ポケモン小説wiki
白陽がお家にやってきた

/白陽がお家にやってきた

こんにちは。南十字です。早く新緑の待ち人にとりかk(ry
今回もまた短編ということでよろしくお願いしますね。
ポケモンカードを買ったら当ったレシラムのカードを眺めていたら閃いた作品です。
それでは、はじまりはじまり~。

南十字

!!注意!!

イメージ崩壊警報がでております。
見苦しいところが満・載!!……あぁ、恥ずかしぃ……。
危険な表現はできたらありとなし両方の方向でいきたいです、タブンネ。






……大丈夫かな……?

昔に作られた感が満載の壁の角から僕はそっと顔を出しほんの数メートルしか離れていない威圧感たっぷりの馬鹿でかいポケモンを眺めながらそんなことをそっと呟いた。頬を汗が伝っていった。冷や汗かそれとも本当の汗かは区別がつかなかった。何せこの緊張感と目の前のポケモンが放っている熱気を感じながら自分の頬を伝っている汗を区別しようなどという至難の技ができるほど僕はすごい人間でもない。
幸い目の前にいるポケモンは僕のことに気が付いていない。じっと壁の一点を見続けているだけだった。まるで何かを待っているかのように…。…それにしても伝説のポケモンとはいってもやはり鈍いのか?それとも伝説のポケモン特有の大胆さから細かいところにまで気がついたりすることが出来ないのかな?まあどっちでもいい。気付かれないうちに早くボールを投げてしまいたい。僕のボールを持っている右手を見てみるとガクガクに震えている。……あぁ、情けない。自分のポケモンを持っていなかったから自慢のこの足で道中のポケモンを振り切りながら最上階まで登ってきてこれか………。
いや、あえて言い訳させていただきますとホントはこんなことになるわけないと思っていたんだ。僕は二人の英雄が一度戦い合った場所をまわって見ている。道端での勝負から真剣勝負、ほとんど英雄がバトルした地を僕は見てきて最後に一番危険と思われるイッシュ地方最古の建造物「リュウラセンの塔」に挑戦したわけだ。そして、英雄がぶつかり合った最上階を見ようと思ったら…これだよ……。

なんでレシラムがいるの!?


ここまで来て引き返すのは僕の意地が許さないし、かといってこの場所を見物しようにもあのポケモンがいる限り行く気になれない。行ったとしても結果は見えている。ケシ炭にされるorつぶされるのどちらかだろう。
でも、僕にはいざというときの武器がある。それが今ガックガクに震えている僕の右手の中のボール。アラ……ナントカ博士から護身用にポケモンを持たない僕に手渡してくれたものだ。アラ……ナントカ博士の話によると研究用に開発、使用されるもので100%野生のポケモンを捕獲できるという「マスターボール」と呼ばれているものらしい。紫色のボールにMと大きく書かれているこのボールの外見は一言でいってダサい。でも博士の言葉が本当ならとても役に立つ代物だろう。
今こそこれを使うとき!!……そんなことは分かっている。でも、もし外してしまったらどうしよう。ボールだって機械が作ったものだ。うまく作動しなかったらどうしよう。そんなことばかりが頭の中でどんどん膨らんでいきぼくの勢いをどんどん削いでいく。しかし、何かしないことには始まらない。失敗したら……死んじゃうかな?でも、やってみるだけやってみたい。自分の運に勝ちたい。そんなことを考えていると右手の震えが少し収まってきた。まだすごい震えているけど…。でもいい、やるなら今だ。そう思い僕は勢いよくレシラムの前へ飛び出した。

僕は人生で最大の博打に打って出た。




「やぁぁあああ!!」
変な掛け声とともに右手にあらんかぎりの力を込めマスターボールをレシラムに向けて投げた。この時僕の頭の中は目の前にいるポケモンの体の色よりも真っ白だったに違いない。レシラムの前に飛び出しただけでなくレシラムに向かって猛然とダッシュしながらボールを投げつけたのだから。
ボールが手から離れ気が抜けた途端自分の足が絡まりつまずいた。荒い息のまま顔をあげてみるともうそこにはレシラムはいなかった。その代わりに僕の目の前では左右に少しだけ揺れている紫色のボールが。そしてしばらくすると揺れが収まりポンッという小気味いい音をたて再び静けさが戻ってきた。

やった……。レシラムを捕まえた……。

そう心の中で何度もつぶやいていた。しばらく落ち着いてから最上階を見ている間にもその言葉を心の中で繰り返し続けていた。そのため何を見ていたのか帰り道ポケモンを振り切りながら考えていたが何一つ思い出せなかった。リュウラセンの塔を抜け出し道端に腰をおろし常備しているカメラの中身を見てみると自然と苦笑いが込み上げてきた。手ぶれが激しいうえに逆光のおかげで何が写っているのか分かったものじゃあないような写真ばかりだった。これじゃあまるで僕がレシラムを捕まえるためにリュウラセンの塔に登ったみたいじゃあないか。そんなことを思いながら久しぶりに帰ることに決めていた我が家の方角へと足を進めた。



僕はホワイトフォレスト出身だ。家もホワイトフォレストにある。だがこんな旅を続けているとどうしてもポケモンセンターで寝泊まりすることになってしまう。そのため15歳にもかかわらず「懐かしの故郷」などというおっさんくさい言葉を使う羽目になってしまう。それでも故郷に腰を落ち着けることはいいと思う。……おっさんくさいなぁ…。
まあ、そんなことはどうでもいいとして君はこの地方の英雄の物語を知っているかな?一週間前二人の英雄が戦い白黒ついたため今はそんなに騒いではいないけど…。ポケモンを開放させるべきか否かそんな感じだったような気がする。二人の少年が英雄として戦いイッシュ地方が震撼しただなんて言われてるけどホワイトフォレストだけは唯一のんびりしていたとかいうことで…。そんなこんなで英雄の存在を知った僕はなんか妙に惹かれたんだよね……。二人の英雄にさ。
だから旅の最中いろいろと調べたよ。騒ぎが収まった後だったから情報収集も結構楽だったし。まあ少し落ち着いて聞いてよ。

このイッシュ地方に二人の英雄が現れた。一人はプラズマ団といわれる組織の王であるNという名前の少年。もう一人はカノコタウンに住んでいた何の変哲もない少年。それぞれがレシラム、ゼクロムをつかいどちらの思想が正しいかどちらの理想が実現するか戦って試し……結果Nが負けた。
その後Nの行方はだれも知らないというただレシラムに乗ってどこか遠い地方へ旅立ったと聞いていたけど……。何かいろいろとかみ合わないな……。まあいいか。僕はあまり細かいことは気にしない主義だし。いつかレシラムに聞いてみるのも悪くないね。

……さて、ついた。ああ、僕の故郷はこんなにも空気がおいしかったっけ?息を吸うだけですがすがしい気分になれる。それじゃあ僕の家にはいる前にホワイトフォレストの長にただいまだけ言ってこようかな。この森はここに住んでいる人がみんなこの森の家族みたいなものだから家族に帰ってきてあいさつするのは当たり前じゃん?
僕はしばらく歩き長の家のドアをノックし長に会った。長はしばらく僕の顔をまじまじと見た後ににっこりとほほ笑み僕を温かく迎えてくれた。
「おお、やっと帰ってきおったか!」
「はい、ただいま」
「どうじゃった?旅は。楽しかったかの?」
「はい、後で写真見せますから僕の家にいつでも来て下さい」
「そうか、そうか。それじゃあ楽しみにさせてもらうかの。まだ家には帰ってないのじゃろ?早く帰ってゆっくり休むんじゃよ」
「はい、分かりました。それではまた明日…」
そう言い僕は長の家を後にした。長は家から出て僕のことを見送ってくれた。この森は何一つ変わってはいなかった。世界は毎日毎日が目まぐるしく変わっているのに対してこの森はまるで時間が止まってしまったかのようにいつまでも姿を変えることはなかった。人も風景も。なんだか夢心地のような感じがしながら僕は自分の家にはいった。鍵だなんて物はついていない。ライモンシティあたりに行き家には普通鍵がかかっているものだと初めて知った時にはびっくりした。この森に信用ならないものなんてものは一つもない。それが普通だと思えるくらいここは夢のような世界なのだと僕は感じることができた。

僕は少しだけ埃のかぶった家を掃除しさらに清々しい気分になったところで腰についているマスターボールのことを思い出した。そう言えばレシラムもボールの中じゃあ窮屈だよな。そう単純に思い僕は家の中でレシラムを出した。
まばゆい光が家の中に満ち徐々に収まっていったとき目の前に何か白くてでかいものが…。よかった……。屋根はつき破っていない。僕の家はニ階というものがない。しかしその分でかい。今までは広くて不便だったがこういうときはすごく有り難く感じる大きさだね。
上を見上げレシラムの様子を見てみるとキョトンとしている。周りの様子を観察しているようにも見える。僕はそんなレシラムに勇気を出して声をかけてみた。




