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溶ける炎

/溶ける炎

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外周から見るその集合体は、自分も一部のような気がしてそれでも遠のいている気がして。取り巻かれているようで、誰かを取り巻いているようで、でもどちらにも属さない第三者の様な気もして。
容姿だとか背丈だとか、そういった身体的な問題とは違うとは思っていた。ただ遠くからそれを眺めているだけの自己満足に浸っていたいという気持ちが一番正しいのだろう。視線がこちらに照射されることはなくても、連なる横顔と雰囲気を大きな図として捉えることで十分に楽しめていた。思い返す記憶を同時に描くように随分と懐かしい。
最初は取り巻きどころか面と向かい合う背丈の低い生き物と過ごす日々から始まったのはどれだけ前の話なのか。自分の歳と同様にすぐに思い返せない。灯る炎に今でこそ儚さを感じることができるが、当初はそれどころではなく大喜びで相手に突っかかるだけだけだったのが今では立場が変わってしまったことはどこか寂しい。
腰にまで満たない存在がこっちの頭に手を伸ばすように唐突に身長が伸びた時には驚いた。驚いたというより喜びによっている感触で、そんなころには横にいくらか別の面も並んでいた。そんな時はまだ身長が伸びるなんて思ってもいなかったが、一層慎重の高い存在に化けた時には随分と驚いた。背丈もさることながら体格は図分と大きくなり数倍になっていた。
指摘した瞬間に星空を昼間から見上げることになった。助けてくれるような存在に取り囲まれながらも、誰一人そうせずに笑い飛ばされていたなんて時も最早一ページにしか過ぎない。自分という存在がかき集めてきた集団もいつの間にか彼女との集めた集団に代わっていて、彼女自身も随分と面倒見がよくなっていた。
気配りだとか、そういうつもりなのか、確認を取ったことがないのでわからないことは事実としても、ムードメーカーの様にメンバーの士気を上げたりすることに貢献してくれていた。
先に彼女がいたからやらなければならない自覚あったのか、彼女は周りを引っ張り束ねて軌跡を描いてきた。ここまで来た自分という存在も軌跡を刻んできたのかもしれないけど、すべては彼女の後ろに連なっているのかもしれない。
特段それが妬ましいとかはなく、こうやってたくさんの存在が取り囲むこの空間が落着けるというだけで、作り上げることができたという事だけで満足だった。そんな第三者の立場からわざわざ円の中心へと引き込んでくる腕が伸びてくる。
「何しらけちゃってるの。」
この乱雑な態度で女を語るから彼女は質が悪い。でも、衝撃が目覚めさせたのか、それとも注目がこっちに集中したからなのか、周囲の声が聴こえてくる。中心点が二個あるような円を型どる。不器用でも円として存在できるバランスを崩さないことが一番の幸せなのかもしれない。そんな団欒を楽しんだ。
「そんな顔してどしたの。」
結局彼女と並ぶのがお約束なのだろう。お馴染みの流れに特段の感情も浮かばずに考え込んでいた。反応を示さないこちらに彼女は面白くないのか、爪先でつつきだす。普段なら突き刺さって即死は間逃れないのだろうが、殺意をもって接してきているわけではない。それでも痛いものは痛いわけで、やめろと頭をかきむしった。
「全部終わったんだなって。」
「もー、いつまでそれいってるわけ。」
背中にスイングをかまされて、前のめりに姿勢を崩す。彼女の尻尾の大きさならホームランもさほど難しくはない。それがこれだけでおさまっているのだから加減はしているのだろう、痛いものは痛いが。姿勢を整えると彼女は立ち上がっていて翼を羽ばたかせていた。風圧が髪の毛を巻き上げるのを手で押さえた。腕をぐるぐると振り終えて体の部位が動くことを確認し終えたようだ。
「あたしはまだまだあると思うよ。ここが始まりなだけで。」
