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気まぐれ主人と俺との休日

/気まぐれ主人と俺との休日

Writer:&fervor
*官能小説です。そういった表現がいくつも含まれておりますので、お気をつけ下さい。
*また、この作品は人×ポケを含んでおります。駄目な人はお帰りください。


立秋も過ぎ、暦の上では秋になった。…暦の上では。
「………………」
「………………」
「………………うあぁぁ!!!暑い!!!ひたすら暑い!!!!!!」
…静かにしろよ…余計暑いだろ…。
「だいたいなぁ、スフュール、お前が居るから暑いんだろ!!」
変な言いがかりまでつけてきた…。さすがに、俺も黙ってばかりではいられない。
「…あのなぁ、まず、トレーナーとして、自分のポケモンに八つ当たりするのはどうなんだよ」
「う…うるさいな!あのな、俺はまず『ご主人様』なんだぞ?それ相応の対応だとか、態度だとか…」
あ、一応フォローしておくけれども、普段はここまで変じゃない。
イライラしてると決まって変なことを言うのがこのトレーナー、フール(馬鹿)…じゃなくて、ルーフの特徴で、ある意味特技だ。
「脳内で変なフォローをするな!まずフォローにすらなってないんだよ!俺は至極まともな人間だ!!…あと、全然馬鹿じゃない!」
「…少なくとも、ポケモンの脳内を勝手にのぞいてツッコミ入れてくる人間はまともとは言えないと思うぞ」
「お前がいるせいで暑くてイライラしてるんだよ!…ったく、何でわざわざブースターになんか進化したんだか…!」
…あ~、駄目だ。誰か氷持ってきて氷。重症患者がここに一人居ますんで。
というか、まず進化させたのはルーフだろ。しかも、俺の意思は完全無視で。
「あ~あ、こんなことならシャワーズ…いや、いっそのことグレイシアにでも進化させるんだったな~…」
あのな…。ルーフ、昔俺をブースターに進化させたときのこと、ほんとに覚えてるのか?


気が付くと、俺とルーフは不思議な空間に立っていた。…いや、浮かんでいた?…どっちでもいいか。
とにかく、何か変だ。まず、どこだよここ…。

と、突如光が舞い降りてきた。その中から現れたのは…人?
人というよりは…あの、童話に出てくるような妖精。斧の奴の泉の精みたいな。
「貴方の願い…確かに承りました。さて、彼を一体、どちらのお姿に変えたいのですか?」
泉の精霊(…って呼んでいいよな、もう)は、ルーフの目をしっかりと捉えて語りかけた。
「え?え?…それって、こいつを、ブースター以外のに変えてくれる、ってことか?!」
「それが貴方の願いでしょう?…さあ、選んでください」
え?ひょっとして俺、また勝手に姿変えられるわけ?
「…じゃあ、やっぱ今は暑いんで、グレイシアで!」
…やっぱ馬鹿だ。…冬、どうするつもりだ、こいつ…。
まあ、馬鹿なのは知っていたので、あえて何も言わない。俺は正直どれでもいいし。
「分かりました。…ですが、姿を変えると、それと共に、いくつかの身体的な特徴が変わってしまいますが、よろしいですか?」
身体的特徴…?まず、ブースターからグレイシアに変わる時点で、全部変わるだろ…。
「ええ。大丈夫です。大体、ブースターからグレイシアに変わるんだし、少しぐらい特徴が変わっても大丈夫です」
…なあ、そういうことは当事者の俺に確認するべきじゃないのか…?…まあ聞かれたところで意見は同じだが。
「ただ…記憶とか…、そういうのはなくならないですよね?!」
「ええ。もちろんです。…身体的特徴が変わることによって、いくつかの心情の変化はあるかもしれませんが…」
…ルーフも、何だかんだ言って、いい奴なんだなぁ、とふと思ってしまった。
馬鹿で気まぐれなところを直せば、もっとまともな人間になれると思うんだが…。
「ならOKです!…お願いします!」
「では、確かにお聞きいたしました。…その願い、叶えて進ぜましょう!」
その空間は、闇へと飲み込まれて消えていった。


