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熱せず冷せず

/熱せず冷せず

執筆者文書き初心者
獣姦描写があります。ご注意下さい。


本編 


 暑い、暑い、暑い、暑過ぎる。
 部屋に差し込む日光が鬱陶しい。この蒸し暑さに嫌気がする。汗ばんで身体がべとべとしていて気持ちが悪い。
 こんな暑い中では何もする気にはなれない。この暑さでここ最近、身体がずっと怠い。四肢を投げ出して無気力であることを示す。夏は始まったばかりだと言うのに早くも夏バテなのかもしれない。
 山積みになった長期休業中の課題はほんの少し触った程度で、今は放置プレイをしている。休み終盤になって慌てて終わらせるという光景が今にも目に浮かぶ。
 そんな光景が浮かんだとしても当然やる気にはなれない。この事態から抜け出せない。どうしても停滞してしまうのだ。
 俺がこうなってしまった原因は全部コイツの所為だ。コイツがこの部屋にいるから糞暑いんだ。
「おい、だらけてないでもっと熱くなろうぜ!」
 ただでさえ気怠いのに、当の本人はそんな暑苦しい台詞を言い出す。お陰で俺の体感温度が二、三度上昇した。
「誰の所為でこうなってると思ってるんだ……?」
「そりゃあ、お前の体調管理が悪いからだろ」
「違うだろ! バクフーン、お前の所為だ!」
 バクフーンに向かって思わずびしっと指を指した。
 この暑さの元凶は俺のポケモン、バクフーンなのだ。俺のバクフーンは牝なのにもかかわらず男勝りな気性の持ち主。コイツが形振構わず身体から熱を放出するのでこの部屋が普通の部屋に比べて熱くなっているのだ。
「おー、叫ぶ元気があるなら大丈夫そうだな。近所迷惑だけど」
 しまった。ついつい加減をしないで言ってしまった。部屋の窓が全開だから、俺の声は外へと筒抜けだ。そう思うと今度は恥かしさで顔が熱くなる。
 あー、もう。コイツに構っているとどんどん暑くなってくる。こうなったら頭から水でも被って冷やさないと。
 俺はそう決めて、自分の脇に置いておいたペットボトルを手にとり、ぐびぐびと勢い良く中身を飲み干す。炭酸はとうに抜けきり、生温いコーラは美味しくも無く、ひたすら不味いとしか言えない。
 空になったペットボトルはゴミ箱に目掛けて投げ捨てる。そして俺はすくっと立ち上がってはタンスからバスタオルを引っ張り出してそれを肩に掛けた。その後にバクフーンに一言だけ、
「水風呂行ってくる」
 そう言って、俺は部屋を後にしようとしたのだが、思い掛けずに立ち止まった。
 ……待てよ。このまま単純に水風呂に行くのではどうも虫の居所が悪い。ここはバクフーンに一矢報いてやりたいところだ。
 そんな悪巧みを抱き始めた俺は、振り返ってバクフーンに、
「序でだし、久々に俺が毛繕いしてやるよ」
「え、本当? 嬉しいなあ!」
 そう言って嬉しがるバクフーン。終いには上機嫌そうに、ふんふんふーんと鼻歌まで歌う。
 期待通りにまんまと引っ掛かってくれた。これからどうなるかも知らずに。
 ただでやると思ったら大間違いだ。俺はお前に散々苦労させられてるしな。