意味ありげに言われたが、別に正面から受けることもできた。確かに頂点をとったとはいえ、一定の区域のなかでの話で、見渡せばその視界よりも外に広がっている。今は単に一時の休憩として実家に戻ってきただけのことであった。だから、始めようと思えば次のことへ進むことは簡単だった。
「そう言えば始まったのもこんな日だった。」
「へー、覚えてたんだ。」
上を見上げたまま彼女は感嘆の意を溢した。言われてみれば自分でもよく思い出せたとは思う。始まりだとか、キーワードがなければ記憶から掘り起こされることはなかっただろう。忘れ去ったわけではなくて、そこに存在しているのに使わないせいで、思い返さなければ埃をかぶったままなのだろう。特段なにかしてきた記念日でもないので、何回もこの日付を跨いできた事が今になれば不思議である。
「お前も随分成長したよなぁ。」
「ちょっと、そういう年寄りみたいなのやめてよ。その時からいるあたしまでお婆ちゃんじゃないの。」
「こんな元気なのが歳なわけないだろ。」
ようやくしんみりとした空気に風が差し込んだ。湿気を笑い飛ばしあった。
「やっと調子でたんじゃないの。」
「そうかもな、すまない。」
「そういうのはあたしにはなし、でしょ。」
どうもしんみりしたのは彼女の肌に合わないようで、さっさと取り払いたかったのかもしれない。
「あたし、先にもどるから。」
そういって、見かけにもよらない軽い足取りで背中を遠退かせていった。ただはっきりと炎を揺らめかせながら、寂しく灯っていた。
次の日は何だか白々しかった。覇気が無くなったと言い換えればいいのか、適当にあしらわれているような感覚を拭えない。はっきりと無視されているわけではない、返事は帰ってくる。だけどそれは本心でないような、未完成な言葉なだけで手抜きと言わざるえない。心ここにあらずとぼーとしているような腑抜けに、どう対処すればいいのか分からずに、声をかける事さえも徐々に躊躇われていく。
話している横顔は何ともなくて普通に接しているせいで、余計に避けられていることが際立つ。思い当たる原因どころか、特段目立ったアクションがなかったせいで何をどう謝ればいいのか、そもそも謝ること自体が正しいことなのか。情報の不足によって招かれる手札不足に足を止まらせて、遠目に眺めることしかできないでいた。
昨日までの団欒とは違って、焦燥に駆られてなくしたものを探すのに似ていた。どうしようもないし、何かできることもない。ただわからないことを手探りで探すことしかできない。許せないような怒りではなく、もっと簡単に焦っているだけで見えていないものに手を伸ばそうとしていた。その先に何があるかも知らずに。
「お前、何か気にしてないか?」
結局切れるカードは一枚しかなかった。夕暮れに落ち着いた時には彼女の顔も影に隠れていた。だからどこを見ているのかわかりにくかった。顔が写っているのに、何も読み取れない。白紙を眺めているのに似ていて、いつも何か書いている彼女ではないことが不気味で。
ある意味恐怖じみたものが背中を這っていたのかもしれない。そういうことをしないだとか、そういうことはありえない、そんな言い分は信頼だとか常識だとか不定形な概念によってしか保証されていない。今この瞬間にでも獰猛な牙を秘めた口元から、その権化を突き立てられることになれば無傷ではすまない。そんなことをしなくても炎であぶるだけで死を招き入れることなど彼女にとっては容易い。
現実味のない話でも夕暮れのように微かにありえる淡い可能性、彼女の無表情とはそれさえもかんじさせるぐらいに気味が悪かった。彼女が尻尾を動かすだけでも身構えてしまう。そのまま尻尾を自分の顔の近くで固定すると、先に灯された炎は夕日よりは激しく燃えていた。何の不思議もない火が生きているだけで、色に特徴がなければ何か見えるわけでもない。それでも、彼女は目をそらさないでいた。
その奇怪な行動を理解できないでいたせいか、ただ次のアクションが起こるのを待つことだけしかできなかった。先に動いてしまうことで何か反射的に撃墜されてしまいそうな気がして、どうしてもためらわれた。
