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磁石

/磁石

※ポケモン×人の描写があります。苦手な方はご注意を。

磁石 

 writer――――カゲフミ


 体が重い。上半身を起こそうとするがびくともしない。
首から上だけはどうにか動かすことが出来たが、それだけではどうしようもないのだ。
「ふふふ、なかなか良い眺めだ」
 そんな俺を前にして、どこか小馬鹿にしたような声が聞こえる。
俺の顔がどんな風に映っているのかは分からない。だが、自分より明らかに弱い者を虐げて喜悦する残酷な笑みが俺の目には映っていた。
見上げるような形でそいつを睨む。精一杯の抵抗だ。それくらいしかできない。今俺はボーマンダに組み敷かれていたのだから。
 俺の肩は鋭い爪が生え並ぶ前足でがっしりと抑えつけられている。直接爪が立てられていないのがせめてものすくいか。
肩から下の部分は、ボーマンダの腹の下に敷かれている。ドラゴンポケモン特有の丈夫な厚みのある皮膚だ。ちょっとやそっとでは傷がつきそうにもない。
「どうした、もう終わりか?」
「……くっ」
 再び俺は肩を動かそうと力を込める。だが執拗なまでに抑えられたボーマンダの前足はぴくりとも動かなかった。
唯一自由に動かせる頭を左右や上下に振って、勢いをつけてみるが何の成果も得られなかった。
がっくりと力なく仰向けになった俺を見て、ボーマンダは口元を引きつらせて笑った。そこから覗いていた鋭い牙は、いつでも俺を殺せるという暗示なのだろうか。
「降参するなら、助けてやらないこともないぞ? 貴様の態度次第ではあるがな……」
 力で圧倒的優位に立つ者の言葉だ。確かに俺の命はいまこいつの手の中で転がされているようなものだ。
ボーマンダが一噛みするだけで、爪を少し横に払うだけで、俺の命の炎は簡単にけし飛んでしまうのだ。
「じょ、冗談じゃない!」
 だが、そんな事実に反して俺の中から浮かび上がった言葉は、あくまでこいつに対する抵抗の意を示すものだった。
大人しく従うという選択肢もあったはずだ。俺の中のプライドか、あるいは虚勢がそうさせていたのか。
まさか殺されはしないだろうという奢りがあったのかもしれない。何の根拠もないと言うのに。
 俺の言葉を聞いたボーマンダの表情が一変する。哀れな俺を嘲るような表情から、明らかな殺意の籠った恐ろしいものへと豹変を遂げたのだ。
「ひっ!」
 予想だにしなかった迫力に、俺は思わず声を上げてしまっていた。
くだらない意地なんて張らずに、ボーマンダの言う通り従っておけばよかったという後悔が頭を掠めたが、時すでに遅し。
「どうやら貴様には自分の立場を分からせる必要がありそうだな?」
 ボーマンダは頭を俺に近づけ、強い口調でそう言った。熱い吐息が俺の抵抗する心を根こそぎ奪っていく。
ふと、首筋に冷たい感触が走った。見ると、ボーマンダが右の前足を俺の喉元に宛がっているではないか。
嘘だろ。こいつ、まさか本気で俺を、俺を殺すつもりなのか? だが、さっき垣間見えたあの目には間違いなく殺意が見て取れた。
「おかしな真似をしたら、どうなるかは分かるだろう?」
 ボーマンダが肩から首筋へと爪を移動させたため、咄嗟に自由になった左腕を動かそうとした瞬間、釘を刺される。
だめだ。俺の動きは完全に見抜かれている。振り上げかけた左腕から自然と力が抜けてゆく。
もっとも、何の武器も持たずに左腕一本だけで、この状況を打破できるはずはなかったのだが。
ボーマンダは爪の先端を俺の喉元に当て、ゆっくりと滑らせていく。ぎりぎりで傷をつけないように加減はしているようだが、俺は気が気ではなかった。
「あ、あ、た、助けて……」
 もうこいつに抵抗しようという意思なんてこれっぽっちも残っちゃいない。ただただ助けを請うだけの生存本能が俺を突き動かしていた。
ボーマンダは酷薄な笑みを浮かべた。相変わらずその瞳には冷たい殺意が込められている。
「最初からそうしていれば助かったというのに。くくく……貴様も愚かだな」
 この状況を心から楽しんでいるような、嬉々とした笑い声が聞こえてきた。
弱者を虐げて悦に浸っているこいつが、一度は反発した俺を助けてくれたりするだろうか。
ボーマンダは爪の動きを止めようとしない。いつ肉が裂けるかもしれないという恐怖感は、着実に俺の精神をすり減らしていく。
「そろそろ……終わりといこうか」
 爪の動きが止まった。一瞬安堵したが、今度はさっきよりも強い力で俺の首に先端を押しつけてくる。
あと少し力を込めれば皮膚が破れてしまいそうだ。やめろ。俺が悪かった。さっきの言葉は取り消すから。助けてくれ。
「あ……や、やめ……助け……」
 もう言葉にならなかった。ただひたすらに助けてくれと懇願する視線を送るだけだ。俺の頬をつうっと涙が伝っていった。
それを見たボーマンダは俺の顔に口を近づけペろりと涙を舐め上げる。生暖かい感覚が頬を撫でた。
「貴様のその表情、その目つき……ふふふ、最高だぞ」
 震えながら助けを乞う俺を前にして、ボーマンダはくつくつと笑う。満面の笑みだ。こいつは弱者を虐げることで自分を満たしている。
そして、そんなボーマンダに組み敷かれ、首筋に爪を当てられたままの俺も――――笑っていた。