 ざあー、ざああー。
 シャワーから水が頻りに噴出する。シャワーを自分に向けて身体に水を当てればさぞかし涼しいだろう。でも今は我慢だ。
 ティーシャツを着たまま、ハーフパンツも穿いたままで風呂場に俺はいた。無論、これからバクフーンを懲らしめる為だ。
「なあ、そんな冷たいのをオレにかけるのか?」
 勿論さ!
 これはお湯なんかでは無い。正真正銘の冷水である。水が嫌いなバクフーンにとっては掛けられるだけで悲鳴をあげてしまうだろう。
 そんなバクフーンの悶える姿を想像すると、思わずにやりと笑みが綻びる。先とは反対の状況となるのだ。
 さあ、さっさと始めようか。
「あのさ、せめてお湯にしてくれよ、頼むから」
 バクフーンは決死に懇願してくるが、俺は当たり前に無視をした。
 シャワーを持つ俺にぶるぶると身体を震わせて怯えるバクフーン。普段なら全てに於いて強気に振る舞うバクフーンだが、流石に水に対しては弱気であった。
「さ、始めようか」
 俺は、にやりと微かに笑った。余りに晴々しくて笑わざるを得なかった。これほど気分が良いのは久し振りだろう。少なくとも休みに入ってからは無かった。
 遂に俺は握り締めているシャワーの噴出口をバクフーンに向けた。バクフーンの望みも空しく、結局は水を浴びる羽目となった。
「ちょっ、やめろって、ぁあっ、冷たっ、くぅっ、やあっ、うぐっ」
 苦手な水に堪らず喘いでしまうバクフーン。ただの冷水にここまで敏感だと見ているこちらとしてはとても面白い。
 ざあーざああー、とシャワーからの水は止まらない。ひたすらバクフーンへと降り注ぐ。
 次第にバクフーンの体毛はびたびたに濡れて、毛先が垂れ下がる。その先からは水が滴る。普段と比べるとみすぼらしく、大層不格好な姿である。だけども濡れた体毛が背筋から描く線は綺麗である。
「くっ……ふ、あははっ、はははっ」
 俺は我慢出来ずに笑ってしまった。まさかバクフーンがこんなにも上手く騙されてくれるとは。
「っ、笑うなあっ!」
 バクフーンは背中から炎は出していないものの、顔は火でもついたかの様に真っ赤である。
 だがしかし、これでバクフーンが食い下がると思いきや、それは大きな間違いであった。
「そんな事をするんだったら、オレだって、ちゃんと考えはあるよ」
「おー、だったらかかってこいよ。またシャワーの餌食に――って」
 ゴトンっ、と鈍い音を立ててシャワーは床に衝突した。気が付かない内に、俺の手からシャワーがするりと離れていた。その代わりと言っては何やら冷たくて柔らかな感触が。
「って、何してんだよ!」
「お前も濡れなきゃ不公平だろ」
 俺に向かって無邪気に微笑むバクフーン。
 お陰で間接的に濡らされてしまった。このしっとりと纏りつく服が鬱陶しい。その上、暑苦しい有様。これでは熱いのか冷たいのかどっちつかずだ。
 結局はどうしたとしてもバクフーンと一緒にいれば、『あつい』という言葉からは離れられないのであった。
「ちょっと、離れろって!」
「いーやーだ」
 俺と大して歳は変わらないと言うのに、子供みたいに駄々を捏ねるバクフーン。俺をがっちり掴んでは放そうとはしない。
 バクフーンの身体はふかふかにもふもふなのだが、今は濡れているが故に気持ちが悪いとしか言い様に無い。おまけにこんなにも密着していれば理性が次第削がれてしまうだろう。だから俺はそう陥りまいとバクフーンに、
「これじゃあ、毛繕いが出来ないだろ、離れろよ」と言うのだが、バクフーンは依然として俺にべったりと抱き付いたまま離れてくれない。俺達は熱々なバカップルでも無いのに。
「別にいいもん。毛繕いなんて元々する気は無かったみたいだしなあ」
 じろりと疑いの眼差しで俺を見つめてくる。鋭い深紅の瞳に俺は目を逸らざるを得なかった。
 俺のその態度にバクフーンは呆れた様子で、ああやっぱりなと呟く。
 バクフーンに俺の魂胆を見抜かれてしまった。もはや言い返すどころか何も出来ない。
 俺が黙っているのを良い事にバクフーンはにやりと不敵に笑いながら余計な言葉を口走る。
「そもそも風呂場って服は脱ぐもんだから、オレが手取り足取り、脱がせてあげようか?」
 さあどうするの、とでも言いたそうにバクフーンの目が訴えてくる。
 何を言っているんだコイツは。いくらなんでも冗談じゃない!
 俺はお前をずぶ濡れにさせる為にここに来たのであって、風呂に入る気なんか微塵も無い。
「いや、いい!」
 俺は必死を引き剥がそうとじたばた暴れるのだが、一向に離れない。それでもめげずにまたやるのだが、結局ぴたりとくっついたまま。
 バクフーンは、はぁと物憂げな溜め息を一つ吐く。その後、俺に言う。
「最近さ、オレに冷たくない? 折角の夏なんだからもっと熱々になろうぜ。ほら」
 びりっ。びりびりっ。
 嫌な音がこの風呂場に響き渡った。そうして肌が空気にへと晒される。
 案の定、だった。
 俺のティーシャツはバクフーンによって引き裂かれて散り散りとなってしまった。上半身裸にさせられてしまったのだ、俺は。
「おー、やっぱり逞しい体付きだな」
 とんとん、とバクフーンは俺の胸板を軽く叩いてくる。その後にじろじろと俺の身体を見回してくる。
「心にも無い事言うなよ、全く」
 ポケモンと人間じゃ明らかに美的感覚が違うに決まっている。仮にとても格好良い人間がいたとしてポケモンがその人間に心惹かれるなんて事は殆ど無いに等しい。
 しかし、それは通例なだけであって例外なんて幾らでも存在する。例えば、目の前にいるコイツとか。
「いやオレは心の底からそう思ってるよ。だってオレはお前が大好きだから、さ」
 さらりと恥ずかしい告白をしてくるバクフーン。けれども当の本人にとっては、頬を紅く染めあげるくらい勇気が必要だったようだ。
 バクフーンの言葉を聞いたらなんか俺まで熱くなってきた気がする。一応、ティーシャツを駄目にされて上半身裸になっているのにも関わらず。ちっとも涼しいとも感じられない。
 これもきっとバクフーンの所為だ。バクフーンが俺を熱くさせているんだ。
「よくもまあ、そんな言葉を躊躇無く言えるよ」
 俺じゃあ、口が裂けても言えないな、きっと。バクフーンは子供じみた所があるから平気で言えるんだ。
「へへっ、オレは情熱的だからな。それが炎タイプってことよ」
「なんかそう聞くと墓場まで付いてきそうだな」
「ま、よくあるこった。気にすんな!」
「いや、ねえよ!」
 バクフーンとやり取りしてると益々熱くなってくる。嘘でもいいからせめて寒くなる事を言って欲しい。そうじゃないと熱さで俺の身体が持たない。
 もう既に身体からは汗が滴り始めてきて不快感が増してきている。シャワーで洗い流せたらいいのだが、こんな状況ではまず無理であろう。
 それ以前に早くコイツを止めないと俺の貞操が危ない。このまま雰囲気に身を任せると俺が持たない、熱中症でぶっ倒れてしまう。理由を幾らでもこじつけて早急にバクフーンから離れなくては。
「俺さあ、ちょっと――」
 まだ続く筈であったその言葉は途中で切られてしまった。更には物を言うのもままならなくなってしまったのだ。
 その代わりと言っては俺の舌があくせくと働き始める。だがしかし、それは働かされているのであって、俺の意思ではない。
 労働はしたくない。ならば暴動を起こして楯突けば良い。そうすれば俺は解放されるかもしれない。でも現実はそんなに甘くはなく、消し炭にされてしまうのがオチだ。現に、今の俺の舌は火傷しそうなくらい熱せられている。バクフーンが加減をしなければ俺は火傷で苦しんでいるだろう。
 次第に暑くなってくる風呂場。換気扇は回しているものの凄く蒸している。