彼女もどうしても動きたくないのか、顔すらこちらに向けてくれない。その言い訳のためにわざわざ尻尾を反対側にもっていったのだろう。彼女の背中に責める言葉なんてかけれるわけもなく、ただ待つしかできない。あとどれだけこのままいるのか、わかりはしない。
「気にしてない。」
これだけ間をおいて、あまりに単純な嘘に逆に言葉を失った。こっちを見て話せよと、言葉と同時に肩に手を伸ばして正面を手繰り寄せようとした。けれども、力及ばずで彼女は動かない。
「何にもないっていってるじゃん。」
頑なな態度ですべてを弾こうとする。役者がかった演技とは遠く、単純に嘘をつく事が下手なだけでしかない。さっさと肩の手を振りほどけばいいのに、彼女はそれはせずにただ反対を向いているだけ。
中途半端な態度にもやもやして、それでも何とか動き出して打開したいけれども、放っておくことはできないのにどう声をかけていいのかわからなくて、どうしようもない感じで彼女の肩に手をおいているだけだった。
「だって。だって……閉まっておけたのに。」
何分続いたのかなんてタイマーもなしに知りえない。ただ、叫びそうに震えていた彼女がそっと呟いた。全てを手渡し終えていないかのように、まだ震えているのが肩を通して伝わってくる。
大きな背中が随分頼りなくて、影に沈んでいるその様は心を不安にさせた。そんな闇に手をさし伸ばしているつもりにでもなっていたのかもしれない、手を離さないでいたことは。
「あたしは……私は、」
振り向いた彼女はどうしようもなく情けなかった。でかいだけで、昔と変わってなかった。昔は足にしがみついてくるだけだったのが、抱き枕みたいな扱いを受けることに変わってはいた。こっちが両手を伸ばしてやっと円を作れるぐらいに彼女は立派だった。
零れそうだったものがあふれ出ているようで首筋が生温い。そんな温度が悪い感じはしなくて彼女が叫び終えるのを待った。壊れそうなぐらい力もなく、こちらに掴んですがるのが精一杯な彼女をただ支えることが限界だった。上着も同じように悲鳴を上げていたが、かすれてよく聞こえなかった。
あとこのままどれだけ時間をかければいいのか、かけた時間の割に一文字もかけていない解答用紙のような頭では何も行動を起こせないでいた。目の前にあるシャツにうずくまる頭が目線を交わしてくれるまでそっと頭を抱えてやることしかできない。こんなにも凶暴な身なりで、ここまで子供っぽく泣かれてしまってはかける言葉も見つからない。いつもみたいな冗談ですら通らないような重い空気に言葉が詰まって飲み込んだ。
「あんたが何もしないなら、このままいられるならって思ってたのに。」
彼女がぼそっと言った愚痴を拾うだけにした。言いたいことを言わせることしか何となりそうになかったし、わざわざ遮ってまで彼女と溝を深める気は毛頭ない。頭を撫でながら彼女が落ち着かせ続けた。
どれぐらいのことを聞かせられたのか、抽象的すぎて主語も述語も何にもない断片的なつらなりはただ耳からはいってぬけていくことしかなかった。彼女が辛かったという事しか見てわからなかったしそれで十分だった。彼女から流れる物は純粋な心であって、演技ではないことだけは確かだった。
結局彼女とはまともに顔を合わせることもなく別れてしまってから何が起こったのか自分でもよくわからなかった。とりあえず自室に戻ってベットに倒れ込んだ。天井から差し込んでくる光に変な眩しさを覚えた。ひょっとしたら疲れて眠いのかもしれなかった。
彼女に付き合った時間はどれほどなのかわからなかったが、彼女の背に映る炎が随分明るく感じれるぐらいには日が暮れていた。それだけの時間を費やしてしたのだから、体力も消耗していた。けれども、目をこすることもなく不思議と眠気はしなかった。
受け取り忘れたのか、何か足りないような違和感があった。中途半端な幕引きに、あの場では背中を見送ったものの今思えば何もわからなかった。あの瞬間には彼女を優先したものの、自分自身も言いたいことがあったような気がした。そんな思考が巡りだすせいで何度も寝ている向きを変えた。
