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短い話の集まり

/短い話の集まり

作者GALD

ところどころ官能的な話が入ってます。ご注意を。


「でさー」
私は今日も彼の話を聞いていた。帰ってくると一日の出来事を話すことが彼の日課になっていて、いつのまにか愚痴を並べ出す。いつも口数を減らさずに喋り続けることは、私は称賛に値すると関心する。
「でな、聞いてるのか?ウインディ。」
浅い思考に浸りすぎたようだ、うんとそっけない私に不満そうな顔の彼。再び今日の不満を彼は延々と並べだす。トレーナーとの関係だから従ってるとかじゃなくて、ありふれたこのやりとりが好きでやってる。昔は話を聞くことが面倒だったけど、進化するにつれて大人になったのだろう。
「はぁ、どうしたらいいんだろうな。」
全部吐き出した彼は座っている私の背中に倒れ込む。無言で彼は私の毛を弄る。彼はいずれ結論に勝手にたどり着き、私は頑張ってと返すのまでがお約束。無責任なのかもしれないけど、不用意な発言が私には選択できない。けれど彼の手は背中から前足の脇下辺りの毛にちょっかいを出している。
「それにしても成長したよな。」
「え?」
急に彼が両腕をそれぞれ前足二本の後ろ側から通して輪を作る。唐突な行動に私はその場で固まる。
「昔は抱き上げれたのに、随分大きくなってさ。特に…」
急に何を言い出すのか、輪で囲んでいる部位が場所だけに変に体温が上昇する。そして連なる言葉に期待さえよせてしまう。確かに私は成長という過程を通りぬけて、今の体に進化した。精神的にも身体的にも大人へと発展している。引き金にかかっている手、あと少しで打ち出される言葉に何かを寄せてしまう。
「体重が比べらないな、持ち上げれるわけがない。」
彼が両腕で抱き上げようとするにも、ミリも浮かび上がらない。爆発したのは恥ずかしさではなく、無論怒りによって私は噴火した。


何でこんなことになってるんだろうか。寝ると言ってからお休みのキャッチボール、そこまでは流れとして何ら問題ない。横になって布団をかぶる、最近は冷えてくるようになったので、あらかじめ備えておく、ここまでは定石である。けれども、今は準備していた物を自ら蹴りだしている。原因は両サイドに居座っている熱源だった。いくら冷え込むと言ってもまだ序の口程度のもので、高温体を間近に二匹も置いていると汗だって流れ出てくる。贅沢な事にも冷房をつけて応戦している。
「ねぇ、私でしょ?」
何度目なんだろうか、さっきから選択を強いられている。両側にいるウインディとキュウコンの戦場に置かれている。それだけでも問題なのに、二匹とも無理にベットに乗り込んできたため、辺りを熱気が支配している。おまけにボリュームのある毛に挟まれているため、保温効果が高まり熱が逃げずにいる。ストーブを出すには早い季節に、二台のストーブに熱風の挟み打ちを受けている状態だ。
「貴女はいつも何もしてないでしょ、私しよね?」
片腕に柔らかい毛の感触が覆いかぶさる。地を駆ける雄々しいウインディの足でも、こうも優しいタッチをされてしまっては払いのけるにのけれない。大きな体の割に迫力の欠ける笑顔、ちらつく八重歯が動揺を誘ってくる。けれども、進化まで同期に合わせて、与えるものも均一化している二匹に不平等が生じる選択が出来ない。
「そんなわけないでしょ、私よね?」
空いている腕が熱気を纏った毛布に包まれる。キュウコンがぐっと手を抱きついて顔を間近にまで狭めてくる。直に触れると毛布などとは違って、癖になりそうな優しい肌ざわりのキュウコン。不意に重なってしまった赤色の目には魔力でもあるのか、魅かれてそらせなくなりそうだ。どっちかなんて選べないと当惑している。しかし、ここに来て状況が変わってくる。
「それじゃ、貴方がおりてよ。」
「それがいいわ、さっさとおりて。」
ベットの上からおろされたのは他ではなく自分だった。どうやら、二匹ともクーラーを受けてゆっくり寝たかったようだ。床に掛け布団と投げ出され、今年一番寒い夜を過ごすことになった。


