ポケモン小説wiki
暑い、熱い、アツイ。

/暑い、熱い、アツイ。

あっつい……。なんで夜なのにもかかわらずこんなにも暑いんだよ。もううんざりだよ。これ以上ないってくらい薄手の半袖のパジャマを着ていながらも汗が噴き出して、それをパジャマが吸い取る。そしてそれが皮膚に張り付いて余計に僕の体を温める。いっそのことこんなわずらわしい服など脱ぎ捨てて開き直って裸体でベッドの中へダイブしたかったがすっかり汗をかいている体でそんな事をすれば夏風邪を引くにきまっている。流石の僕でも風邪だけはひきたくない。明日だって何事もなかったかのように学校が始まるのだ。冷暖房の整っていない僕の学校でも窓を開ければ涼しい。そんなことを考えながら自分の部屋に取り付けられている窓を恨めしげに眺める。どうしようもない位置に取り付けられたこの窓。窓として役目をはたしているのは僕がベランダに出るときだけだ。それですら目的はあくまでも出入りである。僕の部屋の窓は風を通すところに目的はない。おまけに僕の部屋のつくりからして風が全く通らない。ほかの部屋には最低2つは窓が付いているのだが僕の部屋はひとつしかない。風が流れないため夏だとこの部屋だけ異常に暑くなる。デジタル時計の機能の一つに内蔵されている温度計なんか見たくない。見てげんなりするのは目に見えている。それほどこの部屋の温度は何かがかなりおかしいのだ。
さて、僕は今この灼熱の部屋の中の床の上で大の字になって寝転がっている。あらゆる試行錯誤の上この場所、この体勢が最も涼しく楽な姿勢であることが判明した。……先ほど涼しいといったが前言撤回だ。暑い。どうしようもなく暑い。暑いことには変わりはない。ただこの体勢のほうが"まし"なだけだ。全く。一体全体こんなにも暑い原因は何なのか。気休めにでもこれだけでもはっきりしてほしい。炎暑という言葉のように昼間暑いのはわかる。でも、お天道様が休んでる間もなんでこんなにも暑いのかが全く分からない。自分しか理解できないような知識をひけらかして勝手に自分で天狗になっている世の中の研究者たちにはこういうことを解明していって世間に分かりやすく広めていってもらいたいものだ。理不尽な暑さのせいでだいぶ理不尽なことを言ってしまったな。世の中の研究者さん。すみませんでした。

さてヒマだ。暑い暑いと思うのはもうやめだ。暑いと思うから暑い。暑くないと思うから暑くなくなる………わけではないので違うことをかんがえる。とりあえず部屋の電気はつけないでおくことにした。電気をつけると体感温度が2度も上がるそうな。あぁ、くわばらくわばら…。僕はあいにくまだ自殺する予定はないんでね。電気なんかつけない。暗がりで僕は自分の眼鏡を探す。どこに置いてあったのかすぐに忘れてしまう。これも暑さのせい、ということにしておきたかったがだいたいみんなこういうものだ。眠気に頭が支配されているときに眼鏡を置くとその時の記憶がきれいさっぱり消えている。僕のように寝ていなくても同じような現象が起こる。こういう現象を研究者たちには解明していってもらいたいのに。やれ、ナノ単位でポケモン解明だ。解剖だ。電顕万歳とか意味不明な文字の羅列を日本語ではなく英語で書き綴って日本の雑誌に載せる。まったくもって理解しがたい行動だと思うよ僕は。そんなことを論文にするくらいなら『睡眠前の行動と睡眠後の記憶の相互関係について』という論文を書いていたほうがどれだけ社会の役に立つことか。ほぉら。またヤケになってきた。『暑さと脳、及び心理状態についての研究』という論文も提出してほしい。何だ僕は。研究者に対して恨みでもあるのか。ないと言ったら嘘になるけど今は明らかに僕の頭がおかしい。とりあえず研究と称して簡単にポケモンを殺めるような研究者どものことは置いといてこの状況の打開策を論文に……あぁ。もう論文からはなれたい…。机の上に放り出してあった眼鏡を装着しため息をついた。




…………。

おっと、無事に寝れて物語が進むとか思ったかい?おあいにくだね。寝れないよ。こうも眠れないでいると一人二人ぐらい道連れがほしくなってくるな。いるっちゃあいるんだよね。道連れぐらいは。いろいろな事情も積み重なって好奇心からそいつを今ここに呼び出しても見たいけどそんなことして怒られるのもヤだしなぁ…。でもこのままだとさびしくて僕が死んじゃうかもね。…ウソ。暑くて死にそう。それに、僕の大事な大事な道連れを呼び出せば少しは涼しくなりそうだし。……こっちのハートが固まっちゃうほど冷たいところもあるけどね。でもいいや。どんなふうに罵られたって構わない。この暑さを凌ぐか共感してくれるやつがいないとホントに肉体的にも精神的にもどうかしそうだ…。僕はとうとう我慢できずに机の上に置かれていたモンスターボールを手に取り宙に向けて投げた。
眩い光とともにモンスターボールから一筋の影が飛び出す。次第にモンスターボールの光も収まり目の前に現れたものを確認できるようになっていく。目の前に現れたのは……あぁ。涼しい。見ているだけで涼しくなるような氷を連想させる鮮やかな水色の体をしたポケモンが目の前に現れる。目の前のポケモンが現れると同時に少量の冷気がモンスターボールの中から部屋に広がり普段は絶対鳴るはずのないチリーンの形を模した風鈴が涼しそうな音を立て数回揺れた。
……涼しいと思ったのも束の間。あっという間に部屋に残っていた熱気が部屋の温度を上げてしまった。目の前にいるポケモンは特に騒ぐ様子も見せず淡々と僕を睨みつけていた。まるで獲物を狩るかのような野性的な凄味を見せている瞳とは裏腹に体のほうは力なく床へと落としていた。やっぱり氷タイプにこの暑さは反則か…。そう思いながら襲われなかったことに運の良さを感じ目の前のポケモンのネクタイもみあげを手に取った。それを自分の額にそっと触れさせる。うん。涼しい。湿布もこんなに涼しければ全身に湿布をつけて寝られるのにな…。そんな馬鹿げたことを考えていると目の前にいるポケモンは不機嫌そうな声を上げた。
「ちょっと……っ。…あつい…」
目の前のポケモンは首を横に振ってもみあげを額に付けている僕に嫌がるそぶりを見せた。流石に今ここで反撃されるのも馬鹿らしいし僕は握っていたもみあげをそっと離した。目の前にいるポケモンは新雪ポケモンと言われるだけあって涼しそうな色と格好をしている。現に涼しかったわけだけどこの通り、それでもまだ新雪。マンムーのように常に辺りを凍らせるようなポケモンではない分普段は一緒にいられるけどこういうときにお互い辛い。目の前のポケモン、グレイシアは普段出歩く際には気取ってか見栄か決して垂らすことのない耳を今僕の前で垂らしている。一瞬僕の頭の中にモンスターボールの中に戻してあげたほうがいいのではないかと良心が囁きかけてきたもののトレーナーと苦境を歩むことこそいい関係作りのもととなるのだ。と正当化して今に至る。いい関係に……なれたらいいものだと思う。ホントに。 イーブイのころから僕らは一緒だった。その頃、僕にはイーブイしかいなかったしイーブイにとっても本当に心の内から話せる相手と言ったら僕しかいなかったと思う。でも、去年の冬。イーブイはグレイシアに進化した。その途端、今まで甘えてきたくりっとした瞳は鋭い目つきのものに変わりどんな会話をしてもそっけない。甘えてくれることすらなくなった。てっきりポケモンの進化だなんて外見と力が変わるだけものだと思っていたけどまさか精神面にまで影響するだなんて、そんなこと知る由もなかった。それから毎日がすれ違いの連続でモンスターボールに入れている機会も多くなったし、グレイシアもそれを望み始めていた。だから、というのは随分とタイミングが悪すぎると思うけどこういう時ぐらいは僕からグレイシアに甘えてみるとしよう。うん。発想の転換とかいうやつだよ。その発想はなかったと言って笑うのは後にしてほしいけどね。