ベットをごろごろと転がりまわりながら何度も同じ所を行き来しているようで、迷路の中を彷徨っていることとあまり違わなかった。ただ違う事とは明確なゴールもなくただ転がっている事だった。この行為には何の生産性もなく、意味すら持たせることが難しいという事はわかっていた。そうしてまでも納得を見つけたかった。
布団を荒らす地味な音が響く中で、それを裂くように通りのいい音が別に響く。ドアを誰かがノックして振動しているようだ。誰でもよかったし、見当もついてなかったりして、考えもなくドアを開けた。
「さっきはさ、その中途半端でさ。」
前触れもなく扉が開いたからか準備がいまいちだったのかは知る事はできない。彼女の狙いが定まっていないような物言いはらしくないし時間がかかりそうでもあったので、部屋の中へとりあえず入りなおした。扉をくぐるのに翼が邪魔だった彼女は体から中に入ってから、翼は畳んで後ろに連なった。
彼女が入り込んだせいで随分と部屋が狭くなってしまった。それだけ彼女の存在感というものは大きい。けれども、変黙り込んで威勢のない彼女はただの大木なだけである。以前と視線を泳がせるせいで話をきりだせない。こういう時に言葉が重なるのが一番空気を濁らせることになる。
「あぁもう、何で何にも言ってくれないの。」
カウントダウンもなく爆発するものだから反射的に謝った。基本的に受け身な立ち回りでいるせいで他人の顔色を伺っているのが板についてしまっていた。話しかける努力をそこまでしてこなかった事を叱責されても仕方がないと頷けたが、タイミングが理不尽すぎてそういう言う身では首をかしげてしまう。
「いっつもそうやって何にもしないくせに……」
さっきまで話を聞いてたのに弾切れを起こさないのだろうか。正座で叱られるよりは幾分ましかもしれないが、マシンガンに撃たれ続けているに違いなかった。
数分間に渡す説教を首を同じ方向に振りながら聞き続けていた。
「そうやって聞くだけなら、そうしててくれたなら、閉まっておけたのに……」
急に球速がくるって変化球が飛び出してくるから、直撃コースなのにうまく避けれずにぶつかってひるんでしまう。空気をそういう流れにしておいて逆風をふかせるのはどうかと思いってしまう。そんな揚げ足取り染みた思考が過る時点で真面目な空気に馴染めていないのは間違いないのだが。こんなことを口出してしまえば、冗談抜きに骨まで灰になりそうなりそうなことも間違いなかった。
こっちの内心なんて察せるようなタイプでも能力でもない彼女は話を中断する気はないのに言葉が続かないでいた。どちらかといえば次の一枚を探しているというより、言葉を詰まらせているように見える。凹凸が激しいこの流れで次に何が打ち出されるのか構えることはできても、予測ができないせいで避けることは叶わない。だからダメージを受け流せるように次の手を考えて回答を準備していた。
お互い様子見をして後出しじゃんけんもいいところである。いつも彼女の行動に合わせるムーブしか持ち合わせていないことが時間だけを浪費させる。フォーメーションを組んだところで、初動がないと二枚目三枚目とカードを切っていけない。引き金を握っている彼女がためらっているのはわかっていても、それを奪って引くほどの勇気がなかった。
妙に落ち着きのない空気と警戒して張り詰めた空気の境界線を、遂には彼女が超えた。空気を振動させてではなく、もっと物理的に境界線に出来上がった壁を壊した。構えてはいたけど体をはって受けることには変わらなかったようで、急に視線を合わせてきたかと思うと彼女の顔がいつもより目の前にあるように感じた。何か反応を返そうとしたけれども、何も出なかった。
唇は少し乾燥していたので潤いを取り戻すのにはよかったのかもしれないが、それ以外の部分は引火してしまって熱い。彼女の中で凍っていたものが溶けだして、抑えきれなくなった炎が幾分か燃え移ってしまったようであった。時間は短く軽い物であったけれども数秒が何時間にも感じれるぐらいにスローモーションで、今なら銃弾をよけることすらできてしまいそうだった。