「んん…んむぅ………あづいぃぃぃ…」
気づくと、俺はいつもの部屋に戻っていたようだ。…ただ、この部屋、こんなに暑かったか?
ブースターの俺は、熱さには強い。35℃程度じゃ全然応えないはずなのに。
目を開けると、やはりいつもの部屋。窓も開いて、風も通っている。…じゃあ、何で…?
「…ふぁぁぁ、よく寝たなぁ。…あ、そうだ、聞いてくれよ、スフュール。さっき夢で……………………」
時が止まった。…かのようだった。目をこれでもかというほど見開いて、ルーフは俺をまじまじと見つめる。
「お…お前……そ、それ…夢じゃ………本当に…?……よし、スフュール。俺を殴れ」
…いよいよイカれてしまったのか?それとも眠れるMっ気がついに目覚めてしまったのか?…暑さって怖いなぁ…。
と思いつつ、俺は軽~くその水色の前脚を伸ばし、藍色の前足でルーフの頬を叩く。
…水色?……藍色?
「いてっ!……夢じゃないな…ということは…本当に………!」
「…なあ、ひょっとして、ルーフもあの妖精の夢、見たのか?」
「馬鹿、何言ってんだよスフュール!…現実なんだよ!全部!」
…………………………………?………!!
「まさか、俺、本当に…グレイシアにぃぃぃぃ?!!!!!!!」
なるほど、通りで暑いわけだ。グレイシアは氷タイプ。もちろんのこと、熱いのは苦手だ。
「…なあ、グレイシアになったんだからさ、さっさとこの部屋涼しくしてくれよ~」
と、混乱冷めやらぬ俺に、いきなりの注文。俺はエアコン代わりかよ。
「あのな…なったばっかりでやり方も分かんねーのに、どうしろって言うんだよ」
「適当にやってみろって。たぶんできるだろ、本能とか何かで」
「何か」って何だよ「何か」って…。…まあ俺としても、やらないと暑すぎて死にそうだ。
とりあえずは体の力を放出してみる…。気を集中して…少しずつ解き放つ…。
「おおおぉぉぉ!涼しい!!!!!」
…俺にとってはまだまだ暑すぎるんだが…これ以上やると止まらなくなりそうだ。止めておくとするか。
「…お前の体も冷たそうだな…それっ!」
ルーフが俺に飛びついてくる。見事なキャッチングで、俺はルーフに捕らえられた。
「熱っ!馬鹿、触るな!お前の体温は俺にはすんごく熱いんだぞ?!…さっさと離れろって!!!」
「あ~、きっもちいいなぁ~…。すげ~ひんやりしてる…。抱いちゃおう」
「…離せ、といったはずなんだが…?…黒こげにしてやろうか?」
…あ、今の俺には無理だったっけ。「…氷づけにしてやろうか?」が正しいのか。
「いいじゃないか抱くぐらい。こう…むぎゅってするとすんげー気持ちが………………………………………」
二回目。再び時が止まったようだ。でも…むぎゅってされると、なんか気持ちいいんだよな…。
そして時は動き出す…。
「おま…あの………ちょ、…ちょっと…風呂場の鏡見て来い。…その…下半身を……だな」
「……は?」
「いいから!早く!」
訳分かんないな…。そもそも、さっきから興奮したりぽけ~っとしたり怒鳴ったり…喜怒哀楽が激しすぎるだろ。
ああ、訳分かんないのも、喜怒哀楽が激しいのも昔からだったっけ。知らないだろ?あいつ、昔っからずっとこうなんだよ…。
とまあ、ぶつくさ言いながら従うのも、昔っからの俺の性格なんだよな。情けないことに。
そんなこんなで風呂場に到着。とりあえず鏡を見つめてみる。…う~ん…見れば見るほど別人だな…。
声も結構変わったし、言わなきゃ誰にも分かんないだろうな、これ…。
…さて、なんか変態ワードが飛び出してたんだったな…下半身が一体どうしたんだよ。
別になんとも………………………………………………………………………………。
……………………………………………………………………………………………………………。
「えええええええええええええええええええええっっっっっっっっっっっっっっっっっ?????????!!!!!!!!!!」
あの…その……なんか胸があるな、とは思ってたんだけど…。
…その、だからだな…。………あ~……、うん。あるべきものも無いみたいだし。まあ、結論は一つ、だな。

