ポケモン小説wiki
水の月への思い

/水の月への思い

水の月への思い 

by蒼空
※この作品には特殊プレイ( 同性愛(GL)が含まれております。
苦手なプレイがある方は反転を、ネタバレが嫌いな方はそのままどうぞ。


夏休みも残すところ後半月になり人間の補習も一段落つき、僕等は夏休みを満喫していた。
……満喫するのは良いのだがいい加減に僕の部屋を片付けて欲しいかな。

今はこの家で唯一の冷房のあるリビングで全員が集まっている。
しかし、折角皆が集まっているのに特にすることは無い。
僕はソファーで丸くなり人間の横に居る。
別に僕が人間の隣に丸くなったのではなく人間が僕の隣に座っただけだけど。

「いや~。やっぱり冷房の効いた部屋は快適だな!」
「……休みくらい僕の部屋の片付けでもしてくれると非常に嬉しいんだけど御主人様」
「夏が過ぎたら片付けるよルナ……」

ただリビングののソファーに座り本を読んでいる人間に僕は皮肉を込めて言う。
どうせブックカバーがついてる時点で読んでる本はエロ本なんだろうからそれくらいしろよ……。
自分のポケモン達の前で読むべき本じゃないよな……。僕が前見たのは人間がポケモンを襲ってたし。
そういう本は自分しか居ないところでゆっくり読めよ……。ここには大半が雌ポケモンなんだから……。
そもそもエロ本をソファーの下に隠すのを僕は止めてほしいんだけどな。
もし、誰かが見つけたら僕が集めてると勘違いされそうだし……。それは絶対に避けたい。

ソファーの裏ではワカバとツララ、それにセイレーンとバーニィでボードゲームをしている。
もっともセイレーンとバーニィは数合わせみたいだけどね。ブリッツは外野で見てるだけだからカウントしなくて良いよね?
僕だってムーンと一緒に誘ってくれれば付き合ったのに……。誰か僕とムーンに進展の機会をください……。
肝心のムーンは無意味に僕から離れて部屋の隅で寝てるし……。
僕って本当にムーンの恋人……だよね? 自信なくなってくるな……。

「……じゃあ僕の番だね。このまま四が出れば僕の勝ちなんだけどな……」
「う~。僕的には出ないでほしい……。僕も後六でゴールなのに……」
「そんな事を言ったら私も三でゴールですよ姉様」

どうやら次はバーニィの番か……。最初は嫌がってたのに随分とノリノリじゃん……。
で、ツララとワカバがバーニィを追う形か? セイレーンの現状はどうなんだろう?
声だけじゃ誰が勝ってるのかいまいち分からん。まぁ聞く分でも盛り上がってるのは分かるけどさ。

「……そんな、なんでここで一が出るの!?」
「……バーニィさん。世の中はそんなにうまくはいきますんよ。じゃあ私の番ですね」

お次はセイレーンか。暇だから僕も覗いてみようかな?
僕はソファーの背もたれに乗っかりボードゲームを覗く。

全員ゴール間近で誰がゴールしても可笑しくない接線だね。
ここでセイレーンが五を出せば勝ちか。
セイレーンがサイコロを振り……五で停止。

出ました! ここでセイレーンが一抜けが決定しました!!
……と僕が実況をしなくても他のメンバーの悲鳴が聞こえてくる。
世の中上手くいくときはいくんですよセイレーンさん。見事にゴールしてるじゃないですか。
賑やかだねぇ……。こんなのんびりとした日も後二週間くらいだし人間がゆっくりしたい気持ちも分かるよね。
こんなに騒いでるのに起きないムーンが凄いな……。寧ろ本当に寝てるのか?

と、ぼんやりとしていると二階から電子音が聞こえてきた。
確かこれは人間のパソコンの転送システム用の電子音だったかな?
どうやら人間はエロ本読むのに夢中で電子音に気づいてないね。
しょうがない。肩でも叩いて気づかせるか……

「……人間。二階で何か転送されてきたみたいだけど」
「ぬわぁ!! いきなり声をかけるなよルナ!!」

いきなりとは失敬な。僕は声をかける前に尻尾で肩を叩いただろう……。
今回はそれに気づかなかった人間が悪い気がするんだけどな……。僕の気のせい?

そして人間が手に持っていた本が丁度僕の目の前へ落ちてくる。
中身は……案の定エロ本だね。期待を裏切らず人間とポケモンの奴だし……。
ポケモンの方は……エーフィか。……こいつ今すぐ殴ってやろうかな。

「うわぁあ! 見るな! 見ないでくれルナ!!」
「……安心して。僕はあんたがエロ本をソファーの下に隠してるのは知ってるから……。
 その本の内容が人間とポケモンだって事も理解している。見られたくないなら自室においておけ。
 しかも、隣で雌のエーフィが居て、よくもまぁ平気な顔をしてエーフィのエロ本なんか読めたな」
「そんな言い方しなくても良いじゃないか……。俺は好きなんだよイーブイ系が。
 偶然本屋で新刊見つけたら買うしかないだろ? とりあえずルナ行って来て……。今、動きたくない……」

結局僕が行くのかよ!! ……まぁ人間を落ち込ませた僕にも原因があるから仕方ないか。
でも、ドサクサにまぎれて僕に同意を求めるな! そりゃぁ、自分の好きな物を見つけたら嬉しい気持ちは分かるけどさ。
僕だって肝試しのときにフィラの実を見つけてテンションがかなりハイになったし。
この部屋を出ると暑いからさっさと二階に上がって何が転送されたか見てくるかな。



僕は避暑地のリビングを出て一気に階段を駆け上る。
そして人間の部屋の前に着くと扉を開け、部屋の中を確認した。
……いつ見ても散らかった部屋だよな。これだからテスト中に自室じゃなくてリビング使う破目になるんだよ。
僕は人間の部屋に届いた荷物を確認すべく慎重に部屋の中へと入る。散らかった部屋は足の踏み場に困るよな。
そして届いた荷物が置かれているだろうパソコンの前を調べるためにパソコンラックの椅子に乗った。
パソコンの前にはモンスターボールが置かれている……。他に置かれているものはないか。
流石に普通のモンスターボールを一個だけ通販するとは思えないし。中に誰か入ってるんだろう。
中は窮屈だから取りあえずボールから誰かを出してあげるか。

僕はモンスターボールの中央のスイッチに触れボールを開いた。
ボールが開くと同時に中から眩い光が辺りを照らし一匹のポケモンが出てくる。
そのポケモンは僕の三分ー位の大きさで首には白い毛、大きなポケ耳が特徴的な茶色い四足のポケモン。
僕が……いや、この家に居る全てのポケモンが生まれた時の姿だったイーブイだ。
僕よりも二歳位若い雌だね。ここまで雌が多いと運が良いんじゃなくて意図的に集めてるのか?
イーブイ系のエロ本を好んで集めてるわけだし。流石に六匹は偶然って言える数じゃないし。

「……お久しぶりです。ご主人様。マイコ様がしばらく旅行で出かけるのでこちらでお世話になります」

イーブイの少女は顔を目を閉じたまま頭を下げ挨拶してくる。
……正直にこいつ誰? それにマイコって女の名前だろうけど人間とどういう関係?
新参者には分からないことが多いよ。……僕って何かあると毎回こんな事言ってるよな……。

「……え~と。君、誰?」
「あ! エーフィって事はルナさんですよね? はじめまして僕シュトラって言います。
 名前の意味は「道」のシュトラーセから取ってるんですよ。マイコ様が付けてくれたんです。
 ルナさんの事は兄から伺っています。一週間程度の短い間ですがよろしくお願いします。
 ご主人様の姿が見えないですけど今どこに居るんですか?」

僕の質問に顔を上げたシュトラと名乗ったイーブイの少女がもう一度頭を下げる。
さて、兄って言ったことはムーンかツララの妹ってわけか……。
そもそもワカバとツララが誰かから交換してもらったポケモンだからムーンの妹ってのが無難かな?
正直に言うとムーンが僕の事を妹にどう紹介してたかが気になるけど……。
まだ、ムーンの妹と確定したわけじゃないないでどさ……。
そしてここでも一人称が『僕』の少女か……。実はイーブイ種は僕っ娘人口が多いとか!?
……なんてことはまずありえないから……。なんか僕が自分を『僕』って言ってもここだと違和感ないな。
ここで長話も暑いだけだし、取りあえずリビングに戻ろう。

「シュトラ。リビングで冷房が効いてるからそっちで話そうか。それに、人間を含めてそこに皆集まってるから丁度良いだろうし」

僕がそう言うとシュトラは「はい!」と元気良く返事をする。
しかし、僕が『人間』って呼んだの聞いて少し唖然としてるね。
まぁ普通は自分のトレーナーの『人間』なんて呼ぶポケモンは居ないよな……。
もっとも僕はあいつの名前を知らないし。今更聞く気もないけどね。
僕等はそのまま人間の部屋を後にしリビングへと戻った。



リビングの扉を開けると涼しい空気が僕等を出迎えてくれる。
僕が扉を開けたのに気づいたのか人間がこっちに振り向き声をかけてきた。

「お! ルナ荷物は何だった?」
「僕ですよ! お久しぶりですご主人様! でも荷物って言い方は酷いです……。事前にマイコ様から連絡がいってるはずですし」
「あ~。そう言えばあいつからそんな事を言われたような気もしないでないな……。補習が忙しかったからすっかり忘れてた」

