今のラプラスの声もすっきりとした感じで嫌いではなかった。
「僕はウィラン。空を散歩してたんだけど、ちょっと疲れたから休憩しにこの島に立ち寄ったんだ」
「ふうん……」
 まだ警戒の姿勢は解かれていない。ウィランの頭の角から足の爪先まで、まるで診断でもするかのようにじろりと眺めるラプラス。
怪しいポケモンではないつもりなのだが、自分でそれを言ってしまっては逆効果だ。
あまり良い気分はしなかったものの、ここは何も言わずに彼女の視線を受け止めておいた。
だが、大きな瞳で自分を観察するラプラスの眼は、全部が全部疑いの眼差しというわけでもないような気がする。
ウィランが思っていたよりも、ラプラスの表情はどこか穏やかな色が見て取れたからだ。ひょっとすると、半分くらいは自分に対する好奇心のようなものなのかもしれない。
「砂浜で休んでたら、岩場の方から歌が聞こえてきて、行ってみようかなって」
「そう。私の歌が気になったの?」
「そりゃあね。とても綺麗で、優しい感じの歌だったから」
「……!」
 意表を突かれたかのようにラプラスは目を丸くする。素直に歌の感想を言ったつもりだったけど、何かまずかったかなあ。
少し頭を巡らせてウィランは考えてみるが、自分の思い当たる限りではそんなに変なことは口にしてないつもりだ。
「……どうしたの?」
「あ……ごめんなさい。いきなり歌を褒めてもらえるなんて思ってなかったから、ちょっとびっくりしただけ」
 あんなにも素敵な歌なのだ。称賛の言葉なんて聞き飽きているぐらいに思っていたが。意外にも褒められたことが少ないような反応だった。
それとも、あの歌が特に自分の好みだっただけで、他のポケモンからすればそうでもなかったりするのだろうか。
確かに好みは十人十色。その可能性は否定できない。ただウィランにとって、さっきのラプラスの歌は心から良いと感じたものだったのだ。
「そんなに驚くことかなあ……僕はいい歌だと思うけど」
「……ありがとう。今まで誰かに褒めてもらったことはあるんだけど、あなたみたいに直球な意見は珍しいから」
 褒められたことで気を良くしたのだろうか。ラプラスの表情が緩む。対面した時の強張った感じが嘘のよう。少しはにかんでいて、それがどこか可愛らしい。
さっきまでは見慣れない相手に対して気を張っていただけで、これがラプラスの自然体なのかもしれない。和やかに微笑む彼女を見て、ウィランはそう思ったのだ。
「あなたは悪いポケモンじゃないみたいね。変に疑ってごめん。あ、これは別に、あなたが私の歌を褒めてくれたからってわけじゃないからね?」
 口ではそう言いつつも、ラプラスの顔はまだどことなくにやけているような気がする。
ウィランとしては飾り気のない感想のつもりだったのだが、こんなにも喜んでもらえるとは予想外だ。
だが、さり気ない一言で彼女が嬉しいと感じてくれたのなら、それはそれで悪い気はしなかった。
自分にそういった意思がなくとも、誰かを悲しませてしまうよりは喜ばせる方がずっといい。
「私はステラ。よろしく、ウィラン」
「よろしくね」
 ステラが陸上で生活するポケモンなら、もしくはウィランが水中で生活するポケモンならば。互いに手か鰭を差し出して握手を交わしていたことだろう。
あいにく、岩場と海上では立ち位置に違いがある。伸ばしてみたところで届きはしない。挨拶しか交わせなかったとは言え、きっと気持ちは伝わっているはずだ。
「さっきの歌ってさ、ステラが考えたの?」
「ええ。私、謡うのが好きで、よくここの岩場で謡ってるのよ。最初は何となく思いついた音の流れを口ずさんで、自分の中でこれはいいかもって思った音を繋げてメロディーにしてる感じ」
 ウィランは歌に関してはほとんど無知と言ってもいい。自分で考え出した音を歌にしてしまうだなんて、まるで想像もつかなかった。
こういったことは生まれ持った能力に大きく左右されるのかもしれない。
翼を持ったウィランが空を飛ぶのが好きなのと同じように、素敵な声を持ったステラは謡うことが好きなのだ。
「凄いなあ」
「ふふ、そんなに褒めても何も出ないわよ。まあ、自分で考えたって言っても、ちゃんと曲として繋げることができたのは一つしかないんだけど……」
「君がさっき謡ってたやつ?」
「そう、名前もない歌だけど、私が唯一形にできたもの。だからあなたが綺麗だって言ってくれて、嬉しかったわ」
 なるほど。納得のいく歌を作るのも、なかなか難しいものがあるようだ。だからこそ、それを褒めてもらえた時の喜びもひとしおになる。
もちろんウィランは歌を自作したことなどなかったが、一朝一夕でどうにかなるようなものではないことは想像がついた。
きっと何度も何度も試行錯誤を重ねた努力の結果が、さっきステラが謡っていたあの歌なのだ。
「もしよかったら、その歌を最初から最後まで聴いてみたいんだけど。いいかな?」
 ウィランの言葉に少し驚いた素振りを見せたステラだったが、今回はある程度の心構えができていたように思える。
これだけ自分の歌を持ち上げてくれるウィランが、もう一度聞いてみたいと言うのではないかとどこかで予感していたのだろうか。ステラはすぐに笑顔に戻ると、小さく頷いた。
「誰かに聴いてもらうのは久しぶりだから、ちょっとつかえちゃうところもあるかもしれないけど、それでもいい?」
 自分だけで気の向くままに謡うのと、誰かを前にしてちゃんと一曲を謡い切るのとでは事情が変わってくる。
すぐ傍でウィランが歌に耳を傾けているという、プレッシャーも少なからずあるだろう。
ウィランも非の打ちどころのないような完璧な歌を求めているわけではない。ステラの歌を最初から最後まで聴くことができる。それだけで十分だった。
「もちろんだよ」
「分かった。じゃあ、謡うわね……」
 ステラは暫時、目を閉じる。気持ちを落ち着かせているのか、あるいはこれから謡うべき曲の流れをもう一度確認しているのか。
砂浜で聞こえてきたときは途切れ途切れだったが、今度は落ち着いてじっくりと堪能できそうだ。
期待に胸を膨らませつつウィランも岩場に腰を降ろして、彼女が歌い始めるのを待つ。
やがて大きく息を吸い込み、ステラはゆっくりと謡い出す。静かな浜辺に再び、優しい調べが流れ始めた。

―4―

 砂浜と違って弾力性のない、硬い岩場の座り心地に最初は違和感を抱いていたのだが。曲に聞き入るうちに、そんなことは意識の外へ追いやられてしまった。
最初に、ステラが第一声を発した瞬間、がらりと声色が変わったのがとても印象深かった。
彼女が喋るときと謡うときの声が違うと分かっていたとはいえ、その移り変わりを目の当たりにすると思わず息を呑んでしまっていたのだ。
声だけを聞いたならば、別のポケモンに話しかけられたのかと勘違いしてしまいそうなほど。
最初はゆったりとした穏やかな調子で歌は流れる。謡いながら体でリズムを取っているのか、首を軽く前後に揺らしながら静かに曲を口ずさむステラ。
砂浜を優しく撫でる細波のような旋律。聞く者の心をそっと静めてくれそうな安らかさ。自分が最初に耳にしたのはこの部分だったのかな、とウィランはふと思った。
しばらく似たような曲調が続いていたが、ふいにテンポが切り替わる。静かな海面に、突如一陣の風が訪れたかのごとく。
どちらかと言えば早く、疾走感がある。別物と言ってもいいくらい曲の雰囲気が違うのに、繋ぎの部分に全く不自然さは感じなかった。
そこは、ステラの努力の賜物なのだろうか。歌が進めば進むほど、自分がどんどん引き寄せられているのが分かる。
次はどんな調子なのだろうか、どんな雰囲気なのだろうか、と期待に胸躍らせずにはいられなかったのだ。
やがて、風によって荒立った白波は鳴りをひそめ、再び静けさを取り戻す。さっきの部分は曲の中でも一番盛り上がる所だったのだろう。
風が吹きすさぶ雄々しさから一転、ふっと訪れた静寂。そのメリハリの付け方もまた絶妙で、くどさを残さない。
静かな調子は謡いだしとさほど変わらない。ただ、曲のどこかに終わりを匂わせるどこか切なげな音色が混じっている。
きっともうすぐ、この曲が終わってしまうのだ。始まりがあったのだから、もちろん終わりもある。
ごく自然なことなのに、最後まで聴いてしまうのがなんだかとても勿体ないことのように思えてならない。もっと、ステラの歌を聴いていたかった。
しかし、ウィランがいくら心の中で望んでみたところでそれが叶うはずもなく。打ち寄せた細波が静かに海へとひいていくように、歌はひっそりと終わりを告げた。
「……ふう」
 ステラの大きなため息はすべて謡い終えた達成感からか。あるいは一度も途切れることがなかったことによる安堵のものか。
どちらにしても一つの曲を謡い切るのはなかなかの労力を必要としそうだ。今回はウィランと言う聞き手が目の前にいるのだから尚更。
「なんとかつっかえたりせずに謡えたけど……どう、だった?」
「あ……ええと」
 曲の余韻に浸ってぼんやりとしていたウィランは、ステラに尋ねられはっと我に返る。頭の中ではさっきの音色がまだぐるぐると廻り廻っていた。
わざわざウィランの方から謡ってくれるように頼んだのだ。聴いてもらった彼の感想も、ステラとしては気になるところだろう。
どう、答えればいいのだろうか。確かに、良かった。音の一つ一つが自分の心の中へと染み入ってくる感じで、引き込まれる。
そう思ってはいたのだが、いざ言葉で伝えようとすると上手く表現できない。ありきたりな褒め言葉しか浮かんでこないのだ。
とは言え、自身の語彙力のなさを嘆いていてもしかたない。ステラの歌が素晴らしかったのは紛れもない事実なのだから、自分の気持ちを正直に。
「何か、上手く言い表せないんだけど……すごく、よかったよ。謡ってくれてありがとう」
「そっか。気に入ってくれたみたいね、よかった」
 わざわざ謡ってもらったというのにこんな拙い感想だ。気を悪くしないだろうかというウィランの不安をよそに、ステラは晴れやかな笑顔だ。
「こんなことしか言えなくてごめんね。でも、本当に言葉が見つからなくてさ」
「いいのよ。あなたは私の歌できっと何かを感じ取ってくれたと思うから。言葉じゃない、感覚的なものとして……」
 歌を聴き終えた後、どことなく地に足がつかない感じのウィランを見ていれば、直接伝えてもらわなくても分かることなのかもしれない。
自分の歌で、ウィランの気持ちが揺れ動いていたということを。謡うことで、誰かの心を動かすことができた。それだけでもステラは満足だったのだ。
きっとウィランは耳でなく、心で歌を聴いてくれていた。ステラが歌に込めた想いを、心で受け止めてくれていたのだ。本人はそれに気が付いていないようだったが。
「それに、すごく真剣に聴いてくれてたみたいだし、むしろ私がお礼を言いたいくらい。ありがとね」
「はは、感謝されるようなことじゃないよ。僕が聴きたいって頼んだんだからね」
 そうは言いつつもウィランの表情は緩んでいる。やはり誰かに笑顔で感謝されると、何となく心地よい気分になってしまうもの。
「ねえ。まだ、時間大丈夫かな?」
「ん、そうだね……」
 ウィランは天を仰ぐ。砂浜で目を覚ました時よりは少し太陽が低くなっていたが、日が落ちるまではかなりの時間がありそうだ。
別段雲が増えた様子もないし、雨の心配はしなくていいだろう。住処の山には暗くなるまでには戻ればいいと思っていたから、時間は十分にあると言える。
「大丈夫だけど、どうかしたの?」
「実はね、新しい歌を考えてるのよ。でもまだ試作の段階でこれでいいのか自信がなくて。だから、ウィランに聴いてもらって意見をもらいたいんだけど、だめかな?」
「うーん、僕はあんまり歌のことは分からないけど……それでもいい?」
 聴くだけならば喜んで首を縦に振るところだが、今度は意見を求められている。歌に関しては素人だし、感想を言おうにも言葉がつかえてしまうときた。
だが、歌のことはよく分からないからと断ってしまうのは何だか勿体ない。ステラに歌のアドバイスなんてできそうにもなかったが、どんな歌なのか興味はあったのだ。
自分の意見が的外れだったとしても彼女がそれを鵜呑みにするとは思えないが、ウィランは一応念を押しておいた。
「それでも構わないわよ。とりあえず、聴いてくれるだけでもいいから」
「そっか、分かった。僕でよければ」
 やはりそこまで期待はされていなかったようだ。さっき彼女に伝えた自分の感想から判断すれば、当然と言えば当然か。
ウィランとしてはむしろそのほうが気楽でいい。未完成の歌を誰かに聴いてもらうだけでも、それが自信につながる可能性だってある。
「ありがとう。それじゃあ、ちょっとこの先の洞窟までついてきてくれる?」
「洞窟?」
「次に考えてる歌は、洞窟の反響と合わせてメロディーを考えてるの。だから、そこじゃないと謡えないのよ」
 響いてくる自身の声を意識しながら、そこから曲を生み出しているというわけか。ただ謡うだけではない創意工夫にウィランは感心させられる。
洞窟でなければ無理と言うのは限定的だが、反響する声との二重奏はさっきの歌とはまた違った深みがありそうだ。これは是非、近くで聴いてみたいもの。
「何だか悪いわね。手間取らせちゃって」
「ううん、気にしないで。案内してくれるかな?」
「ええ、こっちよ」
 快く引き受けてくれたウィランに、ステラは笑顔で頷く。そしてくるりと向きを変えると、海面から突き出した岩々の間を縫うようにして泳いでいった。
結構岩場は入り組んでおり、彼女の体の大きさでは通れるのがやっとといった箇所もあったのだが、引っ掛かったりせずにすいすいと進んでいく。
意外にも、と言ってはステラに失礼かもしれないが、なかなか小回りが効くらしい。彼女は海で生活する水ポケモンなのだから、驚くことでもないのかもしれないが。
幸い、進行方向には岩場が陸続きになっており、飛んでついていく必要はない。足もとに気を配りながらウィランはステラの後を追いかけた。