先ほどまで「なんともない」といった実に強がりな姿勢を見せながら顔を上げていたがとうとう暑さに負けたようだ。額に汗を浮かべながら自身の前足に顎をのせた。表情はどことなく虚ろだった。いつもはぱっちりと開いている目は半ば閉じかけていて目だけみると眠たそうにしているのかと勘違いしてしまいそうだった。口はいつもなら不機嫌なのかと思うくらいきゅっと真一文字に結んでいるのだが今はだらしなくあいてそこからほんの少しだけ舌を出している。どこからだれがどうみても今のグレイシアの様子は「暑い」という雰囲気を醸し出していた。
「もぉ……。はやくボールにもどしてよ…」
そう言って少しだけ顔をあげて睨みつけるわけでもなく懇願するかのような目をして見せた。僕の横に転がっているボールと僕の顔を交互に見ると僕にそれを促すような視線を送ってくる。ポケモンはモンスターボール開閉の自由を有さない。そのきまりを知っているグレイシアは僕を脅しにかかろうともせずに言葉でそれを訴える。つまりそれだけ今この状況に余裕がないのか。そういう風にも取ることができる。でもここで大事な道連れを返すわけにはいかないというかもう少しこのままでいたいというか。つまるところ僕はグレイシアを戻そうとは思わなかった。僕はモンスターボールを手に取ると上下に赤と白に塗り分けられている間に位置する軽く出っ張った開閉スイッチを軽くつまむ。グレイシアが僕の一連の操作に淡い期待を抱いたようだったが僕は当然のことながら開閉スイッチを押さずに開閉スイッチを右回りにひねった。すると、今まで手の中に収まることのなかったモンスターボールが見る見るうちに小さくなっていく。ゴルフボールほどの大きさになったモンスターボールをグレイシアの前に転がして見せる。グレイシアは項垂れながら目の前に転がされたモンスターボールを前足でつつきこちらを射竦めるかのような勢いで睨みつけながら力のない声を口から漏らした。
「あとで……おぼえてなさいよ…」
そこまで言うと再び顔を下げる。少しでも暑さから逃れようとしてからか床の上でへばっていながらもいろいろな体勢を試しているようだった。そんな様子がおかしくって僕は少しグレイシアをからかってやるつもりでグレイシアに向けていった。
「仰向けで大の字に寝転がれば涼しいんじゃないの?」
いくら意地を張っていても所詮は生まれてまだ14ヶ月。本来ならまだ僕に甘えていてもいい時期だ。そして何より生まれて14ヶ月と生まれて14年の知識面ともなるとやはり僕に頼るしかないという現状がある。グレイシア自身で物事を対処するより僕を頼ったほうがはるかに楽で時間も短くて済むという事実を悔しがりながらも理解しているグレイシアは特に戸惑う様子も見せず仰向けに寝ころがり四肢から暑さを逃がそうと広げて無防備な格好で寝転がり始めた。本来野性のポケモンにとって仰向けっていうのは絶対服従のポーズだそうだけどグレイシアはそんなことを知らないでいるのかそれとも本能的に僕に服従しているのか。できれば後者であってほしいような前者であってほしいような……。別に僕はグレイシアを服従させる気はないし、そんなことしようとするものなら氷漬けにされてもおかしくはないだろう。でも今なら……なんて考えてしまうが一体どうやって服従させるのか。野生のルールに詳しくない僕はわからないし暑いからあまり動きたくない。結局僕もグレイシアの横で大の字に寝そべりながらただぼぅっと無意味に宙を眺め始めるのだった…。

さて、そろそろ本格的に頭がおかしくなってきた。これだけ汗をかいているのだから体の調子ももしかしたらおかしいのかもしれないが今一番危惧すべきところはこの暑さのせいで脳がふやけてたり蕩けたりしてしまうことのほうだと思う。現に今、十分に危険な信号が脳の中で出されている。それのせいかはよくわかんないけどさっきから僕はずっとグレイシアを見ている。汗が滲んで湿っぽくなったグレイシアの体に何とも言えない魅力を感じてしまうのだった。今までたったの30㎝の体長で僕の隣をひょこひょこ歩いていたイーブイのころとは違ってほんの少しだけ大人に近づいている発育途中の雌の雰囲気を醸し出す今の姿に少なからず惹かれていたのは確かだった。それに今の僕の好みにどストライクな絶妙な肉付き加減。僕がよく買ってくるお菓子を横からかっさらっていくのが習慣になっていたせいか図鑑に描かれているグレイシアとよ~く見比べてみると若干足やおなかのあたりがむちっとしているように見える。でも別に太っているわけでもないしさっき言ったように僕はこの肉付き加減が大好きだからあえて何も言わない。平均体重をたった1kg上回っただけでこんなにもかわいくなるだなんておもってもいなかったけどね。
そんな壊れかけてきた目で仰向けで寝転がるグレイシアを見つめる。グレイシアは完全にバテているのか僕の視線に気がつくこともなく前足で風を送ろうと顔の前でひらひらと振るのみだった。そんな変な雰囲気の中そっと起き上がって机の上に置かれている電波時計を温度の表示を手で隠しながら見た。1:42とデジタルっぽいかくかくした数字が僕に今の時間を伝える。もう日付が回ってしまったのか…。でも一向に睡魔が僕を襲うようなことはなくただ汗を流し続けながら再び床の上で寝転がった。

