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真夏の井戸

/真夏の井戸

呂蒙
 



注意:このお話には、18歳未満お断りの表現、描写があります。NGな方はお読みにならないでください。万一読まれて気分が悪くなられましても、作者は責任を負いかねます。





 夏の暑い日差しがアスファルトを照りつける。じりじりと焼けるような暑さは、自然と町行く人々を涼みへと向かわせる。
「あつ~い。この暑さ、何とかならないかしら……」
「水タイプなのに、暑さは苦手なのか? 熱湯攻撃とかできるのに」
「できれば、使いたくないわよ。あの技。体が熱くなるし……」
「あ、そう」
 リクソン=ハクゲンと、四足歩行で、青い体と尻尾に襟巻が特徴的なポケモン、シャワーズは暑い日差しの下を歩きながら、雑談に興じていた。大学が休みであっても、家の事や、ポケモンたちの面倒を見ないわけにはいかない。それが、主人としての最低限の務めである。
 暑いので、一刻も早く、家に帰りエアコンの風にあたって涼みたい。急いでいる時に限って、えてして足止めを食うようなことが起きるものだ。家に帰るまでの途中で、工事をしており、周り道を余儀なくされてしまったのだ。
「うそー」
「まぁ、しょうがないなぁ……」
 リクソンはハンカチで汗をぬぐいながら、迂回路をとった。その途中でのことだ。
「あ」
「リクソン、どうしたの?」
「ここ、水神の祠があるぞ」
 足を止めたリクソンの視線の先にあるのは、小さな祠だった。信仰心の篤い人がいるのだろうか、祠の前に可愛らしいサイズの賽銭箱が置いてある。小銭の一枚でも入れておこうかと思ったが、あまりに少額だと、逆に水神の不興を買いそうなので、やめておいた。「触らぬ神に祟りなし」という言葉もあるではないか。
 歩きながら、会話が続く。
「ところで、リクソンって、神様とか神様のご加護って信じる?」
「そのようなもの、あるわけなかろう。……もしあるのならば、貴様らナガオの家など、とうに滅んでおるわ」
「リクソン、ゲームのやりすぎ」
「まぁ、冗談はさておき……。だってさ、血なまぐさい歴史を生み出す原動力になったんだぜ? 神の加護があるんだったら、そんな歴史生み出されないはずだろ? おまけに信仰してないと救ってくれないなんて、随分無慈悲で無能な神様じゃないか?」
 セイリュウでは「公共の福祉に反しない限り」という憲法で定められている制約が付くが、どういう宗教を信仰するかは、個人の自由であったし、特定の宗教を信仰していなくても、何の問題もなかった。そのため、リクソンだけではなく、セイリュウの多くの人々は、特に信仰している宗教などなかった。
「カンネイは確か、中学と高校がキリスト教系の学校だったな」
「じゃあ、神様を信じているのかしら」
「本人はクリスチャンじゃないって言っていたけどな」
 もちろん、シャワーズにも信仰している宗教があるわけではなかった。そもそも、人間が作り出した「宗教」なるものにポケモンが関わっている方が珍しいのではないだろうか。
 炎天下の中、帰り道を急ぐ。家の近くには、公園があり、近道でもあるので、いつもこの公園を突っ切ることにしていた。この公園は緑豊かで、今時珍しい、釣瓶を使って組み上げる方式の井戸が現役で使われており、誰でも自由に使うことができる。誤って落ちると、危ないので井戸の周りには、囲いがしてあり、井戸の口にはトタン製のふたがしてあった。
 リクソンもこの井戸水を時々利用している。空のペットボトルに水を入れて、家に持ち帰り、沸かしてから炊飯や飲料水として使っているのだ。そのまま飲んでも問題はないらしいのだが、市は沸かしてから飲むことを推奨している。
 家に帰ると、リクソンはこの水を薬缶にいれて沸かし、麦茶を作った。容器に麦茶のティーバックを入れ、お湯を注ぐ。あとは冷蔵庫に入れておけば、機械が勝手に冷ましてくれるというわけだ。この暑い夏に冷たい飲み物は欠かせない。大所帯のため、買ってきても、すぐに無くなってしまう。飲み物だけで、かなりの重量になるので、夕飯の食材はまたあとで買いに行かなければならない。そうしないと、荷物が重くなりすぎてリクソン1人では運ぶことができないからだ。
