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第十四回短編小説大会参加作品 R-15注意です。
by LuckyAsu
高校時代から付き合っていた彼女と別れた。部活動が一緒になり切磋琢磨しているうちに彼女が部長で俺が副部長という立場になり何となく付き合い始めてあっという間に大学生、将来があるからと軽く振られてしまった。ショックで3日ほど寝込むなどした後メンタルが回復し就活に励み晴れて社会人になった。
実家暮らしから就職先の近くに引っ越す準備、荷造りをしていると懐かしいものが沢山出てくる、小学校の頃の賞状やメダル、図工で作ったおもちゃなど沢山、とりあえず写真を撮って段ボールにしまい親に任せておいた。その中でもちろん出てくるのが綺麗に整頓されたゲーム機が収納されている箱、懐かしいタイトルを見ると遊びたくなってしまう、大学生になってからゲームもスマホでプレイすることが多くなったからこういう昔から遊んでいたゲームの続編とも縁が無くなってしまっていた。荷造りを中断して電源ボタンを押してみる、まだ充電が残っていてそのまま起動することができた、差し込んでいるカセットとしてポケモンが表示される、昔は彼女といっぱい対戦したなぁ……タイトル画面を飛ばしてデータ確認、データは消えてない、孵化ロードから育て屋に入りボックスを確認する。いるいる共に戦った渾身のポケモン達が沢山! 1軍ボックスと2軍ボックスに分けていている事に懐かしさと霞んでいた記憶が晴れる様な気持ちよさを感じる、案の定奥のボックスは孵化厳選で出てきた良個体と思わしきポケモンで溢れていた。
ボックスを一通り一周すると厳選個体ではなさそうなポケモンが入ったボックスがあった、恐らく友達と交換したであろうポケモン、親の名前を確認するために詳細をチェックすると出てくる出てくる懐かしいトレーナーネーム、ちょっと涙が零れそう。
そうしてゆっくりと十字キーして確認していると彼女のトレーナーネームが付いたシャワーズが現れた、性格ひかえめの5V雌で実戦で使えそうな構成をしている、俺もシャワーズが好きで彼女が育てたシャワーズを交換してもらったんだっけ……ポケリフレを起動してシャワーズを撫でてみる、嬉しそうに無垢な笑顔を返してくる、かわいい……そのままレポートしてゲームを閉じ荷造りの作業に戻った。
会社の飲み会でポケモンの新作アプリが出たことを聞いて顔を赤くさせ終電に揺られながら新作アプリをダウンロードしていた。チュートリアルを終える頃には自宅に到着してゲーム機を起動した、スマホとゲーム機を連動させた特別な機能が売りの最新作に彼女のシャワーズを送りたくて仕方がなかった。
「準備完了、スマホと通信ってすごいな……」
画面の指示に従って操作するとスマホの中にシャワーズがやってくる。これでいつでも一緒と考えるとちょっとむふふとベッドに横になりゴロゴロと身を捩る、ポケリフレの感覚でシャワーズを撫でてみるとあの無垢な笑顔を返してくれた。
「んんぅ……ご主人様気持ちいいですぅ……」
ん? 落ち着いた幼い声がスマホから聞こえてくる、動かす体をぴたりと止めて鼻先に触れてみる。
「んゅ、そこは……はふ、鼻ばっかり触らないでください~」
鼻に触れている事を認識するほどには高性能と言う事なのか分からないが撫でると声で反応してくる、AIの発展が著しいとは聞くがついにここまで来たかと感心してしまう。
鼻ばっかり撫でるのはかわいそうなので頭を撫でてあげる、シャワーズの頭部には3つのヒレが付いておりそのうち2つは耳が付いている位置に生えているが3つ目のヒレは頭部に付いているので少し撫でるのが難しい、ヒレを撫でても良いのだろうか……
「ご主人様がいっぱいなでなでしてくれてしらたきは嬉しいのですー」
「そうか」
「えへへぇ」
無意識に言葉が漏れると可愛く首を傾げながら無垢な笑顔を見せてくれる。しらたきというのは彼女がシャワーズに付けた名前で昔は食べ物かよと思ったけど今見るとかわいい名前に聞こえてくる。