「あたしを……女の子を泣かせたんだから、責任とってよね。」
色々と振り絞った彼女もすぐに限界がきて、また距離を向いてそっぽを向いてしまう。台詞の割に逃げ腰というか、照れているというのは彼女らしくなかったけれども悪い気はしなかった。
けれども、反応を待っていたのにオセロの盤面端を責める一手には返せるものがなかった。結局空気の色が変わっても本質的にはいずらいに変わりなかった。どうかせばいいのか考えているのに、テストの解答用紙みたいに真っ白でペンが動かない。何でも思い当たる事、勉強していた所、気付いたり結び付けれたりできれば言い訳っぽくても解答欄を埋めることはできる。丸がもらえなくても三角を取りに行くことだってできる。予備知識あればなせることであって、装備もなければ分かりもしない行動に回答なんて返せるわけがなかった。
慌てて横目でしか見れなくなってしまったこちらに代わって、彼女は少し楽しそうに正面を向いてくるようになっていた。そんな彼女が立ち上がり動き出したせいで止まるまでこちらには動けそうにない。身長にさほど差がなくても図体は随分と大きいせいでこの部屋で動ける範囲なんて知れていた。だからこそ次に何をするのか的を絞れずにいた。
背後に回ったあたりでそろりと体を下した。それで彼女の体に抱き寄せられた。べたべたと触る事もなくなっていたこともあり、思いもしない弾力に感想を述べようとした。けれども、彼女の方が先だった。
「あれ、何してるのかな。こんなにしちゃって。」
声のトーンが真剣だったさっきとは変わって、彼女はズボンを下し始めた。慌ててその手を払おうとしたけれども力勝負で勝てるほど安い勝負ではなかった。抵抗しているのに何の意味もない。無理なりも邪魔に感じたりして手を止めてくれればいいのに、減速すらしない彼女の力強さに抗う術なんてどこにもなかった。一層その爪で一気に裂いてしまえばいいのにわざとらしく焦るのを楽しんでいる。
邪魔なものを取り除いて出てきたものを彼女は掴んで動かしだした。どこからそんな知識を持ち出してきたのかという疑問を解消する前にもっと他にやるべきことがたくさんあった。
「男ってほんとにすけべしかいないんだから。」
「おい、馬鹿やめろって。」
「遠慮しなくていいんだって、ほら。」
こういったことは他人とする経験を持ち合わせていなかったせいで慣れていない。彼女のが上手いとか下手とかじゃなかった。目の前で彼女の手が確か握って扱っている、その事実だけで十分だった。彼女も凹んでいたいたのが演技であったかのようにいつも通りにいう事を聞かない。押しが強いというか無理やりにテンションの高さだけで押し切るのが彼女らしい。
他人の手のひらの温度の違いを直に受けながら、神経が徐々にそっちにより始めていく。彼女の腹部にもたれ込むようになってくると彼女の横顔が見えて、一瞬口元を舌が這った。快楽ではなくても娯楽に酔っているような、この瞬間に夢中になっていた。
だから加速することがあっても止まることは全くない。やめろだとか壊れたブレーキを踏むことにもあきらめがついてくる。彼女に委ねることでどうにでもなれといった感じであった。身を投げ出しても感覚は切り落とせないせいで、息遣いも荒くなってくる上に体中も熱くなってくる。さっきの彼女から受け取った感情とはまた違って。
爪を当てないように手のひらだけで扱ってくれるせいか、随分柔らかくて密着してくる。擦れる動作にも液体が微かに漏れ出してくるせいで音を立て始める。感触の悪い液体が彼女の手にも絡まり始めるが、振りほどくこともなく動作を休めない。むし滑りがよくなって彼女を助けてしまっているまである。
送られてくる熱量をため込みながら必死でこらえているのに対して、彼女はそんなことを知らずにまだかと上下に動かし続けた。熱量がどれだけ保存されているのか数値化する方法はないのだから伝えようがない。それにこうやって言葉で伝えても彼女は笑顔で聞き流している。大丈夫と根拠もなく、ほらほらと囃し立てる彼女の姿勢は取り合ってくれる気はいようだった。
