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籠の軍鶏

/籠の軍鶏

作者――"未猿(ひつじざる)"

※このお話には強姦・捕食表現が含まれております。そういったことに嫌悪感を抱く方は、閲覧にご注意ください。


 荒涼とした火山帯の岩場、不自然に砕けた岩のかけらがそこかしこに散らばる中、一匹のバシャーモが傷だらけで横たわる。
強力と呼べる二つの技――だが同時に捨て身の技であるブレイブバードとフレアドライブ。それを何度も何度も反復したことが手に取るように分かる。
何故に強さを求めるかは、見た限りでは知る由もないが……求めた結果がこの無残な姿とあれば世話が焼ける。ゆらりと彼女の命の灯火が揺れ動きながら、風が彼女の血の匂いを運んでいた。


 と、その岩場をそれこそ風を切るように走り去る物体。オレンジと黒に彩られた毛皮、首や顔、足や尻尾を取り巻くのはクリーム色の毛。
 普段は彼――ウインディの修行場であるこの荒々しい火山帯の一角。普段は来訪者など全く居ないはずのそこに。彼女、バシャーモは倒れていた。
 生臭い、しかしどこか野性的な香り。自分の本能を奥底から呼び出すような、濃厚な香りが。黒い鼻が勝手にひくひくと、そして口の中は唾液がじとじともれだす。
 しかし、よく見れば彼女も中々に魅力的だ。生きているのだとしたら、むしろ別の意味で楽しむべきなのかもしれない。

「おい、……生きてるのか?」
 近づいてみれば、まだ微かに息はある。だが、このままでは恐らくそう長くはない。そう思ったウインディは、近くに保管しておいた木の実を数個、かみ砕いて彼女の口へと流し込む。
 それがしっかりと飲み込まれたのを確認してから、彼はバシャーモが起きるのを待つことにした。助けるためではなく、あくまでも楽しむために――。


 渋味や辛味が混ざった不思議な味……甘味だけがない木の実が口の中を満たしていた。鼻で呼吸するのは煩わしく、何よりこの木の実はオレンの実――わずかながらに体力を回復する木の実である事を思い出して嚥下した。
 自身が何故こんな状況になっているのか……浮かんでくるのは、かつて教えを請った両親との光景ばかりで最近の記憶が浮かんでこない。記憶が混乱している。
――これでは、(らち)が明かないな。

 瞼が重い……眠いのではなく、張り付いて動かないと思ってしまうくらいに。手も、足も重いというよりは自分の意思がそこまで伝わらないような、そんな感じだ。頭は起きているが完全に体が寝ているとでも言うべきか。
 なんとか瞼が開き、空が見える。口も動き、声が――言葉になりはしない声が漏れた。

「ぅ……ぅぁ……」
だれかいるのか? いったい何があった? ここはどこだ? 話しかけたいことはいろいろあったが、どうにも体は言うことを聞いてくれない。


 少しばかり元気を取り戻したかのように見える彼女。これならば十分に楽しめるかもしれない。
 しかし、まだそれには少々体力が足りないようだ。声も十分には出せていない。
 そう認識した彼は、岩場の段差を、そして身体を器用に使って彼女を背中に乗せ、再び先ほど来た道を引き返していく。
 彼女を乗せた部分の毛が、じっとりと、そしてぬらりと湿っていくのが分かる。恐らく、まだじんわりと血がにじみ出ているのだろう。
 やはりまだ予断を許さない状態なのは確かだ。そう判断して、彼は走る速度をより早める。
 器用にも、段差を感じさせないぐらいに安定した走り。一切のぶれがない、完成された走りからも、彼の強さの一片が伺える。
 その彼がもしも、彼女を本気で襲うのだとすれば。彼女は今度こそ、助けなど来ない、絶望的な状況に置かれるかもしれない。
 が、もう彼女は捕まってしまった。もう彼女は逃げることなど出来ない。さらに、彼女はまだ、彼の目的を知らないのだから。
 一瞬、そのふわりとした彼の毛に覆われた口元が、ほんの少しつり上がった事には、気付くことなど出来ないのだから。
 彼の住処であろう、彼の匂いが幾分か染みついたその洞窟は、もう目の前に迫っていた。


 景色が揺れる。なされるがままに移ろう風景を朧げに見送りながら、彼女は自身の行動を徐々に反芻していた。とりあえず、修行の内容から最後に食べた食事までは覚えている
――が、この状況はいかがしたものか。

 温かく豊かな体毛。おそらくは炎タイプであろう熱を帯びたその背中に担がれて、揺られている――というのは失礼にあたりそうなほど、滑るように揺れを少なく走っていた。
――助けてくれるのか?

 命を永らえたことで、彼女は安易にもそう思ってしまう。喰うつもりならばとっくにやっている……と思う彼女の思考は正論ではあるが、思慮が浅い。
 誰もが、そこまで親切ではないということは野生に生きて身に染みて知っていた筈。あるいは願望だったのか。あるいは、今の何をされても抵抗できない今の自分に対し、未来の自分が言い訳を用意するための保険だったのかもしれない。
 その安易な願望にすがるように……意識を手放しても危険ではないと思いこんだが為に、彼女はそれを実行した。
 再び景色は暗転する。


 暗がりに入った彼は、彼女を自らの寝床にそっと寝かせる。固い地面を掘り起こして造られた簡易的な物だが、地面そのままよりは遙かに寝やすいのであろう。
 彼女は特に反応することもなく、そのまま寝入ってしまっている。しかし、それでもやはり傷は深い物のようで、未だにじわりと赤がにじみ出しているのも確かだ。
 彼はおもむろに洞窟の隅へと向かうと、先ほど与えた木の実よりも遙かに治癒効果の高い木の実――オボンの実――を数個かみ砕き、再び彼女の元へと戻る。
 そのまま彼は彼女の口を前足で軽く開けると、口に含んで柔らかくしたその木の実を流し込む。唾液が混ざり、どろどろになったそれは、彼女の喉を徐々に流れて、やがては奥へと消えていった。
 後は彼女の傷が癒えるのを待つばかり。例え抵抗されたとしても、完治していない状態の彼女に負けるほど(やわ)ではない。
 そう言えば御無沙汰だったなぁ、と呟き、にんまりと微笑む彼。自らの欲望をはき出せる事への期待か、あるいは弱者をいたぶれる事への悦びか。
 彼女がそのことに気付くのは、もう少し後のこと。既に手遅れでは在ったのだが――。


 混濁した意識の中、彼女は眼を覚ます。先ほど、記憶が混乱していたときと違い幾分か今は楽であるしどうしてこのような状況になっているのかも理解できた。
 先ほどとは違い、辛味以外の味がない木の実……殆ど嚥下されているようだが、オボンの実と分かるそれが嘴の端に残っていた。
 意識がはっきりとして行くうちに、徐々に痛みまでもがはっきりとしてくるが、それもこの口に含まれた木の実の効果で徐々に和らいでいくのを感じる。
――体を起こしても問題ないだろうか?
 