ヒレがぴくぴく動くので少しだけ触ってみる。
「ふふぁ、ヒレ、やっと触ってくれたっ」
「触っていいのか?」
「うんっ! ヒレ撫でられるの気持ちいいんだよ」
「それなら、左右のヒレも触っていい?」
「触ってくれるの? ではご主人様、気が済むまでどうぞです」
自然に会話が成立し画面の近くまで顔を近づけるしらたき、両手の親指でくりくりと左右のヒレを愛撫する、目を細め口が半開き、下から上へマッサージをする様に撫でてあげるとにぱぁとあの無垢な笑顔を見せた。
「ご主人様気持ちいいです!」
そう話すしらたきと目と目が合う、ベッドの上でスマホを宙に上げ操作しているからなんだろう、ベッドに寝転がる俺とその上を跨ぐしらたきの様な。このまま抱き着きたいと思ってしまった。
「しらたき、抱っこしてもいいか?」
だから口にする。無理なのはわかっているけど聞きたかった。
「ふぇ!? 抱っこですか? 抱っこは……ご主人様ベッドに横になってるよね、うんうんそのまま布団被って」
言われるまま掛け布団の中に入る。
「そうしたら目を瞑って私の事を想像して」
想像した。青くてかわいくてむっちりとした魚臭い半魚半獣のお姫様。
「ぎゅっとするの」
冷たい感触がする、ぎゅーっと抱きしめる。
「ご主人様ぎゅーつよい! そうそう力緩めて……私はいつも一緒だからね……おやすみなさい」
しらたきにそう言われるままに眠りについてしまった、きっと夢の中でしらたきを抱いている、ぷにぷにを堪能している。
「ご主人様起きてください、朝ですよー会社に遅刻しますよー」
ふにふにと布団越しに按摩をされている気がする、ふにふにをしている正体が布団に乗っかって来て今度は俺の頬をふにふにする、ひんやりしてぷにぷにの……前足。
「んぅぅ……しらたき……」
「あ、やっとご主人様起きたー、おはようございますっ!」
寝ぼけた視界の先には青色の半魚獣が無垢な笑顔で嬉しそうに尻尾を振っている。
「とりあえず降りてくれ」
「ごめんなさいご主人様、でもご主人様乗っかられるの好きだよね?」
「それは用事が無い時だけ、会社があるの分かってるよね」
「分かってますー、今日もご主人様は規則正しく遅刻せず会社に到着するでしょー」
しらたきが足元に擦り寄るように甘えてくる、洗面所に移動して顔を洗い歯を磨きクローゼットからスーツを取り出しさっと身支度を整える頃には丁度トーストが焼き上がっている、そこに今から焼く半熟目玉焼きを乗せてラピュタパンの完成、ゆっくりと食べる。
しらたきの事を彼女に伝えたくてラインを飛ばしてみたけど既読すらされない、こんなに人懐っこいシャワーズを見せたら喜びそうなんだけどなぁ……
「ご主人様浮かない顔してるね、既読スルー?」
「しらたきの元ご主人に今の君を見せたくて連絡したんだけど連絡がこなくてね、どうしたものか」
「会ってみればいいと思うよ」
きゅるんとした真ん丸おめめでさらっと言ってのける、今日は金曜日で飲み会を断れば夕方から地元まで電車で迎えそうだ、今時ビジネスホテルが開いてないことは無いだろう。
「ご馳走様、しらたき行くよ」
「はぁーいご主人様ー」
コーヒーをグイっと飲み切りしらたきをスマホに転送させ会社へ向かう、いつも通りのオフィスいつも通りの会議いつも通りの定時。
「先輩お疲れ様です」
「おう、今週も残業無し達成出来そうだな」
「はい! プロジェクトも順調で何よりです」
社内の休憩室にあるテレビから令和関係のニュースで盛り上がる音声が聞こえる。
「先輩も大事な人と一緒に過ごすんですか?」
「まあ……そんなところだ」
大事な人が俺を覚えているか不安だが定時退社して新幹線に乗り込む。
「ご主人様駅弁買った? 何かな、何かな?」
新幹線が出発するとシュウマイ弁当を開ける。
「ご主人様シュウマイ弁当好きだね、いつも食べてる」
