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筋掻き

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筋掻き [#2xX2x3U] 

writer――――カゲフミ

 木造の平屋の玄関先。半開きになったままの引き戸の前で年配の女性と、少年が何やら話をしている。
にこにこと朗らかに笑いながら喋っている女性とは対照的に、少年の方は両手を頭の後ろに回してゴクリンのようなやる気の無さそうな表情をしていた。
「いやー、今日マヒロが来てくれて助かったよ。昨日の夜からどうも手首の痛みが取れなくてねえ」
「ナツばーちゃん、もう歳なんだからあんまり無理すんなよ」
「もう歳、は余計だよっ」
 すかさずマヒロの頭にナツハことナツばあちゃんの手のひらが飛んでくる。しかし彼女が咄嗟に失礼な孫へと飛ばしてしまったのは痛めていた利き手の方。
「あたたたた」
「ほら言わんこっちゃない。大丈夫かよ……」
 湿布を貼っている右手首を左手で抑えるナツハ。憎まれ口を叩きながらもマヒロもそれなりに祖母を心配していてはいたのだ。
もっとも、今の痛みの直接的な原因は一言多い彼がもたらしたものであることはさておき。なるほど、利き腕の痛みとなるとこれはなかなかに不便だ。
「と、とにかく。私が病院に行ってる間に、ファニルちゃんの世話を頼んだよ」
「へえい」
 気の抜けた返事と共に小さくなっていくナツハの背中を見送るマヒロ。病院まではすたすた歩いて行けるので祖母の足腰は達者で頼もしい。
ナツハは庭いじりが趣味で、家の前には彼女が植えた色とりどりの花が顔を覗かせている。ただ、園芸に無関心なマヒロにとっては花がたくさんあるくらいの認識でしかなかった。
むしろ、花ではなく食べられるうまい木の実でも育ててくれていた方がまだ興味が湧くというもの。ただ、ナツハ曰く木の実の花は目立ちすぎるものが多くて家の庭には合わないらしい。
大方、庭いじりに精を出しすぎて利き手を痛めたとかそんなところだろう。せっかく祖母の家でのんびりくつろごうと思って訪れたのにとんだ誤算ではあった。
とはいえ、頼まれごとをサボるほどマヒロも祖母のことを蔑ろにしているわけでもない。なんだかんだ言いながらも昔から世話になっている自覚はある。
誕生日に小遣いをもらったり、お盆や正月にお小遣いをもらったり。すぐに浮かんでくるのが金品に関する事柄ばかりなのは気のせいだ。きっと。
大いなる面倒くささを感じながらもナツハからの言いつけはちゃんと守るべく、やれやれと家の中へ入るマヒロなのであった。

