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生還

/生還

小説版におき逃げしてきた物。この度加筆修正してまとめてみました。
あなたは本当に年齢を満たしていますか? と言いたくなるような作品かも知れません。
この人ダメだ、とうっかり声帯を振動させてしまうかも知れません。
一番心配なのは幼稚な文章、少なすぎる語彙量、およそ小説とは思えない、むしろ作者の自己満足。

大丈夫、そういうのには慣れているという方はどうぞお進み下さい。




「ここは……どこだ……」

私はブラッキー。名前なんてものはない。無いと不便だが。
無いというよりは捨てた……だな。
たしか仕事で海を渡っていた最中、見事に沈没したんだったかな。船が。
目を開ければ、そこは冷たく暗い海の底……ではなく、材木丸出しの天井。

「あら、気が付いたのね。よかった」

誰だ……記憶に全くないエーフィだな……そもそも何故私は生きている……本来だったら冷たい暗い海の底からギラティナ様の下へと強制的に連れて行かれる筈。

「運が良いわ、あなた。海に浮いてたんだもの」

ああ、それで……。運良く知らないところに流れ着いたってことかい。

「何があったのよ。言いなさい」
「まて、それ以前に聞きたいことがある。ここはどこだ。あんたは誰だ」
「私の質問に答えなさい。あなたを助けたのは私。立場は私の方が上。何なら、今からまた海に浮かべてきても良いのよ?」

……むちゃくちゃな野郎だな……見た感じは牝か……目悪いからよくわからないけど。

「渡海中、船が沈んだ。これで良いか?」
「この事件のことかしら?八割方の乗員乗客は死んだらしいわよ」

彼女が新聞を見せてくれたが目が悪くて見えない。

「目が悪くて見えん」
「あら、眼鏡は? 作ってないとか言う訳じゃないでしょう?」
「海の底だろう……」
「ああ、そういえばそうね」

こいつ……普通こういう思い出にはふれないように喋るもんじゃないか?

「名前は? いつまでもあなたじゃダメでしょう。私は牝のエーフィ、ルティア。ここは私の家…と言うよりは仕事場かしらね」

成る程、なんか訳の分からんものが散乱している……何の仕事だ……
まあ牝のエーフィまで分かったのならまだ捨てたもんじゃないな、私の目。

「私は雄のブラッキー。名前は……無い」
「無いわけ無いでしょう? 言いなさい」
「寄ってくるな! 本当に無いんだ!」

一瞬、顔が思いっきり近づいてきた。多分顔が嘘をついているとでも言いたかったんだろう。
彼女の顔を近くで見ることも出来るワケだ。
あ、かわいい。

「ふ~ん。ま、いいわ。怪我が治り次第教えてもらおうかしら」

顔が全く嘘を付いていないのを見て、彼女は離れる。
そういやかなり傷まみれだったな……体中が痛い……

「なら、怪我が治るまでよろしく頼む」
「いっとくけど、最低限のことしかしないから。ついでにあなたの荷物、拾って
そこにおいてあるから。中身は見てないわよ。ポケモンとして」

おお無事だったか私の荷物。よくぞ戻ってきてくれた。
沈むと分かった時点で身体から離れないようにしてたからな。

「もう一つ、治ったらそれなりのお返しはしてもらうわ、ウフフフフ…………」

バタン、と戸を閉めてどこかに消えていった。
これは……無理難題押しつけられる前に何とかしなければな……




ここに来てしばらくたった…未だ完治というわけではないが、動けるほどまでは回復している。さすがに動けない間、包帯を換えてもらうのはかなり恥ずかしかった。
それに牡なわけだしね、うん。理性の崩壊も自慰もしないで来たんだよね。
彼女も顔色一つ変えずに色々してくれるものだから襲ったりしたら悪いし……
……む? よく考えたら牡として見られてないだけ? うーむ

ドカーン「ギャー」

……またやった。彼女は危ない化学系の仕事をしている。
漫画さながらの爆発など、週に2,3回。来て間もない頃は本当に爆発するんだ……と思ったりしたが、今ではああ、またか程度になった。
そんな仕事場に怪我人置くなと言いたい。よく今まで生きていたものだ。気絶中実験台にはしなかったそうだが……
家の方は何年も帰ってないから埃まみれでイトマルの繁殖地と化している筈よ、と言って案内もしてくれない。