……俺、雌になってるんだが。

「なんで?どうして?」が頭の中で繰り返される。そういえば…
『…ですが、姿を変えると、それと共に、いくつかの身体的な特徴が変わってしまいますが、よろしいですか?』
そうか…身体的な特徴って…こういうことだったのか…。
『…身体的特徴が変わることによって、いくつかの心情の変化はあるかもしれませんが…』
さっき、胸を抱かれたときに感じた気持ちよさ。それってつまり……!
いやいやいやいやいやいや!駄目だろそれは!いくらなんでも、元は雄だった俺が、ましてや自分のトレーナーとだなんて…!
よし、落ち着こう。いったん落ち着こう。…でも、何だろうな…。あいつ見てると…なんか…。
だーかーらー、え~い、待てって俺。これはまずいって。…だけど…胸が苦しい、って言うか…。
違う違~う!…違うだろ。…違うよな?…違うのか?…違わないかも…しれないな…。
いや、駄目だって。…よし、忘れよう。いつもと同じように、いつも通りに生活しよう。そうだ。それしかないんだ。

「…で、どうだった?」
「やっぱ…雌、だったよ…俺」
そういえば、結構こいつもかっこいいよな…って。どれだけ発情してんだよ、俺!
発情期、とかなのだろうか。雌の発情期って、こんな感じなのか?
「そうか…。ま、これで何が変わるってわけでもなし、いいだろ。涼しくなったしな!」
俺にとってはもう変わり過ぎて大変なんだが…おまけに暑いし…。
全部こいつの気まぐれのせいだ。こいつの気まぐれ、たちが悪いな。…今更気づいても時すでに遅し、か。
「あ~あ。暇だし、久しぶりに散歩でも行くか!」
今の状態の俺と?散歩?…冗談だろ?な?
…ほんと、たちが悪い。


「なあ…もう帰らないか?」
「お前にしては珍しいな。いつもならバトルだの何だのって、喜んでるじゃないか」
…ああ、ルーフは文字通りフール(馬鹿)だったのを忘れてた。まったく…少しは考えろよ。
「あのな…こんな慣れない体で、動くのすら大変なのに…ましてやバトル?冗談じゃねーよ…」
「いいじゃないかスフュール。俺はお前の力が見れるの、すごく楽しみでさぁ…だから、つい、な?」
大変なのは俺なんだぞ…というより、俺…バトルはさっぱりだったはずだぞ?
いよいよもって頭が"オーバーヒート"したんじゃないかと心配になる。
「…いや、してないから。俺は極めて正常な頭脳の持ち主だからな?」
…「正常」?…どこを見たら「正常」といえるのだろうか?
俺からすると「異常」にしか見えない。…いつも。
「って、そもそもどうやって俺の心のツッコミ読み取ってるんだよ!」
「長年の付き合いだし、当然心も通じ合うわけだな、そりゃあ」
いや、無いだろそれは…。と言いかけたが、残念ながらそのツッコミは声にならなかった。


向こうからやってきたのは一匹のカイリキー。…と、そのトレーナー。
この公園では、見知らぬ人達同士がよくバトルを繰り広げている。
で、今日は俺達が…いや、俺がそれをすることになるわけだ。…この体で。いつもなら喜んでるんだがなぁ…。
「よし、純粋に1対1(サシ)でやろうじゃないか。それも、指示なしで。僕はこのカイリキー、ウォープを使う」
「よし、じゃあ俺はこいつだ。頼んだぞ、スフュール!」
見て分かる。相手はかなりの強敵だ。しかも格闘タイプ。まあやるさ、やるけど…。負けても文句は言うなよ?