 玄関へ入ってすぐ、靴箱の台の上に置かれたモンスターボールを手に取ってマヒロは迷わず開閉スイッチを押す。橙色の光が中に入っていたポケモンの姿を形作っていった。
昔ながらの玄関が広い間取りでなければ、室内でボールから出すのも難しいであろう大きな体。頭には一本の短めの角と、細長く伸びた触覚のようなものが二本。
両手両足には三本ずつ尖った爪を携えていて、背中には控えめな大きさの翼が見えている。やや細身で小柄な祖母の手持ちにしてはかなりいかついポケモンだ。
ナツハも昔は非常に腕の立つトレーナーだったらしいが、それを自分でしょっちゅう言っているのでマヒロも半信半疑なところではある。
ただ、成長が遅く育成の難しいとされるドラゴンポケモンを最終進化系まで育て切っているので、あながち誇張でもないのかもしれない。
祖母がすごいトレーナーであるとマヒロも七割くらいは信じている。ボールから玄関に現れたカイリューからは、その風格にそぐわないおっとりとした口調が聞こえてきた。
「あら、ヒロくん。ナツハから話は聞いてるわ。よろしくね」
「やあファニル、久しぶり。ナツばーちゃんから頼まれたんだ」
 マヒロは軽く手を上げてしばらくぶりに顔を見せた祖母のカイリューを見上げる。高さはゆうに二メートルを越えているらしいから、隣に並ぶやっぱりと大きい。
もちろんナツハの手持ちとなればマヒロも昔から顔を合わせる機会は多々ある。物心がついたときから祖母の家には大きなカイリューがいるという認識があった。
今だからこそ当たり前のように接せるものの、見慣れていなければその想像以上の迫力にたじろいでしまっていることは間違いないだろう。
「ばあちゃんみたいに手際良くは出来ないと思うけど、やるだけやってみるよ」
「お願いします」
 にっこりと優しげにほほ笑むファニル。巨体ながらも性格はどこかのんびりしていて穏やかな、心優しいカイリューなのである。
マヒロもなんとなく、ファニルに対しては少し離れた家に住んでいる親戚の伯母さんのようなイメージを抱いていた。彼女が人間で言うと何歳くらいなのかはもちろん分からない。
ただ言葉遣いや立ち振る舞いから落ち着いた大人の女性、それも母親と同じくらいかそれより年上の印象を持っていた。
まだマヒロが十にも満たない年齢のとき、祖母にこっぴどく叱られてしょぼくれていたのを元気づけてくれたのは包容力のあるファニルだったのだ。
「ええと、バケツは台所だっけ」
「そうそう。あと、タオルも近くにあったと思う」
 たまにしか顔を出さないとはいえ、家の作りは把握している。マヒロは迷わずに台所に向かい、流し台下の収納スペースから大きめのバケツを取り出した。
台所の蛇口をひねってバケツに水を溜めている間、今度は上の戸棚を開いてタオルを三、四枚程度引っぱり出す。
普段祖母がどれくらい使ってるのか分からないけど、足りなければ後から補充すればいいだろう。三分の一くらいまで水が溜まったのを確認すると、今度は別の蛇口からお湯を注ぎ込む。
祖母の家の台所は古くて細かい温度調整が出来ないのだ。ぬるま湯にするには熱いお湯と水を混ぜて作るしかない。温度調整はだいたいこれくらいか。
風呂の温度より若干ぬるいくらいのお湯。使っているうちに冷めてはくるだろうし、熱すぎなければ問題はないはずだ。
「よいしょ、っと」
 準備するものはこんなところだろう。お湯の溜まったバケツの中にタオルを放り込んで持ち上げると、マヒロはそのままファニルの待つ玄関へと向かう。
祖母が言うにはカイリューとはいえファニルも雌。身だしなみが気になるときがあるそうだ。体格の都合上風呂に入るのは無理なので、水浴びで体を綺麗に出来ればいい。
ただ、外のホースからだとこの時期はまだ寒さの苦手なファニルにはちょっと応えてしまう。そこで、お湯で絞った濡れタオルで体を拭いてあげているというわけだった。
「お待たせ」
「早かったわね。結構覚えてるんじゃない?」
「ばーちゃんがやってるの何回も見てたからな」
 ええと。確か足元には何か敷いてからやってたよな。靴箱の一番下にあったブルーシートを取り出して玄関に広げる。何も言わずともファニルも上に足を乗せた。
せっかく体を綺麗にするのに玄関の砂ぼこりが舞わないための配慮。祖母の手前、めんどくさそうに引き受けたマヒロだったが体はしっかり手順を覚えてしまっていた。
一枚目のタオルをきゅっと絞ってファニルに玄関の段差ぎりぎりまで来てもらうように促す。古いつくりの玄関は土足の部分と家との段差が激しい。