冷え込み始めた夜に一匹で息を吸い込んで一気に吐き出す。叫び声が響き渡る。俺は誰かと群れるのが嫌いだった、だから群れることが主流の種族でありながらも自ら離れた。理由付けとして、トレーナーの下につくと言って群れからの追跡も逃れた。しかし、集団生活を捨てた俺に与えられた新しい環境は、誰かの下につく事は気に入らなかったが、食糧に困ることはないし快適なものに変わってしまった。独りで勝手に出回っていても、どこかで他人との接点を持っている事が、結局は群れを出た所で同じように思える。本来の自分の目的から逸れている気がして、いつの間にか心には不安が薄くかかりだしていた。それが段々と厚くなっていき、自信を無くすぐらいに暗くなって自分が分からなくなる。自分が正しいと自信がなくなる時、こうして一人で夜ぞらに吠えるのが習慣になっていた。叫ぶことで溜まった不安を全部吐き出している。こうすることで、心の中に厚みを増していく不安が晴れていく。ただ、世の中には弱い犬ほどよく吠えると言う言葉があるように、同時に無知のまま飛び出した自分の弱さを感じるのも事実。自分の姿が犬に似ていて、毛が灰色といかにも世の中の底のような色合いに思えて、いつもぐっさりとくる。この気持ちも振り払うために、満月に向かって大きく声を響かせる。普段にもまして、満月に向かって吠えるのはとても気持ち良いものだ。響き去っていく自分の声を最後まで聞き終えると、初めて俺は背後から近寄ってくる足音を捕えた。
「お、いたいた。こんなとこで雄叫び上げてなにしてるんだよ。」
「お前こそ何しにきた。俺の事は放っておけ。」
背後で足音の正体が凍えている。こんな夜更けに人間と言う種族が備えなしに出まわれば当然の結果である。でも俺は違う、独りでいても何もなくても平気。なのに、俺は何もできないこいつの元に帰ってしまうのだ。そこが自分の弱みに思えて嫌なはずなのに、辿り着いてしまう。
「そりゃ、心配ぐらいするさ。お前にはあんまりかまってやってないしな、それに家の方が寒い。」
後に聞いた話によると馬鹿二匹が冷房ガンガンでベットを占拠しているとのこと。でも他人事で、俺は関わりたくない。同情なんて無価値だと分かっているのに、ほっとけなくて勝手に口が動いてしまうのだ。
「仕方ないな、戻るぞ。一緒に寝てやるから、多少はましになるだろ。」
吐いてしまった言葉は響いて消え去って、取り返しがつかない。また、自分から寄ってしまうのだが、後悔は何一つない。
「おっ、有難いね、グラエナ。」
前言撤回、たまには群れるのも悪くない。メロメロでもつかってちょっとからかってやるか。


最近暇が増えてきている。馬鹿が馬鹿に合わないような事を始めたせいで、私が時間を持て余すという現象が生じている。だからこうしてソファの上でゴロゴロしながら無意味な時間の長さを感じるしかない。馬鹿が馬鹿な事をして迷惑をかけるのは自然な事なのだから、私は多めに見てやっているつもりだ。けれども、馬鹿が真面目な事をし始めることによるつまらなさと言うのには、どうも耐えがたい。そう、馬鹿が似合わないのに読書を始めたのだ。読書と言うのは本を持っている者のみが浸る世界。読者が本のみと向かい合い、外の世界をシャットアウトして出来上がる空間にもぐりこむ行いである。それによって疎外される私は独りで暇する始末である。馬鹿を攻め立てたいといういらだちもあるが、同時にその馬鹿を真面目にさせるほどの能力を秘めたその本にも私は興味があった。けれども、本は読者に顔を合わせる生き物で私は中身を知らない。ブックカバーで身を包んで警備も厳重である。それに馬鹿は教えてくれないと来たものだから、一層中身が気になってしまう。力でねじ伏せるのも選択肢としては用意されているが、そこは馬鹿の体の心配をして私は控えている、本に真面目に食いつく辺りから、体がおかしいのかもしれないが。都合よく私はエスパータイプでもないので、超能力といった類の能力は使えない。気長な作業が嫌いな私は、結局考えるのが面倒になってきて答えが奪い取るに収束する。
「もう一度だけ言うわ、中身を見せなさい。」
流石に奇襲するのも私は可哀想に思って、ソファの向こう側の椅子に座る馬鹿に警告をしてやる。この寛大な心遣いを馬鹿には感謝してほしいものだと、私は内心で威張る。そんな心遣いも馬鹿は返事を返さずに棒に振る。こが私の導火線に火をつけた。少しでも平和に解決しようとしていた私の優しさを黙殺しようとするのなら、もう戦争しか残されていなかった。宣戦布告をした相手に容赦する必要なない、馬鹿からみてソファの影に位置する私の行動は簡単には読み取れない。お得意の素早さを生かしてソファから飛び降りた瞬間には、体はすでに彼の方に向きあっている。次に馬鹿が音に反応して本から目線をそらした時にはすでに私は駆け出している。勢いに乗った体を軽く飛びあがらせると目的のものが手に届く距離に入り、素早く咥えると私とともに床に落ちて行く。
「おい、返せって、馬鹿。」
「誰か馬鹿よ、馬鹿は黙っときなさい。」
取られたことでこちらの世界に戻ってきた馬鹿は、取り返そうと手を伸ばすが私の速度にはついてこれず、間合いから私を取り逃がす。追いかけ合いになれば勝負は見えている。すぐさま私は部屋を移して安全地帯に逃げ込む。そして本の仮面を取り払うと、ようやく素顔を私に見せる。
「ブラッキーやエーフィの愛情…?」
いつか忘れたが、私があまりに反抗的だから真面目に接してやれなかったと馬鹿が嘆いていた記憶がよぎる。本人なりに後悔して勉強していたと怒りが嬉しさで中和にまで達する瞬間だった。適当にページを開けていた私は、再び怒りが抑えれなくなる。
「おい、返せっ…あ…中身見ちゃったのか。その、あれだ。誤解だからな、俺はお前の事を思ってだな。」
「五月蠅いわ、覚悟しなさい。こんなもんばっかり呼んでるから、私と変に目を合わせれないんでしょ。」
よくよく考えてみれば素顔と対面した時点で、私は本のピンク色の表情を疑うべきであった。目線を合わせてきたかと思えば、変な逸らし方をさせたのもこれが犯人だろう。殺気までの素早い動きとは逆に、一歩づつ怒りで床を踏みながら私は馬鹿に接近していく。馬鹿は恐怖のあまりに逃げ腰で一歩づつ私に合わせて下がっていくが、壁と言う行き止まりにぶつかる。そこで初めて馬鹿は自分で逃げ場がないことを認識する。その後どれだけの電流が流れたのか、馬鹿の悲鳴からでは測定できないだろう。