―5―

 砂浜からは死角になっていて分からなかったが、岩場地帯は島をぐるりと取り囲むように連なっており思っていたよりも広い。
さすがに迷子になるほどではないとはいえ、ステラの言う洞窟にたどり着くまでそれなりの距離を歩いたような気がする。
「ここよ、ウィラン」
 ステラが泳ぐのをやめ、振り返る。大きく口を開けた洞窟の迫力に、ウィランは感服したように見上げていた。
洞窟の外観はいくつもの岩石が積み重なっており、頑丈な要塞を思わせる。目の前にあるだけで圧倒されてしまいそうだ。
もともとこの島にあったものなのか、幾度も打ち寄せる波で岩が徐々に削れて出来たものなのかは分からない。
ここは最初にウィランが休憩した砂浜とは、大体反対側ぐらいだろうか。空からこの島を見たときはこんな場所があるなんて気がつかなかった。
島の中央には背の高い木々が生い茂っている。その影になっていたせいで、はっきりと確認できなかったのか。
あるいは白く輝く美しい砂浜ばかりに目が行って、それ以外の場所は眼中に入っていなかったかだ。
「へえー。結構広そうだね」
 入口は大きく、ウィランとステラが横に並んで入ったとしても余裕で通れる幅がある。天井はウィランの身長よりも頭二つ分高いと言ったところか。
奥までずっとこの高さとは限らないため、場所によっては身をかがめたりしなければならなくなる可能性はあったが。
とりあえず、この洞窟に入るに至っては窮屈な思いはしなくてよさそうだった。
岩肌の陸地が洞内まで続いている所と、海水の流れ込んでいる水路が隣り合っている親切設計だ。ウィランが海に入ったり、ステラが陸地に乗り上げたりする必要はない。
「入口は大きいけどそんなに深くないから、すぐ奥まで着くわ。いつもそこで練習してるの」
「ここなら、声の雰囲気が違って聞こえそうだね。楽しみだよ」
「……あくまで練習中の歌だから、あんまり期待はしないでね」
 ステラはまだ試作段階と言っていた。どんな出来具合なのかは聴いてみなければ分からない。
たださっきの歌がとても素晴らしかったものだから、ウィランの中できっと次の歌も素敵なはずだという気持ちが膨らみつつあることは否めなかった。
新しい歌に意見を貰うためにウィランを呼んだのに、その彼からの圧力で普段の歌が謡えなくなってしまっては本末転倒だ。
過度な期待はステラへのプレッシャーになってしまう。確かに歌が聴けるのは楽しみだったが、それを表に出すのはほどほどにしておかないと。
ウィランは心の中で自分にそう言い聞かせながら、洞窟の内部へと泳いでいく彼女の隣に並んで奥へと歩いていった。

 奥へと進むにつれどんどん視界が悪くなっていくものだと思っていたのだが、案外そうでもない。
重なった岩には所々隙間があり、そこから差し込む光のおかげでお互いの姿を確認できるくらいの明るさはあった。
突然足場が狭くなったり天井が低くなったりすることもなく、普通に歩くだけで進むことができてしまっている。
想像していたよりもかなり快適な洞窟だ。ここを新しい住処にしてもいいのではないかと思えるくらいに。
ふと、ステラが泳ぐのを止める。どうしたのだろうかと見ると、水路はそこで途切れそこからは奥へと岩地が広がっていた。
洞窟の奥でも打ち寄せる波はちゃんと伝わってくるらしい。この辺りの足場は表面が浸食されているせいか比較的滑らかだった。
さりとて、ステラの鰭は水中を泳ぐためのものであって陸上を歩くためのものではない。この先へ進むのは些か厳しいのではないだろうか。
どうするのだろうかとウィランが眺めていると、ステラは前鰭と後鰭で一気に水をかき、その勢いで岩場へと乗り上げたのだ。
ばしゃんと大きな水音が洞内に響き渡る。彼女の体から跳ねた水しぶきが洞窟の壁や床に飛び散り、湿った色に変えていく。
岩肌と水面との段差がほとんどなかったにしても、大きな体に似合わぬ身軽さだ。ウィランは思わず目を見張っていた。
あれだけの瞬発力があるのならば、アズマオウやネオラントのように海面をジャンプすることも出来たりするのかもしれない。
「ここが洞窟の一番奥よ」
 岩場に乗り上げたステラがウィランの方を向く。薄暗いせいで分かりにくかったが、確かにこれ以上先へ進めそうな空洞は見当たらない。
岩の地面と水路が合流し、これまでより少し広い空間になっている。確かにここならば、自分だけで伸び伸びと歌の練習ができそうだった。
「新しい歌はここで?」
「ええ。洞内だから声が響いて、ちょっと違って聞こえるでしょ?」
 そう言うステラの声も僅かに反響して、外で聞くよりもさらに耳の奥まで響いてくるような気がした。
さっきの歌をもう一度ステラに謡ってもらうだけでも、全く別の雰囲気の歌として楽しめそうな感じはする。
試しにウィランは軽く発声してみる。直後、普段よりも若干高く、広がっていくような声が響いていった。
これが自分の声なのか、と受け入れるにはやや違和感が残る。やはり外と洞内では音環境はまるで違っているようだ。
「それじゃあ……謡うけど、その前に目を閉じてもらえないかしら?」
「ん、どうして?」
「目を閉じれば視覚がなくなった分、聴覚が鋭敏になるわ。ウィランに一番いい状態で歌を聴いてもらいたいから」
「そっか。分かったよ」
 視覚や聴覚の音との関連性など、ウィランは意識したことがなかったが、きっとこれはステラなりの歌への拘りだ。
聴いてもらうからには突き詰めるつもりなのだろう。ならば、自分もそれに応じるまで。ステラの申し出を引き受けたのだから。
ここまで真剣になって謡ってもらった歌に対して、またさっきみたいに言葉が出てこないなんてことがなければいいけど。
そこが少々不安だったが、ウィランはステラに言われたように目を閉じてゆっくりと腰を下ろした。
立ったままよりも座って聴く方が落ち着ける。ここの岩の表面は割とつるつるしているせいか、外の岩場より座り心地は良い。
 薄暗い洞窟の中でも、どこに壁があって水路があるかが分かるくらいの光源はあった。瞼で蓋をしてしまえば、当然それらもすべて遮断される。
今、自分の目の前は暗闇だった。どこを振り返ったとしても同じ景色が広がっているだけ。
これまで、目を閉じることにこんなにも集中したことなどなかったため、この感覚はどこか新鮮だった。
微かに聞こえてくる呼吸の音は、ステラが謡う準備をしているのだろう。息の調整か、あるいは気持ちをリラックスさせるための深呼吸か。
水路があるため、洞窟の中でも海水が壁にぶつかる水音がする。風がほとんど吹かない洞内では外に比べて随分と控えめだった。
ほぼ一定の間隔で、小さな波音が反響していく。砂浜で感じた細波の音よりもどことなくしっとりとしていて優しげだ。
ここまで来るのに夢中になっていて、波の音なんて気にも留めていなかったのだが。いざ、じっくりと聞いてみるとこれはこれで味がある。
そういえば、ガノフも退屈してたから目を閉じて周囲の音に気を配ってたって言ってたな。ウィランもそのときは特に彼の行動に興味を抱いたりはしなかった。
だけど今ならば、静かな環境でこうやって腰を据え、耳を澄ませてみるのも素敵じゃないかと思える。
そうすることで気持ちが落ち着いて、何か新しいものが見えてくる可能性だってある。ただ、ガノフがそういった目的で実施していたのかどうかは疑問が残るけど。
 ところで、波の音ばかりに集中していたけど、肝心の歌が聴こえてこない。ウィランが目を閉じてから結構な時間が流れたが、歌らしき物は始まらなかった。
もしかして、緊張して声が出なくなったりでもしたのだろうか。やっぱり、すぐ傍で初めての歌を聴いてもらうのはかなり勇気がいることなのかもしれない。
ステラがつっかえてるみたいなら無理はしてほしくないし、大丈夫そうだったらもう一度目を閉じて聴けばいいわけだ。
閉じていてと言われはしたけど、このままじゃ埒が明かない。状況確認も兼ねて、ちょっと見てみることにしよう。ウィランはそっと、瞼を持ち上げていた。

