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砂漠に舞う花びら

/砂漠に舞う花びら

※この作品には触手プレイ、強姦の描写があります。
どんな描写もどんとこいな人はそのままどうぞ。

砂漠に舞う花びら 

writer――――カゲフミ

 激しい風が轟々と吹きすさんでいる。
晴れた日には自然の芸術とも言えそうな美しい風紋を作り出すきめ細かい砂の粒。
しかし、ひとたび強風に煽られればいともたやすく宙を舞い、砂漠を移動する者達の行く手を阻む。
小高く盛り上がった砂の丘も、貴重な水源として多くのポケモン達が集まるオアシスも、砂漠のあちこちに無骨に佇んでいる岩々も、今は何も語らずただひたすらにこの砂嵐に耐え忍んでいるかのようだ。

 そんな荒れ狂う砂漠の中、地面から突出した岩の陰に身を潜ませている緑色の姿が見える。
体の色合いは深緑と黄緑に分かれており、背中の羽根は燃えたぎるような赤色をしていた。
そして、目を覆う赤いカバーの奥に黒いつぶらな瞳を宿している、砂漠の精霊とも呼ばれるポケモン、フライゴンだ。
時折襲いかかる激しい風に、目を閉じ歯をくいしばって吹き飛ばされまいと岩にしがみついているようだ。
「……まいったなあ」
 収まる気配を見せない嵐を前にして、ため息交じりにフライゴンは呟いた。
もともと体の構造上、砂嵐に耐性はある。過去にも吹き荒れる砂をものともせずに、砂漠を強行突破したこともある。
その驕りが祟ったのか。予想以上に強力な砂嵐になすすべもなく吹き飛ばされてしまったのだ。
人間の中にはフライゴンが砂嵐を引き起こしているという説を語る者もいるが、今はその砂嵐に彼女自身が翻弄されてしまっている。現実は厳しいものだ。
「こんなことなら無理しないで、大人しくしとけばよかったよ……」
 この砂漠を散歩するのはフライゴンの日課でもあった。多少の砂嵐ならば問題なく外を飛ぶことができる。
砂が舞う砂漠を空から見渡すのは、いつも見ている景色と雰囲気が違ってなかなか面白いのだ。
今回の砂嵐は今まで見たこともない大きなものだった。危険は伴うと分かってはいたのだが、この嵐の中を飛ぶのはどんな感じなんだろうと興味本位で飛び出していった結果、今に至る。
「……わっ!」
 再び強い風が吹きつけ、岩を掴むフライゴンの手に力が入る。
風をしのぐという使用目的としては、この岩では頼りない感じが否めなかった。
もっと大きな岩の影を見つけたいのは山々だったが、何しろ視界が悪すぎる。
カバーのおかげで目に砂が入ることはないが、見渡す限り砂、砂、砂で周辺の状況が何も分からない。
さらに風が強くなれば、岩ごと崩れて吹き飛ばされてしまうかもしれない。それだけは何とか避けたかった。
だが、今の自分に何ができるというのだろう。大いなる自然の力の前には砂漠に住み慣れたポケモンとはいえ、無力なのだ。
姿勢を低くし、極力風を受けないようにしながら耐え忍び、砂嵐が去るのを待つ。それが彼女に出来る最善であり、また唯一のことだった。


 フライゴンは岩影からそっと顔を出した。激しい轟音も、荒れ狂う砂の音も、もう聞こえない。
まだ残っている乾いた風が砂粒を顔に運んでくるが、この程度ならば全く問題なかった。
周囲の景色もはっきりとしている。何とかここで凌ぎ切れたようだ。
「ありがと、助かったよ」
 共に砂嵐に抗った岩に手を当て、フライゴンはお礼を言う。
もちろん返事が返ってくるとは思っていない。自分の身を守ってくれたことに対する感謝の気持ちだ。
岩にお礼を言い終わると、フライゴンはぐるりと辺りを見回してみる。この景色に見覚えはない。
砂嵐が過ぎた後だから多少は雰囲気が変わっているのかもしれないが、それでも一度訪れたことがあるならば記憶に刻まれているはずだ。
ここは自分が来たこともない場所。初めての土地だ。どうやらかなりの距離を砂嵐で飛ばされてしまったらしい。
「……ふう」
 ようやく砂嵐をやり過ごしたというのに。一難去ってまた一難とはこのことか。これからどうしたものかと、小さくため息をつくフライゴン。