俯く情けない俺の主人。俺がまだ主人よりも身長が低い頃からの付き合いになるので、こうやって落ち込んでいる時は誰か構ってやらないと立ち直らない事は、俺の身にしみている。馬鹿なのか賢いのか俺は知能というものの図りかを知らないので分からないが、そんなことで悩むような俺の主人ではない。学校での他人との付き合いで上手くいかなかったり、仲間内でもめたり、関係でのいざこざを起こすと自分が悪かったとひどく攻める性格だから、誰かが何とかしてやらないと、折れている心を立て直すのは難しい。しかし、今日に懐疑って誰も助けにはいらないので、仕方なしに俺が来ているというわけだ。それにしても、相変わらず非常に分かりやすいほどみじめな様だ。顔の曇り具合だけでも容易に分かるのに、おまけに座り込んで床と向かい合っている。
「どうしたんだよ、らしくねぇじゃねぇか。」
「あぁ、聞いてくれよ…」
今から主人の愚痴タイムである。毎日気長に聞いてやっているウインディの器の大きさをこうも感じされられる事はそうはない。言ってしまえば他人事で、その上愚痴なのだから聞いていても楽しいわけがないのに、飽きずに聞いているウインディは俺の口では心を広さを語れない。その当の本人とどうやら食い違いをしてしまったらしい。ウインディが最近主人の愚痴を聞いてくれなくなってしまったらしいのだ。たぶん、余計な事をつけ足して、それがウインディの気に障ったのだろう。それも結構な事を言ってしまった所まで容易に推測できる。そこまで怒ったりしない、穏やかな性格の持ち主であるからだ。とりあえず、俺はなだめて、立ち直らせようと気を引っ張ってみるが、重く沈んでいる主人を立ち上がらせる事が出来ない。
「わかったよ、しかたねぇ。必勝法教えてやるよ。」
そう言って主人に立ち上がって背を向けるように俺が頼むと、主人は頭を垂らしたまま情けない背中を俺に向ける。不意を衝いてくれと言わんばかりの脱力っぷりに、これは駄目だと俺は痛感せざる得ない。俺は主人の両肩に手を乗せてから、正面に回し両腕をクロスさせる。そしてちょっと力を加えて俺の方に寄せてから、主人の頭と俺の頭を並べる。
「こうやって、謝ったら大丈夫だ。」
耳元で囁くと、やっているこっちが意識してしまう。けれども、俺の絡みつこうとする意思を振り払って主人は飛び出て走っていく。俺の中の何か冷めてしまい、一安心してため息をつくと遅れて気がつく。冷めてしまったのではなくて、不安に冷まされてしまったことに。急いで俺は後を追いかけるとすでに手遅れとなっていた。主人はウインディはあろうことか、ウインディの前足の脇辺りに手を伸ばして、両腕で巻こうとした瞬間俺は目を閉じた。主人は見事に中に振り上げられ、落ちる音とともに俺は額に手をあてた。
「どさくさに紛れて何してるんですか。」
「リザードン話が違うじゃないか…」
俺の固有名詞が出たとたん背中に寒気が走ると、俺はウインディのまなざしに体の自由を奪われていた。その後、二人とも並べらて説教を食らったのは言うまでもない。


