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禁じられた遊び

/禁じられた遊び

 私は恋に盲目で、愛に飢えていたのかもしれない――


※注意※
この作品には近親相姦、百合、失禁、乱交、精飲、69、クンニなど多数の場面があります。
注意してご閲覧くださいませ。

禁じられた遊び ◆Jeux Interdits◆   


 ― 結ばれない運命 ―

 なぜ父を愛してはいけなかったの。
 なぜ私は父を愛してしまったの。
 なぜ見つめる程に二人の愛は加速するの……
「リユン……ぁ、あっ……!」
 母と似た喘ぎ方をしているだろう自分が、みじめで妬ましかった。でも、私は母と入れ替わる事はできない。そんな妄想は私にとって必要がない事ぐらい分かっていた。
 客観的に深く突き詰めてみたところで、結局は母の代用品に近い存在だけだったのかもしれない。
 でもそこに確かに愛はあったはず。私は恋に近い感情で、父と交わり続けていたんだと思うようにしてる。
 考えれば考える程、私は行為に依存したくてしょうがなくなる。でも自分で慰めるのは極力避けたい。誰かとカラダを重ねてこそ、感じられる確かなものが私には必要だったから。
 でもどうしてこんなに不安になるの? ねぇ、リユン。
 ――そうじゃない、フリップ。父親を愛する事が罪だって言うのなら、二人の牝を同時に愛している俺も、また咎人なんだよ。
 互いに咎人だから、相殺されて背負う物はなくなるとでも言うつもり?
 でも……でも心にぽっかりと空いた、この虚しさは何。
 あの牡槍の感触が、私という過ちを犯した一人の牝を掴んで離さない。
 その快楽だけは私を裏切る事はなく、また私から手放したりする筈もなかった。
 ――俺も立派な咎人だから。あんまり考えるな、身を委ねろ。そうすれば今だけは二人だけの世界に浸れる。邪魔者はいないんだから。
 甘い囁きが私の思考を麻痺させる。充分過ぎる程に浸った秘部が、リユンの雄を苦しそうに、でも確実に咥え込んで離さない。
 まるで、母から取り上げられた玩具を、必死で返さないように――。
「リユン……もっと、もっと深く突いてぇぇ!」
 リユンの雄を咥え込んだ私の秘部が、喘ぐ声と共にその肉壁を踊らせる。
 肉壁の締まりから来る快感に酔いしれた表情を見せるリユンの表情を快楽と感じる私は、きっと死んだら天国に行けない悪い子なのかもしれないのだろうか。
 リユンが早くも達しそうになる時、後ろから僅かに私の肩に吐く毒炎が、持ち合わせている自分の特性で痛みを感じなくさせる事ができる私にとってでも、その毒は肩に痕となってしっかりと刻みこまれはする。
「あ、あ、あぁぁぁあ!!」
 リユンが吐き出す、熱い白濁化した液体が、私の秘部に注ぎ込まれる。
 嗚呼――この感触をどう言い表したらいいんだろう。
 気持ちいい、至高、昇天とか。快感の極み、甘美な囁き?
 子宮を内壁を襲い続ける白い液状の雄種*1の感触が、脳裏に焼き付いて忘れられない程に愛おしくて切なくて。
 その後に交わす口づけの甘さは、私の熱を持った頬を更に赤く染め、暫くしたら挿れられるだろうリユンの雄に、期待を膨らませながらも今度は地面に寝そべりながら、両後ろ足を開脚させた格好でそれを待ち受ける。
 ――少し休むか? あぁ、今日はベルテが早く帰って来る日だったな。続きはまた今度にしようか。……愛してる、フリップ。
「私も……。ママには内緒だからね、パパ」
 ――お互い様だろ。ふふ、いい子にしてればまた機会はあるさ。あんまり考え過ぎてまた自分を追い詰めるなよ? 背負う十字架は俺だけでいい。十字架を背負うには、子どものお前にはまだ重過ぎる荷だ。
 じゃあ、またな。

 十字架は、咎人だから背負い続けなければならないの?
 リユンにだけ背負わせたくなんてない。でも何も言えない、いつもそう。
「うん、分かった。いい子にしてる……だからまた、ね」
 リユンと約束を交わす。
 だけどまだ満たされきっていないカラダは、リユンが母の迎えに行った後に、密かに住処の自室の藁で自分の秘部の陰核を擦りつけ、その摩擦から得られる一時的な快楽で、私はリユンを想いながら――――独り快楽の楽園を駆け上がった。

    ◇

「ただいまー! あら、フリップは寝てるのかしらね?」
 住処の出入り口近くからか、母の声が聞こえてきた。
「そうだろう。しかしこの辺りは相も変わらずのどか過ぎて、同年代の遊び相手はほとんど居ないフリップにとって、そろそろ寂しい頃合いだろうな……」
 今度は父の声。二人で帰って来たにしてはちょっと時間が掛かり過ぎてる事から察するに、どうせ外で一発擦りあってきたんだろう、性的に。
 仕方ないとは分かっていても、母に対して嫉妬の念を抱いてないと言えば嘘になる。
「そうだ……大事な話があるんだ、ベルテ」
「何? あらたまちゃって、急にどうしたの? でも……その前に、ね」
 
 ――嫌。聞きたくない!

「さ、先に話を……っ!」
「さっきのじゃ私、物足りなかったんだもの。それにすぐ萎えちゃったし貴方の。……さては一人で抜いてきてから迎えに来たの?」
「そ、それは……。くぅっ!」
「でも今は元気ね。回復したってところかしら? ふふ、疼くわ……。フリップが起きないように声は殺してあげるから、だから、激しく犯して……」

 粗々しい物音と、いやらしい粘着音を含めた二人の接合音であろう音が、一定の感覚を伴って自身耳に嫌でも入ってくる。
 私の寝床周りの厚い岩壁にはいくつかの小さな隙間や穴がある。一部の空洞からは目を凝らせば広間の様子もかろうじて伺うことも出来なくもなかった。なのでそこから広間*2に当たる場所の物音は結構侵入してくる事実を二人は知る由もないのだろう。
 その証拠に、容赦なく今まさに二人の営みの大体は把握が出来た。
 両親同士の寝床は一緒だった。しかし今行っている行為は広間での出来事。しかも住居が洞窟内の為、必然的にあらゆるある程度の大きさの物音は大抵反響する。
 それでも覗き見をするには、片目を閉じて顔を最大限に岩壁に近づけ巧くやらないと、実行するにもし難い仕様になっていた。が、親の目を盗んでの幾度も重ねた部屋の改善と言う名の工作と、長い年月がそれを簡単に近づけるものにしていたのも事実だった。

「くっ、ベルテ……そ、そろそろ……」
「あら、今日はいつにも増して早いのね? もっと私のでたくさん弄り倒してあげたいのに、もう終わり?」
「……相変わらずお前も元気そうで何よりだよ。はは」
「? さっきも外で交わっといてどういう意味? ……出したいなら早く出しちゃいなさいよ。受け止めてあげるから、全部」
「そう、か……じゃあ出す、ぞ」
 程なくして、強がっていただろう母が途端に喘ぎだし、その媚声が洞窟内の外にも漏れる勢いで各住処に響き渡ると共に、私はなんだか悲しくなりながらも遺伝のせいか慣れなのか。無性に下半身を含めた体の疼きが急激に込み上げてきて、寝床の藁に潜ると同時に、ひたすら自身の陰部を前足で掻き混ぜる様にぐりぐりと撫でに撫で回した。
 ――リユン。リユンのが、私にも欲しいよぉ……。ママの事は嫌いじゃない、けどでもこんなのって…………はぁんぅぅっ!
「はぁはぁ、パパぁ……リユ、ン」
 
 二度も三度も自慰を両親の接合と壁を挟んだ隣合わせにも関わらず、慣れた様子で短時間で声を殺しながら重ね、そして忘れたいあの二人の光景を早く消すかの様に、乱れた私は独り眠りにつこうとしていた――
 
 
 だけど。私はもう少しでも良かったから自慰の後だろうと起きていて、その後の展開を見守り続けるべきだったのかもしれない。いや、辛くとも疼くだろうと見守るべきだった。
 
 まさか、これが父の――生きたリユンの最後の見納めになるだなんて、思ってもみなかったのだから。

 
 ――amour sans espoir...


 ― 背負った十字架、別れ ―

 翌日。
 ふと目を覚まして部屋から出ると、広間のテーブルの上に一枚の手紙が、私と母宛にまとめて一通にしてそこに置かれていた。
 辺りはとても静かで、母は昨晩の疲れからかまだ眠りから覚めていない様子だった。

 手紙を読んでみる。

 
愛するフリップとベルテへ。
 
 
俺が一週間程前に、遠出をしたのを覚えているだろうか?
 
そう。生活に必要不可欠な雑貨を集める為に、この樹海から遠く離れた名も無い地域に出掛けた。
 
そこではある流行り病が蔓延っていて、雑貨集めどころではなく、だから俺はすぐに戻ってきたし、土産も手にせず代わりに明るく努めて日々を過ごしていたのだが。
  
この樹海にある神秘の泉の存在は話さなくても分かるだろう。

 あそこは、相変わらず水嫌いだろうと体を洗うのにも飲み水にも、時には未来を見るにも欠かせない貴重な、この土地が誇るまさに神秘の泉だ。

  
その泉は枯れることはなく、また流れもないのにいつも不思議とその水は清潔で程良い温度を保っていて。……ここで改めて話す意味があるかどうかは分からないが。
  
ただ、その泉に最近一人で立ち寄ったとき、泉が俺の未来を照らし出したんだ。それは気のせいでも何でもなく、この土地に伝わる伝承通りの現象が起きたから間違いはない。何しろ直感がそう言っていた。
  
俺が水を一口飲もうとしたその時、触れてもいないのに泉に水面が立った。そしてその後泉に映し出された自分の姿を見て、俺は驚きと共に、愕然と自分の死を悟らざるを得なかった。
  
どんな姿が映っていたかは敢えて考えないで欲しい。酷く醜く、まるで咎人の慣れの果てだった様――とだけ伝えておく。

 これに関してはフリップは何も考えなくていい。……ベルテは気を付けろ。

   
要は俺は、流行り病に掛かってたらしいって事だ。それを昨日は話したかったが、昨日はタイミングを逃してな。
   
だからこうして手紙だけ残して黙って去るのがいいと思ったんだ。
 
例の流行り病は名称もなく、その対象はある一定の年齢以上のポケモンにしか当てはまらないと聞いた。
  
だけど、俺はもう駄目だ。これは発症したら最後、治療法がないと出先の土地で聞いたし、それに泉が偽りの未来を映し出す意味が分からないだろう?
   
フリップは問題ないだろうが、ベルテが心配だ。
 
ただ、この病。感染力は極めて低い上に、俺は毎日ベルテのことを泉に祈って未来を案じていた。だけど、泉はベルテもフリップの姿さえこの一週間余り映し出すことはなかった。
  
大丈夫だろう。
 
俺は信じている。
  
家族を思っての行動だが、こんな形になってすまないと思っている。それに数は少ないとはいえ、この土地に他に住んでいるポケモンに病が移ったら一大事だ。
 
俺はそこまでちゃんと考えて、こうして行動を取った。
   
水臭いと思うかもしれない。その気持は痛いほど分かる。でも、俺にはこうするぐらいしか方法はなかったと最終的に思って行動に移そうと思った。
  
これを読んでいる頃には、俺はもうお前たちが知らない土地を目指して、敢えてさまよっているとだけ伝えておくに留めておく。
  
悪い。本当に悪い。
  
ベルテは気付いているんだろ。この病気の事じゃない方をだが。
   
今まで知った上で俺を愛してくれて、本当にありがとう。
  
フリップも、こんな過疎地で同年代の子もロクにいないところで、元気に愛くるしく育ってくれて、誇りに思ってる。
  
ありがとう。二人とも愛している。
  
十字架は俺だけが背負うから。罪をあの世で咎められても、俺は絶対に口には出さない。
 
毒炎で神をも焼き殺す覚悟さえある。分かってくれ。
  
……。
 
一介のヘルガー如きが、神様なんかに勝てるかって? 俺は喧嘩無敗の牡だからな! 頑張るよ。あ……ベルテには勝った事なかったや。スマン。
 
……。
  
最後になる。
 
正直最近、前肢がここにきてもう既に麻痺しはじめているんだ。
 
多分、どこかでひっそりとくたばるつもりだったが、そうはいかないかもな。道中力尽きて、そこらの得体の知れない、ヤミカラスかなんかにつつかれて弄ばれた後に、食われちまうもかもな。
 
はは。
 
ゴメンな、二人とも。
  
こんなパパでゴメン。そして許してくれとも言わない。その代わり――
   
  
    
二人で仲良く過ごしてくれな?
  