この砂漠は広い。色々な場所を散歩で回ってきたとはいえ、まだ見たこともないような場所もたくさんある。
砂漠の果てがどうなっているのか、どこにつながっているのか。全貌は彼女にも分からないのだ。
 もう一度念入りに周囲を見渡してみる。砂嵐が治まったのなら他のポケモン達が活動を始めていてもおかしくない。
この辺りに住むポケモンに聞いてみるのも悪くない選択だ。フライゴンの住処はオアシスの近く。ここからオアシスの方角が分かれば、ちゃんと帰れるはず。
「……!」
 何かがいた。視線を動かすのをやめ、ある一転を凝視する。
さっきまで自分が掴まっていた岩とは比べ物にならないくらい、大きな岩が連なった岩石地帯。
その近くに黄緑色の姿をした何かが、確かにいる。目の錯覚ではない。
砂漠にいる黄緑のポケモン。サボネアかノクタスか。あるいは自分と同族かもしれない。
あのポケモンがオアシスの方角を知っているかどうかは分からないが、ここで途方に暮れているよりはずっといい。
とにかく行ってみよう。フライゴンは軽く羽根を羽ばたかせ、ふわりと舞い上がると岩の元へと向かった。


 そびえ立つ岩は遠くで見るよりもずっと迫力があった。今までこんな巨大な岩は見たことがない。
あらためて砂漠の雄大さを実感させられる。岩々の大きさに圧倒されながら、フライゴンはそっと地面に降り立った。
さっき見えていた黄緑の影はサボネアでもノクタスでも、ましてや自分と同じフライゴンでもなかった。
黄緑色をした二つの球のような形が、細い茎のようなものでつながっている。一方は地面にどっしりと構え、もう一方はゆらゆらと風になびいていた。
また、よく観察すると体のところどころに黄色い模様がいくつかある。そして、風になびいている方には黒い影のような窪みも見て取れた。
これは一体何なんだろうか。この周辺にしか生えない植物か何かだろうか。しかし、緑豊かなオアシスでさえ、こんな植物は見たことがなかった。
「何だろ?」
 もっと近くで見ようとフライゴンは緑色の物体に顔を近づける。
そのときだった。揺れていた球形の黒い窪みに、黄色い光が宿ったのは。
「ん……誰かいるのか?」
「うわっ!」
 いきなり聞こえてきた声に、思わずフライゴンは後ずさる。
何かの植物だと思っていた物体が突然喋り出したのだ。驚くのも無理はない。
窪みの奥にある黄色い光は、じっとフライゴンを捉えている。どうやら風で揺れていた方が頭で、この光は目なのだろう。
「さっきの声は……あんたか」
「えっと……君はポケモン、だよね?」
 なんとも形容しがたい外見だ。口も見当たらないのに雄を思わせる低めの声が響いてくる。
初めて見るものに対する不安からか、少し距離を置いたままフライゴンは訊ねた。
「ああ。俺はユレイドルってポケモンだ。こう見えてもな」
「ごめんね。私、君みたいなポケモン、見たことなかったから」
「別に謝らなくても。広い砂漠なんだ、知らないポケモンがいたっておかしくはないさ」
 ユレイドルは喋っている間もまるで身動きをしない。わずかに瞳が揺れるくらいで、何だか岩を相手に会話しているような感覚さえする。
表情が全く見えないため何を考えているのか分からないが、声を聞く限りは割と穏やかな雰囲気だ。
変わった姿をしているが、話してみると案外普通なのかもしれない。フライゴンの警戒心が徐々に薄れていく。
「あんたは……フライゴンか? ここらではあまり見かけないが」
「あ、紹介がまだだったね。私はライア。フライゴンのライア。えっと、君は……」
「俺はレイドだ。よろしくな、ライア」
「うん、よろしく」
 お互いの紹介も終え、握手を交わそうと無意識のうちに手を差し出していたライア。
彼の体では握手は無理かという考えが頭を掠めたのとほぼ同時に、自分の手に何やら柔らかいものが触れていた。
レイドは頭の付け根から桃色の触手を伸ばしライアの手に当てていた。これは彼なりの握手、といった感じだろう。
ふにふにとして柔らかく、それでいて弾力もあり、なんとも言えない奇妙な質感がライアの手のひらを駆け巡る。
