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白色系彼女とアナタの色彩的関係。-1-

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色系彼女とアナタの色彩的関係。-1-
     
 
 
 


writer: 灯夜鳴(Naru Toya)



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 白乃(ハクノ・人間♀)=代々リーグ挑戦者やジムリーダーを輩出する名門一家の元・末娘。家族構成は両親の他に、兄が二人とじいや。
           一年前、病弱なせいでトレーナーとしては失敗作と両親が話しているのを聞いてしまい、そのまま屋敷を飛び出した。
          夕立が降った日に出会ったリオルのノアを通じて、通じ合った相手の心の声を聞く能力を発現する。
 
 
 ノア(ルカリオ♂)=ポテンシャルは全てにおいて最高の能力とジャッジされながらも、トレーナーと馬が合わず決別した元野良ポケモン。
          白乃と行動を共にし始めてたった一週間でルカリオへと進化したが、本人に心を通わせている自覚はない。
          世間知らずな人間の子どもを仕方なく保護してやっているくらいの認識だが、その実態は完全に過保護そのもの。
        
 


 
 
 ちゅんちゅん。鳥ポケモンのさえずりと一緒に、うっすらと空が白んでいく。時刻はちょうど、夜明け前。
 
 「ノア。……ノーーア!朝だよ?早く起きなきゃ夜になっちゃうよ」
 「……そんなわけあるか」
 
 やや乱暴に身体を揺すられ、ノアと呼ばれたルカリオはぱちりと目を開いた。精悍な顔立ちの通り、起床時にも隙が無い。
 それもそのはず、彼は寝起きがとても悪いのだ。万一無理に起こされたなら、起こしに来た人がどうなることか。
 なので、起きると決めた時間の30分前には目を覚まし、布団の中で意識を引っ張り上げる時間が必要だった。
  
 「ふふ、ねぼすけさんだね。わたしが起こしに来ないと起きないんだ」
 
 どこか嬉しそうに微笑んで彼の起床を見届けたのは人間の女の子、白乃。
 普段はお団子の付いた特徴的なツインテールがトレードマークだけど、この時間はいつも起きたまんまのストレートヘアでやって来る。
 結んで腰元、下ろせば膝裏にまで届く彼女のチョコレート色の長髪は、屋敷を出てから一年を経ても傷むことなくさらさらのつやつやである。
 彼女が首を傾げて顔を寄せると、花のような甘い香りがふわりとノアの鼻腔をくすぐった。
 毎朝馴染みの匂いでもあり、彼にとっての「朝」を感じる大切な要素でもある。
 「前々から思っていたが、お前寝起きから香水を付けてるのか?」
 「?香水っていい匂いさせるおしゃれなやつだよね?わたしは付けたことないなあ」
 「そうか……」
 まあどちらでもいいか。何気ない世間話を終え、ノアはすっと立ち上がる。
 ポケモンセンターの二階、トレーナーなら無料で借りられてダブルベッドがずらりと並んだ相部屋ではない、有料の個室。
 本来は数人で一緒に旅をするトレーナー達のための部屋だったが、昨夜はちょうど空いているとのことで泊めさせて貰った。
 ちょっと贅沢な寝室は二部屋に分かれ、居間とトイレが完備されており、ベッドもふかふかで気持ちがいい。後はシャワーさえあれば……。
 若干名残惜しいが、そろそろ発たねば遅れそうだ。なにせ、今日の目的地は三つの街を越えた先。日が沈むまでには辿り着きたい。
 
 「あっ待って、わたしも今準備するね……!」
 
 早くも出発しようとするせっかちなノアの背中で、ぱたぱたと朝の支度を始める白乃。
 この急な慌ただしさも、毎朝の決まった光景だった。
 
 
 
 
 