「試合…開始だ!」

「もらったぁぁ!」
いきなりの攻撃。…まあ、俺の方が素早さでは勝っている。
飛んできた"ストーンエッジ"を左によけて、とりあえず前から使えた"シャドーボール"を放つ。
「ぐぁっ…ほう、やるじゃないか…雌の癖になぁ!!」
どうやら、雌に負けるのは嫌らしい。まあ当然っちゃ当然か。
素早さの利は俺にある。当たりさえしなければ勝てる。こいつの攻撃は大振りだった。避けるのは容易い。なら、次も…!
そんな考えを打ち砕くと共に、恐るべき速度で拳を打ち込まれた。"バレットパンチ"。
完璧な油断。意識が一瞬体から分離する。打たれ弱い俺は、もう立つことで精一杯。…やっぱ勝てない、か…。くそ……。
「これこれこれだよ!!やっぱ雌は所詮雌。雄には勝てねぇんだよ!」
何かは分からない。でも、何かが。そう、何かがカチンと来た。単純に言うなら…キレた、だろうか。
…雌、か…。なら、見せてやろうじゃないか…お前が嘲った、「雌」の俺がな!!
渾身の力を振り絞り、体中の冷気を一気に開放する。
すぐに変化は現れた。見る見るうちに、彼の足の周りの水分が凍っていく。
「な…馬鹿な!こんな力…ありえない…!」
身動きが取れなくなったそいつの元へ、にっこりと、そしてゆっくりと歩み寄る。
「…しゃらくせぇ!こんな氷、ぶっ壊して…!」
瞬間、飛び掛った俺はその頭に"アイアンテール"をお見舞いする。
相手が隙を見せたその瞬間、俺は体中の冷気を圧縮し、口から放射する。…相手が氷づけになるまで。
「"れいとうビーム"だ。…ご自慢の"インファイト"、氷が相手じゃ手ごたえ無いんじゃないのか?」
勝負はついた。だが、まだそれを認めたくないらしいそいつは、必死に氷を割って脱出してきた。…よくやるな、あいつも。
じゃあ、終わらせてやるとするか。体中の冷気を空気中に勢いよく放出する。その冷たい風に乗り、氷の嵐が巻き起こる。

――"ふぶき"――

終わった。俺は冷気の放出を終える。と同時に、再び彼を覆った氷は崩れ去り、中からあいつが崩れ落ちてきた。
「…まあ、文字通り、雌雄(めすおす)雌雄(しゆう)を決した、ってところだな?…『雄』のカイリキーさんよぉ?」
こめられるだけの皮肉を込めて言い放つ。…ああ、すっきりするなぁ、こういうの。


俺の勝利にルーフも大喜び。なんてったって、ここんとこ一回も勝ってなかったからな。めでたしめでたし、か?
「…よっしゃあ!今日はドンチャン騒ぎと行くか!ジュースとか菓子とか、たくさん買い込むぞ!!」
…むしろ、全然めでたくなかった。はぁ、暫くは満足いく食事が出来ないな…。
家計のことぐらい考えて欲しい。…だけど、あいつの喜ぶ顔見てると、なんだかそんなことはどうでも良くなってくる。
あれ?俺、また変なこと言ってるよな…?…どうしたって言うのだろうか?
…やっぱ、これが「雌に変わる」ってことなのか…?…じゃあ、この気持ちも…?
今考えるのはよそう。…うん、それがいいな。…そう、あいつは俺の…「ただの」相棒だ。


「で、調子に乗ってこれだけ買った、と。…頭大丈夫か?」
「いいじゃないか、久しぶりの連敗脱出なんだから。記念だよ記念。それに、お前もめっぽう強くなったみたいだしな」
我ながら確かに驚いた。自分がここまで出来るとは…。そりゃ、雌に雄が勝てないわけだ。
「まあ記念だって言うなら、喜んでもらっとくが…後3週間弱、お金もつのか?」
…返事しろよ!…見て分かるぐらいに顔面蒼白。…え?マジで考えてなかったのか?
「…なあ、どうしよっか、残り3週間ぐらい。…デパ地下巡りとかしてみる?」
こ…ここまでとは…。どこぞの白いお父さん犬もびっくりの予想外だ。
いっそのこと、「フール(馬鹿)」に改名したほうがいいんじゃないのか?
「あのな、ルーフ…計画性とか、そういうものって持ってないのか?」
「ない!ないものはない!」
…あ、そうですか。
「…そうか、分かった。聞いた俺が馬鹿だった」
「分かればよろしい。…さあ、食うぞ!」
なんか間違ってないか?すごい腹立ってきた…。
「…ああ、とりあえず食うか」
気持ちが静まりそうに無い。…食べて忘れることにしよう。
俺は目の前に並べられたたくさんの菓子を次々に口にくわえては、一気に噛み砕いていく。
腹いっぱいになるまで、俺達はひたすら菓子を貪り続けた。
…太るんだろうな、こういう生活続けると。
こんな駄目な奴、何で主人に選んだんだか…。なぁ?