「ちょっとブラッキー! さっきの爆発音聞こえなかった訳じゃないでしょう。さっさと救急箱ぐらい持ってきなさい!」
「へいへい」

動けるようになったので彼女の助手のようにこき使われている。悲しいな……

「何を作って?」
「ブラッキーには関係ない!」

怒るようなことかな。傷を消毒しながら考える。それにしてもこの仕事場汚いな。
おっと、名前のない私は単純に種族名で呼ばれている。変な名前つけられるよりはましだ。

「ありがと」
「うん」

他愛も素っ気もない会話。とても牡牝同じ屋根の下で暮らしているとは思えない(語弊)。って何を考えているんだ私は。アホか。

「それにしても長いことここに居るのねー」
「ルティアが決めたことだろうが」
「良いじゃない。こんな可愛い娘と一緒に働けるのよ?」
「自分で可愛いとか言うな。アホか」
「ブラッキーよりは頭良いもーん」
「はいはい」

これもいつの間にか日常茶飯事となってしまった……
ん? こんな前は大海後ろは大山というへんぴなところにある仕事場(以後、研究所)に誰か来たようだな。窓から見えた。

「誰か来たようだが……」
「誰?」
「目が悪くて分かりません」
「出迎えといて」

足の踏み場もないほどモノを置いとくなって……玄関まで行くにも一苦労だぞ全く……それにしても一回しかインターホン鳴らさないね。
散らかってること知ってんのかな?

「はい、どちらさまで…「ここはルティアさんの研究所ですよね?」
「そうですが…「何でブラッキーがここに居るんだああアアア!!」

なんだこいつはああアアア!! と叫びそうになったが何とかこらえきった。
えーと、グレイシア一匹にシャワーズ一匹にサンダース一匹にブースター一匹ねぇ……みごとにイーブイ系ばかり集まったもんだ。約一匹足りないようだけど……

「ルティアをどこにやったァ! 吐けえ!」「ぐ…ぐるじ……」

いきなり、グレイシアがその両の前足で首を絞めた。
絞め上げんなこのヤロー! 完治してたらとっくに返り討ちじゃあああァ!
私は強盗でも空き巣でもなあーいっ!


…………声を聞いて、やっとルティアが出てきたため一命は取り留めた。これで死んじゃあルティアに助けてもらった意味がないでしょ……

「こいつがあの船からの生還者ねえ…。なんで生還報告しないのよ」
「本人があの事故で死んだことになってる方が都合が良いって」
「そんなにやばい仕事してたんですか!?」

いきなり何を言い出すんだこいつ! 私の仕事は至って健全!
え? ならなぜ死んだ方が好都合かって? 下っ端で給料も少なかったし借金もあったからなあ……

「要するに良い逃げ口上ができたと」
「人の心を読むな!」
「さすがエスパータイプのルティアさん!」

いや、今のはカンだと思うぞシャワーズ君。

「それはそうと…自己紹介し「ルティアさんとはどこまでの関係なんですか!」

何を言い出すんだねサンダース君。ようやく頭がクールダウンしてきたところだって言うのに。
さっきまでは締め上げられていたおかげで酸素が足りなかったため、冷静になることが出来ずに取り乱しただけだ。

「馬鹿なこと言わないで。助けた恩を返してもらっているだけよ。とりあえず中に入りなさい」

また足の踏み場のない道を戻っていくのか……不便だな……

辛うじてそこまで散らかってない来客用の部屋までたどり着けた。

「まさかルティアにオトコができたなんて思いも寄らなかったわ」
「だからそんなんじゃないって」

ところでルティア、何故茶を淹れるのは私なのだ?