「や、やあ……。レシラム…。き、気分はどう?」
なんと声をかけていいのかわからないうえにこの威圧感を感じながら声を発したため変なセリフ&震えた声になってしまった。こんな短い文章なのに2,3回声が上ずった。
「………どこにいるのだ……?」
レシラムは重々しい声を発しますますキョロキョロあたりを見渡し始めた。ああ……下を見てみるとかいう脳はないのかな?レシラムには……。僕はレシラムの足を軽くたたいた。少し触れただけなのに毛が手に温もりを運んでくれる。僕はレシラムの温もりを感じ落ち着いた声で「ここだよ」と声をかけた。
レシラムはゆっくりと首を下の方へ動かし僕の姿を確認し無表情だった顔くずして僕に声をかけた。
「なんだ、そこにいたのか。気分は……すがすがしいな…。ここは何という場所だ……?そもそもなぜ私はこのような場所にいるのだ?」
「ここはホワイトフォレストの僕の家だよ。僕が君をリュウラセンの塔で捕まえたから今はここにいるわけ」
僕はレシラムにそう教えた。少し僕の顔をじっと見た後に三人用の長いソファに腰をおろし(陣取られてしまったが)僕の顔に再び視線を戻し声をかけた。
「ということは……お前は私の二人目のトレーナーということになるのか」
「まあ、そういうことかな………。あのさ……」
レシラムにN少年のことを聞こうと思ったら「ぐぅぅううう」という素敵な音が。……僕は別におなかすいてないしこの音の原因はレシラムかな?
「むぅ…………」
恥ずかしいのか僕と目が合わないように頭を横へ向けた。横顔でもレシラムの顔が真っ赤になっているのが丸わかりだった。少しうなだれていたけれど僕に「おなかすいた」とか「何か頂戴」とか言わないのは伝説のポケモンの意地かな?変な意地を張っているレシラムを見ているのがおかしくて僕の口元は少し緩んでいた。何か持ってきてあげようかと思い腰を上げようとした時レシラムのプライドにとどめを刺すかのようにレシラムのおなかが再びなった。
レシラムは僕の方へ向き直り顔をさらに真っ赤にしながら僕に声をかけた。
「なあ………。その……」
おなかを片手で押えながらこれ以上言うのは本当に恥ずかしいのか目で僕に訴えかけてきているレシラムを見ているとこれが本当に伝説のポケモンなのか疑いたくなってきてしまう。でも、僕は別にレシラムに意地悪をしたいわけじゃないし微笑みながらやさしくレシラムに声をかけた。
「いいよ、少し待っててね。何か持ってくるから」
レシラムは安堵の表情を浮かべソファに深く腰をかけて台所へと食べ物を探しに行こうとする僕を目を細めながら見送っていた。


さて、「何か持ってくるから」とは言ったもののあげられるものと言ったら僕のパンぐらいしかないな……。でもこんな小さいパンをレシラムの口に放り込んでも腹の足しにはならないし……。
あっ、そうだリンゴとモモンの実がいくつかあったんだっけ。確かこのあたりの戸棚に………。あったあった。
僕はリンゴとモモンの実のにおいをかいでいたんでないことを確認した後皿に盛り付け(乗せただけだけど)レシラムのいる部屋へと小走りで戻っていった。
僕がリンゴとモモンの実を盛り付けたお皿をテーブルの上へ置くとレシラムは待っていましたと言わんばかりにソファから身を乗り出して僕に声をかけた。
「これ…。私が食べてもいいのか……?」
「うん、たくさん食べなよ」
「それじゃあお言葉に甘えて……」
そう言った途端ものすごい勢いで食べ始めた。リンゴは芯ごと食べてるし…。
これからこんな生活が続くのだと考えるとわくわくする。レシラムと僕のいるこの和やかな風景に微笑みながらそんなことを考え僕はモモンの実を一口かじった。




僕の用意した食べ物をすべてたいらげたレシラムは食後の小休止をとっているのかあたりを見渡しながらくつろぎ始めた。そんな様子を見て今はのんびりしていようかと思い僕は近くの椅子に腰かけレシラムを捕まえたマスターボールを取り出してレシラムのステータスとかいうものをつぶやき始めた。
「種族名レシラム、性別不明。リュウラセンの塔にて捕獲、陽気な性格……ふ~ん…」
なるほど…。伝説のポケモンでも性格は陽気なのか…。だいたいそれには納得できる。うん。でも性別不明なのか……。不明なだけでわかってないだけなのか性別がないのかはイマイチよくわからないけどレシラムの声の重さや口調からして雄だろうな……。仕草は可愛かったけどこの猛々しいフォルムのことを考えるとやはり雄だな……。むしろ一つ屋根の下でこれから暮らすのがいきなり異性のポケモンじゃあいろいろと戸惑うし僕には都合がいいかな。
頭の中をすっきりさせ再びレシラムの方へ向き直ると……あれ?寝てる?ソファの手をかける部分に頭をのせ気持ちよさそうに寝息を立てている。これは一応信用されているのだととっても問題ないかな?
でも、寝るなら僕に声をかけてからでもよかったのに…。僕は僕のいつも使っていた布団の毛布を一枚引っ張り出してレシラムにそっとかけ僕も椅子に腰かけ昼寝を始めた………。




目をさましてみるともうすでに日が落ちかけていた。しまった。と内心思いふとレシラムの方を見てみるとまだ気持ちよさそうに寝ているから起こさないでいよう。もし起きてたら一緒にホワイトフォレストの名物のバザールに行こうかと思っていたんだけど…。
僕は椅子から腰を上げまだ旅をしていた間のまま放りだしただけのバッグから財布を取り出してレシラムを起こさないように慎重に家を出た。外に出てみるとまだ案外明るかった。木と木の間から夕日のきれいな日差しが妙に暖かく感じられた。しばらくそこで再びのんびりしたいような衝動に駆られたがこのままのんびりしてしまったら僕はともかくレシラムの夕飯がなくなってしまう。そんなことを思いおなかをすかせたレシラムを思い出すと自然と笑みがこぼれてしまう。僕はほのぼのとしたこの生活に早くも充実感を覚え夕日を背にしてバザールでにぎわっている方へと足を運んだ。

僕はバザールで一週間分ぐらいの食糧を確保して帰路についた。そこでふと目に飛び込んだのはポケモンセンター。この自然が豊かで家ですらみなログハウスなのにもかかわらず一軒だけポツンと異質な雰囲気を出している建物だという印象を僕に与えた。そう言えばバザールでポケモンセンターの中にもお店があるとかいうのを聞いたな……。僕はポケモンセンターで寝泊まりするだけだったから知らなかったなぁ……。まだ夕飯までに時間があるしちょっと寄り道するぐらいはいいよね?僕はそう思いポケモンセンターの中へ入っていった。
ポケモンセンターの中は暖かくて今が本当に冬なのか疑いたくなるようだった。僕が入ってすぐ右側にいろいろな商品と思われるものがきれいな棚に置かれていた。僕は何がおいしいものかわからず店員さんの教えてくれた商品をいくつか買ってポケモンセンターから出てきた。バザールと違って野菜は置いてなかったなぁ、とかチョコとはどんな味がするものなのかな?などとお会計の時に入れてもらった袋を眺めながら歩いていた。気が付いたら僕は家の前に立っていた。なんだ、もうついたのか…。
僕は家のドアを開け中にはいった……。………あれ?レシラムは?ソファで寝ていたはずだけど…。姿が見えないね……。
レシラムが寝ていたソファを見てみるとくっきり跡が付いていたからついさっきまでは寝ていたことになる……。勝手に外に出て行ったならみんな大騒ぎしているだろうし…。そんなことを考えていると台所の方から足音が近づいてくる。台所の方からやってきたのは……案の定レシラムだったよ…。ふう……いなくなったらどうしようかと思ったよ。
「あっ…………」
レシラムが少し気の抜けたような声を発した後僕の方へ歩いてきて僕の顔をしっかり確認した後ぺたりと(音は豪快だったが)床へ腰をつきそれから小さくため息をついた後僕に発した言葉。
「………おかえり……いなくなったかと思ったぞ………」
僕はいきなり声をかけられて少しびっくりした後、ああ…そう言えばもう一人で生活するわけじゃない。これからはこのレシラムと一緒に過ごすんだったっけ……。そんな当たり前だけどよくよく考えてみると嬉しいことに気づかされレシラムに返事をした。
「ただいま。心配させてごめんね。夕飯これから作るけど…食べる?」
僕の言葉に顔を明るくしてうなずいているいるレシラムを見ていて僕は確かに幸せを感じていた…。





僕は今台所でなれない野菜炒めに苦戦していた。別に野菜炒めが苦手ってわけじゃない。レシラムと僕が食べる量を考え、野菜をいっぺんにフライパンの上にぶちまけて炒め出して調味料の加減とかが手探りな状態で調理を始めてしまった。後ろから催促の視線を感じながら台所に立ったため分けて作るわけにはいかなかったから……。それでもやるしかないよね……。


よし、何とか味も整えて作ることができた。あとはデザート代わりにいくつか木の実を用意して…。やった!今日のご飯の完成!
「レシラム!夕飯できたよ!」
そう声をかけてレシラムが待っている部屋へ4人前ぐらいの野菜炒めが盛ってある皿を両手で抱えて慎重に持っていき、レシラムの腰かけているソファの前のテーブルの上へ置いた。早くもつまもうとするレシラムをとめて
「ご飯を食べるときはねこうやって手を合わせて『いただきます』って言ってから食べるんだよ」
レシラムの前で手を合わせて僕は軽く頭を下げて見せた。レシラムはなんでそんなことをするのか理解できないのか首をかしげている。そりゃあそうだ。僕も子供のころになんでこんなことをするのか理解できなかったのだからレシラムが理解できないのも当然といえば当然かな。
それでも素直に「いただきます」と言って手を合わせているところを見るとまるで小さい男の子を相手にしているような感覚がしてしまう。僕は微笑みながらレシラムに声をかけた。
「じゃあ、食べようか」
「ああ………」
そう短く返事をしてから僕の作った野菜炒めを手で食べ始めた。僕はもちろん箸をつかって食べているけどね。おいしかったのかそれともおなかがすいていたのかレシラムはあっという間に食べ終えてしまい早くもデザートとして用意した木の実に手を伸ばしていた。適当にいろんな木の実をさらに盛ってきたけどレシラムが好んで食べているのは甘い味のものかな?渋い木の実は嫌いみたいでそれだけよけて食べている。僕だって渋い味はいやなんだけど……まあいいか。