約束。
    
いつか、また会えるなら――    
  
フリップ、元気でな。
  
ベルテ、お前は元気過ぎるからフリップに少し分けてやるか、それか早く出逢いがあったらいい牡が見つかるといいな。出来ればすぐにでもくっつくといい。
  
二人とも、引きずるなよ? 運命には俺達ポケモンは逆らえない摂理なんだから。
  
……。
  
長く、なっちまったかな……。
  
じゃあ、本当にこれで。
  
  
またな――――
   
 
リユンより、愛する二人へ。

    ◇

 元々手紙の一部が湿っていたのか、私が涙を零したからか分からない。手紙は気付いたらくしゃくしゃになっていた。
 ただ、永遠に愛する人が去ってしまった事だけは、真っ白になった頭の中でも理解するのは何とか可能だった。

 もっと泣きたい。泣きたい。泣きたい。泣きたい。泣きたい。泣きたい。泣きたい。泣きたい。泣きたい。でも、泣けない。
 矛盾。

 ただ呆然と、時間という存在すら忘れ去り、無色の空間に沈黙した亡骸の如く、その場にただただ立ち尽くしていた。
 ただそれだけが、精一杯の私だった。
「んー。! あら、フリップ。今日はやけに早いじゃない? 何か、あった――」
 私は不意に声がした母の声に導かれるように、しがみついて泣きじゃくる事しかできなかった。
 童心に帰った感じがした。母の温もりを、久しぶりに感じた気がした……。でも、この悲しみは止められないだろう。
「ちょ、どうしたのよ一体? 何かあったの? ……そういえばリユンはどこ行ったのかしら、こんな朝早くに。何なのよもう。リユンがもし、私の愛しのフリップを泣かせたとしたら、ただじゃおかないんだから! …………何、この手紙」
 母はしばらく黙って手紙を読むと、そのまま父が昔拾ってきた小さな卓上に手紙を置き直して、しかし涙を流す事もなく、その場に私を抱き抱えながらに座り込み、沈黙のまま何かをぼそぼそと呟いた。
「なんかね、予感はしてた。ただの宛のない悪い予感だし、それに表情や言葉に私から出すのもどうかと思ってた。……いざいなくなると、悲しいというか虚しいというか。まぁ人生って何が起こるか分からないもんだよね。ね、フリップ――」
「それがいなくなった愛する人へ捧ぐ言葉なの!? そんなものだったの、ママのパパへの想いって! 私は……私だって、リユンを…… !」
 母は私の言葉を遮るように、その豊潤な唇で、私の口をそっと塞いだ。
 一瞬母に何をされたか分からなかったが、徐々に真っ白だった頭の中が、次第に整理されていって冷静に今の状況を……把握できる訳がなかった。
「ん……んぅ」
 離そうと試みたが、母は私の進化系に当たるポケモンで、炎で抵抗するにも貰い火の特性で吸収される。
 力で抵抗しようにも、一回り以上大きな体躯をしている母に、私が足掻こうとも、それは意味のないものだとすぐ悟った。
 母は元々体温が熱い。次第にその体の熱を更に増し、それと共に塞がれていた唇だけでなく、舌までも絡め取られ、もはや身動きが取れない状況だった。
 ――私達って親子で、しかも同姓同士だよね……。何が何だか分からなくなってきちゃった。
「……フリップがリユンと交えてるのには薄々気付いていた。私も白痴*3じゃないんだから。もちろんリユンがしゃべるわけがないさ。それは娘を犯している後ろめたさもあっただろうし、何より、」
 ――ママ、気付いてたんだ。なのに今まで黙ってて……。ゴメン、ゴメンね。
「私がフリップを溺愛してることは知ってたからね。“そういう意味”でも。けど最近、私はフリップに避けられてる気がしていたから……だから構ってやれなかったし、交えてるだろうとほぼ確信できた日には、わざわざ帰りを遅くした時もあったくらいさ。……本当だよ?」
 母は咳を切ったようにしゃべり出し、それは到底嘘を付いている者の瞳をしていなかったし、動揺は一切声に現れてもいなかった。
 どちらかと言えば、私が色んな意味で動揺をしていたのだけど。
 閉ざされた唇は、封を切ったように開けられた。
 だけど母は急にどうしてしまったんだろう。私をそういう意味での溺愛って、結局どういったものなんだろう?
 それよりも母の熱につられてか、私の体も何だか熱い。
 ……。
 この感覚は、まさか――
「ママ……何だか私、変。貰い火のせいかなぁ、熱いよぉカラダが」
「フリップ……ママと、交わってくれる?」
 ふっ、と私の後肢の間に滑り込まれた母の前肢()*4。その前肢が若干躊躇しながらも、徐々に徐々に私の秘部に近づいていって。
「一緒に楽になろ、フリップ……」
 その前肢がまず陰核を優しく摘み上げ、そして唇は私の下唇にそっと添えるだけ。
 未知の体験と、少しの快感が、私のカラダをぴくっと震え上がらせた。
 母はそれに気付いてか、否か。私のカラダを丁寧に、まるで精密機械を扱うかのように慎重に弄っていた。
「ぁ、はぁ……ママ、そこいいかも……」
 母は牝。だから牝の全てを知っていると言っても過言ではなかった。
 初めての前戯の相手だって言うのに、リユンより正直手馴れていた。それは相手が紛れもない自分と同性の牝性だから?
「はぁ、はぁ……くぅ……」
「我慢しないで。もっと、もっと喘いでもいいのよ、フリップ」
 前肢の動きが激しくなると、もう私には考える猶予がなくなっていって、押し殺そうとしていた声も、解放せざるを得なかった。
「あぁ! あぁん!! ママ、ママもっとぉ!!」
「いいわ……フリップ、私のフリップ……」
 体格の差がなければ私も前肢で母を気持ち良くさせる事ができたかもしれない。
 母の息はとても荒くなっていて、その吐息が太ももに当たる感触も中々に心地良かった。
 もっと、もっと欲しくなっていった。
 段々リユンの事が、頭から離れていくのが感じられ、今は母が私を満足させてくれる事に悦びさえ感じていた。
 母にして子、ここにあり――。
「ママ……は、ぁ。イク……イクよぉお!!」
「フリップ……可愛い」
 ――はぁ。あったかいよぉ。アソコがとろけて、頭の中真っ白で。もっと溺れたい、まだ……溺れていたいよ。
 
 少しの間放心状態が続いていた私は、脳裏の隅にあるリユンを、まだはっきりと思い出したくはなかった。
 丁度母が、私への体位を入れ替えて、前肢でまさぐって貰う事をお願いしてきたので、私は隅にあった感情を快楽で覆い隠して、母との繋がりを自らも求めた。
「フリップ、上手いのね……癖になったら、どうしようかしら」
「今更、でしょ、ママ……。エッチなんだからぁ……」
 ママの秘部は私のよりやっぱり気持ち大きくて、それに私のようにピンク色よりも、若干だけどくすんだ桃色をしていた。
 それでもリユンと何百、何千と重ねてきただろう営みを続けて来たにしては、綺麗なんだろうなーと子ども心に思った。
「ママの、結構綺麗だね」
「結構って何よ。んっ! ちょっと、急にソコ弄られる――と、あぁん!!」
 母の弱点は分かりやすく、花弁*5には余り反応しないで、陰核に凄い反応を体と声で示したので、とにかく見極めたからにはソコに狙いを定めて、ひたすら擦り上げた。
「や、そんな激しくぅ! ぁ、ぁ、ぁ……もう駄目ぇぇぇぇ!!」

 母は私ですら毎回……日にもよるし飛び散っても、そんなに量は雄のそれとは違ってないのに、母のはいわゆるリユンが吐き出してた精子に匹敵するぐらいの量の愛液を、所構わずな勢いでぶちまけた。
 私はまだ余韻と初めての特殊な興奮に浸っていたし、母は愛液の大量の放出で、早朝から私達はまた深い眠りへと誘われるのに、そう時間は掛からなかった。


 お互い、リユンの淫夢を見ながらも……きっと――


 ― 出会いと出逢い ―

 あれからリユンを母と二人で探したり、もちろん住処で待ったりした。
 でも宛も全くない中で、たった二人で探すのは限界があったし、少なくとも森に居ないだろう事は分かって、お互い言葉には出さずとも心のどこかで諦めがついていた。
 言葉に出せないのは、それが言霊に成り得る事を恐れることの裏返し?
 とにかく、あれから数カ月。私と母は、文字通りお互いをお互いで慰め合ったりしながら、寂しくも熟れゆく日々を過ごしていた――

 泉に、ある日二人で仲良く水を軽く浴びに行こうとしたところ、見慣れぬポケモンが泉の周りでぼーっと放心しているのに私と母は気付いた。
 放心してる大人だろう人は、連れ子なのか兄弟なのか、はたまた誘拐なのか。その人の進化前の形態であろうポケモンを連れていた。
 母が「あれは、どっちも牡だね。肝心の種族は分からないけど……」と私に囁く。
 見慣れぬポケモンがこの泉に惹かれて寄ってくる事は珍しく、ただあり得なくもない事だったけど、大抵の人はこんな過疎っている樹海に留まらず、水を飲むか浴びるかしてすぐに立ち去る。
 泉の未来予知について知っている訳でもなさそうだし、一体何を抱えたポケモン達なんだろうか。
 余り予測がつかないポケモンは、例の流行り病の件もあって、私はともかく母は沈んだ表情こそしていなかったが、その面持ちは深妙だった。
「私が行ってくるよ、ママ。ここにいたって何時まで経っても水、浴びれないしね。ママと違って私、綺麗好きなんだから。心配しないで、大丈夫」
 少々強がってみせたが、母はそれにすぐ気が付いて、もう少し様子を見た方が――
 といつになく慎重だったが、私は思い切ってその身知らぬポケモンに接触してみる事にした。
「こんにちは。さっきからずっとボーッとしてるみたいですけど、どうかしました? 道に迷ったなら教えましょうか」
「……」
 泉に顔を伏せたまま、聞こえているだろう返事に耳を傾けようとしないこのポケモンに、苛立や恐れなどといった感情より、何故かそこに哀愁を感じた。
 深い、悲しみ。
 きっと何か悪い事でも身に降り掛かって、ここに舞い込んできたのだろうか? ひょっとして、もう偶然自分の未来を見てしまって、それに愕然としてしまったとか。
 いやいや、偶然なんてそうそう重ならない。他所の土地の者には、この泉は未来を映しださないツンデレぶる、神秘の名に相応しくないひねくれ者みたいなところがあるし。
 気付くと母が私のすぐ後ろまで来ていて、母もこの人をほっとけない様子だったらしい。
 子どもの方のポケモンは、水を浴びる事に集中していた。
 何と言うか、正反対の
「あ……いや。近くの住民の方ですか? しかも同じ狐ポケモンか。これも何かの縁なんだろうか……でも何だか申し訳ない。何だか泣けてきてしまって……」
 強気そうな見た目に反して、何だか拍子抜けだった。
 でも、この近親感はどこから湧いてくるんだろう? 同じ狐ポケモンだから? いや、誰かの面影を感じさせるような――。
「泣けてくるって、一体どういう――」
「フリップ、こっちの方は私に任せて。……代わりにあの坊やを。誘拐とかそういうのじゃないのは何となくだけど分かるから。後は任せて」
 年代は母とこの人を比べて、近そうには感じた。
 同じ年頃でお互い――ってとこなんだろうか。それは分かる。分かる、けどこの子……。
「おい! お前も一緒に浴びないか? 炎ポケモンだからって容赦はしないぞ! この天下のゾロア、ロア様がなっ!」
 ――何を言ってるのこいつ、早くなんとかしないと。
 と思ったのも束の間、私はこの子の意外な素早さに翻弄されて、軽く水を浴びるつもりが、体中にその泉の水を浴びるハメとなった。
 というより、足は着くが無理矢理引っ張られるにも程があるって程に、強引に引きずり込まれたので、神秘の泉で危うく溺れて仏様になるところだったいう、洒落にならないお話。
「ちょっと! アンタ、何すんのよ!? もーびしょびしょじゃない。すぐ乾かせるけど、大変なんだよコレ?」
「同じ狐ポケモンでも、水ポケモンにだらしない方の狐ポケモンかお前。なっさけねー牝」
 生意気。度を越した程の生意気さ。他人に対してここまで憎い感情を持ったのは初めてかもしれない。
 よーく見てみると、私より若干小さな体つき。それに容姿はやっぱり似ているし、それに年代も意外に近そうだった。
 ――精神年齢はお話にならないけどねっ。このガキ。
 水を嫌がらないって事は同じ狐ポケモンでも炎タイプでないのは明らかだし。
 見るだけなら可愛いかもしれないけど、ちょっとだけど。
 これを手懐けるとなると、こちらは一切御免(こうむ)りたい。
 人見知りの気は私にはないクチだが、いかんせんこの子はどう見繕っても持て余すだろう。
「ロア君、だっけ? お姉さんをあんまり怒らせない方が身のためだよ? じゃないと――」
 私は、電光石火でこの子を泉の中の不利な状況とは云え――容赦しなかった。殺。
「え、もしかして本気で怒った……? ご、ごめ……アッー!!」
「代々受け継がれしこの秘奥義、くすぐりの舞を食らいなさいっ!」
「ふふ、ははは! ぅ! あ、ちょ、ちょっとタンマ! お願い、ちょっと……ぅ」
「ダメ。そう言ってまた逃げた後ふざけるんでしょ? 炎タイプを溺れさそうなんて言語同断。あっちの人みたいに大人しくしてないポケモンは、こうして――」
 突然。ロアの動きが止まった。まるでゼンマイ仕掛けの人形が、そのネジを時止めたように。
 ……。
 瞬間、小刻みにぶるぶるっと震わすロアの体。
 ……。
 慌ただしかった泉に、不穏な静寂が訪れる――。
「ちょ、アンタ急にどうしたのよ? 小刻みに震えて固まりだしちゃって……あ」
 精神年齢だけじゃなく、どうやら体の方もまだまだお子様だったらしい。
 ……あれだけ騒いでおいて、全く。
「うわーん!」
 しかも泣き虫ときたか。何だか同年代の子ってここまで幼いものなのと失望したくなった。
 取り敢えず泉がソレで染まると思われる為に、私は一足先に泣いてるガキを泉に置いて上がった。
「お漏らしなんて……サイテー」
 泉は何分かおきに、自動で浄化作用が働く高性能ツンデレ泉な為、仮にこの子程度の粗チン*6が漏らした小水*7は、泉にとっては大した事でもないんだろうと思われた。
 その輝きは、黄金色に一部染まる事もなかったようだし。
 私の体に一部既に付いてるかと思うと、いくら見た目だけが可愛気なガキとは言っても、ちょっと勘弁だったが。
 まぁでも、おしっこだったのか……。ふふ。
 え。何だろう、この感じ――?
「とうちゃーん! コイツが、コイツがオレをイジメてさぁ」
 そういえば、あっちの二人はどうなったんだろうか。
 見ると母は何故か顔を赤らめて恥じらう、他人には珍しい表情を見せていて、ロアの進化系だろうこの人も、なんだか満更じゃないような。
 それに母よりも一段顔を赤らめて照れ臭そうに頭に手をやって、そこに二人で向かい合いながらも、お互い目を伏せてうつ向いていた。
 どういうことなの。
「……ママ? どうかしたの?」
「えっ。あ、あぁ……や、この人と話してたら意外にイイ人だなーって思って」
 惚れたって事なのか、しかもお互い。
 ――リユンは、リユンは誰が想い続ければいいの? でも、これは私も忘れるきっかけになるんだろうか。泉がくれた、運命的な機会だったんだろうか。それなら、私も……。
「リユンの事だけはちゃんと話してよね。これ、条件だよママ。……二人がその気なら、私は歓迎するけど」
「あ……フリップ。ちょ、ちょっと何言って、」
 母が言葉ではそう表していたが、満更でもないのは一目瞭然だ。
 勘が鋭く、勝気で(おとこ)勝りなイメージが強い母の、稀に見せる恥らいの仕草だった。
 最近ちょっとご無沙汰してたけど、ギャップに母と同じく弱い私は、そこにちょっと疼いたかもしれなかった。いや、かなりかも。
「な、何よ。もぅフリップったら!」
「いえ、いきなり現われた私を受け入れようとして下さるなんて……できた娘さんだ。それに本当に良く似ている……」
「え?」