「さっさとしなさい。みんな待ってるのよ」
「ならば自分で淹れろ」

全く…まあ命救われたんだからこれ以上文句は言えないな。

「自己紹介まだだったわね。私はストーム。牝のグレイシアよ」
成る程、名前に恥じぬ馬鹿力で…。
「俺はリヒトです。牡のシャワーズ。珍しいでしょ」
珍しいも何もイーブイがこの世にこんなに繁殖していたなんてつい最近知った。
リヒトは珍しくないということを知らないんだろう。人気のある牝がイーブイ系統なら、自然と増えていくのだよ。
「僕はファライ。牝のサンダースでーす。よろしくね」
明るいヤツ…とてもついて行けそうにない…
「えっと…私はフレイムです…。一応牝のブースターです…」
初めて喋ったなこいつ。リヒトはハーレム状態だったわけね……。ん?一応ってなによ?深い意味でないことを願うぞ。
「もう一人牡のリーフィアのルルドが居るけど……遅刻症だから置き去りにしてきたわ」

あ、だいぶ怒ってるなストームさん。声の裏に怒気が含まれていた。

「で、私は牡のブラッキーで名前はありません。種族名で呼んで下さい」

まあこんなもんだろうな。この人たちは同じ研究なかまだそうだ。歳も同じくらいかね。
足りない部分はルティアが補足してくれた。
……なんできたのかと言えば研究合宿らしい……

研究成果の発表となった。真面目なときは真面目なんだな。
暇だから寝床の片づけでもしてくるか。

「あ、ブラッキー、あんたの部屋片づけときなさいよ。牡共はそこで寝るんだから。その隣が私たちの寝床だから。ついでにやっといて」

このアマアアアアアアアア!!!
でも、いままであれこれ文句を言って免除になった事は一度もない。たまに手伝ってはくれたのだが。
ち、しょうがない、やるか……



「手伝おう」
えーと確か……まだ顔と名前、否種族と名前が一致しない。
「リヒトですよ。リ・ヒ・ト」
そうそうシャワーズのリヒト。手伝ってくれるのはうれしいけど、邪魔しに来たんじゃないだろうね…

「いやー夜が楽しみですねー」
「おい」
「大丈夫ですよ。僕は健全なオトコノコですから」
そーゆー意味じゃない。ワザとやっているのは火を見るより明らか。一体何がしたいんだろう。

「そういえば、怪我で動けなかった間、溜まったオトコノコの欲望はどうしてたんです?」
「全身が痛くてそれどころではなかった」
「それは良かったですねー」
良いこと…だったんだろうか…?
それにしても発情期真っ盛りのようだな。
当たり前か。この年齢で発情しなかったらいつするんだい? な話になってくる。

黙々と二匹で片づけているとふと単純な疑問が頭をよぎる。
「牝どもは?」
「昔話に花を咲かせてます」

あーそうかそれで。この場では一番説得力のある理由だ。

「一応ルルドにも言っておいたんですけどね……こないので代わりに協力してもらいますよ」
「何を「牝の皆さんの部屋に細工をします」
「初日からか?」
ってなにを言ってるんだ私は……ヤル気満々かよ…自分の発言に自分でつっこみを入れたい。
どうやら自覚がないだけで私も発情期真っ盛りらしい。変な方向に傾く前に自分自身をなんとかせねばなるまい。
でも、この質問はこの質問でもっともだと思うが……

「それもそうですね。お楽しみはあとからゆっくりと全員そろってからにしますか」
しばらくしてからルルドが来た。ストームにボコられたのか、ぼろぼろだった。
何故か、皆名前を呼ぶときは呼び捨てで良いと言っている。少し前まで居たところでは考えられない。呼び捨てなんかにしたら……おお怖い。


  そのころの女性陣(視点はフレイム)

「まさかあんなのが海に浮いてるとはね~」
「驚きますよね」
「そりゃあ驚いたわよ。いつも静かな海に得体の知れない黒い物体が漂ってたんだもの」

話題がブラッキーさんに替わってしまいました。
確かに海に明らかに生息してないポケモンが居たら驚きますよね。

「結構いい牡じゃないの。あのブラッキー」
「どうしてもそっちに持って行きたいんですね。ストーム」
「だってそれぐらいしか楽しみが無いじゃない。ルティアがいらないなら私が取っちゃうかもよ?」
「欲しいならあげるわ……」