でも…こういうところも…俺としては、そうだな…ああ、悪くない。…って。違うだろ俺!
…雌と雄、か。…今の俺は雌。…ということは…。…だから、そうじゃないだろ。
…こんなこと…考えちゃいけないんだから。俺はポケモン。あいつは人間。
ましてや俺は、元雄の…あいつのパートナー。…禁忌(タブー)だ。こんな……「恋」は。

そんなこんな考えてたら、ほとんど食べつくしてしまった。
誰が見ても食べすぎだと思われる量。…一体どこに入るのやら。
バトルの消耗、結構多かったんだろうな。だから太らないだろ。…そう思うことにしよう。
そんな中、満足そうに腹をさするルーフ。妊婦かお前は。
「食った食ったぁ!…次は…風呂、か。スフュール、お前先な」
いつもなら必ず、「俺が先だからな、お前は待ってろよ!」とか言い出すところだ。
熱でもあるのか?風邪でも引いたのか?あるいは明日地震が起こるのか?
「あ、言っとくが熱もなければ風邪も引いてないし、地震も多分来ないからな」
何というタイミングばっちりなツッコミ。「読心術」って難しいんじゃないのか?
…そんなことはどうでもいい。大事なのは、その理由だ。何か理由があるはず。ひょっとして罠?
「…珍しく一番風呂くれるなんて…いいのか?」
とりあえずそれとなく尋ねてみることにした。
「考えても見ろ。お前、もう熱い風呂は入れないだろ?」
返ってきたのは納得の答え。あ…そうか、俺、グレイシアだったんだっけ。
この体で熱い風呂など、完全に自殺行為だろう。…気づいてよかった…。
「分かった、先入る。…お前は?」
「俺は…もう明日でいいや。眠いから寝るわ。じゃ、おやすみ~」
…自由だな、こいつ。それにしても、一体どれだけ寝てるんだよ…。
早くも寝息が聞こえてきた部屋を後にして、俺は風呂へと向かった。


「はあ…疲れたなぁ…」
風呂に入る、とは言っても、ルーフの助け無しに出来ることは限られている。
シャワーの蛇口を捻るのが精一杯で、体をきちんと洗うことは出来ない。
おなか周りとか、足の届きにくい場所はなかなか洗えないのだ。
「とりあえず水っと。…うん、ちょうどいいな」
やはり、冷たい水じゃないと駄目ならしい。この体もなかなか大変だ。
まずは体を洗う。石鹸は使えないので、当然足でこするだけだ。
それでも、あらかたの汚れは落ちていく。グレイシアはあのふっさふさの毛が無い分、かなり洗いやすい。
…ブースターの頃は大変だったなあ、としみじみ思い出す。って、まだ変わってから一日も経ってないんだけど。
顔、頭、洗いにくいお腹周り。背中は流すだけ。脚も洗って…あとは…その…なぁ?

…雄のときとは全然異なる、上半身の一部分と、下半身の一部分。洗わなくちゃいけないのは分かってる。
でもなぁ…。ためらうな、といわれても無理だ。…元雄の俺には。
それでも、そのふっくらと程よく実った上半身のその部分を、ゆっくりとこする。
「結構やわらかいものなんだなぁ…これ…」なんてことを思いながら…って、これじゃただの変態だろ!
ふう、まあ上半身はこれでいいだろ。…後は…"あそこ"か。

これまたよく熟れている…なんて言うわけにもいかない。ほんとの変態になりかねないからな。
どう洗えばいいんだろうか…。ただ単にこすればいいのか?
俺はその箇所に前足をゆっくりと伸ばし…そっと触れる。
「ひゃっ!」
…明らかにトーンの違った声。やばい、これはやばいって…。
それでも洗うしかない。再び触れて、今度は優しくこすってみる。
「ふぁっ…ひゃぁっ…ああっ…ん…んんっ…」
なんとなく感じるその刺激を必死にこらえて、何とか洗う。…ひたすら洗う。
「ん…あっ…ふひゃっ…ひゃぁっ…んあぁぁっ…」
…徐々に速く、より強く…洗う。洗う。…とにかく洗う。洗いたい。
その行動のエスカレートに比例するように、そこが少しずつ濡れ、艶めかしく輝きだす。
「……あああああっっっっっっっっっ!!!!!!」
一瞬体が震えたかと思うと、一段と多くの液体がその箇所から流れ出してきた。
…暫く気持ちよさの余韻に浸り…そして、自分のしたことに改めて気づく。
罪悪感、恥辱感、達成感…そんなものが混じりあい、なんともいえない、まさに「複雑な気持ち」になってしまう。
俺…なにやってんだろ…。