幼い頃父親の好物でよく買ってきてたシュウマイ弁当、ご飯がぎゅっとしていてよく味の染みたタケノコが入った俺にとって特別なお弁当だった。
「しらたきは元ご主人に会って何したい?」
「んー、とりあえずすりすり……」
スマホの中で目を瞑りながらすりすりのジェスチャーをしている、ひかえめなのかよく分からない。
「何で、会えばいいと思った?」
朝に思った疑問を率直に話す。
「こうして私とご主人様が話すように面と向かって話した方が意外と話せるかなって」
「そうか、てっきり遠出する為の口実かと」
「ばれた? えへへー」
頬を赤くさせ嬉しそうに俯くしらたきはそっと画面に近づく。
「私も、ご主人様と大切な時間を過ごしたいんだよ」
目的地に到着し電車を乗り継いで地元に到着すると予約していたビジネスホテルへ向かいチェックインを済ませ部屋に入る、いたって普通のシングルベッドにスーツのまま寝転がった。少しだけぼーっと天井を見つめた後スマホを弄りシャワーズを自由にする。
「ご主人様おつかれさまー! お部屋だね、シングルベッドだね」
「今日はしらたきと一緒に寝るよ」
「ふふう、ご主人様私嬉しいよ」
ぴとりとしらたきは俺の頬にシャワーズの冷たい頬を擦り付ける、口元が触れ頬が離れるとおでこをこっつんこ。
「脱いで」
湿った吐息が鼻に触れしらたきの顔が赤く染まっていく。起き上がりさっと服を脱ぎハンガーに掛ける、ちらりとベッドに視線を向けるとしらたきはお座りをして前足をすりすりさせている。程よく服を脱いでベッドに横になるとしらたきが擦り寄ってくる、頬を赤くさせ少し汗をかいている。
「ご主人様、我慢……できなくてごめんね」
「しらたきは俺のパートナーだろ、気にするな」
両足で俺を跨ぎ真っ赤な顔で見つめてくる、ひたひたと汁が垂れシーツを湿らせ体を透き通らせる、艶やかで透明度の高い深海のマリンブルーが俺の体にのしかかりキスをせがむ、マズルが何回も口の周りを突かせようやく唇が合わさる。
「んふっ……んんぅ♥」
甲高い声をキスをしながら出してぴちゃぴちゃと舌を必死に舐めている、舌が溶けて唾液が増えたっぷりの潤いで口の中を満たす。耐え切れずに飲み込む水分はしらたきの水分、体の中にしらたきが貯まっていく、それを理解しているのかキスが気持ちいいのか分からないが蕩け目を細めて尻尾を振っている、もっと味合わせてやる。しらたきの口に舌を入れ獣の咥内を滑るように舐めまわす、清潔な口からは味一つしない、するとすればこのほんの少し甘い蜜はしらたきの味、飲み干す。
「ん”ゔゔゔ! ぷはぁ! しゅ、しゅわひゃいでぇ……」
あっという間に根を上げ顔を離すしらたき、その体はとろとろのぐちょぐちょ、頭のヒレの先からは大粒の水滴がぽたぽたと垂れ首元のシャワーハットに水が溜まっていた。
「沢山濡れてるね」
「はぁ……はぁ……ごしゅじんさまがすごいから!」
前足を宙にぱたぱた揺らしながらそう言う、発音がゆれゆれで不安定なのが見受けられてかわいい。首元がお留守、軽く触れるととぷんっと中に入っていく、ひんやり生暖かいしらたきの中。
「んん”ぅ……激しくしないで……」
そう言っても中をばしゃばしゃしてやると気持ちよさそうに鳴くんだ、指を開いて振ってみる、透き通った体がばしゃばしゃと泡立ちくすぐったそうに笑う。
「ふにゃあぁぁ気持ちいっ!、ご主人様きもちいいですううう♥」
恥ずかしげもなく声を荒げ身を捩らせている、そのたびに俺の体をびしょびしょに濡らしシーツはもうぐっしょり。ばしゃばしゃも楽しいけどこのまま抱き着いても……最高。
「ふううぅんゃぁ――――♥」
海の中にダイビングしたみたい、綺麗なしらたきの中身、奥の方は冷たくてとっても落ち着く、二心一体となって混ざり合っていく。もうしらたきの中に入っちゃってる。
背中を貫通してしらたきの中から出る、俺に代わって枕に顔を擦り付けているのはしらたきで自分の液体で枕をぐっしょりと濡らしている。
「ご主人様激しいーーすっごく激しいーー」