ルティアさんそう言って席を外してしまいました。

「まだ死んだ牡に未練があるのかしら……」
「そうかもね……」
「牡…ですか?」
ルティアさんに牡なんかいたのかと思うと言葉が口に出てしまいました。
「ああ、フレイムは知らなかったわね」
「フレイムが軍隊にいたときの話だよ」
「そんなときに何か…?」
もう何年も前になる。ただし、私の記憶には鮮明に残っています。あんな経験は、一度したら忘れることは出来ないほど強烈なので。
「ルティアの彼氏ね、親がそこそこ偉い軍人だったから入隊できる歳になったら、すぐに志願兵として入ったんだって。で、一回はいると何年も戻ってこられないでしょ?その彼氏は必ず生きて帰ってくるって言って行っちゃんたんだって。」
「つまり私と同期……」
私の場合は学校ごとに割り当てられた、非戦闘要員の招集に引っかかったから入ったのですけど。
「そう。志願と強制の違いはあるけどね。フレイムと同期生。ルティアはその言葉を信じて待っていたの……。乙女心丸出しでね。
 でも、ほんの数ヶ月後にある事件……いや戦闘の方が正しいかな?」
「フレイムも知ってるはずだよ。国境の拠点が突然どこかの武装組織の夜襲に遭って滞在中の部隊は全滅……」
忘れもしない。たった一晩でたくさんのポケモンが命を落とした……炎に焼かれて、四肢を刺されて、喉笛を食いちぎられて、地面に叩き付けられて、猛毒に苦しんで。
でも、全滅したのは戦闘員よ? 医官や糧秣班に生き残りがいるから……
「その部隊の所属だったんだって。その牡。ブラッキーだったそうだけど……」
「死体は見てないけど公式発表が全滅だし、降参した人も皆殺しにされたから……」
「……かわいそうですねルティアさん……」
「僕たちはそんなこと忘れちゃいなさいって言っているんだけど……」
「そうだったの……」

うーん、テンション下げちゃったなぁ私。なんかそっちの方もショック。

そのあとすぐにルティアさんが戻ってきていつも体洗っている川に案内してくれたから無言の時間は少なかったけど……

リヒトとルルドと見られるポケモンが覗いていたのでみんな全力で追っ払っていた…
私にはまだ川の水が冷たかったけどね。


(視点戻ります)
「……おい、なんだそのダメージは……」
だいたい予想はつく。アホとしか言いようがない。いや、アホを超えたアホかも知れない。
「ふっ、ご想像にお任せしよう」
「みんなきれいになってたなぁ~。ストームはよけいな筋肉が増えたみたいだけど」
「れいとうビームもまた一段階驚異になったんじゃないか?」
…聞いた私が馬鹿だった。とてもつきあい切れん……

その後は普通に夕食を摂って寝たが…隣に忍び込んでいった二匹が明日の朝どうなっているかが……

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁ…………」
……もう寝よう。何も聞かなかったことにして。罰は当たるまい。


「訓練とはいえ……どうしたらこんな傷になるのよ?」
医務室で仲間数名とともに包帯ぐるぐる巻きにされている。こういうとき医官って尊敬するよな…
それにしても、ここにラッキー以外の医官が居たんだな。それは失礼か。歳も同じくらい、進化前の種族も同じ。
あ、グラエナのヤツにナンパされてら。あーあ、あの馬鹿。後ろ見ろ後ろ。
「何をやっとるかああ!」 ガツン! と本当にはっきりとガツンと音を立てて、我らが隊長のカイリキーの拳が、グラエナの脳天に落ちる。この音を出すまでに何十年もかけた、と前に話してくれたことがあった。
遅かったか。アーメン。可哀想に。聞いているとこっちまで痛くなりそうな呻き声を上げ、頭を両の前足で押さえながら医務室中をのたうち回るグラエナ。おっと笑いが、我慢の限界に……


「むー………」
目が覚めた。さっきのは夢だったらしい。日はまだ低めか。
動けるほどには回復したがまだ右の前足は折れているし、所々傷もふさがっていない。
「包帯代えよ……」
さすがに代えないわけにはいかないだろう。放っておけば雑菌も増えて余計な病気になりかねない。

隣の部屋の前にフルボッコにされたらしい牡二匹が転がっていたが何も見なかったことにしよう……

まだ朝も早いから誰も起きていないようだ。

包帯は確かあの戸棚の上から二つ目のところだったな。あらよっと
 上手に左の前足だけで包帯を取り出す。
「また一人で巻かないといけないのか……」
ルティアは私が動けるようになると包帯を代えてくれなくなった。もう少し、いや、何も言うまい。
          ん?
あれは誰だ? 何をしている?
 キッチンのところに小型の動く何かを発見。四足歩行の私と同じくらいの大きさのポケモンと思われる。