 「今日の任務は、強盗団のアジトに乗り込んで……」
 「アジトの制圧、およびリーダーの確保だ。逃げ出す残党は応援部隊が捕らえてくれるだろうから、俺達は制圧が中心だな」
 夕日が真っ赤に空を焼く日暮れ時、街はずれの小高い丘の上。白乃とノアはこれから行う作戦の確認をしていた。
 ふたりの視線の先には、かつて街で一番の資産家が住む大きな屋敷だった建物がある。
 ターゲット達はそこに棲み着いて根城にしているらしく、廃墟にも関わらずゆらゆらと光が漏れていた。
 行動を共にするようになって一年。現在の白乃とノアはなんと、国際警察のエージェントであった。
 病弱で身体を動かすことも苦手だった白乃だが、実家を出てから少しずつ体力が付いて来たらしい。最近は成長期なのか、一日三食に加えておやつも食べるようになった。
 しかし、すこやかに成長しているだけで危険な戦闘を専門とし、凶悪な国際手配犯を確保することなど出来るはずもなく……。
 そんな彼女の秘密は、首と両手足首に着けた、一見アクセサリーのような代物だ。

 白乃は、研究部門によって開発されたものの、多くのエージェントが適合出来なかった幻の戦闘用デバイス"ポケナイザー"を扱える唯一の適合者だった。

 ポケナイザーは生身の人間でもポケモンに匹敵するような肉体の補助と"わざ"の再現を主な機能としている。
 既に量産化は諦めて、白乃専用の装備として彼女に合わせた調整が進められていた。
 脳から体へ発せられる電気信号を読み取り、動きをサポートすることで身体機能を大幅に底上げする。このデバイスのおかげで肉体面での問題が無くなり、長らく体力の無さに埋もれていた生来のバトルセンスが開花した。
 始めはノアのおまけで迎えられた白乃だったが、これを機にひとりの戦力としても注目されるようになる……ただし、ひとりでポケモンと戦える戦闘能力の人間として。
 こうして、当初目指してたポケモントレーナーの道からは大きく逸れて、犯罪組織確保の任に就く運びとなったのだった。


 今回ふたりが対峙するクイタラン強盗団は、三つの地方を股に掛け、方々で略奪を繰り返す凶悪な集団である。
 名前の通りいくら奪っても食い足らんとばかりに都市部だろうが辺境だろうが関係なく姿を現す。現れた先で拠点を構え、周辺の街で金品を奪い取っていく。
 その手口は容赦という言葉とは無縁で、抵抗するなら人だろうとポケモンだろうとクイタランの炎で火だるまにされてしまう。
 既に今回の潜伏先の周辺でも、被害が増えつつあった。
 そんな悪いやつら、放っておけないよ。胸中静かに義憤を募らせながら、白乃は正面の門から堂々と入っていこうとする。
 「おい待て。のこのこ行って死にたいのか?」
 そのまま走りだそうとした彼女の背中を、ノアがぐいと後方へ引っ張り返す。ひゃあ!と情けない声を上げ、意識の外からの妨害に白乃はべしゃりと尻餅をついた。
 「もー!何するの、危ないよお」
 「回り込むぞ。向こうが待ち伏せているのなら、俺達だって正面から行ってやる必要も無い」
 「?」
 太陽も地平線からほんの少し顔を見せるだけとなり、星が瞬く宵の口。人より目がいいポケモンだって、そんなに見えるものだろうか。
 不思議そうにノアを見上げる白乃だったが、ぽん、と手のひらを叩く。
 「あっ、そうか。波導ってすごいんだねえ」
 「ふん。特に、悪しき心を持つ者の波導は乱れているからな。ノイズまみれで、実に不愉快極まりない」

 「……しゃべり方、変わんないね?」
 「……大きなお世話だ」

 わざと気取っているのではなく、リオルの頃からなのがとても香ばしい。
 もっとも、ルカリオとなった今はだいぶ様になっているのが、似合ってないのに変な口調かわいいと思っていた白乃としてはちょっと複雑な気持ちだった。
 