 母とこの人――シアンさんから話を聞くと、それは数カ月前に起こった、私達の身の上以上に悲しいストーリーが彼の口から語られ、それは私を深い悲しみと哀れみの感情に支配させるには充分だった。
 彼シアンには、半年程前のある日、この地とは全然違うニンゲン*8の介入も多いと云われる、遙か遠方の豊潤な土地に生まれ育ち、そしてロアを含む、二人の子どもと同種の妻に恵まれていた。
 種族の名はゾロアーク。彼も最近知ったことだが、まだこの地方ではその生態の解明が余り捗っていない、俗に云われる新種のポケモンであった。
 ――道理で正体が掴めなかった訳だ。納得。
 それにロアのゾロアも含め、ゾロアークはその姿を短時間と技量が左右しながらも自在に姿をメタモンのように、いやメタモンより更に高度に姿を変貌させる事のできる特異な特性を持っていたと聞いた。
 通り名は“化け狐ポケモン”だそうだ。
「試しに、私の様に仮にロコンみたいになれるの?」
「ん、あぁなれるよ。お望みとあらば」
 …………。
 想像以上だった。進化前のポケモンにも化けれるなんて。メタモンなんて目じゃない。私にそっくりだ。まるで“魔法の鏡”に映し出された様な程……。
 ただ、気になる部分が一つあった。
 それは――。
「見た目が私そっくりなロコンだから、こんな事しても大丈夫、だよね?」
 小さくなった彼の体の、私は後肢(あし)の間*9に目を配り、躊躇しつつもそーっと前肢を伸ばして、そのスリット*10の中身を確認した。
「な! フリップちゃん?!」
「フリップ?! 何やってるのよ……もぅ!」
「い、いや。変な意味じゃなくってその……ちょっとした好奇心で、えへへ」
 なるほど。メタモンより姿はクオリティが高いけど、肝心のソコは変化が全くないって事なのか。
 これは興味深いというか、何というか。リユンを忘れて貰ったら困るけど、母は間違いなくハマるだろう。
 でも母の相手はもうシアンさんで決まったようなものだし……残ったのは、もしや。
「とうちゃん……コイツになんて化けなくっていいって。変化の無駄骨だよ」
「うるさい。お漏らし野郎」
「なっ! 泉の中だったし、別にいいだろおねしょよりかは!!」
「……おねしょするの? うっわー」
「なんだよ、コイツ! とうちゃん! オレこんなのと一緒なの嫌だからね? 早く寝床探して、こんなしょぼい森、さっさと出ようぜ。だって――」
 しょぼい森というワードに、さすがに怒りの沸点が頂点に登り掛けたが、それは息子とは違った出来の良さそうなシオンさんが、手で咄嗟にロアの口を押さえ、その先はしゃべらせる事はなかった。
「申し訳ない……生意気な盛りでして。しつけはこれでもちゃんとしてあるんで、良かったら仲良くしてやってください。寝床は自分達で何とか、やっぱり改めて探してみますから」
「何言ってるのよ、シアン。ここまで色々見ず知らずの私に話しといて水臭い。私の家で良ければ全然構ないんだからね? ……ただ」
「? ……ただ?」
「部屋がね。親、子共に二人ずつ宛てがわれる形になるだろうから……言いたい事は分かるわよね? まだ拭い切れない想いがあるのはお互い様だけどさ……。一つ屋根の下で暮らす事になるなら正式にね、ってこと。誓いは泉で立てればそれで大丈夫な簡素なものだから。余り深く考えないで。そういう所だから、ここは」
 正式に……シアンさんと私は(ちぎり)*11を結ぶつもりなのか母は。
 でも数カ月そっちの気*12が母には完全にあったって訳じゃないのに、私だけで欲求を処理するのには、そう……私ですら辛かったのに、母なら余計に発散しきれてなかったんだろう。
 急な展開だけど、仕方ないのも分かるかも。
 悪い人じゃなさそうだし。……その手の事には疎いイメージがあるけど、でも子ども現にちゃんと作れてるしね。言えるなら、もっとまともな子を産んで欲しかったけど。
 って、この子と寝食を共にする事になるのか……うわ、最低。
 まぁしょうがないか。見た目“だけ”は可愛いし。慣れればなんとかなるでしょ。私のが歳上みたいだし、最低でも精神年齢は絶対に。
 でも母は、私が父と繋がってたのに気付きながら愛は充分にいつも注いでくれていたし、リユンの空けた穴だって、充分過ぎる程カラダを呈して埋めてくれていた。
 私からの行動じゃなかったけどそれは。感謝はしている。
 お互い様、だったんだろうけど。
 だけど――。
 そう、気になる事がやっぱり。
 
 一体何が、シアンさんの家族の身に起こったんだろう?
 
 そこにも親近感を感じると共に、その気配はなんだか重く感じた気がしたのは、果たして気のせいだったんだろうか――。

    ◇

 あの後、母とシアンさんの二人は泉で約半日間、契の誓いを交わす為、夜中まで帰って来れないとの事だった。
 確かに急ではあったけど、お似合いのカップルだと思うし、ロアの生意気ささえ何とかなれば、躾はこの子ちゃんとできているし……お漏らしを除いてだけど。
 だから、問題はないと思う。部屋がちょっと狭くなるけど、この子一人ぐらいなら大丈夫だし。
 性的な間違いも起こらないでしょ。……あのお二人は早くて既に泉の裏の木陰辺りでシてそうだけど。
 契を結ぶ際には、一応半日間泉で祈りを捧げ続けた後、日を置いてもいいのだけど、遅くとも一週間以内には泉からそう遠く離れた場所でない所で、性的な契を交わす必要がある。
 これも昔のこの土地のしきたりで、今は絶対という訳ではないのだけど。泉の未来予知に関わる儀式の一貫ではあるから、下手な未来を予測されないように、泉の見えざる守護神に確認させる為なんかも兼ねて、半強制的に交わっておく必要性はあるのだそうだ。
 私達の住処は、泉の近くに位置する場所なので、リユンと母が契った時は敢えて、この住処で互いの初穂摘み*13と破瓜*14を迎えたらしい。もちろん、愛があってこその行為だったと前に二人から聞いていたけど。
 まぁ私は破瓜の問題以外、当分関係のない事であるのは確かな事なんだけど。
 貞操も何もあったものじゃなかったから……。自分で言うのもなんだけど。
 そもそも同年代の子が近くに居ないのに、赤の他人となんて今この土地の現状から、どうやって――
 泉での今日の出来事は、奇跡に近い出逢いのようなものだし。
 余り考えると憂鬱になるから止めておこう。今は亡き、リユンにも釘を刺されていたし、ね。
「あ、コイツがいたか」
 あり得ない、こんなチビガキ。
 今もリユンが昔私の為に持ってきてくれた、長年愛用してた私お気に入りの藁を、勝手に占領して寝腐ってるし有り様だし。
 ただ、ロアが寝疲れるのも仕方のない事だった。
 ここまでの道中は、大変キツイものだったとこの子から聞かされたから……。
 他の家族の事も多少は予想できてたけど、聞いてて悲痛な気持ちになる内容だった。
 シアンさんじゃなく、この子から聞いたのは少し失敗だったと反省している。だから、今日だけは私の特等席でゆっくりいい夢が見られるといいな、と思う。
 
 ――シアンさんとこの子の身に起こった事。
 
 それは、無慈悲なニンゲン達による、身勝手な奪略と自己満足の破壊が生み出した、犠牲者達の中の一家族だった。
 ロアが言うには、シアンさんはその時ニンゲン達の暴走を食い止める為に住処の外に出ていたらしい。
 じゃあ、ロアはと言うと。ビビって「とうちゃんの後を追ってくる」と姉と母を住処に残して、一人秘密基地か何だかに隠れていたらしい。
 それが吉となったか仇となったか……。ロアが生きている事は、家族全員の本望だったと思う。現にこうして生き残って今ここにこうしているし。
 ただ、ロアはこの事実を父親のシアンさんを含め、未だ誰一人打ち明けてはいなかったし、夜な夜な悪夢に唸されて、それで歳もある程度いっている筈なのに、粗相*15をしてしまう理由となっていたみたいだった。
 トラウマ、と俗に呼ばれるものなのだろうか――。私は話を聞いて、この子が卑怯だとか、罪を背負うべきだとかいった感情は、正直特に湧き上がらなかった。
 だって。死んだらそこでその人の刻んだ足跡の痕は、そこで終いえてしまうんだから……。
 歴史に刻まれる事だってある。相手の記憶にも残る。でもそれは死んだ方のエゴにしか思えない。
 例えばリユンだってそう。私にウイルスが移らない事がほとんど確信できていたのなら、何で私にだけ夜中に一声掛けたりとかしなかったの? 私が泣きわめいて暴れるとでも思った?
 いや、あの時の私ならきっとそうしたかもしれない……。
 考えると憂鬱になる。ここが母との決定的な違いかも。
 母は大胆だけどいい意味で切り替えが得意で、過去を引きずっていたとしてもそれを何かに変換させる力を持ってる。娘の私にはないから、それが大人って事なんだろうか?
 強く、なりたい。
 ロアもそう思いながら、心の隅で自分と闘い続けているんだろうね。あの日の記憶と懺悔から逃れる為に――。
 ロアがほとぼりが冷めた頃を見計らって住処に帰って来た時、妹と母の無残な姿が遺されていたという。そしてそこには、膝まづいて項垂れてい泣き崩れていた、シアンさんが居た――と。
 
 
 人の死って、なんでこんなに悲しいんだろう。
   
 恋は心を踊らせて、愛は体を歓喜させると言うのに。
 
  


 ― 禁断の唇と料理を ―

 いつの間に寝てしまったんだろうか。あの二人はもう帰ってきてるようだけど。
 ……。
 夜が開けて鳥ポケモンの鳴き声で朝を皆よりいち早く朝を迎えた私は、ふと後肢や腰の辺りから伝わってくる不快感に苛まれていた。
「これって……まさか!」
 ロアが粗相をした。おねしょだ。
 雄が吐き出す種とは違った、また独特の臭いと、より液体に近いそれ。しかも量は精子の比じゃない。
「ロアー!! このチビガキ、起きろ!!」
 つんざくような声で私は部屋で怒鳴り、これできっと母と新しい父となったシアンさんも起きたな、と思いながらロアの対する怒りは収まる事はなかった。
「みゅう? 何……朝っぱらから、うっさいよ姉ちゃん……」
 私を昨日まで、お前呼ばわりしてたコイツが、急に姉ちゃん呼ばわり。
 絶対に、寝ぼけている。
 容赦はしない。
「みゅう? じゃないよバカ! アンタ私の大事な藁を、初日そうそう濡らしやがって! もういい加減怒ったから。覚悟しな」
 滅多に本気で怒る事がなかった私は、爆発すると危ないタイプなのかもしれない。
 そう思いながらも、口には火炎放射を放つ準備を整え、次にまだ寝ぼけていたら、顔面をかする程度にぶっぱなしてやろうと思った。
「ん。あ……。そ、その、」
「言い訳無用。何か言うことはある?」
 怪しい光を放たんばかりの鋭い眼光がロアの眼を突き刺す。
 泣くか言い訳をしたら燃やす。but、せめて十秒以内に謝れば、私も半分くらいは大人だし、ここは引いてあげてもいいかな――。
 コイツには情けは無用、か?
「ゴメンなさい……。ね、姉ちゃん……」
 寝ぼけてただけかと思った。
 一応分かりやすく、昨日の夜に自分達の親同士の契について簡潔にまとめて説明はしてあったし、お前以外だったらどう呼んでも構わない趣旨を伝えていたおいたけど、いやこれはさすがにこの反応は予想外だったかもしれない。
 演技じゃないよね。
 口元の炎をすごすごと私は引っ込め、ただ私の怒りは完全に収まってなかったので、この子の面子*16を保つ為にも、一旦部屋の隅に藁を隠しておいて、両親の隙を見て泉にでも乾かしに行ってあげようと考えてあげていた。
 それに、ロアは素直だとその容姿もあってか、想像以上に愛くるしいオーラを纏っている事に気付かされた私は、少し胸の鼓動が何故だか早くなった――気がした。
「少し唸されてたみたいだったし、これから気を付ければいいから。……後で一緒にママとお父さんには内緒で、乾かしに行こうか」
「……ありがと。ねぇ、姉ちゃん?」
「ん?」
 気まずいのか、それにしても頬を赤らめて上目遣いで私を見上げる仕草は、何の意図があるんだろうと探りたくなってしまったけど。
 何なのだろう。
「少し、抱きついてもいい……? ダメ?」
 この子に変な気を起こすつもりも、そういう発達をまだしてないだろうという事は分かっていた。
 まぁ本人次第では、充分放精の虜になるぐらいの歳にはなっていると、個人的に思っていたけど。
 濡れた藁をどかして、地面に座った私の体に、ロアを引き寄せる。
「いっつも素直でいれれば可愛いのにね。もったいないなぁ……」
 ふっと、本音が出てしまった。絶対にこの子の性格だと、ツン*17ぶるだろうなとは思ったんだけど……。
「そ、そうかな? へへ、新しい姉ちゃんのこと、オレ好きだな。とうちゃんたちの前では甘えないかもだけど、二人だけの時はたまにこうしてもいい?」
「えっ」
 思わず口に出してしまった驚きの感嘆詞。でも、これは悪い意味で口に出したものではない。
 ――きゅん。
 と、胸が疼いた。この子の本質を目の当たりにして、何かが弾けた。
 可愛い。
 でも、それだけじゃない――。何なんだろう、この新しく芽生え始めたような気持ちは?
「……嫌だった? ご、ゴメンいきなりこんなこと言って」
「あ、や、うん。いや、嫌なんかじゃないよ。もっと甘えてもいいぐらいだよ。……仲良くしようね、ロア」
「うん、姉ちゃん――」
 
