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無くしたもの、拾ったもの 4

/無くしたもの、拾ったもの 4

無くしたもの、拾ったもの 3の続きです


・・・
また夢か・・・
ん?
4つ、5つくらいの小さいルギアが泣いてる・・・その横には母親と思しきルギアが必死であやしている・・・
だけど、その子は泣きやむどころかより一層大きな声をあげて泣いている・・・
そこに小さな鳥・・・ホウオウだ・・・こちらも4つ5つ位に見える。
こどものホウオウは泣くルギアにハンカチを渡してる・・・優しいな・・・
でも、泣いてるルギアはハンカチをくれたホウオウを蹴った。
ホウオウは転倒し、怪我を負った。ホウオウは少し泣いている。
すると今まであやしていた母親がそのルギアを思いっきり引っぱたいて、怪我をしたホウオウのもとに駆け寄る・・・

これ・・・俺じゃん・・・
俺がホーちゃんに初めて出会ったとき・・・
ひどく不機嫌だった俺はその時ホーちゃんを蹴った。理由はなかった。
慰めてくれたはずのホーちゃんを俺は蹴ったんだ・・・
その直後に俺は母さんに思いっきりたたかれた。結局それで涙は止まった。
嫌なことを思い出したもんだ・・・でもあの後ホーちゃんは母さんに連れられて俺の家に来たんだ。
俺が部屋で延々説教されてるとき、ホーちゃんは隣の部屋で眠ってた。
母さんの説教が終わったとき、もうあたりは真っ暗で母さんがホーちゃんを送って行こうとした。
でも、ホーちゃんは一人で帰るって言ってきかなかった。
結局ホーちゃんは俺の家に泊まることになった。
その日のうちにホーちゃんと俺は仲良くなった。不思議なもんだ・・・
して、ホーちゃんはこのこと憶えてたのかな・・・思い出されたら土下座で謝るしかないな。
・・・ホーちゃん・・・あの遺跡にもう一回行って何があったか確かめなきゃ・・・

目をあけるとうっすらと夜が明けるのがわかった。
ん?もう朝か・・・
朝焼け・・・ホーちゃんがたまに早起きしてずっと眺めてたな・・・
「今日も頑張らないと・・・」
俺はトースターにパンを入れ、着替えを済ませる。
ホーちゃんがいないとご飯が簡素なものばかりになってしまう。辛いねえ。
すぐさまパンを食べると俺は病院に向かって行った。

ホーちゃんの病室に入るとサーナイトさんがホーちゃんに話しかけている。
でもホーちゃんはぷいっとそっぽを向いたままだ。
「あのーどうかしました?」
俺はサーナイトさんに話しかけた。
サーナイトさんは深刻そうな顔で俺を病室の外に連れ出す。
「あのね・・・昨日から何も食べてないの・・・ご飯はおろか水も・・・」
「え?」
「昨日の朝はまだ戸惑いもあるからいいかなって思ってたんだけど、さすがに48時間以上飲まず食わずっていうのはね・・・」
サーナイトさんの視線の先にはホーちゃんがいる。
「よっぽど精神的なストレスが大きいみたいね・・・」
すぐに俺は病室に入り、ホーちゃんに話しかける。
「なんで食べないの?」
ホーちゃんは答えない。いらっときた俺はホーちゃんを問い詰めた。
「食べないと死んじゃうよ。ご飯があるんだから食べないと・・・だいたいホーちゃんは元気にならないと・・・」
「うるさいなっ!」
ホーちゃんが怒鳴る。でも俺はただ怒ってるんじゃないなと思った。悲壮を感じる。
「食べなくたっていいでしょ!もう耐えられないんだ。目の前にいる人は自分をよく知ってる。でも僕は・・・僕は・・・」
ホーちゃんは目に涙を浮かべながら俺に訴える。
「僕は・・・その人を知らない・・・思い出せない・・・記憶なんて・・・」
申し訳なさを感じながら俺はどんな言葉を掛けたらいいか迷っていた。
「記憶なんてなくてもいいじゃん。俺は昔を知らなくても今のホーちゃんが好きだ。」
率直な言葉しか出なかった。そうとしか言えなかった。
「でも・・・」
「一緒にご飯食べよっか?」
ホーちゃんの表情は少し明るくなる。