とそこに、だんだんと大きくなってくる音が響いてきた。その足音は近づいてきて…。
ものすごい勢いで引き戸が開いた。そこにいたのは…ルーフだ。
「スフュール、どうした!!…………………あ…ご、ごめん!」
こんどは引き戸が勢いよく閉まった。…そりゃ、この状況を見たらそうなるだろう。
「おまえがそんなことになってるとは思わなくって……だから…そんなつもりじゃなくって、その…」
「なあ、ルーフ…。見たんだったら…責任ぐらい取ってくれないか?」
思わず出てきた一言。…お、おい…何言ってるんだよ、俺…!
ここはとりあえず、もっと別のほうに話を逸らそう。…落ち着け、落ち着け…。
…ルーフは雄で。今の俺は雌で。今の状況なら確実にその先も…。
「…だから…その…つまり、えーっと…この続き、手伝えよ」
そうそう、手伝え……あれ…?
「…スフュールがそういうんだったら…分かった、…手伝えばいいんだろ?」
なんか当初の考えとは違うような…。…いや、気のせいだ。
ルーフが俺と…いけないことをしてくれるかもしれない。いや、してみせるさ。
発情した雌が、雄を逃がすわけないだろ?!……ん?………ま、いいか。


風呂場の床で仰向けになる俺。ルーフは少し照れつつも、俺のそのあられもない姿を見つめている。
俺が目で合図をし、行動を促す。…ルーフは、その指を俺の秘所に這わせて、ゆっくりと動かし始めた…。

「…んぁ……ルーフ…上手いじゃん……あうっ…」
「俺、こういうのは経験ないから…あんまし分かんないけど…これでいいんだよな?」
「うん…あってるよ…ああっ……」
一度目の絶頂から、まだ間もない俺。より敏感になったその割れ目からは、絶え間なく蜜がこぼれていく。
「…ルーフ……俺…そろそろやばいかも…くぁっ…んんっ…」
ルーフは軽く頷くと、一気に手の動きを速めた。秘所は既に満遍なく濡れ、いやらしい眩さを放っている。
「んっ…うぁぁぁぁぁっ!ああっ!ぁううぁぁぁぁっっっっっ!!」
二度目の絶頂。体は小さく痙攣を起こし、全体でその衝撃を受け止める。
はぁはぁと荒い吐息の音。…疲れきった体は、暫くの間立つことを許さなかった。

何とか立ち上がり、再びルーフを見つめる。…さすがに恥ずかしいのか、目を合わせてくれない。
…と、俺の目がある一部分を捉えた。今の俺が、最も強く欲しているもの。俺の理性を吹っ飛ばすのには十分だった。
「ぐわっ!…スフュール…?お前、何を…?……!待て!そ、それは…俺は大丈夫だから!」
「どこが大丈夫だよ。…我慢は良くないって、昔っから言うだろ…?…ほら、今度は俺が手伝う番だ。気持ちよくしてやるよ…」
一気にルーフのズボンを下ろし、高くそそり立つ彼の象徴を外気に触れさせる。
今の俺にとって、それはまさに「ごちそう」以外の何者でもなかった。…ご馳走はおいしくいただく。当たり前だよな…?
まずは前足でそれをはさみ、扱いていく。まだ半分ほどしか肥大していなかったそれが、その頭をいっそうもたげる。
一分もすれば、さっきよりもより大きくなった、完全なその形が現れた。
「…!スフュール、そこまでは…ああああっ!」
次はそれを味わう番だ。先端を口に含み、舌を使って周りを舐っていく。…どうやら、効果は覿面みたいだ。
ルーフの喘ぎもいっそう大きく、そして激しく、早くなっていく。最後が近い証拠だろう。
「うあっ…もう駄目だって…スフュール………!」
彼のモノがヒクヒクと引きつりだしたのを感じ、俺はいったん行動を止める。
「駄目なんだろ?…じゃあ、ここらでやめとくか?」
「…スフュール……こんなところで…やめるのか?」
少し涙ながらに訴えてくるルーフ。ほら、やっぱそうだろ?…知ってるよ、続きがしたいことくらい。
「そこまでしなくていい、って言ったのはお前だろ?…それとも…続き、したいのか?」
だからこそ、あえてじらす。主導権は俺が握る。…今まで振り回された分、な。
「………………したい…」
「ん?きちんと言ってくれよ、よく聞こえないだろ?」
「…続き、してくれないか?…頼む…」
「よく言えました。…じゃ、いよいよ…本番、いってみるか?」
俺もどうなるかはよくわからない。痛いとか、そういうのも良く聞くけど…今はそれが楽しみで仕方ない。
ルーフが…俺と…そう、一つに。…一つに…なってくれるんだ…。
俺は再び仰向けになり、どろどろに濡れた秘所を晒す。ルーフの目は、既に雄の…獣の目つきへと変わっている。
俺も、ルーフも、一呼吸して。…意を決した。