―6―

 一瞬何が見えたのか分からなかった。ウィランの前には目の覚めるような深い青色が広がっていたのだ。洞窟の壁は灰色だし、流れ込んでいる海水は透明だ。
こんなに青いものって何かあったっけ、とウィランは幾度か瞬きをする。ステラの顔がすぐ近くまで迫ってきていたことに気が付くのに少々時間がかかった。
お互いの息が触れ合うのではないかと思うほどの近距離だ。彼女の大きな瞳は間近で見ていると本当に吸い込まれてしまいそうなくらい。
「……どう、したの?」
 思いがけない状況にウィランは驚いて顔を遠ざける。あんまり顔が近いと落ち着かないというか、やっぱり照れくさいものがあった。
それにしてもいつの間にステラは接近してきたのだろう。目を閉じていたにしても、周囲には気を配っていたから何か物音がすれば分かるはずだ。
彼女の鰭では足音は立ちそうにはなかったが、岩の上と肌が擦れ合う音でもしそうなものだが。波の音ばかりに気を取られて気付かなかったのかもしれない。
「驚かせてごめんね」
 いたずらっぽく笑いながらステラは言う。それでもウィランの傍から離れようとはしなかった。
ウィランを見つめるステラの眼差しは、謡っていた時の穏やかなものではない。奥に何かが潜んでいることを思わせる怪しげな、それでいて色気のある眼。
「この島って周りが海ばかりで何もないでしょ? ウィランみたいに外から訪れるポケモンって本当に珍しいの。だから、退屈してて」
「退屈?」
「そう。毎日顔を合わせるのが同じポケモンばかりだと、飽きてくるでしょ?」
「あー、言われてみれば分からなくもないかな」
 今は飛翔のための特訓と言う名目が大きかったが、元々はウィランが空を飛んで様々な場所に訪れていたのも、新しい刺激を求めてのことだ。
住処の山にも仲の良いポケモンはもちろんいるが、毎日彼らにしか会えないとなるとステラの言うように退屈してくるかもしれない。
せっかく翼があるのだから、いろいろな所を見て回りたい。それが切っ掛けで始まる出会いもある。ガノフの時もそうだし、今回のステラもそうだった。 
「だから、せっかく会えたんだし……歌よりももっと楽しいこと、してみない?」
 そう言ってステラはさらにウィランに顔を近づけてくる。今度はウィランも身を退いたりはしなかった。
どのみち背後は岩壁で、これ以上引き下がれるスペースはない。岩に背中や頭をぶつけたくはなかったのだ。
彼女の鼻先が、ウィランの首筋にぴとりと触れる。氷ポケモンらしい、ひんやりとした感触だ。相性的に氷は自分が最も苦手とするタイプ。
もっと寒気が全身を駆け巡るのではないかと思っていたが、案外そうでもなかった。むしろ、この冷たさが心地よいくらいだ。
「へえ……例えばどんな?」
「ふふ、この状況でそこまで落ち付いてられるあなたなら、分かるんじゃないかしら。初めて、じゃないんでしょ?」
 片方の爪の数で足りてしまうぐらいだったが、今まで他の雌とのステラの言う『楽しいこと』の経験がないわけではなかった。
ただ、そこに至るまでは幾つもの経緯を経てからだ。欲望に駆られて突発的に押し倒してしまうようでは、何だか勿体ない気がする。
せっかく雌を抱くと言う機会が訪れたのならば直接的な刺激だけでなく、そこに至るまでの雰囲気も楽しみたいというのが、ウィランの考えだ。
だから、会って間もない自分にそういった感情を抱き、それを口にしてしまうようなステラが少々信じられないぐらいだったのだが。
世界は広い。いろんなポケモンがいる。ひょっとすると自分の見解が狭かっただけなのか。ならば、今回のことで一つ賢くなれたかもしれない。
「まあ、ね。でも、君みたいに会ったその日にいきなり、なんてのは初めてだよ」
「細かいことはこの際いいじゃない。どうかしら、ウィラン?」
 そこまで乗り気でない様子のウィランを誘うためなのか。今度は首筋をぎゅっと押し付けてくるステラ。
二足歩行のポケモンならば、これは背中に腕を回して抱きついてきたと言ったところだろうか。
自分の厚みのある腹部の皮膚と違って、ステラの首元は柔らかくぷにぷにしている。このままぼんやりしていると、本当にその感触に身を委ねてしまいそうになる。
心を揺さぶられていてはステラの思うつぼなのだろうが、やはり彼女の柔らかさは心地良かったのだ。
「練習中の歌を聴かせてくれるって話はどこにいったんだい?」
「……私の歌を気に入ってくれたあなたなら、ああ言えばここまで来てくれるんじゃないかなって。騙すような真似してごめんね」
 そういうことか。確かに行為に及ぶのならば、誰かの目につきにくい方がいい。そういった意味では洞窟はまさに絶好の場所だ。
つまり自分はまんまとステラの策に嵌ったというわけか。歌を聴いてほしい、と頼んできた彼女が嘘を言っているようには思えなかったのだが。
あんなにも素晴らしい歌声の持ち主がここまで好色だと予測するのは難しい。目の前の大胆な雌と、しおらしく歌を謡っていたステラとでは結び付けづらいものがある。
自分の歌について話している時の彼女も、そんな素振りは全く感じさせなかった。いや、歌の内容とステラの本質とは関係ない。
もしかすると、あの歌に惑わされていたのだろうか。何にしてもここに至るまでの流れではステラの方が上手だったのだ。
「あなたがどうしても嫌だって言うなら、無理にとは言わないけどね……」
 ステラはウィランから体を少しだけ遠ざけた。彼女の頭が、首筋がウィランの体から離れていく。冷たくて柔らかい感触を一度知ってしまったからだろうか。
認めてしまうのは悔しかったが、心のどこかでステラが遠ざかるのを惜しいと感じてしまった自分がいた。咄嗟に腕を伸ばしてしまわなかったのはせめてもの抵抗か。
ステラはウィランの動向をじっと身動きせずに見守っている。その気がないのならばこのまま去ってくれても構わない、と言うことなのだろう。
自分の欲望を満たしたいからと言って無理やり拘束したりするつもりはないらしい。その辺りの良識は持ち合わせているようだ。
確かに、このまま何事もなかったかのように洞窟を出てしまうこともできた。ステラも背を向けたウィランに不意打ちをかますような非道ではなさそうだ。
この島で出会ったステラと言うラプラスが自分に素敵な歌を聴かせてくれた。それだけの記憶に留めてしまうこともできた。
 だが、久々に間近で味わった雌の感触、そして匂い。ある程度は今までの経験で得た慣れがある。
そのせいか、表面上は落ち着いていられたウィランだったが、雄としての本能まで抑え込んでしまうことなんてできはしない。
触れられて、押しつけられて。やや強引な引き金ではあったが、ウィランの中の欲望は確実に燻り始めていた。
意識して見れば、ステラはなかなかの雌だ。立ち振る舞いによって雄の心をくすぐるには十分すぎるほど。
これは休憩がてら訪れた小島での思いがけないおいしい出来事として承認してしまってもいい、かな。
「こういう流れは僕としては不本意なんだけど。まあ……いいや。やるからには楽しませてもらうからね?」
 あそこまで迫られて、ステラと言う雌の存在を自分の中に残されて。それをすべて振り払って背を向けられる自制心は今のウィランにはなかった。
最近は飛ぶことばかりに熱中していたせいで、こういった事柄から離れていたというのも大きい。最後に自分で処理したのがいつかを思い出せないくらいに。
そこへのステラの誘いは、なかなかに刺激的だったのだ。もし、ウィランに恋仲の雌がいたのならばどこかでブレーキは掛っていたのかもしれないが。
生憎今のところそういった雌はいない。ステラと戯れたところで誰も咎めはしなかった。ならば、存分に。
「ふふ、もちろんよ。嬉しいわ、ウィラン」
「んっ……」
 半ば誘導尋問で、ステラの雰囲気に呑み込まれている気がしないでもなかったのだが。ウィランは自らの口で彼女に同意することを告げてしまった。
もう、後戻りはできない。今更、するつもりもない。優しく差し出されたステラの唇をウィランは拒むことなく受け入れていたのだ。

―7―

 最初はお互いの口先だけが触れ合っていたが、やがて舌を絡め合うディープキスへ。先に舌を入れてきたのはもちろんステラだ。
ウィランがその気になってくれたと認識したらしく、遠慮がない。舌の裏側や頬を内側から舐め回される感覚は徐々にウィランの力を奪っていく。
だが、このまま刺激に身を委ねていたのでは彼女にいいように弄ばれてしまうだけ。こちらも楽しませてもらわなければ。
ぐっと舌に力を入れてステラの舌を押し返すと、ウィランは彼女の口内に舌を侵入させる。ささやかかもしれないが、ステラへの抵抗だ。
氷ポケモンなのだから口の中ももっと冷たいのだろうと思っていたが、それほどでもない。ウィランよりやや低いか、ほぼ同じぐらい。
果敢に攻める意欲を見せたウィランにステラは一瞬驚いたものの、すぐに元の落ち着いた表情に戻る。
むきになってさらに押し返したりはせず、ステラはウィランの舌の感触をじっくりと味わっていた。
その動じない構えは、舌を動かすポジションをウィランに譲りでもしているかのような余裕を伺わせる。
「……んっ」
 満遍なく双方の唾液が混じり合った頃か。ステラはゆっくりとウィランから口を遠ざけた。
洞窟の中は薄暗いため目視はできなかったが、自分の舌先から細い唾液の糸が伸び、そして消えていったのを確かに感じ取った。
キスの味がどんなものかなんてほとんど忘れかけていた。それだけ、誰かと体を交えるような行為から遠ざかっていたことを痛感させる。
離れた後だというのに、まだ自分の口の中では彼女の舌がうねうねと蠢いているような感覚さえする。
ステラの濃厚な口づけの前では、今までの記憶がすべて上書きされてしまいそうな勢いだった。
「なかなか冷静なのね。やっぱり経験があるから?」
「そりゃあ、多少は影響するんじゃないかな」
 もしウィランが初めてだったならば、手慣れたステラの玩具と化していたことだろう。
彼女の一挙一動に動揺し、戸惑い、そのまま呑み込まれてしまう様子がありありと浮かぶ。
ステラに先手を取られはしたものの、ある程度迎え撃つことができたのはやはり経験が物を言うところなのか。
「動揺してくれた方が私としては面白かったんだけどね。でも、あなたは骨がありそうだから。それはそれで楽しみ」
「この辺りの雄は物足りなかった?」
「うーん……そこまで悪くはなかったんだけど、割とみんなすぐばてちゃうのよね。だから、あんまり楽しめなくって」
 他のポケモンも相手にしてきたことをさも当然のように言ってのけたステラ。もちろん予想はしていたため、ウィランは驚かなかったが。
出会って間もないウィランに言い寄ってきた、色を好む彼女に経験がないというのもおかしな話だ。
とりあえず、ウィランの両手の爪の数では収まりきらないくらいの回数はこなしていそうな雰囲気がある。
この辺りに住んでいるポケモンと言えば、鳥ポケモンや水ポケモンだろうか。
体のつくりはそれぞれ異なっていそうだが、雄だという事実があればステラには特にこだわりがなさそうだ。
彼らはどういった経緯でそうなったのか気になる所。きっと、ウィランのように歌に誘い込まれたものも少なくないだろう。
「私が上手ってのも、もちろんあると思うんだけどね……ふふ」
 艶やかな笑みを浮かべながら、ステラはウィランの腹部に前鰭をぴたりと当てる。そして、そのまま下半身の方へとゆっくり滑らせていく。
平行な窪みを織りなすウィランの腹部の皮膚。その深い谷間――――スリットの部分に彼女の鰭が触れたとき、ウィランは体を僅かに強張らせてしまっていた。
その瞬間、見つけた、と言わんばかりの邪な笑みがステラの表情を覆っていく。
ウィランがしまったと後悔しても時すでに遅し。敏感な部分が彼女にばれてしまったのだから。
鰭を当てて来たときから、その部分を狙ってくるであろうことは予測していた。
だが、いくら来るぞと覚悟をしていても体に備わった本能的な反射までねじ伏せてしまうことはできなかったのだ。
「期待してるわよ、ウィラン」
 ウィランのスリットを前にして、ステラは目を輝かせていた。奥にぎらぎらとした炎が滾っているような氷ポケモンらしからぬ瞳。
謡っている時の、細波を連想させる穏やかな目をしていたステラとは似ても似つかない。ただ、どちらの彼女も覇気に満ち溢れ生き生きとしていることだけは共通していた。
下の方を良く観察するためなのかステラはややうつむき加減だ。そこからウィランに視線を送っているのだから、必然的に上目づかいになる。
色気を含んだ目と声。そして至近距離でそんなことを言われると。不覚にも胸をときめかせてしまっている自分がいたのだ。
これも自分を深みへと誘うステラの策略なのか。この調子で続けられると、本当に彼女に呑み込まれてしまうのではないかと不安になってくる。
 正直、ステラの期待に応えられる自信はあまりなかった。定期的に処理していたのならばともかく、いつ抜いたのかも分からない状態だ。
かといって夢精した覚えもないし、自覚はしていなかったがかなり溜まっていそうな気がする。
その上ステラはかなりのテクニックを持っていそうだ。自信満々に自分でいい切るぐらいなのだから。
鰭や舌で何度か刺激を与えられれば、割と簡単に果ててしまうのではないかとウィランは薄々感じていた。
だが、自信がないからと言ってここで首を横に振ってしまってはお互いに興ざめしてしまうことは目に見えている。
またもや先手を取られてしまうのは少々気に食わなかったが、ここはステラに身を任せてみるしかなさそうだった。
「……ああ、僕もだ」
 これ以上弱さを曝け出すわけにはいかない。声が震えたり、どもったりしなかったのは上出来だ。ひとまずは余裕のある雄を繕えたように思える。
とは言え、ステラには何となく動揺がばれていそうな気がしてならない。様々な雄を見てきた彼女だ。上っ面の虚勢などいとも簡単に見抜かれてしまいそうだった。
しかしウィランの答えを聞いたステラは満足げに微笑んだだけ。分かってはいてもあえて口出ししなかったのは彼女なりの気遣いなのかもしれない。
「それじゃあ、行くわよ……」
 ドラゴンポケモンの雄の多くは収納式になっている。外部からの直接的な刺激や性的な興奮によって、スリットから出てくるのだ。
ウィランのそれも例外ではなかった。ステラとのキスや体を密着させていたことによる昂ぶりはしっかりと伝わっていた。
中身が突出しているほどではなかったが、スリットの入口が普段よりもわずかに上下に広がり、内部の赤みがちらりと見えている。
ステラはそこへ顔を近づけていくと、そっと舌を這わせた。割れ目をさらにこじ開けるかのように、奥へ奥へと侵入させてくる。
「……っ」
 彼女の舌が、ステラが、どんどん自分の中へ入ってくるのを感じる。口の中の比ではない。体の中で最も敏感な箇所。
ウィランのお腹の皮膚のラインに沿ってステラは何度も舌を往復させる。首を左右に動かしつつ舌の動きも交えながら、念入りに。
ステラの唾液とはまた別の、透明な液が彼のスリットから染み出すのにそう時間はかからなかった。
波が岩壁に押し寄せる涼しげなものではない、ねっとりとした水音が洞内に響き始める。
翼が、背中が、両足が。小刻みに震えてしまうのを止められない。ステラが舌を動かすたびに、自分の吐息が荒くなっていくのを感じる。
舌だけだというのに、こんなにも反応してしまうなんて。自負しているだけあって、テクニックはさすがと言うべきなのか。声を上げてしまわないようにするので精一杯だった。
 ふいに、ステラが舌を引っ込める。どうしたのだろうと、若干焦点の定まらなくなった目でウィランは視線を移す。そして、理解した。
中からぐっと押し広げられたり、何かがむくむくと膨張していくような、そんな感覚はしなかったのだが。無意識のうちだったのか。
彼女の舌を容易く押し戻してしまうくらいの強度は保っている。いい具合に興奮させられてしまったらしい。
スリットの中では到底収まりきらなくなった、ウィランの肉の塊がにょきりと顔を覗かせていた。時折僅かに揺れ、その存在感を誇示しながら。