 痛みは無いわけではないが、嘴を食い縛るほどの重傷では無い。もとより、自分で自分につけられる傷などたかが知れているのだから。
 彼女は自分がやっていた愚かしい程に行き過ぎた行為を悔いるように、自嘲するように力なく笑いながら自分を助けてくれたもの――ウインディを見た。


 彼女はゆっくりと身体を起こし、こちらを見つめてくる。整った顔立ち、すらりと無駄のない身体。それなのに何故、彼女はああして自ら傷付いていたのだろうか。
――まあ、そんなことはどうでもいいか。

「身体、大丈夫か?」
 彼は極めて穏やかに、それでいて紳士的に声をかける。やや荒々しさも残されてはいたが、それだけ聞けば良い奴だと、そう思われるような台詞。
 彼女が油断したその瞬間を狙うために。彼女が心を許したその一瞬を襲うために。決して彼女を救うわけではなく、むしろ壊すために。
 だからこそ彼は、あえて優しく接したのだ。――彼女はまだ、気付いていないようだったが。
 
「痛くはないか?少しは動けそうか?」
なおも彼女を気遣い――その実、彼はただこの後の行為に耐えられるかを確かめていただけだが――、ウインディは彼女に問う。


 痛くはないと言えば嘘になるだろう。だが、相手に気遣おうと思われるのも、何をやっていたのかと問われた時に正直に答えたとしてあのようにに重傷であったことにすれば恥ずかしい――盲目なほどに修行に打ち込んでいる彼女でも、そういう普通と言えば普通な感情はあるのだ。

「いや、痛くはない……心配かけてすまないな」
 少し顔を伏せ気味にそう言って、助けてもらったことが心のどこかで嬉しいのだろう――彼女の口からは思わず笑みがこぼれる。
 目の前のウインディは理解者でも何でもないのだが、今までずっと一人で修行に打ち込んできたからであろう。付き合ってくれるでも見守られているでもないが、こうして関わりを持てたことそのものが彼女には嬉しかった。
 それが間違いである事は当然知らない。


「ああ、そうか。それならいいんだ」
 言うが早いか、彼は身体を起こしていた彼女の肩を前足で押さえ込み、彼女を押し倒した。彼女の嘴を軽く舌で舐め、さらにその中へと進入させる。
 驚愕、とでも言うのだろうか、そんな眼差しも気にせず、彼女の舌を絡め取り、十分に味わう。
――やはり、かなりの上玉だ。

 柔らかく、それでいて甘い彼女の口内。炎タイプ故か、熱いくらいの暖かさ。彼はそんな彼女の口をひたすら舐る。
 やがてゆっくりと唇と嘴を離せば、後に残るのは銀糸の煌めき。それが垂れ下がって消えて行くのが、ずいぶんと長い時間に感じられるようで。
 彼の興奮は高まるばかり。気がつけば既に隠れていた彼自身の象徴が、ゆっくりと鎌首をもたげている。

「楽しませてくれよな、最後まで……」
 にやりと笑ってそう言うと、彼は彼女の身体に舌を這わせ始めた。唾液を塗し、じっくりと吟味するかのように。


 !?……おそらくは口移しだろう。これまでに木の実を口に入れられた時の手段は。
――では、今回も? だが、それにしては味がしないし、口に何かを入れていた様子がない。
 
 全く訳の分からない状況に困惑する。意味のある行動なのか――と考えてしまうと、どうにも拒絶できない。快でも不快でもないつもりでその実はやがて訪れる快へのささやかな期待は無意識のうちに。
 その期待を期待と知らずただ困惑した不思議な感情に翻弄されているうち、弄ばれている嘴――その内部で踊る、彼の厚く幅の広い舌の感触に釘付けになる。
 やがてそれが終わるころに、唾液が作る橋を目線だけで追うころに、ふと違う場所に目を移す。それを以って彼女はようやく自身のおかれた状況を理解した。
 自身と同族の雄にはあり得ない大きさの雄の象徴が血走っているのを見て、その意味、それまでの意味、それから行われることを。
 そして、次いで自身の体を這う舌に激しい嫌悪を抱き、まだほとんど力の入っていない腕で顔を押しのけるようにして拒絶する。


 ようやく自身の置かれた状況を理解した彼女。しかし、まだ完全ではないその身体では、やはり彼に敵うはずなど無い。
 あっさりと押し戻された彼女。まるで何事もなかったかのように、彼はその行為を再び開始する。
 毛繕い、というにはやはり無理がある。やや淫猥な響きを奏でながら、彼は彼女の身体をひたすら舐め続ける。
 彼女の温かな身体を、彼の唾液でじんわりと湿らせていくように。ゆっくりゆっくりと、それこそ彼女を焦らすかのように。
 彼女はといえば、必死に嘴を閉ざしてはいるが、明らかに何かを我慢している。恐らくは嬌声をあげまいと、必死に悶えているのであろうが。
 しかしながら、まだ彼女は耐えている。彼としては、やはり鳴いてくれないと面白くないようで。――だから、彼は右後ろ足をそこへと伸ばした。
 たった一撫で。彼女の割れ目をなぞっただけで。明らかに彼女は、声を発した。かなり高めの、悲鳴、あるいは喘ぎとも取れる声を。
 一瞬鳴いた後、彼女は恥ずかしくなったのか、その顔を横へと逸らせる。悔しさからか、嘴をより一層強く閉ざす。
 しかし、彼は先ほどの彼女の反応に満足したのか、彼は再び身体を舐める作業へと戻ってしまった。
 彼女の身体に走った快感。そのときの彼女に、果たして忘れることなど出来たであろうか?