「満足したようだな」
 ボーマンダが俺に語りかける。もう爪の感覚は感じない。
血を出させなかったのはさすが、と言うべきだろう。強く押さえつけられたため、跡は残っているかもしれないが。
「ああ。今日のは特に最高だった」
 荒い息を上げながら、俺は涙交じりの笑みで答えた。
涙が出るほど恐ろしい思いをしたのに、心は満たされている。つくづく偏っているな、と思わされる。
俺は被虐によって快感を得る、いわゆるマゾヒストというやつだ。そしてこのボーマンダは俺とは逆で相当な加虐嗜好のあるサディストだった。
俺の手持ちではあるが、関係は単なる人間とポケモンよりもさらに深い部分まで踏み込んでしまっている。
ボーマンダが俺を組み敷いていたのも、俺を殺すようなことをほのめかしていたのも、すべてはお互いのひどく偏った性癖を満たすための行為だった。
俺が爪を宛がわれて震えながらも快感を感じていたように、ボーマンダもまた怯える俺を見てほくそ笑んでいたのだ。
「だけど、あんなに強く爪を立てられるとは思ってなかったよ。あのときは本気で殺されるかと思った」
「ふふ、私は本気だったぞ。今でもこうして貴様を……」
 スッと前足の爪を差し出すボーマンダ。一瞬ぎょっとさせられたが、それが後からじわじわとした心地よさになる。
こんな感じでボーマンダと戯れるのはもちろん初めてではない。もちろんやるときは互いの合意の上だ。
しかし、回数を重ねるごとにどこまでが演技でどこまでが本気なのかの区別がつかなくなってきている。
「冗談だ。なかなかの反応だったな、ふふふ」
 そう言ってボーマンダは爪を引っ込めた。口ではこう言っているが、きっと心のどこかでこいつは俺を殺してみたいと思っているような気がする。
無条件で俺をおびえさせたあの恐ろしい目は、ボーマンダの俺に対する殺意が形になったものではないだろうか。
最近のこいつを見ているとどことなくそれを匂わせるものがあるのだ。
「本当に冗談なのかどうか分からないんだよな……お前の場合」
「何をしでかすか分からない、私のことが怖いか?」
「まあね。だけどそれも俺にとっては悪くない」
 中途半端な恐怖感ならばいつの間にか満足感へと変わっている。
さっきのような本当の恐怖を味わっても、心のどこかではきっと快感を感じていることだろう。
そのうち生存本能よりも先に性癖が先走るようになってしまうのではいかと心配になるが、今のところは大丈夫。たぶん。
ボーマンダの真意は量りかねるが、俺は引き際をわきまえているつもりだ。
「互いに程よく興奮してきたことだ。更なる嗜虐といこうか」
「……攻めるのは程々にしてくれよ。身が持たない」
「心得ているさ。気絶されては悲鳴も聞こえなくなるからなあ、ふふふ」
 もし断れば、俺を腹の下に敷いたまま動いてくれないだろう。選択の余地はない。
力ではボーマンダに敵うはずがないので、今は完全にこいつの方が優位に立っている。
こんな風にボーマンダの言いなりでも別に構わないか、と思っている俺はトレーナー失格だろうな。
いいさ。こいつとの関係は、ボーマンダの手の内で俺が転がされることで上手く成り立っているのだから。