「悪かったって」
今度は俺の番、しらたきの頭のヒレの横に手を付き上から見下ろす。俺はそっとしらたきに体を重ねた。
地元は観光地としては並みだったので何となく浜辺に行くと丁度いいハイキングルートがあったのでしらたきと一緒に歩いてみている。朝の潮風が心地よいが生憎の曇り。
「ご主人様と久しぶりのお外ー!」
「嬉しそうだねしらたき」
呼びかけると嬉しそうに振り返る。
「だって最近お家とスマホの中ばっかりだったから、都会だと私が自由な場所はお家しかないもんねー」
ぺいっと舌を出して正面を向いててしてしと歩いていく。橋を渡って離れ小島に寄って返ってくるだけなのにしらたきがいると飽きない。
浜辺に出て軽く砂浜に寄ってみる、しらたきが前足で波をぱちゃぱちゃと触って遊んでいる。
「波なんて初めて見たろ」
「初めてじゃないよー! いっぱい波乗りしたことあるもん」
「ほんとー?」
「う、ううー。波乗りしてたのはラグラージだったよ、私は抱っこだったもん」
「元ご主人様ならもうすぐ会えるからな」
「もうちょっとお散歩でもいいかな」
元ご主人と会えるのに素っ気なく返事を返される。朝から観光しているのは緊張で早起きしてしまったから折角といった感じ。曇り空は晴れる気配のない、でも雨が降りそうな匂いはしない。
街中を歩いているとうどん屋があったので朝食にする、出てきたうどんはすごいコシにうまいだし汁、天ぷらを箸で押しこんで汁を吸わせ口元へ……旨い。だし汁を飲み干すころには時計の針は9時を回っていた、そろそろかな。
もう少しだけ電車に乗って移動する、しらたきは移り変わる風景を子供の様に窓に前足を置いて眺めている。誰も見てないしいいかな。
「はい、どちら様でしょうか?」
「突然すみません、ハルカの友人のユウキです」
スマホに写真を写し彼女と仲が良かったころの写真をインターホン越しに見せる。
「あら、ユウキくん大きくなったわねぇ……中に入るかい?」
「はい、失礼します」
少しすると彼女のお母さんが扉を開いてくれて家の中に上がらせてもらった。
彼女の部屋に入ると懐かしさがこみ上げてくる、机の上には彼女らしくゲーム機と通信ケーブルが置いてあった、あの頃は沢山通信交換に対戦したなぁ……
「しんみりしているね」
「ああ、懐かしくて」
彼女の所在地を教えてもらったので電車に乗りUターンをする。帰りの景色は興味がないのか俺の膝の上に前足と顔を乗せている、なんとなく撫でる。
「こうすればご主人様に撫でてもらえたんだぁ……」
「撫でてほしかったのか?」
「なんでもなーい」
ゆらゆらと揺れる尻尾に心を撫でられた。
「彼女、大切なの?」
「しらたきが彼女とか言うと不気味だな」
「不気味ってなにー」
「いや、ハルカとか、元ご主人とかそういう感じに呼んでたから……」
「そうですけどー、ご主人様を振った元ご主人様ってそんなに大切な人?」
「大切だよ、ずっと想っている、あの時手放してしまったのが惜しいくらい」
心がくしゃくしゃになりそうだ、会って詫びなくちゃいけない気持ちが募ってくる。
「私が、私が彼女になろうか……な」
「しらたきが……?」
しらたきの声が震えている、更にほんの少し水滴が垂れている。
「こんなポケモンみたいな見た目で言うのもあれなんだけどね……」
「気持ちは受け取っておくよ、しらたきは最高のパートナーだよ」
「そのパートナーってトレーナーとポケモンの関係だよね! ごめんね、大きな声出して……」
前のめりになったしらたきは俺の肩に手を回し、そのあと声を出すことは無かった。
「お買い上げありがとうございます」
花束を買った、久しぶりに会うならちょっとびっくりさせるくらいがちょうどいいかなって。
「綺麗な花束……」
「しらたきと一緒にプレゼント、なんてね」
「やめてよー、彼女がいらないって言ったら私が……なんでもない」
「花束、欲しい?」
「何でもないー!」