マヒロが家に上がった状態ならば精一杯手を伸ばすことで、脚立などを使わなくてもファニルの頭のてっぺんまでなんとかタオルが届くのである。
「ねえ、ヒロくん。また背、伸びたんじゃない?」
「そうかなあ」
「よその子は大きくなるのが早いわねえ」
 完全に、たまに会ったときの親戚のおじさんおばさんの台詞だ。マヒロにしてみれば、玄関を潜らなければ家に入れないファニルに言われてもいまいち実感が持てない。
確かに目に見えてとまでは行かずとも、じわじわ身長は伸びてはいる。だがここ何年かはファニルを見上げる景色は特には変わっていないような気がしていた。
そんなことを頭の片隅で考えつつ、拭きにくい高い部分から済ませて徐々に手の届きやすい首の後ろ、肩と下へタオルを滑らせていく。
最初のタオルをひっくり返すと白かった面がうっすらと黒っぽくなっていた。黄色いカイリューの体ではぱっと見だと気が付かないくらいの表面の汚れではあるが。
体は綺麗にしておいた方が人間もポケモンも快適に過ごせるだろう。汚れた分をバケツの横に置くと、二枚目のタオルに切り替えて今度は背中の翼辺りを念入りに。
翼の部分は外側と内側、凹凸があるので少し拭きづらい。厚みのある表皮に比べるとデリケートな個所でもあるから慎重に。
「タオル、冷たくない?」
「ううん。丁度いい」
 最初に比べるとお湯がぬるくなってきていないか一応ファニルに確認しておく。今のところは順調な感じだ。これならば余裕を持って終わらせて、あとはゆっくり出来そうだぞ。
翼の表裏が終わったら正面を向いてもらって、喉元から下の蛇腹になっている部分に取り掛かる。黄色い皮膚よりもさらに丈夫そうではあったが、不思議な弾力があった。
硬いのに指先で押すとほんのりと凹むような何だか癖になる質感だ。ファニルの両手の間の部分に差し掛かったときは人間だったら胸に当たるところだよなあとか、余計なことを意識してしまうが。
もちろんマヒロが期待しているような弾力や膨らみはなく、当のファニルも胸のあたりをタオルで念入りに拭き取られてもどこ吹く風なのですぐに冷静になっていた。
そのままの流れで黙々とお腹周り、腰、尻尾の先まで一通りはタオルで網羅できた。最後の一枚だけが使わずに残っている。マヒロの見立ては少し多かったようだ。
ちなみに尻尾の内側の蛇腹部分はファニルが立ったままでは拭きにくいので、現在彼女には仰向けになってもらっている。
ブルーシートの上に寝っ転がると本当にぎりぎりで玄関に収まるサイズだった。何となくではあるが、腰回りが以前よりも大きく感じられたことはマヒロは黙っておいた。
もしかするとファニルもまだまだ成長しているのかもしれないし、決して前より太ったわけではない。そう思うことにしよう。
「こんな感じでどう?」
「うん。ありがと。それじゃ、最後に仕上げをお願い」
「ああ……えっとこれでやるんだったけ」
 靴箱に置かれていた引き出しから取り出したのは何の変哲もないプラスチックケース入りの綿棒。短い棒の上下に綿のついた耳掃除をするときに使うそれである。
ナツハから念押しで言われていた、ファニルの蛇腹部分の仕上げについて。どうも毎回蛇腹同士の隙間に細かい埃や汚れが溜まりがちなんだとか。
それを一つ一つ丁寧に拭っていくのがナツハ式ファニルのお手入れ、なんだそうだ。フローリングの床じゃないんだからそこまでする必要があるのかマヒロの中では疑問が残る。
ただ、ナツハにしてみればここはどうしても譲れない拘りのポイントらしく、彼女の勢いに呑まれてマヒロは渋々この仕上げまでやることを承諾したのだ。
「ええっと、力加減はこれくらい?」
「うーん、そうねえ。もう少し強めでもいいかな」
 残ったお湯で湿らせた綿棒を蛇腹の隙間の横ラインに沿って這わせていく、がどうも勝手が分からない。あんまり力を籠めると引っかかって綿棒が曲がってしまうし。
まあ、一本で二回分使えるし、ケースにはまだまだたくさん入っているからそんなに神経質に使うものでもないか。
ファニルの喉元辺り。一つ目の隙間に滑らせた綿棒には確かに黒や灰色混じりの細かい汚れが見て取れた。案外、汚れが入り込んでるものなんだな。
これはきっと人間でいう耳掃除や、爪を切ったり髪を梳いたりする身だしなみを整えている行為なのだろう。ファニルのことを大事に考えているナツハだからこその手入れである。
