ポケモン小説wiki
時の後継者 8

/時の後継者 8

時の後継者 

by蒼空


71 後天的な神の力 


エイガのプレッシャーを押し退けアマツはムオンの元へと走る。
ムオンはエイガを睨みつけていた。しかし先ほどの殺気は感じられない。

「……やはり心理戦ではウズキに勝てないか。まぁ、こうなる事は予想していたがな」
「よくも人の心を踏み躙ってくれたな。この借りは高くつくぞ……。
 アマツ。ここは俺に任せてくれないか? しっかりと礼をする」
「分かりました。無理はしないでくださいね。私はもう一匹になりたくないですから……」

アマツはムオンの言葉を信じ一歩下がる。
そのやり取りを見てエイガは溜息をついた。

「……冥王も舐められたものだ。昨日空間の神に負けたのを忘れたわけではあるまい?」
「ふっ。忘れてないか? 俺も後天的だが時の神の能力を仕える者だ!!」

ムオンは己の中に眠る時の力を開放、覚醒した。
覚醒した瞬間にムオンは一気にエイガとの距離を詰める。

「……流石に速いな。でもワタシを捕らえられるかな?」

ムオンと接触する手前にエイガはその姿を消す。
突然姿を消したエイガに慌てる事無くムオンは辺りを見渡した。

「……さて、どこから来るかな? もっとも俺の能力の前では大して意味はないがな。
 見えた。左前方か。この距離からの近接戦闘は無理か……。ならば」

ムオンは誰も居ない左前方に火炎放射を放つ。
火炎放射は虚しく宙を焦がすかと思いきやその場所にエイガが現れた。

「何? ワタシの出現場所を見破ったとでも言うのか!?」

放たれた炎はエイガの身を激しく燃やす。
炎が消える頃にはエイガは立っているのがやっとの状態にまで消耗していた。

「ほんの少しでも未来が分かれば戦いはそれだけで有利になると思わないか?」

ムオンは今のエイガに反撃する力は残ってないのを分かっていて近づいていく。
エイガはムオンを睨みつけるも意味はなかった。

「……それがお前の時の能力って事か……。ミナヅキとの戦いは手を抜いていたな?」
「別に手を抜いていたってわけではないが……。いや、覚醒しなかった時点でそう言われても仕方ないか。
 この力を使うと体力の消耗が激しいからな。あまり使いたくないだけだ。
 特に俺は生まれた時から神の血を引いてるわけじゃない……。
 覚醒すればグレン達以上に体力の消耗が激しいみたいだしな。
 だが、神でも俺の大切な者を傷付け奪うというのなら、俺はこの力を使ってでも守り抜く」
「ふふ。良い目をしている。ワタシの負けだ……。舐めていたのはワタシの方だったみたいだな。
 だが、ワタシはここで殺されるつもりも封印されるつもりもないんでな……。ここでさよならだ。
 ムオン、お前も顔色が悪い。もう能力を使う体力は残っていないだろう? 悪いがワタシは逃げさせてもらう」

エイガは笑うとこの場から姿を消した。
ムオンは辺りを見渡すと覚醒を解く。
その瞬間にムオンは疲労で倒れる。
アマツはすぐに駆け寄りムオンの身体を支えた。

「大丈夫ですかムオン?」
「……やっぱり俺にはこの力は強大すぎるな。エイガを取り逃がしたのは残念だ。
 折角あそこまで追い詰めることが出来たのに」
「別にそんな事は良いじゃないですか。こうして二匹とも無事だったんですから」

アマツはムオンに向かって微笑む。
その笑みを見てムオンは「そうだな」とてれながら呟く。

「では皆さんのところへ帰りましょうムオン。皆さん無事だと良いですけど……」
「ああ。俺達の居場所へ帰ろうアマツ。心配しなくてもそう簡単にやられる奴は居ないさ」

ムオンは自分で歩けない為アマツに寄り添う。
二匹は自分達の仲間の待つ場所へと戻っていった。


72 滅びの歌 


サイとライガ、ミナヅキの睨み合いは終わりを告げる。
先に攻撃を仕掛けたのはサイとライガがだった。

「長引けば私達が不利だ! 一気に攻めて相手に反撃をさせるな!!」
「了解だ姉さん! ……だが相手は地面タイプだから電気技は使えないか」

サイとライガは左右に散りミナヅキを挟み込む。
ミナヅキは冷静に左右の二匹を確認する。

「……流石は時の教団からも指名手配されただけの二匹組みだ。
 相手を追い込む陣形を良く理解している。だがそれだけじゃオレは倒せないけどな。
 能力は落ちてはいるがオレにも神としての威厳がある。
 ……最近はエターナルに酷い扱いを受けてて自分でも忘れそうになるが……」

サイとライガは同時にミナヅキへと襲い掛かった。
ミナヅキは冷静に二匹の攻撃を避け続ける。

「私達の攻撃が当たらない!?」
「……心もまた空間なり。お前等の考えは分かっている。
 それにオレは覚醒したウズキの攻撃も避けてるんだ。
 そうそうお前等の攻撃を受けるわけないだろう?」
「つまり、俺達の攻撃は通用しないってことか……」