グレイシアを眺めることにもとうとう飽きを感じた僕は天井に蛍光灯とともに取り付けっれている常夜灯の淡い橙色の光を眺めていた。そろそろグレイシアを戻してやらないとまずいかななんて思いながら何気なくグレイシアのほうに首を傾けると丁度同じタイミングにグレイシアもこちらを向いたのかふたり(1人と1匹だが)の目がお互いの視線をとらえた。すぐに僕は恥ずかしくなって目を逸らそうかと思い再び天井を眺めようとした。
「ねぇ……」
徐に口を開いたグレイシアは僕に声をかけてきた。僕は何かと思いグレイシアのほうへ振り向いたときさっきの一瞬では気づけないグレイシアの異変に気がついた。頬をすっかり紅潮させ、いつもなら感じさせるはずのない息遣いが少し荒くなっておりしっかりと聞き取れた。
「…どうしたの?」
そう優しく聞き返しグレイシアの目を見据える。
「……あんたは…わたしのこと……どうおもってるの?」
「え……。ど、どうって…?」
どぎまぎしながらグレイシアに質問の内容を聞き返す。あまり深読みはしたくないけどこの質問の仕方だとどうにも深読みしたくなってきてしまう。どこぞのエロゲにでも転がっていそうなこの質問に無難に、そして確実にこたえるためにも僕はグレイシアに聞き返した。
……後にここではぐらかしていればよかったものの。と後悔するとは思いもせずに。

「わたしは……あんたのことが………」
ここで見せ始めたいきなりすぎて無茶ぶりとしか思えないこの急展開に僕は戸惑いを隠せなかった。何がどうしてこうなったっ。と叫びたい。でも嬉しい。この気持ちは何だろう。今なら有名なあの詩の感情をほんの少しだけ実感できたのかもしれない。……でも待てよ。もしかしたら「最高のトレーナー」とかそういう方向もこの流れだとありかも知れないし、僕が暑さから気を紛らわそうとしたのを怒っていて思わせぶりだけは存分にさせておいてここで一気に突き放されたりするかもしれない。つまるところ何を言われるのか結局予想できなかった。そんな考えを口ごもっているグレイシアを待ちながら考えていた。
「あんたのことが………す…すきっ!」
「はいぃっ!?」
あぁ。やっぱりこんな展開になるのね。僕はとうとう現実世界からエロゲの世界に飛び込める力を身につけたか……。はぁ…。邪気眼やら何やらが開眼する方がよっぽど幸せな力だよ…。。   ……素直にうれしいけど今のグレイシアの状態で言われてもなぁ……。
そう思いながらグレイシアの様子を再度確認する。顔は先ほど同様真っ赤なのだが目までとろんとしている。もしかして暑さにやられて自分でも何を言っているのか分かっていないんじゃないのだろうか…。そんな事を思いながら心配になって僕はグレイシアに声をかけた。
「ねぇ…。暑くて頭がおかしくなってない?大丈夫?」
「お、おかしくなんかないもんっ」
僕は「ホントかぁ……?」と呟きながら目を細め俗に言われるジト目でグレイシアを見つめた。
「あ、あつくなきゃ……こんなこと、はずかしくていえるわけないじゃん………」
そう顔を僕の方から逸らしながら言葉を紡ぎだしているグレイシアの頭を軽くなでてやった。嬉しそうに耳を動かすグレイシアにどことなくイーブイだったころの面影を感じた。でもどことなく照れ隠しも混じっていてグレイシアっぽさも出ている。
「あんたは……どうおもってるの?」
僕はどうおもっているか。ちょっと難しい質問かもしれない…。僕は別にグレイシアを落とそうと思っていたわけじゃなかったし今の関係が壊れて新しい関係になるのに少しも不安を感じていないわけではなかった。確かにグレイシアのことは"好き"。でもいったい僕がどれほどグレイシアを好きだと思っているのか。そんなこと僕にだってわからない。ただ頼れるパートナーとして好んでいるのか、容姿が自分好みなだけなのか。それとも恋人として好きだと思っているのか。そもそも自分のパートナーに愛を求めるのにも少なからず抵抗はある。周りから変な目で見られれば僕はともかくとして、それこそグレイシアがかわいそうなのではなかろうか。そう心の中で不毛だとわかっていながらも葛藤を続け、押し黙っている僕の顔をグレイシアは覗き込んで言った。
「わたしのこと……きらい?」
「そ、そんなことないっ」
グレイシアの質問に反射的にこたえてしまった。頭でグレイシアの考えを判断するよりも先に心がグレイシアの考えを全面否定して口を突いて出た言葉。もう、いいじゃないか。結局のところ僕はグレイシアのことが好きなのだ。どのくらいか。そんなことは関係ない。好きと言われたのならば受け入れようじゃないか。そう自分に言い聞かせグレイシアの方へ向き直った。
このとき、僕らは自分たちの熱で部屋の暑さを感じることができなかったのかもしれない。汗が垂れるのを感じながら、暑いとも涼しいとも思うことなく見つめあった。

