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番外編2 光、月下夜桜

/番外編2 光、月下夜桜

writer is 双牙連刃
桜を見てたら突然書きたくなった作品です。
主人公はライトです。なら何故番外編か。理由は、

時間軸を無視している
本編と関係無い

からです。
因みに、官能表現はありませんが、一部ポケモンが飲酒しています。ご注意ください。
勢いのみで書いたからかなーり作品として荒いです。
それでも良ければ……どうぞ!



 夜風に吹かれてひらひらと、散り行く花は美しき……。
な~んてな。詩人の物真似は出来るが、俺ポケモンだし。綺麗なもんは綺麗って表現するだけで十分だよな。
現在夜の9時。マスターの友達とやらが集団でおしかけて来て、花見しようって事になったわけよ。もちろんポケモンも交えてな。
が、俺は今近くの公園のベンチに一人で寝そべって桜を見てる。理由? そんなの決まってんだろ。うるせぇ所に居たくなかったからだよ。

「ぎゃーははははははははははは!」
「うるせぇなぁ。全く……花も見ないで酔っ払いやがって……」

 そ、公園には全員居るぜ。ただ、全員花見にかこつけて酒飲んでるみたいだがな。おいこら未成年共、自重しろ!
ついでに自分達のポケモンにも飲ませてるから性質が悪い。ってかポケモンも飲んだら酔うのな。よくあんな不味いもんが飲めるもんだよなぁ。理解できん。
皆の様子知りたいか? そうさなぁ……見える範囲だけ実況してやっか。

 さてさて、ま~ずは、と? ありゃレオか。あ~あ~踊っちゃってますよ。踊るバクフーンなんて聞いた事ねぇぞ。願わくば火だけは出さないでくれよ? 俺が止めなきゃいけなくなるし、綺麗な桜が燃えるのも何とも勿体無い。
その横に居るのは……何だありゃ? 白いデカイ饅頭? あ、ちげぇソウの腹だ。飲んで酔いつぶれて寝るっておっさんか! 
後は人間が数人。レオの踊り見て笑ってらぁ。出来上がってるねぇ。
ん~、マスターなんかが居ないな? 何処行ったんだ? そういや頭数が多いから二班に分かれるとか言ってたか。そっちも見に行ってみるかな。

 落ちた桜の花びらで出来たピンクの道をトコトコと歩く。これがホントの花道、てか? ……上手い事はなかなか言えんもんだな。
公園には俺達のグループ以外にも花見客が居る。ま、何処も同じだな。花なんかそっちのけで飲んで騒いで。風情が無いねぇ。
この景色は一年で今だけ、それも短い間だけしか見れねぇって言うのにな。
おっ、鼻の上に桜が乗った。それに釣られて見上げりゃ月夜に舞う桜吹雪がすげぇな。……技の『花びらの舞』思い出した。あれはプラスして痛ぇからな。やっぱり花見はこっちだろ。
それにしてもマスター達は何処だ? それほど広くないと思ったら公園が割と広い。おまけでうろつく酔っ払い共がうざい。見えにくいったらありゃしねぇ。

「うおぉ~! サンダースが一匹でうろついてるぞぇ~!」

 う~わぁ~絡まれたー。この酔っ払いトレーナーか? 酒瓶片手によくやるぜ。
んでもってこいつが居たであろうグループの奴等が俺を取り囲む。はぁ……面倒だのぅ。

「なぁ、ゲットいく? ゲットしちゃう!?」
「やっちゃえば良いんじゃない!? どうせ野生のポケモンが紛れ込んだんだろ!」

 あのなぁ、町のど真ん中にある公園にどうやって野生のポケモンが居るって考えられるのか問いたい。小一時間くらい問いただすのも辞さないぜ。

「よ~っしゃ! やっちゃいなゴローニャ! サンダースなんて『岩落とし』で一発だ!」

 出て来た出て来た岩タイプ~。俺が普通のサンダースなら絶望に包まれ、半泣きでそのスピードを生かそうとするだろう。この囲まれた状態じゃ無駄だけどな。
でもな、俺は『普通』じゃないんだよ。

「やれやれ……来いよ。遊んでやる」
「ふん、電気しか能の無いお前に何が出来る」
「お前を倒す」
「……! 何でお前が笑ってんだ! 俺にお前の技は通じないんだぞ!」
「どうかな?」
「ぐぅぅぅ! その馬鹿にしたような笑い、出来なくしてやらぁ!」

 安い挑発に乗ってくれてどうも。主人が馬鹿ならポケモンは柄が悪い、か。ゴローニャ如きにびびる俺じゃないぜ?
主人の指示通りに岩落としを実行してきた。どうするかな。避けるのは簡単だが、ちょっと脅かしてやるか。