「…ゆっくり、行くぞ…?」
これだけの獲物を前にしても、ルーフは俺のことを気遣ってくれる。
…こいつの優しさ。それを感じたからこそ、俺はこいつを主人に選んだんだろう。…きっと。
「ああ、…大丈夫だ。来て……くれ」
痛いほどに張り詰めたルーフの棒が、自らの蜜壷へと進入してくる。
未だ誰の進入も許さなかったそこは、未知なる物の侵入に最後の抵抗をする。
「…くぁ…スフュール……き……つ…………ううっ…」
その抗いに負けじと、ルーフも自らを使って中の道をこじ開けてくる。
そして…それは初めての証へと到達する。
「ほんとに…ほんとに俺で…いいんだな?…スフュール……?」
「…おまえじゃなきゃ…嫌だよ…」
お互いにその気持ちを確かめ合い、少し微笑んで。
…どちらともが、初めての経験へと、足を踏み入れた…。

「血、出てるぞ…?痛くないか?」
「……いや、全然。…むしろ…気持ちいいくらいだよ…。……続けてくれ。…最後まで、責任取ってくれ」
その一言で、ルーフは豹変した。…一呼吸おいて、一気にそれを突き上げてくる。
「んんんあぁぁぁぁっっっっ!!!ああんっっ!うあんっ!!!」
あまりの激しさに、あまりの快感に、体全体が悲鳴を上げる。
考える余裕も無かった。ただ、彼と繋がっていたい。…ずっと、このまま。
その一心で、自らももぞもぞと動き出す。…彼の動きと、自分の動き。生まれる快感が、脳のすべてを支配する。
「うくっ………スフュール…もう……駄目……………うわぁぁぁぁ!!!」
「俺もだ……ああんっ!んあっ!っああああああああああああ!!!!!」
自らの秘所から噴き出す潮。彼が中に放つ彼の分身。繋がったところからとめどなくあふれ出す、淡いピンクに染まった液体。
そのすべてが、ルーフとの行為を、繋がりを感じさせる。消えることの無い、体と心の、真の繋がりを。
ルーフの息も完全に上がっている。…俺も、もう限界だ。
絶え間なく快感に突き動かされた体は、言うことを聞かない。
急激な睡魔に打ち勝つことなど、もう出来ない。…俺の意識は、ここまでだった。


目に飛び込んでくる光。耳に飛び込んでくる音。そのどれもが、朝を知らせている。…朝?
「…あれ?俺、確か風呂場で…」
俺はいつも通り、ルーフの寝室に横たわっていた。…まさか、全部夢?
しかし、体はしっかりとグレイシアのものに変わっていた。そして、わずかに残っている独特の匂い。
恐らくルーフが洗い流してくれたんだろう…が、完璧に消すのはやはり不可能だったようだ。
そうだ。夢なんかじゃない。昨日、俺は勢いのまま…ルーフと……。
昨日はまったく浮かんでこなかった罪悪感が心の中に湧き上がってくる。
…やっぱ、まずいよな…こんなこと。…きっとルーフも…。嫌われた、か…。
しなければよかった。やめておけばよかった。後悔してもし切れない。
許されることではないけれど…謝ろう。…ルーフに。
「…お、やっと起きたのか。おはようさん、スフュール」
振り返った先にいたのは、いつもの笑顔で語りかけてくるルーフだった。
「…おはよう、ルーフ…。…あの、さ。…昨日は…ほんと……どうかしてた。……ごめん」
怒鳴られるとか、文句言われるとか、叩かれるとか、そういうことは覚悟していた。…返ってきたのは、予想もしない返事だった。
「ああ、昨日、ね。…いいよ、別に謝んなくても。結局やったのは俺だしさ。それに…ちょっと…嬉しかったし、な」
照れくさそうに目を逸らすルーフ。思わず抱きしめたくなるほど、可愛くて。
「ありがとう、ルーフ。…これからも、俺達、いろんな意味で『パートナー』で…居てくれないか?」
次の瞬間、俺の体が持ち上がる。抱いているのは、もちろんルーフだ。
「…ああ、当たり前だろ?ずっと…『パートナー』だよ…」
唇に当たる、やわらかくて甘い感触。…パートナーの証を、俺達は結んだ。