「グレイシアのことが……好きだよ…」
自分で言っておいてあれだけど……。すごく恥ずかしい。顔が熱くなっていくのが自分でも分かる程に僕は赤面していたのかもしれない。たったこれだけの言葉なのにものすごい緊張感に襲われた。おまけに恥ずかしいし。だからこそプロポーズって難しいんだろうなぁ……。と恋愛経験皆無な僕が理解してうんうんとうなずいていると僕の顔を覗き込んでいたグレイシアはよろよろとよろけるとぺたりと床に座り込んで言った。
「え……?  ホント…?」
「うん」
迷いなく頷く僕を目の前にしてグレイシアは自分の目をごしごしこすりその大きな瞳で2,3回瞬きをすると前足を自分の口元に付けて文字通り"きょとん"としていた。そんなグレイシアの様子をクスクスと笑うと僕はグレイシアの前足をやさしくどけて目の前に見えるふっくらとした唇にそっと、自分の唇を重ねた…。もともと大きな瞳をさらに大きく見開くとしばらく驚いていたり焦ったり忙しそうだったが直に落ち着きを取り戻し僕とのキスを楽しみ始めた。僕はと言うとやっぱり恋愛経験が無いってところが響いて何をすればいいのやら全く分からなかったからとりあえず唇を触れあわせるだけ。だったがグレイシアが落ち着きを取り戻してからお互いにお互いを求めあい……すごく、変な気持になった。甘酸っぱい気持ちっていうのはよく言ったものだなぁ。なんて感心しながら長い長いキスを続けた……。
ぷはぁっと吐き出すことができずに口の中に溜めていた息をグレイシアが外へ逃がすと先ほどまで大きく見開いていた目をとろんとさせこちらを見ていた。いや、目の焦点が合っていないような気もしたけど…まあいいか。
そんなグレイシアの頭をそっとなでる。グレイシアの湿った肌に僕の手をのせるだけで心臓の鼓動が激しく大きくなっていくのを感じた。緊張しているわけでもない。怖いわけでもない。ただただ目の前にいる魅力的な異性に僕の心が惹かれていたのだと思う。その魅力的な異性は僕のことを好きだと思っていてくれている。こんな理性崩壊専用空間で普通でいられるはずもなかった。暑さをすでに感じていない僕はグレイシアを自分の腕の中へと収めた。
「え……っ。ちょっとっ………」
「……やだ?」
そう不安そうに僕が訊くとグレイシアはあわてて首を横に振り僕の考えを否定した。
「ううん。いきなりだったから、ちょっとおどろいただけ」
そう言うと体を僕に預けてきた。今のこの甘い状況と普段の様子を比べるのにあまり気乗りはしないけれども普段ならこんなこと絶対させてくれないと思う。僕が触るだけで熱い熱いと怒り騒ぎ罵られいつもパートナーとしてこんなのでいいのだろうかと心配になるようなやり取りをしていたグレイシアの雰囲気は今はもう感じられない。むしろ、今の方がパートナーとして心配になってくる。僕はたぶん今は普通の思考回路でいられてるのだと思うから別にグレイシアを抱いていてもいいんだけどグレイシアの頭が正常に働いているのかどうかは僕にはわからない。人間と体感温度が違えば暑さの基準も違ってくる。それにもともと暑さには弱い体のつくりをしているため今のグレイシアが本当のグレイシアなのか分からなくなっていた。普段との対応の仕方の違いなどを考えると今のグレイシアは全くの別人のように思えてくる。だからと言って今のグレイシアが今の今まで進化してから必死に押し殺してきた本当の姿、本当の気持ちだというのだったらむやみに否定してしまうのも嫌だった。
結局のところわからないのだ。よくよく考えてみると僕はそれなりに生まれてきてからずっとそばにいてやっていたのにグレイシアのことを何一つわかっていなかったのではないのだろうかと思った。いや、正確に言うとわからなくなった。グレイシアに進化した途端、彼女がいっぺんに変わってしまったように思われた。進化に伴って性格まで変わってしまうことは絶対に無いとどこかの雑誌で読んだことがあったが明らかにイーブイのころとは違っていた。
トレーナーとして真剣にグレイシアのことを考えているとき当の本人は僕の腕の中で汗ばむ体を僕に押し付けていた。僕が強く抱き寄せてこないから自分から、とでも思ったのかぐいぐいと僕の胸に体を押し付けてくる。薄手のパジャマがグレイシアの汗を吸って湿っぽくなり始める。もともと吸われていた僕の汗にグレイシアの汗が混じってさらにパジャマが鬱陶しいものとなっていた。僕はグレイシアを優しく腕から解放すると寝転がりながらぐだぐだとパジャマを脱ぎだした。下着だけを着て再びグレイシアのほうを向くとグレイシアは僕の腕に前足を絡ませていた。すぐ近くに迫っている汗ばむグレイシアの婀娜っぽく艶めかしい匂いが僕の鼻をくすぐった。僕は邪な思いは捨てようととっさに違うことを考え始めた。
こんなにも長い間グレイシアにじかに触れていたことがあったか。イーブイのころは一緒に体が触れあいながら寝たことなどがあったがグレイシアに進化してからはもっぱらモンスターボールの中を好むようになっていた。僕を遠ざけて独りでいる時間の方が長くなっていた。イーブイのころは外の方が好きだったはずなのだが。僕と一緒にいて楽しいと言ってくれていたのだが。そのグレイシアが今、進化して失ったのかそれとも今まで隠してきたいたのか、僕に甘えようとしてきてくれている。グレイシアが暑さで今こうなっていて、明日この夜のことをグレイシアが忘れていたとしても僕は別にかまわなかった。僕は素直だったあのころを思い出してくれた今のグレイシアに今僕のできる精一杯のことをやってやろうと思いグレイシアの頭を再び撫で始めた。