「なんでついてくるんだよ…」
俺は大きくため息をついた。足音などは聞こえないが、変わりに翼に酔って乱れる風の流れを感じる。このような大きな生き物が俺の後ろにいては、誰も近寄りたがらない。
大きさは一般的な大きいといわれる大きさを超えている。それに容姿も優しさのかけらもなくて、急に向かい合えば腰を抜かしてもおかしくない。大きさ問わずに周りに恐怖をまき散らす外見をしているのだから、そいつだけでなく近くにいる俺までもが自然と変な視線を浴びることになる。
強者が弱者を従えるのはこの世の中の定理。近場にいる俺は奴隷か何かとよく勘違いされる。けれども、俺はこいつに従わされてるわけでもなければ、俺はこいつの従者でも何でもない。ただ、後ろをつけられているそれだけである。
「私の頭は三つで、貴方の名前には三が入ってるじゃない。これって偶然かしら?」
「関係あるか。」
適当なこじつけを俺は切り捨てた。そもそも俺の名前にはサンが入っているが、それは数字の三を意味しているわけではない。現に俺は頭は一つで、四足歩行で、毛の色も二色で、属性も雷一色のサンダースである。三という文字に何処もかすりはしない。
ひどい当て付けだと、俺は後ろを振り向いて言い放ってやるつもりだった。けれども、振りかえるとまずはどこに目を合わせたらいいのか分からなくて、そして何より巨体に驚き威圧されてしまう。頭を三つも並べられると誰に話しかけたらいいのかという話になる。
いるだけでも辺りに恐怖を散らして、おまけに俺には悩みの種を植え付けてくる。でも俺は、それを摘み取ることが出来ない。
「ようやく向いてくれた、さみしかったよっ。」
三つの頭が三方向から迫ってくる。最初の頃は生物の本能として食われると思って、反射的にかわしていた。今となっては慣れが生じてしまって逃げるそぶりも俺は見せない。何故俺はこんなに気に入られているのか。
「お前な、俺についてきて何が楽しいんだ。俺の何がいいんだよ、全く。」
「それはね、可愛いからじゃないかな。それに…」
雄であるにもかかわらず、それに雌に可愛いなどといわれるのは俺としては恥ずかしかった。普通雄が雌に向かって言う言葉という偏見が俺にはあって、恥ずかしさを抑えれない。大きさを考慮すれば、サンダースなんてサザンドラにとっては可愛いサイズなのかもしれないが。
「特にねっ、夜になると可愛く鳴くのがね。」
おい止めろと俺は叫んだ。三つ頭があるにも関わらず、度の頭も聞き入れてはくれない。離れて警戒している連中のうちに、数匹が勘付いてざわつき出す。
「一つの頭で十二本分飲んだら、三十六でサンダースになるってやったときね。もう目がトロンとしててねっ。」
辺りのざわめきが結構な大きさとなる。もう俺はこいつを黙らせることよりも、回りに対しての機嫌取りや事実の隠蔽に躍起になっていた。
まず俺の力では防げないだろうというのが諦めた理由だ。やけくそになって、走りだしていっそのこと現実を投げ出したくなった。でも、それはそれで取り返しがつかなくなるので抑えて、俺は必死に周りに呼びかけた。けれども、物わかりの悪い連中たちは、いつもはビビって避けるサザンドラの言葉をこう言う時に限って真面目に聞く。結局俺は嫌になって走り出した。
聞こえる声全てが、悪意のあるように思えると、一層足は速く動いた。
どれぐらい走り抜けたのか、記憶にない。ただ声の届かない、雑音の響かない所まで音から逃げた。
可能な限り早く、目指せる限り遠くへ。独りで俯いて、俺は後悔した。また現実から逃げたんだと、自分を責めた。俺はすぐに逃げ出す臆病者だと、痛感したけれども、途中足を止めることはできなかった。生まれた時と変わらない。だって、俺はそう言う者ではなくて物として生まれてきたのだから。この姿にも、偶然ではなく必然として進化したのだ。
元々は俺は野生ではなくて、飼われていた。その頃は飼われているなんて意識はなかった。ある日に俺は事実を叩きつけられた。俺の性格はどうやらサンダースと言う種に適しているらしいのだ。それだけを理由に俺を育て、戦わせていただけである事をを知ってしまった。俺は道具として飼われていた存在の一匹に過ぎなかったのだ。その事実に俺は背を向けてすぐさま走り出した。
それから、俺は自分を変えれるように努力を積んだ。多少の強がりから始め、言葉遣いも少し荒くなるように意識した。でも、それは表面を作れるようになっただけで、結局中身を変えることはできない。俺はそう言う物なのだから。
「やっと見つけた。駄目じゃない、逃げださないって言ったのに。」
「お前が余計なことばっかりいうからだろ。」
言い訳はよくないとサザンドラに一括させると、俺はすぐさま謝ってしまう。本当に自分でも情けないぐらい弱い。
「またそうやって、すぐ弱くなる。今度は首輪でも付けてみる?」
「そんな恥ずかしいの出来ないよ…。」
「冗談だよっ、大丈夫だって、ちゃんと私が追いかけてあげるからさっ。」
いつも追いかけてやると俺は励まされていた。この一言は俺の速度では、どうにも振りきれない音なのだ。いつどこに行っても、同じ声で同じ発音で同じ響きで俺のどこかからどこかへ響き渡っていくのだ。どれだけ現実から離れようとしても追いかけてくるのだった。