「なんで病院食をわけないといけないの?」
「いいじゃん。ご飯持ってきてないもん。それにまだ朝早いしさ。」
すると病室のドアが開いた。
「やあお二人さん、今日も仲いいねえ。今日は休みだからお見舞いに来てくれた人がいるよ。」
フリーザーだった。
「誰だよ、お見舞いの人って・・・」
「じゃあ、どうぞ。」
案の定先生だったけど・・・
「ミ、ミロカロス・・・さん?」
俺は意外すぎてびっくりした。
「こんにちは。二人が仲いいって聞いたからどんなものかな~と思って来たんだ。」
ミロカロスは俺たちにあいさつした。
「なんでお前ら病院食をシェアしてんだ?」
先生はまっとうな疑問を俺にぶつけた。
「いや、ホーちゃんが食欲があまりわかないっていうから・・・」
しどろもどろになりながら、俺は答える。
「ホーちゃん?」
ミロカロスがそう言うとフリーザーは笑う。
「ミロカロスは知らないんだ。お二人は昔から、仲がいいのでルギアはいまだにホーちゃんって呼んでるんだよ。」
「そうなんだ。」
ミロカロスは相変わらず綺麗だなあ・・・俺はそう思いながらホーちゃんとご飯を食べた。
「今日は休みだからすぐ帰るわ。」
先生はホーちゃんにプリントを渡すと病室から出て行った。
「どうよ、少しは元気になった?」
フリーザーはなれなれしくしゃべりかける。
「うーん・・・全然です。」
少し間をおいてフリーザーは俺に話しかける。
「なんで丁寧語なの?」
「ホーちゃんはずっとこうなんだよ。」
「じゃあちょっとホウオウに用があるからルギアたちはちょっと出てってくれない?」
俺とミロカロスは病室から追い出された。
「な、何を話してるんだろうね?」
ドキドキしながら俺はミロカロスに話しかけた。
「えぇう?あ、そうだね何を話してるんだろうね?」
全然話が続かない・・・
「もうお昼だね。」
「お昼ですね。」
・・・おい。
「お腹すいたな。」
「お腹すきましたね。」
・・・オウムかよ。
「ご飯食べに行きませんか?」
「ご飯食べに行きましょうか。」
・・・悪魔かコイツは。
「フリーザーはなかなか出てこないね。」
「なかなk(略 」
・・・もう駄目だ。そうこうしているうちにフリーザーが部屋から出てきた。
「お待ちどうさん。わたしたちそろそろ帰るわ。」
「おう、ありがとう。」
病室に戻った俺はホーちゃんにどんな会話をしていたのか聞いたが、照れくさそうに何も言わない。
よっぽど何かいいことでもあったのかな。
「食べれるようになった?お昼だよ。」
ラッキーさんがお昼を運んできた。お、俺の好物の・・・
「ルギア、涎出てるよ。」
あっ、いつの間に・・・くそう食べてやる。俺は箸をホーちゃんから奪って食べた。
「こらっ!」
ラッキーさんが俺を叱る。そりゃそうだよな。誰でも怒るよ、病院だし。
ホーちゃんは食欲が戻ったのか俺が食べたやつ以外は綺麗に食べきった。
時計を見ると昼の1時を回ったところだ。俺は病院から出たら、あの遺跡に再び行くことを心に決めた。
ご飯を食べてねむくなったのか知らないけど、ホーちゃんは寝ちゃったし俺も・・・寝るか。
ゆさゆさ・・・ゆさゆさ・・・俺を誰かが揺さぶる。
「おはよう。もう夕方の6時だよ。」
あーっ!寝すぎた。ホーちゃんはまだ寝てるし。夕御飯の時間だ。
「これ、食べたら?」
ラッキーさんはおにぎりをくれた。俺は急いで食べると病院をから出る。あそこに行かなければ・・・