 水分をまめに取らないと熱中症になってしまう。だが、喉の渇きを潤せるのは唾液のみ。それもわざわざバクフーンから俺に供給してくれている。有難いのかそうでないのかは今一つ分からないが。
 汗一つかかないバクフーンが恨めしかった。そうしてあたかも余裕を見せるかに、俺へウィンクする。その態度が益々俺を苛立たせる。
 そんな事するくらいだったらもう少し火力を下げろよ。こっちは一杯一杯なんだから。さっきから頭がふらふらする。
 暑さで段々と身体の反応、思考回路が鈍くなっている。もう抵抗する気にもならない。成り行きに全てを委ねるのだ、俺は。
「っぷは、そろそろいいかな」
 俺はバクフーンが口を離した事にも気付かなかった。否、気付けなかった。
 俺の視界はまるで陽炎が立つかの様に歪んでいる。でもそれなのにバクフーンの姿はきっちりと捉えられるのだ。その事を、今の俺には不思議だとか、疑問にも感じなかった。
 バクフーンが俺の下腹部へと手を伸ばしてくる。俺は振り払う気にもなれずに、黙って見逃す。バクフーンが慣れない手付きで必死にハーフパンツを下ろそうとする姿を呆然と眺めているだけ。
 最終的に、面倒になったのか下着ごとまるまる乱暴に引っ張る。そうして、バクフーンによって、ハーフパンツと下着はぽいと脱ぎ捨てられた。
「ここ、噴火しそうになってるぜ」
 バクフーンは、お目当ての物を見つけて上機嫌。にやりと俺に意地の悪い笑みを投げ掛けてくる。
 そして、べたべたと俺の肉棒に触ってくる。すると身体が捩れそうな感覚が俺に走った。俺の身体が率直な反応をしていた。
「っうあ」
 情けない声が風呂場に響く。俺の敏感な部分を触られて、声を上げずにはいられなかった。
 バクフーンの温かな手で握られ、肉棒は溜め込んでいた欲求を吐き出していく。透明な分泌液がバクフーンの手を汚していく。
「ほうほう、このぬるぬるした奴は何かな」
 バクフーンは面白がって俺の肉棒を上下に動かし始める。その姿は玩具に戯れる子供であった。にんまりと嫌らしく笑いながら。
 バクフーンの手の動きは止まらない。俺の先走り液でくちゅくちゅと音を立てながらも、俺の肉棒を弄び続ける。
「ふんふん、こんなに出てくるって事は相当我慢してたんだな。無理しなくてもいいんだけどなあ。オレがきっちり処理してあげるし」
 なあ、相棒。そう耳元で囁かれる。
 これではどちらが飼い主なのか分からない。もしかしたら俺はバクフーンに飼われてしまっているのかもしれない。
 ふんふーん、と嬉しそうに鼻歌を歌いながらバクフーンは俺に身体を擦り付けてくる。勿論、俺の肉棒は掴んで放さないままだ。
 自由を奪われた俺の肉棒の行く末は、バクフーンだけしか知らない。これをどう扱うのかはバクフーンによるのだから。
 そうしてバクフーンは俺に、
「ここからが本番だぜ」
 と言われた。その途端に、俺は下腹部に違和感を覚え始めていた。時間が経つ毎に違和感どころではなくなっていってそして――。
 熱い、熱すぎる。
 俺の肉棒はバクフーンの肉壁によって包み込まれていた。この肉壁によって俺の肉棒は溶けてしまいそうになる。
 どろどろに溶けて、蒸発してなくなれば、こんな熱い思いをしなくて済むのだが、そんな望み通りにはいかないのが現実だ。
「いくぞ……っう」
 バクフーンが腰を動かす事により、肉棒と肉壁が擦れあう。そうしてこの摩擦が新たな熱を発生し、更には性欲を満たす為の快感を生み出していくのだ。
 どうにかなりそうだった。
 あつさと快楽、この二つが俺の中でせめぎあう。雌雄を決する事など無くいつまでも争い続ける。そういう意味では均衡しているのかもしれない。
 身体が壊れそうになる。
 でもそういう時に限って、身体は無意識に反応するのだ。きっちりとバクフーンの腰使いに合わせて身体が勝手に動いていく。
「っ、動くなら動くって言えよ……っあ」
 別に好きで動かしてる訳じゃない。
 でもこのまま流れに身を任せるのもいいかもしれない。行き着く先は見えないけれども、この方が楽だし気持ち良いし、バクフーンだって嬉しそうだし。
 ま、良いんじゃないんですか、相棒なんだから。
 換気扇をしっかり回している。でも一向に空気が新鮮にならない。風呂場は如何わしい臭いで充満していた。
 体臭なのか、単に汗臭いだけなのか。それらだけとは言えないくらい様々な臭いが混じっている。俺らから出される分泌液もまた強烈な芳香だからだ。
 俺達の全てを凝縮したこの臭いを自分より鼻が優れたバクフーンが嗅いでしまったら、どうなるのか。答えは、言うまでもない。
「はあっ、はあっ、はあ」
 息遣いからも判断出来るけど、身体が密着している事もあってバクフーンが動悸していると直ぐに気がついた。どくどくと心臓の鼓動が俺にまで刻まれてくる。
 バクフーンの口元からは涎が、恥じらいもなく滴る。美味しそうな物でも眺めて、反射で垂らすようなそんな涎。
「――っ。――――っ!」
 仕舞いにはバクフーンが無我夢中で、あたかもうわ言みたいに俺の名前を呼び出す。そうすると、バクフーンから俺に伝わる熱が更に上昇する。このまま行けば火傷どころではない、俺を燃やしてしまいそうな勢い。
 バクフーンの紅い瞳がいつもより充血していた。充血しているのに加え、目付きが普段よりきつく鋭利な物になっている。
「逃がさない。お前はオレが犯るんだ」
 そう言うと俺を掴んでいる手の力が強くなる。ぐぐっと割れ物ならば直ぐに壊れてしまいそうなくらいに俺は力一杯抱き締められる。
 俺はまるで捕らえられた獲物だ。
 バクフーンがこうなってしまうと、もう俺ですら手に負えない。バクフーンの欲求を満たすまでは“猛火”が収まらない。
 主導権が再びバクフーンに戻る。うんとあつい熱を帯びている肉壁で俺の肉棒を何度も何度も溶かしにかかってくる。おまけにそれだけで済まされない、突如顔を近づけてきたと思ったら口を押し付けて俺の口内を舌で掻き回す。俺は全身をバクフーンに弄ばれて、この俺自体がバクフーンの物となる。
 でも見方を変えてしまえば、バクフーンも俺の物なのだ。
 あついあつい口付け。それに満足したら今度は傷の付けあいっこ。お互い一つずつ、仲良く刻んでいく。それが終わると後はお互いが果てるまで幾度となく上下に跳び跳ねるだけ。
 バクフーンの奥まで届いては引き抜かれ、そうしてまた肉棒が奥まで突いていく。そんな単調な作業でも生み出す物は馬鹿にならない。
 汗をいくら流しても俺の身体は冷える事は無い。バクフーンが俺を温めてしまうから。だらだらと全身を汗まみれにしながら営みをこなしていく。
 でも、熱によって奪われる体力は膨大だった。手足の先から胴体まで、少しずつ着実に重たく感じてくる。身体が悲鳴を訴えている。もう限界だと。
「バクフーンっ、俺っ」
「ぜぇっはあっ、ぁあっ」
 そうして最後にバクフーンを一突き。俺の肉棒は絶頂期を迎えた。肉棒から全身に向かって快感が駆け巡る。バクフーンもほぼ同時に、俺と同じ様な状況に陥った。
「うああっ!」
「くああっ!」
 びゅくびゅくと、俺の肉棒から凄まじい勢いで白濁色の液体が飛び出す。それはバクフーンの中にへと侵入していき、やがてたっぷり満たしていく。
 まだ肉棒は納まったままとなのに早くも白濁色の液体が漏れ始める。それはどろどろとゆったり俺達の身体を汚していく。汗によるべたつき具合が酷いら、今更ながら不快感なんて感じようにもなかった。
「ぜえっ……はあ」
 絶大な快感を迎えた後に待ち受けていたのは、肉体の酷い疲労感。端的に苦しいだとかそんな程度は語れない。
 ごめん、バクフーン。少し休ませてくれ。
 そうして俺は重たい瞼を閉じて、意識は奈落の底へと墜ちていく。
 俺の中の灯火は消える。
 バクフーンの呼び掛けが聞こえたとしても、応じる体力は勿論の事、そんな気力すら無かった。