気づかれないよう背後からそっと近づいて……今だ!
「誰だっ! 何をしている!」
「ふぇ?」
大真面目に叫んでみた私に、間の抜けた返事を返してくれたのはフレイムでした…目が悪いって罪だねー。
「わっ私、朝食の、その、ポフィンでも作ろうとっ、してて…その……私、料理上手ですし…」
「何でも良いけど焦げてるぞ!」
……うーむいるんだよな、料理上手いって自分で言ってるくせに、実際作るととても食料とは思えないモノを作るヤツ。
その手のヤツじゃなければいいけど。ポケモンがポフィン作るなんて聞いたこと無いぞ?別に作っちゃいけない訳じゃないけどさ。どこか変な感じ。
オーブンに新しい素をいれたらしい。暇になったようだ。

「包帯を巻き直すんですか?」「うん、まだ傷ふさがってないし足一本折れてるし。」
「お手伝い……しましょうか?」
うーん。確かに一人じゃ上手く巻けないけど下手に巻かれるよりはねえ…
でも、好意を踏みにじるのもアレだし手伝ってもらうかな。
「それならよろしくお願いします。」
「いいですよ。どうせ焼き上がるまで暇ですし。」

四足歩行のポケモンにとっては包帯を巻くでだけでもかなり難しい。前足二本を自由にするためには二足歩行をするわけだが……
二足歩行生物にとっての片足つま先立ちと同じようなモノである。
ましてや前足は腕程器用ではない。看護師系の仕事に四足歩行ポケモンが少ないのもこのためである。

フレイム……かなり慣れているのかものすごく上手い。きつすぎず緩すぎず。二足で立っている後ろ足も全然震えていない。
私にのしかかっている感じもしない。それにしても前にも同じようなことがあったような……気のせいかな?
「上手いな…」
「ありがとうございます。これでも医官でしたから」
「え?」
おっと、もう少しで包帯を落とすところだった。落としたらまた最初から巻き直しだよ。
「数年前に招集されたんです。そういう学校の出身でしたので。すぐ解散になりましたけど」
ちなみに医官≒看護兵である。軍隊配下の看護師だ。
「何でまたすぐ解散なんか?」
「国境の例の事件ですよ。そこの所属でした。……あ……」
何? そこの所属だったのか? 確かに非戦闘要員はわずかに生き残ったと聞いた。
「なんだ“あ”って…」
「誰にも言って無かったんですよ。今まで」

しばし沈黙。

しまったな…嫌なこと思い出させちゃっただろうな……。あんなこと思い出したくなるような事件では絶対にない。目の前でポケモンが炭素の塊になっていくのを見たのかも知れない。そのとき漂う独特な吐き気を催す臭気をかいだのかも知れない。生きながらにして全身を業火に焼かれたポケモンの絶叫や悲鳴が耳を離れていないかも知れない。自分なりに想像したら途中で投げ出したく、逃げ出したくなるような場面を実際にくぐり抜けてきたかも知れないと言うに。
こういうときはひたすら謝るに限る。過去の経験からすると。
「なんか…ごめん。」「気にしないで下さい。私はもうなんとも思っていませんし。」
でも悪い事した気がするなあ……
「何故かブラッキ-さんの前だと口が軽くなってしまいます」
「それは良いけどまた焦げますよ?」
「あああああああ!」
食べられる状態だと良いが。こればかりは天の神様のみ知る。





とりあえず食べられる代物はできていた。性格的に食べたくないものはなかった。
また一日が始まるんだな。


それにしても暇だ。雑用としての仕事もない。電気、炎、水、エスパーと瞬間冷凍、怪力、切断係がいればこんな仕事に雑用はいらない。
町に出るとしても今の体では二時間はかかる。そういえば裏山があるんだったなここには。行ってみるか。