「種族の壁を超えて交えるって、案外簡単なのかもしれないわね…。」
ランニング中でも走る能力が高いサンダースは余裕持って走っているため、難なく言葉を発することができる。公園をよぎる際に、ふと子供たちとポケモンが戯れるのを眼に移して、微笑ましくなりそういったのだった。もちろん、彼女が見てつぶやいているのに応答する余裕がなければ、理由も知るわけもなく公園を通り過ぎた。
それが今日の困難の元凶であり、面倒な一日の始まりであった。朝ランニングから戻って俺はどうもその言葉が引っ掛かり、変に考え込んでしまった。
サンダースと体同士で触れ合ったのが最近であるため、不意にその事が思い出されてその言葉と勝手に連結してはなれない。そう言うことを朝から求めているのではないかと、変に誤解をしてしまう。7けれども、確信はないので変に打ち出すわけにもいかない。外してしまった時の代償があまりに大きすぎて、こちらも行動が起こせないのだ。
時をただ待つことだけが最善の策と思われるこの状況は、俺にとってはとても苦痛である。隣に芽吹いてしまった邪魔な新芽を摘み取ることができず、養分を吸い取られているだけの植物のように、ただ悩むしかない。なんとなく床に寝そべるサンダースを見ながら解を探すが、一向に見つからない。
サンダースの方はと言えば、変な事を言っておいて悩む様子もなく気楽に寝そべっている。それを眺めているだけで、サンダースの存在が自由と目に写って、羨ましくなる。
自分はやるだけやって、あとは放置のような態度が今の俺には真似できない。
「さっきから何よ。ジロジロ見ないでもらえる?」
そんな自由なサンダースが俺の視線に不満を感じてすぐに口を出した。不満をすぐに口に出すことは、あまり理にかなったことではないのかもしれないが、俺の立場からすれば勇気のいることである。それを軽々とやってのけるほどサンダースは強気で、いつも素直じゃない。
だから、変に呟かれると裏があるような気がして困るのだ。とりあえずは何もないと俺も誤魔化そうとした。でも、言葉が彼女の声で脳に流れて口が止まった。壁を作って逃げようとしているような気がして、俺は少し立ち止まった。こうやって変に俺も意地を張るのを彼女は期待しているのではなくて、接する方を期待しているのではないかとこの時さらに誤解が深くなる。
無謀ではないが、間違った勇気を持って俺は引き下がらずに前に進んでしまう。サンダースの頭の上に手を置いて撫でた。これを予期していなかったのか、声には出さなかったが耳がびくっと震えた。耳が動いた後は一切動かなくなり、変に大人しくなり、お陰でこっちもなでやすい。
自分の頭の髪の毛なんて触っても、面白くもないしこんな感触は得られないだろう。とげとげしさのある割には、思ったほど硬い物はなくて、髪の毛ほどぱさつきもなく申し分ない。妙に大人しいサンダースはちょっと顔色を赤く染めながらも、嫌そうなそぶりは見せない。普段の強気で刺々しい彼女は勿論彼女らしくて好きではるが、こうやって照れている彼女もいいものである。
「今日、あんた変よ…絶対に。」
表情に俺がとらわれ過ぎていたせいか、目線が重なってしまい彼女は照れ隠しに言葉で気を紛らわした。
「変なのはお前の方だろ、朝から色々言ったくせに。」
「はぁ?何言ってるの?」
この時まだ俺は彼女が照れ隠しでしらばっくれてるものだと思っていた。ここでさがってはまたすれ違ってしまう気がしていた。もう、朝から俺と彼女はすれて違ってしまっているのに。
「異種族同士がどうのっていってたじゃないか。」
流石に押す気でいても、ここはダイレクトに言えずに俺は省略してしまう。けれども、こっちは熱い気持ちになっているのに対して、彼女はなんだか急に熱が冷めたようだ。
「あぁ、あれね。あれは子供が楽しそうに遊んでたからよ、ポケモンと。別に、そんな騒ぐほどの事じゃないわ。」
この時、俺は初めて近づこうとしていた彼女の面影が、虚像であったことに気がつく。同時に撫でている手が、何か尖ったものが刺さるような感触を覚える。そして、静電気でも流れたかのように焦って手を離す。サンダースの機嫌が180度変わってしまったのだ。
「で?あんたは何勘違いしてたわけ?」
さっきまで撫でていて少し乱れていた毛が急に姿勢を正して、シャッキリしている。殺気以外の何も感じない。
「お前が交わるとか何とか言うから、その、あれだ。俺が最近冷た過ぎるのかなって…な?」
「へぇ…嘘つける余裕があるなんて大したもんじゃない。覚悟しなさい、この馬鹿、変態。」
見破られたと思ってから逃げようとしてももう遅い。逃げ切れるはずもないし、俺の体には弱い電気が既にめぐっていて体の自由がきかない。正面から彼女の激しい接近を受け止めるしかなかった。その後体が麻痺して体が動かないのか、それとも喉がかれて声が出ないのか、俺はわからなかった。