仕上げだからといって手を抜かずに隅々までやるのが、頼まれた孫としてのあるべき姿だな。ここまできたところで、妙な意気込みを見せたマヒロ。
ファニルのお手入れを丁寧に済ませておけば、後でばーちゃんから小遣いとかがもらえるかもしれないと考えたわけでは断じてない。
上から順番に隙間を埋めるかのようにぐいぐいと綿棒で拭っていく。慣れてきたのもあって、目に見えて汚れが取れていくのがだんだん小気味よく思えてきた。
だからこそ、勢いが付きすぎてしまった故のアクシデントだったのかもしれない。下に向かえば向かうほど、注意すべき個所があるとマヒロが気を配るはずもなく。
「待って、ヒロくん。そこはっ」
「えっ?」
「あんっ……」
 びくんと体を引きつらせたファニルに驚いて、マヒロは咄嗟に綿棒から手を離してしまう。ちょうどファニルの両足の間の股に当たる部分。
蛇腹の真ん中辺りに綿棒が半分くらい突き刺さってそのままになっていた。一瞬何が起こったのか分からずにマヒロは呆然と玄関に立ち尽くす。
うっかり声を上げてしまったことに対して慌てて口を押えて、どことなく目を反らしているファニル。半分だけ彼女の中に入ったままの綿棒は少し震えているような気がした。
しばらく理解に時間が掛かってしまったが、これは。ああ、そうか。そうかファニルも雌なんだもんな。胸の膨らみはなくてもちゃんと雌には――――。
玄関に敷かれたブルーシートの上。一人と一匹の間に妙な気まずい空気が流れていく。違う、違うんだファニル。そんなつもりでは。
「あ、ご、ごめんっ」
「大丈夫、いいのよ。それ、外してくれる?」
「う、うん」
 恐る恐る半分だけ飛び出している綿棒にマヒロは手を伸ばす。これまで拭ってきた蛇腹の隙間はせいぜい綿棒の綿部分が埋まるか埋まらないかの深さだった。
しかしここには半分、あるいはそれ以上深々と飲み込まれてしまっている。わずかに上下に広がった隙間からはうっすらと桃色が見えているような気がするし。
「んっ……」
 綿棒に手を付けた瞬間に聞こえてきたファニルの声。いつものファニルとは何だか違っていて、やっぱり声を聞かれたのが恥ずかしいのか目を伏せていて。
良く分からないけど、どきどきする。ファニルに対してこんな感覚を抱くのは初めてだった。歳の離れた親戚の伯母さんくらいにしか意識していなかったのに。
今のファニル、何だかいやらしいな。妙な胸の高鳴りを覚えてしまったマヒロの手は、ファニルの要望とは全く逆方向へ進んでいく。
「ちょ、ヒロくんっ……あっ、やっ」
 刺さった綿棒を引き抜くどころか、何度か左右にくにくにとかき回して。細長い先端で雌をかき混ぜられたファニルはたまらず大きめの喘ぎ声を出してしまう。
もちろんマヒロも相手がファニルだということは分かっているし、ファニルだとしてもこんなことをするのはいけないと分かってはいた。
分かってはいても、若さ故の勢いは時たま暴走してしまうことも少なくないのだ。長年何の意識もしていなかった彼女が突然雌の表情を見せた瞬間。
それがポケモンのカイリューだったとしても。思春期の少年のえっちなものを求める好奇心をくすぐるには十分すぎるものだった。
「もう……いたずらが過ぎるわよ。ヒロくん」
 ようやく引き抜かれた綿棒は、うっかり差し込んでしまったときよりはるかにぐっしょりと湿っていたような気がする。
少し息を荒げているファニルの言葉は、内容こそマヒロを非難するものだったが。その表情はどこか緩んでいて満更でもなさそうな雰囲気がまた彼を掻き立てていく。
「ヒロくん?」
「あ、ファニル。何か……俺」
 もともとナツハの家でくつろぐつもりだったマヒロ。ゆったりしていて楽な部屋着だったため、ファニルがマヒロのズボンの膨らみに気が付くのにはそんなに時間は掛からなかった。
「……もしかして、私で興奮しちゃった?」
「たぶん」
 正直、分からない。相手はポケモンで、ファニルなのに。だけど、それ以外に原因が見当たらないのだ。これまでに覚えたことのない感覚にまだマヒロは戸惑っている。
ただ、現在進行形で自分の股間へと次々集中していく熱は、間違いなく異性に対する興奮で間違いなかった。そうこうしているうちにも、下着の中で今にも暴れだしそうで。
「いけない子。……でも、私も結構どきどきしてる。こんなの久しぶり」
 くすくすといたずらっぽく笑うファニル。マヒロが知っている、いつもの穏やかな伯母さんのような表情とは違っていた。
いつの間にか寝転がっていた体勢から起き上がってファニルはマヒロを見下ろしていて。何だかファニルが普段よりもずっと大きく見えていた。