遺跡についたらあたりはすっかり闇に包まれてる。ん?なんか後ろのほうでがさがさ音がしてる・・・
見覚えのある尻尾。ホーちゃん・・・俺をつけてきたのか
俺はゆっくり音のほうに近づいてその尻尾を引っ張る。
「痛いっ!」
この声。やっぱりホーちゃんだった。
「何するの?痛いよ。」
「ホーちゃん、俺をつけてきたわけ?病院は?」
「病院の窓から出てきた。怒られるかなあ・・・」
俺は本来の目的を思い出し、ホーちゃんに警告する。
「俺は今から中に入るけど、何があっても入ってきちゃだめだよ。危ないから。なんかあったら誰か呼んできて。」
「わかったよ・・・」
ホーちゃんはしぶしぶといった感じで返事をした。

遺跡に入った俺は暗闇の中を先に進む。
前とは違ってかなり慎重に歩みを進める。何かあったら・・・という思いが強くなる。
爆発のあったところはそう遠くない。

ん?何か光ったぞ・・・
そいつは唐突に姿を現した。レジスチルだった。
レジスチルは俺を見つけるといきなりはかいこうせんを繰り出した。
「こいつが・・・」
ホーちゃんのことで俺は怒りに燃え、戦うことにした。
「なんでこんなとこにレジスチルがいるんだよ・・・」
おれは相次いで技を繰り出す。でもまったく効果は見られない。
冷静に考えるとおれの攻撃だと相性的にあんまり良くない。
「どうしよう逃げられないぞ・・・」
レジスチルは冷徹に俺を追い詰めていく。俺はあることに気付く。


レジスチルはこの遺跡に入ってきたものを攻撃するようになってるんだ・・・だからホーちゃんを攻撃したのか・・・
攻撃も当たらなくなってきた。もしかしてパターンを読まれてる?
無駄に攻撃を繰り出した俺は、疲労で動きが遅くなってくる。
レジスチルがまた光線を発射する。
やばいっ、避けれないっ!
「うわっ!」
レジスチルのはかいこうせんが俺に当たり、俺は吹っ飛ばされる。