 押しのけようとした腕はいとも簡単に押し返され、踏みつけられたその腕は力を持たずぴくりとも動く様子を見せない。万全であればこの体勢からでも天井まで投げとばして余りあるだけの膂力もある……しかし今は体重をはねのけることすら出来そうにない。
 痛みを意識の外に追いやることは今までもしてきた……が、それとはまったく異質な感覚には耐えられるはずもなく。知らず知らずのうちに腰が浮く。先ほどと同じく頭が知らずとも体だけが知っている事象への期待。

「ふぇっ……」
 声が漏れそうになり、こんなのは気分の問題だと自身に言い聞かせようとして封じた口は衝撃――全身を貫くような衝撃に会えなく崩れ、縮こまる肺と共に出された空気は声帯を震わせ、甲高い声となって外部に漏れた。
 屈辱……それが彼女の心を支配して、恐らくは何かしら歪んでいるであろうその顔を断じて見せるものかと、顔をそむけ今持ちうる限りの力で嘴を閉ざす。
 ただしそれは防御の姿勢を見せただけであり――即ち暗に攻撃をあきらめていることを物語っている。それがすでに降伏である事に彼女は気がついてはいない。
 それを相手は気が付いているのだろう、攻めはいまだに続いている。さっき以上の快感を与えようとでも言うように。


 ふわりと浮く彼女の腰。やはり彼女もその快感に耐えることは出来ないようで、声を抑えるのがやっとの状態。震え続ける彼女の身体は、恐怖からというよりもむしろ、快感から来るものが大半であろう。
 それを確認した上で、彼はあえて彼女に問う。

「どうだ?……気持ちいいんだろ?」
 何も言わない彼女に業を煮やしたのか、彼は再び――後ろ足より器用な右前足を以って彼女の割れ目をなぞる。右前足の感触に新たなものが混ざったのを、彼は見逃さない。

「ほら、お前の"ここ"、正直だよなぁ……」
 こうして実際に彼女に見せることで、彼女の羞恥心を煽る。しかしながら、それでも何も言わない彼女。嘴を固く閉ざしたまま、まだまだ鋭いその眼差しをこちらに向けてくる。
 だからこそ彼は彼女の嘴を両手でこじ開けた。続いて、先ほどの右前足を無理矢理舐めさせる。もちろん、その味は――。

「……分かったか?……いい加減、正直になったらどうだ?」
 強い口調で、しかし笑いながら――当然、眼は笑ってなどいないのだが――、彼は彼女に囁く。その誘惑は、空気の振動と共に、ゆっくりと、しかし着実に、彼女の脳を揺さぶっていた。


 右手でもう一度撫でられることで、爪に押し付けられる僅かな――ほんのわずかな痛みを伴って、未知の感覚。快感が襲う。
 その際に、先ほどよりも腰が浮いていることが何を意味しているかはいまだ気が付いていない。そればかりか浮いたことにすら気が付いておらず、触れられたと同時にビクリと体を震わせたことはただの驚愕であると思いたかった。
 それは、快感に対してより雄を受け入れやすい体制をとる為の反射行動なのだが、その反射を起こすためには快感を感じる神経が活発になる。要は感じやすい状態になっていることが前提条件であり、彼女はその状態にある。
 その状態にあることを自身で認めてしまったのは、先ほど自分の股間を撫でた右手についたその液体をなめさせられた時、それを自分が出したものであるということを嫌でも理解させられたからだ。
 そしてとどめをさす様に厭らしいウインディのセリフ。否定してもどうせ同じことを言われるのは目に見えている。
 
「だからどうした?」
 無駄ならばと、彼女は否定をせず、ありったけの殺気を込めて言い放った。


「いや、そうか。……それならいいさ。なら、遠慮は要らないよなっ!」
 言うが早いか、もう彼は彼女の割れ目に彼自身の猛る雄を宛がっていて――何一つの準備もせずに――ただ、突き上げた。
 半分ほどを挿入した時点で、既に彼女は限界を感じるほどの大きさ。しかし、愛のない、ただ満足するための行為に、思いやりなど微塵もないのはもちろんのことで。
 彼は容赦なく、その固く閉ざされた内壁を押し破るようにして。無理矢理入っていく彼の雄。彼女の割れ目からは、少量の血も零れてしまっている。
 尋常では無い苦痛を味わっている彼女。痛さのあまりに顔を歪ませてはいるが、そのプライドからか、決してその痛みを訴えようとはしない。
 どこまで耐えられるのか、どこまで耐えればいいのか。彼女には分からなかったが――それでもただ、今は耐えるしかない。
 なおも必死に堪える彼女を見て、彼は嫌らしく笑っているばかり。彼自身はまだ余裕な様子で――。
 だからこそ、手の届く範囲にあった、その木の実をたぐり寄せた。通称キーの実。その効果は――。


 ねじ込まれた瞬間のあまりの激痛に、嘴はさらに硬く喰い結ばれ、瞼すらそれに加勢するようにきつく閉じられた。いくら虚勢を張ろうとも四肢に入る力はわずかで、抵抗は限りなく不可能に近い。
 彼女の種族――バシャーモは、見た目は鳥でありながら卵グループの関係上大きなモノを受け入れられるようには出来ている。
 とはいえ、互いに楽しむことを前提としたものではないウインディのそれは、さっきと打って変わって苦痛でしかない。
 だが、それですら快感に惑わされなくなるではないかと、彼女はあくまでプラスに考えようと、相手の思うように落ちないように、気丈に。
 痛みに耐えるために心臓が高鳴り、呼吸も荒くなるのを感じながら、不意に痛みが止まるのを感じて彼女は眼を開く。
 彼が手にしていたのは、キーの実。錯乱した状態を沈め、リラックスした状態に戻すことで知られるこの実。それを何に使うのかと、彼女は疑問に思う。彼女はまだ――少なくともこういったことに関しては明らかに無知で無教養であった。
 一般的に、性交するときは興奮している……と言うし、それは事実だ。だが実は興奮すればするほど快感は感じる切っ掛けは掴めない。リラックスしている時こそ感覚は敏感になり、生殖器は勃つように女性もまた落ち着いていなければ快感を感じ得る切っ掛けには出会えない。
 要は、落ち付かなければ準備段階にすらいけないと、そういうことである。
 そしていま、キーの実を使われることは痛みにもまた敏感になる。そういった意味では彼女には酷ではあるが、其の先にある快感もまた増大する。そういう意味ではこの場にふさわしいと言える性質を持っている。