花束を持って彼女の居る場所へゆっくりと歩いていく、近づいてしまうんだ、本当は会いたくないのかもしれない、会いたくなんて、なかった。
夕暮れ時になっても雲は晴れず俺はしらたきとそこにいる、彼女の目の前に跪いた、涙が溢れた。既読すら付けず連絡先も引っ越し先も教えてくれなかったけどそれは俺の事が眼中に無いだけで彼女は普通に生活していると思っていたんだ。
今俺は彼女の墓の前にいる、あの時ああすればよかったなって勝手に後悔している。花束の包み紙をくしゃくしゃに掴む。
「ご主人様、ご主人様!」
「ごめんなハルカ……俺、今まで気づいてやれてなくて」
「ごしゅじんさま……ゆ、ユウキ!」
しらたきが俺の事をユウキと初めて呼ぶ、後悔と真っ白な頭をしらたきに向けた。
「ユウキ……わかってたんだよね、わかってたから、私が居るんだよね? ね? 信じて、ハルカのシャワーズなんだよ、しらたきって名前かわいいよね、どうしてしらたきなんだろうね、恥ずかしいなぁ……」
「しらたき……?」
「お花、もらうね、えへへ、どう? かわいい?」
「かわいい……しらたき、涙が……」
「ふぇ、何でかなぁ、ユウキ、ゆうきぃ……」
忘れてた声が溢れてくる、何で今まで気が付かなかったんだろう。そっと触れようとすると感触が返ってこない。
「ユウキが忘れてただけなんだよ、ずっとそばにいたんだよ、大好きだよ! でも、きっとそれはユウキの希望なんだね……」
「希望って何だよ、俺はいつでも準備できていて」
「出来てないよ! 動揺してる、声が震えてる、涙だってどまってない”、ぅぅ、うわあ”あ”あ”ぁぁぁぁ」
二人して泣いている、涙をかき消すように夕立が降り注ぐ、あんなに雨が降りそうな気配がしなかったのに。
あの時最初に出会ってから二人はずっと一緒だった、時々離れることがあったとしても必ず最後には一緒だった。
「奇跡だったんだよ、ユウキが私の事を忘れてなかったから」
――ポケモンが喋る機能? そんなものないよ、さすがのゲーフリもそこまで出来たら
「忘れてなかったからユウキと一緒に生きていけたんだよ」
「ああ! これからもずっと!」
「ユウキは良い子だから気づいてる」
「やめろ……やめろよ……」
シャワーズからほんの少し離れる、シャワーズは墓の前に立ち空を見上げた。
「私は行くよ、ハルカは死んだの」
「お前まで行くことは無いだろ!? 何で行くんだよ」
声が震えたまま口が動く。シャワーズは涙を雨で流して澄んだ声で語り掛けてくる。一人でも大丈夫だよ、と。
「一人でも大丈夫だよ、ユウキ」
「うあ……ああ”あ”あ”」
この墓の周りだけ空が晴れシャワーズに光を照らす、まるで天使の様だ、そうじゃない、天使なんだ、これは儀式なんだ。シャワーズはこう言うだろう。今までありがとう。
「今までありがとう、ユウキ」
俺がかけるべき言葉はこうだろう。
「一人でも頑張るよ、ハルカ」
「違うーー! 素敵なパートナー、見つけて! ね?」
シャワーズは最後まで無垢な笑顔を見せてくれた。
晴れやかな空には虹が写され別れの門出を祝福してくれる、帰り道ぐっしょり雨汁が垂れるスーツを着たまま駅前を歩いているとインタビュアに絡まれた。
「令和最後の日ですね、今の気持ちは如何でしょうか?」
ああ、そうだった、そんなことすら頭に入ってなかった。
「忘れられない友人の為にも次の年も頑張りたいです」
自室にたどり着きスマホを確認する、しらたきは居るけど喋りかけてくれないしARだって感触はしないし足にじゃれてきたりなんかしない。それでも、空っぽになった心にかけられたやさしい水が新芽を芽吹かせてた。
「ねえしらたき、俺、頑張れるかな」
しらたきと呼ばれたシャワーズは澄んだ鳴き声で返事をした。
甘い恋路という曲があります、清々しいメロディと進み続ける一人の人物の歌が気持ちいい曲でおすすめです。