 ボーマンダが仰向けの俺を組み敷いている。さっきとよく似た体勢だ。違う所と言えば、俺が一糸まとわぬ裸だということ。
そして、俺の肩は爪で抑えつけられてはいないということだ。生身の体に爪を当てて体重をかければ無事には済まない。いくら俺でも流血はごめんだ。
 まだ興奮の余熱が冷めない俺の肉棒がボーマンダの腹に触れている。
そそり立ちかけたものを無理やり押さえつけられて少し痛い。だが、後のことを考えるとこんなものは痛みのうちに入らないだろう。
「なかなかいい具合だな。先ほどの戯れはそんなにも刺激的だったか?」
「ああ。これ以上ないくらいにね……って、お前も人のことは言えないだろ」
 俺の膝上辺りに生暖かい湿ったものを感じる。ボーマンダも秘部の表面が濡れる程度には興奮していたらしい。
「程よい湿り気だ。これならば貴様のも易々と滑り込むだろう。……いくぞ」
 ボーマンダは腰を浮かせると、俺の肉棒の上に割れ目が当たるように調節する。
そして俺の先端と秘部が触れたのを確認すると、何の遠慮もなしにぐいっと腰を沈めた。
「え……あ、うあっ」
 肉棒の先が肉厚の壁に沈んだ。先端からの刺激が体中を走る。
全く、心の準備をする時間も何もあったもんじゃない。分かってはいたが、今回も容赦ない攻めが来ることを覚悟しなければならないだろう。
「あ、ぐ……うう」
 ボーマンダはずぶずぶと徐々に腰を深く落としてくる。だんだんと増してくる熱と圧迫と快感に俺は呻きを抑えられない。
もう俺の肉棒は根元まで完全に呑まれてしまっていた。元々大きさが違うため、仕方のないことではあるのだが。
ボーマンダの割れ目は底なし沼のごとく、俺の肉棒ごとき簡単に沈めてしまう。
「ふふ、どうした。辛いのか?」
 にやにやした笑みを浮かべながら、ボーマンダは俺に問いかける。
こいつは肉棒からの刺激なんて求めてはいない。自分の下で、自分の中で苦しむ俺を見て快楽に浸っているのだ。
なんて薄情な奴だと毎回思わされるが、そんなボーマンダの馬鹿にしたような表情に興奮してしまう俺も俺だ。
やれやれ。本当に救いようがないな。俺も、こいつも。
「だ、大丈夫だ。今のところは」
「ならいい。思う存分叫んでもらうぞ、くくく」
 根元まで差し込んだまま、ボーマンダは腰を前後に振る。愛液で湿っているため滑りがいい。
俺の肉棒はボーマンダの肉壁に挟まれたまま、ずるずると成すすべもなく揺り動かされる。
「うああっ……ぐあっ!」
 まるで熱湯の中にいるような熱さ。ボーマンダが腰を振るたびに分厚い肉壁は、俺の肉棒を先端から根元まで余すところなく無慈悲に締め上げる。
耐える余裕なんて与えてくれやしない。何度も何度もグリグリと執拗に繰り返される激しい動きに俺はあっという間に絶頂を迎えてしまう。
「うああああっ!」
 大きく体を仰け反らせ、俺はボーマンダの中に精を放つ。ビュルビュルと勢いよく出た感覚はしたのだが、割れ目から漏れ出したような気配はない。
あれだけ出したというのに、俺の精をすべて飲み込んでしまったとでもいうのだろうか。本当に恐ろしい奴だ。こいつは。
「気持ちいいか?」
「あ……はあっ……あ、ああ。いいよ」
 じわりじわりと湧き上がってきた快感と倦怠感。ぐったりとした力ない目で俺はボーマンダを見上げた。
きわめて手厳しい攻めだったが、幸い意識はしっかりとしている。何の抵抗もできずにあっさりと屈してしまったのは雄として少し悔しいが、どうあがいてもボーマンダが相手では分が悪すぎる。
「そうか。では、第二ラウンドといくか」
「え……ひゃあっ!」
 いきなり腰を浮かせたボーマンダ。射精したての敏感になった肉棒を、肉壁が撫であげる。
「私の中はまだ満たされていない。満足するまで付き合ってもらうぞ、ふふふ」
「え、そんな、さっき出したばかり……うあああっ!」
 俺の返事も聞かずにボーマンダは今度は上下に腰を振る。
半分だけ外に出ていた肉棒が再び飲み込まれたと思えば、またすぐに外へと押し出される。
だが完全に引き抜いてはしまわない。俺の肉棒を捕まえたまま確実に何度もいたぶるつもりだ。
ぬちゃ……ぐちゃ……びちゃ……。湿った水音を立てながらボーマンダはその行為を反復する。
「あ、がああっ! や、やめ……ぐああああっ!」
 肉棒から伝わってくる刺激はもう気持ちいいなんてものを通り越して、痛い。
直接的な痛さではない。ただただ伝わってくるのは衝撃。神経の奥底に強烈な打撃を与えられているかのようだ。
「ははは、いいぞ。素晴らしい叫びだ!」
 悲鳴を上げる俺を見て、こいつは悦に浸っている。とんでもないサディストだ。
かくいう俺も物理的な衝撃は辛かったが、精神的にはどこかでこの強烈な刺激を堪能している。他者のことは言えないか。
だが、いくら精神面がご満悦だったとしても、根本的な肉体が耐えられなければ本末転倒だ。
「あぐうああああああっ!」
 断末魔のような叫びとともに、俺は二度目の絶頂を迎えた。とはいえ最初でほとんど俺の精は出尽くしてしまってる。
出たのか出てないのか分らないくらいの僅かな量の精液が、ボーマンダの割れ目に飲み込まれていった。
全身が痙攣したかのようにピクピクと脈打つ。快感か、それとも痛みか、よく分からない感覚が全身にじわじわと広がっていく。
「ふふ、もう出ないのか?」
「あ、う……は……ああ」
 ボーマンダの声は聞こえる。顔はぼんやりとしか見えないが、きっと勝ち誇った笑みを浮かべていることだろう。
すべての精を尽くしぼりとられ、抜けがらのようになった俺の意識はゆっくりと遠のいていく。
目の前が白く染まっていく。もうボーマンダの声も聞こえない。もしかしたら俺はこのまま――――。