 俺はどうなったんだ。もしかして死んだのか? それはないよな、流石に。
 ゆったりと瞼を開け、温かな光を感じる。やがて目に飛び込んできたのは――――。
「っあ、やっと起きてくれた……」
 バクフーンの姿だった。でもいつもの暑苦しい面影はそこには無く、滅多に見せない萎縮した彼女だった。彼女の目元には涙が溜まっており、目の下辺りの体毛が湿っているのも窺えた。
 彼女の手が俺に触れようと伸びてくるのだが、結局は引っ込めてしまった。彼女はまだ俺に対して自責の念がある所為なのか。
「オレ、やり過ぎて、もう、あれから全然目を覚まさなくて、だから、本当に死んじゃったのかと――――」
 我慢出来ずにぽろぽろと涙を流していく彼女。その涙は俺にへと落ちて、皮膚を濡らしていく。
 冷たかった。冷たくて冷たくて仕方がなかった。
 あんなにあつさより冷たさを望んでいたのに、いざそれを体感すると不快な気分だった。
 だから俺は普段のあつさを求めて、彼女を抱き寄せた。でもいつもの彼女の温かさは無かった。
「全く大袈裟だな、バクフーンは」
「だって、だって……」
 対する彼女も俺にすがりついて、頬を擦り付ける。俺が生きているという温もりを確かめるように。
 こんなにも彼女が弱々しくなるなんて思っても見なかった。どうやら大分、心配を掛けてしまったようだ。
 俺は冷たくなってしまった彼女の背中を擦る。よしよし、と優しく彼女を慰める。それでも、こうかはいまひとつのようだ。
 蝋燭の灯が消えてしまったなら、誰かが蝋燭を点けなければならない。彼女の元気を取り戻すには、誰かが彼女を励まさなければならない。その役目を担うのは紛れもなく俺だ。俺は彼女の相棒という一番近い存在だから。
 だから俺は胸の奥に隠しておいた起爆剤を、とっておきのあつい台詞を言う。
 俺、バクフーンの事が――――。