 たぐり寄せたキーの実を器用に彼女の口元に運び、今度は無理矢理押し込む。彼女はやはりその効果を知らないようで、何の抵抗もなく飲み込んだ。
 と、殺気めいていた彼女の視線が、幾分か和らぐ。と共に、彼女は再び痛みを感じたのか、僅かに声を漏らしたものの、やはり必死に耐え始めた。

 ――しかし、それは確かに効果があったということ。当然、その効果がもたらすのは痛みだけではなく。
 さらに奥まで突き進み、今や彼の雄を全て飲み込もうかという勢い。少しずつこじ開けてくる痛みと共に、彼女は当然、もう一つの感覚も受け取っている。
 より鋭利になった感覚。それはすなわち、彼女の快感も数倍に膨れあがらせている訳で。先ほどとは訳が違う、より激しいその衝撃に、彼女はいよいよ屈しようとしている。
 しかし、彼女はそれでも。まだ嘴は固く閉ざしているし、顔もなるべく平常を保ってはいる。

「さぁて、……可愛い声、聞かせてくれよ?」
 とうとう最後まで入りきった彼の雄。となれば、次の動きは自然と決まってくる。彼は一度大きく息を吸って、吐いて。
 ほんの一瞬。一気に彼の雄が引き出されると共に。痛み、そしてそれ以上の感覚が彼女を襲った所為で。――彼女は確かに、嬌声を上げてしまったのだ。


 キーの実を食わされることで体に起こる変化。それは、威張られたり煽てられたりで高ぶった精神をも正常に戻し――つまりはリラックスさせる。食いしばる嘴や、地面を掻き毟る指が彼女の本来の力を発していたのであれば、それは自分すら傷つきかねない力で発揮されていただろう。
 危険な実ではないと判断してしまったが為に、受け入れてしまった木の実。それにより、今までの高ぶった精神を落ちつけられて、不意にさっきまで相手に向けられていた殺意や敵意がふっと収まる。
 意が鈍るとともに全身の力が抜け、それは下半身にも当然のように及び、挿入される痛みも脱力をもってして、拒絶しようと躍起になっていたころよりかは幾分か緩和される。
 同時に、彼の雄に圧迫されている箇所が、どうしようもなく疼く。油断していると自分の尻をすぼめては緩めてを繰り返してしまいそうな訳の分からない欲求が浮かんできた。
 もはや抵抗できたのは首から上だけ――口だけのようで、相手は彼女の脈動からすらも快感を得ているように笑みを浮かべている。
 そして、互いが快感を得ることのできる行為を相手が始める。とはいえ、互いが快感を得られるとすれば相手がゆっくりと落ちつけていた場合の話ではあり、一瞬で一気に引き抜かれた時は当然痛い――今のはさっきとは比べ物にならないくらい痛いのだ。
 だがこの場合彼女にとっては幸か不幸か、入れられた直後より確実に湿っていて、なお且つ無駄な力が入っていない脱力していたそこは、雄の動きを受け入れ易く――それで痛みは控えめに、快感は増大されていた。

「クワアァァッ!」
 快感で口が緩み、それで耐えきれず痛みで甲高い声をあげて彼女は動悸を荒げる。しかし、比較的にすぐ消えさった痛みと余韻を残しつつゆっくりと溶けていく快感に、彼女は再び腰を浮かせて快感を懇願する。頭では認めたくなくとも――少なくとも体は。


「どうした?……やっぱり気持ちいいんだろ?」
 口先だけの抵抗など、もはや何の意味もなさず。彼女の身体はあくまで彼を受け入れる体勢。それを見て満足そうに笑う彼。彼女は痛みを得てから再び鋭い目線を向けられるようになったが、身体はそうではなく、むしろ――。
 先端だけを残して彼の雄を引き抜くと、そこには彼自身の先走り、そして彼女の蜜がまぶされた、赤く蠢く太い槍。彼女の蜜が先ほどより明らかに多いことに気付き、彼はまた笑う。
 彼女は恥ずかしさと悔しさから、やはり嘴を震わせながら、目をそらして涙を浮かべる。その様子にそそるものがあったのか、彼は唇を一度つり上げると――ひと思いに突き上げた。
 最初のそれとは違い、今度は割と簡単に――とはいえ、まだ抵抗も残るぐらいに――彼女の雌はそれを受け入れた。濡れそぼったそこが、快感を求めて細かく震える。
 冷静にしながらも、しかし性的興奮を抑えられない彼の動きはより激しいものに。入りきったかと思えば一気に引き抜かれ、抜けていったかと思えば一気に突かれて。
 突かれる快感、抜かれる快感。それぞれに内壁が感じる擦れ、そしてその快感は違ったもので。彼女は必死に我慢する、我慢しているが。そうできる限界は、もうほど近いところにあったのだ。


 もはや虚勢すら張る気力もないように彼女は顔をそむける。殺意や敵意による興奮は快感による興奮と共存できずにいた。
 要は、快感を感じ始めている彼女は、最早気概が折れた状態であり、悪い意味で心は波風立たずに落ち着いている――諦観しているのだ。
 悔しさはあってもそれをばねに奮い立つ意志は快感を求める意思の前に細波と化して為す術無く、最早彼の動きに合わせてもの欲しそうに動く自身の腰の動きを止めるそぶりも見せない。
 ただ、意識して抵抗していた嘴は快感に善がる感覚に慣れてきたのか、固く閉じる程度までは自身の意にそぐう。しかし、痛みが消え始めてから閉じることのなくなった瞼から流れる一筋の涙はとめどなかった。
 その涙は呼吸が震えていることから、かろうじて悲しみや屈辱から来るものである事を証明している。断じて快感にうち震えているものではないと思っていたい。
 相手から何をされても問いかけられても返答も反応もしない。彼女はそれだけを固く誓ったが、体は楽になってしまおうと完全に受け入れている。