「そ~らよ!」

 降ってきた岩にカウンター! いや、技じゃないぜよ? ただ単に殴るだけ。しかし! 見事に岩は割れました。

「何ぃ!?」
「うわっ! 何だこいつ!? 岩砕き使えるのか!?」
「幾ら岩砕きでも技で出した岩は割れないだろ!」
「でも割れてんじゃん! どうなってんだ!?」

 ギャラリーうるせぇ。でも、これで大人しく引き下がって……。

「スゲー! こいつはマジで欲しい! ゴローニャ! マグニチュード!」

 くれませんでしたー。って、マグニチュード!? そんな技使って地面揺らしたら桜が一気に散っちまうじゃねぇか!

「これでお前もおしまいだなっ!」

 ゴローニャが飛び上がった。させる訳にゃ……いかねぇな!
着地地点に先回り! そしてぇ!

「うぉいしょお!」
「なっ、馬鹿な!?」

 ゴローニャキャ~ッチ! ちと重い! が、何とかならない事はねぇな。

「ゴローニャの重さって何キロだったっけ……」
「……300キロ」
「なんであのサンダース、ゴローニャを受け止めてんの?」
「……知らない」

 絶句。正しくその言葉が当てはまるな。無理もない、目の前で起こってることが脳で理解できてねぇだろうし。
さて、前脚で抱えてんのも結構辛いな。降ろすついでに道を作りますか。

「なぁ、お前ボーリングって知ってるか?」
「ぐっ、この、降ろせ!」
「答える気は無さそうだな。じゃ、勝手に教えてやるよ。こうすんだ!」

 抱えたゴローニャを降ろすと同時に前脚でどーん。おぉ、転がってく転がってく。

「ほぎゃああああああ!」
「うおっ、わぁぁぁぁ!」
「ほいっ、一丁上がりっと」

 そのまま主人にどーん。これでゴローニャは目回して戦闘不能。ついでにトレーナーのほうもだな。はい、終わり終わり。

「ギャーーー! 化け物だーーー!」
「……失礼な奴等だねぃ」

 ギャラリーもイトマル散らすように居なくなったし、桜も守れたし、まぁいいか。
暴れちまったが他の奴等は酔ってる所為であんまり気にしてないみたいだな。寧ろ歓声が聞こえる。すげー! とか、いいぞー! とか。
……また絡まれる前に帰るか? 一匹で勝手に帰るのは不味いか。後で探されても困るし。
そんじゃ、マスター探しを再開しますか。

 テケテケ歩いて公園の端の方まで来ちまったぞ。いねぇなぁ。何処行ったんだ?
そういえば、この公園で一番デカイ桜の木を見に行こうとか言ってた気がするな。え~っと、デカイ木は……下から見たんじゃわかんねぇな。木、登るか。
手ごろな木の枝に向かってジャンプ。乗ったら更に上へ。おっと、揺らさないようにしないと……。
ん~、一番でかいのは……公園の真ん中のかな? あれが一番目立つな。でも、あんな所に入れたのかね? ま、行ってみるか。
そのまま木から木へジャンプ。下は人やらポケモンやらで歩き難そうだからな。俺、忍者みたいだろ。
途中何度か落ちかけたが何とか到着。下を覗くと……おぉ! 居たよ! マスターにその他大勢! 先に場所取りでもしてたのかね?
……こっちも酔っ払ってんのか。予想はしてたが、なんだかなぁ。ちょっとガックシ。
マスターは他の奴と話しながら缶を傾け中の物を飲んでいる。何の缶か? 分かるだろ。
フロストとレンは無言でぼ~っとしてる。……眼が据わってるぜ。俺の第六感が絶対に降りてはいけないと叫んでいる。何か……あの二匹怖いぜ。
そして何故かプラスがへらへらしながらフロストに抱きついてる。逃げて~! お前、後がとんでもなく怖いだろうが!
……ん? 桜の根元で何か……あ、リーフか。グルグル回ってる。おいおい、大丈夫かよ?