その後野菜炒めを食べ終えた僕は渋い味の木の実を何とか食べて食後の小休止をとっていた。そう言えばポケモンセンターで買ってきたチョコを食べてみたいな。と思いポケモンセンターで買ったものが入っているビニール袋とかいうガサガサと音のやかましい袋を持ってきて中をあさり始めた。……あったあった。これだ、これ。僕はそっと包みを開いていく(破っていたが)と妙に甘いにおいがする。レシラムもにおいに気がついたのかこちらによってくる。
「それはなんだ…?」
「さあ………。食べてみればわかると思うけど…」
僕はそっと一口板状になっているそれを噛んでみた。パキッ、っという小気味いい音とともに割れ僕はそれを口の中で味わっていた。………甘い。いや……甘ったるいような…。とにかく僕の出した結論は僕の口には合わないということだった。微妙な顔をしている僕のことが気になったのかレシラムが声をかけてきた。
「どんな味なのだ?」
「う~ん……。甘いんだけど……僕はいいや」
そう言ってチョコをレシラムに手渡す。レシラムは少しだけチョコを観察した後バリンと豪快な音を立ててチョコを半分ほど口に含み味を確かめているようだった。加減というものを知らないのかな?白い体毛にも床にもチョコの破片が落ちている。あとで掃除しないと……。そんなことを考えているとレシラムの声が。
「これは……気に入ったぞ。何というのだ?これは」
レシラムは気に入ってくれたみたいだね。レシラムの質問に短く「チョコっていうんだって」と答えはしゃいでいるレシラムを見て本当に甘いものが好きなんだなあと感心しているとレシラムがチョコの異変に気がついた。


「うわああっ!溶けるぞ!これ!」
レシラムがべたついた右手を見てあたふたしながら僕に助けを求めるような視線を送ってくる。相当あわてている様子でパニック状態と言っても過言じゃないくらいかな?とにかく助けてやらないと……えっとこういうときは……。
「とりあえず残りをみんな食べちゃいなよ」
レシラムが僕の言葉を聞いて「そんな手があったか!」というセリフがぴったり合いそうな顔をした後液体なのか固体なのか区別するのが難しいチョコを一気に口の中に流し込んだ。
ふぅ…………。これで一件落着……なわけないか…。レシラムが溶けたチョコを持ちながら慌てふためいていたから床にはチョコがかからなかったもののレシラムの体はとてもじゃないけど純白のドラゴンとは程遠い恰好をしていた。特におなかのあたりの毛にチョコがこびりついている。手は今自分でペロペロなめているからいいけどほかの毛のある部分をどうやってきれいにしろと……。とりあえずレシラムに絶対に動いちゃいけないことを伝えてから濡れタオルを持ってきてレシラムのおなかのあたりを拭いていく。あぁ……。ポケモンと一緒にいるってこんなにも大変なのかな?……でも、愉快な事も多いかな?捕まえたときは伝説のポケモンだしほかのポケモンと全然違うのかな。なんて思っていたけどこんなに可愛らしいものなのかな。捕まえた初日に生意気な事を言うようだけどポケモンと一緒っていいよね。
そんなことを考えていると無意識に近い形で動かしていた手に握られたタオルがすっかりチョコの色になっていてレシラムの体はすっかりきれいになってた。
「さて、きれいになったよ。レシラム」
「ああ………。ありがとう……」
少しあわてていた自分が恥ずかしかったのかそっぽを向きながら僕にお礼を言う。僕は短くどういたしましてと答えた。以上僕とレシラムのチョコレート事件でした。




そんなこんなで慌ただしかった一日が終わり僕とレシラムは寝ることにした。夜更かしをするとしてもこんな場所にはライモンシティにあったような「テレビ」というモノがない。ホワイトフォレストでの夜は大人しく寝るのが普通なのだ。僕はレシラムにそろそろ就寝する旨を伝え僕の寝室に一人と一匹でやって来たんだけど……どうしよう……。
別に広さは問題ない僕が一人で寝ていてさびしいと感じるほど無駄にだだっ広い寝室なのだからレシラムがいる事自体問題じゃないのだけれども……ベッドが一つしかないのだ。これはさすがに困った。
僕のベッドにレシラムが乗っても問題ないだろう。ソファだって耐えられたのだからベッドが壊れる事もないだろうし床で寝かせるのはかわいそうだ。僕は予備の毛布にくるまって床でいもむしごっこをやっていれば寒くないだろうしベッドはレシラムに使わせてあげる方向で……。
僕がレシラムにベッドで寝るように言うと思わぬ答えが返ってきた。
「わかった。それじゃあ一緒に寝ると言う事でいいのだな?」
いや、よくないでしょ!心の中でそう突っ込んでみる。ベッドの大きさと強度的には問題ないけど僕の人間としての常識から問題があると思う。いくら同性だからといっても同じベッドで寝るのはどうかと思う。そういう常識はポケモンには無いのかな?……無いんだろうな…。とりあえず断らなきゃね
「いや……レシラム。僕は床で寝るからさ。ベッドは使ってもらって構わないよ」
レシラムは何か言おうとしていたがそれ以上何もいわなかった。やっとわかってくれたとホッと一安心していると体が宙に浮くような感覚が……。えっ!僕ホントに宙に浮いているよ!……よくよく見てみるとレシラムが僕の脇腹をつかんで持ち上げているみたい。ちょうど「高い高い」と同じ恰好だね。そのままベッドの上に降ろされその横にレシラムが寝転がる。どうやら有無を言う権利もなく僕はベッドで寝なきゃいけないみたい。
……レシラムの意図がよくわからないけどとにかく一緒に寝てくれないと気が済まないって感じなのかな?何でかは分からないけど…。僕はそのまま足元の方にたたまれている布団と毛布を引き寄せて僕とレシラムにかけた。毛布もあったかかったけどそれ以上にレシラムのぬくもりを全身で感じられた。今が冬だと言う事を忘れさせてくれるぐらいにレシラムの体は温かかった。でも決して熱いとは感じないふしぎな温かさ…。それを感じながら僕らは眠りに落ちて行った。






次の日僕はやけに早く起きてしまった。旅から帰って来たのだからもっと遅く起きる予定でいたんだけど……何でだろう?……あぁ!そうか昨日昼寝していたからその分はやく起きちゃったのかな。レシラムはもう起きているのかと思いそっと様子を見てみる。すうすうと寝息を立てて寝ている。おまけに気が抜けて様な顔しちゃってさ。そろそろ起きようかと少し布団をめくってみると待ってましたと言わんばかりに僕の布団の中に冷たい空気が入り込んでくる。うぅっ…。寒い……。
こうなったら人間の冬に起こりがちな二度寝スパイラルが始まる。僕はめくりかけた布団をすぐに戻し再び眠ろうと布団の中にもぐりこむ。いいんだ。どうせ今日は遅く起きる予定だったんだから今から寝たって大丈夫…。と、そんな言い訳を自分とベッドに向かって言いながら。
少し深く潜り込みすぎたかな。僕の顔がもう布団の外からは確認できないくらいまでもぐりこんでいる。するとちょうど目の前に無防備なレシラムのおなかが。毛が僕の鼻をくすぐる。くしゃみをしたいのを抑え僕は布団の中から顔を急いで出した。はっきりいって死ぬかと思った。何をバカなことをやっているのだろうと自分でも思いながらレシラムの方を見上げるとレシラムと目が合った。
「何をしているのだ…?」
「い、いや!何もしてないから!!」
別に悪い事はしていなかったけど何故かあわててすごくあやしい発言をしてしまった。変に誤解されなければいいけど……。
「……?そうか…」
レシラムは僕が何もしていないと言う事で納得してくれた……のかな?まあいいや。今ので眠気も飛んじゃったしそろそろ起きようかな。僕がのそのそと起きだすとレシラムも続いて起きだす。とりあえず朝ごはんの用意をしなきゃ…。