―8―

 完全にその姿を露わにしたウィランの雄。その先端から根元まで、舐めまわすようにじっくりと熱い視線を送るステラ。
行為に及ぶと分かっていたとはいえ、そこまでまじまじと見られると何となく気恥ずかしいというか。そんなに釘付けになってしまうくらい物珍しいのか。
確かに、ウィラン自身にもそこそこ立派なモノなんじゃないかと言う自負はあった。ただ、そこには自分の体の大きさも関係していそうだが。
「……へぇ」
 顔を上げ、ウィランと目を合わせてステラは小さく微笑んだ。それ以上何も言わないところを見ると、何となく馬鹿にされているような気がしなくもない。
しかし、彼女の笑みからはついさっきまで張り付いていた邪なものが感じられなかった。どちらかと言えば、雄を見て本当に感心しているような笑み。
「どうかした?」
「ふふ、すごいなあって……」
「それはどうも」
 雄の大きさを褒められて、手放しで喜んでいいものかどうか微妙な所。胸を張って誰かに自慢できるような事柄ではないのは間違いない。
だが、ステラは割と真剣に称賛してくれているような雰囲気だったので、苦笑しながらもウィランは答える。正直、悪い気はしなかったのが本音だ。
再びウィランの肉棒に視線を落とし、瞬きしながらステラは眺める。瞳は欲望の影を取り戻していた。
さしずめ、極上の獲物を前にしてどのように料理しようか考えている、と言ったところか。
その小悪魔のような笑みも、謡っている時とのギャップがあって魅力を感じてしまう辺り、ウィランもすっかり彼女の雰囲気に呑み込まれてしまっていた。
「う……ぁっ」
 ステラはそっと舌先を伸ばし、雄の根元からぺろりと舐め上げる。湿ったまま外気に晒されて、若干温度を失いつつあった所。
そこへ直に触れた彼女の舌は、さっきよりもずっと熱を持っているように思える。ウィランにとっては熱いと言っても過言ではないくらいの衝撃だった。
「ふうん、大きくても感じるのは同じなのねえ」
 にやにやしながらステラは言う。明白なウィランの反応を確認できたのが嬉しいのだろう。
スリットの中に舌を入れられていたときはどうにか堪えていたが、そろそろ限界だったらしい。自分の意志とはよそに、はっきりと声を上げてしまった。
そりゃあ直接舐められれば、どんな雄だろうと少しは感じてしまうのではないだろうか。もっとも、ステラの舌から伝わってきたのは、少し、ではなかったが。
ウィランはそういった刺激に鈍いという実感はなかったし、むしろ今は敏感になっている可能性の方が高い。
処理したのが昨日や一昨日だったのならば、もっと余裕があったのかもしれないが。溜め込んでいたことを後悔しても、今更どうしようもなかった。
「ふぁ……っ」
 ステラは大きく口を開き、口内へすっぽりと彼の肉棒を咥え込む。今度は舌だけではない、頬の肉の柔らかさや温かさまでもが雄に絡みついてくる。
ステラも大きなポケモンだ。ウィランの雄を完全に覆ってしまえるくらいの口は携えていたらしい。喉の奥に引っかかって、苦しそうにしている様子は微塵も匂わせない。
口の中に這わされた時と同じ、あるいはそれ以上に。蠢く彼女の舌が、ウィランの肉棒をくにくにと愛撫する。
時折開かれたステラの口元から外の空気が流れ込んできはしたが、舌だけの攻めよりも密閉されているため刺激の持続する時間が長かった。
「んあぁっ……!」
 ウィランの喘ぎが、洞窟内に木霊していく。下半身がぴくぴくと震えて止まらない。立っていたのなら、間違いなく腰が抜けてしまっていただろう。
彼の体がいくら揺れ動いたところで、ステラは口を離そうとはしなかった。舌は相変わらずしっかりと纏わりついている。狙った雄は逃がさない、と言った心意気の現れか。
それにしても、さっき彼女が自分の肉棒に口を伸ばしたとき、全くと言っていいほど躊躇いがなかったような気がする。加速したようにも見えなくもない。
ステラはそんなにこれが欲しかったのかなあ、と肉棒からの生ぬるい快楽を受け止めながら、ウィランはふと思った。
「ふふ。さすがにこれくらいじゃ終わらないか」
「……あ、ああ」
 一呼吸置き肉棒から口を離したステラに、ウィランは力ない返事をする。見栄を張れるだけの気力が残っていなかった。
舌先で何度も表面を撫でられ、さらに強度を増した自分の肉棒の先端から、何かがじわりと染み出していったのを確かに感じたのだ。
そのときはステラの唾液と混じって掻き消されてしまったが、彼女がそれに気が付いていないはずがない。
まだぴんと天井を向いているウィランの雄の先端には、新たに湧き出した劣情の滴が微かに光っていたのだから。
じわじわと染み出した先走りの汁は、やがて肉棒を伝ってつうっと流れ落ちて行く。愛撫を中断させられても止まる気配がない。
ウィランの意思とは別に、久々の甘い刺激を受けた彼の雄はひくひくと悦んで反応を示している。
「でも、結構危なかったりするのかしら?」
 わざとらしい真似を。限界がどこまで迫ってきているのか、分からないとは言わせない。多くの雄を相手にしてきたステラならば尚更に。
分かっていながら聞いてくるところがまたいやらしい。雄の様子を見れば一目瞭然だろう。口を挟む気にもなれず、ウィランは黙ったまま目を伏せた。
何を言ったところで、ステラが迫ってくるのは止められないことは明らか。もう、果ててしまったらそのときはそのときだ。来るならさっさとくればいい。
いつの間にやらウィランの中では抵抗よりも、諦観の意思の方が強くなりつつあったのだ。彼女の巧みな攻めで、すっかり骨抜きにされてしまったのかもしれない。
「頑張って耐えてくれると嬉しいんだけどね」
「……っ!」
 突如、ひやりとした感触が下半身から頭の先まで、一気にせり上がってくる。ステラが両方の前鰭でウィランの肉棒をぎゅっと挟み込んだのだ。
熱を持った部分へのいきなりの冷却。嫌な寒気が背中を這いあがっていったのを感じる。やっぱりこの体温の低さは氷タイプなんだな、とウィランは痛感させられた。
とは言え、表面の温度は下がったものの雄の勢いは全く衰えていない。逆に、ステラの鰭の冷たさに触発されて、さらに膨張したのではないかと思えたほど。
ぷにぷにとした柔らかい弾力のある鰭は、肉棒にぴったりと密着して包み込んでいる。その状態で鰭を上下に動かせば、どうなるか。ウィランにも分かっていた。
 ウィランの雄をしっかりと捉えたまま、ステラはゆっくりと鰭を動かしていく。先走りの汁で満たされた彼の肉棒の表面と、もともと程よい湿度を保った鰭とで滑りは上々だ。
完全に鰭に覆われた状態で動かされれば、全体に確実な刺激を与えることができる。ステラはそれを心得ていたのだろう。
鰭を根元に下ろした時にぐっと力を込め、そのまま先端まで撫で上げる。強弱の付け方も無駄がない。回数を重ねてきた彼女だからこそ為せる技。
「うあぁっ!」
 悲鳴にも似た喘ぎとともに、ウィランは全身を震わせる。口の中なんて比べ物にならないくらい、もっと執拗で強烈な刺激。
息継ぎをする間なんて与えてくれやしない。ぎゅっと締めつけられたかと思うと、そのままステラの両鰭が上下し、容赦なく肉棒を扱いていく。
鰭の独特の弾力。ひんやりとした触感。絶妙にコントロールされた力加減。どの要素も確実に、ウィランを限界へと近づけていた。
熱く煮えたぎる何かが、もうすぐそこまで迫ってきているのが分かる。訪れる快楽を待ちわびるかのように、雄が小刻みに震えて止まない。
長く溜め込んできたことを考えれば、この時点で達してしまってもおかしくないくらいなのだが。まだ寸前のところで踏み止まっている状態だった。
半ば投げやりな態度を示しつつも、ここで完全に屈してしまわなかったのは、ウィランの中の雄としてのプライドがそうさせていたのだろうか。
もっとも、それももうすぐステラに粉々に砕かれてしまうのだろうなと、覚束ない意識の中でウィランは確信せざるを得なかったのだが。

―9―

 ふいに、鰭の動きが止まった。絶えず送り込まれていた刺激が止まる。それでも、ステラの両鰭はぴったりとウィランの雄に密着していたのだが。
彼女が小休止という猶予を与えてくれたのか。あるいは長く楽しむためか。後者の線が濃厚そうだが、ウィランとしてもここで息を整えて態勢を整えたいところ。
だが、自分の口元からは調和の取れていない不協和な呼吸音が零れ出るばかり。果ててしまわぬよう、下半身に意識を集中させることで手一杯だった。
沖から砂浜へ徐々に伝わってくる白波のように、じわじわと刻み込まれたステラの鰭の余韻が拡散している。束の間の休息も許してはくれなかった。
「……ふふ」
 ステラが零した小さな笑み。その表情はよく見ることができなかったが、きっと何かよからぬことを企んでいる。根拠はない。今までの勘だ。
その声が再開の合図だったのか。ステラは再び鰭を動かし始める。さっきのような上下運動ではなく、今度は前後に。
限界まで膨張しきっているであろうウィランの肉棒は、鰭を出し引きする時の圧力などものともしない。ぴんと直立している分、鰭で撫で上げられる面積は大きくなるわけで。
もう、喘ぎ声すらも上がらない。口は開いているのだが、乾いた息しか出てこないのだ。
肩から両腕、背中と両足そして尻尾の先まで。全身でひくひくと反応を示すのがやっとだった。
あの柔らかそうな鰭にこんな使い方があったなんて。泳ぐだけじゃないのか。ステラの鰭は侮れない。いや、この場合はステラ自身がかな。正直、甘く見ていた。
こんなことを思ってしまうのは本当に情けなかったのだが、早く楽にしてくれという思いがウィランの頭の中に浮かんできた。
そんな彼の気持ちを察したのかどうかは定かではないが、ステラは鰭の間から少しだけ肉棒の先端を露出させ口先でそっと咥え込む。
そして、舌先で尿道の周辺をちろちろと弄んだ。もちろん、両鰭はウィランの雄を挟んで前後に動かしつつ。
舌の温かさと鰭の冷たさ。根元への圧迫と先端への愛撫。方向性の違う二種類の刺激。限界寸前まで張りつめた雄が、その巧みな攻めに耐えきれるはずもなく。
「うあああぁっ……!」
 断末魔に近いような悲鳴を上げ、ウィランは果てた。いくら洞窟の中とはいえ、外にまで響いていてもおかしくないくらいの声。それだけ衝撃が大きかったのだ。
完全に決壊してしまった雄は、びくんびくんとまるで別の生き物のように暴れ狂い、ステラの口内へと精を輸送していく。
何週間ぶりか、あるいはそれ以上か。それだけ間が空いていたのだ。当然その量も多く。勢い余った精液が喉に引っかかったのか、ステラが雄から顔を離して咳きこんでいた。
あそこまで張りつめた肉棒を咥えて弄べばどうなるかぐらい、彼女も分かっていたはずだが。
予想以上の量だったのか。何にしても自業自得の域は出ないだろう。どのみち、今のウィランにはステラのことなどどうでもよかったのだ。
一瞬、目の前が真っ白になったかと思うと、下半身からどっと押し寄せてきた快感、そしてくらくらとした脱力感。
座ったまま体を支えていることもままならず、背後の岩壁に背中を預けることに。壁がなければ仰向けに倒れこんでいたことだろう。
「あぁっ……はあっ……」
 だらしのない本能的な笑みを浮かべながら、ウィランは快感の余韻にどっぷりと浸かる。このまま目を閉じれば濃厚な快楽の波に呑まれて沈んでしまいそうだった。
本当に久々だったせいか、気が遠くなりそうなくらいの気持ち良さ。堪らない。もちろんステラに扱いてもらったから、と言うのもあるだろうが。
今まで自ら遠ざかっていたことが惜しいとさえ感じてくる。やっぱり定期的に弄ってあげてもいいかもしれないな。
まだ小さく揺れている肉棒の先端からは、出渋った白い液がじわじわと雄を伝って落ち、地面に染みを作っていく。
独特の生臭さが洞内に徐々に広がっていくのを感じながら、ウィランは虚ろな瞳でまだ残っていた快楽を貪るのであった。