※官能表現の含まれる話になります、苦手なかたは飛ばすか戻るかしてください。
















「ちょっとは心配しなよ、君のお腹には…」
彼女は数か月前子供を授かった。授かったと言っても、偶然に生み出されたものではなく、互いに求め合い、強い欲望に溺れた結果生み出された新しい生命。僕と彼女が第二に愛する愛しい存在が、今彼女のお腹の中にいると、見るだけで分かるぐらいに、お腹が膨れている。お腹の子供を気遣っていて、彼女は得意の走りをここ数カ月は目にしていない。そのせいか、色々と体力を持て余しているらしい。離しによれば妊娠というのは楽ではないはずだが、運動不足でストレスと体力が両足に重くぶら下がっている。
「勘違いしないで、ストレス発散であってあんたに興味はないの。」
さりげなく電気をバチバチさせて僕を脅しながらも、下手に言い訳をする。僕のタイプは水であるから、電流を食らっては洒落にならない事を、たぶん彼女も分かっている。尻尾の先は魚みたいになっていて、体も青色、頭にはひれみたいなものが三つ、首には変わった襟巻と、見るからに水タイプのシャワーズが僕。溶けた所で電流をもろに受けてしまうことには変わりはない。仮に、彼女が電気タイプでなくたとしても、性格上素直に物事を言えない面倒な性質で、僕も何度も鈍感扱いされてきた。どのみち僕に選択肢は残されていない、彼女の強い心を僕におることなんてできるわけがない。それに、速さのないサンダースなんて、恐れるには足りないかもしれないが、雌というのは相手にすると怖いものである。それに体は素直で相手をいたわる気もなく、雄の象徴を突き出している。その点では僕も素直じゃないのかもしれない。
「中に出さなきゃいいんでしょ?別にあんたのなんか欲しくもないし、ほら、さっさとしなさい。」
彼女が仰向けになるとやはりお腹が膨らんでいる。触ってみると、一層中の生命の存在を感じさせられ、彼女と今から行為に至ることに罪悪感を感じる。でも体は、こんな状態の雌でも異性と判断して、お腹の触るだけで赤面になっている無防備な彼女に心が魅せられてしまう。だからあの時と一緒、で、愛してるの言葉の代わりに行動で示すために僕は彼女の秘所に僕のをあてがい、そして入れ込んでいく。初めての時とは違って、彼女の中に僕のは容易に収まる。ここまでくればやることはもう決まっている。僕は必死で腰を振った、中に埋もれた部分は彼女の熱彼を味わい、抜け出した部分は空気の冷たさを感じながら。女が愛しいから、それも一つの理由になる。けれども、それ以上に喘ぐ彼女を、性欲に溺れる彼女を、僕のものになっていく彼女を、僕は見ていたいんだろう。妊娠している相手を犯すなんて曲がっているのかもしれない。でも、僕は行為を止めない。分かっていても止められないのだ。擦れ合い生み出される快楽も、きっと今の彼女でないと僕は感じないのだろう。お腹に卵があるにも関わらず、容赦なく僕は最深部めがけて何度も突きを繰り出していく。卵まで串刺しにでもするかのように、深く深く届かないから何度も何度も。彼女にしか与えてやれないお腹の子に対して、愛情でも僕は与えているつもりだったのかもしれない。けれども、過度の愛情表現に及ぶわけにはいかず、限界を寸止めして引き抜いた。お互いに、少し満足感を欠いてはいたが、それなりのものを得ていた。そうやって油断している僕の体に電流が走る。けれども、痛みはほとんどなく、変わりに体が痺れて硬直する。身動きの取れない僕を彼女が押し倒すなんて、何の努力もいらない。今度は仰向けに僕は倒れこまされる。彼女に手を上げたくはないし、それをすることが出来ないように彼女は念を入れたんだろう。だから、僕は彼女の口の中に入っていく僕のものを眺めるだけ。騒いでも、反対しても、変わらない。少し快楽が冷めて、限界から当座勝手しまっていたが、すべての快楽が抜けきったわけではない。舐めるなんて優しいレベルではなく、咥えられた僕のは再び破裂しそうになる。秘所であっても口であっても、何ら変わりない彼女の温もり。そして、柔らかい舌が優しく、あるいは魅了して僕にさせようと囁いてくる。僕は眼を閉じて、一気に口の中に愛をこぼした。どうじに、大きなエネルギーを消費して僕は、久々の性行為による満足感と脱力感を得る。
「いらないっていったじゃないか。」
彼女の嘘を見抜きながらも、僕はあえて聞いた。それは遅いけれども、やってしまったことに対する罪悪感と、彼女が満足してくれているかという不安によるもの。
「あんたの養分を、私の子に上げてるだけよ。私がいるわけじゃないんだから。馬鹿ね、本当に。」
喉元を液体がちゃんと全て通り過ぎてから、彼女は正直に答えてはくれなかった。満足げだった笑顔をを崩して見せてくれる羞恥の表情が、ちゃんと僕に喜んでくれている事を語ってくれていた。