 俺達のあつい夏はまだ始まったばかり。


後書き
1レス大会で読んだ方も、今回初めて読んだ方も、作品を読んで頂き有難うございました。
1レス大会終了から1ヶ月以上も経ってしまいましたが、無事に官能シーンを加えて投下ができました。
夏でも炎ポケモンを可愛いがって下さいw


8月18日追加。
バクフーンの性別をはっきりする為に冒頭部分に描写を追加しました。

作品タイトル 熱せず冷せず
原稿用紙(20×20) 25.55 枚
総文字数 8325 文字
行数 198 行
台詞:地の文 1043文字:7282文字


番外 孕フーン 

マニアックな描写(妊婦)があります。苦手な方はご注意下さい

「なあなあ見てよ、このお腹」
 そう言ってクリーム色の柔らかなお腹を優しく擦る彼女の姿があった。彼女と言っても人間ではなくポケモンだ。戦闘態勢に入れば紺色の背中からは炎が燃え盛り、瞳の色は火と同じ赤色をしている彼女。そんな彼女の種族はバクフーンであった。
 そんな彼女が俺にお腹を見せ付けている。贅肉がついたお腹を見せ付けられてもあまり何も感じないのが現実である。というか俺はそこまで太った仔が好き等という嗜好は持ち合わせてない。
 だから俺は自慢気に見せてきた彼女に冷めながら言ってしまう。
「で、そのお腹がどうかしたのか?」
 その一言で彼女が凍りついたかのごとく固まった。彼女は口を半開きにしながら呆然と立ち尽くしている。
 俺は何か余計な一言でも喋ってしまったのだろうか。だが、そう言った覚えなんてさらさらない。ましてや、また太ったのか、とか彼女を怒らせるような事は言ってないので大丈夫な筈なのだが。
 彼女が胡座で座っている俺に近付いてきてはもう一度言う。
「……オレのお腹、変わったと思わないの?」
 彼女にそう言われて、俺は改めて彼女のお腹をじっと眺めてみた。別にお腹を見てもしょうがないだろと思ってしまうのだが、なんか妙に太ったような感じはする。しかし、これがただ単に太ったとは言い切れなさそうだ。何故なら下っ腹の辺りがぽっこりと出ているのだ。それもメタボと言いたくなるくらいに。
 とうとう彼女の食生活が祟ってか成人病になってしまったのか。そして彼女が自分は太ったと実感出来ているだけまだ救いがあるな、と俺はそう思った。だが、そんなのんきに言ってる場合ではなくて、俺は彼女の身を心配して言う。
「……ポケモンセンター行こうか」
 しかし彼女は何故だか知らないが頬を緩ませた。そんな反応をするものだから、俺は彼女の態度に疑問を抱いてしまう。メタボかもしれないというのにどうして喜ぶのかと。
 そして俺が困惑している最中に彼女がえらく上機嫌に言ってくる。
「ポケモンセンターで検査しなくてもちゃんとオレとお前の子だよ」
「……え?」
 彼女の言葉を聞いた途端に俺の声が裏返った。いや寧ろそうせざるを得なかった。
 これは絶対何かの冗談であろうと思った俺は、動揺を隠しきれない中で彼女に確認してみる。
「え、えっと、きっと嘘だよな?」
 しかし俺が訊ねても彼女の表情は相変わらずであった。彼女に尻尾があったらきっと今頃はぶんぶんと振っているであろう。そのくらいに今の彼女は満面の笑みを浮かべている。
「えへへ、照れちゃってやだなあ。嘘じゃなくて本当だよ」
 本当、その言葉が偽りであったらどんなに良かった事か。
 俺は念のために急いで今日の日付を確認してみるものの、エイプリルフールではないと分かるだけだった。
 次に俺は彼女の様子を今一度窺ってみた。本当に彼女が真実を語っているか調べる為にだ。俺が怪訝そうに眺めている中で、彼女は第九っぽい曲を鼻唄で歌いながら喜びを露としていた。日頃から彼女が嘘を吐く癖が無いというのに、今日に限って嘘を吐いてる可能性は皆無と言っても過言ではなかった。
 まさか人間とポケモンが交わって子供を授かるなんて思いもしなかった。所詮はおとぎ話に過ぎないと俺は考えていたからだ。しかし彼女のお腹が事実だと物語っている。
 つまりは彼女の言う通りそうなのだ。彼女のお腹には紛れもなく俺の子供を宿しているのだ。
 嬉しくない訳が無かった。それどころか叫びたくなるくらいだ。しかし俺の中にある複雑な気持ちがそうさせてはくれなかった。
「……なあ、本当に俺でいいのか?」
 本音がぽろりと溢れてしまった。そう、俺は自分に対して自信が無かったのだ。
 彼女はポケモンだし、自分は人間。生活様式が違うからいつでも傍に居てやれないし、満足に彼女の相手さえもしてやれない。そんな俺が彼女と本当の意味でくっついていいのかと。
 だが彼女は俺の不安なんてちっぽけだと言わんばかりに言ってくる。
「オレはお前といつまでも一緒に居たい。それこそ、この命が燃え尽きるまで」
 彼女の紅い瞳が俺の姿を捉える。俺はその瞳から目を背ける事は出来なかった。
 彼女の真っ直ぐな言葉を聞いて、俺はあんなに心配になっていた自分を笑いたくなった。本来ならば彼女ではなくて、男である俺が言うべき言葉なのに。
 大事なのは気持ちなんだと彼女に思い知らされてしまった。それと同時に先程まであった不安なんて一気に吹き飛んでしまった。
 俺が心の底から笑うと彼女も微笑む。そして俺は自分の心に従って立ち上がっては彼女の前に立つ。次に自分の手を彼女の腰に添える。そして自分の顔をゆっくりと近付けては、感謝の気持ちと、愛の誓いを込めて彼女へ口づけをした。
 最初は口と口とを重ねるだけであった。だが段々と俺と彼女は共に歯止めが効かなくなっていく。気づけばお互いが求めあっていた。ねっとりと舌を絡ませて唾液を貪りあっていく。俺の唾液と彼女の唾液が溶け合って、どちらのものか分からなくなっていく。
 彼女の赤い眼はとろんっとしていて夢でも見ているかのようであった。恐らく俺も彼女みたいになっているであろう。この行為が心地好くて堪らなかった。
 ふたりが満足する程に舌を絡ませて口を離すと、すっかり吐息には熱が込もっていた。何も吐息だけに熱を帯びるのではない。身体にさえも熱が発生していた。いつの間にか俺の背中から汗が滲み出ているのが何よりも証拠であった。
「なあ、しようよ」
 この簡単には冷めない熱に動かされたのか、彼女が言ってくる。身体を委ね合おう、と。普段の俺なら躊躇わずに彼女の誘いに飛び付くかもしれない。しかし今回はそういう訳にはいかなかった。今の彼女には子供を宿しているからだ。故に俺は、
「でもバクフーンの身体に負担が……」
 彼女を抱いていた手を離し、そして一歩だけ身を退こうとした。でも彼女が遠ざかる俺の手を握ってきてはこう言う。
「あまり動かなかったら大丈夫だよ。それにこの子に見せておきたいんだ。おとうさんとおかあさんは種族が違ってもこんなに仲良しなんだよってさ」
 そうして彼女は優しくお腹を擦った。それもいつもの彼女らしい無邪気な子供の笑みではなくて、母親のように和やかな笑みを浮かべながら。その姿を見るなり、俺の瞳には幾分か彼女がおとなになったように映った。
