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禁術

/禁術

禁術 


作者:333氏

禁術とは……
 太古の昔にポケモンが使用していた、相手のポケモンを死に至らしめる技の事である。
 その技は昔、長となるポケモンの間で使ってはいけないとされ、偉大なるエスパーポケモンによって封印された。

しかし、その封印は完全ではなかった。

~禁術~ 

※注意 グロではありませんが、登場するポケモンが死にます。苦手な方は読まないことをお勧めします。  



「はぁ…はぁ…」
 シンオウという場所に、感情の神であるエムリットが住んでいた。
 エムリットは今、シンオウの北端にあるエイチ湖に向かっている。
 この湖にはエムリットの仲間である知識の神、ユクシーが住んでいる。
 普段この神達は自分が住む湖から離れることはない。
 しかし、エムリットは自分の住むシンジ湖を離れ、エイチ湖へと向かっているのだ。するはずのないことを、神がする。それだけ、大変な事態が起こっているのである……エムリットはエイチ湖にある湖中心の空洞へと飛び込んだ。
 「アグノム!」
 エムリットが入った空洞の中はしんと静まり返っている。中にいるのはユクシーだけだ。
 「エムリット…早かったね…」
 エムリットはユクシーにしがみついた。
 「アグノムが…アグノム…が…」
 「落ち着いて、エムリット…」
 「落ち着けるわけ無いじゃない!!! だってアグノムが…」
 エムリットは泣き出してしまう。
 「……アグノム……なぜ……」
 「…アグノムは…今、ここにいる…」
 ユクシーは傍にあった棺を指差した。ただの棺ではない、氷で出来た棺だ。
 「……エムリット、見る?」
 「……うん」
 エムリットはあふれる涙を拭いた。ユクシーは棺の蓋に手をかけ、ゆっくりとそれを開いた。
 「…………」
 エムリットはその棺の中を覗き込む。その中に、アグノムがいた。
 だが、動かない。アグノムは…

…死んでいた

エムリットはその顔を見つめていた。
 「エムリット…この棺は…氷の棺…。この中に入った遺体は、還ることはない…何億年経っても、ずっとそのまま…」
 「………そう…」
 アグノムの顔は、血色こそ悪かったが死んだときのままになっている。このまま、この棺に入っていれば朽ちることは無い。だが…#br; 「…ユクシー…でも」
 エムリットは急にユクシーの肩をつかんだ。その瞳には涙が溜まっている。
 「アグノムが…こんな…棺に入っていても、ちっとも嬉しくないよ…アグノム……もう一度…話して…ほしかった…」
 「…エムリット…」
 「なんで…なんで…アグノムは…」
 「禁術が解かれたんだよ…」
 ユクシーが言った。
 「誰か、力のある者が、その封印を解いた…そして…禁術が…解放された…。アグノムは、その禁術で…殺された…。」&br ユクシーはエムリットに背を向けた。
 「禁術を覚えた者が…この世界にいる…」
 エムリットはユクシーにしがみついた。
 「ユクシー…何とか…何とかしようよ…? アグノムの無念を……。禁術をもう一度封印しないと…」
 ユクシーは首を振った。
 「私達には…どうすることもできない…」
 その言葉を聞いたとたん、エムリットは顔を真っ赤にして怒り出した。
 「出来ない…? 出来ないって何よ…? 違うでしょう…やらなきゃ駄目じゃない!!!」
 エムリットは激しくユクシーを揺すった。
 「禁術を覚えた奴を、放っておくの!? そんな事したら、もっとたくさんのポケモンが、殺される…それでいいの!? そのままで…アグノムは喜ぶの!!?」
 「エムリット…落ち着いて………」
 「何が落ち着いて、よ!! アグノムが…アグノムが死んだのよ!! ユクシーこそ、よくそんなに淡々としていられるわね!!!」
 「…分かってる…私だって…辛い…」
 「じゃぁ何で!? 何でアグノムを見捨てるような事を言うのよ!!!」
 ユクシーは手を震わせて、言った。
 「…………………………………………………………方法はあるの」
 「……??」
 「アグノムを…蘇生させる方法があるの…」
 「!!!! ほ、本当に!?」
 「……うん…」
 エムリットは急に目を輝かせて言った。
 「…な、何それ!? ど、どうしたら…どうしたら蘇生させることが…」
 だが、ユクシーは首を振る。
 「…分からない…」
 「………?」
 ユクシーはエムリットに背を向けた。
 「そんな技、大昔に禁じられた……禁術の一つよ」
 「禁術!?」
 「…………………そう」
 「私が禁術を解放すれば、蘇生させる技が使えるのね!?」
 エムリットはユクシーを突き飛ばして外へと飛び出した。
 「ま、待って!! エムリッ……」
 ユクシーはその場に、急に倒れこんだ。ユクシーは活発に騒ぎまわるエムリットと違ってずっと湖の底でじっとしていたため、エムリットのように自由に飛びまわれない。
 「だめ…エムリット…それは………」