 彼女の身体は完全に受け入れる体勢をとった。それはつまり、身体はもう折れたと言うこと。しかし、彼女自身の反応がなければ、やはり面白くないのも確かで。
 だから彼はあえて行為を止めた。彼女が受け入れ、快感を求めている事に気付いたからこそ。これなら彼女の心も折れるのではないかと、そう考えたのだ。

「ふぅ。……どうだ?そろそろやめておいた方が良いか?」
 と、自分から強制的に行為を始めたにもかかわらず、酷く無責任で、無慈悲に優しい、そんな言葉。
 彼女がそのまま断るようならば、やはり再び力ずくで。彼女が折れたのならば、あとはとことん壊すだけ。――どちらにしても、彼女はもう彼のモノ。
 そう思ったからこそ、彼は下品な笑いを浮かべたのだ。尤も、彼女がそれに気付いていたかは分からないが――。


 彼のいやらしい笑顔を見て脳裏に浮かんだ『当然だ!!』のひと言。それを言おうとして。楽になろうとした下半身はただ疼くことでその一言を封じ込めようと騒ぎたて、立ちあがってここを去ろうとする体を地面に張り付けて離さない。
 ただ、返答に迷っている間に彼女の疼きは粗方の熱を失い、地面に張り付いていた腰を剥がすのも容易になる。それに伴って行為の最中に鈍って行った抵抗の意思は再び構築されたように思える。
 だが、それは憎むべき目の前の相手をいま一つ憎み切れていないことから仮初めでしかないことは確かだ。

「当然だ!!」
 それでも、吐き捨てるように言うと立ち上がって、出口の方へ振りかえる。出来ることならば殴りとばしてやりたいところだが、まだそこまでは回復していないだけに悔しさを押し殺して逃げかえるしか彼女に選択肢はない。
 出口へ歩く途中、無意識的に後ろを振り返る。視界にうつる対象はやはり憎いものであるから殺意を込めて睨む。
 と、同時に彼女にとって未知の感覚であった快感に大きく未練を残していることは、憎しみの対象を見た瞬間に、自身のソコが微かに、条件反射のようにピクリと脈動した――するように意識してしまっていることからも明らかだ。
 彼女はこのまま外へ出て、いまだ余韻を残す疼きを忘れようと、首の向きを戻して光のさす方を見た。


 やはり彼女はそう簡単には折れないか――そう感じた彼は、背を向けて立ち去ろうとした彼女の背に襲いかかり、彼女をそのまま押し倒す。
 彼女はやはりまた抵抗しようとしてきたが、鋭利な爪で首の後ろをなぞれば、一瞬にして一切の挙動を封じられる。そして今度は一度彼女の上から退き、彼女の秘部に舌を這わせれば、聞こえるのは――もう慣れ始めたのか、声こそ出さなかったものの、痙攣したように繰り出されるとびとびの吐息。
 またもや抵抗の気概をねじ曲げ、心に一瞬の隙が生まれたその時を、彼は見逃さない。彼は彼女の長い髪を噛みついて持ち上げ、四つん這いの体勢をとらせ、露わになった彼女の秘所に、先ほどよりも深く。今度は抜けることの無いように、自身の雄の瘤までをもねじ込み、そして――無慈悲に突き崩す。
 そのうちに限界まで肥大化した雄は、彼女の入口より大きくなり、それを排斥する手段を失わせた。
 勢いの良い音。あるいは何かが溢れ出す音。微弱な音が、しかししっかりと、彼女へと届く。――それはすなわち、汚されたと言うこと。彼女の中は、彼の熱で一杯になる。
 彼は満足そうにしながらも、止まない放出を繰り返す。じわりじわりと、まるで毒のように、彼の精は次々と彼女を汚していった――。


 意識は否が応にも下半身に集中し、彼女は警戒を怠っていた。もとより、警戒していたところでそう簡単に覆せる状況ではないことは、立ちあがった時、自らの力が入っていない四肢を感じた時にすでに分かっている。
 わかっていても抵抗せずにはいられない彼女の首筋に冷たい――と言っては語弊があるか、薄ら寒くなる様な感触。前足の鋭い爪があてがわれた。ただでさえ弱っているこの状況で、無防備に背中や首をさらけ出してこれでは、従うしかない。
 その爪の感触が離れ、ふんふんと触れる鼻息に全神経を集中しながら彼の口の移動する気配を辿っていく。鼻息が触れる場所が自身の秘所にまで到達したとき、十分な高熱ではあるが炎タイプの彼女にはちょうど生ぬるい舌の感触。
 鼻息に全神経を集中していた矢先、その傍らに舌を這われれば当然のように体は跳ね上がりあおむけであっても腰が雄を受け入れやすい体制へと曲がる。


「ふぁっ……うっ……ぁぁ」
 こんどこそ、痛みでも屈辱でもなく、純粋に快感から生み出された甘い吐息。それを吐き、腰だけを僅かに持ち上げるようにして、無様に頭を垂れたその姿勢になるかならないかの刹那、顔を持ちあげられる。顔面が地面にぶつかる前に上半身を支えるために肘を立て、次いで、投げ出されて広い角度を保っていた膝を鋭角に戻す。
 雄を受け入れる四つん這いの体制をとったその時、熱いはずなのに全身の血液が冷えるような絶望を与える感覚。脇腹と肋骨の境目を彼の前脚が抱き、彼女の背中にウインディの胸と腹が張りついた。
 不意に、比べ物にならない異物感。彼の雄の根元についた瘤。先ほど一瞬のぞかせたときに動体視力の良い彼女には確かに見えたアレであると理解する。
 突き上げられる感覚に思考を散らされながらそれを理解したころには、中で肥大化したそれは、狭い出入り口に拒絶される大きさに――それが内側にある以上抜くことはできない状況になった。
 血の気がザアッと引くような感覚すら塗りつぶす様に、彼はその腰を――すでに前にも後ろにも動きを制限されたそれを小刻みに動かし、彼女の肉壁を圧迫する部位を前後に小刻みに移ろわせていく。