「すごい。そんなことができるんだ」
「俺に手はないからその代わり。差し出された手を無視するのは失礼だからな」
 そう言ってレイドは触手をライアの手から離し、ひょいと引っ込める。
どうやら頭の付け根部分に収納できるようになっているらしい。見れば見るほど奇抜な体のつくりである。
「あ、そうだ。君に聞きたいことがあるんだけど……」
「ん?」
「ここからオアシスがどの方角にあるか分かる? 私、その近くに住んでるんだけど、さっきの砂嵐で迷子になっちゃって……」
 本題を忘れてはいけない。元はと言えば道を尋ねにここまで来たのだ。
自分が会ったことのないポケモンとの出会いの感動に、危うくかき消されてしまうところだった。
もしレイドがオアシスの方角を知っていたのなら、それ頼りに進んでいくのだが。
ライアの質問に、彼は少しだけ頭を揺らす。これは頭を捻って考えている、と見て良いものだろうか。
黙っているレイドが何を考えているのか感じ取るのは、ここからオアシスまで自力で帰るよりも難しいかもしれない。
「オアシス……ねえ。悪いが俺はこの体だ。あんまり自由に動けないもんでね。方角は分からんよ」
「そっか……」
 ライアは残念そうに項垂れて、小さくため息をつく。誰かに聞けば何とかなるかもしれないと思っていたのだが。
なかなかそう上手くは行かないか。確かにレイドの体を考えれば、それは仕方のないことかもしれない。
どっしりと地面に緑色の根をつけている彼が、砂漠をすたすたと歩いていく姿なんて想像できなかった。
「そう言えばライア、あんたは一人でここまで来たんだよな?」
「うん、そうだけど。どうして?」
「いや、さっきから気になってたんだが、あんたの後ろにいる奴、連れじゃないのか?」
 レイドはするりと触手を伸ばし、ライアの後方を指す。
彼との会話に夢中で、全く後ろなんて気にしていなかったけど、いつの間にか他のポケモンが後ろにいたのだろうか。
ライアはくるりと振り返る。しかし、目に入ってきたものは果てなく広がる砂漠の風景だけ。ポケモンの姿らしきものはまるで見当たらなかった。

 不審に思いながらも再びレイドの方へ向き直ろうとした瞬間、ライアは自分の体がふわりと浮かびあがるのを感じた。
自分で羽ばたいたわけじゃない。何か強い力に押し上げられる感覚。見ると、レイドから伸びた触手が腰に巻きついている。
頭の付け根から突出したそれはさっき握手を交わしたときのように、一本だけではない。無数の触手がゆらゆらと蠢いている。
「……ひっ」
 上げかけた悲鳴をどうにか呑み込むライア。もしかすると、生々しい触手の迫力に圧倒されて声すら上げられなかったのかもしれない。
気がついた時には両手両足と首筋、そして尻尾に触手を巻きつけられ、レイドの目前で空中に固定される形になっていたのだ。
「え……?」
 状況がよく飲み込めず、ぽかんとした表情のままレイドを見つめるライア。
レイドに後ろの奴は誰だと聞かれて、振り返ったけど誰もいなかった。そこまではいい。
だが、その直後に自分の体を拘束しているこの触手は何なのだ。彼はなぜこんなことを。
振りほどこうと手足を動かしてみても、きつく縛られたそれは解ける気配を見せない。
「ねえ……レイド、あの……」
「…………」
 レイドは黙ったまま何も答えない。この状況でどんな表情なのか分からないままの彼の沈黙は不気味だった。
もしこれが何かの冗談で、彼が柄にもなく笑いながら触手を解いてくれたらどんなに良かっただろう。
「れ、レイド、何を……んっ!」
 彼の頭の付け根から新たに伸びた一本の触手が、ライアの口内に入り込み口を塞ぐ。
手のひらで触ろうが舌で感じ取ろうがうねうねとしていてやっぱり奇妙な質感だなと、ライアは感覚的にそう思った。
「はあっ……れ、レイド、これは何のつもり!」
 口に突っ込まれた触手が引き出された。息と声を荒げながら、ライアは彼に質問をぶつける。
今までにない怒鳴りつけるような強い口調だったが、それでもレイドが怯むようなことはなかった。