お題「れい」が公開され漢字を変換させながら考えました、魔眼を持つポケモンのお話「Ray」、氷売りのグレイシア「冷」といろいろ考えていると赤から来た彼(ポケモン)と僕「令和」を思いつきます、ある日現れた赤から来たというポケモンが未来でご主人様を探す、それは令和の終わりのお話。ここまでは考えていましたが自分のスタイルに合わないアイデアなのでもう少し考えることにしました、結果生まれた作品が水色の旅路です。しらたきのイメージはインサイドヘッドに影響を受けているかと思います、ピクサーの傑作映画です、おすすめです、レミーと美味しいレストランとモンスターズインクは関係ありませんが傑作なのでおすすめです。
技術の進歩で日常空間にポケモンが住む世界、楽しみですね、きっと令和の終わりにはそんな世界が待っているはずです。
ちょっとおまけ
ハルカのシャワーズ:しらたき 性格ひかえめ 5V 雌 ねっとう/あくび/溶ける/冷凍ビーム
没見出し文
私と繋がっていた糸は赤色じゃなかったでしょ?:主人公が彼女を本当に愛してなかったifのお話、繋がっているのは灰色の通信ケーブル。
ある日現れた赤から来たというポケモンが未来でご主人様を探す、それは令和の終わりのお話。:後書きに書いたイメージ見出し
好き! 好き……好き、好き! 大好き! だいすきなの……だいすきだからぁ……ねぇ、ご主人様ぁ……:書き終わった後すぐに書いた見出し文。
没タイトル
俺がシャワーズに話していない3つの秘密
嘉辰令月
巧言令色
夕暮れ時のひたひた雨汁
ロンドンは夜八時
甘い旅路
大会投票コメントお返し
寝起きにひんやりぷにぷに……しあわせ♪
全力でシャワーズのかわいらしさを表現しました、お口に合って良かったです! 感想ありがとうございます!
見事に騙されました……魔法の仕込み方が素晴らしすぎます。シャワーズがスマホから飛び出す描写をあっさりと済ませてしまうのはずるい。文体もなんだか急いでいて不穏な空気がありましたがやはりそうか……悲しいなあ、でもトゥルーエンドっぽくていいですねえ。白状すると泣きました。えっち小説で。アッそうだ官能もなかなかどうして魅力的です。魔法が解かれるラストの文言もいいよなあ、さすがのゲーフリもここまではできないですよねえ。令和も最後になる頃には、ポケモンと喋れるようになっているのでしょうか。
水色の旅路をここまで紐解いて下さりありがとうございます、作者も-7-を書いている途中に泣きそうになってました。
.-1-と-2-と-3-の時系列を吹っ飛ばす要領でシャワーズちゃんを現世に連れ出しました、かわいいっ! エッチ描写も自分の想像する最高の物を演出したつもりです、汁ひたひたお水たっぷり蕩ける様なまぐわいです。感想ありがとうございます!
珍しい現実もの。こんなアプリがあったらやりたい! と思わせる睦まじい描写から、しらたきがハルカの『霊』であったというテーマと繋がるオチへの流れが美しい。言葉は話せなくなってもハルカとの終わらない絆を感じさせてくれるラストのしらたきには、やっぱりこんなアプリがあったらやりたい! と思わせられます。
令和の『れい』にシャワーズの冷たいの『れい』で書き上げた後にハルカの『霊』に気づきトリプル『れい』で役満きた! と思っていましたが優勝を逃してしまいました……本当にAR技術とグーグルグラス等の技術力が進んでポケモンARが出てほしいですよね、ポケモンGOのプロモーションで歩道を歩くピカチュウとイーブイの映像なんかありましたし…… 感想ありがとうございます!
ふぐぅぅぅ……… (2019/06/15(土) 23:55)
投票時間ギリギリですね……水色の旅路を読んでくださりありがとそして投票してくれて本当にありがとうございます!
もう少し興味をそそる見出し文とタイトルを付けるべきだったかなと若干後悔しています、でもこれが一番かわいくて作品に合った見出し文とタイトルなのです。 個人的力作なのでいろんな人に読んでほしいですね。
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