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水商売

/水商売

お初の方は初めまして、けんと申します。


性的な描写 (同性愛及び行為)、その他倒錯した表現が多々あります。
理解がない方の閲覧をおすすめしません。
それらを踏まえた上でお読みください。



 ここはポケモンと人間が交わることを許された街。
 昔はポケモンも人間も同じようなものだった。

 大きい商業都市が近くにできてしまって以来、寂れてしまった歓楽街があるという。
昔は多くの人で賑わった町に昔みたいな活気はない。
シャッター街と呼ばれてしまうぐらいには、閑散としている。
そんな歓楽街には昔から娼婦の館が多数立ち並ぶことで有名であった。
仕事疲れの男たちが足を運んだ館も今は多数潰れ、もう数は片手で数えるほど。
そんな街に男は立ち寄り、館へと足を運ぶのだ。

 「こちらがお部屋のカギとなっております。お客様のお荷物はここでお預かりいたします」
 フロントの受付で淡々と女性は喋る。
男は周りを気にしながら、受付嬢の言葉に耳をそばだてる。
カゴの中に無造作に積まれていたコンドームを一つ手にすると、男は階段へ足を運ぶ。
ルームキーに記された202の数字を見ながら、緊張に手が震えた。
仕事のこととか生活のこととか今は考えない。
今はただこの目先のことだけ考えれば良いと言い聞かせる。
男は意を決して鍵を開け、ドアノブを回した。

 『お帰りなさいませ。私をお選びくださいまして、大変光栄に思います』
 頭を深々と下げた子はオシャマリで、首には高そうなネックレスがあしらわれていた。
可憐な姿に今夜はこの子を汚してしまうのかと思うと、男は急に罪悪感が喉まで昇ってくるのだ。
とても躾がなっていて、きっとこの手の仕事は経験豊富なのだろうとほんのり思う。
男はしばらく立ち尽くした後、部屋の小豆色のソファーに凭れかかった。
つい仕事のことが頭をめぐってしまって、せっかくの時間が泡となって消えていく。
 『随分お疲れのご様子ですね。 しばらくごゆっくりどうぞ』
 顔色を窺うようにオシャマリはぺこりとまた頭を下げた。
 「すまないね」
 男は小さく謝った。
それから三十分経った時、男はようやく彼女を呼ぶ。
どうかしましたか、と彼女が問うと、男は隣に座ってくれと言う。
不思議そうな顔でオシャマリは男の顔を恐る恐る覗いた。
優しい笑顔だったらしい。
 「君の姿を見てしまったら、俺は君を汚すことなんてできなくなってしまった」
 『遠慮なさらないでいいんですよ。ここは貴方みたいな方が日々の色々な思いを吐露する場所なんですから』
 「そうか。でも今の俺にそんな気持ちはもうないんだ」
 『そうですか。優しいお方なんですね」
 彼女の瞳は少しだけ不安げに陰ったような気がする。
男はその様子にふと心配になり、なんとも言えずじまいではあったが口は噤んだままだった。
男は臆病であったと同時に優しかったのかもしれない。
かつて汚してしまって痛い目に合わせてしまった女のことを思い出すと、きっとオシャマリには手を出せなかったはずである。
どう考えても、この男がこの店に足を運んだのはとんだお門違いだというのに。
 「素敵なネックレス。 誰かに買ってもらったのかい」
 男はそう問うと、オシャマリはハキハキと
 『だいぶ前にお客様に買ってもらったんです。 とても大事なものなんです』
 大粒のオパールがはめ込まれたネックレスを見た途端、男は余計に手を退いてしまう。
大事に大事にされた彼女は汚すことはできない、と同時に彼女は愛されているんだなと悟る。
きっと自分の収入じゃ買えないものに違いないと苦笑いをこぼしながら彼女の頭を撫でる。
 『いいお客様だったんですよ。 昔は…』
 語尾を濁しながら、彼女はうつむき加減にそう言う。
 『ごめんなさい、大切なお客様の前で私情を持ち出すだなんて。申し訳ありません』
 「いや、いいんだ…。君は本当に美人で、素敵で」
 男は彼女が言われて嬉しい言葉を何度投げかけたことだろう。
嘘ではない真の言葉、己の気持ちのこもった一つ一つの言葉はどう届いているのだろうか。
口だけならなんとでも言えるだろうと言われてしまえば、きっと男は口を閉じてしまうに違いないが。

