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漆黒の満月 特別話

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written by cotton

漆黒の満月 

the another evolution


ロンが得たイーブイは3匹。
1匹はブラッキーに、1匹はシャワーズに。
では、もう一匹の行方はー

「止めだ。シャワーズ、バブル光線」
その技は相手のラッタを捉え、気絶させた。
「強いね、君」
ラッタの主人が話しかけてきた。

「…駄目だ、話になんねえ」
戦いの場を後にし、彼はそう呟く。
ー気のせいだろうか、私の「弟」、あのイーブイに出会ってから、彼の様子がおかしい。戦いの回数は前より増え、いつもより早足で歩くことが多くなった。
単に強さを求めるだけなのか、何か他に理由があるのかー

その理由は、意外と早く見つかった。

「…あ」
「久しぶりね、ロン」
見知らぬ少女が話しかける。
「…何の用だ」
「相変わらず、冷たいね」
どうやら、自分が生まれる前に二人は知り合っているらしい。
「戦わない?折角だし」
「…」
「どうしたの?また負けるのが怖いの?」
"また”その言葉に、彼はその少女を睨んで言う。
「今回は勝たせてもらう」
「それじゃあ、始めましょうか」
「シャワーズ、行け」
「変わってないね、その癖」
ロンは、今重点を置いて育てているポケモンをボールに戻さない癖がある。
「前はケーシィだったっけ…じゃあこっちはッ…!」
そういって繰り出したのはー

『サン…ダース…?』
『久しぶりだな、姉貴』
彼は、ロンが捨てたもう一匹のイーブイ。
『許さねえよ。あんたも、そのクソ主人も…!』
彼の逆立った毛から迸る雷は、道を、草花を打ち付ける。
「このサンダース、道で独りでいた。あんたに捨てられたみたいね」
「確かに、俺が捨てた」
『サンダース…』
『許さねえ…!』
ロンのように鋭い目。その目からは、ただ怒りだけが感じられる。
「サンダース、電光石火」
ー速い…!
『ああッ…!』
『まだだ…まだだッ!!』
二撃目、三撃目、四撃目…彼の攻撃は八撃目で止まった。
ー体が、動かない…
「これで決める。サンダース、雨ごい」
「雨ごい…?ッ!まさか…!」
黒雲が空を覆う。それは、白い光を帯びてー
『終わりだ』
「サンダース、神鳴」

激しい雷が打ち付ける。逃げることはできない。怒りと憎悪がこもったそれは、近くの岩すら、粉々に砕く。
ーだが、

『残念ね』

そう。
『…ッ!?…無事…だと…?』
「嘘、でしょ…」
自分はその、怒りと憎悪の痕に立っていた。驚くのも無理はない。
「溶ける、だ」
ロンが言い放つ。
「避けた…の…?」

『畜生…!畜生ッ!!』
彼は、最後の指示を下す。
「…シャワーズ、ハイドロポンプ」

ーゴメン、ね…

ー姉…貴…。俺たち…に、もう一匹、弟が…いたよ…な?
ー…ええ。
ー俺の、頼み…聞いて…くれないか…?
ー…何?

ーあいつを、独りに…しないで、くれ…!

「あなたが一番分かってるでしょ?捨てられた悲しみ」
「…やめろ、プラム」
「なのに…何故?」
「…」
その少女…プラムは、ロンを見つめ、問いかける。
「こうしなければ、親に捨てられた悲しみは消せなかった…それだけだ」
ー親に、捨てられた…?ロンが…?
「でも、」
ロンは顔をあげて言う。
「悪かったって、思ってる」
彼の罪悪感にあふれた顔、初めて見た。そして、思い出した。弟に、ひどいことをしたこと。

ー行かなければ。
「…!おい!シャワーズ!」
ー弟のもとへ、行かなければ。孤独に苦しむ、弟のもとへ。

ーありがとな、姉貴。
もう一匹の"イーブイ”が微笑んだー

気になった点などあれば。




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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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