僕が答えを言う前にシュトラが出てきて人間の元へと走っていく。
この声で他のメンバーの視線もシュトラへと集まる。無論、部屋の隅で寝ていたムーンも例外ではない。
皆が再開を祝うような優しい目線なのにムーンは安眠妨害されたからか「大声出した奴は誰だ!」と講義の目線である。
まぁ、ムーンの気持ちは分かるけど……。ここでは仲間の再会を祝ったほうが良いでしょ……。
それにしても、さっきのボードゲームでの大声の方が大きかったよな……。
横になって寝たふりだったんだろうな……。それなら僕と甘い一時でも過ごしてくれれば良いのに。
すっかり聞くタイミングを見失ったけどマイコって誰ですか?
普段はそんな事無いけど、こういう時って新人の僕は肩身が狭いんだよな……。

なんて僕が考えてるうちに皆はシュトラを中心に円を作ってるよ!
ついでに嫌な顔をしてたくせにムーンもしっかりと円に入ってるし!
一匹で取り残されてるのも虚しいし僕も皆と一緒に円を作ろうかな……。
再開を祝うも何も僕はシュトラには初めて会ったけど……。
でも、先に挨拶も済ませてるから話すこともないような気もする……。

「……兄さん。僕が久しぶりに帰ってきたのに随分な態度じゃない?」
「……寝てるところを大声で起こされれば不機嫌にもなるさ」

うん。シュトラはやっぱりムーンの妹か……。まぁ、予想通りだね。
ここでシュトラが「ツララの妹です」って言ったら「姉はどうしたんだよ!!」 って突っ込んでたよ。
言い争いをしてるみたいだけどムーンが僕の事をシュトラに紹介してるんだから兄妹の仲は悪くないんだろうな。
喧嘩するほど仲が良いって言うくらいだし。それにしても兄妹か……。

僕は前の主人に『戦いの道具』としてしか見られていなかった。
主人は一匹の『ブラッキー』を育てるためにイーブイを何百匹も孵化させている。僕はその一匹に過ぎない。
つまり、僕には何百匹もの兄弟が居るはず。でも僕は生んでくれた両親も兄弟も誰も知らない。
生まれた瞬間から道具であり『エーフィ』に進化した僕は前の主人にとって不要の物となった。
所詮、前の主人にとって僕は道具。進化させるためだけに愛情を注がれそれを本当の愛と勘違いしていた。
必要の無い道具は捨てられる。道具なら変えはいくらでもきく。

ここは僕を道具ではなく仲間として扱ってくれる。そのことは人間に感謝してる。
感謝はしてるけど僕は、あいつを『トレーナー』としてはまだ認められないな。

「ルナさんどうしたんですか? なんだか元気がなさそうですけど……」
「あ、いや、ちょっと考え事をしてただけ。ねぇ、セイレーン質問しても良いかな?
 さっき、シュトラが言ってた人間だと思うけどマイコって誰?」

セイレーンが僕を心配してくれる。正直嬉しい。
ついでにここで聞きそびれた事を聞いておくのも悪くないよね。
ここで聞き逃すと本当にタイミングを失いそうで……。

「ルナさんは会った事ないんですよね。マイコさんは御主人様の妹さんです。
 御主人様の両親は海外出張でマイコさんは学校の寮で生活してるんですよ」
「ふ~ん。で、シュトラは正確にはどっちのポケモンな訳? 人間? それとも妹の方?」
「一応、御主人様のポケモンって事になってはいるんですが……。
 マイコさんがシュトラちゃんを随分気に入ってるんでマイコさんに預けてるんです。
 正直に言うと預けてるというより連れ去られたと言った方が正しい気がしますけど……」

なるほど。一応、人間はエーフィ以外のイーブイ系を全て持ってたわけだ。
そりゃ、僕のような欠陥品でもエーフィを見つければ欲しくなるよ。
……って今更言うことじゃないよな。ここまでいればイーブイの進化だけでも揃えたくなるよな。
事実それが理由で僕はここに居る訳だし。まぁ、本来僕が圧勝してる時点で人間に僕を扱うのは無理だろうけど。

僕とセイレーンが話をしてるうちにシュトラを囲んでいるのは僕等だけになっていた。
シュトラがそんな僕とセイレーンを見て不思議そうにしている。

……そんな目で僕等を見ないでください。
ただ、話し込んでて解散のタイミングをはずしただけですから……。
今日はタイミングをはずしてばっかだな。

そんな視線にセイレーンが耐えられなかったのか時計を見てシュトラから顔を逸らす。
セイレーンは時計を見ると何かを思い出したと言わんばかりの表情になる。

「まだ木の実に水をあげていませんでした。ちょっと水をあげてきますね」
「そういえば今日は月曜日だっけ……。休みが続くと曜日の感覚が狂ってくるんだよな。
 でも、時間的に昼飯を食べてからでも良いんじゃない?」
「私はいつも午前中に水をあげるのを心がけてるので」

……真面目だねぇ。僕なんて暇なときじゃないと水あげないけどな。
まぁ、最近は神社で入手したフィラの実を育ててるのもあるから水はあげるけど。
あんなことがあったからブリッツとツララにだけは食べないように言ってる。

「え~。折角、姉さんともお話できると思ったのに!」
「じゃあ、一緒に行きましょうかシュトラちゃん」

あれ? 僕は『さん』だったよな。セイレーンは姉さん?
つまり、親密度がそれだけ違うわけだよな……。
じゃあ、セイレーンとムーンはどういう関係?
兄と妹もしくは姉と弟ってのはないと思うけど……。

真実を聞こうにも肝心のムーンは部屋の隅で寝てるし……。
さっきのシュトラの反応的に無理に起こすと機嫌を悪くするだろうな。
それとも僕が話しかけるとてれ隠しに逃げるか? 可能性高そう……。

しょうがない。少し屋根上で風でも浴びるか……。
屋根上は普段、誰もこないから一匹になるには丁度良いし。
それに今日なんかリビングに冷房がついてるから尚更ここを出るのは少ないでしょ。



屋根上に上ると眩い太陽と暖かい風が僕を迎えてくれる。
……と美しく表現すれば聞こえは良いのかもしれないが実際はそんな事はない。
太陽は容赦なく体を焼き、風は暑い空気を運んでくる。
これなら素直にリビングに居たほうが良かったかな。
一匹になりたいからここに来たんだけどさ。
あと、ここから見える景色が僕は結構好きなんだよね。
ここがムーンとの思い出の場所でもあるし。

下を見ればセイレーンとシュトラが木の実に水をあげている。
ここからじゃ何を言ってるかは分からないけど楽しそうだね。
それ故に会話してばっかでさっきから手が動いてないよ。
でもそれは平和って事だから悪くはないか。
僕も野生での明日が来るか分からない生活より今の暮らしの方が好きだし。
なんか眠くなってきたな……。風も十分浴びたしリビングに戻って寝ようかな……。
僕は屋根上を去ろうと立ち上がった。ふと、庭に居るセイレーン達が目に入る。

セイレーンとシュトラがガラの悪そうなグラエナ達に囲まれていた。
家の後ろの森が奴等の縄張りなんだろうね。
まったく。この辺のグラエナは本当に不良が多いな……。
しかし、奴等が近づいてるのに気づかなかったなんて僕も平和ボケしたよ。
グラエナの数を数えると今見えてるだけでも六匹は居るかな。
リーダーだと思われる一回り大きいグラエナがセイレーンに近づいていく。
まるで品定めでもするような厭らしい目つきでセイレーンを見ている。
シュトラの方は他のグラエナに押さえつけられてるか……。
それで、セイレーンも迂闊に攻撃できない……。
いや、攻撃できてもセイレーンがこの数を一匹で相手にするには厳しいかな?