「まあ……悪く思わんでくれ。ゆっくり行くから」 
 そう言ってレイドはライアの両足に巻いた触手を動かし、ゆっくりと股を開いていく。
この時点で何をされるか、ライアは本能的に悟った。何とか抜け出さなければならない。
この触手を爪で引きちぎってでも、牙で噛み切ってでも。逃げなくては。
ライアが腕に力を込め爪を振るおうとしたまさにその時、レイドは彼女自身の唾液でぬらぬらと光る触手を、秘部にそっと這わせた。
「ひゃっ!」
 敏感な部分を撫でられ、ぴくんと反応するライア。
くすぐったさにも似た快感が全身を駆け巡る。腕に込めようとした力もどこかへ抜けてしまった。
だめだ、もう一度。ライアは再び力を入れようとするが、やはりその瞬間にレイドは割れ目に触手を伸ばしてくる。
いくら力があったとしても、局部を撫でまわされながらでは存分に振るうことが出来るはずもない。
「あんたの動きは触手を通して伝わってくる。解けやしないさ。変に力まない方が、気持ち良くなれるぜ」
 この触手はレイドの手足のようなもの。表面に触れている者の動きは手に取るように分かるのだろう。
だからと言って、はい分かりましたと素直に頷くなんてライアに出来るはずもない。
「じょ、冗談じゃ……ひゃああっ!」
 レイドを睨みつけ抵抗の意思を示そうとするも、悲しいことに体は正直だった。
再び割れ目に触手を這わされ、ライアは嬌声とともに全身で反応を示してしまう。
だが、今度の刺激は息継ぎの間を与えてくれなかった。くにくにと何度も執拗なまでに撫でまわされ、快感の波が止めどなく襲いかかる。
断続的なだけあって、さっきよりもかなり心地よい。無意識のうちに悦に入った笑みすら浮かべてしまっていた。
「あぁ……はあっ……」
 刺激の持続時間を長くしたのは、ライアの抵抗心を根こそぎ奪うためだったのだろうか。
彼女の体はすっかり快感に捕われてしまっていた。両手にも両足にも尻尾にすら力が入らない。
ぐったりと力なく項垂れてはいたが、とろんとした瞳と息を荒げる様子は艶めかしさを放っている。
「……いい顔だ。さて、こっちはどうだ?」
 ライアの両腕に巻きついた触手がずるりと動く。にゅっと先端を伸ばし彼女の胸の部分に触れた。
ぱっと見では気づかないであろう小さな小さな二つの突起。レイドの触手はその場所ですら探り当て、乳首をくりくりと弄ぶ。
「ふわあっ!」
 秘部を撫でつけられるのとはまた違った感覚に、ライアは身悶えする。
直接的な激しさは少ないものの、じわじわと着実に迫りくる快感。
レイドはどこまで自分を骨抜きにするつもりなんだろう。
快楽の渦に溺れていく中、ふとそんなことがライアの頭を掠めた。
「なかなか感度がいいな。さて……そろそろか。ライア、行くぞ」
「え……?」
 レイドの全身へのそつがない愛撫により、ライアの割れ目は滲み出た愛液でじっとりと湿っている。
となればこの後何が来るのか。彼女にもたやすく予想できた。本来ならば拒絶の意志を見せるべきところ。
そうしたところでレイドを抑制することなんて出来はしないだろうが、せめてもの抵抗だ。
しかし、今のライアにはそんな気力すら残されていなかった。曖昧な返事を返すことしかできない。
レイドの触手を使った巧みな技巧の前に、抗おうとする心は粉々に打ち砕かれてしまっていた。
 ライアの秘部に触手を宛がうと、レイドはそのままずぶりと内部へと侵入させる。
触手も十分に濡れていたため滑りがいい。大した抵抗もなくライアの雌はレイドを受け入れていた。
「ああぁっ!」
 触手を通して伝わってきた衝撃。ライアの体が大きく揺れ、体に巻きついた触手がぎしぎしと軋んだ。
ただ撫でられていたときとは比べ物にならない、強烈な快楽が彼女に襲いかかる。
ライアの中に入り込んだレイドは触手を小刻みに動かしながら、さらなる刺激を送り込む。
「……っ!」
 もう、刺激に対する呼応だけで精一杯だったのかもしれない。
何らかの声を絞り出そうと口を動かしてはいるのだが、悲鳴にすらなっていなかった。