 何度か瞬きをしてみた。もう視界はぼやけてはいない。前にいるステラの輪郭もはっきりと見ることができる。
まだ心臓の鼓動が普段より早いと感じられたものの、呼吸は随分と落ち着いていた。一体どれくらいの間、恍惚としていたのだろう。
その間をずっとステラに眺められていたと思うと、何となく気恥ずかしいというか情けないというか。
にやつきながらじっくりと、果てた自分の様子を観察しているステラが目に浮かぶ。それを考えると顔を合わせ辛かったが、今更嘆いても仕方がない。
さっきは周囲に気を配る余裕などなかったのだから。もたれかかっていた岩壁から、ウィランはゆっくりと体を起こした。
「ふふ、どうだったかしら?」
 くすくすと笑いながらステラは聞いてくる。彼女の口元や鰭に大量に飛び散ったであろう精液の後は見当たらなかった。
吐き出したり、どこかに擦り付けたような形跡もない。と言うことは、あの量を全部飲み込んだのだろうか。
現場を直接見たわけではないものの、こくこくと喉を鳴らして嚥下しているステラを容易に思い浮かべることができてしまう。
 どうだったか、なんてウィランの反応からすれば火を見るより明らかなこと。分かりきっているであろう答えをわざわざ聞いてくるところがいやらしい。
ウィランが答えに困る様子を見てステラはきっと楽しんでいる。どんな言葉を返しても、彼女のにやにやを増長させるだけのような気がしたのでここは黙っておいた。
「でもあの量はさすがにびっくりしちゃった。相当溜め込んでたんじゃない?」
「まあ……ね」
 具体的な日数は覚えてないけど、やっぱりご無沙汰だったことは見抜かれていたか。あれだけ大量に出せば無理もないことなのだが。
それでも面と向かって直接言われるとあまり良い気分はしない。ばつが悪そうにウィランは右腕で軽く頬を掻いた。
「カイリューのあなたなら、もう少し我慢してくれると思ってたけどね」
「僕がカイリューだからって……どういうこと?」
「ほら、あんなに立派なのを持ってたじゃない。だからきっと耐えてくれるって期待しちゃったのよ」
 大きいから攻めにも強いというステラ論。何を理由にそうなるのか。大きさと強さはあまり関係ないような気がするのだが。
実際、ウィランにも大きいからと言って長持ちしているといった実感はない。どちらかと言えば若干早いのではないかという自負がある。
それでも今回は自分の中ではよく耐えた方。ステラのテクニックと、ご無沙汰だったのが重なればもっと早く果てていてもおかしくないくらい。
「タイミングが悪かったのももちろんあるんだろうけど、ちょっと期待はずれだったかしら」
 小さくはあ、とため息をつき小馬鹿にしたように言うステラ。一方的な期待が大きかった分、そぐわなかった時の落胆はそれに比例してしまう。
だが、勝手に期待されて勝手にがっかりされ、貶されたウィランは内心穏やかではなかった。確かに、余裕のある素振りを見せた自分にも原因はあるのかもしれないが。
それでも、散々弄んでおいてその言い草はないのでは。考えてみればさっきからやられっぱなしで、ステラに触れてすらいない。
やるからには楽しまなければ。鰭と舌以外も堪能させてもらうのもいいかもしれない。ちょっとした報復も兼ねて、反撃を試みるなら今だ。
一度果ててしまったが、もう一度攻めに転ずる気力はまだ残されている。耐久力はいまいちかもしれないが、持久力ならば。
絶頂を迎えた直後だろうから、とステラは油断しきっているだろうし、その隙を突いて一泡吹かせてやろう。
彼女の一言が、負けず嫌いなウィランの対抗心に火をつける。いつしか彼の瞳には、ステラにも負けないような妖しい光がぎらりと宿っていた。

―10―

 どうやってステラに反撃してやろうかと考えつつ、ウィランはちらりと自分の股ぐらに目を移す。
このまま逃げ帰ったのでは情けないにもほどがある。それだけは避けたい。そんなウィランの負けん気が伝わっていたのだろうか。
一度発射してしまったせいで多少元気がなくなっているようには見えたが、どうにか天井の方を向いておりスリットの中に逃げ込んだりはしていなかった。
いくら心の中でさあやるぞと意気込んでいても、肝心の雄がへたれてしまっているのでは話にならない。その点では心配はなさそうだ。
久々に触れられたかと思えば容赦なく弄られて暴発と来た。その直後となるとかなり手厳しいかもしれないが、もうひと頑張りしてもらわねば。
「そんなに、物足りなかったかい?」
「ふふ、ちょっぴり残念だったかなあ。悪くはなかったんだけどね」
 落胆の意は込めつつも、満足していないわけではないらしい。一応、フォローを入れてくれているつもりなのだろうか。
しかし、先ほどの彼女のため息混じりの一言でウィランが感じた苛立ちからすれば、埋め合わせとしての効果は無いに等しかった。 
ちゃんとした形でお返しをさせてもらわなければならない。言葉などではなく、しっかりと実存を感じられる手段で。
「そっか……」
 呟くように言うと、ウィランはのそりと立ち上がる。まだ若干の余韻が残っているらしく少しふらついたものの、二本の足で体を支えることは出来た。
腰を下ろしていたときはステラの目線の方が高かったが、直立すればほぼ同じぐらいかウィランがやや高いと言ったところ。
彼女の頭の先から顔、首筋、前鰭、背中の甲羅、後鰭と探るような目つきでウィランは順番に眺めていく。
やはりこうして見るとそそられるというか、魅力的な雌であることには間違いない。いつの間にか湧き出した生唾が、ウィランの口内を湿らせていく。
その肉付きの良い体に、そして甲羅の下に隠されているのであろう雌の深い部分に、触れてみたいと思った。
「どうしたの?」
 ステラの声に応じることなく、ウィランはゆっくりと彼女の隣まで歩いていく。そして、背中の甲羅が自分の正面に来る位置で向き直った。
ふいに動きだした彼の方をじっと見ていたステラだが、その瞳に不安を感じさせるものは全く映っていない。
むしろ、一度果ててしまったあなたに何ができるのかしら、とでも言いたげな余裕すら伺える。そんな態度でいられるのも今のうちだ。たぶん。
「じゃあ今度は……僕の番だ」
 言うが早いかウィランはさっとステラの背中の甲羅の縁に両手を添える。想像通り、硬くてしっかりしている。生半可な衝撃ではびくともしそうにない。
甲羅ならば痛みも伝わらないだろうし、思い切って力任せに動かしてもいいか。ウィランは両腕にぐっと力を込め、両足で踏ん張ると彼女の体を持ち上げていく。
ステラの左半身が僅かに浮き上がった。さすがに彼がこんな行動に出るとは予想外だったのか、ステラも目の色を変えて慌てふためいている。
「な、何……ちょっと、ウィラン!」
 全く動かなかったらどうしようかとも思っていたけど、この調子ならば何とかなりそうだ。でも、ずっとこの半端な体勢だと辛い。やるならばこのまま一気に。
ウィランは大きく息を吸い込むと、歯を食いしばり、渾身の力でステラの甲羅を押し上げる。ある程度彼女の体が浮き上がったことを確認すると、そのまま両腕を前に突き出した。
「え、あ……きゃあっ!」
 硬い岩肌と甲羅がぶつかり合ってごとりと鈍い音を立てる。見事なまでにステラの体は反転し、仰向けの状態になっていた。
少し黄みがかった淡い色合いのお腹が目の前に曝け出される。なるほど、あの甲羅の下はこんな風になっていたのか、とウィランは興味深げに眺めてみた。
これはまずいと感じたらしく、ステラは首を前後に動かしたり、鰭をばたつかせて反動をつけてみたり、何とか起き上がろうと頑張っている。
だが、やはり甲羅の重量があるせいか、自分だけでは起きることができないようだ。小さく揺れはするものの、結局元の状態に戻ってしまう。
水中ならともかく、陸上で仰向けになるようなことは彼女の体には想定されていないらしい。無論、起き上がれるだけの能力は備わっていないというわけだ。
そして偶然にも、ウィランがステラを転がした位置が他の岩場よりもわずかに低く、窪地のようになっていたらしい。
ウィランも転がす場所まで狙ったわけではなかったが、この平らでない足場がステラが自分で起きられなくなることに拍車を掛けていたのは事実だった。
「お、起してよっ、ウィラン」
「ふふ、心配しなくても。後でちゃんと起こしてあげるからさ」
 ゆっくりとステラに近づいていくウィラン。彼女の顔には、これから何をされるのだろうかという不安が張り付いていた。
今までの自信に満ち溢れた強気な表情はどこへやら。妖艶なだけじゃない、こんな可愛い顔もできるんだなと、ウィランはほくそ笑む。
無理もないか。仰向けに寝転がっている体制はほとんど無防備と言ってもいい。それは、何をされてもほとんど抵抗が出来ないことを意味する。
もちろんウィランもステラを傷めつけたりするつもりはない。無理やり押し倒されでもしたのならばまだしも、自分の口で合意することを告げたのは事実。
やたら一方的だったことに不満はあれど、苦痛ではなかった。彼女に身を任せることになり、絶頂を迎えさせられて。気持ち良かったことはどうやっても否定できない。
「僕、最初に言ったよね。やるからには楽しませてもらうって」
「え、ええ……」
「自分がやられっぱなしじゃ、僕の方も物足りないから、ね」
 物足りないと言うのならば。まだ残っている気力と精力で埋め合わせをするまで。あのまま終わらせるものか。
手始めにウィランはステラの前鰭の付け根にそっと両手を当ててみる。鰭自体の感触はたっぷりと触れられていた時に十分分かっていた。
内側の付け根はどうなのだろうと試しに手を伸ばしてみたが、やはり適度な弾力があって柔らかい。期待を裏切らない手触り。
少し力を加えるとへこむが、手を離すとすぐに元に戻る。絶妙な柔らかさを保った感触が何ともいえなかった。
両手の先だけで堪能するのは勿体ない。この際だから遠慮はいらないかな。ウィランはステラのお腹にぽふりと顔を埋めてみた。
「……あぁ」
 ステラのお腹がウィランの顔全体を優しく包む。思わず目を閉じて、ほっと息をついてしまうくらいの心地よさ。
自分が塒にしている住処の地面もこんな風だったらな、とふと思う。決して寝心地は悪いものではなかったが、このぷにぷにには到底及ばなかった。
さてと。準備運動はこの辺でいいか。次の行動に移るのが少し残念な気もするのだけれど、こんな目的でステラを仰向けにさせたわけじゃない。
顔を上げ、ウィランは視線を下の方へ移していく。ステラの後鰭の間、尻尾の付け根より少し上。縦方向の割れ目が、確かにそこにあった。
筋に沿った周辺はわずかにぷっくりと膨らんでおり、まるでその存在を強調しているかのようで、艶めかしさを感じさせる。
ステラが普段の体勢ならば、到底ここまでたどり着けそうにない。甲羅の上からではどこにあるのかさえはっきりとしなかったのだ。
だが、反転した今ならば話は別だ。雌を覆い隠すものなど何もない。肉厚な秘所がステラの呼吸に合わせて、小さく脈動しているのが分かった。
「ウィラン……」
 顔だけ持ち上げて、今にも泣き出しそうな瞳で見つめてくるステラ。さっきの勢いは一体どこへ消えてしまったんだと思うくらいに。
鰭と舌を駆使した巧みなテクニックを持っている反面、いざ自分が攻められるとなると脆かったりするのだろうか。
弱々しげな表情のステラもなかなかそそられるものがあるけど、本気で脅かすつもりはない。一応フォローしておこうか。
「大丈夫、悪いようにはしないよ」
「わ、分かったわ」
 不敵に笑うウィランを見て、諦めたのか。あるいは、覚悟を決めたのか。ステラはだらりと首を地面へと投げ出した。
完全に抵抗する意思を断ち切った姿。無抵抗な雌の体が、すぐ目の前に。久々だからなのか。心臓の鼓動が速くなっているのが分かる。
小さく深呼吸して、湧き出してきた生唾をごくりと飲み込むと、ウィランはステラの割れ目にそっと手を伸ばしていった。