ここは僕の手で全員まとめて痛い目にあってもらおうか。
丁度良い眠気覚ましくらいにはなるでしょ。

僕はシュトラを拘束してるグラエナ目掛けて屋根上を飛び降りた。
この位の高さなら以前ブリッツと落ちたに比べれば大した高さもないし問題ない。
……でもこの『落ちていく!』って感覚は好きになれないな。

僕は庭に着地するとシュトラを拘束しているグラエナに居合い切りを決める。
シュトラを拘束していたグラエナは叫び声を上げ気絶した。
僕の顔を見たセイレーンが嬉しさと驚きで半分半分といった顔をしている。
まぁ、いきなり屋根上から登場すれば普通は驚くか……。

「ル、ルナさん!? 何でここに!?」
「……貴様。よくもやってくれたな……。俺達が泣く子も黙る悪党、黒狼だって知って手を出したのか?」

黒狼? ああ、そういえば野生だった頃に何度か聞いたことがあるな……。
意外に勢力の大きい野生のグラエナの集団だったっけ?
まぁ、僕を相手にするには数が足りないけどね。
セイレーン。何でここにって言われたって近くに居たんだからほっとけないでしょ。
別に狙ってこんな事出来るわけないって。

僕はシュトラにアイコンタクトで隠れるように指示する。
もっともアイコンタクトが通じるほど親しくないから分かるかな?
それでもシュトラは木の陰に隠れてくれたね。失礼だけどこれで足手纏いはいなくなった。

「……相手が誰だろうと関係ない。僕は仲間を助けるだけだ」
「……馬鹿な奴だ。自分から痛めにあいに来るとはね……。お前等、その雄の相手は任せたぞ。
 俺はこっちの雌でも頂くとするかな。久しぶりの雌だから楽しみだ……」

この変態が! まぁ、さっさと雑魚どもを始末してセイレーンを助けに行くか。そうしないとセイレーンの貞操が危ないし。
変態に絡まれてるセイレーンの表情がどんどん青ざめていくね。そんなに心配しないでも僕が助けてあげるのに……。
やっぱり僕って雄に見えるか……。ああ、僕にもワカバみたいに巨乳だったなぁ……。
リーダーのグラエナはセイレーンをさらい森の方へと駆けていく。

っち! 追いかけるにも下っ端が四匹が僕の進路を塞いだか。
さて、時間が惜しいからさっさとしとめるかないな……。
相手は四匹……。上で確認できたのが全員だったみたいだね。

「よし行くぞ! 野郎共! エーフィなんて近づけば怖くねぇ! 一気にぶちのめそうぜ!!」

四匹のグラエナが一気に僕に襲い掛かってくる。
普通のエーフィならば絶望するところなんだろうね。
相手は悪タイプでエスパー技が効かないで不利な近接戦闘に持ち込まれる。
でも、僕は普通じゃないんだよ……。絶望するのはお前等だ。
さっき仲間が接近戦でやられたのを見て僕に突っ込んでくるなんて馬鹿だよね。

僕も相手に近づき、まず一匹をアイアンテールで吹き飛ばす。
この光景を見て残りの三匹が一瞬止める。
僕はこの隙を見逃さず一番近い一匹に全力で走り喉元に噛み付く。
いくら『噛み付く』が悪タイプに相性が悪くても急所に当てれば問題はない……。
これで後二匹。そこそこ名の知れた悪党だから強いと思ったらこれか……。相手を過大評価しすぎてたな。

「おい嘘だろ……。一瞬で二匹やられたなんて……」
「こ、こいつに勝てるのか……」

僕の圧倒的強さを見て残りの二匹が逃げ腰になる。
まぁ、ここで逃げようと背中を向けても僕は許さないけどね。
そっちから喧嘩を売ってきて逃げるなんて卑怯だろう。

僕は逃げる隙を与える前に二匹のグラエナの間に割って入り回転してアイアンテールを放つ。
二匹とも派手に吹っ飛びこれで四匹の討伐が終わる。これならワカバのを相手にしてるほうがよっぽど楽しめるよ。

グラエナが全員倒れたのを確認しシュトラが木の陰から出てくる。

「……凄い。全員一撃で倒すなんて。兄さんが言っていた以上にルナさんは強いんですね」
「まだ、さらってたのが残ってるから僕はいくね。シュトラは人間にこの事を知らせておいて」
「分かりました。でも相手は黒狼ですから気をつけてくださいね」

心配しなくてもこれでも能力は高い個体だからね。それに温室育ちの軟弱者じゃないし。
僕はセイレーンを助けるべく森へと駆けていく。



僕はセイレーンを助けるべく全力で森を駆ける。
昨日雨が降ったおかげで地面がぬかるんでいてグラエナの足跡が残ってるがせめてもの救いか……。
まぁ、走りにくいから追跡と戦闘に向かないのは変わらないけどさ。
足跡は大きめな洞窟へと繋がっていた。ここが黒狼のアジトってわけか……。
他のメンバーに合流されたのが厄介だな。今はセイレーンが無事な事を祈るしかないか。

僕は木陰に隠れ状況を確認する。
入り口の見張りは二匹か……。潜入するには僕は近接攻撃しかない。
今は考える時間さえも惜しい。素直に強行突破するか。一番早いだろうし。
じゃあ、さっさと行動開始するか。
僕は木陰を飛び出し一気に入り口へと走る。

「貴様! ここが黒狼のアジトだと……がはぁああ!!」

僕はまず一匹をアイアンテールで吹っ飛ばす。
もう一匹の見張りが恐怖で顔色が真っ青になる。
まだ若いし新人か? これなら好都合だ……。

「おい、お前。ここに雌のシャワーズが連れてこられなかったか?」
「……そ、そんな事言えるわけないだろ……」

ドスを効かせて言ったのに素直に喋らなかったな……。ならば僕は更に脅迫するまでだ。
僕はアイアンテールをグラエナの頬を掠めるように尻尾を突き立てる。

「もう一度だけ言う。ここに雌のシャワーズは連れてこられなかったか?」
「ひぃいい。リ、リーダーが人間の家を襲って連れてきたよ……。
 部屋はアジトを真っ直ぐ行った突き当りだ……。も、もうこれで良いだろう?」

……根性の無い奴。少なくともここの組織には向いてないよこいつ。
必要な情報は手に入れたし、セイレーンが心配だからさっさと突き進むか。
と言うかあいつがリーダーだったんだ。……まぁどうでも良いけどさ。
今問題なのはあいつがセイレーンをさらった事実だけ。あいつの素性なんて関係ない。

「情報提供ありがとう。じゃあ僕は急いでるからこれで」
「さっさと行ってくれよ……。やっぱり俺にはこの群は向いてなかったんだ……。
 誰か俺に安全で平和な日常を送らせてくれよ……。もうこんな生活嫌だぁあ!!」

ここに向いてないって自覚してたのか……。こいつが良い人間に出会うことを密かに願っておこう……。
僕は泣きじゃくる見張りのグラエナを通り過ぎリーダーの待つ部屋へと全力疾走で向かう。

途中グラエナ共に襲われるも全て一撃で粉砕していく。
……本当にこいつ等弱いな。これでよく黒狼の名が知れわたったよね……。
寧ろ僕が強すぎるのか。これならリーダーまで直ぐに着きそうだ。
ここまでに何匹のグラエナを倒してきたかな?
変なあだ名が付けられなきゃ良いけど……。以前は『冷たき太陽』なんて付けられたっけ。

さて、ようやく突き当たりかと思われる部屋が見えてきたな……。
所詮は洞窟だからそこまで広くはないね。自然に出来たにしては広いほうだけど。
それとも以前に地面タイプや岩タイプが掘り進んだ洞窟かな? そんな事どっちでも良いけど。
流石にここにも見張りは当然居るよね……。本当に面倒だよ。
こっちは一秒も無駄に出来ないんだ。さっさと気絶してもらおうか。
入り口と同じ二匹か……。十秒あれば余裕かな。

「貴様! ここが黒狼のリーダー……がはぁああ!!」

僕は一匹に居合い切りを決め、確実に数を減らす。
入り口の見張りと同じようなこと言ってんじゃない!
これだから組織ってのはワンパターンだから嫌いなんだ。

「速い!? こいつ何者……ぐはぁああ!!」

今回は見張りに聞くことなんか何もないからもう一匹もアイアンテールで壁まで吹っ飛ばす。
自己紹介する時間もなければ答える理由もないし……。
ここまで簡単に侵入できるとかえって不気味になるよ。罠なんてなきゃ良いけどね。
まぁ、こいつ等に罠を仕掛けるほどの知性を感じさせる奴なんて居なかったけど。



僕は見張りを倒し奥に進むとセイレーンをさらったグラエナとどこかで見たようなグラエナが居た。勿論、ここにセイレーンも居る。
誰だったけ……。あと少しで思い出せそうなんだけどな。まぁ、忘れるくらいだから大したこと無い奴か。
ここはガラじゃないけど叫ぶことにするか。こういう場面ではお決まりだしね。

「お前達! 大人しくセイレーンを開放しろ!!」
「ここまでたどり着く奴が居るなんてな。まったく見張りの連中は何をやっていたんだ……」
「ルナさん!? どうしてここに!?」

少なくてもしっかり仕事をしていた奴は僕が気絶させてきました。今は夢でも見てるんじゃない?
まぁ、仕事はこなしてないけどやる気だけは十分にあったのは確かだね。……やる気だけじゃどうにもならないけど。
セイレーン。どうしてここにって君を追いかけて来たからに決まってるでしょ……。
今は僕しか居ないけど皆も後で来てくれる……と思う。多分だけど……。
来てくれるよね? 流石に大切な仲間だし見捨てるって事はないと信じたいな。

「お前! 確か以前ブラッキーと一緒に居たエーフィか! あの時の礼を返してやるぜ!
 トレーナーの居ないときに家畜のポケモンに負けたって群での地位はガタ落ちだったんだ!
 今回はお前に痛めにあってもらうからな。覚悟しておけ!!」

ああ。どっかで見たことあると思ったら僕が侵入した日に来たグラエナか!
忘れてた! なんて本人の前で言ったら怒るだろうから黙っておこう。
元々僕は雑魚の顔は覚えない主義だけど、記憶力が悪いと思われるのも嫌だしね
グラエナって事しか頭に残ってなかったよ。まぁ、今回も痛めにあってもらおうかな。
でもあの時の僕はまだ野生だったからあんたと同じ立場だったんだけどね……。
その日に人間のポケモンになったから間違いではない気もするけど。