 カビゴンも顔負けの早さで、眠りに落ちた天使のような子。
 まだ眠かったんだろうか? 幸いにも両親達は起きなかったみたいなので、このままどうせ身動きも取れないし、寝かせておいてあげようか。
 私も実はまだ眠かったんだよね……。体勢はちょっとキツイけど、可愛いから許してあげよう。

 お休み、天使くん。

 ……。

 ……。

 天使を始めとして様々な前言を撤回させていただいたのは、それから一時間後の事だった。
 藁ならず私の体をも小水で染め上げた怒りと罪と罰によって、藁を密かに乾かす配慮は撤回し、母とお父さんに優しくチクってあげた。

    ◇

 結局母とお父さんの時間を作ってあげる為と、お父さんとロアの口喧嘩で、私が一役買って、朝食を取った後ロアを住処から連れ出して、取り敢えず藁を乾かしに行く事となった。
 私は井戸の水を浴びて取り敢えず吉としたけど、当然乾ききっていなかった藁はロアに持たせ、私達は泉へと向かって行った。
「井戸水でちょっと洗っといたけど、こっちの水でもまた洗っといた方がいいよ。私も泉の水浴びときたいしね」
「ゴメン、姉ちゃん……」
「もういいよ、過ぎた事だし。ただ、お父さんの前でああいった態度を取るのは、やっぱり……」
 言い掛けてやめた。分かっていた事だった。お父さんを見ると思い出してしまうんだろう、惨劇を。汚れた自分の記憶を。
 だから所構わず虚勢を張らざるを得ない。分からなくもない。……いいお父さんなんだけどね、シアンさん。血の繋がってない私から見ても。
 性的魅力とかそういう感情は、まだ湧かないけど。
 と言うより、母ともこれで慰め合う必要もなくなるだろうし、このままのがいい事なんだと思う。
 実際、父としての魅力はシアンさんには感じているけど、リユンと比較するとどうとかいう考えに至る次元にはいない。それは確かだ。
 でも――
 この胸の高鳴りは、一体何?
 リユンへの最初の頃の感情とも似ているんだろうけど何か違う。切なさのない、ただ甘酸っぱいときめきみたいな純粋な何か――。
 ときめき?
 どういうことなの……。意味が分からない。
 第一、誰に対して?
「あぁ、もぅ!」
 泉にざぶんと飛び込み、頭まで一気に浸かって、考えると憂鬱になるかもよ症候群を吹き飛ばそうと、必死に水中でもがいていた。
 頭を揺らしたら、耳の中に水が入った。……あー面倒臭い。
「ちょ、姉ちゃん?!」
 藁を洗っているかと思っていたロアが、急に私の元に飛び込んできて、そして水中で見事に交差し絡まった。
 私は思わず飛び込んできたロアを反射的に抱きかかえてしまい、その重みによってさらに底へと沈んでいったので、泳ぎなど大の苦手である私は、神秘の泉で本格的に命を落とすかと軽く薄れた意識の中で思わざるを得なかった事態が起きた。
「……はぁはぁ。ちょ、ちょっと! 溺死させたいの?! もう、何がしたいんだか――。!」
 浮き上がった私に待ち受けていたのは、泉の水で濡れて潤さを増したであろう、柔らかいロアの小さな唇だった。
 浮き上がったばかりの私を気遣ってるのか、初めてだから無意識なのか、舌を入れたりとかディープなものではなく、バードキス*18程度の軽いタッチのキス。
 こんな経験は、思えば私も初めてだったかもしれない――。バードキスなんて、絵本の中だけの話だと思っていた。
 この子は幼いのか、それともひたすらに無垢、もしくは純粋なのか。
 ただ分かった事は、このキスがとても心地良かった事。
 牡に似合わないとも言えるまでの、甘美で豊潤なロアの唇は、私の疑問を一瞬で解決させた。

 ――私はこの子に恋をしてしまっている。

 お互い水に濡れている為か、唇が何度か触れ合った時に、ピチャピチャと卑猥な音がしたのも、私を余計にそそったのかもしれない。
 ロアは数回重ねてきただけで、頬をうっすらと赤らめながら、でも申し訳なさそうに泉に向かってうつ向いてしまったけど、私はそのうつ向いたロアの顔を下からすくい上げる形で、“鳥”のお返しに今度は“料理”をお返ししてあげた。
「はぁ、はぁ。姉ちゃん、オレ……オレ……」
 ロアが何か言いたそうにしてたが、多分急な衝動へ駆られての行動に対しての贖罪か何かなんだろう。
 ……。
 食材を、今は楽しまないと――
「あぁロア……ロアぁ……」
 泉に首の付け根より下が沈んでいたから誤魔化せたていたが、私の果実は欲しがって欲しがって仕方がなかったようだった。
 リユンがいなくなってから、数カ月以上雄はご無沙汰だったし、母とも前回からは間隔が空いていて……それに母とはもうそういった繋がりは今後ないだろう事を私は悟っていたから、正直意識的にも無意識の内にも、雄以前の問題でこういった性的な他者との行為に飢えていたんだと思う。
 胸の疼きもあるから、尚更だった。
 ――もう、止まらない。仕掛けたのは無意識だろうと、ロアからなんだからね……。
「くっ……ふっ……」
 ロアの口内を徐々に犯しながら、空いている片方の前肢で私は自身の秘所をこれでもか、これでもかとまさぐった。
「あんっ!」
 水の中で闇雲にまさぐっていた為、思わず陰核を強く擦ってしまい、嬌声が辺りに漏れる。
 未知の感覚に夢中になっていただろうロアにも、確実に伝わっただろう。
「んむ……ん、姉ちゃん? ゴメン、痛かった?! オレ……急にこんな。どうしちゃったんだろ……。 フリップは姉ちゃんで、もう赤の他人じゃないのに、前の姉ちゃんとは何かが違うんだ。キスってこんなに気持ちイイものなんて知らなかったし……。でもオレこれ以上は、今の姉ちゃんを―― !?」
「考えなくていいよ、もう。そういう時期だったんだよ、お互い……。分からなくっても、お姉ちゃんが教えてあげるから」
「う、うん……。ぁ! 姉ちゃん、そこは……」
 私と同じく、水中の中で脈動していたロアの雄。
 ただのへにゃちんが、水中の中でその起立したモノに改めて触れてみると、意外にも大きい事が分かった。
 期待なのか、胸よりも今は下半身がお互い疼いて仕方がなかった事実。
 そっと、スリットからはみ出て水中で起立しているロアのモノを、手探りで扱き上げていった――。
「姉ちゃん?! あ、それは……そこ、は。くぅ……ぁぁん!」
 水中からでも分かる、激しい雄の脈動。ここまで起立しているという事は小用以外にも利用できる可能性は充分にある。
 ……。
 この子の初穂は、私が摘みたい――
「ロア、おしっこ以外に、何かここから出したことってある……?」
「ない、よ……他に、なにが――? んんっ!」
 初穂の前に精通もまだだったのか。それも予想通りだし、そうじゃないともう嫌だ。
 欲しいよ、見たいよ、ロアの出したの。
「……何か出そう、ロア? あ」
 この中だと、ロアの場合“どっちが出たか”分からなくなる。
 それに放精の時の脈動で大体想像できるけど、想像じゃなくてこの目で……それに、私の秘部もロアにさらけ出したい。
 ――泉からまず、上がらなくっちゃ。
「ロア、ゴメン。ちょっと泉から出よ」
「……? う、うん」
 荒い息ながら、きょとんと首を傾げ疑問に感じているロアを余所目に、私はもうスイッチが完全にONに切り替わっていた。
「ロア。こっち、こっち」
「?」
 泉の裏の茂みに覆われた恰好の木陰で、私はよくリユン、それに少し前までは母ともカラダを重ねていた。
 まずはロアと共に水に濡れた体を、素早く震わせて雑にだがさっと乾かす。
 ……。
 地面を見ると見慣れた金色の体毛の一部と、最近見慣れな始めた灰色の体毛の一部が辺りに落ちている事に気付いた。
 ――やっぱりヤッたのか。
 それにこういった後始末に関しては、母は敏感だった筈なのに……夜だったし、それに余りにも溜まっていてさぞかし激しかったんだろう事は想像できるけども。
 朝の母の表情も、やけにすっきりしていた感じだったし、お父さんが中々目を最初合わさなかったのも、これで辻褄が合う。
 やっぱりね。
 でもこれでリユンへの良心はちょっと傷つくだろうけど、両親共にお互い、それに私も肩の荷が降りた感じがしたと思った。
「さて、と。ロア……」
「……姉ちゃん、怒ってる? ゴメンね、本当にさっきは急にあんな―― !」
「もう謝らなくっていいから。私が、ロアに初めての牝の味を教えてあげる……」
「それって、どういう―― !!」
 泉から出てしばらく経って萎えてしまったロアの逸物を、スリットを撫で中からおびき出し、そして私はそれを――
「姉ちゃん!? そ、そんなとこ舐めたら……き、汚いよ?!」
「……」
 私は敢えて聞こえなかったフリをして、有無を言わさずその逸物を舐め回した。
 秘部を弄られてる訳でもないのに、久しぶりの他者と交わる愉しみと悦びが、勝手に愛液ですぐに満たされていくには、そう時間は掛かりそうもなかった。
 どんどんと、溢れ出てくる戯れた蜜達。
「ぁあ……おいしい、おいしいよロア……」
 次第に逸物がまたいきり立ち、改めて目前で見つめると、それはやっぱり立派なものだった。
「生意気で可愛い顔して初めてで、こんなの隠し持ってただなんて。ずるいよ、ロア」
「ぁ……はぁ……」
 ロアは完全に私に咥えられて舐めずり回された、逸物から来る快楽の虜になっていて、精通が訪れるのも時間の問題のように思えた。
「ね、姉ちゃん……な、なんか変。おしっこじゃない、なにか、違うの、が……あぁ、んぅ!」
 もう少し、後もう少しでロアが、私の上の口の中にその初めての精をたくさん――!
「んっ! ふあぁぁ!! ヤバ、い。ヤバいよ姉ちゃん! おしっこみたいの出そう! は、早く、離、れ――――あぁぁぁぁああ!!」

 ……。

 …………。

 ――――すごい。
 すごい濃くて、色は真っ白で。
 でも人と時によってそれぞれ変わる、特有の臭いは、この子の吐き出した雄種にも逸物にもなくって。とにかく最高で。
 可愛い。
 ――――もっと、もっともっと!
 