 ふいに、湿った感覚が頬を駆けのぼる。激しい攻めを受けている間にいつの間にか涙が流れていたらしい。
その涙をボーマンダが舐めとっていたことに、しばらく経ってから気が付いた。
「久々だったからな。私も少し調子に乗りすぎたようだ。大丈夫か?」
 怪訝そうな顔つきだ。こいつのこんな表情は初めて見たような気がする。
俺は何度かまばたきをしてみる。次第に意識がはっきりとしてきた。何とか大丈夫そうだ。
「あ、ああ。一応、生きてるよ」
「そうか。ならいい」
 俺の返事を確認した途端、普段のボーマンダに戻る。ねっとりとした絡みつくような目つき。やっぱりこっちの方がいい。
意識を失いかけたときは、正直やばいと思った。このままボーマンダと絡み続けていれば、いつかは本当にボーマンダに殺される日が来るのかもしれない。
「私がいる限り、貴様は死なせないさ」
「え?」
「いつか私に殺されるかもしれない、などとくだらないことを考えているようだったからな。貴様に死なれては、私の貴重な楽しみが減ってしまう」
 楽しみ、か。ボーマンダらしい言い方だ。だが、かえってそのほうが信憑性がある。この言葉は、信じてもよさそうだ。
「……なんだ。お見通しだったってわけか。ほんと、何にかけても俺はお前には敵わないな」
「貴様の顔はいつも見下ろしている。微妙な変化に気づかないはずがないだろう。私に隠し事など片腹痛いわ」
 そう言ってボーマンダは顔を近づけ俺の頬をぺろりと舐める。一瞬ぎくりとしたが、頬に触れた舌はほんのりと温かかった。
もしかするとこれは俺に対するボーマンダなりの愛情表現なのかもしれない。可愛い奴だ、なんて口が裂けても言えないが。
「次に貴様と絡むときは、覚悟しておけよ。ふふふ」
「ああ。そのときはよろしく頼む」
 不敵な笑みを浮かべるボーマンダに、俺は引き攣った笑顔を返す。
次は本当にさらなる激しい攻めが待っていそうで怖いが、俺を壊してしまわない程度にはこいつも考慮してくれていたらしい。
 今度戯れるときも俺は恐怖に震えながらも心のどこかでは笑っているのだろう。そして怯える俺を見て、ボーマンダも笑うのだ。
全くもってどうしようもない曲者だ。俺も、こいつも。極端なサドと極端なマゾ。それでなかなかバランスはとれている。
まあ、曲者は曲者同士、これからも仲良くやっていきますか。なあ、ボーマンダ。



               END



何かあればお気軽にどうぞ。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • コイルが出てくる話かと思ったらドSとドMで磁石でしたか。これには唸りましたw ボーマンダ姐さんの口調がカッコイイです。
    ――might ? 2010-01-01 (金) 23:50:43
  • 主人公と彼女の関係を表すにはちょうどいいタイトルかなと。
    ボーマンダの♀はどうしてもこういうイメージになっちゃいます。
    レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2010-01-03 (日) 11:40:30
  • マゾには、堪らない作品ですね。

    ごちそうさまでしたぁー!
    ――どこかのM ? 2013-03-01 (金) 06:31:10
  • そうしたコンセプトで書いた作品ですのでそういっていただけると嬉しいです。
    レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2013-03-05 (火) 17:53:20
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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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