 彼女の気持ちを裏切らない為に応えたい為に、分かった、と俺は端的に返事をした。すると彼女は声にも出さず、にこりと微笑む。
 俺が手伝いながら彼女をゆっくりと腰を降ろさせては、仰向けにさせていく。俺は着ている衣服を全て脱ぎ、彼女のお腹を圧迫させないように気を付けながら覆い被さっていく。
「いつもだったらオレがそこなんだけどなあ」
 彼女は残念そうにしながらも半分笑いながら言ってくる。それに思わず俺も苦笑してしまう。
 そう、普段ならば俺が彼女に覆われる立場であるのだ。しかし彼女に負担を掛けない為にも今日は俺が主導権を握っている。
「バクフーンなんかより数倍優しくしてやるよ」
「まるでオレが激しいって言ってるみたいだな」
 激しいというか強引なのだ、彼女は。俺がどんなに拒んだとしても彼女は絶対にやろうとしてくるのだから。
 なによりも今の彼女は妊婦さんなのであるから優しく扱わなくてはならない。少なくとも俺はいつもの彼女みたいにする気は全くない。
 俺は一先ず彼女の身体全体を眺める。ぽっこりと膨れたお腹に眼がいってしまうのは当然だが、彼女の胸元にも眼を奪われてしまう。体毛があって分かりにくいのだが、よく見てみると彼女の胸が僅かに膨らんでいるのだ。
 俺は確認の為に彼女の胸元に手を置いてみる。するといつもは殆ど平らな乳房が揉めるではないか。手から柔らかな感触が伝わってきて、俺は思わず口の中にあった唾を飲んだ。
「普段触らないのに、にんっしんっした途端にいきなり胸なんて現金な奴だなあ」
 彼女にそう言われながらも俺は夢中になって胸を弄る。揉んでは普段なら味わえない感触を堪能していく。
 そして俺は揉むだけでは満足出来ずに、彼女の乳首に手を出し始める。指先でつついてみたり、指の腹で転がしてみたりする。すると彼女は気持ち良さそうに甘えた声で鳴いてくる。
「は、う、や、やめっ」
 可愛い声で鳴かれてはやめられる筈が無かった。俺は彼女の言う事なんて聞かぬ顔をして弄び続ける。そして俺はある事を確める為に、彼女の乳首両方を指で摘まんだ。そうして乳首をきゅっとなるべく優しく搾った。
 そうすると俺の予想通りに彼女の乳首から白濁した液体が滲み出てくる。俺はもう一度、彼女の乳首を弄ってみる。今度は勢い良く白濁した液体が噴出する。白濁としているその液体は彼女の体毛を湿らせていく。
「それはお前のじゃなくて赤ちゃんのミルクなのに……」
 そう、白濁とした液体は紛れもなく母乳であった。普通ならミルタンクぐらいしか出ない筈なのに、彼女が妊娠しているからなのか搾ると母乳が溢れてくる。俺は指先に付いた母乳をぺろりと舐めてみる。しかし、モーモーミルクのように美味しくはなく、おまけに何も味がしなかった。
 俺がついつい弄ぶものだから彼女は呆れた様子で俺を見ていた。しかし、そんな彼女は抵抗する素振りを見せない。心の底ではきっと満更でもないと感じているに違いない。
 だから俺は彼女をからかってやる。
「でも、感じながらミルクを出すなんて相当やらしいお母さんだな」
 そうして俺は彼女の乳首をつねっては母乳を出させる。彼女は図星のようであったが、反抗的な眼差しで俺を見てきてはこう言う。
「……むう、やらしいのはどっちだよ」
 それは言うまでもない、彼女である。ちょっと弄るだけで母乳をだらだらと溢れさせてしまうのだから。それに、彼女は気付いてないのだろうが、母乳を搾られる度に口を小さく開けて嬌声を出しているのだ。だから俺は即座に返事をしてやる。
「バクフーンだろ」
「お前だろ。全く、俺の胸ばかり触って……」
 すると彼女も言い返してくる。そして彼女は胸を弄くり回す俺に呆れたのかぷいっとそっぽを向いた。
 事実だと言うのに彼女の口は減りそうにもない。だから俺は彼女に分からせてやる為に、片方の手を胸元から離した。
 そしてある場所へと俺は手を移動させていく。胸からどんどん手を下げていって、彼女のぽっこりとしたお腹に触れる。しかしまだ手は止めない。更に手の位置をずらしていき、遂にお腹の下にあるその場所へと辿り着いた。
 その場所とは勿論彼女の秘部であった。その周辺の体毛をまさぐるだけで、俺の手は湿っていった。そうして俺は指先を彼女の秘部へと突っ込ませる。ろくに触れてもいないのに彼女の蜜壺は熟れきっていた。故に俺は指を動かしては蜜壺からくちゅくちゅと卑猥な音を立ててやる。
「ミルクだけじゃなくてこっちも溢れさせて」
「ちょっと、そこは、ふうんっ……」
 彼女は言い返す事も出来ずに、気持ち良さそうに鳴く。俺が指を動かすのに合わせて彼女はぴくぴくと身動ぎしていた。彼女の蜜壺からは愛液が絶えず溢れ続けて、俺の指へと絡み付いてくる。ほんの少し動かしただけで俺の指にはすっかり愛液が纏わり付いていた。
 妊娠してある程度は感度が良くなっているのかもしれない。でないと彼女がまともに前戯をしないでこんなに秘部を濡らす筈がない。
 しかしそれは俺自身も同じであった。彼女に弄られてもいないのに愚息は既に熱り立っていた。がちがちに堅くなっていて今にも彼女に包まれたいと言わんばかりであった。それに気付いたのか、彼女は横目で愚息へ送ってはこう言う。
「……すっかり準備万端じゃないか。にんっしんっしているオレに興奮でもしたの?」
 彼女にそう言われた俺は言い返せなかった。実際問題としてそうであったからだ。もしかしたら彼女に変態だと思われているのかもしれない。
 だが彼女は俺に毒を吐く訳でもなかった。それどころか俺に聞こえるぎりぎりの声の大きさで、こんな姿でも興奮してくれるなんて嬉しいな、と呟いた。それも頬をすっかり紅で染め上げてうっとりと俺を見つめながら。
 普段の彼女とはまるで違う感じがした。いつもであったらぎゃあぎゃあと騒ごうとするのに。そして何だかんだ言って力任せに俺を犯そうとするだけなのに。こうもしおらしい姿を見せられると俺の中でぶつりと糸が切れて何かが爆発する。
「バクフーン」
 彼女の名前を呼ぶと、俺は愚息を手で握り締める。そして愚息を彼女の秘部へと宛がった。秘部はとっくに愛液でぐしょぐしょに濡れて、愚息ががちがちに堅くなっていれば前戯なんてものは不要だった。それどころか前戯をしている時間が惜しいと感じてしまうくらいだった。
 それくらいに俺は彼女とひとつになりたくて堪らなかった。我が儘で、必要以上に俺へとべたべたくっついてこようとするこの最愛の妻と。
 多分、彼女も俺と同じ気持ちであったろう。彼女が珍しく俺の名前を呼んだのだから。普段の彼女であったら俺の事をお前と呼ぶのにこういう時だけは名前を口にしてくる。俺が彼女を欲しいのと同様に、彼女も俺が欲しくなっている。
 求められたら応えてあげるのが当たり前だ。だから俺は彼女の蜜壺に愚息をゆっくりと沈めていく。妊娠している彼女の身体を労りながら慎重に愚息を動かしていく。
 愚息が蜜壺へと入っていく度に彼女は目を閉じながら口から息を吐き続ける。こんなにも苦しそうにしている彼女を見るのは久し振りかもしれなかった。