「それじゃあ、ヒロくんの綿棒で、私をお手入れしてくれる?」
「んっ」
 爪の甲でズボン越しにすりすりと撫でられただけで、思わず後ろにのけ反ってしまいそうだった。自分の方へ伸ばしてきたファニルの手に躊躇いが感じられない。
綿棒がきっかけで、マヒロにもファニルにも。いけないスイッチが入ってしまったようだ。目の前の艶めかしい雌竜に誘われて、断りきる理性はマヒロにも残されておらず。
「綿棒とは心外だな」
「じゃあ、何なのかなあ?」
 そうだな。そりゃファニルから見れば小さいかもしれないけれど、綿棒はあんまりだろう。せめて庭に植えてある花の支柱くらいの太さくらいはあってほしい。
小さく見積もられてむっとした勢いで気恥ずかしさを取っ払い、マヒロは思い切ってズボンを下ろしてみた。押さえつけられていた若い元気な雄がぴんとファニルの顔の方を向く。
彼女の目がきらりと輝いたのをマヒロは見逃さなかった。ファニルがこんなにえっちだったなんて知らなかったな。でも、そういうファニルもありかもしれない。
「あら、やっぱりよその子は大きくなるのが早いわ」
「そりゃどうも」
 どこまでが本気でどこまでがお世辞だったのかは判断しかねる。百パーセント誉めてくれているわけではなさそうだったのは、マヒロにも分かっていた。
なんせ相手はカイリューであるファニルだ。まだ年齢的に成人もしていないマヒロの一物ではいささか物足りなさが残ってしまうのは仕方のないこと。
どこまで彼女の相手が務まるかは分からないが、やれるだけやってやりたいし。何よりもファニルがどんな感じなのか確かめてみたいというのがマヒロの本心である。
「でも、乾いたままだとお手入れしにくいからね」
「あぅ」
 タオルも綿棒もちゃんと湿らせてからじゃないと、と言いながら。ファニルはマヒロの雄をぱくりと咥えこむ。大きな口の中で細長い飴でもしゃぶるかのように。
絡みついてくるファニルの舌の熱量と、時折吸い出すような絶妙な息遣いで、若いだけが取り柄であったマヒロの一物は早くも悲鳴を上げそうになってしまう。
腰のあたりがぞわぞわとして、思わず立っていられそうになるくらいの衝撃。身を屈めているファニルの肩に両手を付いて支えることで、マヒロどうにか直立の姿勢を保っていた。
「ん……あっ」
 まずい。これ以上はおそらく。自分の体のことはマヒロが一番良く知っている。この調子でファニルにぐいぐい来られたら間違いなく。
この時点で敵うはずないなと自身の敗北をそれとなくマヒロは予感する。ただ、耐えられそうにないからやめてくれ、と自らの口で伝えるのはちょっと。
変なプライドが邪魔して言い淀んでしまっていたのだ。もう少しファニルの愛撫を味わっていたいという気持ちもあったが、それは余裕があるときにするべき判断。
「ヒロくん、もしかして。初めて?」
 このまま進み続ければ残念な結果になると分かっていながら、退くに引けず。立ち往生してしまいそうなマヒロを見かねたのか。一旦口を離してくれたファニルからの助け舟。
見上げるファニルの視線は、別に自分のことを小馬鹿にしている様子ではなかったものの。何となく雰囲気で察されてしまうのは、雄としては少し切ないものがあるというか。
まあ、しゃぶられるだけで膝を振るわせてひいひい言ってしまっているのだ。今更になっておかしな見栄を張る必要はないし、張りたくもない。
「わ、悪いかよ……」
「ううん。正直でよろしい」
 それじゃあ、お掃除お願いねと、再びごろりと仰向けになるファニル。ぽっこりと突き出した丸みのあるお腹は人間で言えば肥満体系に分類されてしまうが。
カイリューならばそれはチャームポイント。もたれかかったりしたときに、不思議な安心感があったことを何となくマヒロは覚えている。だが。
今はマヒロの視線は完全に、ファニルの下腹部にある蛇腹の深い深い隙間に釘付けになってしまっていた。表面がさっきよりもぬらぬらと湿っている。
場所を見紛うはずがない。ふらふらと吸い寄せられるようにマヒロは顔を近づけて、まじまじと覗き込んだ。
「じっくり見てみても、いい?」
「ええ。どうぞ」
 ファニルから承諾が得られたので、マヒロは雌のある横筋を覆っている蛇腹を両手で押さえて、ぐにっと上下に広げてみた。初めてまじまじと見るファニルの雌。
桃色をした分厚い肉ひだが幾重にも重なっていて、ファニルのお腹が上下するたびにひくひくと揺れている。表面がぬらぬらと光っていることで、艶めかしさが強調されていた。