 何度も買い物に行かなければならないのは面倒であったが、食材は2日分まとめて買うなど、工夫をすれば多少は回数を減らすことができる。それに、のんべんだらりと、エアコンの効いた部屋で過ごすのも考え物だ。人間、体を適度に動かさなければ体に悪いというものだ。

 別の日のこと。この日もまた暑かった。シャワーズを連れて、例の公園にたどり着く。
「シャワーズ、暑いだろ? せいやっ」
「きゃっ」
 リクソンは、汲み上げた井戸水をシャワーズにかける。リクソンが水をかけられたら、服が濡れるわ、靴が濡れるわで不快なことこの上ないだろうが、シャワーズにとっては気持ちいいようだ。この時期は記録的な猛暑のため、水道管が温まってしまうのか、水道をひねっても、ぬるい水しか出てこないのである。風呂場のシャワーも同様であったので、水浴びというわけにもいかなかった。
「自然の水をこうやって使えるんだから、贅沢だよな。もう一回やろうか」
 リクソンが、水を汲もうと井戸に身を乗り出した時に、リクソンは井戸に落ちてしまった。
「リクソン!?」
 シャワーズは咄嗟に井戸に飛び込んだ。水中を泳いで、リクソンを探すが、見つからない。一瞬、見間違いだったのではないかとも思ったが、普通、人間が転落する様を何かと見間違えるだろうか。
(リクソン、どこ?)
 だんだん不安になってくる。水の中に飛び込んだときは、澄んでいたはずの水が、下へ下へと潜っていくと、突然白く濁り、極端に視界が悪くなった。下の方にきらりと光るものが見えたような気がした。シャワーズは光るものが見える方向へ泳いで行った。光が徐々に大きくなり、視界が開けたかと思うと、シャワーズは見知らぬ泉にいた。
(ここどこ? というか、リクソンは?)
 泉から上がると、そこは石造りの床が広がる空間。天井は高く、空気もひんやりとしている。ところどころに松明が焚かれ、周囲を照らし出している。
「おや、これはこれは。どうなさいました?」
 言葉遣いが丁寧なサボテンがシャワーズの方に歩いてくる。
「サ、サボテン? え、えーっとまぁ、聞きたいことは色々あるけど、まず、ここはどこ?」
「ここですか、ここは神に仕える者たちが管理している修行場といったところですね。普段は結界が張ってあって、入れないはずなのですがね、それを越えてきたということは、何らかの縁があるということなのでしょう。井戸や泉などがここへの出入り口となっているわけです。まあ、普段は入ろうと思っても入れませんがね。ところで、あなたにもお仕えする主人がいたはず。その方をお探しに来たのでしょう?」
「な、何故、それを。まさか……」
「おっと、私に危害を加えると、あなたもここから出られなくなりますよ?」
「ぐっ……。じゃあ、早く私たちの主人を返して」
「案内するのはやぶさかではありませんが、一つ条件があります」
「何よ」
「どうしても、こういうことをしていますと、溜まっていくものでしてね、私を満足させることができたら、あなたとご主人を無事に返すことにしましょう。嫌ならいいですけどね」
 このような状況では、シャワーズにとって、条件を飲むしか選択肢はなかった。その条件といいうのが何か、すぐにわかった。そのサボテン、マラカッチの股間のタケノコというべきか、熟していないバナナというべきか形容が難しいが、とにかく、それを弄れということだろう。
「……分かった、から、種を中に出すのはやめてよ」
「おや、意外に物分かりがいいんですね。あ、そうそう。仲間が出てくることはありませんからご心配なく」
 輪姦されるという事態は避けられたが、結局、サボテンのイチモツを入れられる、植物系にヤられるという屈辱的なことをさせられることに変わりはなかった。
 シャワーズが仰向けになる。マラカッチはシャワーズの襟巻をめくると