 まぁまぁ皆して顔赤くしちまってよぉ。酒ってのは怖いねぇ。こりゃ、全員二日酔いコース確定だな。
太めの木の枝に移って一休み。ふむ、安定してるな。我ながらナイスバランス。
そういやリィの奴だけ居ないな。何処行ってんだ? あいつなら俺と同じで酒なんか飲んでないだろうし。てか飲むなって言っといたしな。
こうして桜の木に登って、近くで見るのも悪くない。少し散っちまって可哀想な感じの花もあるが、十分に五枚の花びらが残ってるやつもあるし。
にしても、枝振りが良い木ばっかりだったなぁ。お陰でここまで渡って来れたんだが、手入れが行き届いてる証拠だな。うむ、感心感心。
この花ももうすぐ見納め、か。そしたら今度は一年後まで見れねぇんだよな~。なんとも惜しいねぇ。
風が俺の頬を撫でていった。首周りの毛がそれと一緒にサラサラと揺れる。あらら、こんなに毛の中に花びら入ってたのか。ふわりと風に乗ってまた舞いだした。

「わっ!」
「うぬぉっ!? どわわわ!」

 なんじゃあ!? ビックリして落ちかけたじゃねぇか!

「ははっ、驚いた? ライトも木の上に居たんだ」
「お前……落ちたらどうすんだよ! リィ!」
「落ちたってライトなら平気だろ?」
「そりゃそうだがよ! ったく……」

 目の前がピンク一色から薄紫が加わった。リィの奴どうやって木に登ったんだ? サイコキネシス?

「せいかーい。 石ころ浮かせてそれに掴まって登ってみたんだ。下はお酒臭いし」
「人の心を覗くな。全く、ホイホイ力使いすぎるなよ?」
「はーい」

 隣の枝にチョコンと座る。こいつも器用だねぇ。まぁ、エーフィって細いし、俺より動き易そうだしな。

「眠くはないか?」
「平気だよ。……桜、綺麗だね」
「ああ」

 しばしまったりとした時間が過ぎる。横目にリィを見ると、上機嫌なのか嬉しそうだ。

「そういえば、通路の方でなんか騒ぎがあったみたいだけど、もしかしてライト?」
「……なんでそう思う?」
「ゴローニャを投げ飛ばしたポケモンが出たって言ってるの聞いたんだ。そんなの、ライトくらいしか僕は知らないし」
「ふぅ……ちとやり過ぎたか」
「駄目だよー? 暴れたりしたら桜散っちゃうじゃん」
「あいつがマグニチュードなんて使おうとしなけりゃ俺だって無茶しなかったさ。しょうがなかったんだ」
「へぇ、そうだったんだ。じゃあ、ライトは桜を守ったんだね。凄いじゃん」
「ははっ、恩返しでもされないかね?」

 下からの喧騒が嘘のように静かな空間だ。吹き渡る風の音、揺れる桜、二匹だけの花見みてぇだな。

「ねぇ、そっち行っていい?」

 いや、無理じゃね? 一本の枝に二匹はきついだろ、ってもう飛んでるし! やばい折れるって!
……あら、結構平気なのね。へぇ~自然の力の偉大さを垣間見たな。

「とと、うわわ!」
「あぶねぇ!」

 バランス崩すなよ! 落ちたら俺ならともかく、結構いてぇぞ!
咄嗟にリィを……抱え込んじまった。いや、前脚が手みたいに働いてくれるってんなら支えるだけでいいんだが、そうも行かないのが四足歩行タイプの困り所だよな。
そのままリィの向きを変えて座らせる。ふぅ~、焦った。

「ありがとライト」
「無茶すんなよな。枝折れたら下の奴等もあぶねぇんだから」
「ゴメンゴメン。でも……ライトの隣で、見たかったんだもん」

 リィがふわっともたれ掛かってきやがった。イーブイの頃なら腰の辺りだったが、今は顔の横にリィが見える。なんとも変な感じだのう。
月明かりに照らされながら寄り添う……か。何してんだろ俺。相手はリィだぞ? 顔熱くしてんなよ。
リィの顔もうっすら赤くなってきてるし……空気まで桜色かよ。やれやれ……。
ま、まぁ、一年に一度だしな! こういう日があっても良いだろ!

 こうして、俺とリィの若干甘い時間は過ぎていった。いやはや、どうもすいません。
さて、夜も更けてきたことだし、正常なポケモン二匹でどうやって大人数を家までは運ぶか、考えるとしますかな。


後書き!
どうでしたでしょうか。実はこれ、Doble park小説板に同じ物を載せているので、お目に触れた方も居たかもしれませんね。お目汚し、失礼しました。
かなりショートな話でしたが、久々にさくさく書けた物です。勢いって、やっぱり必要ですね。



コメントが頂けましたらありがたいです。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • いいですね〜。風情があって。
    ―― 2010-05-04 (火) 19:44:40
  • >>名無しさん
    見逃してた……すいません!

    風情は表現できてたでしょうか? それならば良かったです。コメント感謝です!
    ――双牙連刃 2010-05-08 (土) 00:35:19
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Last-modified: 2010-05-01 (土) 00:00:00
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