止まらないものだから蓄積されていくものは蓄積されていくし、抱え込むにもキャパシティーが存在する。どこかで頭打ちしてしまうもので、器に注ぎすぎたらあふれてしまう。栓をしていたってため込めば破裂してしまうのだから、同じようにしてため込んでいた熱量を乗せて彼女の手の内から弾けだした。拳銃を構えておきながら、いざ引き金を引いてみれば玉が飛び出たことに驚く彼女の手のひらにも反動でいくらが別の液体が絡まった。
「これ、どうするんだよ……」
「まだまだこれからでしょ、男なんだからしゃっきりしてよね。」
長い首をのばして仕事を終えたばかりなのに咥えこんだ。変に液体まみれなのに躊躇うことはしなかった。さっき終えたばかりのせいか、それとも彼女の口の中の居心地の良さのせいかさっきよりも随分強く感覚を感じる。細長い口に丁度合うかのように伸びるそれを彼女は根元から咥えこんで、舌を動かし始めた。最初は大きさがないせいで舌を動かすだけでなんとでもなるキャンディーのような扱いを受けていた。
思ったよりざらついていて手よりもよっぽど粗い。そんなものに絡めとられて身動きがとれない。丁寧に根元から先まで先ほどの汚れをすべて拭き取られていくかのようであった。そしてそうするたびにまた快楽に悶えることになる。間隔は切り離せないのだから仕方がなくて、すこしエンジンがかかるには時間がかかるものの大きさを取り戻そうと動き始める。口の中で膨らんでいっても彼女の口の大きさには及ばずに、根本まで綺麗に収まりきっていた。
それでも少しは舐めずらくなってきたようで彼女は遂に頭を動かし始めた。急に動作が激しくなったものだから慌てて彼女の頭に手を向けた。ここまで激しいのが来ると流石に自分でも歯止めを利かせれる自信がなかった。だから彼女を阻もうとしたが、すぐに両手の根元を片手で捕まえられてしまう。
「やりにくいでしょ、邪魔しなくていいの。」
にらみを利かせて怒られてしまったせいで謝りかけたがそこは踏みとどまった。そこから騒ぐことしかできなくなってしまったわけだが、彼女の耳には当然はいっていないようだった。発せられるよりも鈍い、彼女の運動から出てくる音の方がよっぽど彼女の耳に焼き付いているようであった。
手のひらとは違ってもっと熱を持った空間でかつ感触のあたりがいい中で、どれだけの耐久マラソンを続けられるのだろうか。おまけに絡みついてくる舌という生物に加えて、彼女の生暖かい唾液まで絡み合ってくる。それに奥から漏れて当たってくる淡い吐息が先を撫でてくるせいで余計に気分が昂る。
彼女の中では色々な液体がまじりあってもうどうなったかわからなくなってしまっているのだろ。実際こちらも生温い何かが付いていることがわかるぐらいで彼女の口の中はブラックボックスも同然だった。そんな中で最大にまで膨れ上がったものは、これ以上大きくなることができなくなってしまったのでまた小さくなろうとする。
そのために熱量を発散させようとするのだが、それは彼女もわかっていた。だから膨張が終わったことを感じ取ると口を話して背後から離れた。もちろんおおきくなったのを縮めないように片手で僅かに扱いながら。反対に持たれるクッションがなくなってしまったせいで、重力に引かれて床に背中をぶつけた。
丁度正面から彼女がこちらを見下ろしている。一番突き立っている部分を動かしながら、どうするかわかっているのか楽しそうに聞いているようだった。見てわかるのにそれでもわざとらしく。
「引き返すならここなんだぞ。」
「何考えちゃってるのかな。そういう事を思いついちゃうのは期待でもしてるのかなっ。」
そういって彼女はまたがってあいている方の手で自分の両足の間を広げて見せる。持っている方の手をしっかりと固定させて、開けた入り口に入れ込んでいく。オレンジに白色の体に急に目立つ色の割れ目が出てきて、色がまた違うせいであと何色か隠し持っているかとも思わせられたが一番惹かれるのはこの色しかないのだろう。