「ふふ、やっぱり動物系の雌ですから、あるんですねぇ、おっぱい」
 シャワーズは見知らぬサボテンに胸を弄られ、口をつけて吸われながらも、反撃してぶちのめすことも許されない状況にあった。恥ずかしい、それ以上に屈辱的だ。さらに相性が不利なせいか、いつも以上に感じてしまう。何とか、理性で抑えようとしているのだが、体がどこまでそれについてこられるか……。
「やっぱり、柔らかくて、いいですね。れろ……。ん? 割れ目から液体が出てきてますね。気持ちいいんですね、準備は完了といったところですかね?」
「……早く、済ませて」
 口には出さなかったが「中に出したら殺す」とシャワーズの目がそう言っていた。
「ええ、私のも立ってきたようなので……」
 マラカッチは、色は未熟だが、物自体は成熟したバナナをシャワーズの穴に挿入した。シャワーズの穴は、異物の侵入を拒んでいるが「サボテンバナナ」は構わず、侵入を試みる。ほどなくして、少しづつ中へと入っていき、マラカッチの「バナナ」はシャワーズの中に収まった。
「くうっ、うっ、はあっ、入りましたね。締め付けがすごい……。主人にも奉仕しているんですか?」
「あっ、はあっ、そんなこと、あんたには関係ないでしょ」
 マラカッチの腰振りが徐々に激しくなってくる。どうやら、終わりが近いようだ。
「くううっ、あ、だめだ。もうイキそう……」
「サボテンバナナ」が大急ぎで、引き抜かれ、放出された粘液がシャワーズの青いボディを白く染めていく。いや、色は白なのだが、よく見ると、緑色のものが混じっている。葉緑素でも混ざっているのだろうか。
「はあっ、はあっ……。んふふっ、折角だから、汚れたものを綺麗にしてもらいましょうか、口で」
「……」
 シャワーズは渋々「サボテンバナナ」に付いた粘液を口で拭い取り、綺麗にしていく。が、生憎、禁欲的な生活が長かったマラカッチにはこの種の耐性があまりにもなかったらしく
「うあっ、あっ、刺激が強すぎるっ」
 シャワーズの口の中で、すぐに絶頂に達してしまった。シャワーズにとってはたまったものではなかった。何しろ、こんな青汁の何倍もまずいものを口に流し込まれてしまったのだから。
「うっ、うええっ!? げほっげほっ」
 シャワーズはすぐに粘液を吐きだしたが、もしかすると、何割か胃の方へ行ってしまったのもあるかもしれない。そう考えると、気分が重くなってきた。
「早過ぎ……」
「あはははぁ~、ま、満足、でした……」
「サボテンバナナ」から白い粘液を垂れ流しながら、締まりのない表情で答えるマラカッチ。とにかく、これで条件は飲んだ。シャワーズは口の中を念入りにすすぐと、リクソンの居場所を聞き出した。聞けば、例の井戸のところにいるはずだという。嘘なのか、本当なのか、分からなかったが、とにかく行ってみることにした。本当だとすると、先に解放されたということだろうか。リクソンに何があったのか、果たして危害は加えられなかったのか、シャワーズの心配は募るばかりだった。
 井戸には、緊急用の梯子が付けられているため、それをよじ登って、井戸の外に出ることができた。
 リクソンは、井戸の周りに設置された囲いに寄りかかって、ぐったりしていた。
「リクソン、大丈夫?」
「う、あ、シャ、シャワーズ?」
「何があったの?」
「そ、それが……」
 リクソンが言うには、井戸に落ちた瞬間までは記憶にあるのだが、それからは記憶が欠落してしまっているようで、まったく記憶にないとのことだった。シャワーズがいろいろ聞いても「分からない」と困惑の表情で答えるばかりだったので、これ以上はどうしようもなかった。リクソンは家に戻ると服を着替え、食材を買ってくると、ちゃっちゃと夕飯づくりを始めた。家の位置も覚えているし、その他日常生活でできていたことができなくなるということもなかったので、記憶障害の類ではなさそうだった。 ただ、それからリクソンは、例の公園を避けるようになった。やはり、井戸に落ちた記憶があるためなのか、出来れば近寄りたくないと思っているようだ。