エムリットは人間の目につかないような古びた遺跡へとやってきた。
 ここに禁術が封印されていたのだ。
 「……………」
 エムリットは遺跡の中へ飛び込んだ。中には祭壇があり、その中に壊れた水晶玉が一つあった。この水晶は、禁術が封じられていた水晶。普通の力で壊れる代物ではない。すさまじい力で破壊されたのだ。
 「…………」
 水晶の中に半分ほど、水が入っている。この水こそが、封印された禁術そのものなのである。
 この水に身体を触れた瞬間、触れたポケモンは封印されたられた禁術を蘇らせることが出来る。

――そして……それを使えば……

そんな期待を以ってエムリットは水晶へと近づいた。

――アグノムが…これでアグノムが蘇る……
 エムリットは少しずつ水へと手を伸ばした。
 「うぐっ!!!!!」
 エムリットは水まであと少し、という所で息を詰まらせた。背中に激痛が走る。何かで切り裂かれたようだ。
 エムリットが振り返ると、そこには、一匹のエスパータイプのポケモンがいた。
 「その水は、俺の物だ…触れるな…」
 エムリットの背には、そのポケモンがつけたであろう深い傷がついていた。禁術による傷である。
 「あなたが…アグノムを…」
 「アグノム? そうか、あの神といわれるポケモンか…あいつは、俺が禁術を解放したのをいち早く察知し、禁術を封じに…つまり、俺を倒し、禁術を取り返しに来たのだ。生憎、禁術の前に倒れただけだがな」
 「………………」
 「貴様は何だ? 禁術を覚える気か?」
 「………」
 エムリットの心に、ふっと悩みが生じた。禁術を覚えれば、アグノムは蘇る。しかし自分が禁術を覚えることが、アグノムの望む事だろうか……#br 後で禁術を返せばいい……いや、堅いアグノムのこと、禁術を借りるという行為すら許すわけが無い。
 どうすればいいのか……
 「ふふふふふ……感情が顔に出やすいやつだ。わかるぞ、お前は禁術を覚える気はない。あきらめろ…貴様は……」#br; そのポケモンはそこまで言って、口を止めた。

エムリットは、水晶の中に手を入れた。

エムリットは、禁術を蘇らせる。

これがアグノムの望んだことではないことはわかっていた。

それは分かっている。しかし、そうせずにはいられなかった。

エムリットは、自分を堕とすところまで堕としてでも、アグノムを復活させたかったのだ。感情的といえばそれまでだが、それが彼女の生まれ持った気質なのだ。

「アグノムの恨み…今…晴らす…!!!」
 エムリットの目がカッと光った。

……………………

エムリットは倒れこんだ。そのすぐそばに、一匹のポケモンの亡骸がころがっている。エムリットは、禁術を使って相手ポケモンを殺したのだ。
 
だが、エムリットの身体にも異常が生じていた。
 全身が痺れ、身体を動かすことが出来ない。すさまじい頭痛がする、立ち上がることができない。
エムリットが使った術は……使ってしまった術は憎むべきポケモンの使ったソレとは違い、自分の命を使ってでも、相手に果てしない苦しみを与え、死に至らしめる技だったのだ。
 その証拠に、そのエムリットの傍で倒れているポケモンは、この世のものとは思えないほどの苦しみを味わったのだろう、感情の神と呼ばれる自分ですら知覚出来ないな恐怖の中で死んでいった。