―11―

 適度な柔らかさを保ったステラの鰭とは違い、先の尖った硬い爪をウィランは携えている。雄雌問わず、体の中では繊細な箇所だ。
傷つけてしまわないよう慎重に、ウィランは三本の爪のうちの一つを彼女の割れ目に添えた。そして、筋に沿ってつうっと動かした後、離してみる。
そこから染み出ていたであろう液で、彼の爪はぬらぬらと光っていた。さすがに溢れ出るまではいかないが、表面をじわりと湿らせる程度にはしっかりと濡れていたようだ。
「へえ……なかなかだね」
「触り始めてから、達するまでのウィランの反応を目の当たりにしてれば、さすがにね……」
 一連の自分の行動がふと思い出され、彼の顔がさっと赤くなる。最も、その変化は今のステラには見えていないだろうが。
最初は出来るだけ声を上げまいとしていたが、ステラのテクニックの前にはそれも叶わず。結局悲鳴にも似た喘ぎと共に達してしまった。
雄をびくびくと反応させ、恍惚とした表情で荒い息を上げていたであろうウィランの姿は、ステラを興奮させるには十分だったらしい。
「それじゃ、今度は君の声も聞かせてもらおうかな」
 両腕を割れ目の左右に添え、ゆっくりとウィランは顔を近づけていく。本当はステラがしていたように爪で弄ってみたい気持ちもあったのだが。
生憎ウィランには自負できるようなテクニックがあるわけではなかった。闇雲に爪を動かしていたのでは、ステラに怪我をさせてしまうかもしれない。
だが、爪よりもずっと柔らかい舌ならば、傷つけてしまう心配もないだろう。確かに反撃に転じはしたが、彼女に痛みを伴わせることをウィランは望んでいなかった。
目前まで顔を接近させると、両手に少しだけ力を込め、そっと左右に広げてみる。白っぽいお腹の皮膚の色の中に、淡い桃色の部分がすっと浮かび上がる。
表面をほんのりとてからせながら、ステラの呼吸とともに微動するその姿は何ともいえない艶めかしさ。気がつけば、ウィランの股間の雄もしっかりと精気を取り戻しつつある。
ステラに容赦なく愛撫され、はち切れんばかりに膨張していた時と比べると多少は見劣りしていたが、役目を果たすには十分だろう。
ついさっき大量に出したばかりだというのに、なかなかに頑張ってくれている。ここは持ち前の持久力に感謝しなくてはいけないな。
だけど、君の出番はもう少し後。今はその時に備えていてもらうことにしよう。せっかくだし下だけじゃなくて、舌でも堪能しておきたい。
雌を味わうのは久しぶり。ブランクが大きかったせいなのか、両手が、舌が震えているような気さえしてくる。初めてってわけじゃないんだ。落ち着かねば。
小さく息を吸いこんで呼吸を整えた後、ウィランは舌を伸ばし、ステラの秘所に触れる。そこはぷにぷにしていた鰭やお腹よりも、ずっと肉厚で強度があった。
「あ……っ」
 ステラの口元から漏れた細い声。喋っていた時や、謡っていた時とも違う、艶のある響き。歌とはまるで方向性が違うにせよ、ウィランにとっては素敵な声だ。
舌を上下に滑らせながら、徐々に力を込め、奥まで潜らせようと試みる。しかし、彼女の左右の肉壁はそう簡単にそれを許してはくれなかった。
外部からの侵入者を拒むかのように、脈動する雌にぐいと押し戻されてしまう。何度も雄を相手にしてきたであろう割には、かなり締まりが良さそうだった。
「っ……あっ……」
 時折、首筋や鰭をぴく、ぴくんと震わせてステラは反応を見せている。舌の動きに大した変化球を加えているつもりはなかったのだが、こんなにも。
考えてみれば、最近退屈していた風なことを言っていたし。ひょっとするとステラの方もこういったことからご無沙汰だったりするのだろうか。
自分で処理するにしても、カイリューのように両手を自由に動かせないラプラスの体型だとなかなか難しそうな感じがする。
水中で仰向けになって首を伸ばしたりすのか、あるいは、何かに擦りつけたりか。ちょっと気になりはしたが、それは今聞くような事柄ではないだろう。
ステラが長らく処理をしてないのであれば、凡庸なウィランのテクニックでもそこそこの効果が見込めるかも知れない。試してみる価値はある。
一旦雌から顔を離すと、ウィランは両手をやや上へずらし、割れ目の上部をぐっと左右に広げてみる。
普通に舌を滑らせただけでは触れることができない、重厚な壁に守られた丸みのある小さな突起がそこにあった。ここは、どうだろうか。
その一点に狙いを定め、ウィランは再び顔を近づける。突起に舌を密着させ、舌先を小刻みに動かし、ちろちろと愛撫していく。
「あぁっ……や、あっ……ああんっ!」
 ステラの首筋ががくんと大きく揺れた。本来ならば体全体を揺り動かすような大きな反応だったのだろうが、何せ重量のある甲羅が下側にあるのだ。
反応しようとしても動きが甲羅に吸収されるためか、首筋以外での動きは控え目だった。
それでも、今までにないくらいの体の揺れ、そして喘ぎ。探り当てた突起がステラの敏感な部分であることは明らかだ。
ウィランの口元や舌を湿らせているのは、彼自身の唾液だけではない。じっとりと湿った雌は洞内の僅かな光でも反射して、妖しげな輝きを放っている。
このまま次の段階に進んでも良いような気はしたが。もう少し、楽しませてもらうことにしよう。ステラの愛液を舌に絡めつつ、さらに突起を弄んでみた。
湧き出した甘い蜜を味わいはするが、直接果実を貪ったりはしない。あくまで表面を撫でるだけ。動かす速度もそれほど変えずに、舐め続ける。
声さえ上げなかったものの、荒い息を上げながらがくがくと首筋を震わせているステラを見る限りは、口先で吸い上げたり、爪でつまんだりする必要はなかったようだ。
ここでステラが果ててしまったのではウィランの方も消化不良になってしまう。彼女への報復を終わらせるときは、自分の雄で。最初からそのつもりだった。
「はあっ……あぁ……」
 断続的な刺激はなかなか応えたのか、ステラの呼吸音からは覇気が感じられない。ただ、体の方はちゃんと応じている模様。
割れ目の窪みに留まりきらなくなるほどに染みだした愛液が、彼女のお腹が上下するにつれてゆっくりと尻尾の方へ流れていく。
軽い筋肉痛になりかねない準備運動だったかもしれないが、これだけ解れれば後は問題なく事が進むはず。
ウィランはステラの雌から舌を離す。愛液がすうっと糸を引き、やがて消えた。名残惜しい気もしたが、どこかで終止符は打たねばならない。
舌に絡み付いた残滓を唾液と混ぜ合わせて味わいつつ飲み込むと、ちらりと自分の股ぐらに視線を移す。
雌を愛撫していたことによる興奮からか、自分の雄は痛いくらいに膨張していた。申し分ない強度。これならばいける、きっと。
「……ステラ」
「わ、分かってる。お手柔らかにね」
 これからウィランがどんな行動に出ようとしているのか、ステラは察している。やや震えているようにも思えたが、比較的落ち付いた声。
経験豊富な彼女のことだ。たっぷりと慣らした後、何が来るのかくらいは言われなくても分かっているはず。覚悟はできているようだ。
「ああ。慎重にいくよ……」
 強引に侵入させるつもりはない。ステラを気遣ってのことでもあるが、半分くらいは自分のためだ。さっき触れた限りではかなり締め付けが良さそうな雰囲気。
下手に突撃してしまうと、かえって墓穴を掘ることになりかねない。やや早漏気味な自負はあったものの、どうにか彼女よりも長持ちしたいところ。
さあ行こうか、と雄を近づけようとしてあることに気が付く。背中に敷いた甲羅の高さがあるため、窪みに嵌っていてもステラの雌はやや高い位置にある。
このまま腰を前に出したのでは僅かに届かなかった。これは計算外。攻める以前の問題だ。高さが足りないのでは話にならない。
つま先で立てば、なんとか触れることができそうだった。しかしこれでは不安定。前屈みになれない。何か、何か支えになるものが欲しい。
そうは言っても、都合の良さそうな岩は見当たらないし、ステラのお腹に手を当てたのでは柔らかすぎて支えにならないだろう。さて、どうしたものか。
 少し考えた後ウィランはつま先で立つと、思い切ってステラの方へ体を傾け、前のめりに。そして、彼女の前鰭の付け根にある甲羅の縁を両腕でがっしりと掴んだ。
ウィランの体重が加わった反動で、甲羅は何度かごとごとと揺れたが、やがて静かになる。これならば十分体を支えることができそうだった。
「届かなかったらどうしようかと思った?」
「……ちょっとはね。でも、これで大丈夫だ」
 ステラが顔を上げ、微笑しながら言う。どうすれば届くだろうか、とあれこれ思案していたのがばれていたらしい。
予想だにしなかった障害だから、思いのほか戸惑ってしまっていたのか。苦笑しつつも、ウィランは答えた。
つま先で立っているため両足は若干不安定だが、甲羅を掴んだ両手がしっかりと支柱になってくれている。その強度に感謝しなければならない。
「もしだめだったら、私があなたの上になっても良かったんだけどねぇ」
「それじゃあ、頑張って君をひっくり返した僕の立場がないでしょ」
「ふふ……それもそうか」
 今から来る、と思っていたウィランが甲羅の高さに妨害されて遅れてしまった。そのことで緊張が緩んだのか、ステラには自然な笑顔が戻っている。
謡っていたときの穏やかな顔。迫って来たときの妖艶な眼差し。いきなり仰向けにされて不安げに揺れていた瞳。
どの表情にもそれぞれの魅力があったが、やはりあるがままの今の表情が一番素敵なんじゃないだろうか、とウィランは思った。
この体勢ならばお互いの顔が近い。仰向けになったステラも、少し顔を上げるだけでウィランと目を合わせることができる。
やはり相手の表情を、息遣いを、傍で感じられるというのは嬉しいこと。
「今度こそ……行くよ」
「ええ……」
 ステラはウィランをじっと見つめながら、小さく頷いた。ウィランも頷き返すと、自分の下半身に目をやり、ずれていないか位置を確認する。
両足よりも両手に力が加わっている慣れない体勢だが、何をすべきなのかは心得ている。
そそり立った雄の先端をステラの雌の前まで持ってくると、ウィランはそのままそっと前に突き出した。