 ノアがターゲットの待ち伏せに気付いたため、ふたりは正面からの突入は危険と判断し、外壁に沿って建物の側面に回り込む。
 塀と建物の間に位置するこの場所から中へ侵入するためには、基本的には壁を壊すかどこかから入り込むかの二通りだ。
 主を失い何年も放置されていただろう豪邸は、風雨にさらされて塀も壁もあちこちが崩れ、亀裂が入っていた。
 「ここならいけそうだな。以前思い付いたあれを、やってみるか」
 ひと際亀裂の大きな壁の前に立ち、ノアが大きく息を吸う。足を前後に開いて立ち、全身に気を巡らせる。
 徐々に体の中心に気に集め練り上げたそれを、体をひねり、目にも止まらぬ速度で突き出した掌から拡散させて打ち放つ。
 まだ波導を充分に扱えないリオルの頃に磨き上げた必殺の一撃、練り上げた気に運動エネルギーを乗せ、ショットガンのように衝撃を打ち込むわざ"はっけい"。
 ルカリオに進化して波導を込めることでさらに破壊力の高まった一撃は、人とポケモンが通るには十分過ぎる穴を作り出す。
 しかし、相当な衝撃で壊された壁は不思議と音も立たずに崩れ落ちた。
 「だいぶ本気でやってみたが、上手くいったようだな。念力を張って破片が飛び散らないようにしたのは」
 "サイコキネシス"を事前に壁に張り巡らせ、壁が壊れた瞬間に大きな音が立つのを防ぐ試みが成功し、ノアはにやりと笑みを作った。

 「ふふ、やるねえ」

 両手を後手に組んで見守っていた白乃も、目を細めて笑った。






 崩れた壁から侵入した先は、先が暗くて見えない程広い廊下だった。せっかく静かに壁を壊した分、足音を立てないように慎重に進む。
 「なんかお化け屋敷みたい……」
 廃墟ということもあり、雰囲気は十分だ。今にも影から何かが飛び出してきてもおかしくない。出て来るとすれば幽霊ではなく犯罪者だが、あえてノアは言わなかった。
 長い廊下を抜け、小さな客間を抜けた直後、前方に黒い影がふたつ飛び出して来た。同時に背後で扉が音を立てて閉まる。退路が断たれた。
 「きゃっ!ほんとにおばけ!?」
 冗談半分だった自分の発言が現実になったと思い、白乃が狼狽する。もちろんお化けではなかった。
 正体は、モンスターボールを構えた覆面の二人組だ。小回りの利かない細長い廊下で行く手を塞ぐ彼らの手から、赤い光の筋がふたつ、闇に閃く。
 現れたのはずんぐりとした体に鋭い眼つき、不似合いな長い顔と舌を持つポケモン、クイタラン達だ。
 彼らは細長い口の先から炎をちらつかせ、既にほのおわざを打つ準備が整っていた。

 「国際警察の追っ手かと思えば、はがねタイプがわざわざ俺達に向かってくるなんてな!」
 「トレーナーもレディにゃ程遠いガキだし、とんだカモだぜ!喰らいな!」

 クイタラン達が細い口の先から炎を吐き出した。炎は距離を進むたびにみるみる勢いを増す。周囲の酸素を取り込みながら、廊下を埋め尽くす巨大な火球がふたりに迫る。
 かませ役のお手本のような口調だが、国際手配されてなお今日まで確保に至らなかった実力は、どうやら本物の様だ。 
 ごうっ!轟音を立てて熱風が辺りを焼き払う。衝撃でびりびりと震えた窓が、次々に割れて飛び散った。
 普段のポケモンバトルではあり得ない規模の、相手に一切容赦のない威力だった。
 前も見えない濃い白煙と焦げ臭い匂いが辺りを包む。勢いよく燃え盛る音であろうか、大きな破裂音が弾けた。生身の人間とはがねタイプのルカリオが直撃していたなら、まず命は無いだろう。