エムリットには分かった。
 自分は、まもなく死ぬ。

――息が出来ない、苦しい……

エムリットは最後の力を振り絞って、傍にあった白い石を拾い上げ、床の黒い石に、字を書いた。

ユク シー この水 の力で ア グノ ムを 生 き返 ら

そこまで書いた所で、エムリットは石を取り落とした。
 もう、字を書く力も残っていない。エムリットは力なく、その場に倒れこんだ。
 「…アグ…ノ…ム…」

エムリットはその場で、死んでしまった


ようやくユクシーが追いついてきたとき、エムリットは既に息を引き取っていた。#br; 「うそ…まさか………」
 ユクシーはガクンとその場に跪いた。
 「………私の…せいで………」
 ユクシーはエムリットを抱きしめ、泣き出した。
 「………………ごめんなさい…二人とも」
 ユクシーは祭壇の中にある水晶を見つめ、それから、足元に書いてあったエムリットの言葉を読んだ。
 「…………」
 ユクシーは水晶に手をかざした。
 するとユクシーの超能力で、砕けた水晶はみるみるうちに元の姿へと戻っていった。&br 3分も経たないうちに、水晶は元の姿に戻る。再び、禁術は封印されたのである。
 「……エムリット…ごめんなさい…」
 ユクシーは冷たくなったエムリットに抱きかかえた。
 「蘇生の禁術…あれは……嘘なの……………そんな技はないの………ただ、エムリットの心を、少しでも軽くしてあげられたら…わずかでも、希望があれば…と思って…言った嘘なの……」
 ユクシーはエムリットに言った。
 「あなたは…感情的になりすぎてしまった…アグノムを殺された怒りと悲しみのままに……。こんなことになるなんて………本当に、ごめんなさい………」
 ユクシーはエイチ湖へエムリットの遺体を持ち帰り、新たな氷の棺を作り出してエムリットをその中に入れ、アグノムの棺と並べた。
 「…………………二人とも…許して……死んだら……生き返らないの……」

事実の上では、この3匹のお陰で禁術の暴走は食い止めることができた。しかし、その事は永劫、誰も知ることはなく、語り継がれる事は無かった。

Fin


ポケエロで書いていたような終わり方を期待してた人、ゴメンよ。
 ここで ~禁術~ の内容について作者自ら弁明したい点があります。
 
エムリットの『何とかしようよ』と言う台詞に対し、ユクシーは解かれてしまった禁術に対して、『…私達には…どうすることもできない…』という場面があります。
 しかし、ユクシーは話の最後に再び禁術を封印しています。これは矛盾ではないか、という友人からの指摘があったのでここで弁明させていただきます。

一見するとユクシーの台詞と行動が矛盾しているように見えますが、矛盾はしていません。
 エムリットが禁術を覚えたポケモンを殺しエムリット自身も死んだ時点で、禁術を覚えているポケモンは存在していないことになります。
 つまり、【禁術を覚えた二匹が死んだときに、禁術は封印を再生出来る状態ではあった、しかし覚えているポケモンがいなくなっだけなので再生は出来てはいなかった】という事なのです。
 もっと分かりやすく言えば、【一度禁術が発動してしまうと禁術を封じる方法は禁術を覚えたポケモンの死のみ】であったという事です。

では、アグノムはなぜ封印を止めにいったのか?
 【ユクシーは知識の象徴であったため、そのような禁術についての事を唯一知っている存在だったのに対し、アグノムは意思ポケモン、まずは行動を起こす性質であったから】
 というのが作者の見解です



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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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