またもレジスチルは光線を発射しあたりの岩を砕く。俺はもう駄目だと覚悟した。
ばさっ・・・
ん?誰かが上に覆いかぶさった感覚がする。
「ぅ!」
「ホーちゃん・・・」
ホーちゃんだった。
「・・・なんで来たの?来たらだめってって言ったじゃん・・・」
俺は息も絶え絶えに言う。
するとホーちゃんの目が見覚えのあるもの優しいになり、俺をレジスチルの攻撃の範囲の外まで運んでくれる。
「ルギア・・・ごめん、あのね今全部思い出した。」
俺はホーちゃんが何を言ってるのかしばらくわからなかったが、ホーちゃんの口振りから全てを理解できた。
「僕はなんで記憶が無くなったかわかった。」
ホーちゃんは傷だらけの俺に話しかけてくれる。
「僕はルギアを守れなかったと思ったんだ。そのショックで僕はルギアや皆のことを忘れたんだと思う。」
痛みを我慢しながら俺はホーちゃんの話に聞き入る。
「でもそれは間違いだった。ルギアは元気だし、それに・・・」
「それに?」
俺は聞いた。
「それに、僕はルギアを守らないといけないと思っていた。でもお互いそう思ってたんだよね。」
「え?」
状況が状況なので俺は頭が回らなかった。
「僕はルギアを守りたい。ルギアは僕を守りたい、って」
そうだ。俺はそんな風に考えてた。ホーちゃんを守るんだって。守らないといけないんだって。
「記憶があっても無くても僕はルギアを守る。」
「ホーちゃん・・・」
記憶が戻ってきたホーちゃんが戦いを挑むがレジスチルは無慈悲に光線を連射し続ける。
ホーちゃんは光線を避け続け攻撃の隙を窺っている。でも光線は止まらない。
「わっ!」
光線がホーちゃんに命中する。
ホーちゃんは地面にたたきつけられた。
もう戦う力の残されてない俺はボロボロになったホーちゃんのほうに近寄る。
「ルギア、下がってて。僕はルギアみたいに打たれ強くないからね。」
ホーちゃんは起き上がって、渾身の力を振り絞り、炎を起こす。
その炎はホーちゃんを包むように次第に大きくなる。だけど、ホーちゃんはそれを止めるつもりはないみたいだ。
「ホーちゃん!危ない!」
レジスチルはその炎に呼応するかのようにはかいこうせんを連射する。
しかし、光線は炎には当たるけれど、肝心のホーちゃんには全く当たらない。
ものすごい熱が俺に伝わってくる。炎を起こしているホーちゃんは飛んでいる。
けれど、炎の当たっていない地面も自然発火し始めた。
ホーちゃんを包む炎はもはや火球と呼べるまでに大きくなり、俺も熱さでその場に立っていられない。
もはや俺も、俺の周りのすべても燃えそうだった。火球はホーちゃんの大きさの5倍は超えている。

「ルギア、エアロブラスト!」
力が出る状態じゃなかったがやるしかない。俺はすぐにエアロブラストを使う体制をとった。
「うっし、エアロブラストじゃあ!!」
俺の放った渾身のエアロブラストはホーちゃんを包む火球にぶつかり、火球を吹っ飛ばした。
火球はレジスチルにぶつかり、ものすごい炎をあげてレジスチルの辺り一帯を燃やしている。
業火の中のレジスチルはよろめいた後、倒れこみ動かなくなった。

・・・勝ったのか?
レジスチルは完全に動きを停止した。
「ホーちゃん、勝ったじゃん!」
ホーちゃんは俺の前に降りてきて、俺を笑顔で見た。これがホーちゃんの本気・・・
しかし、俺は炎の勢いが全然静まってないことに気付いた。
「ホーちゃん。火、まだ燃えてるけど。」
「いつかは消えるよ。多分ね。」
えらく無責任だな。ひょっとして消えないのか?まあいいや。
安心したのか俺は完全に身体の力が抜けて立っていられなくなり、しかも目がうるんできて視界が悪い。
そんな俺の横でホーちゃんは俺を支えるようにその場に座った。
「ホーちゃん、俺・・・」
「喋ると余計に疲れるよ。僕はどこにも行かないよ。それに言ったでしょ、守るって。」
お互いついさっきまで少し思い違いをしていたみたいだ。
ホーちゃんのことを守らないといけないとだけ思ってたけど、ホーちゃんも同じことを思ってたんだな。
これが夢の中の先生が言ってた絆なのかな。でも、その絆は記憶が無くなっても消えなかった。
俺は薄れゆく意識の中で空を見上げた。
「あれ、なんか飛んでくる・・・」
ホーちゃんも空を見上げた。
「フリーザーだ・・・」
フリーザーは俺たちを見つけると目の前に降り立つと、変な顔をして俺たちを見た。
「あんたたち、なんか異常に明るいなと思って来てみたら遺跡が燃えてるじゃない!」
・・・俺はもはや意識を保つのが精いっぱいで何も言えない。
ホーちゃんの顔を見るとちょっと笑ってるし。
意外と・・・いい性格してるな、ホーちゃんは。こういうときは特に・・・
・・・もうだめだ。俺はそのまま眠りに就いた。

まだ続きます


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Last-modified: 2010-06-04 (金) 00:00:00
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