―12―

 雄の先端がぴたりとステラの雌に触れる。やはり敏感な箇所同士、刺激はちゃんと伝わっていたらしい。双方の表情が僅かに揺れた。
ステラは小さく微笑んだ後、黙って頷く。ウィランも目でそれに応じた。ここまで来たのだ。躊躇わずに踏み込めばいいと、互いに心得ている。
ウィランは触れていた状態から少しだけ腰を前に動かしてみる。微かな水音とともにステラの割れ目はぐっと左右に押し広げられ、彼の侵入を許した。
白濁液を外へ吐き出した直後はさすがに元気をなくしかけていた雄も、このままでは終われないというウィランの強い心意気。
そして反撃に転じ、ステラを弄りまわしていた時の彼女の仕草や喘ぎによる興奮もあってか、しっかりとその役割を果たしてくれている。
「いくよ……」
 さっき中に舌を入れた感覚では、想像以上に締め付けが良いような気はしていのだ。案の定、まだ先端部分だけだと言うのにぐいぐいと圧迫されているのが分かる。
二度目とはいえ、このまま突入してステラより長持ちすることができるか、あまり自信がない。それでも、震えないよう取り繕った声でウィランは合図を送る。
ステラは何も言わずに、再び真剣な顔つきで頷いてくれた。その瞳には不安と期待が半分ずつ入り混じっているように見える。
ウィランのものがどんな感覚なのか楽しみでもあるし、ちゃんと受け止められるかという心配もある。彼と同じような不安を彼女も抱いているようだ。
もしかすると今までのステラの相手は、彼女よりも小柄な雄が多かったのかもしれない。受け入れたことのない大きさならば、緊張するのも自然なこと。
「……っ」
 少しずつ、少しずつ腰を前に突き進めながらウィランは自らの雄を彼女の中に沈めていく。慎重なのは自分の保身のためか、あるいはステラを想ってのことか。
彼女が後者の方だと判断して汲み取ってくれていれば一番いいのだが、今はそんなことに考えを巡らせている場合ではない。
ウィランが反撃に転じている間に、外気に晒されっぱなしだった肉棒はかなり乾いてしまっていたのだが。それを全く思わせないほどスムーズに進んでいく。
ステラの割れ目からじわじわと染み出てくる蜜は、潤滑剤など一方で十分だと言わんばかり。もう肉棒の半分以上が彼女に呑み込まれてしまっていた。
「ぐ……っ、あっ……が」
 予想以上の沈み込みに怯むことなくさらに動かしていくウィランだったが、容赦ないステラの締め付けに無意識のうちにその表情も歪んでくる。
やはり舌や鰭の比ではない。あんなしっとりとした優しさは含まれていなかった。無慈悲に雄を縛りつけてくるような、分厚い肉の壁。
左右からぎちぎちと攻めたてられ、二回目で鈍くなっているのは間違いないはずなのに、自分の奥でぞわりと何かが動き出したのを確信する。
それが限界へと達するまでどれくらいの時間がかかるだろうか。あまり長持ちしそうな気はしない。せめて、ステラよりも持ちこたえてくれれば良いのだが。
最初に一度暴発してしていたのは幸いだった。いきなりここへ侵入していたならば、間違いなくこの時点で達してしまっていただろうから。
「ひっ……あっ、うぃらっ……入って……あぁっ」
 とはいえ、苦しいのはウィランだけではないらしい。雄の大きさを目の当たりにしたときはこれ以上ないくらいに目を輝かせていたように思えたのだが。
いざ自分の中に受け入れるとなると、さすがにそういうわけにもいかないようだ。ぎゅっと目を閉じ、口をぱくぱくと動かしていたが言葉を発することができていない。
頬を紅潮させ、荒い息を上げている彼女の表情は少なからずウィランに活力を与えていた。出会って間もない雄に遠慮なく迫ってくる、手慣れた雌。
そのステラが自分の動きで、こんなにも喘いでいる。間近で見ると堪らない艶めかしさ。そうした目の前の事実は、ウィランの優越感を確実に満たしていったのだ。
実際は彼自身も歯を食いしばって耐えていたため戦況は五分五分だったのだが、それくらいの心持ちがないと本当に負けてしまいそうな気がしてくる。
まずは気持ちで勝っていなければ、本番でもきっと勝てない。そうやって奮い立たせた勢いをかき集めて、ウィランは雄の根元までずぶりとステラの中に沈ませた。
「ぐ、うぅっ……」
「ああっ……!」
 肉棒が余すところなく割れ目の中に呑み込まれる。今、ウィランとステラは完全に繋がった状態だ。
ちゃんと入るのかどうか気がかりだったステラをよそに、彼女の雌はすっぽりとウィランを包み込んでいる。
けれども、相手は今までにないような大きさなのだ。踏みこまれたことのないであろう部分が、彼によって浸食されていく。下半身に伝わる圧迫感は計り知れない。
もちろんそれはウィランも同じこと。肉棒の先端から根元まで、きっちりと埋もれている。まるで、自分の雄が底なし沼に沈んでいくかのよう。
甲羅の縁に当てた両腕で体をしっかりと支えて極力動かさないようにしていても、深く踏み込んだ雌からは無条件で刺激が送り込まれてくる。
さあ早く、と攻めたてるかのようにステラの締め付けはその強度を増していた。しかし、ウィランはここで朽ち果てるわけにはいかなかった。
何としてでも彼女には自分より先に絶頂を迎えてもらいたいところ。そうしないと、わざわざ甲羅を返してまで反撃を試みた意味が失われてしまう。
「い、くぞっ……!」
 もう、ステラの意思を確認したりはしなかった。この状況での自分の言葉が何を意味しているのか、経験豊富な彼女ならば理解してくれると信じて。
ここまで来たのだ。もう後戻りはできない。ならば、突き進むのみ。ステラより早く達してしまったらそのときはそのときだ。やられるだけで、終わらせはしない。絶対に。
半ば玉砕覚悟で、ウィランは腰を前後に振り始める。肉棒を割れ目から少しだけ引き抜くと、そのまま、前へ突き出す。
全身を駆け巡る衝撃に、ステラの首筋が、前鰭ががくんと大きく揺れる。それでも、安定感のある甲羅のおかげなのか下半身まで揺れはあまり伝わってこない。
しかしながら、静止していてもかなり苦しかったぐらいなのだ。振動が少ないからと言って、それは大した助けにはなっていない。
勝算はぼんやりと霞んではっきりと見えなかったが、自分の限界が訪れるまで動きを止めようとは思わなかった。再び雄を抜き、ずぶりと彼女に突き立てる。
結合部からは留まらなくなった愛液が溢れ出し、ウィランとステラの下腹部を、洞窟の床を濡らしていく。濃厚な湿った音は、舌で愛撫していた時の比ではなかった。
ねっとりと重厚で、淫猥で、聞く者すべてを欲望に駆り立ててしまいそうな音。どんな大雨や津波がこの島に訪れても、こんな水音を奏でることはできないだろう。
二度、三度、我が身が朽ち果てるまで。ウィランは腰を動かし続けていく。かなり耐え忍んできたものの、雄が決壊してしまうのも時間の問題になってきていた。
締めつけられていても、先走りの汁がにじみ出る感覚ぐらいは分かる。もう、これまでだろうかという諦めがウィランの脳裏をかすめたそのときだった。
「ひゃああああっ!」
 突如、洞内に響き渡った耳を劈くようなステラの悲鳴。直後、割れ目からぷしゃあっと一気に愛液が溢れ出す。どうやら、果ててしまったようだ。
ウィランの下腹に、両足に飛び出した液がぴちゃりと付着する。行き場を失ったものは洞窟の床に大きな染みを作っていった。
ひくひくと脈動するステラの雌からは何回かに分かれて、透明な液が外へと送り出されてくる。首筋や前鰭、後鰭までもがくがくと震わせてステラは快楽に身悶えていた。
だらしなく開けられた口の端はにやけているかのようにつり上がって。細められた瞳には涙まで浮かべていて。淫らではあったが、至福ともとれる満ち足りた表情。
割れ目の動きが大人しくなって、愛液も打ち止めになったのとほぼ同時だった。高く盛られた砂の山が崩れ落ちるかのように、ステラはだらりと床に首と両鰭を投げ出し、静かになる。
口元から漏れる呼吸音と、微かに揺れている瞳が、彼女の意識がここにあることを示している。うっとりとしたその顔は、快感の余韻に酔いしれているかのようだった。
「へ、へっ……やっ、かはっ……」
 やり遂げた。自分より先に、ステラに。先制を許してしまいはしたけど、なんとか目的は果たせたんじゃないだろうか。湧き上がる達成感に自然と表情も緩んでくる。
それと同時に今まで張りつめていた緊張の糸がぷつりと切れてしまったからなのだろうか。ステラが達してそれほど経たないうちに、ウィランの雄も限界を迎えてしまった。
ぴくりと震えた彼の肉棒は何度か律動し、彼女の中に精を送り込んでいく。一回目と比べると半分にも満たない量かもしれないが、出ることは出る。
出す量が少なくても射精は射精。事後の快感がじわりじわりとせり上がってくるのが分かったが、今回は疲労の回りの方が速かった。
最初に気が遠くなるような快楽を味わってしまったせいか、二度目の心地よさがほんの一握りに感じられてしまうのも仕方のないことなのかもしれない。
快感を堪能している場合などではなかった。両手両足と翼に石でも括りつけられたかのような、猛烈な倦怠感がウィランに襲いかかる。
いくらご無沙汰だったとはいえ、ほとんど間を空けずに二回目をやるもんじゃないなと、震える両腕と爪先で体を支えながらウィランは痛感したのであった。

―13―

 ただでさえ慣れない体勢で不安定だったのだ。このまま両腕が限界を迎えてしまえば、ウィランはステラのお腹の上に倒れこんでしまう。
そんな無様な姿を曝してしまっては、せっかくの反撃も効果を失ってしまいかねない。とりあえずはこの体勢を何とかするのが先決だ。
バランスを崩してしまわないよう慎重にウィランは腰を後ろに引き、ステラに刺さったままだった肉棒をゆっくりと引き抜く。
二度に渡る射精の直後という肉体的なものと、目的を成し遂げたことによる精神的なものもあっただろう。もう気を張る必要はないのだから。
それらの相乗効果もあってか、ウィランの雄はすっかり勢いを失っていて、ぐったりと頭を垂れてしまっていた。ついさっきまでの張りつめていた様子は見る影もない。
本当に久々の仕事だというのに、随分と頑張ってくれた。しばらくは休ませてあげなくちゃな。無理させちゃってごめんね、とウィランは心の中で謝っておいた。
そして、わずかに残った余力を絞り出すと、ウィランは両腕にぐっと力を込める。そのまま甲羅の縁に向かって腕を突き出すようにして反動をつけ、何とか二本足で立ち上がることに成功する。
自分の足の裏と踵に当たる洞内の岩の感触が、ひどく懐かしく感じる。やはり二足歩行の身としては、しっかりと地に足をつけている状態が一番しっくりくる。
とはいえ、容赦なく迫りくる倦怠感はウィランが二本足で立つことも許してくれないようだ。よたよたした足取りで数歩進むと、ウィランはばたりとステラの隣に仰向けに倒れ込んでしまった。
「はあっ……はあっ」
 お腹を激しく上下させ、荒い息を上げるウィラン。どんなに全速力で空を飛んでも、こんなに呼吸が乱れたことはなかったような気がする。
それだけ今回の行為は、自分の体に負担を掛けていたということなのか。最初のうちは洞窟の天井がぐるぐると回っているような感覚さえしていた。
何度か深呼吸をして、息を整えるうちに次第に意識ははっきりしてくる。自分の住む山では味わえない、潮の香りを含んだ空気。胸一杯に吸い込んでみると、何だかとても新鮮だった。
「ウィラン、大丈夫?」
「どう、にかね。君から心配されるようじゃ、世話がないな……」
 苦笑交じりにウィランは言う。自分がステラにその言葉を掛けることができていたのならば、それなりに示しが付くのだが。
ウィランにとって連戦は初めての試みだったのだ。間も空いていたし、勢いもあった。もしかしすると行けるのでは、と思い突撃してみたものの結果は見てのとおりである。
「さすがに二回目はきつかった? でも……あの後私に攻め入る余力があったなんて。あなたのこと、見くびってたわ」
「期待はずれだ、とまで言われたら、僕も何らかの方法で君に一矢報いたくなったからさ。だけど、君は強かったよ」
「あなたもね。誰かの前で果てるなんて、本当に久しぶり。……ウィラン、楽しかったわ」
 仰向けのままウィランに視線を送り、ふっと微笑むステラ。お互いに寝そべっているため、なんだかおかしな角度。
やはりこの表情が自然で違和感がなく、見ていて一番落ち着けるような気がした。最初に歌を謡っていたときのそれと似通っている。
彼女が自分に迫って来たときのものや、絶頂を迎えて喘いでいたときのものももちろん印象には残っていたのだが。そこにはない、別の魅力が今のステラにはあるように思えたのだ。
「それは、よかった。僕の方も色々と……ね。君が自分で言うだけあって、さすがだったよ」
 色々やさすがとは具体的に何なのか、ウィランは言わないでおいた。しみじみと実感はしていたものの、いざ口にするとなると恥ずかしいというか悔しいというか。
そんなウィランの気持ちをステラも察してくれたのか、それ以上追及しようとはしてこなかった。少し照れくさそうに言う彼を見れば、曖昧な言葉が何を意味するのかは分かることだろう。
「ふふ、ありがと」
 屈託なく笑うステラ。ウィランもそれにつられて笑顔になる。総合的に見てみれば、やはり彼女には負けた気がしないでもないのだが。
不思議とウィランの中に悔しさは残っていない。自分で納得のいく飛翔が出来た時のような、清々しい気分だった。
結果はどうあれ、後腐れを感じない。やるからには楽しませてもらうという当初のウィランの目的は果たすことが出来たのではないだろうか。
「……ねえ、ウィラン」
「ん?」
「もし良かったら、また会いに来てくれないかしら?」
 何度かまばたきをすると、ウィランはゆっくりと体を起こす。そしてステラの顔を見る。軽い冗談ともとれるようないたずらっぽい笑みだったが、彼女の目は至って真剣だった。
「私相手にここまで果敢に攻めてくる雄も珍しいのよ。あなたがそういう気持ちになったときだけでいいから、来てくれると嬉しいな」
 なるほど。攻め入られるようなことがほとんどなかったせいか、ステラにとっては今回の行為が随分と印象に残ってしまったらしい。
元々は、やられた分はやり返すと言った自分の負けず嫌いな性格が発端ではあったのだが。妙なところでステラに気に入られてしまったようだ。
「あら、もしかして……他に深い関係の雌でもいるのかしら?」
「いや、そうじゃないけど。でもこういうのは……君を欲望の吐け口にするみたいで、なんだかなあ」
 恋仲と言える雌がいたのならば、最初にステラに誘われた時点で身を退いていたことだろう。ウィランもそれくらいの節操は持ち合わせているつもりだ。
ブレーキを掛ける事象がなかった分、溜まっていた欲望も手伝ってステラと行為に及んでしまったのだが。まさかそれがこんな事態を招くとは思ってもみなかった。
ステラが言っているのは恋愛対象とは違う、体を求め合うだけの関係と言っても過言ではない。他の雌とそういった関係を持ったことのないウィランに取っては、未知の領域だったのだ。
「生きてる限りそういう欲望はなくなりはしないんだから、気にすることじゃないわよ。来てくれれば私もあなたも、自分で処理するよりも気持ち良くなれるし……どうかしら?」
 ステラの主張は一理ある。間違いではなかったが欲望は湧き上がるものだから仕方がない、と割り切っていたのではあらゆる所で問題が起きる気がする。
良くも悪くも己の欲に正直な彼女の意見らしくはあった。ウィランも全く興味を惹かれないわけではない。気持ち良かったのは紛れもない事実。
再び味わいたくないと言えば嘘になってしまう。しかし、それでも。ここでステラの誘いに乗ってしまうことに対して、何かもやもやとした釈然としないものが胸の中に残っていたのだ。
「だめ? まあ、私も無理強いはできないから……」
「……歌」
「えっ?」
「ステラが謡ってくれた歌、すごくよかったから。また聞きたくなってこの島に来ることはあるかもしれないね」
 もし、自分がステラと体を交えるようなことがなく、この島を去っていたとしても。きっとウィランは同じ言葉を彼女に告げていたことだろう。
あの歌にはもう一度聞きたいと思える素晴らしさがあった。ステラの誘いに乗ってしまい、純粋な謡い手と聴き手という関係でいられなくなってしまったのは少々残念だったのだが。
「君が聞かせてくれる気分になったときだけでいいから、そのときは謡ってくれると嬉しいな」
「……ええ、喜んで。今度こそ新しい歌を考えておくわ」
「ふふ。楽しみにしてるよ」
 自分がこの島を訪れるのは、もう一度ステラの歌が聴きたいから。決して彼女の体が、己の性欲を満たすのが目当てというわけではない。
きっとどこかで、彼女の誘いに乗るというのではなく、それ以外の正当な理由が欲しかったのだ。やましい目的でないのなら、堂々と胸を張ることができる。
とはいえ、また来るとステラに言ってしまったことには変わりない。自分を誤魔化している、と言われればそれまでだ。島に来るのはあくまで歌を聴くためだが、その後のことは考えていないのだから。
もう一度会う旨を伝えた時、微かに妖しく微笑んだステラがそのまま帰してくれるとは思えなかった。仮にそうなったとしてもよほどのことがない限り、ウィランは拒みはしないだろう。
恋仲ではないが、肉体関係はある。ウィランからすればそういった位置づけの雌は初めてだ。これが良い方に転ぶか、悪い方に転ぶかは分からない。
もちろん話したりするつもりはなかったが、ガノフがこのことを知ったら、あんたはいったい何をやってるんだと呆れられることは容易に想像がつく。
もしかすると、何度も会ううちに恋愛感情が芽生えたりする可能性もあったりするのかもしれない。残念ながら今のところ、ステラに対してそういったときめきは感じられそうもなかったが。
「さてと。かなり長居しちゃったし、そろそろ僕はお暇するよ」
 地面に手をついて、ウィランはのそりと立ち上がる。まだ若干体が重かったが、もうめまいがしたり足もとがふらついたりはしなかった。
翼に力を込めて羽ばたけば、滞りなく飛ぶことができるだろう。洞窟の中からでは外の様子が分かりにくいが、壁の隙間から光が差し込んでいるため日はまだ落ちてないことが分かる。
来たときに比べると、随分と緩慢な飛翔になることは間違いなさそうだが。島に来たときは予想もしていなかった、思いがけない疲労。戻ったら無理せずにゆっくり休むことにしよう。
「……ちょっと待って、ウィラン」
「ん?」
「起こしてよ」
「あ……」
 本当にそのまま洞窟を去ってしまいそうな雰囲気のウィランに、ステラがやや強い口調で呼びかけてくる。
仰向け状態の彼女を見慣れてしまったせいか、その体勢でいることに違和感を覚えなくなってきてしまっていた。
そうだ。ステラにどうにか仕返ししてやりたくて、咄嗟の思い付きで甲羅をひっくり返したんだった。今思えばよくもまあ、あんな思いきった行動に出られたものだ。
負けん気の強さもその匙加減が分からなくなってしまうのは考えもの。行為の最中だったから、自制心が効かなくなっていたというのもあるかもしれないけれど。
「冗談のつもりなら、笑えないわよ」
 ステラは呆れたかのように、ふうと小さくため息をつく。このままだと身動きが取れないだろうから、彼女にとっては死活問題。危ない所だった。
「いや、本気で忘れそうだったんだ。ごめんね」
「もう……」
 少し目つきを鋭くしていたステラだったが、彼が悪ふざけをしているわけではないと分かったのだろう。すぐにまた穏やかな表情に戻った。
ウィランは慌ててステラの元に駆け寄り、自分が最初に手を掛けた、向かって反対側の甲羅をぎゅっと握る。そして、苦笑交じりの謝罪を入れつつ、ステラを起こしにかかったのだった。