官能表現が入ってます、注意してください。



空気の冷たさが増す。それは川にも影響を及ぼし、冷たくなった水の中にはほとんどのものが足を踏み入れない。その中で私は棒立ちして、ただ神経を研いでいる。私が水タイプというのもあって、水に対してはもともと耐性を備えている。
自分の進む士道を見出すために、水などでは錆びない刀のような、冷たさに負けない精神力を見出そうと毎日鍛錬を続けている。自分にぶつかり分かれていく水の流れおも忘れ、、水の音さえも無に感じるほどに集中する。それによって到達できる精神の世界、そんな物を私は目指していた。
その世界への道を見つけ、一歩づつ静かに足を伸ばしていく。しかし、静寂を破り突如私の周りには雑音の霧が立ち込めて、道を見失ってしまう。
現実世界に引き戻され目を開くと、耳に入っていたように水がいつもの速度でゆっくりと流れ、私の四足すべてに流れを遮られながらも、再び集まり下流へと向かっている。
そして気配のする背後を剥くと、緑色の手も足もない、見慣れない者が地面を這いずってきて、雑音を生じさせていた。川とは周囲に暮らす皆のものであるから、私は邪魔したことを何も咎めるつもりもなく、事を済ませて帰るのを待とうと川から一度上がる。けれども、この緑色は水を飲みに来た様子はなく、川に近寄らずに私に寄ってくる。
そして一定の距離に入った時、私は鋭く尖った刃のような視線を相手に突きつけた。
「何の用だ?」
「釣れないな。俺と遊ぼうぜ、そこのねーちゃん。」
私を雌だとして相手にするものは今まで一人として、私の前に現れたことはなかった。.それは私が望んでいることではないので、別に気にしたことなどなかった。むしろ、そのような出会いを求めて周囲を誑かす存在に対して嫌悪感を抱いてる。それに、このような軽い雄とは何も交える刃などなく、私は適当に返事を返してあしらった。
その瞬間、横からの気配で私は後ろにバックステップで引き下がり、横を向く。さっきまで私の立っていたところには、太い鞭が打ちつけられている。威力もなかなかのもので、地面の状態を見ればすぐに分かることだ。
その蔦は自然と縮んでいき緑体に姿を消す。一体どこにそんな長さがしまわれているのか、私は謎であったが、そんなことは関係ない。相手が戦意を持っているのならば、私は振り払わねばならないと思い、右前足の片方でもう片方の出っ張りを掴んで仕込み刀を引き抜いて構える。
私は剣術を磨いていてそこそこの自信がある。私が構えたことに対して、相手はニヤッと笑って体全身を一定方向に巻きトグロを作る。
そして、駒から抜ける紐のように回転すると葉の嵐が出来上がり私のもとに進んでくる。単調な動きで正面から向かってくるだけの竜巻に、いくら草と相性が悪いからと言って恐れる必要はなかった。落ちついて目を閉じるとともに右手を振り上げ、開いた瞬間に竜巻を両断する。威力を失った葉の嵐の後には、ぱらぱらと地面に葉が落ちていく。
通用しない事を悟った相手は、私の警戒していた蔦を私めがけて叩きつけてくる。この鞭のような類の攻撃は、刀に重きを置いている私にはリーチの都合上相性が悪い。
けれども、相手に合わせてぶつけることができれば容易に切断して対応することができる。自分が有利な事を鵜呑みにして、かつ近い道をする愚かな者の選択を選んだと私は呆れながらも刀を鞭の軌道に合わせる。
しかし、蔦は地面をたたき、私の刀は空を切ることに終わる。相手はとっさの判断で蔦を縮めて私のリーチから自分の蔦を逃がしたようだ。
私もまだまだ修行が足りないようだと、浅はかな発想にいたってしまったことを詫びるつもりで相手を真顔で見つめ直す。けれども、相手は依然とへらへらした態度を曲げない。
「やるじゃん、それならこれはどうかな?」
不気味に相手の目が光ると、急に体が動かしにくくなる。何かがのしかかっているわけでもないのに、体の自由の一部を失ってしまう。そこに容赦なく相手は、さっきのような速度の知れた竜巻などではなく、円を描くような軌道に乗せて葉を無数に飛ばしてくる。素早さを失った私は、刀で私の体をかばうも、正面全体を守り切れる訳もなく防げない部分を無慈悲に葉が切り裂いていく。リーフストームに飲まれた私は、忍耐で耐えることしか許されない。葉の嵐が過ぎ去った事を私は知らない。
眼を覚ませば冷たい地面に横になっていて辺りは真っ暗。夜まで寝込んでしまったのかと錯覚するほどの薄暗い掘ら穴の中に私は倒れていた。結構な広さもあって大型のポケモンでも数匹はともに寝泊まりできるスペースである。
起き上がるとさっきまでの緑色が目に入り、私は構えようと刀を抜こうとする。しかし、仕込み刀は二本とも両腕に納まっていない。はっとすると緑色が楽しそうに蔦で日本の刀を振り回している。
「これ探してるんでしょ?」
「貴様、何のつもりだ。こんな所までわざわざ運んできて何の用だ?」
「あーあ。本当に釣れないなー。まっ、いいよ別に。今から遊ぶからさ。」
二本の刀が地面に落ちた瞬間に蔦が私の方に伸びてくる。その単調な正面からの攻撃を私は横にかわして、刀のもとに走る。相手は伸びきった蔦を手前に引き戻さなければ、腕と足のない体では私と張り合うことはできない。
つまり、ここで私が刀を取るか、それとも相手が蔦を引き戻して再度攻撃に転じられるかが大きな分かれ目になっていると、私はこの瞬間だけに勝負をかけていた。
けれども、そんな勝負に勝利という二文字は存在しかなった。刀のまじかまで迫る事は、同時に相手に近づくと言うことを意味する。けれども相手本体に防御策はない、そう勝手に踏んでいた私は目にものを見せられることになる。
その大きな体に見事に私は巻き疲れて刀に手が届かず、相手との組合になる。組合と言っても、私は自由がかなり剥奪されてしまっての話である。
そして蔦を私の片腕づつに巻き付けて、さらに両腕を蔦一本でまとめあげると相手は私の拘束を解いて蔦を上にあげ、私は後ろ脚で立つような状態を強いられる。
「残念でした。だから、君じゃ勝てないって。僕はネルトっていうんだ。見ての通りのジャローダさ。ね、君の名前は?」
「貴様に答える義務などない。離せ、この下郎が。」
じたばたもがこうとするにも後ろ脚ではあまりにも不安定、もはや私に残されたものは刃のように鋭い言葉だけである。
ネルトは不満足そうにため息をつくと再度私の方を見て悪ふざけで、軽くウインクを飛ばす。私の前でそのような余裕が見せれるのも、この状態でほぼ勝利を確信しているのだろう。
悔しいが、それは事実だった。ダイケンキと呼ばれる種族は確かに、物理と特殊、つまりは近接攻撃と遠距離攻撃共にそれなりにたけた種族である。けれども、私は近接攻撃だけを極める道を選んでいるため、出せるのも水鉄砲程度。相性から見てもダメージは期待できない。