 直撃したなら、の話ではあるけれど。

 火球がふたりを飲み込む直前、とっさにノアの放った"はどうだん"が炎に直撃し、拮抗しながらその勢いを食い止めた。
 しかし、炎の侵攻を留めてもそれだけで無事で済むわけではない。この直後に襲い来る熱風が肌を包めば、命に関わる火傷を負うだろう。そして、それはすぐにやって来る。
 空気を押し出す音と共に焼けつく風が前へ出たノアの毛並みに触れる──。
 寸前、ポケナイザーを通して発動した白乃の"みずのはどう"がシェルターのように展開し、ふたりを包み込む。
 幾重にも重ねた水の膜だが表面が蒸発し、じゅわっ、と嫌な音を立てていく。
 このままではもたない。押し負けないようなおも波導を送り"はどうだん"の勢いを保つノアの額に、熱さだけではない汗が滲む。
 せめて白乃だけでも、と後ろで同じく必死にわざを維持してくれているだろう彼女をちらりと見やる。しかし驚いたことに、その顔にはまだ余裕があった。
 そして、小さなジェスチャーで右手をしゅっしゅっ、と突き出してみせた。それが何を意味するか、頭で答えに行き着く前に、直感で理解する。
 彼がああ、と心の中で頷いたのを聴いた白乃も、前後に足を広げて並び立った。

 「いくよっ……せー、のっ!!」

 バチイィィィィンッ!!!

 水の防壁とエネルギー弾の維持を放棄して放つ、強化された身体能力と磨き抜いた一撃が空間を震わせる。
 音速を遥かに超えた衝撃波が、空間を喰らい燃え上がる火球に直撃し、跡形もなく消し飛ばした。

 「はー、危なかったねえ……」
 「直撃したら諸共に消し炭だったろうな。助かったぞ、白乃」
 「ふふ、ノアもがんばってくれたよね。ありがとう」

 熱風が割れた窓から外へ吹き抜けて、白煙が真っ二つに割れたように消し飛ばされる。真っ黒に焦げた廊下とは対照に、無傷のふたりの姿があった。
 防がれることを全く想定していなかった強盗団の下っ端達は、覆面越しでもぽかんとしているのが分かるようだ。
 ノアがそんな彼らを、棒状に実体化した波導を手にして鮮やかな連撃を繰り出す"ボーンラッシュ"で次々打ち据え、あっさりと意識を刈り取っていく。
 後ろで今見た動きを再現しようと躍起になっている白乃に背を向け、さらに先へと進んでいく。

 「あっ、待ってよ~!」
 「気を抜くなよ、まだ終わっていないんだ」
  
 きっと、こいつらを束ねるリーダーとやらはもっと厳しい相手なのだろう──。
 更なる強敵の予感に、ノアの心は躍った。
 




 
 ~to be continued~
 
 


 
 
 ○あとがき。○
 
 灯夜鳴です。なんとか復帰宣言から一週間で続きを上げることができました!がんばった…!
 白乃ちゃんとノアはヒーロー、ヒロインという関係性というよりはW主人公と考えて頂けるといいかな~と思います。

 前回のプロローグで、ふんわりやさしい世界観でふたりのいちゃいちゃを求めていた方にはごめんなさい。バトルものでした。
 あとトレーナーの白乃ちゃんもご都合設定(ポケナイザー)のおかげでがっつり戦います。それこそ異世界転生みたいに。
 冒頭みたいに柔らかい雰囲気とか、読んでてテンポがいい言葉選びも目指していければなあって。
 
 文章量少ないのをごまかすために、横書きの文章って結構改行しちゃうんですよね。
 おかげでちょっと展開早いかもしれません、、たくさん書ける人すごい。
 次も来週中には上げられるようにがんばります…!ありがとうございました。
 
 
 
 

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Last-modified: 2019-06-30 (日) 22:11:47
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