しばらくしてグレイシアがのそのそと動き出し僕の左腕に絡めていた前足をそっと離すと何を思ったのか急に僕の唇にグレイシアの唇を重ね合わせた。いきなりの接吻にやや驚きながらも恥ずかしくて言いだせなかったと思われるグレイシアの行動を内心かわいいやつめと思って受け入れていた。だが、今回は様子が違った。僕が驚きあわてたのとグレイシアの舌が僕の口内に入りこんだのとは同時だった。舌を入れてきたはずのグレイシアはここからどうしていいのか分かっていない様子で舌を入れたまま何もしてこない。一応情報として何をしてやればいいのかはわかっていたけど実際にやるとなるとこんなにも緊張するものなんだと妙に冷静に現状を把握しながら申し訳ない程度に僕の口内に侵入しているグレイシアの舌に僕の舌をそっと触れあわせた。グレイシアの舌に自分の舌を絡ませつつ僕はグレイシアを抱きよせていた。もしかしたらさびしかったのはグレイシアだけじゃなくて僕もそうだったのかもしれない。そう思いながらグレイシアを求め続けて僕はグレイシアと舌を絡めていた。
口内に広がるグレイシアの甘い味。僕の鼻から侵入し理性を掻き乱すグレイシアの艶っぽい香気。両腕から感じるグレイシアの扇情的な体つき。全部全部全部、好きだったことに気がつかされてしまった。そう分かってしまった途端、僕の体に欲望の火がちらつき始めていた。
キスを続けながら自分の股間が疼くのを感じた。もうすでにテントを張り終えていた様子で内心焦った。こんなものをグレイシアに見られたらきっと嫌われる。しかし焦ったからと言って目の前にいる魅力的な異性から放たれる艶麗な空気を振り切れるはずもなくさらに小高いテントを張ってしまう始末となった。
後半焦りで特になにをやっていたか思い出せないキスをグレイシアが口を離す形で終えて何気なく後足を動かしたのだと思う。しかし、一番触れられてほしいのか一番触れられてほしくないのか判断の難しい場所に足が到達してしまった。妙な感覚に違和感を覚えたのかグレイシアが僕の足のあたりに目を向けた。当然制止する暇もなく例の恥ずかしいものを見られてしまった。グレイシアは繁々とそれを眺めたのち、顔を赤くしながら僕の方に向き直り小さな声で言った。
「わ、わたしで…………こうふんしてたの?」
随分と直球で質問されてしまった僕はうそをつきたい衝動にも駆られたが見られてしまったものは仕方がない。弁解のしようもないし、ここは潔く頷いておくことにした。
「そう……なの…。  ねぇ、わたしもさ……こうふんしてた、っていったら……けいべつする?」
「ううん。軽蔑なんてしないよ」
はっきり言って人のことを言える立場じゃないのもわかってるしグレイシアが僕と一緒にいて興奮してくれてるならうれしい。それに今の物言いだとまるでグレイシアが今興奮しているようにも聞こえる。グレイシアの言葉やしぐさの一つ一つが僕の心に揺さぶりをかけてくる。僕の心を強く刺激する。
そんなことを考えているとは思わずにグレイシアは僕の答えを聞いてグレイシアはにっこり笑うとほんの少しだけ目を宙に逸らしながら言った。
「じゃ、じゃあ……わたしも……こ、こうふんしてた………よ?」
そう言ってから恥ずかしくなったのか両前足で顔を隠し始めた。そんなかわいらしいしぐさを見てからかってやろうかと思いグレイシアの耳元でそっと呟いた。
「グレイシアも……見かけによらずえっちだったんだね…」
そう言い終えると顔を見る見るうちに赤くして必死に弁解しようと慌てて言った。
「なっ……ち、ちがうもんっ!えっちなのはマスターのほうだよっ。
 わたしがこんなこといえるのもマスターのまえだけだもん!ふだんはこんなんじゃないんだからっ」
「ふぅ~ん……。そうなんだ~…」
そう言ってにやにやしている僕にグレイシアが恐る恐る訊いた。
「マスターは……えっちなおんなのこはきらいなの?」
「そんなことはないよ。むしろ少しぐらいえっちな方が好きかなぁ…」
そう言ってちらりとグレイシアのほうに目をやると意外と真剣な面持ち(顔は真っ赤だったが)で何か考えている様子だった。直に僕のほうに向きなおると消えるような声で言った。
「じゃあ……わたしはえっちだってみとめる……」
そう言って何か言いだそうと口を開きかけては閉じ開きかけては閉じを繰り返していた。そんな様子に見かねて僕はグレイシアに声をかけた。
「どうしたの? 平気だから、言ってごらん」
本当に平気かどうかはわからない。何か突飛なことを言われればどんなに警戒していていたとしても嫌でも驚くと思う。でも、何を言われても取り乱さないように覚悟だけはしておいた。しかし、グレイシアの言葉は僕の予想のはるか斜め45度上を行っていたのだった。
「その……マスターもえっちならさ……わたしと………つがいにならない?」

それは決して軽々しく口に出せるようなことではなかった。どこで覚えてきたのかそれとも本能の中に刷り込まれていた言葉だったのか番いという言葉を口に出したグレイシアが何を考えているのか僕にはよくわからなかった。もしかしたら何も考えられていないというのはこういうことを言うのだろうか。現に今僕の頭はフリーズしている。グレイシアも同じ状況に陥っているのかはあやしかったが。
しばらくの間現状を把握できなかった僕の頭がやっと動き出した。とにかく、今グレイシアに誘惑されていることに間違いはない。流石にこの流れで「冗談でした」なんてオチは期待できそうにもないし、冗談で言っていい言葉じゃないってことぐらいは理解していそうだった。 一人の男として是非グレイシアの誘惑に乗ってしまいたいものだけど果たして乗ってしまっていいのかが僕の中で引っかかる。まず、今グレイシアの言っていることが本心じゃなかったとしたらどうすればいいのだろうか。暑さと雰囲気にグレイシアが流されて僕までそれに便乗するような真似をして後でグレイシアが悲しまないだろうか。そして、人間である僕と番いになったところでその行為にはなにも意味を持たない。もちろん子どもも生まれないだろうし、体格差からグレイシアがより辛い思いをするかもしれない。でも己の欲望に身を任せたいと思う気持ちも強かった。心の中で葛藤を続け押し黙る僕をグレイシアが心配そうに見つめていた。
「わたしじゃ……だめだったかな?マスターは……こんなわたしじゃやっぱりヤダ?」
そう言って悲しそうな顔をするグレイシアを見ていて早く決断しなければと焦った。そして、グレイシアに訊いた。本当に僕でいいのかと。
「グレイシアこそ、僕なんかで本当に後悔しない?」
僕の言葉を聞いてグレイシアはクスリと笑うと微笑みながら言った。
「わたし、マスターとじゃなきゃ、こうかいしちゃうよ?」
そう言って徐に僕に抱きついた。近くで感じるグレイシアの鼓動。僕の鼓動と同じペースを保つそれに何か運命的なものを感じた。いや、この漠然としたグレイシアと交わっていいのかという疑問の答えを見つけたかったからそう感じたのかもしれなかった。どの道、僕の答えは決まった。グレイシアがそう望んでいるのならば、僕を受け入れてくれるというのならば僕は喜んで番いになりたかった。その行為に意味なんて考えなくてもいいんじゃないか。お互いの愛を確かめ合う。それでいいんじゃないかと自分に言い聞かせグレイシアの赤く染まった頬に唇をつけグレイシアを仰向けに寝かせた。