 オシャマリと男の距離はどんどん近くなり、素肌と素肌が若干触れ合っていた。
男の鼓動が早くなるのを、彼女に悟られてはいないか心配になってしまう。
彼は奥手で、女に手を出すのが非常に苦手であった。
それを悟られると、決まって女に笑われてしまうのがいつものことでもあった。
それ故、昂ってしまわないように平常心を保とうと男は深呼吸を繰り返すのである。
彼女の体を優しく触れていくにつれ、下腹部のふくらみを凝視する。
ここがきっとデリケートな部分だ、と思いつつも男は目をそらした。
 「少し、触ってもいいかな」
 身体を触れられて、オシャマリはびくりと跳ねる。
返答も聞かずに触れたのだ、もしかしたら後で怒られてしまうかもしれない。
恐る恐る顔色を窺うと、彼女は顔を紅潮とさせながらくすぐったさに身を捩じらせていた。
口を開こうとはぱくぱくしているが、なかなか声を出そうとする気配は見られない。
男はとうとう彼女の下腹部に手を伸ばすと、そのふくらみを優しくなで始める。
 『ま、待ってください、そこは…』
 震えた声で彼女は嫌がる素振りを見せる。
 「大丈夫、大丈夫さ」
 彼女の不安を取り除いて、自分にも言い聞かせるように男は弾力のあるふくらみをさらに撫でる。
掠れた彼女の声を聴きながら、男はそのふくらみがぬるぬると液に塗れていた。
感じてくれているんだと思った男は、さらに硬さを増しつつあるふくらみを探るように撫でた。
 『やっ待って…待ってください…』
 上擦った声でオシャマリは男に訴えた。
恐れていた事態が明るみになってしまうことだけが、オシャマリは怖かったのである。

 男は声を失った。
開いた口がふさがらないとはこのようなことを言うのかもしれない。
 「み、見ないでください、見ないで」
 気が付くとオシャマリの目からは涙があふれていた。
男は探っていたふくらみから手を離すと、ぬるぬると粘液に塗れた弾力のあるそれが主張し始める。
小ぶりではあるが、それはオシャマリが男の子だということの証明。
男は溜息を吐くことしかできなかった。



 嗚呼、そういうことだったのか。
男はもやもやした感情がようやく晴れるような、そんな思いを抱いたのである。
手を離した後、男はしばらく口を噤んだままの状態であった。
放心とした男の目の中には、すすり泣く彼の姿がずっと映っていた。
傷つけてしまった、そんな罪悪感がふつふつと沸き起こり、男は声も出ないのである。
ずっと彼女だと思っていただろう彼、オシャマリは己の失態に悔やんでいた。
自分が男だとバレてしまったのなら、この仕事はやめるようにオーナーに言われた直後の出来事だったことを。
ようやくそのことを思い出して、彼の顔は真っ青になる。
 「すまなかった」
 最初に口を開いたのは、男の方であった。
震える彼の背中を摩りながら、もう泣かないでと言ったようにも思える。
 『どうしましょう…浅ましいこんな姿を貴方に見られるだなんて』
 未だ熱を帯びて滾ってしまっていたそれを眺めながら、彼は目を擦っている。
恐怖に飲み込まれそうな彼の震え声に、男はどう声をかけていいかわからない。
男は考えた。
彼の気持ちをわかってあげるしか方法がないのはわかっていた、しかしそこまでお節介はしたくない。
何も言わず、ただ彼の言葉を聞いてあげることしかできなかったのだ。
なんてひどい野郎なんだ、反省の色なんて微塵もないじゃないかと自分に言い聞かせる。
肩を大きく動かし呼吸をすると、涙声になりながら彼は言う。
 『私は今までずっと女の子だと思って生きてきたんです。いえ、自分を男だとは思いたくなかったのです。
 こういうポケモンは居場所がないのです。私は当然誰からも相手にされませんでした。ずっと虐げられました。
 ようやく認めてもらえると思った仕事も、自分が男であるせいで白い目で見られる毎日です。
 折角貴方みたいな優しいお客様に出会えたのに、もうこの仕事は今日で最後です」
 吐露する彼の一言一言を噛みしめながら、男はとても切なかった。
 「僕の居場所はありません」
 最後にそういって、彼はもう何も喋らなかった。
男はその時、自分と似たような境遇を感じたのである。
数十年前に島巡りをすると宣言したが、半年ぐらいで諦めて故郷に帰ってきてしまった時の事。
親戚中から白い目で見られ、後ろ指を指される少年時代を過ごしてきたあの日々を。
生きていることが恥ずかしいと噛みしめていたあの頃の自分と重ねながら、オシャマリに言う。
 「いっぱい話してくれてありがとう。 ずっとずっと、大変だったろう」
 男はオシャマリの体を抱きかかえると、先ほどのように体を優しくなぞり始めた。
先ほどまで抵抗していた姿が今の彼には見られず、ただ受け入れようと噛みしめていたのかもしれない。
涙目になった彼を見つめながら、まだ衰えることのないソレを優しくなぞって、優しく扱いて。
 『最後のお客様が優しい方でよかった。僕はとっても幸せです。貴方に愛されて、本当』
 数分もすると、耐えかねたオシャマリはびくびく震えて子種を吐く。
気持ちよさそうな声を漏らして、幸せそうな吐息は水タイプには考えられないぐらいに暖かった。