 それから、数日後、公園の井戸を潰そうという話が出たらしい。何でも、維持費がかかるというのが理由だそうだ。しかし、その話は間もなく聞かれなくなった。理由は分からない。
 それから、また数日後。借りた書籍を返しにシュゼン=ギホウ邸に行った。その屋敷は名家にふさわしい重厚なつくりだ。
 議会は閉会中のため、シュゼン=ギホウ本人が屋敷にいた。父親の後輩でもあり、何度もあったことがある。
「わざわざ、ご苦労だったね。郵便で送り返してくれればいいのに」
「いいえ、何かあるといけないので……」
 リクソンは、秘書が持ってきたアイスコーヒーとお菓子をつまむ。炎天下の中歩いてきたので、冷やされたコーヒーは非常ありがたかった。
「先輩は元気かな?」
「ええ、この前実家に帰りましたが、会ったらよろしく言っておいてくれ、と」
「そうか、それはよかった」
「とはいえ、シュゼンさんからすれば、父が何をやっているかなんて自分が言わなくてもお分かりでしょう。ちょっと前まで、この国の事実上のトップだったわけですから」
 セイリュウは立憲君主国のため、厳密に言えば、トップは君主なのだが、政治的な関与はほとんどないため、首相が事実上の国家元首ということになる。
「いやいや、それは違うよ。世の中には知ろうと思っても知ることのできないものって言うのが、必ずあるもんさ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ、ああ、国の機密とかそういった類のものではなくてね。まあ、コーヒータイムにこういう話はよそうじゃないか。あ、これから人が来るんでね、どうぞごゆっくり」
 シュゼンは部屋を出ていった。応接室のエアコンが涼しい風を部屋の中に送っている。時計の時を刻む音と、外にいるセミの鳴き声が部屋の中に響く。リクソンは深く息を吸い込み、それから、吐き出した。部屋に置いてある蚊取り線香の煙がたちのぼり、くるくると渦を巻き、消えている。
 リクソンはしばらく目を閉じると、やがて、立ち上がり、留守番をしていた秘書に挨拶をし、屋敷を出ていった。




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  • 呂蒙さんお久しぶりです。196です。
    今回はシャワーズの回でしたか。なんというか、早漏なマラカッチでしたね(苦笑) 自分ポケモンでサボテンと言われるとサボネアかノクタスの方が先に思い付くんですよね。エメラルドから始めたからですかねw
    今回も楽しませてもらいました。次回の作品も楽しみに待ってます。執筆頑張ってください!
    ――196 ? 2015-08-17 (月) 02:54:33
  • 遅くなりましたが、誤字報告です。
    10行目の『リクソン=ハグゲン』のところですが、リクソン=ハクゲンではないでしょうか?
    ――196 ? 2015-08-18 (火) 03:19:29
  • 196様
    いつも暑い日が続いておりますが(といっても、日本にいればの話ですが)いかがお過ごしでしょうか。こんなしょーもない話に毎回コメントを下さり、感謝するばかりです。まぁー、今回キャラ選びで結構迷ったんですけど、どこぞのほもがサボテンを出せとうるさいので、こうなりました。誤字報告もありがとうございました。なんでこんなこっぱずかしい間違いをしたんだろう。書いたあとほとんど推敲しないのが原因かなぁ……。
    次回作のキャストと土台は決めてありますゆえ、気長にお待ちいただけるとありがたいです。
    ――呂蒙 2015-08-19 (水) 11:21:16
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Last-modified: 2015-08-16 (日) 18:41:47
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