彼女は突き立つのをその入り口から体にねじ込んだ。体格の割には苦労して受け入れずらそうであったが、逆に体格通り肉付きがいいのかもしれない。口の中よりも密接する空間へと飲み込まれていく。ちょっと苦しそうに息を詰まらせた彼女はこっちの視線に気が付くと笑顔になって誤魔化した。
彼女の体重がいくら地球の重力に引かれるといっても、別種の液体と絡み合いながらでも、すんなりと差し込めるわけではなかった。重さを肉壁が拒んでいるようで、そこを無理やりに力でこじ開けようと彼女は少しづつ体を進めていく。あまりこちらは辛くはないけれども彼女の表情をみて勝手に痛み分けでもした気になっていた。一方で彼女は心配をかけまいとして何とか奥まで入れ込んで見せた。
「やっとあたしも楽しめるね。」
彼女の両足の谷間と股間が接するこの瞬間にある種の達成感を感じたのか彼女は深呼吸をした。そして両手をこちらの上半身に当てて、人工呼吸をするみたいに体を振動させた。さっきまでの隙間のある空間とは違って全部が一気に擦れ合うせいで、どれだけ耐えれるか不安になる。けれども違うのは彼女も同じで、彼女にも限界が存在している。今回はお互いに体力勝負なのである。
彼女は何度も自分の中に突き当てる動作を取りながらも、どこか余裕そうにこちらを見下ろしていた。こちらに早くしてほしいと急かすかのように勢いだけが増していく。もちろんすべてを受け止めることしかできないから一方的にされるがままである。体同士がぶつかり合う音だけではなく、絡み合った液体が粘液にも関わらずに勢いよく弾けていた。それほどまでに彼女の行為は加速を見せていた。
それは上半身に当てられた手からの振動からも伝わってくるし、下半身からこみあげてくる感覚からでも知りえる情報であった。けれども表情だけは崩さないでいる彼女はどこか余裕なのか。勝負に勝ち誇ったかのような表情で見下ろして彼女だけのペースでことが進んでいく。それに睨み返しても、かっこ悪いとからかわれるだけなのでやめておいた。これ以上性別が逆に映ってしまうような情けない点を増やしたくはなかった。
彼女も流石に息遣いが荒くなってきてこちらにも当たるぐらいにはなっていたけれども、全力で走ったら息を切らすのは当然のことであって追いつめているような感じはしない。何一つとしてリードすることなくされるがままでなのである。押し寄せてくる快楽に身をゆだねることを強要されているといっても過言ではない。別に悪い気はしないし、むしろこのまま浸るだけでも終わることはできるだろう。彼女が満足がいくかどうかなんて知りえないし、表情だけは楽しそうである。
擦れる音だけが響き、お互いに一言も喋ろうともせずに口を塞いだままで息だけを楽していた。口元から飛び出そうになる快楽をかみしめながら、どちらかが尽き果てるのを待っていた。押し寄せる快楽はお互いに蓄積されているのに彼女は変わらずに走り続けている。それをおかしいと思いだしたことがきっかけか、彼女が自分のペースで走っているだけなのに気が付いた。そういってしまえばずっと気が付かないのかもしれないが、彼女は都合のいいような加減を調整しているだけで慣れてしまえばそうでもないという事である。
不感症などとふざけるつもりはなくて、突き立ったものも役目を終えるまでは膨れ上がったまま。沸き立つ感情を叫んでしまいたいという気持ちもある。けれども、そんな意思を振り切って彼女を押し返してみた、物理的に彼女を持ち上げるかのように。両手を支えにしている彼女も、逆にそこを支えにしないといけないぐらいには快楽をため込んでいて精一杯だったようで簡単に押し倒せなくても、横にバランスを崩させるぐらいのことはできた。彼女も予期はしていなかったのだろう、もちろんこちらを潰さないように両手にはそこまで体重をかけていなかったというのもある。
けれども前方のバランスを崩して床に転げ落ちたせいで驚いて声を上げた。そこにすかさずに上を取りにかかる。彼女の両足を両脇に挟み込んで、空気に冷まされないうちに自分のを再びあるべき場所へと戻そうとする。