「セイレーンを帰してくれれば手荒なマネはしなくて済むんだけど。
 実は僕、こう見えて戦うのって嫌いなんだよ。だから大人しくセイレーンを帰してくれない?」
「……ここまで乗り込んできて何を今更。説得力のカケラもねぇよ……」
「それに関しては俺もお前と同意見だな……。無理がありすぎる」

……信じてない。いや、僕は実際にバトルは嫌いだよ。だって大概僕の相手って弱い奴ばっかだからさ。
僕は『弱い奴』と戦うのが嫌いなんだよ。僕を楽しませてくれるほど強い奴なら別なんだけどな。
この一言は結果的に相手を挑発する為のものになっちゃったよ。面倒だな……。

折角セイレーンの前だしカッコイイところでも見せて惚れてもらおうかな……。
って僕は一体何を考えてるんだ!? 確かに後落としてないのはセイレーンだけだよ。
でも別に僕に下心があって他の皆を落としたわけじゃないし!
まったく。僕もここ数ヶ月で随分と変態になったな。……それとも元々?
前者でも後者でも今の僕が変態って事に変わりはないんだよね……。
何か自分で言ってて悲しくなってきたな……。

「貴様から来ないなら俺から行かせてもうぞ! 死ねぇええ!!」

おっと、そうだった。今は戦闘中だったんだっけ。
突っ込んできたのは元侵入者の方だけか。流石にリーダー自ら危険な行動はしないか。
しかし、セイレーンをさらいに来たのは自らやってきたしな……。
実は図体が大きいだけで弱いとか? まぁ、こいつを倒したら相手する事になるだろうしどっちでも良いか。

「……以前もそうやって突っ込んできて僕にやられたの覚えてないでしょ?」

僕は質問口調で言ったが答えを聞く気はない。
寧ろ以前と同様に腹の下に潜り込み居合い切りを軟らかい腹に叩き込む。
今回は以前のように手加減をするつもりはない。だけどこのまま一撃で終わらせるつもりもない。
僕は今回の居合い切りは相手を打ち上げるような角度で放った。
打ちあがって無防備な腹が見えたところにアイアンテールをお見舞いする。
まぁ、これで立ち上がる事は出来ないでしょう? 寧ろ気絶してるか……。
まったく同じような戦法でやられるなんて学習能力のない奴。

「……まったく。これだから俺が弟を甘やかしてるって言われるんだ。
 まぁ、今回は他の奴も倒されてるわけだから偉そうなことは言えないだろうがな」

リーダーのグラエナが面倒そうにこちらへ近づいてくる。
……あいつって黒狼のリーダーの弟だったんだ。知らなかったよ。興味はなかったけど。

「最後にもう一度だけ言うけど素直にセイレーンを帰してくれないかな?
 こっちも弱い奴の相手ばっかりでいい加減飽きてきたんだよね。
 それともあんたは僕を楽しませてくれるほど強い? それだったら相手しても良いんだけど」
「……黒狼を舐めてなのか? この俺に勝負を挑んだことを後悔させてやる」

……そういう奴って大概口だけなんだよね。
この僕、冷たき太陽を止められるかな?

こいつは弟が一瞬でやられたのを見たからかもしれないけど不用意に近づいてこないな……。
もっとも、あいつが野生のグラエナである以上は僕に近づかなきゃ攻撃できないわけだけど。
……意外に楽しめそうかな。こういう相手の出方を伺うのも悪くない。
それとも一気に攻めるか。タイプは相手が有利な以上無理は出来ないな。
それに相手のレベルが高くて『不意打ち』を使えるかもしれないし。
本来、僕は相手の出方を伺ってから攻撃する方が性に合うんだよ。
これでもブラッキーに進化することを前提に戦闘訓練も受けてきたし。
その性でこういう読み合いでは自分から攻めるのは嫌いなんだよな……。
やっぱり相手の出方を慎重に伺うか。

それでも互いに一歩づつ進んで行き距離を少しづつ縮めていく。
この距離なら行けるか? いや、まだだ。ここから飛び掛っても相手は避ける時間がある。
まさか、見かけによらずここまで冷静な奴とはね。流石は黒狼のリーダーだけはある。

「……接近戦のエーフィなんか相手にならんと思ったが随分な実力者とはな」
「ふっ。これでもスパルタ教育されてきたからね。ただのネタではないつもりだよ」

こういう読み合いをいつまで続けてもしょうがないしな。
ここは使いたくないエーフィの能力を使ってでも終わらせるか。
まさか、僕にこの能力を戦闘中に使わせるなんてね。
それだけでも、冗談抜きで敬意を表するよ。
ま、僕に傷を付けられるポケモンなんてこの辺に居ないだろうし。

まずは全身の神経を集中させ大老で空気の流れを感じよう。
そして次にグラエナの周辺空気の流れを些細な変化も見逃さないようにする。
……これをやると尻尾の先が微妙に揺れるけど気づかれないよね?

感じる空気の流れが……。感じる相手のこれからの行動が……。
これで僕の準備は整った。一気に攻め落とす!!

僕はグラエナ目掛けて一気に加速し突っ込んでいく。

「ふ。頭に血が上ったか? 短気な奴は勝負で勝てないんだよ!」

ここで相手は左に避ける。攻撃はしてこないみたい。僕は避けた先に追撃をすれば良いってことか。
僕の速さなら簡単な事だよね。僕は相手が左に避ける前に進路をずらしアイアンテールを放つ。
放ったアイアンテールは見後に顔面に直撃。相手の動きを読んでたんだから当然の結果だけどね。

「馬鹿な!? 俺がこっちに避けるのを読んでたとでも言うのか!?」

大正解。もっとも答えを叫ぶつもりもネタを明かすりもりもないけどね。
僕は止めにもう一度アイアンテールを倒れているグラエナに無慈悲に放つ。

「ガハァ!!」

はい終わり。これでセイレーンの救出を邪魔する奴は排除した。
しかし、無様だな……。黒狼のリーダーのこんな姿を見たら部下が何匹減るだろうな? ま、僕には関係ないけどね。
ご愁傷様。これでセイレーンの安全は確保できた。後は帰りだけか。

「セイレーン無事? 怪我とかのほうよりも厭らしいことされなかったかが僕は心配だけど」
「……ルナさんがあと十秒遅かったら唇は危なかったです。その……ありがとうございました」

ふむ。僕の……ではないけどセイレーンは無事だったか。良かった良かった。
彼女を汚すのはこの僕だ! ……って僕は何を考えてるんだろうな……。
でも、顔を赤らめてお礼を言ってくれたセイレーンは最高だったよ。
正直、襲いたくなるくらいに……。やっぱり僕は変態ですね。

「取りあえずここから出ようかセイレーン」
「そうですね。早く帰らないと皆さん心配するでしょうしね」

……もう十分心配してましたよ。特にシュトラが。
まぁ一緒に襲われて助かったのが自分だけじゃ、そりゃぁ心配するだろうけど。
取りあえずここに用はなくなったし後は帰るだけだね。
それにしても、誰も僕等の助けに来てくれないって……正直苛めですか?
現に僕だけで勝ててるけど仲間のピンチなんだよ? これは酷くない?

僕等は気絶している黒狼のリーダーを放置しアジトを後にした。
無論、行きに襲ってこなかった奴が騒ぎを聞きつけてやって来たけどリーダーの惨劇を見て襲ってくる奴は居なかったね。



セイレーンがさらわれてから約一時間。僕は家へと無事帰宅した。
昼飯を食べないで乗り込んだから正直に腹が減ったな……。
僕等が家へと戻ると皆が驚いた顔をしている。
寧ろ、今から森へ向かう予定だったようだ。
準備にここまで時間をかけてたなんて……。
それだったらセイレーンは確実に犯されただろうね。
……しかし、そんなに黒狼に単身突撃は凄いか?
特にシュトラとムーンが驚きと安心でどんな顔をして良いのか分からないって顔してるし。

「ルナもセイレーンも無事で良かったよ。でもまさかルナがここまで強いなんて正直驚いた」
「……別に僕だって野生の頃は冷たき太陽って言われてたくらいには……」

僕が人間の言葉を返して途中に皆さん僕から一歩下がったんですけど。
そんなに冷たき太陽って人間達の間でも知れ渡ってたのか?