抜け出したのには誰も気づいていないらしい。いやー、昔を思い出すね。仲間と一緒に宿舎を抜け出して飲み屋で雑談……
しかし、もうそんな仲間もいない。おっと何故か涙が。
「…………冥福を。あの世があるかどうかは知らないけど、楽しく暮らせよ…」
誰に言うわけでもなく、自然と言葉がこぼれた。この雰囲気がそうさせるんだろうな。自分が立っているのは道無き道としか言いようのない、石で舗装されている上に苔の生えた山道。右手に見えますはマイナスイオンの溢れる雄大な滝。崖になっていて、ぎりぎりまで歩いたところで真下を見下ろさないと滝壺は見えない。虹も架かっていて言うことなし。左側は秘境と呼んでも過言ではない鬱蒼とした森林。何千何万もの樹木がツタなどの寄生植物を物ともせずに互いに光を奪い合って天へ天へと何百年間ものび続けている様はもはや大自然の神秘。昼にはまだ遠い朝の日差しが木漏れ日となって細々と、でもしっかりちゃっかり生えている短い雑草に覆われた地面を照らしている。
ディアルガ様がたまには大自然に抱かれてみたいなと思われて出てきそうな感じだ。

「なんとも良いところだな、ここは……」
のどかな森。聞こえてくるのは鳥ポケモンの鳴き声のみ。いかん、何故こんなところで眠気を感じるのかは自分にも分からないが、とにかく眠くなってきた……
私はそばにあった他の木々たちよりも群を抜いて太い大きな歴史を感じる名前も知らない木に寄りかかった。もう、意識を保っておくことが出来ない。




「起きろお!」
聞き覚えのある馬鹿みたいに大きな声が聞こえて、飛び起きた。何があった。
「ここが前線ならとっくに死んどるぞ!」
「ここは前線ではありません、隊長」
「今から行くんじゃあ。出陣準備!」
これは…あの事件(?)のために実現しなかった志願兵部隊の出陣……?
今になって何でまた? 夢か? いや、現か?
「おい、速く準備した方が良いぜ、--。」
名前を呼ばれた……? もう私の名前を知っている人はいないはず…
「分かっている。」
誰も私の名前は知らないという先入観ともとれる考えを頭の隅に追いやり、返事をしてしまった…
軍服に着替え(まあ上着だけだが)、帽子ともヘルメットともとれるモノ(防御力は抜群)をかぶり、兵士手帳も持った。

おっと忘れちゃ行けないお守りが……

「またそれを手帳に挟むんだなー。そんなに大事か、そのエーフィ」
「お前も彼女作れば分かる」
私が挟んだのは故郷においてきた恋人のエーフィとのツーショット写真。画質は悪いものの、どちらも満面の笑みを浮かべ、仲の良さを強調するように互いの頬をべっとりくっつけて写っている。お守りの代わり。これを見ると、生きて帰るという約束を思い出す。それでもって生き延びてやるという気持ちが沸々、むしろぼこぼこ湧いてくる。
そうそう、私に声をかけたのはグラエナ。名前は忘れたが、私の戦友。ムードメーカー的存在だ。
「そろそろ点呼だぜ」「おうよ、行くぞ、--!」
点呼を伝えに来たウインディも戦友。懐かしいなあ。

隊長の催促の怒鳴り声が聞こえたので、頻繁に怒られていた私達は背筋に悪寒を覚え、雑談もそこそこに隊列に加わった。




どこの国もやっているような、テンポよく、綺麗に纏まって行軍していたときだった。
前を進んでいた大隊の前進が止まった。それをうけて、後ろについてきた私達の隊の前進が止まる。隊長の怒鳴り声が聞こえた。
「何があったあ!?」
隊長の護衛をしていたら鼓膜が破れていただろう。隊長は止まった原因が前を行く隊だと分かると、すぐに斥候を行かせた。素早さに定評があり、相当の実力を持っていて、期待の新人だとささやかれていたサンダースだった。
私の隣を、突風となって駆けていった。


雑談も出来ないようなわずかな時間が経った。前の大隊から、一筋の風が吹き込んできた。それだけではただ斥候が帰ってきただけだと思ったに違いない。しかし、風が吹いた跡に、異常を表す赤い液体が点々と連なっていた。皆の表情が変わった。
風は、隊長の下まで吹き戻ってやっと止んだ。私のいる場所からはサンダースがどんな状態で、何を報告しているかは全く分からなかったが、隊長の周りに詰めていた兵士の反応から、異常はとんでもない物だと悟る。
「前方の味方大隊が敵の奇襲を受けた! 救援に向かう!」


ちなみにwiki初投稿です。
修正すべき点が多すぎてなかなか進まない……
水面下にて地味に活動中
御教授してやんよ、な心の広い方はコメントお願いします。





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Last-modified: 2010-09-12 (日) 00:00:00
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