 その圧迫が生み出す快感は最初に感じた異物感に比例するほど激しい。嘴はついに閉じることさえ適わなくなり、カタカタと震えながらあえぎ声を唾液に混じらせて流させるに至らせたほど。
 少なくとも体は、それに応じるように相手の精を欲していて自身もより強い快楽を享受しようと、自らの肉壁で彼の肉棒と"肉同士"を圧迫し合う。
 心と体の間で快と不快が交錯する鍔迫り合い(つばぜりあい)に、無尽蔵に悩ませられる長い時間。それにも不意に終わりは訪れる。小刻みに動いていた彼の雄が加速と言う前触れを以って彼女を限界までつき上げ、そして静止する。
 大量に水を飲んで、それを吐く時に食道を走る感覚と似たような――液体がそれまで満ちていなかった場所に流れる感触。だが、自身の体からその液体を放出する感覚は無く、ただ通り過ぎる感触だけが彼女の中を走る。
 その感触が意味するのは、この液体が他人の物であり、それが彼の精であるということ。自分の中に大量に流されて内部が徐々に満たされていくその感覚には強かな快感と強烈な屈辱を覚える。だが、抵抗する気概は、こみ上げる快感にと絶望に反比例するように忘れられていた。
 悔し紛れに地面を引っ掻いたところで、事態が何か好転するわけでもない。無言でしゃくり上げながら静かに流す涙が唾液とともに地面を濡らす。瘤がまだ出入り口よりも大きく、つながったままの腰はまだ足りないとばかりに僅かながら前後していた。


「どうした?……やっぱり欲しかったんだなぁ、お前」
 彼女自身の意志で振られた腰。彼女がついにまた発した声。どれもこれも、彼女にとっては屈辱でしかない。
 彼は敢えて彼女にそれを改めて認識させる。彼女の心を少しずつ、少しずつ抉っていくように。
 依然として繋がったままの彼の雄。それを僅かに振動させれば、やはり彼女にとっては動きを抑制することが耐え難い快楽であることは間違いないようで。
 ようやく収まった射精。しかし、それは裏を返せば二度目が在る、ということでもあり。
 彼女はそれを認識しているかどうか――それは分からないが。彼はそんなことお構いなしで。瘤を抜かないように、しかしなるべく大きく、激しく。
 再び始まった彼の攻め。彼女は必死に耐えている。必死に耐えてはいるが、やはり声は漏れてしまい、そして雌としての本能は機能してしまう。
 彼は彼女に甘く囁く。――楽になっちまえよ。自分の気持ち、自分の求めるモノ。当たり前なんだからさ……。


 一度放たれた以上―― 日を置いた場合はまた意味合いが変わってくるではあろうが、この先の拒否は大した意味をなさないことを事実として突き付けられる。
 もし、彼の分身を身に宿すことになればそれは耐えがたい屈辱ではある。だが、ここにきて、そこまで先の屈辱を憂う余裕は彼女には残されていない。
 このままこれ以上の行為を断ることで自身の体の内に宿る子種をすべて排すことが出来るならば、それもまた一つの選択肢として彼女は手に取るだろう。これ以上の行為を請わることで憎むべき相手を抹消できるならばそれも良しとしたであろう。
 だがそれは絵空事でしかなく、そんな魔法のような能力は当然彼女にはない。もし相手が炎タイプでなければ、体温を極限まで高めて内部で精を殺すことも考えた。だが、相手の精はそれを耐えきるであろう。
 これ以上意地を張ることに意味を持たない。もちろん"屈した屈さない"に関わるプライドへ意味を求めることはできるが、それは体が屈してしまったと認めた時点で折れ、中に吐き出されたことで砕けている。
 今更、プライドを持ち上げる余力は体にも心にも持ち合わせてはおらず、快楽を得ようがが得まいが子種が如何ように振る舞うのかを神に任せるしかないこの状況では、彼女は心まで快感と自身の不幸の前に屈することを選んだ。
 三度(みたび)腰を浮かせ、雄を受け入れる態勢。彼女は彼の雄を飲み込むように腰に力を入れて、ひたすらあえぎ声をあげて善がり始める。
 その姿は、殺意に満ちた先ほどの鬼のような彼女とは打って変わってただ快楽を求める雌、になり下がっていた。


 彼女の遠慮のない喘ぎ。それはすなわち、彼女はついに堕ちたと言うこと。目の前では今、彼女は必死とばかりに腰を動かしている。
 そんな彼女を見て、彼の中の何かが。何かが彼を突き動かした。彼女を限界まで堕としたい。出来ることなら、自分の"モノ"として所有したいと。
――かくして彼は止めたのだ。全ての行為を。全ての快感を。

 当然そうなれば辛いのは彼女。せっかくそれを求めようとしたにもかかわらず、それを拒絶されたのだ。……もちろん、また逃げ出すことも出来るのだが。そうすることは考えられない。
 彼女は当然のように啼いた。もう彼女はそれしか考えられなかったのだ。折れてしまった心は、いとも簡単にそれを許した。快楽に溺れ、屈し、そして喘いで。最後には求めることさえも許した。

「どうした?……何がしたい?何をしてもらいたい?」
彼は知っている。知っているからこそ聞いたのだ。彼女の答えを、あえて彼女自身に言わせ、そして明確にさせるために。
――彼女はもう、彼のモノなのだと。


 彼の思惑とは裏腹に彼女には抵抗する気力がほんの少し、一握り芽生えた。入れられたモノを抜かれることなく前後され一度は折れたのだが、今わずかに。
 あらゆる誘惑を断ち切って脱出しようと腕を地面に這わせるが、一つ忘れていたことがあった。すでに瘤が肥大化していて抜けないのだ。
 相手が動くことがなければ、中途半端な刺激だけが与えられてしまい、体はひたすら疼きながら心はそれに抗い続けなければならない。だがそれは、ギリギリの場所で揺れていた彼女にはあまりに酷な仕打ちであり、無理であった。
 自身の肉壁は精を搾り取るようにして、心拍に合わせて脈動しそれが相手の雄を沈めさせる時間を遅らせる。体が思い通りに動かないことをこれほど恨めしく思ったことは無い。ジンジンと熱を帯びた秘所がどうしても疼き、腰が震えるのを止められそうにもなかった。
 再びふるいあがろうとした心は、この熱に溶かされ、そしてまたも屈した。