「んむ、んぅ……」
 更に追い打ちを掛けるようにまだ出尽くさないロアの雄種に拍車を掛けるように、逸物を吸い上げる。
「あっ……あぁぁ……うっ!」
 最後にドクっと波打った逸物が喉に引っかかり、むせた私の口内からは、この子が出したとは思えない程の大量の精が地面に溢れ落ちた。
「けほっ、ごほっ……」
「ね、姉ちゃんだいじょうぶ? ……こ、これ、なんなの……?」
 私は無垢な弟に、私は牡牝(だんじょ)のイロハを簡潔に教え込むと同時に、精通を目の当たりにした快感にしばらく酔いしれていた。
 これは多分、母の血なんだろう。攻めるのが実は好きだったなんて……思ってもみなかった。
 雄種や逸物を含むのに今まで抵抗を特に感じた事はなかったけど、この子のそれはとてもシやすかったし、また今までで一番悦びを実感できたかもしれない。
 まだここまでは、余興に過ぎないけど――
「これが精子……。前の姉ちゃんからちらっと聞いたことはあったけど、まさか自分にも出せるなんて……」
「一度味わったら、これから虜になるの100%だからね。……でも悪い事じゃないから、どんどん自分で扱いてもいいんだよ? それに今はここにお姉ちゃんがいるし、ね」
「……姉ちゃんのソコに挿れたら、さぞかし気持ちいんだろうなぁ」
「ふふ。もう虜になっちゃてるか。キスして来たのもそっちからだったしね」
「だ、だって姉ちゃんが!」
「姉ちゃんが、何……?」
「すごい優しくて、可愛くて、とにかく何か抑えられなかったから! だから――」
「もう……我慢しなくていいんだよ。一緒になろ。ね」
「……ねぇ」
「ん? 私の中に早く挿れてみたい? ふふ」
「姉ちゃん……」
 
 しばらく沈黙が続いた後、私から聞き返そうとした直前に、弟から思い掛けない提案をされた。
「呼び捨てで、これから呼んでもいい? ……フリップ、って呼びたいな。可愛い、し―― !!」
 
 もう抑えられなかった。なんて可愛いんだろう、なんて愛しいんだろう!
 嗚呼、もう駄目。
 もう、すぐにでも貴方の雄を私のココにねじ込んで…………。

 私は飛びつくように、ロアを草むらの上に押し倒してから、それから優しいくちづけを一度した後、その口を貪るように唇と舌で弄んだ。
 下の唇が同時にピクピクと、ロアの雄を「まだかまだか」と待ち望んでいるかのようにひくついている。
「はぁ、ロア……ロアぁ」
「フ、フリップ……んぅ」
 初めてにしては上手いキスは、確かに気持ちがいい。でももうそれだけじゃ足りない。
「……挿れる? ロア……」
「う、うん……。でも、その前にオレ、フリップの、」
 私の何だろうと思った。考えている間にロアは行動に移し、それは私が教えた訳でもなく、まさに本能や好奇心からくる行為だと思いながら、アリだと思った。
 主導権を握ってたつもりが、お預けだなんて……でも、そこがまたいいかも。
「……こうすると、フリップのソコがよく見えるねやっぱり」
「ん。でもあんまりジロジロ見ないで……恥ずかしいよぉ」 
 ロアは自らシックスナインの体勢を取り、私の秘部をじっくり見てから挿れてみたいと言った。
「わ、こうなってるんだ牝は……。すごい。綺麗なピンク色してて、なんかびらびらがあって、ちっちゃい豆みたいのがあったり、それに、」
「……恥ずかしいから、あんまり声には出さないでよもぅ」
 あんまりにもじっくり観察されるものだから、私は先手を取って、ロアの逸物を後で挿入しやすいように舐めてまた起立させておこうと思った。
 だけど、もう充分にロアのそこは触れてもないのに、はちきれんばかりの強いピンク色に赤みを帯びた肉棒と化してはいたが。
「ロアの、まだまだ元気だね。そんなにじっくり見てると挿れられる前にまた絞り取っちゃ―― あぁ!!」
 ちょっとした脅しを掛けて本番に持ち込もうとしたけど、ロアのが一枚上手だったのかはたまた無意識なのか。
 私が、本当は早く挿れて欲しいけど、じっくりイかない程度に舐め上げてあげようと思ったのに、ロアが舐めるから。
「む、独特な臭いかも……でも味は甘いんだね、フリップ」
「特性、変化じゃなくて、言葉攻めにした、ら……んぅぅ! はぁぁ」
 牡はやっぱりこういった類いに関しては元気だ。
 特にロアは目覚醒したばっかりだから、これはうかうかしてられないかも。
 主導権を、下手したら握られちゃう。そうなる前に前肢と口で封印を。
「あっ! フリッ、プ……急にずるいよぉ」
「負けて、られないもん。お姉さんだし、一応……! あっ、そこはダメぇぇ!」
 陰核の重要性に気付いたロアが私に引導を渡すが如く、丹念に陰核を優しく舐め上げる。
「ん……慣れるとこっちも、クセに、なりそ」
「あ……ぁあ……ダメぇぇぇぇええ!!」
 観察が主で、特に陰核は集中的に攻められる事はないと思って油断してた――。
 愛液が勢い良く、ロアの顔に飛び散ってるのがロアの後肢と急所で隠れていても何となく分かった。
「わ! すっご、これっておしっこ?! ……じゃないのかぁ。うわぁ」
「……ダメって言ったのにぃ。うわぁって何よ、うわぁって」
「うわぁ、すごいなーって意味だよ! 本当だよ!?」
「……本当かなぁ」
「ほ、本当だって! すっごい綺麗だったし、それに……すごい可愛いよ。やっぱり姉ちゃ――フリップは」
 えへへ、と言いながら愛液で濡れたロアのほっぺにキスをして、それを舌で丁寧に拭い取ってあげた。
「自分でいざ舐めてみると、甘いとは思えないなぁ。なんてっ」
「……好きだよ、フリップ」
「ん。私もだよ、ロア……」
 素敵なムードだなぁと思った。父と母としか経験がなかった自分にとって、これが本当の処女を迎える前の牝のようにさえ感じた。
 この心地がいつまでも続いて欲しかった。
 後は。
「ロアのこれ、満足させてあげないとね。ふふ、本番だから覚悟しなよ?」
「ちょっと緊張するけど……でもフリップのなら、さぞかし気持ちいいんだろうね。よ、よろしくフリップ」
「こちらこそ、ロア」
「……フリップ」
 牡はエロスのノウハウが本能に組み込まれているんだろうか? 本来四足ポケモンは牝の後方から突き上げる形で基本的に交合をする筈なのに、ロアは自然にかつ優しく私を仰向けに寝転がして後肢を開脚させた後、ゆっくりと私の花芯目掛けて――とまではさすがにいかなかったけど、寝転がしてからはそこは牡。
 勢い良く、私の花芯目掛けてその既にいきり立った逸物を突き挿れて来た。
 が、初めてだったためか挿入は中々上手くいかなかったのが現実。
 そこがまた、可愛くもあったんだけど。
「ご、ゴメン! ……ここ、で合ってる?」
「んっ、そこお尻! ……待ってて、今合わせてあげるから」
「ゴメンね、手間かけて……」
 後肢をずらしてポイントを上手く逸物の先に合わせ、私の合図と共にロアが腰を深く突き落とし、同時に私は腰を深く突き上げた。
「はぁ……あぁぁぁ!」
「んっ! 気持いい、気持いいよ……フリップぅぅ!」
「ロア! あぁロア!!」
「中が熱くて、とろけちゃいそう……はぁ、はぁ」
「いいよ、ロアぁ。もっと、もっと来て!」
 肉壁の収縮はある程度コントロールできたが、初穂を摘まれる側のロアに余りプレッシャーを掛けて、早々に出されたら困ったので、そこは慎重かつ大胆に愉しんだ。
 甘美な悦楽が、下半身から全身を伝っていき、ロアの初めての秘部の快感に必死に耐えようとしている表情や、すぐ出すまいと焦りの混じったちょっとした仕草なんかも可愛いかった。
 それに――。
 この子はちゃんと初めてで、逸物*19を挿れる際暴走仕掛けたのに、ちゃんと理性をコントロールして、なおかつキスが上手い。色んな意味で。
 基本は大事だと思う。挿れるだけの牡なんて、そりゃ嫌いって訳じゃないけど、少なくとも淫乱の気があった母やリユンよりは愛を確かに感じられる交合をしてる思う。
 だから今、単に気持ち良いだけじゃなくって、すごい幸福感が身を包んでいるのが分かる。
 だから――。
 今ここで引き返せる内に、ロアに伝えておくべきなのかも。私達の、いや私の知られざる裏の過去を――

「ねぇ、ロア……」
「……ん。どうしたの? 痛かった?」
「そのままで聞いて。私ね、ロアに隠してた事があったの。……聞いてて不快になったら、すぐ抜いていいからね?」
「う、うん」
 話している途中でロアの逸物が萎えてしまわないように、私は肉壁や腰の微弱な振動で、保たせながら、少し重い話を切り出した。
 完全に手遅れになる前に――。
「私はリユン。前のパパが好きだった……。今はもう訳あってこの世からいなくなっちゃったみたいだけど、それは消せない過去。それに、」
 交合して最中に泣いてしまったのは初めてだった。これじゃロアを満足させることができな――
「よいしょ。……続けてよ、フリップ」
 ロアは私よりも小さな体で、座位で私を抱える体勢に切り替え、挿入を続けながら話を聞いていた。
 彼は私を、まだ離さなかった。
「私は、父だったリユンを。それに父を亡くしてからは、お互いの寂しさから母とも一時期……」
「えっ、ベルテさんと!?」
 それは誰でも驚くだろう。父と娘ならまだしも、母と娘で交わってた経験があっただなんて……
「だからね。私は汚れてるんだよ? しかも今はロアのお姉さんもやってる。……こんなお姉ちゃんで、これからずっと満足させることができるかどうかなんて、」
「……フリップは、フリップはオレの事どう思った? 生意気で、それでいて臆病者で卑怯者だとあの時思った? 違うでしょ? 優しいからだもん、可愛いだけじゃなくって。それにもう理屈じゃない……確かに気持ちいい事にはハマるかも。だけどそれとこれとは別問題だし、それにオレは、オレはフリップの気持を大切にしたいな。だから、さ――」
 だから、なんなんだろ。まだ、離さないでいてくれるの?
「体で示してみて。オレも頑張るからさ――。好きだよ、フリップ」
 どうして、なんでそんな簡単に。でも体だけならとうに黙って突き続けられただろうし、私は――いや、私なんかより、よっぽどこの子の方がしっかりしてて、それに相手を第一に考えてくれる。
 ――バカだなぁお互い。バカなのは、私の方かな。
 私は繋がりながら涙を流すと、それをロアが優しく舐めとってくれて、私にくちづけを一度交わした後、再度私を地面に仰向けに寝かせて、今度は自力で私の中に入って来た。
「辛いならやめるよ? でも、一緒になりたいんだ! 口だけじゃ伝わりきらないよ……。だからオレの想い、受け取ってくれる? オレなんかでよければ、オレ、頑張るから――」
 頑張らなきゃいけないのは私の方なのに――。
 大事な所で悪い癖が出ちゃって、内心ロアだって少しは戸惑っただろうに。それを怪訝そうにも一切しないで、ただ繋がったままで私を見てくれていて。
 嗚呼、リユン。私もういいよね? ママがシアンさんを好きになったように、私ももう、考えないで本当の恋に向きあってもいいよね? 許してくれるよね? リユン――。
「許してくれるよ、だから泣かないで? ……オレの方がよっぽどダメなんだしさ。フリップへの気持はこの程度じゃ変わらないって事、自分なりに証明してみせるから……」
 ロアは突き動かしたいだろう逸物を一切動かさず、私の唇を優しく何度も塞ぐ事だけに集中して、耳元で「好きだよ、好きだよ」と連呼していた。
 ロアの逸物が少し中で萎えてきたのを感じて、私は意を決した。
「ロア。ありがと! ……大好きだよっ」
「フリップ……。じゃあ、行くよっ」
「うん、もう大丈夫。我慢してた分、たくさん突いていいからね……」
 私は膣にありったけの力を込め肉壁を上手く締めると、一瞬苦しそうな表情をロアが浮かべたが、すぐにその感覚に慣れ、擦り合わされる逸物がどんどん膨らみを戻していくのが感じられ、また私も何も考えずにただロアだけを見つめてカラダを任せれば良かったから、その過程による快楽は一塩ではなかった。
「んっ、んっ」
「はっ、はっ」
 息遣いが、まるでシンクロしているかのように同時に二人の間で行われていて、お互い悦に浸りながらも、どこか余裕が生まれていた。
「んっ、んっ!」
「はっ、あっ!」
 刻む逸物と腰の動きに、段々発せられる声に加わり、変化が見られた。
「んっ! んんっ! ろ、ロアぁ!!」
「はっ、フリップ! フリップ!!」
 お互いの名を呼びながら、もうすぐ快楽の極みに達するであろう私達に後できることは、互いの名を叫び合って、愛を確かめ合いながら果てるだけだった――。
「ロア! ロア、イクぅ!!」「フ、フリップ……で、出る!!」
 外出しする事は一切考えなかった。
 ゾロアは卵ポケモンかもしれないし。でも今はそんなことどうでも良かった。
 ただ愛をより感じる為に、ロアの雄種は、私の秘部には必要だったから。
「うあっ!」
 ――来る、来てる。
「嗚呼……ロアのが、ロアのがたくさんくるよぉ……」
「……はぁはぁ。フリップ」
「まだ……くるね。ふふ、よっぽど我慢してたんだね。最初あれだけ出したのに……」
 初めての牡はこうも元気なんだろうか? 盛りなんだろう。元気なのはいい事だと思う。逆にこの歳で不能だったらそっちのがよっぽど引くかも。
 考え過ぎ、だったのかな――。
「……ん。ふぅ、すごい脱力感だね、これ」
「初めてなのにお疲れ様。途中はゴメン……で、でも初めてにしては上出来だったよ、ロア」
「そ、そうかな……。そう言われると何だか恥ずかしいかも。途中? あぁ気にしてないよ。仕方ないでしょ。それにこれでお互い秘密を共有し合えた訳だし、結果こっちのが良かったんじゃない?」
「そう、だといいんだけど」
「まだ考えてんの、まさか? らしくないなぁフリップ」
「いや……挿れる前だったら、あるいはどうだったかなーなんて…… むぐっ!?」
 だからどうして、初めてなのにそんなにキスが、上手なの――ロアったら。
 想いが伝わってきて、切ないような愛苦しいような。
 酔ってもいいのかな。ねぇ、リユン――?
「でも住処に戻ったら、また姉ちゃんって呼ばなきゃいけないのかー。なんか、大変だよなぁ」
「だね。それなら、いっそもう――」

 私達は正直に今の関係を親達に打ち明けようとしていた。
 隠していても、物事はいつかバレるものだし、世間的な形はどうあれ、この土地には世間体と言ったものには疎い所だし、それにシアンさんはどうかなとも思うけど、母なら分かってくれる筈――私を一時期、仕方なくもダシにしておいて、分からないと言われたら、それはそれで困惑するかもしれないけど。
 やってみる価値はあるかもしれない――。

「こんな出逢いもあるもんだね、ロア。ふふ、大好きっ」
「う、うん……フリップ、そ、の」
「ん? ……あ、まだ足りなかったの? 元気だねー。ちょっと待って今舐め直してあげるから……」
「え、いや、ちょ! そうじゃなくっ、て……って、ダ、ダメだってばぁ!!」
 ……。
 出したばっかりだから、敏感だったのね。でもそれにしたって、この子。
「……。泉があるからいいけど、ね。ロア、トラウマ以前からこういう癖、実はあったでしょ? 前のお姉ちゃんにからかわれたりしてなかった、もしや」
「う。な、なんで分かるの……? こ、こんな事、言えないだろ普通……」
「秘密は無しなんでしょ、ふふ。さて……」
「えっ! 今両方出したばっかりなのに、まだ!?」
「これが愛だからね……これでもママよりは、全然なんだよ? これから覚悟してねっ」
「ネガティブなフリップより、前向きなフリップの方が可愛いから。こっちのが全然いい……って、あぁん!!」
 このオチも、大体掴めたかもしれない。
 トラウマがあの癖を生み出したのかと思ってたけど、一種の性癖だったとは。
 ……。
 機会があったら、私もしてみてあげてもいいかななんて。今度はそっちに芽生えちゃったらどうしようかしら? なんて、ふふ。
「えへへっ。ロアのバーカ」
「きゅ、急にバカってなんだよ! バカって言ったヤツのがバカなんだぞ! ……でも、オレは好きだからね、フリップ」
「……わざとふざけてみたのに、バレバレだったか。ずるいよ、ロア。……また疼いちゃうじゃない」
「……フリップ」
「……ロア」

 
 日は丁度辺りの山に沈み掛けようとしていたが、私達はお構いなしに、再度結ばれる事を望んで、その体をお互いの物にし合ったのだった。


 
 唇と料理の味は、禁じた方がいいのか、許されるべきか。

 もう遅い、だけどこれは、子どもの水遊びじゃない、大人の火遊び。

 一度味わったら、抜け出せない、禁じられた遊び。

 でも、誰に禁じられた訳でもない、この禁じられた関係と遊び。

 今はまだ、この余韻に浸ることにしよう、それが二人の幸せなのだから。

 恋哀歌 いや、恋愛歌。 今は唄おう、ただ本能が示す通りに。

 それが互いの、未来の幸福への、道標になると信じて――

 ――Jeux interdits...