想像以上の迫力にマヒロは思わず言葉を失っていた。これから自分はここへ突撃するのかと一瞬不安が過ぎったが、不思議と怖くはなかった。
初めてではあるが、相手がファニルなら初めてではないような安心感。自分でもうまく説明できそうにない、妙な自信と勢いを胸に。マヒロはファニルの上へよじ登る。
ファニルのお腹の上はもちもちとした弾力があってちょっとした豪華なベッドの上にいるかのよう。こんな状況でなければもう少しゆっくりしていたいくらいだったが。
「じゃ、じゃあ行くよ」
「お願い、ヒロくん」
 空振りだけはしたくなかったので、時折ちらちらとファニルの位置を確かめながらマヒロはゆっくりと腰を突き出していく。
彼女の秘所は横に広い分、蛇腹の筋の列を間違えさえしなければあとは何とかなる。幸い、当たりにこぎつけられたようだ。マヒロの肉棒は生暖かい感触に包まれていく。
「……んうっ」
 それほど勢いもつけず、ある程度慎重に踏み出したつもりだったのに。自然と腰が前へ前へと突き出してしまう。あれほどみっちりとピンク色の壁でひしめき合っていたのに。
特に抵抗なくずるずるとマヒロの雄を引き込みつつあった。かといってサイズの大きいファニルだから緩いかといえば全くそんなことはなく。
弱すぎず、強すぎない圧迫感で確実にマヒロを搾り取ろうとしてきている。ふと気が付けば、根元まですっぽりと彼女の中に取り込まれてしまっていた。
本来ならば融通の利く上側であるマヒロが体を動かしたりするものであるが、残念ながら今の彼には余裕のよの字すらない状態である。
中へ侵入してきた雄の気配を感じ取ったファニルの雌が本領発揮してきたのか、マヒロをみっちりと包み込む刺激が徐々に強くなってきているような気さえしてくる。
下手に動こうとすれば間違いなく終わってしまうし、かといって一度侵入してしまった以上乗り掛かった舟である。マヒロの場合、乗り掛かったのは舟ではなく腹であったが。
「ひ、ヒロくん……。大丈夫……じゃ、なさそうね」
「あっあっ」
 完全に自分ではどうしようもないところまで来てしまった。口で準備していたときはファニルの匙加減で事なきを得たが、下の口ともなるとそこまで微調整は効かないだろう。
ファニルに助けを求めようにも声が声にならないし、膝や腰にも力が入らない。やっぱり、ファニルの相手は無謀だったんだ。自分のそれは支柱なんかじゃなくて貧弱な綿棒だ。
「動いちゃうね」
「んあっ……がっ……!」
 正直、もう見ていられない状態だったのだろう。一応ファニルは事前に申告こそしてくれたものの、それに対する準備や心構えなどマヒロに出来るはずもなく。
軽く腰を浮かせてぶるんと左右に一振り。それだけでぎちぎちと限界まで締め付けられていたマヒロの肉棒はあっけなく決壊してしまった。
情けない声と共に果てたマヒロは、自分の一物からびゅくびゅくと精があふれ出ているのをぼんやりと感じていた。次々と、ファニルの中へ中へと吸い込まれていく。
もちもちのお腹の上だけでなく筋の方でもファニルの包容力は抜群だったようだ。射精後の強烈な快感に蝕まれて、どうにか意識を手放さないようにするのでやっとだった。
何度も何度も荒い息を上げて、ファニルの上ですうはあと呼吸を整えて。ようやくマヒロは顔を上げることができた。せっかく拭いたファニルのお腹も涎で濡らしてしまっていた。
「……強すぎるよ」
「気にしないで。よく来てくれたね。えらいえらい」
 人間よりも遥かに強大な力を持つドラゴンタイプとそもそも張り合えるわけがなかったのだ。少しでも何とかなるのではないかと思った自分がマヒロは唯々情けなかった。
ひょっとするとファニルは、マヒロが怖気づいてしまう可能性も考えていたのかもしれない。それでも勇気をもって突撃してくれた彼への称賛のつもりなのだろうか。
ぽんぽんと頭を優しく撫でるファニルの手つきや顔つきは、元の優しい親戚の伯母さんのものに戻っているような気がした。
「タオル、あと一枚あったよな……」
「そうね。最後の仕上げもちゃんとお願い、ヒロくん」
 余分に持ってきてしまったと思っていたタオルがこんなところで役に立つとは。この状態でまた台所まで取りに行く羽目にならなくて本当に良かった。
ファニルのお腹の上から少しだけ名残惜しそうに降りると、残っていた新しいタオルでマヒロは仕上げという名の事後処理に取り掛かったのだった。