 俺は彼女の身体に響かせないように細心の注意を払いつつ愚息を沈めていく。そして、やっとの思いで愚息が蜜壺へと入り込んだ。彼女の中は熱くて愚息が今にもどろどろに溶けてしまいそうであった。愚息が蜜壺へと沈んで、ひとつになった俺と彼女はともに荒い息遣いをしていた。俺の身体も熱さでびっしょりと汗をかいていた。
 彼女が尚も苦しい表情を浮かべるので俺は慌てて安否を問う。
「……大丈夫か?」
「うん、久々だったからさ、ちょっと辛かっただけ」
 久々、その言葉が俺の頭の片隅に突っかかった。しかし彼女が無事ならそれでいいと俺は思った。念のために、彼女の呼吸が整うまで待とうとするのだが彼女はいとおしげに、
「……うごいていいよ」
 と言ってくる。彼女にそう言われたら俺は首を縦に振るしかなかった。そして俺は彼女に言われた通り腰を動かしていった。
 しかしいきなり激しくは動かさない。彼女の様子を見ながら愚息を動かしていく。
 愚息と肉壁とが擦れ合う度に俺の身体には快感が走る。それは彼女も同様であった。愚息が蜜壺から出入りするごとに彼女は嬌声をあげる。それも嬉しそうに。
 愚息が蜜壺を出たり入ったりする動作の度にくちゅくちゅと卑猥な音が立てられる。また、彼女の肉と俺の肉とがぶつかり合う音や、彼女のお腹が揺れる音までも響いてくる。そしてそれらの音は否応なしに俺の耳へと入ってきては響いて離れられなくなる。
 耳に残るのは何も音だけではなかった。愚息が彼女の奥を突く度に俺達は喘ぎ声を漏らす。自分の喘ぎ声なんてものはあまり気に掛けないのでそれは耳に残らないが、彼女のはそうはいかなかった。彼女の悦のこもった声が何度何度も再生されて頭にまで響いてくる。
 そして目の前には恍惚とした表情で俺から視線を逸らさない彼女がいる。そんな彼女は空いてる両手を使って俺の手を奪ってくる。何をするつもりなのかと俺が様子を窺っていると、彼女は手のひらと手のひらとを重ねてくる。そして彼女は床の上に自分の手の甲を乗せた。見下ろす体勢となっている俺からしてみれば、あたかも彼女が床に張り付けにされてるかのように見えた。
 彼女の手はぷにぷにと柔らかった。そして彼女は自分の手に力を加えていっては俺の手を握り締めてくる。いくら彼女を床に張り付けにさせているように見えても、俺も彼女によって手を奪われている。そうしてれば不自由と何ら変わりなかった。彼女の他の部位に触るのですら出来ないのだから。
 しかし、こんな不自由だからこそ出来る事はあった。手と手を合わせて彼女の温もりを確かめる事や、彼女と視線を交わし合う事だ。繋がれた両手からは彼女の優しい温もりが伝わり、合わせた視線からは何かを期待する彼女の紅い眼があった。
 俺はその紅い瞳に吸い込まれるように自分の眼を寄せていく。そうして先に彼女の口と俺の口とが触れ合った。口が重なり合うと、俺は舌先を彼女の口内へと捩じ込んでいく。侵入すれば彼女の舌が待っていたと言わんばかりに応えてくる。
 瞬きもする事なく瞳に互いの姿を映しては、舌と舌と絡ませて狂ったようにそれぞれの熱を求める。たとえどんなに息苦しくなろうともお構い無しに。唾液が口元から垂れるのを気にも掛けないで没頭する。
 舌と舌とを交じらせている間も俺は愚息を動かしては彼女の奥を何度も突いて刺激する。考えてみれば彼女とは上とも下とも繋がっている事になる。彼女と授受している部分から熱が身体全体へと浸透していく。お陰で俺の身体はすっかり彼女の熱で満たされていた。
 幾度となく快感を味わえば身体が絶頂を望み始める。それは俺だけではなく彼女にも言えた。蜜壺が愚息に果ててくれと言うかに締め上げてくる。その所為で俺は愚息を前後に動かすので手一杯になってしまう。
 このまま一心不乱に腰を打ち付けて果てたい気分に駆られるが、俺はぐっと堪えた。彼女に激しくしないと約束していたからだ。
 でも激しくしない分だけ彼女と身体を重ねられる時間が増えるのは嬉しかった。ほんの僅かでもこの彼女からの熱を堪能する事やこの快楽を共有する事が出来るのだから。
 絡み合っている彼女の舌先の動きが鈍くなる。それだけではなくて彼女の眼差しも心なしかぼんやりとしていた。それらは彼女が果てる寸前なのを物語っている。
 そうしてとうとう彼女は身を任せてきては俺にされるがままとなる。現に俺が舌を動かしても彼女はただ弄ばれるだけであった。彼女がこんなにも俺に身を任せっきりとなるのは未だかつて無いであろう。
 俺は彼女の気持ちを受け取る。そして最後に愚息で彼女の蜜壺の底を突いた。その途端に全身へと駆け巡るのはこれまでにない快い感覚であった。
 その快感に俺と彼女は共に身体を震わせる。また声にならないような叫びをふたりでする。
 愚息からまるで爆ぜたように白濁液が噴出する。それは凄まじい勢いで彼女の蜜壺を満たしていき、やがては結合部から溢れ始める。溢れた白濁液は彼女の体毛を汚すとともに床へと垂れていった。そうして床に淀んだ水溜まりを作っていく。
 快感が暫く続いた後に俺の身体に残るのは気だるさしか無かった。お腹に子供がいる彼女の上に倒れる訳にもいかないので、俺は彼女の横に自分の身体を寝そべらせた。絶頂を迎えても相変わらず彼女の手と俺の手は結ばれているので、俺が寝るのに合わせて彼女の身体も横になった。
 果ててからというものの呼吸が整わない彼女。俺はその姿に心配になって、知らずうちに手に加わる力が強くなっていく。すると彼女は、
「……だいじょうぶだよ」
 と辛い状況の筈なのに俺に和やかな表情を向けた。そして彼女は片手だけ解いては俺の手首を掴む。そして彼女は俺の片方の手を自分のお腹に当てた。俺はこの時初めてまともに膨らんだ彼女のお腹に触った。
 さすってごらんおとうさん、と彼女が俺の手を自分のお腹に置くなりそっと呟いた。俺は言われるがまま彼女のお腹を優しく擦る。ぷっくりと風船みたいに膨れた彼女のお腹。このお腹の中に自分の子供がいると思うと、生き物とは不思議だなと感じた。擦った後にぴたりと手を静止させる。そして彼女とは別の鼓動があるのに俺は気付いた。我が子の心臓の鼓動がこの手に伝わってくるのだ。この身体は彼女のものだけではないと俺は改めて実感する。
 彼女も自身の手を置いてお腹にいる我が子の様子を窺う。
「ふふ、よろこんでるみたい」
 そして彼女がにっこりと笑ってはそう言った。俺も彼女に続いて笑う。それは良かった、と返しながら。
 そうして彼女は俺にこつんと優しく自分の額を俺の額に当ててきた。彼女は俺に笑いかけてくれていたのだが、行為の疲れもあってか彼女は重たそうに瞼をゆっくりと閉じていってしまう。
 やがては彼女の寝息が聞こえてくる。彼女は静かに、また気持ち良さそうにすやすやと寝ていた。いつもこんな風に大人しく寝てくれればいいのにと思ってしまうくらいに。
 彼女の寝顔が可愛いと思うのと同時に俺の瞼も重たくなっていく。眼を開けているのも辛くなってきたので、彼女に続いて俺もゆっくりと瞼を閉じていった。片方の手は彼女のお腹に添え、もう片方の手は彼女の手と重ねながら。日溜まりのようなあたたかさを感じながら、俺の意識は夢へと溶けていった。