「ルナが冷たき太陽だったの?」
「……そんなに凄い噂が流れてたの僕って?」

ブリッツが人間の後ろに隠れて質問してくる。
正直そこまで距離を置かれると僕も傷付くんですけど……。
激しい一夜を共にした仲じゃないですか……。

「師匠には悪いですけど正直に言うと……。この辺の住民の恐怖の対象ですよ」
「トレーナーのポケモンからの口コミで広がっていったそうなんですけど……。
 相手を居合い切りで無慈悲に切り刻み、アイアンテールで敵を肉塊にするって噂が絶えなかったですから。
 レベルも高く並みのポケモンじゃ勝てないから会ったら逃げたほうが良いって……」

ワカバとツララの説明で大体の事は分かった。
つまり僕の噂に尾鰭がくっ付いて凄い噂になっていたと。そこまでなってて、今までよく僕の耳に入らなかったな……。
そこまでした記憶は僕にはないけどな……。まぁ噂なんてそんなもんか。

「……俺のようなトレーナーじゃまず勝てないはずだよな……。
 今、冷たき太陽が家のリビングで生活してたなんて思ってなかった。
 うん。俺にはルナは過ぎたポケモンだな……」
「分かったら自分を磨いて僕に相応しいトレーナーになることだね。
 人間が成長しなきゃ僕は言う事は聞かないから」

ようやく人間が僕の凄さを実感してくれましたね。
これで僕が言うことを聞かなくても納得するでしょ。

「……何かそこまで言われると傷つくな。まぁ、その通りなんだけどさ……。
 俺は夕食の準備があるから解散って事でで良いよな? それじゃ解散!!」

……誰の答えも聞いてないぞ人間。まぁ、別に僕も話す事はないし解散しても構わないか。
人間の言葉を聞いて皆が解散していく。いつもはさっさと居なくなってしまうムーンが珍しく残っている。
そんなムーンの行動を不思議に思ったのか歩き出そうとしていたセイレーンの足が止まった。
……ちなみにシュトラはソファーの裏に隠れて盗み聞きしようとしてますね。
兄のムーンが気になるのか、姉と呼んでいるセイレーンが気になるのか……。
まぁ、僕が気になるっていうのだけはないだろうね。
聞かれて困るような内容は話さないと思うから無視するけどさ。
しかし、僕はムーンとセイレーンの関係が気になるかな。

「……その。ご主人様と同じ事を言うけど無事で良かったよルナ、セイレーン」
「私も心配をかけて済みませんでした。でも、ムーンが心配してくれるなんて……珍しいですね」

……セイレーン。そこはムーンの彼女である僕に台詞を譲ってください……。
なんか二匹が妙に親しいような気がするんですよ……。
セイレーンなんかムーンを呼び捨てで読んでるし。
年下のワカバやツララにも『さん』付けで読んでるのに……。

「そりゃあ、幼馴染が危険な目にあってたら心配するさ……」

ムーンが顔を赤くさせて俯いている。
それにしても、ムーンとセイレーンって幼馴染だったんだ。
どうりで妙に息が合うって言うかムーンが合わせてると言うか……。
今、この光景を見て二匹が恋人同士って言われても嘘だと思わないよ。
しかし、セイレーンは僕の視線を気にしてるかチラチラと振り向いてるね。
その気づかいは嬉しいですけど、それなら僕とムーンの恋に協力してください……。

「……その、ルナさんが見ていることですし。この話は終わりにしませんか?
 ムーンはルナさんと恋人同士でしょ? その、ルナさんに悪いじゃないですか……」

セイレーン優しいよ。僕の事をそんなに気にしてくれるなんて。
……でも、見てるのは僕だけじゃないんだよね。
ソファーの裏から顔をそっと出してシュトラも覗いてますよ。
シュトラと僕の目が合うとシュトラは「しまった!」とでも言いたげな顔をしてソファーに隠れる。
初めから気づかれてたのに、気づかれてないつもりでいたんだ……。可愛い奴。

ムーンがセイレーンの言葉に「そ、そうだね」と言うと脱兎のごとくリビングを出て行く。
てれやもここまでいくとなぁ……。まさか、ムーン。セイレーンと二股ってことはないよね?
ムーンが出て行くとセイレーンも僕に無言でお辞儀をしてリビングを出て行った。

僕は二匹が居なくなるとソファーに丸くなる寝たふりをする。
シュトラが丸くなった僕を確認し動き始めた。
やっぱり気づかれてないと思い込んでるね。

「……シュトラ。いつまでコソコソしてるつもり?」
「え? 気づいてたんですか!?」
「初めから気づいてたけど。別に聞かれて困る内容じゃないだろうから何も言わなかったけど。
 正直に隠れる場所と方法がバレバレだったよ。これでも野生で生活してたから勘は鋭いつもりだからね」

シュトラは「初めから」と聞いて相当慌てている。
鋭いとか言ったけど昼のグラエナ達に気づかなかった僕が何を偉そうに言ってるんだろう。
しかし、この慌てようがムーンにそっくりだね。流石は兄妹といったところか。

「素直にムーンが気になったのかセイレーンが気になったのか素直に言ったら許してあげるけど」
「……えっと、どちらかと言えば兄さんの方です。正直に言うと気にしてたのはルナさんです。
 ルナさんが兄さんと結ばれればルナさんは僕の義理の姉になるわけじゃないですか。
 今日会ったばかりですからどんな方なのかなと思って……。ごめんなさい」

……意外な答えが返ってきたな。気にしてたのは僕か。
でも、シュトラが気にするほど僕とムーンの仲って良くない気がするんですよね。
……妹か。まぁ、こんな可愛い妹なら居ても構わないよね。寧ろ欲しい。
こう、そそるんだよね。「兄さん。朝ですよ!」なんて言って起こしてくれたら……。
僕は雌だから姉さんか。でも、良いよねこういう大人しい妹キャラって。
ワカバも妹キャラではあるけどあっちは元気なキャラだからな。

「あの、ルナさん……急に黙ってどうしたんですか?」
「あ、いやなんでもない。ちょっと考え事をしてただけ。話は終わったからもう出て行っても構わないよ」
「そうですか。それじゃあ失礼します」

……はぁ。最近僕も欲求不満なのかな……。今日は危険な考えばかり頭をよぎる。
でも、ムーンは相手してくれないだろうし……。今度ツララにでも頼もうかな。

やる事もないし一眠りしようかな。今日は昼に体を動かしたから良く眠れそうだし……。
寝ようと思うとなんだか急に眠くなってくるな……。昼飯食べてないけどいっか。
僕は迫り来る睡魔に抗う事無くソファーの上で丸くなり眠ることにした。



僕は一時の睡眠から目を覚ます。
目の前にはセイレーンが居て微笑んでいる。
僕の目の前に居るのがセイレーンなんて珍しいな……。
これがワカバとツララ、バーニィやブリッツなら分かるけど。
素直にセイレーンとシュトラ、ムーン以外って言ったほうが早いか。

「おはようございますルナさん。良く眠れましたか?
 皆さんはもう夕食を済ませてしまいましたよ」
「……そっか。皆は夕食まで済ましたんだ。
 と言うか僕はそんなに熟睡してたのか……。
 セイレーンもここに居るくらいなら起こしてくれれば良いのに」
「あまりに気持ち良さそうに眠っていたので起こすのも悪いと思ったんです。
 それと今日はリビングはシュトラちゃんが使うことになったのでルナさんは私の部屋に来てくださいね」

……そっか。『今日は』と言っても一週間はシュトラが使うんだろうな。
しかし、何で僕がリビングから追い出されなくてはいけないんだ?
でも、前みたいにワカバとツララの部屋じゃないんだね。何でだろう?
まぁ別にそこまで気にすることじゃないか……。考えるのは止めて夕食を食べようかな。

僕はソファーを下りて夕食を食べる。
……時間が経っちゃったから少し冷たいな……。
でも、今日は僕が眠ったから自業自得か。

「あと今バーニィさんが入浴しているので次はルナさんですからね。
 今日はルナさんが入浴は最後ですので慌てなくも良いですが」
「あれ? もうそんなに入ってたんだ。いやぁ昼から随分な時間寝てたな……」
「私とムーンの会話が終わってから寝たんですよね? 昼の一件で疲れが溜まったんじゃないですか?」

……僕は仮眠のつもりで横になったんだけどな。熟睡しちゃったわけか。
僕も気付かないうちにそれだけ疲れを溜め込んでたのかな?
それとも野生の頃と生活リズムが変わったのが今になって響いて来たかな?
どっちでも良いか……。疲れてたから眠ったって事に変わりはないだろうし。
でも、セイレーンが言った昼の一件で疲れたのはないと思うけど。別に疲れたから寝たわけじゃないしね。
丁度、食事が終わるとタイミングを計ったようにバーニィがリビングへやってくる。

「ルナ。お風呂開いたからね。あれ? セイレーンは夕食の後からずっとルナの寝顔見てたの?」
「ええ。ルナさんを起こそうと思ったのですがあまりに気持ち良さそうに眠っていたので。
 起こすのも悪いと思ってずっとルナさんの寝顔を見てましたね」

……セイレーン。そこはバーニィの皮肉なんだから素直に答えなくても。
バーニィも真面目に答えると思ってなかったのか呆れてるよ。

「いくら、僕が最後だって言ってもいつまでものんびりしてられないから僕は風呂に行くね」
「ルナさん。良ければ私がお背中を流しましょうか?」
「……ルナとセイレーンっていつからそんなに仲良くなったの?」

……それは僕も聞きたい。今日は黒狼のアジトから帰ってきてから妙にセイレーンが傍いるような……。
それとも、それは僕の気のせいか? いや、バーニィも突っ込む時点でそれはないか。

「別に仲が悪かったわけではないですし。昼のお礼も兼ねてですよ。
 話は変わりますけど、バーニィさんも肝試しの日から私に恋人の相談をしなくなったんですか?
 いつもは週に一度は私に相談しにきていたじゃありませんか。彼氏でも出来たんですか?
 それなら是非、私達にも紹介してほしいのですが」
「それは……。僕にも色々事情があるって事で……。さよなら!!」

バーニィが逃げるようにリビングから出て行く。
……良かった。ここでバーニィがいきなり「ルナが僕の恋人だよ」なんて言い出さなくて……。
しかし、ここまで露骨に逃げると「僕は何か隠してます」って言ったようなもんだよな……。

「……バーニィさんのあのに態度は絶対何か隠してますね」
「あれは誰でも分かるよね……。普段は揚げ足を取るのに自分が揚げ足を取られるのは弱いんだね」
「まぁ、そこがバーニィさんの憎めないところでもありますけど」

それはセイレーンの言うとおりだね。そこがバーニィの可愛いところだし。
でも、ここで僕に話が振られなくて良かったよ。僕も口が滑って何を言い出すか分からないからな……。
自分でも隠し事が苦手なのは理解してはいるつもりだし。表情に出やすいんだよな僕。
それを無理に隠そうとするから『意地っ張り』なんだよな僕は……。

「ところでお背中の件ですけど……。どうでしょうか?」

……何故そこで顔を赤くするんですかセイレーンさん。
セイレーン……落ちた? 寧ろ堕ちたって言ったほうが正しいかな?
でも、ムーンと随分親しそうに話してたしな……。そこはどうなんだろう?