自分に触手を伸ばしているであろう目の前のレイドの姿も霞み始めている。
「……終わりにしよう」
 呟くように言うと、レイドは触手を前後させ激しくライアの膣内を責め立てた。
砂漠の乾ききった空気とはひどく対照的な、じっとりと濃厚な湿った音が辺りに響き渡る。
そこから間髪入れずにレイドは彼女の胸にも触手を当て、乳首への愛撫までも再開させた。完全に止めを刺すつもりなのだろう。
敏感な部分を三か所も同時に弄られて、耐えきれるはずもなかった。
「ひゃああああんっ!」
 最大限の絶叫とともに、ライアは果てた。堰を切ったように溢れ出した愛液がレイドの頭や触手、根っこの部分にぴちゃりと付着する。
触手に吊るされていたライアの秘部の位置がレイドの頭の前だったため、彼は全身に愛液を浴びていた。
「ああ……いい具合だ、ライア」
 愛液に塗れ、全身をつやつやと光らせながら悦に浸った声を洩らすレイド。
表情からはやはり何も察することはできないが、きっと彼も感じているのだろう。
暫時目を閉じていたレイドだが、やがてライアに絡ませていた触手をするすると解いていく。
そして、まるで彼女を気遣うかのように首筋と背中に触手を回し、そっと仰向けに横たわらせた。
「あぁっ……はあっ……」
 肩を震わせて荒い息を上げるライア。下半身はまだひくひくと痙攣を起こしているかのようだった。
股ぐらから伝わってきた快楽に全身が侵食されていく。ただただ、気持ちが良かった。
焦点が定まらない。目に映る砂漠の空もどこかぼんやりとしていて、虚ろだ。
うっすらと笑みを浮かべた締まりのない表情のまま、ライアは快感に身を委ねていたのだ。


 どれくらいの時間が経ったのだろう。ライアはのそりと体を起こした。
背中や羽根に付着した砂がぱらぱらと落ちていく。もう視界はぼやけていない。
まだどことなくふわふわとした感覚は残っているが、大分意識ははっきりしてきた。
「落ちついたみたいだな」
「…………」
 冷静になった分、ついさっきまで自分が何をされていたのかが鮮明に浮かび上がってくる。
レイドに対する怒りや憎しみの一つでもぶつけたくなるかと思いきや、不思議とそんな感情は湧いてこない。
ただ、彼にいいように弄ばれてしまったこと。そして、犯されておきながら何だかんだでしっかりと感じてしまったこと。
それらを思うと無性に悔しくて、悲しくて。ライアの目からは涙が零れ出ていた。
「酷いよ……レイド」
 溢れ出した涙は赤いカバーに少しだけ溜まり、そこから外へと流れ出てライアの頬を伝う。
レイドは何も答えずに、するりと触手を彼女に伸ばしていく。そして、また何かされるのでは、と身を竦めたライアの頬にそっと触れた。
もう頬は冷たくない。レイドが自分の涙を拭ってくれていたと気がつくのに、少し時間がかかった。
「砂漠での水分は貴重だ。たとえ涙だろうと無駄にはできない。特に俺はな」
 そう言ってレイドは自分の体についたライアの愛液を拭っていく。
さっと一拭きするだけで水気を含んだてかりは見る見るうちに消えてしまう。どうやらあの触手にはかなりの吸湿性があるようだ。
「ねえ……君はどうして私を襲ったの?」
「どうしてそんなことを聞く?」
「ただ単に欲望を満たすためだけなら、私を気遣ったりはしないでしょ?」
 最中は意識する余裕がなかったが、後から考えてみると所々に彼女に対する優しさが多少ではあったが感じられた。
もちろん彼の行いをライアは許したわけではない。ただ、レイドの言動を見ていると、自分のことしか考えず欲望のままに襲いかかって来たのとは少し違うように思えたのだ。
「砂漠じゃ水を得るのもなかなか厳しくてな。あんたみたいに自由に動けるならいいが、俺はこの体だ。オアシスに出向くってのも無理。
自然に身を任せるにしても、砂漠で降る雨なんてたかが知れてる。てな訳で、こういったことから水分を得てるってわけだ」
 こういったこと、とは先ほどのライアに対しての行為を指すのだろう。
雨も少ない。オアシスにも行けない。となると水分を得るにはこれが最も合理的な方法なのかも知れない。