 ありがとう、と囁いた男の声はきっとオシャマリだけにしか届かないことだろう。
時間を迎えてしまった部屋では、退出のコールが鳴り響いては止まなかった。
別れると知った瞬間、オシャマリは切なそうな顔をする。
もう二度と会うことはないと悟ってしまった小さな心が悲しさに押しつぶされてしまいそうで。
 嗚呼、これから自分はどうやって生きよう。
 仕事を辞めさせられる恐怖にヒレを震わせながら、しばらく座ったままだった。
あんなにやさしい人は初めてだった、ずっと今まで乱暴な人を接待していたからであろう。
思い返すと、あの声と顔、気遣いに心が温かくなったままだった。
行く当てもない自分が一夜限り愛した人はもう去ってしまった。
無意識に頬を伝う涙が、悲しさか嬉しさか。
 ドアノブが動いて、入ってきたのはオーナーじゃなくてあのお客様で。
忘れ物でもしましたか、と声を出そうとしたその瞬間。
 「そうだ、このバッグに入れる?」
 大きいボストンバッグの中は空っぽで、その中にオシャマリはすっぽりと入る。
これがどういう意味か、考えなくても彼は分かった。
ありがとうございます、男に聞こえるように彼は泣きながら言った。



 昔、ここは大きな大きな歓楽街があった。
しかし、時代の流れによって風化して、人は都市部へと流れ出てしまった。
その中に、人間の接待をするポケモンたちが少なからずいた時代。
今はもう、昔と違って人間もポケモンも区別のされる時代。

 昔は、人間もポケモンも同じであった。
 だから、結婚もした。

 『私、ご主人と一緒に島巡りができるなんて思いませんでした』
 「いい年なんだけどさ。また昔を思い出したくて」
 『ご主人なら絶対できますよ。ほらメレメレ島もすぐそこ!』

 きっと、大好きに種族も性別も関係ないんだろうなと。
ご主人の暖かい肩に乗りながら、オシャマリは笑顔をこぼした。



書いてる途中に三回ぐらい消えた作品ですが、なんとか完成しました。
あの見た目で男の割合が多いなんて罪深い生物ですアシマリ一族…。
後半がやや走り気味になってしまったことを深くお詫び申し上げます。
誤字や脱字はまたコメントで教えていただければ幸いです。

お名前:
  • 投稿乙です(´∀`)
    こういうのは好きなのでこれからも頑張ってください、応援してます(´∀`)b -- GC ?
  • GC様>>
    ありがとうございます!
    ずっとこういうのが書きたかったので、ようやく形にできて安心してます。^w^ -- けん
  • 素晴らしいハッピーエンドで···
    また頑張ってください! -- ピカチュー ?

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Last-modified: 2016-12-14 (水) 22:05:20
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