「断わる理由もないしお願いしようかな」
「はい、よろこんで。では行きましょうか」

セイレーンが僕の答えを聞いて微笑む。
……雄なら確実に落とせるような笑顔だね。雌の僕でもドキっとしたし。
僕等は準備を手早く済ませ風呂場へと向かっていった。



風呂場に着くと僕等はドアを開ける。
何度も言うがこういう時、服を着ていないポケモンの僕等は楽で良いよね。
普段から入ってる風呂でもセイレーンと一緒だと妙に新鮮に感じるよ。
そういえば僕って物心ついてからは誰かと一緒に風呂に入るのって初めてな気がしてきたな。
以前にワカバとツララの混浴やムーンの時間に乱入しようと考えたことはあったけど未遂で終わったし。

「お風呂の入り口で考え事なんかしてどうしたんですかルナさん?」
「あ、いや。物心ついてから誰かと一緒に風呂に入るのって初めてな気がするなって思って」
「そうなんですか。私はまだイーブイの頃にムーンやシュトラちゃんと一緒に入ったことがありますね。
 私がルナさんの混浴第一号ですか。そう考えるとなんだか嬉しいですね」

……僕はムーンと混浴したことあるセイレーンさんが羨ましいです。
こう考えると僕はムーンの事を全然知らないんだよな。
セイレーン。混浴とは異性同士が同じ浴場で入浴する事言うんだよ。
それとも僕を同性ではなく異性のように見てますか?
まぁどっちでも良いけどね。もうそういう扱いを受けるのはなれたし。
いつまでも脱衣所に居てもしょうがないし浴場へとはいりますか。
僕が先に入るとセイレーンが続いて入ってくる。

「ではルナさん。お背中を流すので座ってください」
「よろしく頼むよセイレーン」

僕はセイレーンの指示を受け座るとセイレーンがまず桶で僕にお湯をかける。
そしてスポンジにボディソープを染み込ませ泡立てていく。
……何か緊張してきたな。別に緊張することもないはずなんだけどさ。

スポンジが僕の背中へと触れる。
いつも自分で洗ってるよりも力が弱いからくすぐったいな。
何て考えているうちに背中を洗い終え次第にセイレーンの右前足が僕の股間の方へ……。
って! 股間は背中じゃないし自分で洗え……。

「ひゃっ! ちょっとセイレーンそこは……」
「そこは……どうしたんですかルナさん?」

僕は抗議の視線をむけ振り向こうにも相手が真後ろではそれもできない。
しかし、かなりなさけない声を出しては合わせる顔もないよな……。

「ルナさんってちゃんと雌だったんですね。こうして撫でてるとそう実感しますよ」
「んぁあ! そ、そんなの当たり前じゃないか……。僕は雌だっていつも……ひゃっ!」

まさか大人しいセイレーンから攻めてくるなんて思ってなかった。
僕と一緒に風呂に入るっていたのはこれが目的だったのか?
セイレーンを引き剥がそうにも秘所を弄られてたら力なんて入る分けない……。
寧ろ最近欲求不満だったから身体が拒もうとしないし……。
次第に僕は迫り来る快楽に飲み込まれ絶頂への道を刻々と進んでいく。

「んあぁああ!!」
「ふふ。ルナさんイッちゃいましか」

僕は結局迫り来る快楽に争う事無く呆気なく絶頂へと達した。
僕が絶頂に達している間にセイレーンが僕に付いた泡を流す。
……不意打ちとはいえここまで一方的にイカされるなんて……。
いつまでも余韻に浸ってないで今度は僕が攻めますか。
セイレーンが妙に満足げだね。今度はセイレーンに堕ちてもらう。
冷たき太陽に仕掛けて来たんだからそれなりの覚悟はあるだろうし。

僕は振り向きざまにアイアンテールでセイレーンの後ろ足を引っ掛ける。
セイレーンは僕がここまで早く立ち直るとは思っていなかったのか豪快に転ぶ。
僕は転んだセイレーンにマウントポジションを取る。この方がずっと僕らしいよね。

「まさかセイレーンから僕に攻めてくるなんて思ってなかったよ。
 僕にここまでしておいて今更僕が嫌いなんて言わないよね?」
「そ、そんな言うはずないじゃないですか。昼のルナさんのかっこよさを見せられて惚れない雌は居ませんよ。
 流石にルナさんが冷たき太陽って知ったときは驚きましたけど、ルナさんはルナさんですし……。
 順番が逆になってしまいましたけど……私はルナさんを愛しています。
 正直に言うと私、ルナさんと初めて会ったあのときに一目惚れしてしまいました。
 でも、それの恋は絶対に敵うはずはないからルナさんにあまり接しないようにしてきたんです。
 ルナさんがムーンの彼女なのは勿論承知しています。でも私もルナさんが……。
 雌なのに雌が好きになるなんて異常なのは分かっています。ですが今日の事でルナさんの事がもっと好きになりました。
 もう自分の気持ちに嘘をつき続けたくないんです……。今回だけで良いんです……お願いしますルナさん。私とせ、性行為してください!!」

……え? セイレーンって僕に一目惚れしてたの?
確かに今思うと不自然ではないような感じで避けられてたような気もしてきたな……。
皆で並ぶときにセイレーンが隣になったのって今日のシュトラを囲んだ時がはじめてだった気も……。
正確に言えばそれは僕がセイレーンの隣に並んだんだからノーカウントか?
言われてみると今までセイレーンと話す機会も殆どなかったかもしれない。

「……迷惑ですよね。ごめんなさい忘れてください……」
「別に迷惑ではないけどさ。もう慣れたし。この家で雄は二匹、雌は三匹とヤッてるしね。
 だから僕はセイレーンが同性愛者なんて言って突き放す気はないよ」
「えっと。雄が二匹ですと当然、ムーンとツララさん。雌が三匹ですと……私以外全員じゃないですか!?
 もしかしてバーニィさんが私に相談しなくなったのって……そういうことだったんですね」

あ、やっと気が付いた。その通りセイレーン以外だからね。
まぁ当然今日知り合ったシュトラは別枠だけどさ。
そもそも襲う気満々でセイレーンにマウントポジションを取ったんだから。
……僕がこう言えばバーニィの彼氏と言っても僕は雌だけど決まったようなもんか。

「バーニィの件セイレーンの考えてるとおりだろうね。
 じゃあ今からセイレーンも僕のものって事で良いんだよね?」
「……ルナさんのハードルは予想以上に高いんですね。
 いえ、こうして私にもしてくれるのでハードルは低いのでしょうか」
「一番は当然ムーンだけど、それ以降を僕は決める気はないけどね。
 まぁ、ハードルの高さは僕からは答えないけど競争率が高いのは確かだよ。
 僕は自分を好きになってくれるって言うならそれを性別を理由に拒むことはしないね」

……当然だよね。ここは僕を『生き物』として見てくれる。以前の僕は『道具』だった。
僕を受け入れてくれるなら性別なんて関係ないよね? それとも僕は変なのか?
さて、いつまでもこんな話をしてないで早くセイレーンを僕のものにしようかな。
セイレーンはそこまで暴れないだろうからマウントポジションじゃなくても良いか。
正直に言うとこれだとセイレーンの体全体をじっくり見えないしね。

僕はセイレーンの上から退きセイレーンの体をジッと眺める。
腰は細いし、胸は大きいな。これはワカバの次に大きいかな?
ああ。僕にも胸が欲しいです。そうすれば雄に間違われることはなかったのに。
でも、そうするとここまで皆にモテなかったんだろうな……。
そう考えると自分の貧乳に少しは感謝すべきなんだろうね。……素直に喜べないけど。

「そんなに見つめられると恥ずかしいんですが……」
「そう? 見せられないような体じゃないと思うけど。
 少なくても僕は他人に見せ付けるようなプロポーションじゃないしね」
「あ、いえそう意味で言ったわけでは……。あと、そろそろ弄って欲しいなって」

……困った顔をしてるセイレーンが可愛いよ。
さて、セイレーンが催促してきたしそろそろはじめますか。

僕は顔を近づけセイレーンの唇を奪う。
セイレーンの方から僕に舌を侵入させてきたね。
そんなに欲求不満だったんですかセイレーンさん?
それを言ったら僕もかなり欲求不満なんですけどね。