 END



何かあればお気軽にどうぞ

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 長さを感じさせない読みやすさ、そして官能的な駆け引き(?w)の数々。
    終わってみればそのクオリティに、今回も圧巻でした。

    途中、育てや ?が一瞬頭をよぎったのですが、どうもデジャヴだったようです^^;
    結ばれない、でも今は盛り上がろう……そんなところが、いやしかし(ry
    終わりもさっぱりとしていますし、そこからかもしれません。
    盛り上がりが激しかったので、余韻はなくともなんとやらだと思いましたw
    (続きがあれば、そこに期待はせざるを得ないですがw 伏線も今の所ないですし、苦戦された作品のようなので、また新作や過去作を堪能出来たらば、と思います。

    ウィランの(カッコ可愛い)やりくと、負けん気。
    ステラの妖美さと、締め付け(爆 
    リアル的(?w)な何かをも感じさせる作品でした。食べてばっかりでなんですが;ごちそうさまでした ノ
    とても美味しかったです^^
    (慣れ、て、るのに……この、締め付けはっry

    早漏は大変ですね(笑)
    ――羽月 ? 2009-09-14 (月) 22:44:27
  •  エロについてはありきたりなコメントしかできないのでノーコメントで。
     砂漠に舞う花びらや育て屋の話でも思ったのですが、別れを描くことに光るセンスを感じて羨ましい限りです。

     さらっと後味の良い心持ちを何気なく描かれているので、その後が気になりつつもバッドエンドに結び付かない。そんな気持ちの良い終わり方なので読書後感さわやかですね。
     次回の作品も期待しております。
    ――リング 2009-09-15 (火) 17:35:11
  • 13話に渡って続いたこの「細波は謡う」もついに終わっちゃいましたね
    カゲフミさんの官能小説は全部読ませていただいたのですが、官能シーンが濃厚でいいですねwww
    容易にその場面が見えるかのようなあの表現は見事というより他ありません(笑)
    ウィランの雄とステラの雌が絡み合うところではこっちも興奮しちゃって何度も手が・・wwww
    でも、それだけじゃなくてやっぱりカゲフミさんらしいどこか温かいシーンが何よりの見所でした^^

    今回はステラがずいぶん積極的な濃厚なエロキャラでしたが、そのステラでさえも最後は純粋なように見えたのが不思議でした
    ウィランもステラの体と技に興奮しつつも、エロいところだけじゃなくて謡うときや屈託のない笑顔を最大の魅力として捉えていたところも温かかったですね

    終わり方もすごい後味が良い終わり方で、さっぱりとしたと言うか、読み終わって爽快感があります
    カゲフミさんのレベルはもう相当なもので、本当に素晴らしいと思います
    個人的に一番最初に読んだのが「交叉する夜」だったので、それが一番好きなのですが今回の「細波は謡う」もとても印象に残るものでした
    と言うか、カゲフミさんの小説はふと思えば全部ほいほいと思い出せるような・・・
    それぐらい印象に残る素晴らしい小説ばかりというわけですね^^

    次回作のほうも楽しみにしております。これからもより良い小説をたくさん書いてくださいね
    頑張ってください。応援してます^^
    ――翼龍 ? 2009-09-15 (火) 18:48:20
  • 執筆お疲れ様でしたー!

    行為が終わってすぐステラを起こさない辺りで、最後のオチは期待通りでしたw
    そう言った意味でも最後まで隙の無い物語でしたね。

    しばらくやってない方が、量も多くて疲労も増すでしょうw
    快感としゃ射精量と疲労は互いに比例しますね(^∀^ )

    今回も面白い作品をありがとうございました!
    ――beita 2009-09-15 (火) 20:52:23
  • 執筆お疲れさまでした。

    毎度の事ながらですが、カゲフミさんは終わりまで気を抜かずに書いている気がして凄いなぁと驚かされます。私は官能シーンの後の終盤になってしまいますと段々と力が抜けていってしまうのですが……。

    ウィランとステラはもう一度会うのでしょうね。それがいつになるかは分かりませんが。もしかしたら二度目に会うときは番いになるのやもしれませんね。

    濃厚な作……ゴフン、素敵な作品をごちそうさまでした。
    ――イノシア ? 2009-09-15 (火) 23:07:15
  • エロいだけじゃない……言葉では言い表せない魅力がカゲフミ様の作品にはありますね。
    おとぼけたウィランはステラに対して放置プレイ寸前だったが、それも意図せずなのだからまた可愛い。流石、攻撃力に見合わないムーミン顔ですね。

    ま、キャラのことだけを書き連ねても、それは他の方がたくさん言ってくれるのでここまでにしますか。
    流れが自然というか不自然さがないというか……他の作者さんとの違いは前ふりの長さとアフターケアの長さの違いでしょうか。それがこれほどまでに、流れの自然さに影響されるものなのですね。
    他の作者がたと比べると、官能だけを見れば変わり映えしないというか、そこまで秀逸かと聞かれれば頭をひねってしまいます。
    しかしそこに入るまでの過程が重厚かつ濃密だから、単純な官能に大いに感情移入が出来る。
    貴方程のレベルの作品は、読むものではなく一歩か二歩踏み込んで感じるものなんだと思います。レベルが高いと皆様に褒められるわけがわかりますね。
    ――引越し屋 ? 2009-09-16 (水) 02:05:13
  • 長い執筆お疲れ様ですw
    1番最後はすっきりとした終わり方ですね
    少し変わった(?)官能シーンもありましたが(というか甲羅は本当に想定外)とても楽しく読ませていただきましたw
    ウィランには今回かなりがんばってもらいましたね;
    これに懲りずまたウィラン話に登場すればいいなと思っています
    続きがあるか分かりませんが少しあればと思ったり(
    今まで執筆本当にお疲れ様でした><;
    これからもがんばってくださいね
    ――リュウト ? 2009-09-16 (水) 18:49:49
  • &fervorさん>
    やはり身体能力の高さも影響するのでしょうかねえ。
    まあ、高いだろうということで、ウィランには頑張ってもらいました。
    甲羅の上からだとガードが堅いですが、ひっくり返せば色々できるんです。
    私としてもこの二匹は非常に微妙な関係になってしまいました。
    今後何らかのきっかけで心が動いてくれるといいんですけどねえ。

    羽月さん>
    あー、言われてみれば若干似てなくもないかもですね。
    育てやに比べればずっとお気楽な感じはしますけどw
    終わらせ方は今までにない話の流れだったのでどうするかかなり悩みました。
    あいにく、今のところ続編は考えてないですねえ。想像にお任せする、ということでw
    締め付けに関してはウィランが早漏だからなのか、今までの♂がステラに攻め込む前にダウンしてしまうからなのかは定かではないですねー。

    リングさん>
    別れ、ですか。今回は今までにないパターンだったので、ラストはどうするか迷いましたが。
    読後感がさわやかになっていたのなら幸いです。
    バッドエンドではないでしょうけど、ハッピーエンドとも言い難い、なんとも微妙な終わり方だなあと個人的にはw

    翼竜さん>
    今回はかなり官能シーンが濃かったので、書く方としても色々と疲れました。
    ですが、興奮していただけたのならば嬉しいですねえw
    物語が官能メインでも、シリアスメインでも、どこかでほのぼのとした雰囲気を書けたらな、と思ってます。
    ウィランとステラが微妙な関係になってしまったので、終わらせ方くらいは後腐れがないようにと気を遣いました。
    応援ありがとうございます。次回作もがんばりますね。

    beitaさん>
    読まれてましたかw
    洞窟を後にして、砂浜で自問自答するウィランよりはこっちの方がいいかなと思い。
    間を開けてるとやっぱりねえ。ウィランにはゆっくり休んでもらわなくてはいけませんね。

    イノシアさん>
    正直今回は、結構後半だれてたりするのです。
    8話9話を過ぎたあたりから割と続きを書くのがしんどかった気がします。
    官能シーンの描写は計画的にというのが今回の教訓ですかね。
    次に会うときは何らかの進展があるといいのですけど、どうなるかは微妙なところです。

    引っ越屋さん>
    ムーミン言うなw 確かに顔に似合わない攻撃力だとは思いますが。
    やはり官能シーンに入るのならばそれなりの理由といいますか、前置きも重要だと思うのですよ。
    仰られるとおり、官能シーンはあくまでも物語のスパイスです。その前後があってこそ成り立つものかと。
    読むのでなく、感じる、ですか。そういった作品を書いていければいいのですけどねえ。

    リュウトさん>
    ラプラスを官能に絡めるのは初めての試みだったので、何かと苦戦しました。
    やはり私としては、甲羅が一番手ごわかったですw
    また登場してもらう、というのも一つの手段ではありますが。
    今後をどう動かすか全く考えておりませんので……。
    当分の間はそういった予定はないとだけ言っておきます。

    皆様、レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2009-09-16 (水) 21:09:01
  • とてもいい作品だと思います 最後の甲羅が印象でした
    これからも執筆頑張ってください
    ――ポケモン小説 ? 2012-08-07 (火) 00:24:58
  • 甲羅はラプラスの全体像を見ているうちにふと思いついた描写でした。これからもがんばりますね。
    ――カゲフミ 2012-08-07 (火) 21:21:17
お名前:

トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2011-10-27 (木) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.