朝は軽めにやっぱりパンでしょ!なんて心の中で言ってみる。流石に僕は朝からがっつりと食えるたちじゃない。レシラムはがっつりいけそうだとは思うけどそれでもやはりバランスは大切だと思う。そう思いいくつかパンを引っ張り出して牛乳を用意してテーブルの上へ並べた。やはりこうでなきゃ。と一人で満足をしていると寝室からレシラムが出てきた。まだ寝ぼけ眼で焦点が合っているのかが心配な目つきをしていた。おまけに頭のあたりの毛が人間でいうところの寝ぐせの様にはねている………というか爆発してる。危なっかしい足取りで昨日レシラムが座っていたソファに腰を掛ける。大きなあくびを一つして眠たそうな眼をこすっている。何かしていないといまにも眠ってしまいそうな感じだ。しかし、ここで寝てもらっては困る。僕はレシラムに声を掛けた。
「レシラム、朝ごはん用意したから一緒に食べよ」
「うぅ………うん……」
眠いのか声に力が感じられない。いつもの重々しい声が上ずっているような気がする。でも何か食べさせないと……。僕が小さいクロワッサンを食べ始めてもレシラムは全く動かない。一瞬パンは食べないのかと不安に思ったが相変わらずあくびばかりしているレシラムを見るとただ眠たいだけだと思う。
やはり眠たいだけだったのか小さな声で「いただきます」と言ってからパンを食べ始めた。おいしいとかおいしくないとか言わない所を見るとまだ寝ぼけているのかな?朝に弱いのかな?まあいいや。次第に意識もはっきりしてきたのか「これは何というものなのだ?」とか「これはおいしいな」とか言うようになってきた。
食べ始めてしばらくするとレシラムの頬がほんのり赤くなっている事に気がついた。…というか赤くなり始めていた。昨日はそんな事が無かったんだけど…。もしかして朝だから………とか?ご飯も食べ終えたところだし頭の毛をとかしながら聞いてみるか……。
僕は少し大きめのブラシを持ってきてレシラムに声をかけた。
「毛をとかしてあげるからちょっと我慢しててね」
「ああ………」
レシラムはそう短く答え僕はソファの後ろへ持ってきた椅子の上にのぼりレシラムの爆発しきった毛をとかし始めた。横からほんの僅かに顔が見えるけどやっぱりほんのりと赤らめている。………まさか熱があるとかじゃあないよね?そっとおでこのあたりに手を持っていき人間のように手で体温をはかろうと……あったかい…。当たり前か。炎タイプのポケモンだし。そんな事を考えているとレシラムに声をかけられた。
「何をしているのだ?」
「いや……顔が赤いからさ…。調子でも悪いのかと思って」
「別に調子は悪くないが…」
「そう…それならいいんだけど…」
最初から聞いておけばよかったよ。僕は顔が赤い事なんか気にもとめずレシラムの毛の爆発を何とかすることに専念した。




その後、午前中はレシラムとぐうたら過ごしお昼ご飯を食べ終えた後レシラムが外に出てきてくれと僕に声をかけてきたので僕は今家の外にいる。
レシラムはしばらくの間空を眺めた後僕の方へ振り向きとんでもないことを提案してきた。
「…なあ……。私と一緒に空を飛んでみないか?」
「えっ!!」
としか答えられなかった。レシラムが空を飛べることぐらい僕も知っている。つまり僕はレシラムに捕まるかなんかして一緒に飛ぶのだろう。確かに空を飛んでみたい。鳥ポケモンに捕まって飛んでいる人を見るととてもうらやましい。でも、万が一落ちたらどうするのだろうなどと考えてしまう。僕がなかなか決断してくれないのを見てレシラムが申し訳なさそうな顔をして僕に声をかけてきた。
「イヤ……なのか?それなら無理にとは言わないが…」
「嫌なんかじゃないよ!………でも…」
僕は必死に嫌ではない事を伝える。でもやっぱり心配なものは心配なもの。落ちないのかはとりあえずレシラムに聞いておこう。
「ねえ、レシラム?落ちたりなんかしないよね?」
「ああ!大丈夫!………だと思う」
「なんか不安だ……」
「冗談だ。落ちる事はない。むしろ私が落とさない」
随分と伝説のポケモンらしい頼もしいセリフを言ってくれる。レシラムの凛々しい顔を見ていると自然と信頼できてしまう。後は頬が赤くなければパーフェクトなのに……。
「ホント?」
「勿論だ。さあ、どうするのだ?」
「じゃあ、乗る!乗りたい!!」
「よし!!」
そういうとレシラムは身をかがめ目で僕に合図する。これは…背中に乗るように合図しているのかな?僕はそう解釈してレシラムの背中にまたがる。乗り心地は……悪くないかな。レシラムのこのやわらかい毛が気持ちいい。出来ればこのままレシラムの背中にうつぶせになってしまいたいぐらいだ。そんな事をしたら怒られそうだからやらないけど。

「そろそろ行くぞ」
「う………うん」
レシラムにそう声をかけられると自然と緊張してきてしまう。身が強張っている。レシラムに首の部分に手をかけるように言われたので首の部分に手をかけた。これで実際うつぶせに近い格好になれたけど毛の感触を楽しんでいられるほどの余裕は今の僕にはなかった。


「よっと!」
「うわわわわ!!」
いきなり地面を強く蹴るものだから焦った。変な掛け声とともにふわっと宙に浮いた僕らはそのまま空へ向かって急上昇する。どういう原理で翼をはばたかせていないうえに動力になるような物も使ってないのに空へ飛びあがれるのか僕には理解できないけどそんなことよりも怖い…。今顔を上げたら落っこちそうだ。僕はレシラムの背中に顔をうずめた。
「大丈夫か?」
しばらくしてそんな声が聞こえた。気がつけばゆっくりと飛んでいるような感覚がする。僕は顔を上げレシラムの方を見てみるとこちらに首だけ向け心配そうな顔をしていた。僕は震えた声で「大丈夫だよ」と答えた。
レシラムはそんな僕の様子を見てはやくに地上へ帰った方がいいと判断したのか「もう帰るか」と言い急降下を始めた。

まって。もう少しゆっくり降りて……。
空気抵抗とかいうやつなのかな?そのせいで僕の体が上へ引っ張られている。早く……早く地面について…。
そんな事を考えていると次第に手がレシラムの首から離れていくような感覚がした。

―――刹那、僕はこの無駄に広い空でパラシュートなしのスカイダイビングをする羽目になった。
僕は目を固くつぶった。死ぬ。そう本気で思い風を切っているのを感じながら徐々に意識が薄れていった。





「……ぃ…。……おい!」
まだぼんやりはしているけれど意識が戻ってきたのかな?背中に何か触れている感覚があるし何かに乱暴に体がゆすられているような感覚がする。ちょっと苦しいけど……まあいいか。そんなことより僕を呼ぶ声がする。天国からの声じゃなければいいけど……。重々しい聞き覚えのある声。もしかして…。と思い目をゆっくりと開けた。
「!!……やっと起きたか……」
「よかったのぉ。レシラム…」
先ほどから僕に声をかけながら体を揺すっていたのはやはりレシラムだったようだ。その隣には長がにっこり微笑んでいた。長はいつでも笑顔を絶やさない人で有名だったけどこういうときは少しでもいいから焦ってもらいたいよ。しばらくレシラムも長も喜んでいたが少しするとレシラムが申し訳なさそうな顔をして僕に声をかけてきた。
「さっきはすまなかった……。落とさないなどと言っておきながら危険な目にあわせてしまった。……本当にすまなかった…」
言葉こそはしっかりしている。けどレシラムの顔は今にも泣きだしそうだった。早く何か言ってやらなきゃ本当に泣き出しそうだし別にレシラムは悪くないのだから…。
「レシラムのせいじゃないよ。ちゃんと掴まっている事の出来なかった僕の責任だから。そんなに落ち込まないでよ」
「うむ、それにおぬしは落ちていたから知らないだろうがおぬしが落ちた後レシラムが地面すれすれでおぬしをきゃっちしたのじゃ。
 死ななかったんじゃからいわゆる結果おーらいとかいうやつじゃな。気にしすぎてはいかんぞレシラム」
僕らの言葉でレシラムがだいぶ落ち着いたのを確認した後長に別れを告げて僕らは家へ帰った。









そんなハプニングから数日後。レシラムが家にやってきてちょうど一週間たったある日。僕の家にある訪問者がやってきた。

朝から僕らは家でぐうたらしていた。特にやる事もないし特にやる気も起きない。そんな朝っぱらから僕の家中にノックの音が響き渡った。木のドアを使っているとノックの時の音がとても澄んでいるように聞こえる。僕はこのノックの音が好きだった。……そんなことはどうでもいいや。お客さんを待たせちゃ悪いよね。
そんなノックの音を聞きながら僕はドアを開けてノックの音の主に目をやると驚いた。
「よっ!久しぶり!」
と相手は僕を確認した後笑顔でそう声をかけてきた。僕もつられて言葉を発する。
「うん、久しぶり!」
と僕が二人で手を取り合って懐かしき友人との再会を喜ぼうとしたところ友人は僕にこう声をかけてきた。
「あれ?君ポケモンを捕まえた?」
再会を喜び合う言葉ではなく何故かこういう的外れな所に会話を進める。何かずれているというかなんというか……。まあ、そんな事は置いといて、この友人は何かと勘が鋭い。その勘で商売が成り立っているとかいうとんでもないうわさを聞いた事のある友人だけど…。ここまで勘が良いと正直言って気味が悪い。物音も立てていなかったのにどうしてわかるんだろう?という疑問を抑えつつ友人の質問に答えた。
「うん、一匹捕まえたけど。どうかしたの?」
「僕が鑑定して差し上げましょ~」
待ってましたと言わんばかりに「鑑定」という言葉が出てきた。そういえばポケモンの性格やら何やらを言い当てられとかで評判だったんだっけ?なんか胡散臭いけど少しだけお願いしてみようかな……。レシラムと仲良くなるきっかけになるかもしれないし。
「それじゃあお願いするよ。クロー」
「あいよ。僕にまっかせなさ~い」
僕はわくわくと不安が入り混じりながらも台所でクッキーをつまみ食いをしていたレシラムを連れてきた。クローがどうしても外で見たいと駄々をこねたので外までレシラムを連れていきクローと対面した。
「それじゃあよろしくお願いするよ」
「分かったよ。そこにいる猛々しい………じゃなくてかわいいレシラムちゃん。ちょっとこっちおいで」
僕はクローの言葉に仰天した。