 ― 大団円 ―
 
 あれから住処に二人で一緒に帰った時は、もう日が沈みきっていて。そして住処に帰ると、待ち構えていたかのように、母とお父さんが私達を出迎えてくれて、そこには契を結んだお祝いなのか、豪華な食べ物が並んでいて、幸せな家庭が眩しくて、それにとても嬉しかった。
 夕食にお父さんがいるだけでこんなに変わるものなんだろうか。この人が淫乱の気があるとは思えないけど、それでもあの場に証拠はあった。
 ただ大人の牡でそういう事をしない方がおかしい。母がけしかけたのは何となく分かってるし、リユンにはでもやっぱり申し訳ないかな――って、また私症候群が起き始めてる。
 いい加減この癖直さないとなー。ロアと真正面からこれから向き合い続ける為にも、それは不可欠だろう。
 ――癖と言えば、あのロアの放尿癖には驚いたし、今思うと笑える。
 いずれ自分もその道に引き込まれてしまうんだろうか。節操がない訳じゃないんだけどね。私も、一応母も。
 ただトラウマだけは早く治って欲しいかな。それは確実にロアにはあるだろうし。毎回交合ならまだしも、お漏らしされたら藁がもたないし、ね。
「ふふ」
 思わず、思い出し笑いを食事中にしてしまう。
 思い出しただけじゃなくて、この幸福感にも酔っている証、そのものだったのかもしれない。
 食事中にこうした団らんがあって、そしてこうして遠慮なく笑えるなんて、このままでも充分幸せなんだろうな。
「フリップ、どうしたのよ急に笑いだしたりして? ……さては遅く帰ってくる間に、何か良い事でもあったの?」
『な、何もないよ!』
 ロアと偶然にシンクロして慌てて拒否をした言葉が、母に向けられる。
「そ、そんな二人して……まぁ仲良き事は良い事かな、なんてね」
 母は勘が鋭いから、時折焦る。リユンの時もその予感は当たってたし。普段強気な癖に、脆い所があって。
 でも好きだし、今のお父さんを比べるのも悪いけど、どっちも好き。
 このままでもいいのかな、もしかして。
「ごちそうさまでした」
 一番食べそうなロアが、残したりはしてないけど量をそんなに食べることなく、礼儀良く挨拶をして、そしてお父さん、そして私の母を含めた二人に向かって、何か言いたそうな仕草を見せていた。
 ……。
「どうしたの、ロア君?」「どうした、ロア? 余り食べなかったじゃないか、お前らしくもない。お腹でも壊したのか?」
「……ちょっと話したいことがあるんだ」
 皆大体食事はあらかた食べ終えようとしていたけど、まだ私を含め三人は食事中だった。
 食事が終わったら、子と親で部屋に入ってしまう前に……ロアも幼かったり生意気そうでいて実は素直で、それでいて勘や気遣いが人並み以上にできるのは、カラダを通して分かった事だったから、これにはロアなりに何か訳があるんだろう。

 ロアの真剣な面持ちに、実の父親であるシアンさんも何かを感じ取り姿勢を正して耳を傾け、母は一方少し含み笑いを堪えている様な謎な表情をしながら、同じく聞く姿勢は取っていた。
 ロアの口が、開く。

「とうちゃん。オレは、あの時の真実をフリップだけに話したし、オレもとうちゃんの本当の思いが知りたい。でもその前にオレから話さなきゃいけないんだけど……」
 呼び捨てにされた私も少し驚いたが、シアンさんはもっと驚いていた。母は……少し真剣な表情に変わっただけでどこか緩い表情は相変わらずだった。
 ロアを横目で見ると、彼は微かに震えていた。
 開口一番で、私達の関係を話すと思ったのに、自分の過去からケリをつけようとするとはね。
 ――こういうとこは、本当に牡なんだなぁと改めて思う。
「あの時の……か。食事中にその話はどうかと思ったが、皆が揃っているし、私も隠し事は嫌いだ。……私から話すよ、私にもこれでも秘密はあるからね。お前もフリップちゃんも知らないもの。ベルテには先に話しておいたけど、いい機会なのかもな。さて」
 
 シアンさんはこう話した。
 ニンゲンに襲われたあの日、シアンさんは家族を残して行ったことがどうしても気掛かりで、状況に応じてニンゲンに化けながら上手くバレずに表立って騒動の最中動けていたけど、ふと家から少し離れたロアの作った秘密基地から微かに感じたその気配に、ニンゲンの姿のままシアンさんは気付いていた。それが誰なのかははっきり分からなかったが。
 だけど騒動はどんどん大きくなっていき、命を落とす覚悟で向かって行った自分も次第に逃げる事を考える様になり、住処まで何とか逃げ帰りながら、その先に目にした光景に、奈落の底にまず突き落とされた。
 皆が住処で命を落としていた。それに愕然としたし、自分だけ助かってしまった事を悔いた、恥じた。
 そこに現われたのは、最初はニンゲンの少年の姿をした者だった。
 シアンさんは動揺していた事もあって、その子が我が子と気付けず、また何もしてこない少年に対して怒りに任せ殺そうとまで一瞬思ったが、ふと家族の亡骸を見つめていて、自分も殺すように相手が少年であっても懇願しよう、と思っていた矢先だった。
 そこには自分の、息子。ゾロアのロアがそこに立ち尽くして、声も出さずただ呆然と涙を流しながらシアンさんを見つめていた。
 ……。
 シアンさんはそこで喜んだと同時に一つ大きな勘違いをしてしまった。「ロアは心の中では、私を恨んでいる。今は恨んでいなくともこの先絶対に憎まれる。嗚呼、どうして私は咎人として生き残ってしまったんだろうか」と。
 完全なすれ違いが生じた。ロアがその時思っていたのは、実際は自分だけ嘘をついて安全な場所へ逃げていた事への、情けなさと取り返しのつかない後悔、だった。
 二人は表向き再会を喜び合いながらも、裏で互いに似通ったくすぶった思いが通じ合う事もなく、ロアは日に日に旅先で性格がねじ曲がっていった。シアンさんに対してはまだマシなようだったけど、内心シアンさんは他人に対して変わってしまった息子を見て、自分の過ちだと常に後悔して、無意識に少し距離をおくようになっていたという。
 ロアはロアで、元々やんちゃな方だったが、心に負った傷は深く、父に会えた事が救いだったのにも関わらず、自分がのうのうと生きている事にこっちも罪悪感を感じていて、それでどんな時でも演じた自分をさらけ出さなければならないようになっていった。同年代の子とは、半年も旅をしていれば接触は幾度もあったらしいが、歳が近ければ近い程、ロアはひねくれた態度を取っていたという。
 
 ……。
 
「違う! オレはとうちゃんが嫌いなんかじゃないし恨んでもない! むしろ逆だよ。生きて会えてすごい嬉しかった。……とうちゃんは悪くないよ。でも、オレが……オレが嘘を付いて一人で逃げたりしたから……うぅ」
 ロアはその場に泣き崩れて後の言葉をしばらく紡げる状態ではなさそうになってしまった。
 代わりに私がロアに聞いていた真実を、シアンさんと母に話す。
 シアンさんはそれを聞いて、涙した。いや、既にロアが「嬉しかった」と話した頃から、その涙腺は緩んでいたかもしれない。
 私は二人が泣いているのを見て、思わずもらい泣きをしてしまった。これで二人の誤解は晴れたんだろう。
 シアンさんがロアの元に歩み寄り、その手でロアを強く抱きしめながら嗚咽を零しているのを見て、更に泣けた。
 いつも滅多に泣かない母も、この時ばかりはその二人を見て、嬉し涙半分、もらい泣き半分、といった表情をしていた。
「とうちゃん……ゴメンなさい」
「お前は悪くないよ。私がいけなかったんだ。家族を残して離れるべきではなかった。一時の感情に任せて、ニンゲンに踊らされた私がバカだったんだ……」
 
 ――リユンも、そうだったんだよ。
 家族を、愛する人達を残して離れるべきじゃなかった。こうして私達は今幸せになれたけど。
 手紙を遺したとはいっても、黙っていなくなるなんて、そんなのやっぱりおかしかったんだよ。

 私の中で、ずっと微かに張り詰めていた糸が、ぷつりと今、切れ解けた気がした――

「残された家族と残した家族、か……」
 誰にも聴こえない程の小さな声で、私はそうため息のように呟いた。

    ◇

 しばらく時間は経ち、皆が落ち着いたところで、それまで黙っていた母がその口を開いた。その表情は明るく、感動的ながらも沈んだ場を盛りあげようとしているようにも見えた。
「さて、と。これでロア君とシアンの件は一件落着ってとこよね。私を泣かせるなんて、リユンでも早々なかったのに……全く幸せな家庭ってどこからできるもんだか分かりゃしないねぇ」
 全くですとも。
「ところで、フリップ? 後ロア君も。他に話したい事って、実はまだあるんじゃないの」
 全くで――!?
 ここまで勘がいいとは、自分の母でもこれは相当に驚いた。
 隠そうとしていた含み笑いを、もう堪えきれないといった表情に変えていたし、一方シアンさんの方は、先程と一転して何故か顔赤らめて、その表情は何かに恥ずかしがりながらも、どこか呆れてるような何とも言えない表情をかもし出していた。
 ……。
 どういうことなの……
「ママ? え、いや、そのー」
 急に振られると、話しにくくなる。二人の表情も気に掛かるし。
 いざって時に、弱い部分が現れちゃうのがダメなのかな私。性的な事は今は置いておいて。
 でも。
 その性的な問題が、問題を、問題の為に話さなきゃならない訳で――あぁ、考えると以下略症候群が……。
「ベルテさん……オレから話してもいい?」
 さっきまでシアンさんと一緒に泣き崩れていたロアが、一変真面目な顔つきで母に向かって対峙しようとしていた。
 ……その秘めた牡らしさを見て、改めてまた惚れそうだった。
「どうぞ、ロア君。……ふふ」
「へ?」
「私はまだ信じ難いが、まぁ私が惚れたベルテが言うなら……それにベルテまで直接関係していた以上、私には何とも言えないし……。というより、想像すると恥ずかしくなる自分は一体――。あぁそれに私はここに転がり込んだ身であって……むあぁ」
 シアンさんが恥ずかしがっていたのは予想通りだったけど、今度は腕を組んで首まで傾げるようなってしまった。苦笑いも続いている。
 ……何?
「ちょ、何なの二人とも……? これは真面目な話なんだからね。ちゃんと聞いてよ?!」
「ふふふ……」
「おい、ベルテ。わ、笑うのは良くないんじゃないか?」
 ……。
 少し、腹が立ってきたかも、しれない。
「もう、何なのよ二人とも! ロアが真面目に話そうとしてるんだから。さっきはちゃんと聞いてたのに……。またママの何かの勘? 大体シアンさんもらしくないじゃない!」
「ふ、フリップ……。ちょ、オレが話すから少し落ち着――」
「私はロアに惚れてるの! 弟? 何それ。ママ達が急に契を結んで、いきなり弟だって言われても実感がすぐに湧く訳ないじゃない! 大体、こんな可愛い子、一緒の部屋でなんて住んでたら、好きになるに決まってる! いや、好きにならない子のがおかしい。そう、ママとシアンさんが初日にいきなり泉でシテたのだって知ってるんだからね!? だからって訳じゃなけど……。あ、そうだ! そ、それにママもリユンも勝手なんだよ! いきなりいなくなったり、いきなり契ったり……。私も最初は応援してたけど、でも、でも今はこの子が好きで好きでたまらないの。悪い? 私だって……リユンにずっと盲目的で切ない恋をしていたけど、本当は同年代の子と――じゃなくって、同年代は同年代でも、私はロアが好きで、それで!」
「……。うん、それで?」
「オ、オレが言います…………。フリップと今日、交合しました!」
 
