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災厄ノ伝エ

/災厄ノ伝エ

(ほのお)

主人公自己紹介 


 僕の名前はクロス。種族名はオノンド。

 好きな木の実……は特に無いけど、何でも良く食べる方だと思う。

 さて、自己紹介はここまでかな。

 これは、僕が過去に体験した出来事。

序章 


 僕がいるのは、荒れ地に存在する少し高めの崖の上。谷底は、砂と石が転がっている。僕はその崖の上に座っていた。
 でも、別に理由なんて無い。ただ暖かかったから、日光浴をしていただけだ。
 前の僕ならここで溜息をついて、少し経ったら住み家に帰っていたところだろう。でも、今は違う。

「クロス。また一匹で日光浴か?」

 そう、僕があの頃と違うのは、一匹の”友達”が出来たからだ。
 彼の名前はジンクス。種族名はアブソル。実は、僕も彼も元々はニンゲンのポケモンだった。

 僕が崖の上で溜息をついていた時、鋼タイプのポケモン達に襲われた。未だに何故襲われたかは覚えていない。
 その時、ジンクスが偶然ふらりと通った。鋼タイプ達はジンクスを見ると慌てて逃げ出したんだ。

「……大丈夫か?」

 アブソルという種族が、ニンゲンに”疫病神”や”災いポケモン”等と言われている事は知っていた。因みに、ジンクスという名前も”疫病神”を意味する名前らしい。
 その時ジンクスは少し悲しそうな表情をしていた。僕は、

「ああ、この様子だとこのアブソルは今までも避けられてたんだな。」

と悟った。
 でも僕は、『アブソルは災いを感知し、それを知らせに来る』という事も知っていた為、怖がらずに話しかけた。すると話が発展していき、やがては彼と友達になれたのだ。僕の初めての友達だった。
 あの時から、僕はジンクスが知らせに行くとき必ず付いていき、ニンゲン達を説得した。
 お互いニンゲンに捨てられた身だが、きちんと優しさは持っていたらしい。

「……あはは、まあね。ところで、災いの予感は?」

 僕が質問に答え、逆にジンクスへ尋ねると、ジンクスは目を閉じ、一本の角に神経を集中させて予知を始めた。

「ああ、待ってろ。…………っ、来たぞクロス」

 少し時間が経つと、ジンクスは目を強く見開いた。『来た』と言ったから、何か災いの未来が見えたのだろう。

「塔の町だ。四十分後に地震が起きる」
「あ、あの高い塔のある町か。よし……ジンクス、行こう!」

 僕は崖で立ち、首に掛けていた袋から川原の石を取り出し、一回サッと研ぐ。そして、町の方向へジンクスと走った。
 僕らの行動が、たくさんの生命(いのち)を救う事を信じて。

一章 


「皆、避難してー!四十分後に地震が起きるよ!繰り返す、避難してー!四十分後に大地震が来るよ!」

塔の町に着いた僕達は、直ぐに高台に移動し、ニンゲン達に呼び掛けていた。
 もしニンゲン達が言うことを聞かないで亡き者となっても自業自得だが、できればそうはならないで欲しい。僕達はニンゲン達を救う為にやっているのだから。
 ニンゲン達が暴言を吐いたり、疫病神呼ばわりされたりしても気にしない。言うことを聞かなければ、引っ張ってでも高台に連れていく。

「ハァ?地震で避難だと?」

一人の男がジンクスの元へ行き、若干悪口の様に言う。
 だがジンクスは動じず、事実をしっかりと伝えた。

「正確には地震による津波、だ。死にたくなければ避難するんだ」

 こういう所といい、僕よりもバトルが強い所といい、やはりジンクスは尊敬に値する。凄いよ。

「クソッ、災いを呼ぶ悪魔共め。また来たか」
「教えてくれてありがとう。ほら、アンタ達も、準備してちょうだい」

 町民の反応はそれぞれだったが、そんなの関係ない。信じない人も無理矢理連れていかなければ助からない。

「よし、皆避難したかな。ジンクス」

 僕がジンクスの方を向き、少し急いで尋ねると、ジンクスはいつもの顔で言った。

「その様だな。あとは高台にいるニンゲン達の保護だ」

 ニンゲン達は、普通地震が起きてから津波警報が出て避難するが、アブソルという種族はその地震の警報すらできる。だから、周りに物が少ない高台に避難させたのだ。




 暫くして、地震がやってきた。
 大きさは結構なもので、建物が何棟か壊れてしまうぐらいのものだった。
 更に、また少ししたら津波が押し寄せた。今回は地震より津波の方が大きかったような気がする。
 津波は住宅地や森を呑み込み、どんどん陸の方へ昇って行く。

 あっという間に、町は壊滅*1してしまった。
 

「う、ああああ……俺達の町が……」
「ありがとう、お蔭で私たちが助かったわ」

 警告した時には信じるニンゲンも信じないニンゲンもいたのだが、町が壊滅してからはほとんどが僕達に感謝してくれた。警告しに町へ向かった時感謝されるから僕は嬉しくなる。だからモチベーションも上がるのだ。
 色々なニンゲンに感謝されながら、僕とジンクスは町を後にした。