「欲望を満たすためってのは間違いじゃないな。だが、それは性的なものじゃない。強いて言うなら渇きを癒すため。生への欲望ってところか。
だから俺はあんたが雌だから襲ったわけじゃない。俺に水分を提供してくれるんだったら性別なんて気にしないさ」
「じゃあ……君は生きるために私を?」
 ずっと水分が取れないままではいずれ死んでしまうだろう。
いつでも好きな時にオアシスで水を得られ、お腹がすけばそこに生えている木の実を食べられる。
そんな豊かな環境のもとで暮らしてきたライアは、飢えや乾きと言ったものがいまいち想像できなかった。
「……その言い方は自分の行為を棚に上げるみたいで好きじゃないんだが。まあ……そういうことだ。物珍しさで俺に近づいてきたポケモンを襲って、俺は水を得てる。あんたもそうだったな」
「う、うるさいな!」
 顔を赤らめてライアはそっぽを向く。自分はまさにレイドの術中に嵌ってしまったというわけだ。
悔しいが、何も言い返すことが出来なかった。初めて見るポケモンへの好奇心ばかりが前に出て、警戒を怠っていたのだから。
「もちろん、罪悪感がないわけじゃない。ライアには酷いことをしたと思ってる。もしあんたの怒りが収まらないって言うなら、気がすむまで俺を殴ってくれたっていい」
 レイドとしても、半端な気持ちでライアを襲ったわけではないようだ。後から反撃を受けることも覚悟の上だったのだろう。
自分の性欲を満たすためだけに襲われたのならば、好戦的ではないライアでも彼に爪を振っていたかもしれない。
しかし、彼は生きるためだと言った。大切なものを奪われた喪失感はまだ残っていたが、厳しい環境に果敢に立ち向かっているレイドをライアは傷つける気になれなかった。
「レイドを引っ掻いたって、君が私にしたことが消えるわけじゃない」
 首を横に振りながらライアは言う。彼に仕返しをしてやろうという意思は、もうなかった。
レイドの頭が緩やかに揺れた。もしかするとこのとき彼は笑っていたのかもしれない。
「……優しいんだな」
「勘違いしないでよ、君を許したわけじゃないから」
「それは重々承知の上だ。だが、俺のテクニックはなかなかだっただろう?」
「……!」
 喘いでいた自分の姿が無意識の内に思いだされ、ライアは顔を赤らめる。
気が遠くなりそうなくらい気持ちが良かったのは確かだ。あんな感覚は今までに味わったことがない。
レイドが今まで積み重ねてきた技術の賜物は、ライアの体にしっかりと刻み込まれていた。
「可愛いな、あんた」
「茶化さないでよ、もう!」
「そう怒るなって。オアシスの方角、教えるからさ」
「えっ?」
 レイドから発せられた意外な言葉。もう当初の目的は果たせなかったと諦めかけていたのだが。
いきなりの切り出しに、ライアの怒りも一時的にどこかに吹き飛んでしまった。
「オアシスはここから西に向かっていけば見えてくると思うぜ。太陽が出てるから方角は分かるだろ?」
「ちょっと待ってよ、どうして君がオアシスの場所を知ってるの。自由に動けないはずじゃ……」
「今まで俺の所に来たポケモンの中に、その近くに住んでるって話してた奴がいたんでね。行ったことはないが場所は知ってる」
「……じゃあ、私が最初に聞いた時、知らないふりしてたの?」
「まあな。せっかく来てくれたんだ。ただで帰すのは勿体ない」
 ではあの時レイドは嘘をついていたと言うのか。全くそんな感じはしなかったのだが。
いや、もともと表情が読めないレイドなのだ。相手を欺くのにこれ以上の御誂え向きな条件はない。
声の調子さえ繕ってしまえばさも本当のことを言っているように聞こえる。少なくともライアにはそう聞こえたのだ。
「君には……敵わないな。何にかけても」
 レイドの嘘を見抜けなかった時点で、既にライアは彼に負けていたのかもしれない。
相手にするにはいろいろな意味で強すぎたのだ、彼は。
「それじゃ、私は早いところお暇するよ」
「ああ。もし、俺の技術が恋しくなったらいつでもでも来てくれていい。歓迎するぜ」
「だ、誰が!」
 ついかっとなって反応してしまい、それがレイドを楽しませていることに気がつく。