何を言ってるんだよクローは!もしかしてレシラムに喧嘩を売っているのだろうか?雄に向かってそんな言葉をかけたら誰でも怒りだすにきまっている。僕はひやひやしながらレシラムの様子を見るとなぜか怒っているように見えない。けど驚きながらもあきれたような顔を見せていた。
僕はそっとクローに歩み寄り声をかけた。
「クロー、レシラムは多分雄だよ?」
「えっ?………でも僕は雌独特のあま~い魅力的なスメルをレシラムから感じ取ったんだけどな~?」
クローはびっくりしたようなそぶりを見せた後首をかしげてへらへらしながら僕に言った。なんかすごい変態っぽく聞こえるんですけど……。クローってこんな奴だったっけ?………こんな奴だったな…。
「ボールにはどう書いてあったの?レシラムの性別については」
不意にクローがそう僕に聞いてきた。僕はレシラムの性別が分からない事を伝えると「じゃあ調べてみるよ」と明るく言いレシラムの方へ走っていった。こんな変態に任せていいのかと疑問に思いつつもとりあえず僕も一緒について行った。



クローはレシラムを見上げながら声をかけた。
「お~い、レシラム!僕とにらめっこしよう!!」
レシラムは顔をしかめ首をひねった。
「にらめっこ……?何だそれは?」
「もう何でもいいからちょっと僕の目の前に頭を下してよ!」
相変わらずレシラムは首をかしげている。このいきなり現れた頭のおかしい人物に対してさも何か言いたげな表情をしていたが大人しく頭を下げクローの顔を間近にしてやっとクローは真面目な顔になりながらもレシラムに微笑みかけいつもの調子で自己紹介を始めた。
「僕の名前は南九郎(みなみ くろう)っていうんだ。よろしくな。かわいいレシラムちゃん」
だから怒られるってば!心の中でそうクローに向かって叫ばずにはいられなかった。しかし、レシラムは怒る様子が全くない。僕がなぜ怒らないのかといろいろ思案しているとレシラムが口を開いた。
「クロー。とか言ったな。先ほどから気になっていたのだが……何故私が雌だと分かった?」
「そりゃあ、こんなにかわいい匂いを漂わせていたらいくらお顔を怖く作っても丸分かりだからね~」
と得意げにしている。僕の方へ振り向きクローはさらに続けて言った。
「僕の第三の目から見るとツンが0割でデレが10割ってところ?いいな~デレデレじゃん。
 それに陽気な性格が主で照れ屋と素直が見え隠れ。って感じかな?それに凄く賢そうな感じがするね。結論からいくと『モエルーワ!』って感じ?」
おお、ボールに書いてあった性格を見事に当てたよ。照れ屋と素直が見え隠れ。ってそんなことまでわかるのか……目を見るだけで…。それにデレデレかどうかもよくわかんないけど…。賢いのは当たっていると思う。人間の生活に必要な事はすでに一通り理解しているようだし。最後の言葉はとりあえずスルーの方向で……。でも、これだけ的確な鑑定をしてくれるんだったらお金を出してでも鑑定してもらいたい人の気持ちがなんとなく分かるような気がする。

………あれ?まてよ……。そういえばレシラムが「何故私が雌だと分かった?」とか言ってなかったっけ…?と言う事は今まで雄だと思っていたレシラムが実は雌だったってこと?そんな事を考えながらレシラムをもう一度眺めてみる。猛々しい顔、神々しいフォルム、凛々しい立ち姿。どれをとっても雄にしか思えないし声だって重々しい。口調もいかにも伝説って感じがするし……。でも、当の本人も「自分は雌である宣言」をしているくらいだしやっぱり雌なのかな…?でも……。
僕が頭の中で無駄な足掻きをしているとクローが声をかけてきた。
「信じられないって顔してるね…。でもね事実は受け止めてあげなきゃレシラムがかわいそうだよ」
そう耳元で囁いた後クローは再び笑顔に戻り僕らに別れを告げた。
「僕はそろそろ行くよ。暇そうに見えて暇じゃないしね。それじゃあまた近くまで来たら寄って行くから♪」
そう言ってくるりと背中を向け歩いて行った。
「鑑定料4500円は後払いってことで」
とクローは手を振りながら言いホワイトフォレストを後にしていった。
僕は家の前でレシラムを再び眺めてみる。いくら僕がレシラムを眺めたところで性別など変わりっこないけど…。でも、認めたくなかった。雌だと分かった途端レシラムを意識してしまう自分に嫌気がさした。今まで雄だと思っていたかった。性別不明だとボールに記載されていて一瞬不安がよぎったがレシラムを見て雄だと思い込み安心していた自分がいた…。しかし今日、この瞬間レシラムが雌である事が決まってしまった………。
気がついたら目の前に心配な顔をしたレシラムが立っていた。僕は短く「家に入ろ」と言いさっさと家の中へはいって行ってしまった。


それから夜まで何をして過ごしたのかよく覚えていない。今日の夕飯も何を食べたのか覚えていなかった。
夜レシラムが僕に話しかけてきた。正直何を言っていたのか全く聞いてなかったから上の空な返事しかしなかった。そんな僕の様子を見て心配をしたのか「具合が悪いのか?」「何か嫌な事でもあったのか?」としきりに聞いてきた。口には出さなかったけど今の僕には鬱陶しい言葉のつらなりにしか聞こえなかった。レシラムの声ですらも心が拒絶しているようだった。その言葉にも上の空で答え寝る時間になった。
僕はレシラムとは別の部屋で寝ることにした。僕がどういう理由をこじつけてそんなことを可能にしたかは覚えていなかったけど…。



僕はレシラムの匂いがかすかに残っているソファを避けて椅子に腰かけてレシラムについて考え始めた。
レシラムが雌だと言う事は理解できた。頭では理解した。頭では理解しているけど僕の心がそれを認めていない。そんな感じがする…。クローが言った通り性別みたいに変えられないものを認めてあげないのは確かにレシラムがかわいそうだけど雌だと認めてしまうとどうしても今日みたいに間合いを取ってしまう。でも、雌だって事実を知ったってことは今までみたいな付き合い方にはもう無理があるってことで……。あぁ、結局どうすればいいんだろう?

僕は答えを見出す事も出来ないまま次の朝を迎えてしまった。






次の日もそのまた次の日もレシラムと居心地の悪い距離を開けながら過ごしていた。
そしてクローがやってきてからちょうど10日過ぎた朝。相変わらず僕らは居心地の悪い家の中で始終無言だった。僕もレシラムもすっかり明るさを失ってしまった。こうなった原因は分かっている。僕が全部悪い。けど今の僕にはどうしようもできない事だった。元々人とあまり関わらないたちだったし相手が異性となるとお手上げな状態だったのにひとつ屋根の下で雌のレシラムと一緒に仲良く暮らしてなどいたら気がおかしくなってしまう。

そんな中10日ぶりに家にノックの音が響いた。僕はしぶしぶ椅子から立ち上がりドアを開けた。外に立っていたのは紛れもない南九郎だった。いつもと変わらない笑顔。正直今この顔を見せられてもあまりうれしくなかったけどお客人なわけだしとりあえず家に招き入れようとしたが「これから用事があるから」と言いレシラムに用があるとのことでレシラムと一緒に外に出ていってしまった。十分ほどすると南九郎と一緒にレシラムも帰ってきた。
しかしレシラムの様子がおかしい。無駄にそわそわしているというか…。焦っている風にも見えなくもない。でも、特に何も聞く事はなく夕方まで重苦しい雰囲気は続いた…。




「………なあ、ちょっといいか?」
レシラムが夕飯を食べ終えて椅子に腰かけながらうつらうつらしていた僕に声をかけてきた。「いいけど……」と僕は短く答えた。それを確認してレシラムは話を始めた。
「……最近様子がおかしいが何か嫌なことでもあったのか?それとも私が何か嫌なことでもしてしまったのか?」
いきなりのレシラムの質問に僕は答えられなかった。いや、答える前にレシラムは話を続けた。
「なあ、教えてくれ。一体何があったのだ?」
何があったとかそんなんじゃないしレシラムが僕の機嫌を損ねるような事をやったわけでもない。むしろレシラムがいてくれたからこそ得られた幸せもあった。あの時までは……。そう、でも今は違う。レシラムの性別を知ってしまったときから僕の臆病な心がレシラムを遠ざけていったのだ。
「なぜ……なぜ答えてくれない…。何故何も私に話してくれない!!」
いくら経っても口を開かない僕を見かねてかレシラムが怒鳴り声を上げた。僕はそれに威圧されてかうつむいてしまった。そのすぐ後にレシラムの声が聞こえてきた。
「なぜ答えてくれない……。私の……私の事が…。嫌いになったのか……?」
レシラムの震えた声がとぎれとぎれに聞こえてきた。僕がはっと顔を上げてみると………レシラムは泣いていた。床にどっと腰を着き両手で目を抑えながら泣き出してしまった。