 その日以降、マヒロが家に来る頻度が妙に上がったような気がして、ナツハばーちゃんは首を傾げたそうな。もちろん、その真実はファニルのみぞ知る。

 おしまい


・あとがき
 物語を思いついたきっかけ。
      ↓
 カイリューの蛇腹には細かい埃とか溜まりそうだよなあ
      ↓
 掃除するとしたらトレーナーが綿棒で拭う感じだよなあ
      ↓
 でも筋の中に入っちゃうと事故だよなあ
      ↓
 よしこれをネタに官能小説にしよう
                   以上

以下、コメント返し

>ぐうえっちでとてもよかったです。童貞卒業がカイリューとだなんて、マヒロくん素質ありすぎですねw ご馳走様でした! (2021/12/05(日) 15:40)の方
ポケモンがいる世界観の中では初めての相手がポケモンというのも結構いそうな感じがしますね……。
ファニルおばちゃんが見せた思いがけない雌の表情にマヒロくんはどきどきしてしまったのです。

>こんなカイリューが実家にいたら毎週帰ります。 (2021/12/09(木) 14:21)の方
毎週帰るどころかむしろ居候させてもらいたいです。

>自分もお手入れされたい・・・現在独り暮らしなので自分自身で体のお手入れをしているので羨ましいです・・・ (2021/12/13(月) 20:05)の方
お手入れしていたマヒロくんはある意味下半身のお手入れをされてしまったので両方を兼ねていましたね今回は。

>お掃除ハプニングでそのままずぶずぶと感情的にも物理的にものめり込んでいくのがとても良かったです (2021/12/18(土) 21:37)の方
カイリューは体も大きいので筋の奥は深くのめり込んでしまいます。ファニルだと人間のそれではちょっと満足できないかもしれませんね。

>カイリューのお腹確かに汚れがたまりそうですね! (2021/12/18(土) 23:27)の方
そうなんですよ! ですから念入りにきっちりお掃除してあげないといけませんね!

5票もいただき準優勝タイという結果に。
最後まで読んでくださった皆様、投票してくださった方々、ありがとうございました。

【原稿用紙(20×20行)】30.4(枚)
【総文字数】10236(字)
【行数】201(行)
【台詞:地の文】10:89(%)|1042:9194(字)
【漢字:かな:カナ:他】33:61:8:-3(%)|3392:6341:871:-368(字)


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Last-modified: 2021-12-19 (日) 18:15:53
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