互いの唾液を交換しあいながら僕も自分の舌をセイレーンの舌に絡ませる。
ぴちゃぴちゃと卑猥な水音が風呂場に響き渡る。……風呂場だと本当に良く響くな。
名残惜しい気もするけどいつまでもキスしてると先に進まないから僕は口を離す。
互いの唾液が橋を作り儚く消えていく。

「そういえばセイレーンってキスの経験ってどうなの?」
「唇が触れ合うだけのキスなら子供頃にムーンとなら……。
 舌を絡ませ合うのは流石に今回が初めてです。
 確か、触れ合うだけのキスでもファーストキスって言うんですよね。
 なら、私のファーストキスはムーンということになります」

ファーストキスはムーンとですか……。
つまり、ムーンのファーストキスもセイレーンの可能性がかなり高いと。
羨ましいな。最近僕はムーンに避けられてるのに。……てれやもあそこまでいくと犯罪だよね。

「あ! その決してルナさんに喧嘩を売っているわけではなくて!
 その、やっぱり恋人のファーストキスの相手とキスなんて嫌ですよね。
 不謹慎なこと言ってすみませんでした……」
「気にしてないって言ったら嘘になるけど……。別に良いよ。
 だって今のセイレーンはムーンよりも僕の方が好きなんでしょ?」
「はい! それは勿論!!」

僕の質問にセイレーンが力強く答えてくれる。ここまで愛されると嬉しいね。
そしてやっぱりムーンのファーストキスはセイレーンか……。
ちょっと悔しいから激しく攻めちゃおうかな。

僕は両前足でセイレーンの豊かな胸を弄りだす。
やはり大きい胸は弾力があって良いですな。
……何僕はオヤジのような事を言っているんだ。

「あぁん! ルナさんは胸が好きなんですか? 私の体を見ている時も胸ばかり見てましたし……」
「好き……っていうのもあるけど憧れ……かな? 僕の胸は見ての通りですから……」

セイレーンが顔を赤らめて僕に質問してきた。顔が赤いのは恥ずかしいから? それとも感じてるからか?
て、言うか僕はそんなにセイレーンの胸を見てたのか? 自分ではそんなつもりはなかったんだけどな……。
僕って完全に胸フェチですね……。ああ、今になってワカバの胸を弄らなかった事を後悔するよ。
今度機会があればワカバの胸を弄ろうかな。まぁ、頼めば弄らせてくれそうだけどね。

僕はセイレーンに胸を見せびらかすように立ち上がる。
無論、見せるほどのものでない事は自分が一番理解しているつもりだけど。

「……ええと、その……。貧乳も良いと思いますよ!? 巨乳だと重たいので肩なんかこったりして……。
 それに巨乳のルナさんよりも今のルナさんの方がずっと素敵だと思いますよ!」
「……貧乳の僕からすれば肩こりするほどの巨乳が羨ましいですよセイレーンさん」

……まぁそう言ってくれると僕も嬉しいけどね。
正直、巨乳の僕なんて想像出来ないし、したくないよ……。
悲しくなるけど今の僕が一番自然……なんだろうな。

また無駄話に花が咲いしまいましたね。
まぁセイレーンと話す機会が少なかった事もあるんだろうけど。
しかし、このままじゃ僕もセイレーンも満足できないしな。
もっとも僕は先にイってるけどさ……。

僕は寝ているセイレーンの秘所に顔を近づけると既にセイレーンのそこは湿っていた。
右前足で割れ目をそっと撫でると更に秘所から新たな愛液が溢れてくる。

「あぁあん!! 気持ち良いですルナさん……もっと……」
「へぇ~。セイレーンって真面目そうに見えてそんな事を僕に頼んじゃうだ~。エッチだね」
「ルナさんの前でなら私、どんな事だって……。縛られても構いませんし、道具を使われても……。
 ですが道具は破ってからにしてくださいね。流石にはじめては好きな方に破って欲しいですから……」

……セイレーンってMか!? 寧ろSMプレイも問題ないって言うしドMって言ったほうが良いか!?
そういえばこの家って『おもちゃ』もあるんだっけね。以前にツララが持ってきたし……。
そもそもあれは誰の持ち物だったんだ? 少なくても双子の部屋に置いてない時点であの二匹のじゃないんだろうな。
こう言ったって事はまさかセイレーンのとか? ちょっと聞いてみようかな。

「……もしかして以前ツララが『おもちゃ』を持ってきた事があるんだけどあれって……」
「ふぇっ!? な、何でルナさんが知ってるんですか!? ……その、私の私物です。
 ワカバちゃんやツララちゃんが良く借りに来ますけど……。いつ知ったんですか?」
「人間がテスト期間中で僕がワカバとツララの部屋で寝る事になった初日」

セイレーンの顔が「あの時か!!」って言葉が似合いそうな明るい顔になる。
まさか本当にセイレーンの私物だったんだ……。意外だな……。
僕の中の今までのセイレーンのイメージが音を立てて崩れ去ったような気がするよ。

「わ、私だって雌ですもの。その、少しくらいはそういうことに興味を持ちますよ……。
 特にこの家には雄が少ないので尚更そういう風にですね……。
 バーニィさんに相談されてましたけど、私だって年頃なわけで……。
 あの、知ってるのはワカバちゃんとツララちゃんにルナさんだけなので内密にお願いします」

まぁ、セイレーンにもそんな悩みがあるってのは共感できるね。
セイレーンって優等生のような近寄りがたい雰囲気が出てたし。
しかし、誰でも意外な一面はもってるもんだよね。今回は「まさかセイレーンが!?」って感じだけど。
大人びてるとは思ってたけど……大人だ。いろんな意味で……。
……必死に言い訳を言うセイレーンが可愛いな。こんな姿も珍しくて良いな。
まさか、ここで僕がモテたのは雄の少なさからの飢餓状態だったから? ……それだったらムーンのハーレムか。
いやでもムーンって正直ハーレムになったら逃げ回りそうだし精神的に厳しそうだな。ムーンはそういう器じゃないしね。
さて、またも無駄話に花が咲き本来の目的を忘れてる気がする……。まぁ、無駄話も楽しいけどさ。
でも今は『楽しい話』よりも『気持ち良い事』の方が大事だよね。
じゃあ、セイレーンとの『気持ち良い事』を再開しましょうか。

会話に夢中になってたからまた手順をはじめに戻そうかな。
僕はセイレーンの唇を奪うべく顔を近づける。
さっきはセイレーンから舌を入れて来たから今度は僕が侵入させようかな。
僕がキスをするとセイレーンの顔が赤らむ。この顔を赤くした表情って色っぽくて良いよね。
再度風呂場に厭らしい水音が木霊する。……今更だけどこんなに響いて誰かに聞こえてないかな?
まぁ、聞かれて困るのなんてムーンとシュトラしかいないけどさ。後は僕と交わってるわけだし。
それに、シュトラはともかくムーンに僕等の風呂を覗く度胸は絶対にないだろうな……。
僕はセイレーンの口内を犯し終えると彼女の顔を覗きこむ。

「ふふ。随分とエッチな顔になったねセイレーン。いつもの真面目な印象はないよ」
「ルナさんの前でなら私はどんな姿になっても構いませんから……」

セイレーン、嬉しいこと言ってくれるねぇ。じゃあ快楽に溺れ堕ちてもらおうか。
僕は右前足でセイレーンの秘所の筋をそっと撫でる。
敏感な箇所を触れられたことでセイレーンはビックと体を震わせた。
そしてその行為を繰り返すたびにセイレーンの秘所からは愛液が滴ってくる。

「どうセイレーン? 気持ち良い?」
「……その、私の秘所の感覚で分かるんじゃないですか?」

僕が意地悪く質問するとセイレーンが更に顔を赤くする。
勿論、答えなんか聞かなくても分かってるけどね。
でも僕はセイレーンの体だけじゃなくて精神的にも堕ちてほしいし。
こういう精神的恥辱も悪くないでしょ。まぁ、そこまでしなくてすぐに堕ちるだろうけどさ。

「……でも、ルナさんにしてもらって自分でするよりも遥かに気持ち良いです……」

セイレーンが顔を俯いて聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く。
僕に聞こえないように言ったつもりかな? でも、聞こえてるけどね。
さて、そろそろ秘所も濡れてきたし指くらいなら入れても平気かな?

僕は弄っていた秘所に指を少しずつ中へと入れていく。
濡れた秘所は僕の指を拒む事無く迎え入れてくれる。

「んぁああ!! 凄いです!! 凄く気持ち良いです!!」

セイレーンが迫る快楽に溺れ、嬌声を上げる。
そのたびに秘所は僕の指を離さないようにきつく締め付けてきた。

「んぁああああああ!! ルナさぁあああん!!!」

僕が秘所の中で指を更に動かすとセイレーンも絶頂を迎える。
セイレーンは快楽でグッタリと倒れた。気絶はしてないけど目が虚ろで焦点が定まっていない。
……流石にやりすぎたかな? まぁヤッちゃた事は仕方ないよね。
でも、一応声くらいかけたほうが良いかな?