目の前で嗚咽を上げながら大粒の涙をこぼしているレシラムに僕はなんて声をかけていいのか分からなくなってしまった。いままでの僕だったらこんなことになってもレシラムに何も言う事は出来なかっただろう。でも、今は違う。いや、今こそ変わらなくちゃいけないと思った。しっかりとレシラムに謝りたい。しっかりとレシラムと一緒にいたいって伝えたい。だから……
「ごめん……レシラム…。僕は…レシラムのことを嫌いになったりしないよ……。だから、もう泣かないで……ね?」
そう静かに、でも優しく。泣きじゃくっているレシラムの前に座って頭をなでながら言った。何を言おうか全く考えていなかったけど上手く伝える事が出来たんじゃないかな…。レシラムは目をこするのをやめ僕の顔を見て大声をあげて泣き始めた。僕はそんなレシラムを優しく抱きしめた。強そうで脆いこの白陽をずっと守っていこう。そう思いながら。






レシラムが泣きやんだのは夜も更けてからだった。やっと涙も止まって僕がずっと抱き続けていたと気がついたようで随分と照れていた。さっきまで泣いていた顔に照れ笑いを浮かべた。
そして少し遅めの夕食をとってからレシラムが水浴びに行きたいと言い出したので今はその準備をしている。大きめのバスタオルを5枚。大きめのブラシを1つ。ついでに桶……じゃなくてタライを持っていこうタオルとかの持ち運びも便利だし。レシラムは「そんなに用意なんかしなくていいぞ」と眉間にしわを寄せていたけどやっぱりこれくらいの準備は必要でしょ。今まで僕は小さい水たまりみたいな場所で行水をしているだけでそんなレシラムみたいな大荷物は必要なかったけどレシラムの水浴びなら大規模になりかねない。そう考えると用心に越したことはないと思う。
……よし、これで完璧。女の子の入浴に付き合うと考えると何だか変な気分になってくるけど道案内だけで十分だろうし水浴びの最中僕は別の場所をうろうろしていればいいわけだしね。それじゃあ、レシラムが外で待っている訳だし早く行きますか!


外に出てみると満月がとてもきれいだった。手元どころか地面に生えている草の一本一本が確認できるほどの明るさだった。僕はタライを両手で抱えながら記憶を頼りに目的の水浴びの出来そうな水たまりを目指して歩き出した。僕はふとレシラムがクローと一体何の話をしたのか気になったからレシラムにその事を聞いてみた。
「ねえ、レシラム?」
「ん、なんだ?」
「クローはレシラムに一体何を吹き込……じゃなくて話したの?」
「ああ、その事か。ちょうどいい。私も話そうかと思っていたのだ」
どうやら僕の質問はナイスタイミングだったみたいだね。それじゃあクローが一体何を吹き込んだのかじっくり聞かせてもらうとしようかな……。
「それでは話し始めるぞ……。
 少し前にクローがあるトレーナーの手持ちポケモンを鑑定したそうだ。そのポケモンは上手くトレーナーに心を開く事の出来ない性格だったそうだ」
「ふぅん………それで?」
「結局トレーナーは手持ちのポケモンの気持ちに気がつく事が出来ず手放してしまったそうだ。
 ポケモンの方は悲しみにくれて遂には息絶えてしまったそうだ」
「………………」
クローはあんなお茶らけたような感じはしているけど一応は医師免許持ってるんだよね。ポケモンのメンタル面に対しての…。ペーパードクターみたいになっちゃってるけどさ…。でも、鑑定士と医者だからそういうたぐいの話を知っているのかもしれない。
水浴びの出来そうな大きな水たまりが見えてきていた。レシラムは話を続けた。
「ここでクローから聞かせれた話は大体終わるのだが聞かされた後に私もそうはならないかと心配になってそれで……」
とまで言うと顔を赤くしてうつむいた。気がつくと目の前にレシラムの水浴びには十分なほど大きな水たまりが目の前に広がっていた。これほど大きな水たまりならレシラムが泳いでも平気じゃないかな。
「それじゃあ、レシラム。ごゆっくりどうぞ……ってどうしたの?」
レシラムがじっとこちらを見ている…。仲間にしますか?………じゃなくて。何か言いだそうとしているみたいだけど口を開きかけてはまた閉じてしまう。そんなに言いにくい事でもあるのだろうか?
「どうしたのレシラム?」
「…………すこし、ほんの少しだけ。時間をいいか?」
「?……別にかまわないよ?」
何を急にかしこまっちゃってるのかな?でも、何か大切なことなんだろうな…。そう思って僕はどんな言葉が来るのか待っていた。
その……お前の事が……好きなのだが………
えっ?ちょっと待って。全く聞こえなかったんだけど……。何を言っていたのか一文字も理解できないで困惑している僕をよそにレシラムはそっぽを向いてしまった。そんな!めっちゃ気になるんだけど!
「ねえ、レシラム。全く聞こえなかったんだけど…。もう一回言ってくれない?」
「なっ!あんなにがんばったのに……仕方ない。ちょっと深呼吸をさせてくれ」
レシラムは大きく深呼吸をして再び僕の方へ向き直った。そして僕が予想もしていなかった言葉がその口をついて出た。
「その……お前の事が……好きなのだが………」
途中声が何回か小さくなっていたけど何が言いたかったかは理解する事が出来た。つまり僕の事が好きだと言う事だね………。って、あれ?これってもしかして告白とかいうやつですか?この僕に?
?なぜ?イングリッシュな感じでワァイ?ナゼデスカ?
ちょっと待ってくれ。さっきのレシラムの言葉を僕の脳で処理するのは無理がありそうだ。
頭の中が真っ白になって目の焦点全然合わなくて口が開きっぱなしになっちゃって何ともだらしない顔になっているであろう僕にいきなりレシラムが抱きついてきた。頭もしっかり働いていない僕の耳にレシラムの声が届く。
「ずっと…、ずっとこの言葉を伝えたかった……。ずっと、お前と一緒にいたい!」
そう確かに聞こえた。僕もレシラムに抱きついて言った。
「僕も……大好きだから。……ずっと一緒にいようね…」
そう、これが本音。レシラムが雌だってわかったときから気が付いていた僕のホントの気持ち。でも、こんな気持ちになっちゃいけないって思ってた。けどレシラムと思いが同じなら別にこういうのもありじゃない?

しばらくお互いの体温を感じながら抱き合っていたけどずっとこのままってわけにもいかないよね…。少し名残惜しい様な気がしたけど僕はそっとレシラムから手を離してレシラムに「そろそろ水浴びを始めないと夜が遅くなっちゃうよ」と声をかけた。無言でうなずいたのを確認すると僕はレシラムの水浴びを見ないよう避難することにした。少し離れたところに雑木林がある。こんな安全な場所だしポケモンに絡まれる事は無いな。と判断し雑木林をかき分けて一回り大きな木に腰をかけて休んだ。



………暇だな……。何もする事はないし……。
少しだけ眠気もあるけどさっきレシラムとあんな事があったばかりだしね……。


……さて何をしていようかな?
















































































































少し時間がたった事だしレシラムの様子を見てくる。 




そういえば先ほどから水音が全くしない。先ほどからというかずっと水音を聞いていないような気がする。まだ水浴びを始めていないのかな?いや……。それにしても遅いと思うし。もう終わってるのかな?そっと雑木林から顔を出してあたりの様子を見てみる。僕が案内した水たまりの前にはレシラムが立っているのかな?僕は目が悪くてよく見えないけど……。でもよくよく見てみると動いているような感じがしない。水浴びは終わったって判断しても問題ないよね?大丈夫だ。問題無い。

僕はそっと雑木林を抜け出してレシラムに近づいていく。……あれ?レシラムの体、全然濡れていない感じがするんだけど……?
レシラムは僕の姿を確認すると顔を赤くしてこちらを見ている。
「どうしたのレシラム?水浴び、しないで帰るの?」
「い、いや…………」
そう言ったっきり何か僕に言おうとしているのか先ほどから妙にもじもじしている。
「…どうしたのレシラム?」
「そ……その……。え~と…。
 ひ、一つだけ頼みたい事があるのだが……」
?急にかしこまっちゃってどうかしたのかな?何を頼まれるのか見当もつかないうちに僕は「いいよ」と答えてしまった。
「それじゃあ………言うぞ……。
 その…………私と交尾してくれないか……?」



えっ?一瞬だけ時間そのものが凍りついたかのように感じた。今さっきレシラムから放たれた言葉は僕の聞き間違いかそれとも幻聴かな?いや、目の前にいるレシラムの顔がより一層赤くなっているのを見るとさっき聞いた言葉は幻聴なんかじゃあないのだろう……。
でも、幻聴じゃないにしても今のレシラムの要求は人として飲んでしまっていいものなのだろうか?そりゃあ愛し合っている者同士なら普通の行為だと思うけどそれは同族である場合のみ……なのかな?常識からしてみれば周りから白い目で見られるだろうし人間とポケモンではあたりまえだけど子供が生まれるはずはない。とすると交尾自体の意味がない事になるし……。そもそもレシラムはなぜ交尾をしたいのか。それを知ってからの方が良いかな…。
「ねぇ、レシラム?どうして僕と交尾したいの?」
「どうしてって……。好きだからに決まっている。交尾する理由なんてそれで充分じゃないのか?
 そうゼクロムから教わったのだが……」
うっ…。確かにそうだけどゼクロムの入れ知恵だったのね…。でも、その通りかもね。交尾するのにそれ以上の理由なんてないか……。じゃあ、僕の返事はこれしかないよね。
「分かったよ。僕なんかで良ければ相手になるよ」