「おきろーっ!」
 騒がしい声が聞こえたのと同時に、ばさりと掛け布団を取られる。お陰で俺は強制的に起きる羽目となった。
 眼を擦りながら今日も朝から暑苦しいなあと思う。俺は渋々ながらも上体を起こしては瞼を開けた。するとどうだろうか、目の前には仁王立ちをしている彼女がいるではないだろうか。
 俺は視界がはっきりと見えるまで彼女をぼんやりと見る。景色が段々と鮮明になったところで俺はある異変に気付いた。
「えっ、あれっ、バクフーン、お腹はどうしたのさ?」
「え、オレのお腹がどうかしたのか?」
 あんなに膨れていた筈の彼女のお腹が元通りになっているのだ。俺がそう指摘しても彼女は知らぬ顔で訊き返してくる。お陰で俺の頭は混乱してしまう。
「え、だって子供がいるって……」
 しかし彼女は相変わらず知らぬ顔を続ける。挙げ句の果ては彼女も戸惑いながらも俺に言ってくる。
「オレがそんな事を言った覚えはないけど……」
 彼女の顔を窺う限りでは、嘘を吐いてる線も無さそうであった。
 ますます頭がこんがらがっていく。あんなに身体が熱くなるくらいの行為が嘘とは思えない。そして実は子供がいないだなんて冗談では済まされない。俺は、一旦冷静になれと自分に言い聞かせながら先ずは状況把握に努める。
 第一に妊娠していた筈の彼女が妊娠していない点。次に彼女と身体を重ねたのは床の上であったのに、俺は普通に寝巻きを着ては布団の上にいる点。最後に下着が濡れて下腹部から気持ち悪い感触が伝わっている点。
 これらを踏まえて考えられる事は勿論、
「じゃあつまりあれは……」
 夢だった。そう、夢であれば彼女が言ってる事も俺が言ってる事も嘘にはならない。
 よくよく考えてみれば、妊娠して数日間であんなにお腹が膨れる筈もない。いや、もしかしたらポケモンだと早いのかもしれない。ともかく、彼女が妊娠したとあんなに慌てていた自分が馬鹿みたいだと感じざるを得なかった。
 俺は溜め息を吐きながら肩を落とす。朝からこんなにも勘違いで精神的に疲れる思いをするとは考えもしなかった。だがそんな俺を彼女はにやにやしながら見ている。その視線が何よりも痛いのと、夢オチであった現実が恥ずかしくて、俺は掛け布団を取られてなかったらくるまりたいところであった。
「ふーん、夢でオレがにんっしんっしてたのかあ」
 彼女はにやりと口元を綻ばせた。それはきっと彼女にとって格好の俺をからかう材料を見つけたからであろう。そうして、立っていた筈の彼女は俺へ身体を預けてくる。抵抗するのが間に合わなくて、俺は彼女によって強引に布団に寝かせられた。
 逃げる暇もなく彼女が俺の身体にのし掛かってくる。そして彼女は俺の寝巻きのズボンに手を押し付けては言う。
「ここ、汚れてるけどいいのかなあ?」
 彼女は厭らしい笑みを浮かべながら俺の下腹部をふにふにと弄っては言う。彼女の一言によって、俺は下着だけではなくて寝巻きまでもがぬるぬるしているのに気付かされた。おまけに寝起きな所為もあって、寝巻き越しからでも愚息の輪郭が浮かび上がっているのまでも発覚する。
 俺はもう何も誤魔化せなかった。俺が黙ったままだから彼女は意地汚い笑みを浮かび続ける。お陰で今の俺は彼女に弄ばれる格好の玩具と言っても過言ではなかった。
「ふふ、お前の夢みたいに、オレをにんっしんっさせてよね」
 そうして彼女が下着ごと寝巻きのズボンに手を掛けてきた。それも鼻唄を歌ってはやけに嬉しそうにしながら。きっと俺が今日見た夢みたいに、彼女は俺との子が欲しいのだろう。それは俺だってそうだ。だがそれに至るまでの俺の身体に掛かる負担なんて構ってはくれないであろう。
 このまま彼女が暴走すれば夢が現実になる日も近いかもしれないと俺は思うのと同時に、これから先にされる事を考えて我が身を案じた。


番外あとがき
もともとこの話は小話にする予定でしたが、官能描写を書いていく内に長くなってしまいました。ですので急遽、番外編として掲載する事にしました。
やっぱりバクフーン可愛いよバクフーン。お腹が出てるからにんっしんっしても簡単には気付かない感じがするのがまた(
タイトルに関してはかなり適当です。
内容がマニアックでしたがここまで読んで下さった読者の方に感謝します。有難うございました。

原稿用紙(20×20) 29.15 枚
総文字数 10176 文字
行数 159 行
台詞:地の文 839文字:9337文字


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Last-modified: 2013-04-01 (月) 00:00:00
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