攻撃をすり抜けるように避けるミナヅキを見てサイとライガは焦りだす。
些細な焦りも戦いでは致命的な隙を生むことになる。
その隙を逃さずミナヅキはサイに攻撃を仕掛けた。
ミナヅキは右手でサイの首を掴み地面へ叩きつけ押さえつける。

「……先にリーダー格を潰させてもらおうか。司令塔を潰すのは戦闘の基本だからな」
「っく。離せ……」
「離せって言われて素直に離すわけないだろう? これでもお前等を潰す気でここに来てるんだ。
 安心しろ。別にお前の命までとろうなんて考えてないからな。少しの間だけ黙っててもらうぞ」

首をつかまれたサイは苦しそうにし何とかミナヅキを振り払おうと暴れる。
サイを助けようとライガはミナヅキの背後から飛び掛った。
ミナヅキはサイに気を取られていたためライガの攻撃を避けきれずにまともに喰らう。
その攻撃の衝撃でサイを開放してしまい、ミナヅキは悔しそうにする。

「っち。二対一じゃオレの方が不利ってことかよ……。
 ならオレの能力をフルに使わせてもらおうか!!」

ミナヅキは右手に空間の力を溜め空間を引き裂く刃、亜空切断を放った。
その威力は原身と比べれば遥かに弱いが一般のポケモンを相手にするには十分な威力である。
サイとライガは左右それぞれに散開し亜空切断を回避した。

「……思惑通り散ってくれたか。オレに近いのはライガの方だな」

ミナヅキはライガに走って行き掴んで投げると右手をかざした。
右手が光ったと思うとライガを無視しミナヅキは不敵な笑みをしてサイの方へと視線を向ける。

「さて、これで一対一だ。覚悟してもらおうかサイ」
「一対一!? 貴様ライガに何をした!!」
「……別に答えてやる義理はないんだが折角の質問だ。答えてやろう。
 今、ライガの周辺の空間を歪めた。姿は見えても触れる事もできなきゃ声も通じない。
 歪んだ空間を修復するには時空の神の力かそれ以上の力が必要になる。
 つまり、神の血を引いてないライガは絶対に脱出できないってわけ。
 オレはサイを倒した後にゆっくりライガを潰せば良いって作戦だ。
 二匹でならオレに勝てるって言ったが一匹になったらオレに勝てるかな?」

ミナヅキの絶望的な言葉を聞いてもサイは笑っていた。
そんなサイを見てミナヅキが不思議そうな顔をする。

「そんなに笑って……。何が可笑しい?」
「ライガの周辺に私の声は絶対に届かないってことは安全ってことだ。
 ふふ。空間の神が心中相手なら文句はないな」

サイは目を瞑ると静かに歌いだす。
始めは平然とサイの歌声を聞いていたが、やがてミナヅキに変化が訪れる。
眩暈、頭痛、吐き気、様々な症状が襲いミナヅキは立っている事さえ出来なくなった。
頭を押さえながらミナヅキはサイを睨みつける。

「……この頭に直接響くような歌声は『滅びの歌』か……。聞いた者はどんなに屈強の戦士さえ葬る最強の歌。
 しかし、それは同時に歌い手自信も死に至る禁忌の歌。そこまでしてオレを倒すつもりかよ……」

ミナヅキの言葉を聞いたサイの目に迷いはない。
サイは自らの命と引き換えにミナヅキを倒す気だった。


73 王の力 


ライガは自分のおかれた状況を理解するのに時間はかからなかった。
歌うサイの姿を見てライガの顔は見る見る青ざめていく。
滅びの歌を止めさせようと必死に叫ぶとその声は無論サイには届かない。

「くそっ! 何でこうなるんだ! 止めてくれ姉さん!!
 このままじゃ姉さんが……。そんな事絶対にあってたまるか!!
 昨日ウズキに神の力を貰わなかったのは失敗だって言うのかよ!!
 力が……。今、力が必要なのに!! 姉さんを救う神の力が!!!」
「……そんなにも力が欲しいかライガ。神の力があればサイを救えるか?」

ライガが叫んでいると背後から声が聞こえてくる。
その声の主を確認するべくライガが振り返るとそこにはカレンが居た。

「何でここにカレンが?」
「今、汝がワレに求めるのは質問の答えか? 違うだろう。
 正体を明かすのはもっと先になると思っていたんだがな。
 では、改めて自己紹介させてもらおう」

深呼吸をするとカレンは真剣な眼差しでライガを見る。
ライガはそんなカレンを見て警戒して戦闘態勢を取った。

「ワレの名はルーツ。この世界、そして神々を創りし創造神。神を統べる王アルセウス。
 これは契約。ワレの力を望むなら、汝はその身をワレに捧げよ。さすればワレは汝に王の力を授けん」
「……王の力? それがあれば姉さんを助けられるのか?」
「それは汝の意思の強さと才能次第だと言っておこう。後天的に神の力を使えるムオンの覚醒は三分も持たない。
 つまりムオンは神の能力を完全に制御する器ではなかったという事になるわけじゃ。
 王の力を得ても汝に強い意志がなければその力を扱うのは難しいだろう。
 逆に汝に強い意志さえあれば時空の神や冥王さえも超える力を得ることが出来る。
 もう一度問おう。汝ワレの力を望むか? ワレにその身を捧げるか?」