 ……。
 
 ……。

 静寂が、一瞬辺りの空気を支配した――。

 その直後、だった。
「あははははっ! もう、もうダメ! ふふ、あはは! シアン、言ったとおりだったでしょ大体。っていうか「交合しました!」ってちょっと、ねぇ、もう! 思い出すとやっぱりダメ! くくくっ……」
「ベルテ……お前ちょっとそれは笑い過ぎだろう。それに私には苦笑いするしかないと言うか、何と言うか。いや……決して悪い事ではないと思う、正直。ただ、いやでもベルテ。お前もなんだよなぁ……全くこの淫乱家族は……」
「ちょっとぉ、淫乱なのはそっちもじゃない? 昨日泉で五回交わった内の過半数の三回分。誰が攻めたか子ども達に言っちゃってもいいのかなー? ふふ」
「ベルテ! お、お前なんて事を!? ……嗚呼、いっそ私は今ここで死んでしまいたいくらいだ……」
「あら、惚れた事後悔してるってこと、それ?」
「……それを、今ここで、私の口から言わせるのか? 好きに決まってるだろう! うう、だ、大体自分だけ直接公で何も暴露してないなんてズルイじゃないか! わ、私だって性欲ぐらい……。半年分溜まってたし。私だって、わ、私だって……うぅ」
 
 五回もしてたのね。
 そして。
 完全に私とロアは、置き去りにされていた――
 
 ロアに至っては、口をぽかんと開けたまま、呆けた表情のまま固まっている。
 私だって人の事は言えない。
 一体、何が何だかさっぱり――。
 母が今まで見た事もないくらい暴走していて、シアンさんまでもがそれに乗せられているのだけは、何となく分かった。

「……好きなのね、こんな牝狐が。それは嬉しいわ、ありがと」

 おいおい。
 そして、私とロアの前でディープキスるんですか。
 
 どういうことなの…………。

「え、あ、あのー。ベルテさん? なんか、まずかったですか……」
「ちっとも悪くはないわよ。私だって娘と交わってる身だったし、ねぇシアン?」
「……」
「あーそーですか。無視するんですか。……じゃあ頂いちゃおうかな」
「えっ、ちょ! べ、ベルテさん?! んむぅ!」

 目の前の光景に、シアンさんは顔を手で覆い隠しながらも隙間から覗いていて、私はというと――
「ちょっと、ママ! 私のロアに何してるのよ!」
 ここまではまだ正常だった。でも、止めようとしても何だかその展開を望んでいるもう一人の自分がいた。
 ……。
 いや、これはおかしい。だって母はシアンさんと。私はロアとでハッピーエンドじゃ……。
「あら、意外に上手なのねロア君。それに……ここも立派ねぇ。お父さん譲りなのかな、ここのギャップは。ふふ」
「べ、ベルテさん……だ、ダメだよこんなの……。とうちゃんも、それにフリップだって見て―― !」
 母はとうとう、ロアの雄を口に含む所業までし始めた。
 でもシアンさんも、私も止めない。
 シアンさんは分からないけど、私は……止めなきゃいけない筈なのに、何故か秘部が疼いて疼いて仕方がなくなっていった。
「……フリップも、もう濡れ濡れなんんでしょう? こっち来て混ざりなさいよ。……じゃないと折角奪ったロア君のカラダ、私が貰っちゃうよぉ?」
「な、何言って…… ちょ! どこ触ってるのよママ! ……ぁ、ダメ。な、なんか変。すごいいつもより、きもち――」
 私は少しおかしくなっていたかもしれない。
 でも、考えれば考えようとする程、カラダは疼いていった。

 気がつくと私は母に扱かれていたロア逸物を、秘所に誘い込もうと、カラダが自然にロアに対してお尻を突き出す体勢を取っていて。ロアはそこに勢い良くいきり立ったモノを突き立ててきて。
 気がつくと更に、私はシアンさんのモノまで、咥え込んでいて。シアンさんは私の頭にしがみついて、押し寄せる快楽に耐えようと必死になっていて。
 気がつくと更にまた、肝心のロアは、その口で母の秘所を舐め、既に母は早くも達しようとしていて。
 
 そこには文字通り、四人が一斉に“繋がって”いた。

 もうわけがわからない――
 どうにでもなっちゃえ。
 えへへ。
 ふふ。

「あぁん! ロア君、ロア君もっと舐めてぇぇ!!」
「フリップちゃん……凄くイイよ……」
「ロアぁ! もっとぉ、もっと突いてよぉぉ!!」
「はぁ、はぁフリップ……後ろからの、フリップも、気持ちイイよ……」

 もっと、もっとちょうだい――
「ロアくん……あぁ、ロアぁ……」
「フリップ……そろそろ、来そう、だ……あぁ」
「ロアっ、ロアっ! ロアぁぁぁぁあ!!」
「はっ、はっ! フリップ、フリップ!!」

 もうダメぇ……イッちゃう――――
「はぁぁんっ! ロアっ、もうらめぇぇえええ!!」
「うっ! ふ、フリップ……だ、出すぞ!!」
「あぁあぁぁあん!! ロアぁぁ! いっぱい、いっぱい中に出してぇ!!」
「もうダメぇ! で、でちゃうよぉ! フリップ……フリッ……うっ!」

 ――。

 ――――。

 めのまえが まっくらに なった

 ――――。

 ――。
  
   
    ◇

   
    ◇

 翌朝。
 正確には昼前にも関わらず誰も起きる気配もなく、仕方なく私は広間の片付けを行っていた。
 私も含めて皆、寝ていた場所はこの広間だった。
 皆を起こさなように昨日の夕飯の片付けをしていると、その片付けよりも、広間の家具などに飛び散った精液の処理などの方がよっぽど大変だった。
 なんで私が一人で片付けを――。
 先に片付けていた功名か、食卓に並べられていたであろう無残に散らかった食べ物や飲み物の中に、複数の犯人を見つけた。
 浮かれていようともいくら母でも気付かなかった訳がない。
 母は極度の下戸*20だった。なのにも関わらず、食卓上に、私とロアの席にはさすがに置いてなかったにしろ、何故お酒が置いてあったのか。
 十歩譲って、母が浮かれていたせいか、幸福に酔いしれる余りシアンさんが知らずに振舞ったお酒を、ぐびっと飲んでしまったのかもしれない。
 でも、それだけじゃなかった。
 真犯人は他にいたのだ。
 まず、昨日の記憶は一部欠損しているとはいえ、凄惨だっただろう、乱交パーティ状態と最終的になった色んな意味でフルコースだった夕食のことは覚えている。
 ロアとシアンさんのすれ違いが解消し。私が感情的になり。母とシアンさんの様子が変で。
 母とシアンさんについては、母が大方、全て事前にシアンさんに個人的な勘も含めて分かってる範囲内での皆の知られざる状況を語ったということだろう。
 ……。
 頭が、痛い。私はお酒を飲んでいない筈なのに。なんで?
 そう、それから「フリップと交合しました!」宣言をして。
 そして母は五回泉でシアンさんと契った際にヤッてたこと。突然のディープキス。
 極めつけは、ロアにも手を出していた。
 ……。
 そこからが少しおぼろげになるけど、確かに四人一斉に性的な行為をしてたのは記憶にある。
 現にシオンさんの雄は、ロアのと形がよく似ていて、それより更にやっぱり大きくて、ちょっと苦味が強くて――。
 結構意外に鮮明に覚えているんだね、仕方ないね。
 それから。
 それから、四人で色々と組み合わせやら体位を変えて……。
 駄目。
 そこからははっきりとしない。
 ……。
 ふと、食卓を再度見てみる。今度は凝視に近い。
 悪くはなかった体験。だけど、いくら母が興奮すると淫獣並になる時が稀にあるとは言っても、あの流れであそこまで、しかも皆がイッてしまったのはいささか疑問だ。
 何か、何か私は見落としている――
「!」
 食卓の端に、一欠片だが残っていた木の実。
 これには、見覚えがある。これは確か――。
 そう! “セイコウの実”だ!!
 これは泉に近い樹林に実りやすい、今の季節に実る木の実。
 この実はこの土地特有の産物でもあって、確か母が昔リユンと適度に愛用していたから分かる。その効能も母から効いた記憶がある。
 確か――
 そう。この実の特徴は、何かを決意した時や悩んでいる事がある時に、気持ちを昂ぶらせたり楽観的にする効能があり、感情の起伏が強くなる傾向があった筈だ。
 道理でロアは強気だった筈だ。その昂ぶらせる作用がいい方向に運んだんだろう。
 対して私は、その昂ぶりがアダとなって、感情的に一時なってしまった。
 そして。二人の親。これはどうみても後者の楽観的作用が働いた模様です。本当にありがとうございました。
 でも、木の実。裏の効能と呼ばれる物が存在する。昔母とリユンがハマっていたのは、コッチの効果の筈。
 裏の効能、それは――先に述べた効果が発揮されたしばらく後、この効果が発動することによって、無性に。そう、無性に他者と淫らな行為をしたくなる効果があった――いわゆる、催淫*21的効果だ。
 真犯人は、分かった。この実が私達をいい意味でも悪い意味でも解放させたということだったか。
「ママのバカ」
 裏の効能を知らなかった筈がない。この母は。……まさか本当に淫獣の末裔だとでも言うのか?!
「もぅ、何考えてるんだか……」
 そして、こういった類いのモノには、必ず副作用が存在する。
 それは――。
「この光景を見れば一目瞭然」
 そして、頭痛。世間的な言葉を選んで一言で述べるとすると、“二日酔い”。
 だから、か。
 全ての糸が繋がった。
 これで……事件は解決した。
 私の頑張り。そして皆、ありがとう――――。後はゆっくり寝ていて貰って構わないんだからねっ。
『と言うとでも、思っていたのかぁ!! 起きろーこのバカども!!』

 母は皆が秘密を抱えずオープンになることで、皆が影で心に抱えたわだかまりがなくなる事を望み、薄まってくれればと。そしてより楽しく、新しい家族とパートナーとで過ごせれば……。
 とまとも風な論を述べていたから、半分は許す。
 と、思っていたのかぁ?
「当分、セイコウの実は食べるの禁止! 見つけたら即捨てに行くからね!」
 二割だけ許して、八割は反省して貰うつもりだ。
 その内の一割はその母の気持。これは汲みたいと思う。
 もう一割は、なんだかんだ言ってね。……結構皆でするのも、気持ち良かったから。
「お互いパートナーが既にいるので、機会が訪れたとしても、当分はどっちにしても使用禁止だけどねっ! 乱交自体も適度なら……いやいや。やっぱり基本的にはダメ!」

 シアンさんは副作用が一番出てしまったのか、起こしたはいいけど頭痛で説教をするどころじゃなかった。
 頭を手で抱えながら、私に土下座を神速の如くしてきたのには驚いたし、なんかシュールだったけど。
 淫らな行為時の記憶は、どうやら私よりあると見た。おってこれは、加害者の回復を待ち、攻め上げたいところですね。
 でもある意味、シアンさんも被害者だし……いやいや。父とは言え、甘えは許されないからね。
 私を、たーっぷりと犯しただろうし……。
 でも、さすがロアのお父さんだけあって、相性は良かったみたいだけど。またいつか、機会があったらたまには――。
「ダメ、絶対」
 そうそう。こんな標語がニンゲン界ではあったっけ。
 絶対、とは敢えてここでは言い切らないけど、取り敢えずシアンさんの処罰として妥当なのは……
「広間の片付け、全部頼みます。ママこき使ってもいいから。ただし掃除に生じて、逆に扱かれないようにしてください、ね!」

 ロア。
 ロアは割とすんなり起きた。
 昨日あれだけ木の実のジュースとか飲んでたりしたのに、特性――得意技“おねしょ”は発動しなかったみたい。
 トラウマが消えた事による、変化なんだろうか。
 後、副作用に強い体質なんだろうか。でもあんまり食べて、はいなかったからなぁ。
 どこまで覚えてるんだか。まぁロアは全然悪くないし、木の実の効果だとしても、昨日はとっても格好良かったな。
 そしてやっぱり、寝起きで寝癖がついた髪型ですらも愛狂しい程可愛い。
 個人的にはこのまろ眉がチャームポイントだと思うんだけどね。
 ロアとはバックから激しく突かれた事しか淫らな行為については覚えてないけど、他にもきっと色々シタんだろうね。
 あの激しさは実の効果が充分に現れていた結果だと思う。
「頑張ったね。よしよし」
 親達が掃除してる間、泉で可愛がってあげようか……。
 想像してると、昨日あれだけ騒いだ筈なのに、やっぱり疼いて仕方ないね。
 でも、淫獣レベルまでは行ってないのであしからず。
「ロア。淫獣ママさんと共犯疑惑のある紳士さん置いて、泉にでもいこっか」


    ◇

 外の風はいつもより心地よく私に語り掛けてくれた。甘草の香りが真昼時だったはいえ、新鮮で頭痛を和らげてくれた気がした。
 鳥ポケモンの囀り(さえずり)は心を弾ませた。隣にいるロアの存在は、私にとって掛け替えのないものだった。
 
 泉の前に着くと私にはしておきたかったことがあった。
 それは何も、先日のロアのように水中放尿だとかそういったフザけた類いではない。
 真面目な事。お願い。祈り。
 私はここで、仮ながらもロアと契を交わそうと思っていた。
 ロアは仮にでも「そういう事はもっと大事な時にとっとこうよ」と言っていたが、私は今にこだわりたかった。
 そう――
 何かに導かれるように。

「昨日の今日で、お盛んだなって勘違いしてたよ。フリップ」
「ま、それは後のお楽しみって事で。……どうせママ達はこれ見よがしに、疲れてる体でも一発ぐらいはやってるでしょ」
「……機嫌悪い?」
「頭痛いからね、これでも。……でも、後でニ発ぐらいする余力は残ってるから安心して」
「べ、別にそんなこと期待してなんか!」
「あれ? でも、ソコちょっと勃ってない?」
「えっ」
「うっそー」
「……今日のフリップ、生意気じゃない? 人のこと言えないよね」
「怒った? お子ちゃま。いや……まろちゃま!」
「っ! 眉毛のこと気にしてるから言わないで! あぁー今日のフリップ嫌いかも……」
「チビガキより明らかに格上げじゃない。おねしょもしなくなってたし」
「……別に、毎日してたわけじゃないし。た、たまたま続いたんだよ。あぁもう!」
「ふふ。ちょっと大人になったね。……私のこと嫌い?」