僕は立ちあがって常夜灯を消して蛍光灯のまぶしい光をつけた。目が暗闇に慣れていて蛍光灯の光を痛いと感じるほどだった。そのうち蛍光灯の光に目が慣れ僕は膝をついて仰向けに寝ているグレイシアへ視線を移した。まだ光に目が慣れていないのか目を細めて何度も目をこすっていたが、じきに大きな瞳で僕を見つめ始めた。いつもと変わらない鮮やかな藍色の瞳に今は神秘的なものを感じた。僕はグレイシアの頬をそっと指でなぞりながらグレイシアの体に目を向けた。まだまだ年齢的にも子供っぽいグレイシアはいくら進化が早めだったからと言っても幼さばかりが残っていた。前足や後ろ脚の肉のつき方などはまさに子供のそれだった。胸なども全く発達していないのを確認すると再びつがいになっていいのかという疑問がわき出てくるほどだったがすぐにその考えを振り払う。胸は何というか、貧乳と言うよりも無い。まな板っていう言葉があるけどまさにそんな感じだった。全くふくらみを帯びていない胸のあると思われる場所には2つの見落としてしまいそうなほど小さい突起が付いていた。僕の視線にグレイシアが気がついたのか前足で胸を隠そうと胸のまえで前足を交差させて僕の視線から胸を守り始めた。
「ちょっと。隠さないでよ。  隠すほどないんだからさ~」
「だってはずかしい………って、ひど~い……。わたしがおんなのこだってホントにわかってるの?」
そう言ってうなだれるグレイシアを見て微笑を浮かべた。やっぱり気にしてたんだなと内心悪いことを言ったような気がしたが冗談として受け取ってもらえているみたいだった。
「もちろんわかってるよ。 ほら」
そう言うと僕はグレイシアの秘部のあたりを指でなぞった。いきなり後ろ脚の間に指を突っ込まれてびっくりしたのかびくっと震えると一気に顔を赤らめた。
「あ……やぁぁ…」
グレイシアが顔を持ち上げて僕の指がグレイシアの割れ目に沿って動いているのを見て顔をさらに赤くして僕の指の動きを食い入るように見つめながらそう声を漏らした。ぴったりと閉じられたグレイシアの秘部を眺めふと気になったことをグレイシアに訊いた。
「ねぇグレイシア? ここをさ、自分でいじったりするの?」
そう訊くと一瞬怪訝そうな顔をした後首をふるふると横に振った。ポケモンの本能の中に自慰というものがてっきり含まれているのかと思ったらどうやらそうではないらしい。そんなことを思いながらグレイシアが一人で自分を慰めているところを想像して一人胸を熱くしている僕にグレイシアの嬌声が耳に入ってきた。今は妄想している場合じゃない。現実でグレイシアを気持ち良くしてやらないと。そう思い直しグレイシアの割れ目を人差し指と中指で広げてみた。外側を汗で湿らせ内側を愛液で濡らしているその部分は湿り気によってさらに艶めかしさを倍増させていた。今すぐにでもその部分を自分のものにしたい思いに流されそうになったがそこは思いとどまり秘部を広げていた中指を秘部の中へと侵入させた。びくんっと体を震わせ初めて味わう快感を耐えようと目をきゅっと瞑り後足に力を入れているのが分かった。
しばらくの間中指で秘部の入口のあたりに軽く刺激を送るだけだったがほんの少しだけ指を入れただけで終われないものが欲。さらに深く中指を入れようと折り曲げていた中指を伸ばそうとした。しかし、グレイシアの中に指を入れることはできなかった。膣内が力んでいるためか完全にふさがってしまっていて指が入らないのだった。
「グレイシア……、ちょっと力抜ける?」
「う、うん……」
そう言って今まで震えていたからだが徐々に落ち着きを取り戻していた。再びグレイシアの奥深くへ侵入を試みようと指に力を入れた。
「あっ。 ちょ、ちょっとまって……っ」
「ん。どうしたの?」
グレイシアが前足を下腹部まで伸ばしてそれ以上の侵入に抵抗するようなそぶりを見せた。もしかして痛かったりしたのかと心配になりながら指は膣内に残したままグレイシアに訊き返した。
「その……それいじょうは、ゆびじゃないほうが…いい……かな…」
そう消えそうな声で言った後下腹部まで伸ばしていた前足をひっこめ自分の顔を覆った。グレイシアの言いたいことはわかる。今僕のパンツの中で猛り立っているこの肉棒でないとだめだということだろう。そんなセリフを聞かされて余計に肉棒がそそり立ち痛いと思うほどパンツの中で勃起した。このままでは痛くって仕方がない。パンツを脱ぐと今まで押し込められてきた肉棒が勢いよくその姿を現した。夏場で処理する気にもなれずだいぶ溜めこんでいたのがよかったのか悪かったのか自分自身驚いてしまうほど肉棒は大きくなっていた。
「わ……っ」
前足の間からちゃっかりその光景を見ていたのかグレイシアが思わず声を上げた。自分だって声をあげたかったが自分の肉棒に驚いていては格好がつかないと思いあえて何事もなかったかのような顔で自分の肉棒を片手で握る。それを前足をどけてまじまじと眺めているグレイシアを見て僕はついついからかいたくなった。
「グレイシア? そんなにまじまじと見ちゃって、どうしたの?」
「ふぇっ。  あ……いや…」
そう言ってとっさに顔をそむけるグレイシアの頬に肉棒を近づける。やっぱり興味があるのか顔をそむけながらも視線が肉棒に注がれていることぐらい見ればわかった。僕は鼓動に合わせて上下に脈打つ肉棒をグレイシアの頬に押し付けるように触れさせた。
「ふあ……。  あつい……」
そう口から言葉を漏らすと前足でグレイシアの柔らかい頬に触れている僕の肉棒をそっとなぞった。グレイシアの頬は氷タイプならではのひんやりとした冷たさと今までの行為で火照った体の温かさを両方感じる不思議な感覚に頬の柔らかさも足されずっと頬に押し付けていたいと思うほどだった。しかし、ずっと頬に押し付けていたいと思ったのも一瞬、すぐに別の欲望がふつふつとわきあがってきた。
「グレイシア。口、開けて」
「う、うん……」
おずおずとグレイシアがその小さな口を開けると僕は片手で握っている肉棒をグレイシアの口に近付けた。先走りでぬれた鈴口がグレイシアの唇に触れグレイシアが一瞬おびえたような表情をした。
「咥えて……くれる?」
「えっ……。こんなにおっきいのを…?   ………んっ…」