……とは答えたものの僕は何をどうすればいいかなんて全く分からない。僕みたいな若さで深い知識を得ていること自体おかしいけれどね。ましてや経験なんてはっきり言ってゼロだし。でも、何かやらなければどうしようもない。
とにかく交尾の基本としてまずは入れることを念頭に置かなければならないわけだけど知識も何もない僕が下手なことやってレシラムから早速嫌われるわけにもいかないし、ここは少なくとも僕よりは長生きなレシラムに主導権握ってもらった方が利口かな…。
「それじゃあレシラム、よろしく頼むよ」
「えっ、……このようなときは雄がリードするものじゃないのか?まあ別にかまわないが……」
レシラムはそう言うともじもじしている。僕は何か指示を出すのかと身構えていたけれどなかなか始まらない。ああ、こういうときのためにもう少し勉強しておけばよかったよ。女の子についてさ…。
そんなことを考えているとレシラムは小さい声で僕に声をかけてきた。
「なあ………、その……私のあそこを触ってくれないか……?」
相変わらずもじもじしながら僕に何かを頼んでくる。レシラムの目線とレシラムの右手が指示したであろう場所に添えられていることを考えると…………そこしかないよね…。
僕はレシラムに軽くうなずいてみせるとレシラムの方へ少しだけ歩み寄りレシラムの足の付け根のあたり……ダイレクトに言っちゃうと秘所って呼ばれているところのあたりの毛をかき分け始めた。だんだん顔が火照っていくのを感じながらレシラムの秘所を目指して毛をかき分けていく。
しばらくかき分けてもすぐに元の位置に戻ってしまう毛に苦労しながらかき分けていくとちいさな淡い桃色を帯びた割れ目を見つけた。……想像していたのとはなんか違うような………?再び上を見てレシラムの体の大きさを確認する。うん、でかいね…。そしてまた秘所へ視線を戻してみる。……?なんか小さすぎるような気もするけど、まあいいか。もうひとつ想像と大きく違ったのはレシラムの秘所が思っていたよりもずっときれいだったこと。生き物の内側とか内蔵物と外をつなぐ器官は大体グロテスクだ。とかいう話を聞いたことがある。人間以外だと見るだけで「もう勘弁してくれ」みたいなものも多いと聞いていたけど全くそんなことも無かった。生き物としての本能や欲望が僕に早く触ってやれよと囁いていたがこれなら本能や欲望とかが無くったって十分触れるものだった。
これ以上レシラムを待たせるのもかわいそうだしもしかすると僕が待ち切れなかったのかもしれない。僕は自分がむっつりスケベであることを自覚しレシラムの秘所に手を触れた。
「………っ…」
少し触っただけでレシラムは敏感に反応した。その様が面白くっておもちゃを与えられた子供のように僕はレシラムの秘所を触ってははなしてを繰り返した。そんな僕の様子にレシラムは少しあきれたような表情を見せながら僕に声をかけた。
「おい……!くすぐったいからもう少ししっかりやってくれ」
「あ……、ごめん」
僕はほんの少しだけ反省してレシラムの秘所を優しくなで始めた。こういうのを愛撫っていうのかな?さっきからレシラムの息が荒いけどこういう行為にはやっぱりそれなりに体力は消耗するんだね。そう思いしばらく秘所を撫で続けていると次第に指先が濡れてきた。レシラムのおしっこってわけじゃないよね?
……そろそろ単調な動きを続けていて飽きてきたし腕も疲れてきた。そういえば割れ目があるってことは指を入れても大丈夫なのかな?ってゆうか入るのかな?という好奇心が自然とわいてきてしまった。青春なんだからやったもん勝ちだよね♪

僕はレシラムのすでにひどく濡れている秘所に指を入れ上下に動かす。初めてだったし心配だからレシラムの顔色をそっと窺って見た。
「うっ………んんっ……」
目をかたく閉じ、きゅっと結ばれた口からかすかに声が漏れる。かすかに体が震えているかのように見えなくもない。
……もしかして痛がってる?
そう思い僕はあわててレシラムの秘所から指を抜いた。するとレシラムが頭の上に疑問符を浮かべながら僕を見降ろしてきた。
「?……どうしたのだ?」
「えっ……。いやぁ、痛いのかなって思って………」
「そうか…。別に平気だ。……心配してくれたのだろう?ありがとう」
そう言うとレシラムが赤い顔をさらに紅潮させ僕を押し倒してきた。何事!?と思い起き上がろうとするがレシラムの方が明らかに力も重さも上だし僕の努力は無駄に終わった。レシラムは僕の上に覆いかぶさりながらそっと僕に声をかけた。
「ゼクロムから教えてもらったことだが……え~っと…。こ、今度は…私が……き…気持ちよく……してやる…」
そう言うと大きい手を器用に使って僕のズボンを脱がせた。…パンツも一緒に……。すると、先ほどからのレシラムとの行為で普段よりも一回りもふたまわりも大きくなった僕の肉棒が姿を現した。
「わっ!!………ちょっ!…………うぅ…恥ずかしいよ………」
「む?ゼクロムは雌にこうしてもらえればだれでも喜んで受け入れてくれると聞いたのだが?」
ゼクロムは何アホな事をレシラムに吹き込んでるんだよ!そりゃあ、嬉しいだろうけどいきなりはいくらなんでも反則じゃない?それにやっぱりこうして下半身を凝視されると恥ずかしいよ……。レシラムもさっきは恥ずかしかったのかな…?
「え~っと、確かこんな感じだったかな?」
と言って僕の肉棒をつかんだと思うと上下に扱きはじめた。それに敏感に反応する僕の肉棒……。その様子に妙な好奇心が湧いてしまったのかレシラムが目を輝かせながら僕の肉棒を眺めはじめた。…もちろん扱き続けながら。
「おお!これはすごいな!大きくなるだけでなくかたくなるのか!!」
そう言ってますます扱く速度を上げていく。………そろそろ限界かも…。処理なんかしているわけがないし。流石にここで果ててしまっては恥だし、ここで果てたらレシラムの顔を汚すことになる。
……早くこの行為自体終わらせるのが先決だよね……。
そう思いレシラムに声をかけようとしたらレシラムが肉棒を扱くのをやめ先に声を発した。
「そう言えば……お前はだれかと性行為をしたことがあるのか?」
「ん?ないよ。………レシラムは?」
「私も………初めてだ……」
「え?レシラムは今日で何歳?」
「レディに歳を聞くのは………。いや、すまん冗談だ。たしか………今日で3759年目か?」
「!?今日まで一度も経験をしてないの!?」
「ああ………ゼクロムに『やりたいから』と1692回ほど襲われたがしっかりと守りきったぞ!!偉いだろう!」
そう言って無邪気に微笑むレシラム。偉いとかそういう問題じゃないとおもう。というかゼクロムはアホなのかな?そこまでやるか普通?僕は少々ゼクロムとレシラムにあきれこめかみを押さえながらながら頭を横に振っているとレシラムが言葉をつづけた。
「今日、それをお前に捧げるのだ。悪い気はしないだろう?」
「いや……。そんな重みのあるものを僕が奪ってもいいのか?」
「ああ。……私は3759年のあいだ伝説のポケモンとして過ごしてきた。
 頼む。……お前の手で………私を……雌にしてくれ」
レシラムは顔を真っ赤にしてそう言葉を発した。