二章 


「良かったね、ジンクス。ニンゲンに感謝されて」

 塔の街でニンゲンを救った僕達は、また同じ崖の上に来ていた。ここだといろいろな場所の様子が見えるのだ。そうするとジンクスは予知がしやすくなり、更には移動しやすい。

「ああ、だがまだだ。俺達の警告通りに動かないと死んでしまうということが理解できないニンゲンがいるようでは駄目だ」

 安心して、ホッとしていた僕はその言葉を聞いて、ああ、まだこれからなんだな。と思った。
 前にはポケモンで僕達に対抗しようとしたニンゲンもいたし、鍛練もしておかないとな。とりあえず、僕はいつも牙を磨いてる石がある河原へ向かおうとした。

「ほう、アイツらが脅えて逃げたってのはコイツらのことかァ?」
「おいおい、何処が恐いんだって……ってアブソルだと!?糞が、災いの主め」
「フン、まずは弱そうなアッチから潰すぞ。」

 だけど、三匹のポケモンが目の前に現れた。「アイツら」っていうのは、あの時の鋼タイプのポケモン達だろう。ということは、戦意を向けられてるってことだよな。
 ……話の流れからすると、僕狙われてるね。絶対。
 まだ牙も磨いてないのに、折れたらどうしようもないんだぞ!

「斬鬼、お前からでどうだ」
「いいぜェ……フンッ!」

 あの斬鬼と呼ばれたキリキザンが腕から衝撃波を出してきた。あれは気合玉!?
 僕は咄嗟の判断で龍の波導を放った。気合玉の軌道がギリギリ逸れた程度で、避けないと直撃だ。僕は体を横に倒し、転がって受け身を取った。

「成程、戦闘訓練はちゃんと行ってるようだな。斬鬼、やるぞ」
「ふン、構わねェよォ……撃導ォ」

 斬鬼と撃導と呼ばれたルカリオがなにやら話している。この体制では避けられるか。
 すると、斬鬼と撃導に二匹が僕とジンクスにそれぞれ衝撃波を飛ばした。

「畜生!避けきれない!」
「お前に撃ったのは波導弾だ、不幸の神よ」

 僕は飛んできた気合玉に自慢の牙で「きりさく」を決め込んだ。磨いてなかったので、折れるか折れぬかの賭けのようなものだったが、なんとか無事で済んだ。
 気合玉は真っ二つに割れた。
 僕はジンクスが心配で隣を見た。ジンクスは自身の長い角で「つじぎり」を命中させていた。

「おいおい、周りの心配してる場合じゃねえぜ?喰らえ!」

 どうやらジンクスのことで油断していたらしく、僕は三匹目のエンペルトに「冷凍ビーム」を発射され、その場に倒れこんだ。
 ああ、僕の意識が遠のいていく……

三章 


 気が付くと、僕は知らない木造建築の建物の中のベッドで横になっていた。確か鋼タイプのポケモンと交戦していて、不意を突かれたんだっけ……。
 ベッドのある部屋はなかなかの広さで、ベッドだけしか無いというのは勿体ないくらいだ。しかもベッドは五個くらいある。自分で暮らす為の部屋とは言いがたい。
 僕はあることに気が付いた。……ジンクスがいない。
 すると、ドアの開く音が聞こえた。誰か入ってきたのだろうか。

「おっ、目を覚ましたみたいだね」
「……ッ!!」

 に……ニンゲンだ。もしやあのニンゲンはハンターか?ハンターならここに僕を閉じ込めておいて売り飛ばすつもりだったのか?そうだとしたらジンクスは疫病神扱いを受けて売り物にならなかったとかだろうか?それなら僕は黙っている訳には行かない。

「……ニンゲン、僕をどうするつもり!?」
「えええ!?まさか警戒されるなんて……」

 ニンゲンを威嚇したら、何故か向こうが驚愕をした。ニンゲンは何故驚く?兎にも角にも質問をしているんだ。
 僕は再度威嚇しながら尋ねた。

「質問に答えて!僕をどうするつもりだ!?」
「どうする何も、俺は……」

 ニンゲンの返答を聞いていると、またドアから誰かが部屋の中に入ってきた。
 今度は……ポケモンだな。リボンのような物が体にあるな。今まで見たことないポケモンだ。

「主人~、アブソルへの処置は終わったよ~」
「お、シーフィご苦労さん」

 会話から察するに、あのポケモンはシーフィという名前で、このニンゲンの所有ポケモンらしいね。こいつがハンターだとすれば、おそらく仕事の相棒のような感じなのだろう。
 そしてシーフィとやらの言ったアブソルとはジンクスの事なのだろうか。ならジンクスも無事だったのか。

「ん、オノンドは起きてるねぇ」
「……ああ、そうだ。オノンド。俺はお前を売り飛ばすとか傷付けるとかしないから、警戒しないでくれよ」

 そんな言葉はハンターがポケモンを安心させる為の口上に過ぎないよ。寧ろ言われた方が警戒をするのは当然だ。僕は警戒の姿勢を崩すものか、と必死に抵抗した。
 ニンゲンは溜息をついた。