「…さて、そろそろ行かなくっちゃな。留守番、頼んだぞ?」
「…なあ、一ついいか。俺はグレイシアになったが…冬はどう乗り切るんだ?」
「え………?」
…本当に考えてなかったのか…。あのな、ルーフ。冬っていうのは、毎年必ずやってくるんだぞ?
「ま、まあ何とかなるだろ。…なるよな?…うん、なって欲しい。…できれば…」
そんなもので何とかなったら奇跡だ。…まあ、今回は本当に「何とかなった」わけだが…二度目は無いだろう。
「まあいいや。あとさ、ルーフ。まさかとは思うが…その格好、学校いくつもりか?」
「当たり前だろ?今日は月曜日だぞ?休日も終わり。…じゃ、遅刻するからもう行くわ。じゃあな」
…ここまでくると、天然でも済まされない。真正の馬鹿だ。改めて思う。改名がお勧めだ。
「だーかーら、俺は馬鹿じゃないっての!」
「…今日、敬老の日だぞ?」
…長い沈黙。ルーフもまだ状況を飲み込めてないようだ。マジで忘れてたとは…。
まあ、ルーフらしいといえば、ルーフらしいな。
「…はあ、ほんっと馬鹿だな~。…でも、俺は…そんなルーフが、…大好きだ」
「馬鹿で悪かったな…。…でも…ありがとな」
お互いの目が相手を見つめて、お互いに顔を背ける。…ルーフの顔、真っ赤だ。多分俺も。
で、なんだか可笑しくなって、思わず笑ってしまう。似てるなぁ、俺達って。
「あ~あ、それにしても、早く起きて損した…。…そうだ、せっかくだし、お前も俺の布団で一緒に寝るか?」
ルーフと一緒に寝られるのは嬉しい。…だが、もちろん問題も山積みなわけで…。
「まて、お前とは暑すぎて一緒には寝れないんだって…だぁ~、触るな!…無理やり連れて行くなぁ~!!!!!!」
平凡な休日が、また始まろうとしていた。



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  • >>↑
    新しい…でしょうか。そういっていただけるとうれしいです。
    続きがはたしてどうなることやら…低い文章力ですが、フルに使って書いていきたいです。
    コメントありがとうございました。 -- &fervor 2008-09-09 (火) 23:08:07
  • 僕的にはけっこういいとおもいます!続き頑張ってください! -- ルギアス ? 2008-09-11 (木) 23:55:05
  • >>ルギアスさん
    コメントありがとうございます。
    全然上手ではないですが…頑張りますね。 -- &fervor 2008-09-12 (金) 00:35:27
  • ブースターも墜ちるとこまで堕ちたか……いや…こっちの話です^^; -- Fロッド ? 2008-09-14 (日) 22:47:14
  • >>Fロッドさん
    堕ちちゃいましたね…。そういえば、自分の書く雄は大体壊れ気味ですね。仕様です(ぇ -- &fervor 2008-09-14 (日) 23:06:41
  • いい話でしたねこういう展開も面白いと思います スフュールも自分のこと俺じゃなくて私って言えるように成らないとね☆ -- Fighter ? 2008-10-18 (土) 23:56:41
  • >>Fighterさん
    わざわざコメントありがとうございます。
    彼…いや、彼女が完璧に雌になれる日は来るんでしょうかね?…書いてる本人でも予測不可能です(ぇ -- &fervor 2008-10-19 (日) 20:57:11
  • スフュール可愛い・・・。こういう性格の個 -- sorariku ? 2009-02-04 (水) 20:06:50
  • >>sorarikuさん
    そういっていただけると嬉しいです。まあ、スフュールにとっては複雑かも知れませんがw
    返事遅れて申し訳ないです。コメントどうもありがとうございました。 -- &fervor 2009-4-5 (日) 10:43:22
  • 私こうゆう物大好きです。とても面白かったです。
    ――ラティアス ? 2013-05-01 (水) 00:10:59
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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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