「……セイレーン大丈夫? ちょっとやりすぎちゃったかなって。……ははは」
「……はぁはぁ。ルナさん、激しすぎます……。今度はまた私がルナさんを襲っちゃいますね」

セイレーンはゆっくり起き上がり僕を押し倒す。
まぁ抵抗する理由が僕には無いけど一方的にイかさせるのはちょっとな……。
……ブリッツほど壊れはしないだろうな。あの時のブリッツは凄かったし。
セイレーンは僕の答えを聞く前に顔を僕の秘所へと近づけ凝視する。
あれ? これってもしかしてブリッツと同じパターンになるのかな?

「じゃあルナさん、頂きますね」

セイレーンが叫ぶと同時に秘所に軟らかい何かが触れる。
何かといっても当然セイレーンの舌なんだけどね。

「ひゃっん!! セイレーン僕はまだ答えを言って……」
「でも、体はして欲しいって言ってるみたいですよ?」

……そうですよ。僕だって欲求不満なんですよ。
一方的にイかされるのは好きじゃないんだけどな。
でも、やっぱり気持ち良いよぉ……。

「ルナさんは素直じゃないですね。もう少し素直になったらどうですか?」
「ひゃん! 僕は意地っ張りだから素直になれって言われても無理だよ……」

……僕だってこれでも素直になったほうだよ。でも、あそこまでムーンに避けられると正直怖くなってくるけど……。
僕はムーンの事が好き。でもムーンは本当に僕の事が好きなのかな?
実際、行為だって同意は得たけど僕が一方的に攻めて、ムーンは僕に何もしてくれなかったし……。
そんな不安もセイレーンが与えてくれる快楽が一時だけ忘れさせてくれるけど。

「そうですよね。ツララちゃんに雄らしくしろって言っても無理でしょうし。
 でもきっと皆さんそんなルナさんが好きなんですよ。そこは自信を持って良いと思いますよ。
 ムーンだっててれてるだけなんですから。悪気はないと思いますよ。
 普段は雌に囲まれて生活しているせいか実際は他の雌と普通に話しますから。……今はですけど。
 ああやって逃げるのはルナさんに対してだけですし」
「……そうなの? 実際僕はムーンの事全然知らないから不安だったんだ」
「ふふ。幼馴染が言うですから間違いはないですよ」

セイレーンがそう言ってるだから間違いは無い……よね?
じゃあ、今は楽しむしかないよね!

「では続きを再開しましょうか」

……忘れてた。今僕はセイレーンに攻められてたんだよね……。
セイレーンが僕をイかせる為か舌の動きが激しくなってきた……。

「んぁああ!! そんなにしたらイっちゃうよぉおおお!!!」

そんな攻めに欲求不満の体が耐えられるはずもなく僕は絶頂を向かえる。
秘所を舐めていたセイレーンの顔と両前足に僕の愛液が思いっきりかかったよ。
セイレーンは手に付いた僕の愛液を嬉しそうに舐めとる。

「ルナさんもイク時は随分と高い声を出すんですね。
 先ほどはここまで声を上げなかったですけど今回はそんなに気持ち良かったですか?」
「……口にするのは悔しいけど凄く気持ちよかったよ」
「ルナさんはやっぱり素直じゃないですね。では体を洗って出ましょうか。
 ここまで暖まったんですから湯船に浸からなくても平気ですよね?」

確かにここまで暖まれば平気だね。
じゃあ、さっさと体を洗って出ましょうか。
ここまで声を出したけど本当に大丈夫かな?
まぁ、今更気にしてもしょうがないか。
僕とセイレーンは互いに体を洗い流し風呂を出た。



僕とセイレーンは並んで歩きセイレーンの部屋を目指す。
セイレーンの部屋に入ると彼女のイメージ通りきちんと片付いた部屋だった。
カーテンや絨毯は青系統でまとめられ涼しさを感じさせる。
今この季節にぴったりな部屋だね。……冬でも変えないだろうけどさ。
そして棚には以前見たことがある箱が……。セイレーンの『おもちゃ』箱ですね。
まさかここまで堂々と置いてあるなんて。もっとも箱の中身が『大人のおもちゃ』だなんて普通は思わないよね。
冷静に考えると一体どうやって『おもちゃ』を調達しているんだか。……気になる。

「そういえばルナさんは私の部屋に入ったことはないですよね?
 では、改めて。歓迎しますよルナさん。気に入ってもらえましたか?」
「うん。涼しげで良い部屋だね。しばらくお世話になるよ。
 そう言えば何で僕がここで寝泊りすることになってたの?
 この質問は答えたくなければ答えなくて良いけど『おもちゃ』はどうやって調達してるの?
 以前見たことがある箱がそこの棚に置いてあるのが見えてふと思ってさ」

僕は疑問だった部屋のことと『おもちゃ』の調達方法の二つをセイレーンに質問する。
実際はシュトラがセイレーンと一緒でも良かった気がするし。
シュトラはセイレーンを『姉さん』て呼ぶくらいに親しいわけだしね。
まぁ『おもちゃ』の調達方法は答えてもらえないつもりでいるけど。

「はじめはシュトラちゃんが私の部屋で一緒に泊まることで話が進んでいたんです。
 ですが、ルナさんが寝ていたのを良い事に『ルナさんは私の部屋で寝ることになってるんですよ』って皆さんに話したんです。
 皆さんは私が冗談を言うように思ってなかったのかあっさりと納得して今に至るんです。……やっぱり怒りますか?
 それと『おもちゃ』の調達ですが勿論月曜日で留守番している時にご主人様のパソコンで通販ですよ。
 受け取りは翌週の月曜日にしておけば誰にも見つかることはありませんしね。
 代金は木の実を余分に育てておいてそれを売って代金にしていますよ」
「いや、別に怒ることはないよ。こうしてセイレーンとも仲良くなれたことだし。
 しかし通販ですか……。確かに自分の留守番のときに使えばバレないよね」
「ルナさんは優しいんですね。勝手に寝る部屋を変えられたら怒こるのが普通でしょうし。
 ですが、ルナさんもパソコンを使うなら履歴の削除をきっちりしないとバレるかもしれないので気をつけてくださいね」

僕は優しいって言うよりも図太いだけだと思うんだけどな。
心が広いって言い換えれば響きは良いんだろうけどね。
それにしても部屋割りはセイレーンの差し金だったとはな。
今日のセイレーンは妙に積極的だったから驚いたよ。
折角教えてもらったんだし僕も機会があればパソコンを使ってみようかな?

「約一週間程度ですがよろしくお願いしますルナさん。今まで話をしなかった分ルナさんの事沢山聞かせてくださいね」
「こちらこそしばらくお世話になる。僕の昔話なんて面白いことないよ?
 前の主人に道具として育てられただけだからね。野生の頃なら少しは面白い話もあるかな。
 僕は折角だからムーンの事について知りたいね。幼馴染なら今との違いも知ってるんでしょ?」
「ルナさんに惚れてる私からルナさんが惚れてるムーンの話をさせるんですか?
 本人に聞いてくださいって言ってもムーンが逃げますからね。了解しました」

流石セイレーン。物分りが良くて助かるよ。
これでムーンの過去も少しだけ知ることが出来そうだね。

「はじめに私とムーンの出会いは五歳の時になります。勿論シュトラちゃんも一緒ですよ。
 その時は私もムーンもまだイーブイでした。シュトラちゃんは今でもイーブイですけどね。
 ムーンも初めて私と会ったときは今のルナさんと同じようにてれて良く逃げてました。
 何がきっかけだったかは覚えていないですけど次第にムーンのてれやも次第になおっていったんです。
 それからムーンが雌の前でてれることはなかったんですけどね。やはりムーンにとってもルナさんは特別なんですよ」
「あまり嬉しくはないけどてれて逃げるのはムーンの愛情表現って事なんだよね?」
「そう思っていただいて構わないと思いますよ」

良かった。ムーンに嫌われてるって事はないんだ。
きっかけがあればムーンとも進展するってことで良いんだよね。
もっともきっかけがないから、こうして悩んでるんだけどさ……。
さて約束だし、じゃあ僕も少しだけ過去の話でもするか。

「じゃあ、僕の昔話でも……」

僕が話す気満々でセイレーンの方を見るとセイレーンが寝ていた。
さっきの行為で疲れたのかな? まぁ僕の過去を話す機会なんていつでもあるか。
いくら夏でもこんなところで寝たら風邪引くよな。しょうがない。セイレーンをベッドまで運ぶか。
さっきは僕が寝顔を見られてたから今度は僕がセイレーンの寝顔を堪能しようかな。

家では唯一の一人称私の雌だけあってどこか気品があるよね。
しゃべっていても黙っていても雌らしい。……羨ましいな。
僕はしゃべっていようが黙っていようが雄に間違われるし。

「……ルナさん。愛してます……」

え!? もしかしてセイレーン起きてた!?
心配になってセイレーンを確認するとやっぱり寝ていた……。
寝言か。寝言でも言うくらいに僕の事を思ってくれてるんだね。
……やることもないし僕も寝ようかな。
当然ベッドは一つしかないからセイレーンの隣で掛け布団に包まって……。

「おやすみ。セイレーン」

僕はセイレーンの頬にキスをして眠りについた。

~fin~


コメント頂けると嬉しいです。




トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2010-02-20 (土) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.