訊き返しておきながらも僕の返事を待たずにグレイシアは僕の肉棒を口に含んだ。だが、グレイシアの口に僕の肉棒が入りきるわけもなく一生懸命咥えようとしていても亀頭に吸いついているだけになってしまう。敏感な部分なだけあって痛いのか気持ちがいいのか正直わからなかったが一生懸命咥えようとしてくれているグレイシアを見て文句をつけたくはなかった。直にグレイシアが息継ぎのためか口を離した。
「……ごめん…。くわえられない……」
息が整ってからそう弱音を吐くとともに泣きだしそうになるグレイシアを見てそっと頭を撫でながら言った。
「ううん。一生懸命やってくれて、僕うれしいよ…」
「………ありがと」
そう小さく言って気恥かしげにそっぽを向くグレイシアを見てなんて愛おしい子なのだろうと思ってしまう。早く自分のものに。焦りにも似たその感情は次第に大きくなり、直に感情は行動へと移される。痛いほどに勃起した雄をグレイシアの秘部に近付け、鈴口をその割れ目に触れさせる。
「あっ………」
そう小さく口から漏らすとぴくっと体を震わせる。グレイシアの瞳はしっかりとこれから繋がるであろう場所を見定めていた。その瞳の色は不安か期待か、それとも欲か、判断の難しい色をしていた。きっと今の僕の目もそんな色をしていたのかもしれない。そんなことを思いグレイシアを見下ろす体勢に体を動かしそっと声をかけた。
「……挿れるよ?」
そう囁き、静かにグレイシアが頷いたのを確認すると片手で肉棒を抑えながら腰を徐々に落とし始めた。グレイシアの秘部がすでに亀頭を飲み込んだのを確認すると腰を沈めるのをいったん止めた。初めて雄を向け入れる苦痛に苦しんでいるのか体を小刻みに震わせながらそれに耐えていた。
このまま腰を沈めるのもいささか悪いような気がしたがそれでも僕の欲望は収まってはくれなかった。さらなる快楽をグレイシアの体に求めて、腰を沈めて行った。
直に僕の肉棒はグレイシアの膣内で壁とぶつかった。……もちろんここが一番奥でないことぐらい僕とグレイシアも分かっている。グレイシアの純潔の証、これを破ってしまえば僕とグレイシアは繋がることができる。お互いの初めてを分かち合うことができる。グレイシアに視線で合図するとゆっくりとうなずいたのを見て腰をほんの少しだけ浮かすと最初の時よりも勢いをつけて腰を沈める、ではなく突いた。
「っあ゙あ゙ああぁぁぁっ!!!」
侵入する肉棒に正面からの負荷がかかる。それを突き破る勢いで腰を押し付けると何かが裂けたような音が生々しく聞こえたような気がし、肉棒にかかる負荷がほとんどなくなった。その瞬間、グレイシアが痛々しい悲鳴を上げ痛みに悶え始めた。結合部からは青色の体とは対照的な赤々しい血が垂れる。僕はどうしていいのか分からなかった。目の前のグレイシアが破瓜の痛みに苦しんでいるのにも関わらず僕は快楽で頭がいっぱいになりかけていた。そんな自分に嫌悪感を覚えながらグレイシアの頬にキスをする。少しでもグレイシアの痛みを和らげることができるのなら。そう思いながら痛みに涙まで流しているグレイシアの耳に舌を這わせた。
「っあ゙あぁぁ………ひぅっ!?」
下先だけでグレイシアの耳を舐める。次第に舌の触れる面積を大きくしグレイシアの耳を口の中に含み軽く歯を当てる。グレイシアの耳が弱いのはイーブイのころから知っていた。痛みを紛らわせているかはよく分からなかったけど耳を弄る前よりは痛ましい声を上げなくなった。これは効果ありと踏んでいいのかただ単に痛みが引いただけかはよくわからなかったけど、それでも痛みを感じていないのならばそれに越したことは無かった。
「……もう少しこのままがいい?」
耳から口を離しそうグレイシアに問いかける。グレイシアは前足で涙を拭きながらこくんっと頷いた。僕もそれに頷き返すとグレイシアの耳を再び口に含み口内で舌を這わせた。口から漏れる嬌声をもっと聞きたかった。そのことだけを考えて左手でグレイシアの胸のあたりを撫でまわした。雌の膨らみもなく本当に手探りの状態で見つけ出した突起。それは最初に見たときよりも若干大きくなっていたような感触だった。2本の指でその突起をつまむとグレイシアがより大きく体を震わせた。
「ふひゃぁぁぁっ…」
可愛らしい嬌声と共に膣壁が肉棒を締め付ける。間違いない、グレイシアは感じてくれている。それを実感できて安心してグレイシアの乳首を責め立てた。その度に肉棒が締め付けられ、更なる刺激を欲するかのように肉棒が膣内で震えた。もしかしたら我慢できないかもしれない。そんなことを思い始めグレイシアの耳元でそっと訊いた。
「グレイシア……。動かしても……いいかな?」
グレイシアは僕の言葉を聞いて顔をさらに赤らめてから静かに頷いた。それを確認するとグレイシアの奥まで突き刺さっている肉棒を少しずつ引き抜いた。
「あっ……。ふぁぅ……」
よし。痛がってはいない。それを確認すると再びグレイシアの割れ目へ肉棒を埋没させていく。再びグレイシアの一番奥と僕の鈴口が触れあうと我慢はすでにできなくなっていた。
「いくよ…っ」そうグレイシアに声をかけ僕は腰を振り始めた。初めて味わう肉棒と膣壁の擦れる快感を貪るかのように腰を振り続けた。
「あっ…! んぁぅぅっ……。ひゃんっ!」
グレイシアの上げる喘ぎ声によってもっと乱したい、犯したい、自分の色に染め上げてしまいたいという理性とはかけ離れた欲望が僕の腰の動きを煽り立てていった。そのうちに直線的な出し入れによる刺激以外にも何か別の刺激がはたらいていることに気がついた。グレイシアの下半身のあたりを見るとグレイシアも腰を振っていてくれたのだった。グレイシアも僕を求めてくれている。それがたまらなく嬉しかった。
「くぅぅ………」
今まで辛うじて持ちこたえていた射精の瞬間。まだ果てたくない。そう思っているのにもかかわらず欲望の波は僕の感情をさらっていき、腰をさらに激しく動かす。堪えることのできない快楽に飲み込まれ僕はグレイシアを強く抱き締め、深く腰を沈めた。
「あ……うあぁぁぁああぁあぁぁぁっ!」
「ふぇっ……ひゃうぅぅううぅぅんっ!」
深く挿しこまれた肉棒はグレイシアの子宮口を押し広げその中へたっぷりと子種を注ぎ込んだ。そっとグレイシアのおなかのあたりを見るとほんの少しだけ膨らんでいるように見えた。
そこに僕がいる。グレイシアと一つになれた。安心感と満足感の入り混じった感情が僕の顔を綻ばせた。
それから互いに何度もつながった。今まで離れ離れになりかけていた僕らの心がやっと一つになれた瞬間だった――――――