「それじゃあ、…いくよ……?」
「ああ………」
僕は自分の肉棒を片手で握り僕の前に立っているレシラムの秘所にゆっくりと挿入した。うああ……。何だこれ…?
僕はまだ少ししか入れていないのにもかかわらず快感を感じた。このまま入れていったらどうなってしまうのだろう…?これからの行為に不安と期待を抱きながら僕は挿入を少しずつ進めていった。
しばらくすると壁のようなものにぶつかった。あれ?こんなに少ししか入らないものなのかな?まだ半分しか入ってないよ?僕が首をかしげていると上から声がした。
「………まだ入るはずだぞ…」
そう短く言った後「突き通してもかまわない」と短く小さい声を発した。僕は小さくうなずくとさらに肉棒を上へと押し上げた。
なかなか破ることのできない壁にさらに強い力を加えた。すると壁を破りそのまま一気に奥まで肉棒を突き通してしまった。
「うああああ!」
僕が初めて感じる快感に必死に耐えながら上を見ていると目に涙をためたレシラムが歯を食いしばっていた。
「レシラム?大丈夫?」
「ぐぅ……。大丈…夫だ…。続けてくれ……」
とても大丈夫そうには見えなかったけどレシラムの「大丈夫だ」という言葉を信じて深くまで侵入させていた肉棒を一気に引き抜いて再びレシラムの中を突いた。
「あああああああ!!」
再びレシラムが叫び声を聞く。これは流石にいたいとしか思えないような聞いているだけで悲痛な叫び声。少し恥ずかしかったけど結合部分に目を落としてみると……
「レシラム!血!血が出てるよ!?本当に大丈夫?」
「ううっ………。やっぱり痛い……」
レシラムの純白の毛に赤い血が付いていた時には正直焦った。レシラムが痛がってるしレシラムの中に入れたまま僕は動かずにいた。
「すまない……。お前は早く動かしたいだろう…?」
そう目に涙をためながら僕の方を見下ろした。僕と目が合うとさらに申し訳なさそうな顔になった。僕は首を振ってレシラムに声をかけた。
「そんなこと気にしなくてもいいよ……。動かしても大丈夫になったら言ってね。……我慢はしなくてもいいから……」
そういうとレシラムはうなずいてしばらく無言でいた。
……よくよく考えたら外でこんなことをやってるんだよなぁ…。今考えたら猛烈に恥ずかしいな…。だれかに見られなきゃいいけど……
「そろそろ大丈夫……………だと思う」
「ホントに大丈夫?」
「ああ…」
レシラムの「だと思う」という言葉で余計不安になりながらも僕は再び腰を動かし始めた。
「あっ……!んああっ!」
中もだいぶ濡れていて動かしやすくなっていたしレシラムももう痛みを感じていないみたいだし一安心した。レシラムが普段じゃあ考えられない声のトーンであえいでいる。僕は無言で突いていた。何か言えるほどの余裕も無くて……。
レシラムの中はすごく熱かった。それこそ、火傷してしまいそうなくらいに。中がぎゅうぎゅうと僕の肉棒を締め付けてきて射精を促した。
「はあっ……はあっ……」
レシラムは息を荒くして快感の波にさらわれないように必死に耐えていた。僕はもうすでに快感の波にさらわれていた。激しく腰を振って初めて味わうこの快感を味わっていた。
……そろそろ限界が近い。そう感じた。流石に中で出してはいけない。と僕の理性が僕に呼び掛ける。出してしまう直前にレシラムの中から引き抜いた。
そして僕の精液が宙を舞い、全部レシラムのおなかにかかってしまった。いくら白くて目立たないからってこれは流石に「しまった!」と思った。恐る恐る上を見てみると……やっぱり怪訝そうな顔つきをしていた。僕と目があってレシラムが口を開いた。
「なぜ中に出してくれなかったのだ?」
……へ?流石に僕もレシラムの発言には拍子抜けしてしまった。中出しは流石にまずいと思って外に出したらそっちの方がまずかった……ってこと?
「中に出してもよかったの……?」
「ああ……それを期待していたのだが……」
そうなのか……。僕がライモンシティで呼んだほんのセリフに「中はダメェ!」とか言ってるものがあったからてっきり中はダメかと思ってた。でも、レシラムは中が良かったんだ……。じゃあ……
「じゃあ、仕切りなおしてことでも一回」
僕のはまだ元気みたいだしレシラムも体力的に大丈夫そうだしこれはやるっきゃないよね♪
「ああ……、今度はその……中で……」
「うん、分かったよ」
顔を真っ赤にしているレシラムにドキンとしてしまう。こんなに可愛いのがうちにやってきていいのだろうか?そんなことを考えながらレシラムに明るく答える。
「それと、立ちながらはやめよう。なんかいい恰好はないか?」
「う~ん……」
確かに立ちながらはけっこう足がいたい。腰を振るのも一苦労だしほかにどんな格好で……
「レシラム?仰向けになれる?」
そう提案してみるとすまなそうな顔をしてレシラムが答えた。
「すまない……。尻尾がこれだから……」
と言って派手で巨大な尻尾をこちらに見せた。確かに無理だね……。じゃあ、うつぶせ?……ん?
「四つん這いは?」
「ああ!それがいい!」
そう言って無邪気に笑って四つん這いになってこちらにお尻を向けた。……何の考えもなしに四つん這いを提案したのはいいけど…。見ているこっちが恥ずかしいくらいいろんなものが丸出しな格好になってしまった。
はやくはやく、と言わんばかりにレシラムがお尻と尻尾を振っている。この恥ずかしさに本人が気が付いていないのに少々あきれながらもレシラムの秘所に触れた。
「ひゃあぁ!」
ちょっと秘所を指で広げただけで敏感に反応するレシラムを見てもっと激しく……。と思い先ほどから萎えを見せない僕の肉棒をレシラムの秘所に再び宛がった。今、僕らの熱い夜の第二ラウンドが始まろうとしていた。





レシラムのでかい尻尾に両手で抱きつくと腰を前へ突き出した。ぬちょっと言う粘着質のある音を立てて僕の肉棒は再びレシラムの中へと吸い込まれていく。一回目に入れたときとは違ってすでに濡れていてスムーズに入った……けど……。こんな姿勢でつながったせいかさっきよりもずっと深く僕のものがレシラムの中へ入り込んだ。二回目だからさっきよりも長くレシラムを気持ちよくできるかも、と言う僕の予想は早くも崩れ去って踏ん張っていないと耐えられないような状況に陥ってしまった。
「んっ…!…んあぁっ……!  奥にぃ…!奥に来てるよぉ……!」
僕はさっきよりも感じすぎていて困っていたけど…、レシラムもさっきと感じ方が変わっていないわけじゃないみたいだね…。一回目よりも声のトーンが上がっているし息遣いにも余裕がなさそうな感じがする。
スムーズに出し入れができる分僕は一回目よりも激しくレシラムの膣内を突いた。僕の肉棒はすでにレシラムの子宮口に到達していてそこから引き抜きすぐに子宮口に起用をぶつける。レシラムのやわらかいお尻と僕の腰とがぶつかり合う音があたりに響く。
「ふぁっ!  ふぁぁぁぁっ!!  なにか……っ、なにかくるぅぅっ!」
そうレシラムが叫ぶとともに両足をがくがくと震わせた。レシラムはついに立っていられなくなったのか足を折り曲げ膝を地べたへと着いた。僕もそれにつられて尻尾から手を離して背中から胴体に抱きいついた。体のほとんどの部位を密着させながらなおも僕は腰を振り続けていた。
「あっ…あっ………。  やぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ひと際大きく叫ぶと下半身を痙攣させるレシラム。その瞬間、膣壁が収縮し肉棒を圧迫して絶頂へと向かわせる。当然その流れに僕如きが逆らえるはずもなく子宮口にその鈴口を触れさせていた肉棒から大量の精液が流し込まれた。





それから幾度ととなく僕とレシラムは交じり合った。
そのたびにお互いの愛を肌で感じ、お互いの想いを確かめ合った。

愛し合う、って……こんなにも素晴らしい事なんだ……。
そうレシラムの中を感じながら思うと僕は何度目か分からない絶頂を迎え繋がったままレシラムの上へ倒れ込んだ。  あたたかかった。心も体も癒される様な不思議なぬくもりを感じながら僕は眠りへと落ちていった――――――


寝る。 






「う~ん……。 ……あれ?」
僕はベッドの上で起き上がった。きょろきょろとあたりを見回したがそこには見慣れた風景が。そう言えば外で寝ちゃったんだったっけ? 僕がその後歩いて帰って来たような記憶もないしレシラムが運んできてくれたのかな?
そんなことを思いながら温かい布団から出てみる。ほんの少し体がだるかったけど特に気にすることもなく閉じたままだった部屋のカーテンを開けた。朝日が眩しい。

部屋を出てみると僕は早速レシラムを探し始める。隣に寝ていなかっただけでなんでこんなにも不安になるのだろうと考えながらリビングへと向かう。案の定そこにレシラムはいた。ソファに腰をかけて俯いていた。
「おはよ。レシラム」
以前レシラムが僕がいなくなったのかと相当焦っていたようなことがあったけど、その気持ち、何となく理解できたかもしれない。
そんなことを思いながらレシラムの返事を待つも一向に返事は返ってこない。具合でも悪いのかと慌てて駆け寄ってみて僕は思わず苦笑いしてしまった。
すぅすぅとかわいい寝息を立てて寝ているレシラムを撫でてまだ用意されていない朝食の準備に取り掛かった。


食べ物の匂いにつられてか野菜を炒めている僕がいる台所へとレシラムがやってきた。相変わらずいつもおなかをすかせている様子で。そんな様を見せられて料理を張りきれないわけがない。僕はいつもの3倍はあろう野菜をフライパンいっぱいに入れて炒め始めた。

「いただきます」
レシラムの声と僕の声が重なる。2人で手を合わせ食べ物へ向かって頭を下げる。その後、すごい勢いで野菜炒めをぱくつくレシラムは野菜を口に入れながら言った。
「なあ。  お前を私のご主人兼恋人にしたいがどうだ?」
レシラムのいきなりの不意打ちに僕は思わず飲み込みかけていた野菜炒めでむせてしまった。いきなり何をばかなことを。とおもっていたけどよくよく思い出してみれば昨夜お互いの愛の告白をしたような気がする。とするともう僕らは立派なカップルなのかな? 水で野菜炒めを流しこみながら昨日のことを思いだし、顔を赤くしたであろう僕にレシラムの右翼が伸びる。
「これから、よろしくな」
「けほんっ……。   こちらこそっ」
そう言って僕の右手でレシラムの翼の先の手のような部分を握る。レシラムもそれに応え僕の手を握る。


その手と心はいつまでもいつまでも離れずに、
いつまでも一緒だった……ってね。












おしまい




南十字の呟き出張版

さて、白陽がやっとこさおわりました~♪
更新速度の遅さといったらもうすごかったですね。申し訳ないですorz
後半のぐだぐださ加減。大幅なストーリーのカット(N登場とか)がありどうしようもない出来に(滝汗
それでも読んでいただけたら幸いです………♪


ご愛読(してる人いないと思いますが)、ありがとうございました♪



感想、指摘、誤字脱字の報告、アドバイス等ありましたらぜひお気軽にコメントをお願いします。
(コメント=南十字の生命力)




トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2023-06-06 (火) 22:18:25
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.