 そんな訳あるか――ってな感じで来ると思ったら、本当にこの数日ですっかり牡らしくなったみたいだった。
 私は泉の前の草むらの上で、ロアに押し倒された。
 強引なこの子も、また可愛いかも。

「強姦ごっこするの、ロア? らしくないね」
「……うるさい口は、こうしてやる」

 ロアが私の唇をそっと塞ぐ。
 私はすぐに舌を入れるような真似はしないで、それに応じるだけの力でそのくちづけに応える。
 
「このままだとここでしたくなっちゃうね、フリップ」
「お盛んなのはどっちよ。それに、私はある事をしようと思って、敢えて泉の裏側の木陰じゃなくって、正面側にいるんだよ?」
「……何する気なの?」
「契ごっこ」
「本気なの?」
「ごっこ、だよ。それに本当にただ祈り事がしたかっただけ。あんまり深く考えないで」
「……また何か思いつめてない? 大丈夫?」
「優しいね……。大丈夫だよ。今はすーっごい幸せだし、もう隠し事も何もないしね。淫獣ママさんの粋でおバカな計らいのおかげで、これで堂々とイチャイチャできるしね」
「い、インジュウママ? 何それ、火星語*22?」
「逆に火星語の意味が知りたいんだけど……。まぁいいや」
「むぅ」
「―― lien eternel」
「……え?」
「―― amour pur」
「火星語ばっか使うなよぉ、もう!」
「ふふ。今のが祈りと誓いの言葉。本当はもっと長いみたいなんだけど、好きな言葉だけ抜粋して囁いてみた」
「……どういう意味なの? それ」
「えへへ。秘密ー」
「ちょ、もうあったま来た!!」
「分かったよ。一個だけ教えるからっ。えーと最初のはね―― !」

 さすがにちょっと焦らしすぎたか。
 ロアがちょっと不機嫌で怒って。でも怒ったのはブラフ*23で、組み伏せてた私をちゃんと優しく起こしてから、その魅惑の唇で私の思考を奪おうとした。
 私も少し悪かったかなと思って、お返しに舌で返事をしてあげた。
 もつれあうお互いの舌、絡み合う私達自身、紡がれる銀糸。零れ落ちる嬉し涙。
 
 その零れた涙が泉に一粒落ちたとき、一瞬だけ泉に奇跡が起きたのを私は見逃さなかった。
 ロアは目を瞑って与えてくれてる。
 私だけが薄く開いた目で、偶然横目で泉を見た時に、確かにそれは泉に照らし出されていた。


 進化後の私達と、その上部で微笑ましく私達を見つめるリユンの面影を――――


 ロア。
 私達、永遠に結ばれるみたいだよ――。
 それとさっきの火星語とか言ってた、誓いの言葉の一部。
 これの最初の一個だけ教えてあげるね。
 ……なんで最初だけかって?
 もう一つは私の心だけに秘めておきたい恥ずかしい言葉だったから。
 お互いの為の言霊にするのは、最初に私が言ってた誓いの言葉だけで充分だよ。
 だから、安心して。
 二人でこれから、ゆっくりお互いの時を重ねて行こうね――。

 愛してるよ、ロア。



 ――Lien eternel... それは、永遠の絆――――

 Fin


 Remise

 約束された未来
 牝はそれでも秘密事が好きなのか
 純粋な愛を、胸に秘め留めておく
 
 秘めた思いは決して戒めのつもりではない
 胸の奥深くに留め、忘却から護る為に
 間違いを冒さない為に
 
 誰と交わろうとも、己が眼が差すは揺ぎ無い
 揺ぎ無い意志を
 そして変わらない想いを――


 ――Amour pur...



 後書きとぼやき。

非官能部門を見直す時間を、宛がって丸三日週末徹夜込みで書きあげた作品でした。
短時間だから凄い?いえいえ。練った物の方がやはり繊細で整っていて然るべきだと思います。その方が尊敬できます。
非官能部門の作品とは違い、楽しく書くことを第一に考えながら書いたものです。
今まで何か書いた中で一番面白かったかもしれません。
それもその筈。今まで恥ずかしすぎたプレイや何やら、所々雑気味になりながらも凝縮できたと思っているので、それだけで満足でした。
(放尿とかぶっかけとか精飲とか……///)
全てが自分の好きなプレイって訳でもないですし、好評のようだったロアも狙って書いたものではありませんでした。
書き手側からすればむしろフリップの方が(ry

得票からすれば、どう見てもロアのお陰なんですけどね。
本当にありがとうございましたw 感謝してます。もちろん票を下さった読者様の皆さんにも。
後、ゲー◯リのゾロア・ゾロアークを生み出してくれたデザイナー(?)の方にも感謝を。
書いた後、ゾロアが意外に大きな事に驚きました。
ゾロアークは更に大きいんですけども、まあ二足歩行ですしね。それでもルカリオが120cmでゾロアークは160cmって……
(ポケモンの)体格に疎い者なんですが、流石にこの差はちょっと、ねぇ。
ルカリオはこれで完全に受けになりそうな予感。
40cm差は伊達じゃないでしょうw
ゾロアも大きいので、でも私は年齢・個体に伴ってある程度体の大きさは変わる考えを持っているので、その自分ルールを適用すればロコン×ゾロアも十分ありなのかなぁと。

しかし思い掛けない一位で、実は未だに実感がないんですよね。
元々官能部門はこだわって無かったからなのか、だからなのか。
某スイクンとミュウが可愛すぎた作品の方が、とも思っていました。
蓋を開けてみるまでは分からないものですね。こういうものって。
ただ。
順位よりも長編に近い短編を書ききれた事や、色々な要素を自分なりに100%でなくてもまとめきれた事。そして大会が終わった安堵感。
などの方が、自分にとっては大きかったです。
そして自分のキャラという意味ではないですが、ロコンとゾロアの可愛さを微力ながらも広められた達成感というか何と言うかw
あの仔達は、本当に可愛いんですよえぇ。特にカップルだと!

……。
キュウコンも好きです。ゾロアークも、実際会ったらその背の高さにビビりそうですが嫌いじゃないです。
ヘルガー……ゴメンなさい、ちょっと空気になってしまって。そして大事な所で誤字ってしまってorz
何故リオンになったのか。そしてアデューじゃないよ、まったく本当に(ry
リオン=リユンって姓名だったって事で(殴
大円団(大団円の誤植)も“リオンさん”になすりつけていいですか?(殴殴
(ルビがもっと簡単に振れればっ。注釈は逆に楽なんですが多過ぎるのも……んーむ。メモ帳から移すときに必ず何処かに空行ができる仕様も……むむぅ)
……。
ところで。
Remiseなんですが。あれは“おまけ”という意味です。
そしてamour pur.これは“純粋な愛”です。
jeux Interditsは、そのまま“禁じられた遊び”に繋がります。
どれも英語ではないです。
誰得知識ですが、おまけ的注釈も兼ねて此処に述べ連ねておきます。


最後に。
『ありがとうございました』
この一言に濃縮させて締めさせて頂きます。
コメントは(暫く)設置しない代わりに、コメントが今回強制開示だったので全部に返信するのに変えて幕を下ろしたいと思います。

票を入れてない方も含めて読んで下さった方、主催者様。
本当に感謝しています。
くどいですが、ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。


投票コメントへの返信 


>ロアかわいいよロア
ここからロア君の勇者への伝説は始まった・・・
>こういう関係もありですねwww
アリですか。ですよねw しかし現実的にはセフト――アウアウでしょうww
>淫乱なキュウコンに万歳\(^O^)/
唯の淫獣です。本当にありがとうございました\(^O^)/
>ロアーーーーーーーーーーーーー
うんうん。えいっ!*24
>ロアくんでもふもふしたい!
もふもふ。ファイヤー!*25
>ロアくんサイコー!!
ふむふむ。アイスストーム!*26
>意気込みと投稿日だけでないなこれは…と判断してました。ごめんなさい。
読んでみたらエロいし面白いし、更に少し泣いてしまいましたし。
後、ロア君可愛すぎです!!

あ、いえ。謝らなくっても……。色々な要素に感応(官能)してくれてありがとうございました。
バイエキューション!*27
>エrがとても濃かったのでこれに一票。
描写をもっとえっちくできるように頑張りたいです!
>ロア支援age
わっしょいですね?フレイムXルド!*28
>親子そろって何やってんだよwww
でも、幸せそうだから許すwww
母以外、許してやってくださいw 因みに母は許さなくていいですww
>禁じられているどころか奨励されている。
奨励された遊び、の方がマッチしますね確かに。けどネタバレになってしまう罠。
『遊びは禁じられて(結果的に)純愛に繋がった――』と捉えて頂ければ。
どうみても後付けです。本当にありが(ry
>話の内容よりえr・・・が充実しすぎて・・・サイコーです!
えっちかったですか。良かったです(*´∀`*)
>とても読みやすく、しかも話し的にもとてもよかったです!
読みやすかったですか。自信ないですorz ストーリー性褒めて頂けて嬉しい限りです。
>ろあーーー!
ショタって需要あるんでしょうかw ――まあ確かにショタは可愛(ry
ジュゲム!*29
>感動しました、、
多種えrだけじゃなくて感動要素も入れてみた(かった)ので。詰め込みすぎてカオスにならなくて良かった……
>おもしろかったです!久しぶりにいい小説に会った気がします。
大会中・前後にも大会に関係してない作品でいい物ありましたよー。まだまだです。
そして面白いという感想も多いんですね。ふむむ
>ストーリーもえろも充実していて、良かったです!
これが(とロアが)決定打だったんでしょうか・・・?とにかく混ぜるな危険にならなくてこちらとしてはそれが良かったです。
ある意味で十分デンジャラスですけど
>エロ特化だけじゃなく、ストーリーも伴ってたのが決め手かな。
これぞエロ!とは思ったよ

決め手だったんでしょうか。ふむ。これぞ変態!って感じはちょっと狙ったんですけどねw
あ、ちょっとどころじゃないって? ですよねww
前回仮面大会の狐眼様の傾向を若干意識していたかもしれませんね……
>エロの比率が高いから、俺はこっちです。
ショタロアは俺が貰っときますね

コメント強制開示が仇になったぽい一例ですね。某作品とやはり比較はされてたというか何と言うか。
純粋な一票だとは思うんですが、複雑な気持ちになりました。
そして、ばよえ~ん!*30ですね。
>ロア。
八連鎖目ですか。凄いですねここまで来るとw
>いろんな濃い関係性がありながら、エロが失われない・・・。最高です!
そういって貰えると素直に嬉しいです。ありがとうございましたー。
>すごく面白い作品でした!!
カオスにならなくって(ry ありがとうございましたー。
>紳士なシアンがサイコー
シアン?! 彼の口調は本当に悩みました。リユン以上に悩みの種でした実は。
本当は紳士という名の変態さをもっと出したかったんですが……
容量と時間とキャラのバランスと個人的趣向の関係で割愛させていただきました。
映画放映されてから破錠しない事を祈っていますw
>ロアかわいいですね。
九連鎖。最初のコメントを含めると実質10連鎖ですか。
約三分の一を担ってくれてた訳ですね――
可愛いキャラして罪な仔!
>プレイが豊富だから。
嫌いなプレイは無かったでしょうか? 一票感謝します。
>とにかく最高でした!
そう言われるととにかく嬉しいです!
>いろいろ詰め込んでておもしろかったです
詰め込みすぎて、カオスになら(ry
>新ポケを早くもエロに!面白かったです!
カップリングも決め手になったんでしょうか。何にしても面白くって良かった……
>エロさがよかった
淫獣(ロアはまだ染まりきってないですけど)だらけですけどねww
>すごく良かった!
ありがとうございましたー。
>す・・・・・凄すぎる・・・。
秩序が無い的な意味ででしょうか?(w
ありがとうございますw
>>手紙を遺したとはいっても、黙っていなくなるなんて、そんなのやっぱりおかしかったんだよ。
という言葉が印象的でした。
新ポケが出たから入れるという訳では無く、素直に感動したので一票入れさせて頂きます。

締めでこのコメントですか。このコメントに限ってはリアルタイムで見させて貰いましたけど、ちょっと泣きそうになりましたつД`)
主人公がようやく報われた的意味でもw
素直な感動と言うのがまた。コメントがくすぐったいです。
ありがとうございます。


以上、たくさんの有意義なコメントと票を送ってくださって、この度はありがとうございました。
為になりましたし、素直に嬉しかったです。



――では、またいつか


*1 精子
*2 ≒リビング
*3 ≒痴呆
*4 ≒(両)手、または(両)腕
*5 ひだ。びらびらの部分
*6 まだまだちっちゃな、牡の性器を差す侮蔑語
*7 ちっこの事
*8 作者と同じ人間種
*9 股間・局部
*10 性器の収納部分
*11 ≒結婚
*12 同性愛的な
*13 童貞卒業
*14 処女膜喪失
*15 お漏らしなど
*16 プライド
*17 ツンデレのツンの方
*18 ディープやフレンチでない、唇を軽く重ねる程度のキス
*19 牡の局部。陰茎。雄。ちそちそ
*20 酒に弱い者
*21 ≒媚薬
*22 ≒理解不能語
*23 嘘、おとり
*24 ぷよぷよ。主人公アルルの一連鎖目
*25 アルルの二連鎖目
*26 アルルの三連鎖目
*27 アルルの四連鎖目
*28 アルルの五連鎖目
*29 アルルの六連鎖目
*30 アルルの七連鎖目以降

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Last-modified: 2013-05-16 (木) 00:00:00
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