「続けろ……」
 今となっては有って無いような自身のプライドを保ちたいのか、具体的なことを言及するのははばかれつつも、気が付いたころには屈することを選んだ。


 かなりの葛藤。その後に彼女が出した結論を目の当たりにして、彼は笑った。紛れもない嘲笑、下卑たその声。
 抜けないようにと瘤を差し込んだ今の状況では、彼女はもう抵抗できない。鈍い快感が、ほんの少しずつ彼女を蝕む。
 続けろ、と言われても、彼は一向に動こうとはしない。ただ彼女の後ろから、首筋を執拗に舐め回すだけ。

「俺は別にこのままでもいいんだぞ?尤も、辛いのは俺じゃなく、お前かもしれないけどなぁ」
あくまで彼は彼女の心をぐしゃぐしゃにしたいらしい。既に散々傷つけられた彼女のプライドに、彼は今、牙を立て、爪をかけている。

「言っとくが、俺は動かないぞ?……どうして欲しい?それとも……自分でなんとかするのか?」
ニヤニヤと、どちらかと言えば恐怖にも近いその貪欲な彼の顔。奥底に眠っていたはずの加虐本能。自らの嗜好。
――もう、止まらなかった。


 秘所はぬるま湯につかるような、中途半端な感覚。いっそすべて沸騰させれば楽なのに、もしくは冷めきってしまえば楽なのに、むず痒さを解消する手はどちらの方向にも差し伸べられない。
 それなのに、むず痒さを助長するような中途半端な感触は、首筋から、呼吸で上下する胸から際限なく広がっていく。
 理性と欲求のせめぎ合いが彼女の心の中で葛藤していることを無視して、次第に下半身が意思をもつように動きだす。

「自分でする……」
 自分がさっきまで動かない体であったのも忘れ、徐々に力が戻りつつある全身からの欲求が命じるままに、腰を前後させる。
 快感の先導として強制的に落ち着かせたキーの実の効果はとうに薄れ、今の彼女は自身を絶頂へ導くためにひたすら興奮を与えられている。
 辛い状況に置かれても保たれていた彼女のプライドが崩され、歯止めのきかない快感を得た彼女は狂喜する。小刻みに彼の雄を絞めつける様子は、心臓がはじけ飛ばんばかりに脈打っている証拠であり、絶頂は近いようだ。

「か、あ……あぁ……」
 無茶な体制で腰を動かしていた彼女は、日頃体を鍛えていたとしても、前後の出来事もあいまって相当参っていたのだろう。
 声を上げると同時に絶頂を迎えると、抜けない瘤に苦痛を与えられない範囲で体をはいつくばらせる。
 息切れしながら地面に唾液を流す彼女の眼には何も映っておらず、ただ虚ろに快感の余韻に浸っている。


 ぐっ、とでも表せばいいだろうか。自然ときつく、搾り取るように動く彼女の膣。生殖の本能か、それとも彼女自身の意志か。
 それは分からないが、とにかく彼女が、自身から望んで動き、そして欲したことは確か。彼女のプライドという砦が堕ちたのは確かなのだ。
 となれば後は。後はただ、自分の欲求を満たせばいい。彼女を使えばいい。勝手に動く、文字通りの"玩具"として。

「あーあー、勝手にイくなんて、どれだけ淫乱なんだよお前は……。ま、俺はまだまだ満足してないからな?」
 彼女にとってはかなり辛い物であろう、絶頂直後の前後への運動。内側が融けるかのような熱さの中を、突き進み、引きずり出し、再び突く。
 抜けなくなった瘤の所為で、ある程度の動きは制限されてしまうものの。しかしながら、それでも激しい衝突によって、肌と肌がぶつかる音が響き渡る。
 ぶつかり、離れて、またぶつかる。溢れる蜜が体毛の間に入り込み、猥らな水音が谺する。洞窟の中に蔓延る淫猥な音と匂いは、二匹をより一層、その行為へと駆り立てる。
そうして。そうして、再び彼女の中には子種が蒔かれる。彼の遺伝子を植え付け、そして確実に穢していく。


 もはや彼女は抵抗をやめ、互いの荒ぶる欲求をただひたすらなだめようと、激しい突き崩しに応じるだけになる。ただし、完全に服従した精神は、この場を凌ぎ、夢うつつの出来事として片づけたい彼女のための最後の防衛本能であり、あくまで仮初の物。
 で、あったとしてもだ。淫乱と言われてはこくりと頷き、満足していないという言葉に続きを期待をしていた。仮初が本物になるように、深く粘着質に快感を与える彼に屈するのは時間の問題であった。
 頭が真っ白になった絶頂の刹那、再度始められた突き上げに恥も外聞もなく(おとがい)をそらした彼女の動きが意味するのは、間違いなく虜の証。ばら撒かれた子種を拒否することなく、それが体内に満ちる感覚に身も心も震わせた。
 まだ、小出しの射精が続く雄を抱いた膣の感覚に陶酔しながら、彼女は彼の前脚にそっと手を置く。そして強く握りしめた……が、彼に苦痛を与えるものでも体勢を崩すためのものでもない。それだけでは懇願ともお礼とも取れるような行動であった。


 二度目とはいえども、吐き出した量は先ほどと変わらず。それどころか、むしろ多いくらいに幾度も続く放射。
 彼女が置いてきた手。それが意味するものは拒絶では無く。もう彼女は完璧な道具。ただ性欲を満たすためにそこに在る、便利なモノ。
 となれば後は。――いくらでもはき出せばいい。自身の欲望を。いくらでも注ぎ込めばいい。自身の欲求を。
 そう考えた彼は、未だに衰えない自身の分身をまたもや前後へ揺らす。数回も揺らせば、今度は彼女の方から勝手に動いてくれる。
 欲求に支配された二匹は、ただ幾度も動いて、動いて。汗、精液、愛液。そんなもので濡れた彼ら。
 腰と共に尻尾を揺らしながら、彼は何度も彼女を突き上げる。優しさなど無い、ただ自分の為のその行為。
 液体で濡れた床に這いつくばりながら、彼女はひたすら腰を振る。プライドなど無い、ただ自分の為のその行為。
 彼らはそれぞれ自分の為に。しかし、彼女のそれは、あるいはもう彼のための行為だったのかもしれないが。