飛ばしてくるウインクさえもかわせず、私は睨むことしかできなかった。この時はまだ自我を保って、怒りに満ちていた。
けれども、すべての心が怒りに飲み込まれてしまったわけではなかった。毎日一人で暮らす日々、孤独に私は慣れきっている。そう思っていたし、別に誰かと接して何かしたい、そのような事は望んでいなかった。けれども、それは私の思い込みで、心のどこかには寂しさが生じていた。その僅かな隙間をこのウインクが大きく広げることになるとは思わず、私は睨み返していた。
即座に異変が気づいた時はもう手遅れだった。私の心は寂しさの隙間がありながらも怒りに満ちていたのが、今目の前にいる相手をこの寂しさを埋めてくれる雄、そう誤認と分かっていてもそう意識する体になっていた。
「ちょっとは素直になったんじゃない?ね、君の名前は?」
「貴様、一体何を・・・」
「まだ抵抗できるんだ。へぇ、頑張るねー。」
そう言って長い体を地面に這わせて私の目の前にやってくると私の口に、ネルトは口を宛がう。そして口の中に舌を入れ込んで、私の舌はさっきの私の様に絡みつかれる。今すぐにでもこの舌を噛み切ってやれば私は脱出できただろう。けれども、実行には移せなかった。体の相手に対する意識が強くなっていき、体が一層相手を求め受け入れるのだ。
自分で変だと分かっている。だから、私は相手に陥れられているのだ、私の本心ではないと言い聞かせて足手の舌の誘いには乗らずに踏みとどまろうと必死になる。
ネイトの舌は細く長く、私の口の中を這いまわったり私の舌に巻きついたりして、柔らかい感触を押さえつけてくる。この感触に私は意識が奪われそうになる。
ぴちゃぴちゃと口の中から出る音は外に響いて私の耳に入ってくる物と、私の体を中に響いて聞こえてくる物、共に同じであり自分が何をしているかということを痛感させる。清き士道の道を歩む者がするものではないことを語る。屈辱を覚えたからこそ、私は彼が舌を抜くまでは自我の欠片を持てたのだろう。
ネルトが舌を抜くと細い舌には液体が垂れ長い舌が一層長く見える。透明な部分ごとネルトは口の中に舌を戻した。
「どう?感じるでしょ?素直になりなって。種明かしをすると、さっきのはメロメロってやつさ。君が僕のことしかみれなくなってくるようにするためにさ。」
「そんなことをして何がしたい。何故私に・・・答えろ。」
「あれーまだまともなんだ。結構楽しませてくれるね。別に君が可愛かったからじゃ駄目なのかな。まぁ、僕が答える義務もないんだけどね。それじゃ、僕からもきこうかな?君はこういうことするの好きなんだろ?」
「ひとを愚弄するのもいい加減にしろ。離せ、今すぐに性根をたたき直してやる。」
本当かなとネルトが呟くと、体を地に這わせ私の懐に潜り込む。そして私に体を唯一支える量後ろ脚の付け根の間に舌を伸ばした。
「やめろ・・・」
舌がぴたりと私の皮膚に触れた。そして辺りを這いまわり、すぐに見つけると、穴にもぐりこむ蛇のように私の中へ入り込んできたのだ。
そして中を這いまわる、中の肉にぺったりと張りつきながら、肉の地を肉の蛇っが這いまわる。今まで未開拓だった地に踏み入れてくる開拓者を拒もうと私の体は過敏に反応を示す。
けれども、蛇を絞め殺すには足りない締め付けであり、溺死させるには到底及ばぬ量しか液体は漏れださない。ただ素直に舐められる行為を受け入れる、私にはそれしか出来ない。
そして私の感情までも蛇の舌が犯していく。まともな感情を全て舐めとり、快楽のことしか考えさせないように脳を塗り替えてくる。私はただ一つだけの道を進むしかなかった。
「やめろっ、離せっ・・・。」
限界を悟った私は残った理性の欠片を集めて形を形成し、口から言葉としてふり絞る。それを聞いて危機感を感じてか、ネルトは口を放して離れていく。
「なんだい?その不満足な顔は?君がいったからだよ?」
さっきは勢いで叫んでしまったが、なくしてしまうことで分かる快楽。欲望がもっとと手を伸ばしている。いまにも口から手を伸ばしてしまいそうなほどに、私の中ではもう抑え込むことが出来ない。愛おしさというのか、何かが冷めると同時に、不完全燃焼で気持ち悪い感じがする。
食べている物を急に取り上げられてしまったようなこの感覚。速く続きを返せと叫び返したくて内心仕方がない。そう、体は快楽の味を覚えてしまっていた。
「本当は好きなんでしょ?素直に謝れば許してあげるよ?」
もう限界だった、刀を振り回すことに私は疲れ切っていた。そして、とうとう刀を地に置いた。
「その・・・御免なさい。続けてください・・・」
「おっ、ようやく言えたね。どうしようかな?とりあえず名前を、教えてもらおうか?」
「レード・・・。」
私の心が折れるとネルドは拘束を解いて自分の体をねじり下半身の裏側をあらわにする。そこには種族的に普通の雄とは違い日本ではあったが、何にであるかは本能が教えてくれるものがつき出ていた。
ようやく前足を下ろした私はその光景を目の当たりにし硬直していた。技のせいなのか、私の本性なのか自分でも分からない。
ただ目の前のネルトのものに貪欲に手を伸ばそうと、涎を飲み込んでいる私がいま存在している。理性などもう集めるには値しない量しか残されていない。
「ほら?わかるでしょ、えっちなレードは?君の手でちゃんとこれを入れるんだよ。出来るでしょ?」
今なら私の刀を広い上げて切りかかることも出来た。けれども、そんな気力はどこを探しても私の中にはなかった。ネルトの上に覆いかぶさるような態度を取る。
そう、もう私に刀など快楽に汚れ、人の温もりを求めるだけの錆びたものしか持ち合わせていなかった。
「なんだ、本当に折れちゃってるんだ。いいよ?今からじっくり遊んであげるからさ。」
私は何も聞こえなかった。ただ腰を落としてからは、ネルトのを貪るだけの雌でしかなかった。快楽に溺れ、自分で一層深みへと向かっていく。
刀を捨てて士道を離れた私は、もう快楽に身を置いたただの雌だった。最初の頃はひどい後悔の念に囲まれながらも、ネルトにメロメロをかけられ気分を誤魔化されながらだった。けれども数日経てば、それさえも必要なくなっていた。
「何?まだやるの?仕方ないね。」
暗闇の中で、洞窟の天井から垂れる水温にしては刺激的な音が今日も響く。


不定期更新になります。


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Last-modified: 2012-03-15 (木) 00:00:00
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