「ちょっと、本当にそれだけはダメだって。」
「今更いう事じゃないだろ。」
強行突破を試みたが、最初とは違ってすんなりと中へ入り込んでしまう。そしてこの体勢であるからこそ身動きがとりやすい。今になって慣らすだとか、相手に気を使うことも必要性が感じられないせいで一気にスピードを上げていった。彼女が攻めるときには体勢的に無理があったのかこっちが攻撃に出てみればやれることはまだまだたくさんあった。さっきまでよりも、もっと多くの快楽を一気にかき集めれそうなぐらいに大きく手を広げれそうな、もっと遠くのものまで追い付けそうな。それにさっきまでの彼女が悶えている表情もまた一興であった。
慌ててもがこうとしていた彼女はこちらが動き出すなり、異変に耐えかねて歯を食いしばった。自己満足よりももっと大きなものを与えられてしまって耐えかねているようであった。顔をしかめて、顔を赤らめていた。視線を全く合わせようとせずにそっぽを向いてしまっていた。そんな分かり易いところが愛おしいのか、彼女を少し崩してみたくなるのは曲っているのか。彼女をもっと溺れさせたいという欲求に駆られていく。それが体を突き動かしていく。もちろん反動も大きくなり、彼女の中で随分と動きやすくなっている半面で限界もまた近くなっている。
彼女の方は遂に耐えかねて自分の顔に両手を当てて少しでも視線を遮ろうとする。そんな手をあっさりと振りほどいてみせると彼女は睨み返してくる。
「やめなって……感じてるの丸わかりになるじゃん……」
息を何とか整えて出てきたが、睨み返すことしかできない言い訳。彼女も精一杯に堪えているようであったが、お構いなしに返事を返さずに続けていく。彼女は一度口を開けてしまったせいか遂に言葉以外での叫びが漏れ始める。塞ごうとしてももう塞いでいる余力がないようでただ泣き叫んでいた。さっきまでの子供じみたような声じゃなくて、色っぽい叫びだった。同じように叫んでいるのに同情じゃなくて欲情してしまう。本能に響いてくるような叫びにリミッターなんてかけている余裕なんてない。
さっきまでしていた物音をすべて上書きしてしまうかのような彼女の甲高い声だけが響いていく。激しく動いて立つ物音なんて耳に入ってこない。頭にまで響く音に、体中を駆け巡る快楽に埋まっているこの瞬間を至福といいきれる。彼女の魅せてくれる表情もこの瞬間だけのものなのだろう。そうやって大切にしたいと思うほど加速して、自ら潰していく。限界に近づいていくことを言葉に錬成し損ねたからこそ、彼女に身を寄せてみた。それぐらいに頭が動いていなかったのかもしれない。
彼女も何となくわかったからなのか、両腕でそっと抱き寄せるだけで跳ねのけようとはしなかった。だからそのまま彼女の中で限界を超えることしかできなかった。それがどういう意味で、何がどうなるのとかそんな細かいことは頭に残らないぐらい頭は真っ白だった。お互いに静止することでようやく息を整えることができるようになる。それでもなかなか収まらずに息を互いに交わしてるような時間が過ぎ去っていく。広がる沈黙と共に訪れる達成感にどう言葉を出せばいいのかわからなかった。
「そのさ、あたしは本気で言ったんだからね、その。」
今日の彼女のペースには本当に凹凸が激しくてよくわからなかった。すべて本心なのだからこそ、今まで感じることのなかったものに困惑しているのかもしれない。それは彼女も同じようで、向き合ったばかりのもに歯切れが悪いようだった。それでも気持ちと向き合うとしているのか、気持ちの方を向いてこちらを向いてはくれない。
「あたしはさ、そのあんたの。私は貴方のっていうのでいいんだよね……」
言葉の意味よりも最後に横目に合わせる表情の方が印象的だった。


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Last-modified: 2016-12-10 (土) 04:34:13
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