あれから気がつけば朝だった。どうやら疲れて寝てしまったらしく床にこぼれた精液はすっかり乾いてしまっていた。苦笑いをしながら隣に転がっているモンスターボールに視線を移す。縮小させておいたはずのモンスターボールが大きくなっているところをみると昨夜グレイシアをボールに戻してから寝たのだと思う。僕はモンスターボールが転がらないようにベッドの上へ置くと下着を取り換えワイシャツに手を通す。夏でも着ることの義務付けられている黒い長ズボンをはきベルトを通す。その上から縮小させたモンスターボールをとりつけ居間へと足を運んだ。
昨夜の暑さはうそのような清々しい朝、ジャムを塗りたくった食パンをかじりながら天気予報に何げなく目をやる。『えー、今日は昨夜よりも過ごしやすい夜となるでしょう。続いて東北の天気です………』違う地域に移ってしまったので天気予報から注意を逸らしあと一口で食べきれる食パンを口の中へと放りこんだ。ふと腰に装着しているモンスターボールを手に取り中の様子を確認した。どうやらまだ眠っているらしい。グレイシアをモンスターボール越しに見ていて思い出される昨夜の出来事。かあっと顔がつくなるのをごまかすように鞄を担いで家を出た。

授業の終わる鐘が鳴った。正直、何を授業でやったのか覚えていなかった。何度か指名されたときは隣のやつにノートを見せてもらって答えていた。昼食も購買で何を買ってどこで食べたのか全く覚えてもいなかった。僕は今日一日ずっとグレイシアのことについて考えていた。こんなんで部活をやってもけがするだろうし邪魔になってしまうと判断した僕は部活をさぼることに決め帰路へつく。
やはり日中の太陽は僕らの敵であった。木陰を歩いていてもアスファルトから感じる熱気に少々まいっていたところをモンスターボールを見る。別にここで出すわけではなかった。下手に夏場アスファルトの上なんかに出したら火傷でもしかねない。でもどこか落ち着ける場所で話がしたかったのかもしれない。僕は帰り道から少し外れた道を歩き始めた。
やってきたのは図書館のロビー。幸い、この時間は人はおらずロビーでなら話しても平気だろうと判断して今モンスターボールを握っている。空調がよく利いていて多少ひんやりしていると感じるほどであった。そんな中グレイシアをモンスターボールの外へ出す。僕はグレイシアと同じ目線でいようと目の前にしゃがみこんだ。
「あ……。マスター……」
そう僕のことを小さくつぶやくとそっぽを向いた。照れているのかと思ったけど……どうやらそうではないらしい。僕は照れているのに、そんなことを考えながらグレイシアの尻尾に目をやる。普段よりも尻尾を振る速度が速い……ということは…
「…怒ってる?」
グレイシアは僕の言葉に耳をぴくっと動かすと鋭い目つきで僕を見ると言った。
「きのうのよる……」
そう小さくつぶやくと顔を赤くしながらも僕にいたいと感じるほど鋭い視線を送り続けた。さらに尻尾を振る速度が上がっていく。これは激怒ってレベルじゃない。とりあえず全力で謝らないと後が怖そうだ。
「わかった。 その……悪かったと思ってるよ。ごめん…」
いくらでも謝るからその斜めってレベルじゃないほど曲がった機嫌を直してほしかった。
「じゃあ………きのうのよるのことをわすれて」
そう静かに言い放つグレイシアに僕はひどく落胆した。昨夜、やっとお互いの心が繋がったと思ったのに。あれは僕の思い上がりだったのか。そう思うと悲しまずにはいられなかった。
「………ヤダ」
「わすれて」
僕の拒否に間髪いれずに忘れるよう要求するグレイシア。やっぱり僕らはこのまますれ違って過ごしていくのかと思うとひどく胸が締め付けられる思いがした。一度手に入ったものを失うのはこんなにも辛いことなのだと一人悲しみに暮れている僕にグレイシアが言葉を続けた。
「マスターはおぼえているだろうけどわたしはおぼえてないの。きのうあつすぎたのよ……。
 ……きょうはすずしいんでしょ?  それならさ……」
そこまで言うと少し間を置いていった。
「きょう……またいっしょにねよ?    こんどはしっかりおぼえていられるとおもうから……。
 だ~か~ら!マスターもきのうのことは忘れるの!いい?」
その言葉を聞いたときなんて嬉しかったのだろう。僕は子供の時みたいに満面の笑みを浮かべていった。
「…うんっ!」
僕の答えを聞くと「やったぁ!」と言って無邪気な笑みを浮かべてグレイシアは僕の首に前足を回して抱きついた。僕もグレイシアを抱きしめた。もう、離れ離れにはならなくていいんだよね?ずっと一緒でいいんだよね…。
「マスター……」
「ん?なに?」
「……だいすきっ!  いままでも……これからも………ね」




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Last-modified: 2012-09-11 (火) 00:00:00
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