「お前が倒れてる所をこいつ……シーフィが見つけてここまで運んで来てくれたんだよ……傷だらけだっただろ?」

 そういえば、鋼タイプのポケモンと交戦していて、それで意識を失ったんだった。さっきまで普通に覚えていたのに。
 

「お連れさんのアブソルも別の部屋で休ませてるからね~」
「ジンクス……アブソルは無事なんだね?」
「勿論。俺はポケモンを見捨てるような事はしないぜ」

 話を聞いていたら、どうやら悪いニンゲンではないみたいだ。だが、いつか掌を返すことがあるかもしれないから常に警戒をしておかなくては。

「あはは~、所謂キリッて奴だね、主人。まぁ、そういうことですよオノンド君。主人のポケモンはほとんど主人に懐いてるからね~」
「へえ、まあ悪いニンゲンじゃないようだね。ところでここは何処なの?」

 シーフィはこのニンゲンに何か親切にされて付いてきているのだろうか。シーフィは結構このニンゲンを信頼しているようだね。

「警戒心強いなあ……ここは、俺の自宅にある空き部屋みたいな物だ。なんかあればポケモンを集合させて会議をしたり、様々だな」
「アブソル君はリビングで横にしてあるよ」
「お、そうだ。お前ちょっとリビングまで付いてきてくれ。皆に紹介をしておきたい」

 紹介か。まあリビングのジンクスの様子も見ておきたい所だし、ここにいる意味も無いわけだから行ってみるかな。

四章 


 ニンゲンについて行き、リビングまでやってきた。治療のお陰か、体は平気で動かせる。いや、寧ろ今までよりも自由に動けると思った程に元気だった。
 リビングはかなり広く、その端にはカーペットが敷いてあり、その上にジンクスはいた。

「ジンクス!……良かった、無事だったんだね」
「あ、ああ……それより、此処は何処だ?」

 ジンクスはカーペットの上に立っていた。彼も怪我は治っているらしく、ピンピンしている。
 リビングも綺麗にされている。さっきの部屋のベッドの多さと言い、このニンゲンはポケモンをよくこの家に連れてきてるということだろうか。

「ああ、アブソルも起きてよかったよ……此処は俺の家さ」
「……ニンゲンは俺を蔑んだり恐れたりするが、貴様はどうとも思わないのか?」

 ジンクスがニンゲンを睨んだ。やはりニンゲンが連れてきたりするのはハンターくらいしか考えられないもんな。
 だがまたもやニンゲンは驚いている。

「ええええええ!?人間がポケモンを蔑む!?少なくとも俺はそんな真似はしないよ!」
「ポケモンを大事に想うことだけが、主人の取り柄だもんね〜」

 シーフィが言ったことにニンゲンは怒っていた。なんだその俺が何も出来ないみたいな言い方は!とか言ってるな。
 兎に角、ジンクスが無事で良かった。

「あっ、そうだ。お前たちの事をみんなに紹介するんだったな。ちょっと二匹で待っていてくれ」

 ニンゲンはそういうとリビングじゃない他の部屋へ向かった。これが嘘で、気絶させられて檻の中という展開も充分有り得るからな。油断は出来ない。

「まぁ、そこで二匹で話してろってことだよ、主人の言葉を代弁するとね〜」

 シーフィはそう言うと、ニンゲンの方へ歩いていった。
 なんかシーフィは何考えてるかわからない性格だな……。

「クロス、大丈夫か?」
「いや、僕は大丈夫。あのニンゲンが回復させてくれたらしくてね」

 だが、傷だらけだと売り物にならないから治療したという可能性もある。油断大敵だ。
 すると、ニンゲンが戻ってきた。

「よし、ボールを持ってきたぞ。みんなを出すからな」

 モンスターボール。ニンゲンが開発した道具だ。ハンターが獲物を捕らえる時は使わないらしいな。つまり、このニンゲンがハンターだった場合、シーフィと同じ様に捕まえたポケモンだということか。
 すると、ニンゲンは一つ目のボールを軽く投げ、床についた時に開いた。
 出てきたポケモンは……水色。どうやら氷タイプのようだ。氷タイプのポケモンは目の前の僕等に驚いている。

「アイザー、この二匹はな……」

 ニンゲンはアイザーと言うらしい氷タイプのポケモンに僕等の簡単な説明をしてる様だ。
 アイザーはその説明にしっかりと耳を傾けている。

「紹介する。こいつは俺のポケモン、グレイシアのアイザーだ」
「アブソルとオノンド、宜しくな」

 その喋り方は雄らしかった。だがしっかり説明は聞いていたようだな。
 とりあえず返してみる。

「僕はクロス。宜しく」
「……俺はジンクスだ。あまりこの名前は好きじゃないが、宜しく頼む」
「って、ええええええ!?お前達名前あったのか!?野生だからてっきり……」

 またニンゲンが驚いている。もとはあるニンゲンのポケモンだったという事は、触れたくないのとこのニンゲンの反応に呆れたのとで言わないでおいた。

コメ欄 

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*1 シンボルである塔など、大きな建物や建造物は残っている

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Last-modified: 2013-08-04 (日) 00:00:00
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