 抗うことを忘れた体は、突き上げに対し素直に反応し、素直に受け入れる。相手が満足することが自身の欲求を満たすことにつながるならば……と、行為に身を窶し(やつし)、口にしたことのない禁断の果実を際限なくその身に受ける。
 躰は、(はらわた)ごと快感を味わうように、彼の精を喰らい尽そうと躍起になる。それすらも萎えて自身が力尽きても、相手は満足するまで、彼女に気絶させることすら許されずにあえぎ続けさせた。
 だが、彼女とてそれを不快とは思わず、つらいとも思わず、極限状態で(もや)のかかった精神は、苦痛を拒否して快楽だけを全身に受け入れさせる。そんな錯覚か暗示か、自分勝手な突き上げに快だけを示す感覚は、そうでもなければ解釈は付かない。
 それでも、思いこみの力の偉大さは、自身を守る為の防御、服従すれば傷つくことも苦しむこともないという暗示を深く深く根付くように確実に浸透させていく。

――これまでの自分に苦痛を与えるような生活は間違っていたんだ。これからは……
 これまでにない快感を伴って、彼女は三度目の絶頂を迎えた。荒い息を吐きながら地面に伏せる彼女は今度こそ目を閉じたまま動こうとしない。膣は動いているから死んでいる訳ではないであろうが、もともと体力のない状態でここに運び込まれたのだ。ここまでよくもった方だろう。


 ついに動かなくなってしまった目の前の玩具(・・)。壊れた道具に意味など無い。それに命があろうが無かろうが、彼にとっては道具なのだ。
 そして、壊れたモノに待っている運命。――彼は少し考えて、そして一つの結論に達した。
 まだ脈動を続ける彼女の中へ最後に一突き。溜まった精の残りを吐きだし、彼は時間を置いてそっと自身の雄槍を抜き取った。元の、固く閉ざされた割れ目はそこになく、在るのはだらだらと白濁を溢す、解れきった彼女の秘部。
 その後彼はもう一度、彼女の身体を眺め回す。その眼は雌を見る際のどこか艶やかな眼つきとは違い、むしろその眼は――木の実を見る時と同列の眼。

「じゃあな。……壊れた玩具(・・)に、もう用はないんでな」
そう言って彼は、彼女の首元へと顔を近づけ、舌を――ではないのだ。近づけられたのは顔と牙。首元にそっと当てられた、その立派な牙。彼はあごを大きく開けて、彼女の首を覆い、そして――閉じられ、引き抜かれる。
 飛び散るのは白濁ではなく、鮮やかな(あか)。彼女がか細く漏らしたのは、甘い喘ぎではなく、単なる断末魔の断片。
 最後の一瞬、眼を開いたそのままの状態で、彼女はそこに横たわっていた。先ほどと違うのは、開かれた瞼ともう一点だけ。
 もうそこに彼女はいない。


 幸福……ではないが、少なくとも体は膣内を満たされていく快感に酔っていて、そのようなものを感じながら深い深い眠りに落ちて行った。
 不意に首筋をなぞる感触。もう何度目かも分からない快感を与えてくれるのかと、性懲りもなく体は反応した。まだ相手がそのつもりであるとでも言いたげなピクリという躍動は、彼女の期待であったのだろうか。
 感触によって快感が薄膜のように首筋に張り出し、それを快感と意識する前に薄膜ごと穿つように冷たい感触が走る。それが痛みであると気が付いたころには、自身の首を支える健は失われ、振り向くことすら出来ない無力な存在となった彼女が見たのは、紅、彼の前足、暗転。
 何も考える余裕も、痛みを感じる余裕もなかったことが彼女に対する神が与えた最後の慈悲であるかのように、苦しみも無く意識は虚空へ消えた。
 それとも、最後に与えられた快感こそが彼なりの慈悲だったのであろうか。
 あるいは、彼女は心の奥底で自身の運命を感じ取り、最後に夢を見たかったのかもしれない。
 事実も真実も、それを知る術はどこにも在りはしない。


【原稿用紙(20x20行)】 62.4(枚)
【総文字数】 17302(字)
【行数】 528(行)
【台詞:地の文】 3:96(%)
【ひら:カタ:漢字:他】 59:1:36:2(%)
【平均台詞例】 「ああああああああああああ、あああああ」
一台詞:20(字)読点:26(字毎)句点:93(字毎)
【平均地の文例】  ああああああああああああああ、。あああああああああああああああああああああああああああああ、ああああああああああああああああああ。
一行:66(字)読点:31(字毎)句点:33(字毎)
【甘々自動感想】
内面の描写が優れた作品でした。
長くもなく短くもなく、心地よい長さでした。
三人称の歴史物とか日本を舞台にした作品というのはやはり良いですね。
一文が長すぎず短すぎず、ほど良い長さです。
また、地の文での丁寧に描写も良い。
「言っとくが、俺は動かないぞ?……どうして欲しい?それとも……自分でなんとかするのか?」という言葉が心に響きました。
あと、空行が多かったように思います。
これからもがんばってください! 応援してます!

まさかのセリフ割合一ケタ……頑張りすぎました。これの作者はまぁ……イメージポケから容易に想像できるかと。


 の後書き
合作……なのでしょうかね? 私がバシャーモの方を買って出たのは、女性の描写をとにかく練習したかったのがあるのです。
 でも、正直に言うと……残念ながらこんな描写今後必要としないかと思います いや、強姦を書くのは好きではないということでしてね……心が痛んでくるのです。
 一応練習になってくれればいいですが……。なにはともあれ、こういう風に複数の人で何かを作るのは楽しいものです。
 ウインディを担当した様もありがとうございました。





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Last-modified: 2012-08-14 (火) 00:00:00
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