きっと心の中では笑っているはずだ。頭が小刻みに揺れている。
注意して見てみれば彼がどんな感情を抱いているのかもそれなりに感じ取れそうだった。
きっと、これ以上話しているとますます彼のペースに乗せられてしまう。もう道は分かるのだ、さっさと帰ってしまおう。
くるりと向きを変え、羽ばたこうとしたライアだがふと思い留まる。紆余曲折は経たが、最後にはちゃんと道を教えてくれたのだ。
どんな相手であろうとも、それに対する感謝の気持ちは伝えておきたかった。振り向いて、レイドと目を合わせる。
「一応お礼は言っておくよ。道を教えてくれてありがと」
「それじゃ、またな、ライア」
「うん、またね……じゃない! さよなら、レイド」
 さよなら、はわざと強調して言ってやった。彼に対抗するにはこれくらいの心意気がないといけない。
ちょっと油断するといつの間にかレイドの雰囲気に呑まれてしまいそうになる。
ライアの必死な様子に、さすがの彼もこれ以上の悪乗りは自重してくれたようだ。
頭の付け根から一本だけ触手を伸ばし、小さく左右に動かして合図を送る。手を振っているつもりらしい。
あえて無言のままなのは、おそらく彼の心遣いだ。余計な一言を言えば、彼女の神経を逆なでしてしまうだろうから。
 とても別れる時に互いに手を振りあうようなフレンドリーな関係ではないような気がした。だから余計に、レイドの行動が妙に不釣り合いで可笑しく思えたのだ。
彼と握手を交わしたときと同じように、ライアは自然に手を上げて微笑みとともにレイドに応えていた。
どうしてその時笑顔でいられたのかは自分でもよく分からない。それは、変な意地を張らずに素直な気持ちで彼と別れを交わせたことによる、清々しさのようなものだろう。きっと。
そんなことを考えながらライアは振っていた手を下ろすと、背中の羽根を震わせて地面を蹴り飛び立つ。
一度たりともレイドの方を振り返りはしなかった。
そうすれば、もう二度と彼に会わずにいられるような気がしていたから。

   END



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  • 普通なら騙してパクリ!でも可笑しくないのにこの自己犠牲精神、レイドって良い奴ですねぇ。個人的には特に好きな作品です。レイラの胸に手を当てる仕草とかも可愛らしくて、カゲフミさんのフライゴン愛を垣間見た様な作品でした。
    ――might ? 2010-01-02 (土) 00:16:06
  • ユレイドルは水分だけで生きてそうな気がするので、こうやって水分を取っているという設定に。
    表情が良く分からないから落ち着いた雰囲気にしようと考えた結果、レイドのようなキャラになりました。
    純粋に、とは口が裂けても言えませんがこれもフライゴンへの愛の形なのです。
    レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2010-01-04 (月) 16:09:27
  • カゲフミ様……凄く……えろいデス……
    こういう表現方法とかもうすこ~し勉強したいなぁと思います。
    ――九十九 ? 2010-02-19 (金) 23:31:34
  • 今回の話は触手でしたので。通常の絡みにはない表現も入ってます。
    なかなか癖のある代物ですが、えろさを求めるならば逸材かな、と。
    レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2010-02-21 (日) 21:41:21
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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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