ライガは俯きカレンの契約について考えていた。
しかし、ライガが考えている間にもサイは滅びの歌を歌っている。
考える時間が長いほどサイを救えなくなることにライガは焦っていた。
ならば考える必要なんて無い。ライガは顔を上げ真剣な眼差しをカレンに向ける。

「……俺の身体だろうが心だろうがくれてやる!!
 契約するカレン……いや創造神ルーツ! オレに王の力を!!
 姉さんを救える力を俺にくれ!!」
「良い返事だ。では目を瞑れ。汝に王の力を授ける」

カレンに言われた通りライガは目を瞑った。
ゆっくりとカレンは近づきライガに口づけする。
唇が触れた瞬間にライガの身体に時の神をも超える強大な力が宿った。

「もう目を開けても良いぞライガ」
「これが王の力……。でも苦しくはない。まるで初めからこの力を持っていたみたいだ。
 ……そのところでカレン、今した事って……」

カレンも言葉でライガが目を開けるとカレンは微笑んでいる。
ライガが先ほどの唇の感触で何をされたかは理解して顔を赤くした。
ウズキ達の覚醒と同様にライガの目は変化している。
紅く輝くその目はライガがその力を発動出来ている証でもあった。

「ふふ。無論、接吻だ。もっとも唇しか触れていないがな。
 神が力を授けるには身体と身体の交わりが必要となるのだ。
 その交わりが強いほど強い力を得ることが出来る」
「……つまりそれって。性行為のほうが強い力を得るって事か?」
「簡単に言えばそういうことになるな」

ライガは顔を更に赤くしてカレンに質問する。
カレンは「当たり前であろう」と言いたげに首を縦に振った。

「……昨日素直にウズキから力を貰わなくて良かった」
「ところで汝はいつまでワレと無駄話をしているつもりだ?
 ワレと話している間にサイが倒れては意味がないぞ」
「そうだった。カレンこの力……ありがたく使わせてもらう!!」

カレンに別れを告げるとライガは力を解放し空間の歪みを修正して飛び出していく。
力を開放しライガが空間の歪みを修正するのをカレンは黙って見守っていた。

「まさかワレの力をあそこまで制御するとはな……。ワレの見込んだとおりの雄だ。
 これであやつの身体はワレの物……楽しませてもらうぞライガ」

カレンは不敵に笑いながらこの場を去って行った。


74 神を超えた力 


サイが滅びの歌を歌っている表情に生気が失われてきている。
歪んだ空間に変化が訪れたのはそんなときだった。
空間は割れるように轟音をたて崩れ去る。
その修復された空間の中心にはライガが居た。
サイの姿を見つけたライガはすぐに彼女の元へと走っていく。

「姉さん! それ以上歌うのは止めてくれ!! もう姉さんの身体はそれ以上もたないだろ!?」
「……どうしてだライガ? 出られないはずだろう?」
「そんなことは今はどうでも良いだろう? ミナヅキは俺が止める。だからゆっくり休んでいてくれ」

そんなライガの気づかいにサイは素直に「ああ」と答えると木の影で横になった。
ライガはサイの安全を確かめるとミナヅキを睨みつける。

「ここから俺が相手をする。姉さんには手出しするなよ」
「……殺す気は初めからないと言っただろう。どうやって空間の歪みを修正したかは知らないがオレに勝てるかな?」
「今の俺はさっきまでの俺とは違う。この力で俺は大切な者を守り抜く!」

ミナヅキは滅びの歌の呪縛から解き放たれたことで体調は徐々に良くなっていた。
しかし、そのことに気をとられていた事でライガの覚醒には気づいていない。
ミナヅキはさっさと勝負を終わらせたいのか空間転移して一気にライガに近づき右手の鋭い爪を振り下ろす。
ライガは咄嗟に鋼鉄化させた尻尾でミナヅキの爪を受けて止めた。

「オレの攻撃を受け止めた!? 今の速さに反応できたっていうのかよ!?」
「さっきまでの俺とは違うって言ったろう!!」

叫ぶと同時にライガはミナヅキを吹き飛ばす。
ミナヅキは力負けすると思っていなかったのか驚いて着地に失敗する。
態勢を立て直したミナヅキがライガを睨みつけた。

「どうやらその言葉ハッタリじゃないみたいだな。なら、手堅く攻撃させてもらおうか!」

一気に間合いを詰めミナヅキは燕返しを放つ。
覚醒したライガも流石に避けられそうになく、己自身の力を使い防壁を張ろうとする。
相手の攻撃を防ぐ方法が初めから知って様にライガの脳内によぎった。
ライガのイメージ通り周囲に自らを守るべく防壁が生まれる。
避けきれない一撃が防がれるとは思っていなかったミナヅキは防壁の反動を直接受け吹き飛ぶ。

「っち。いままでこいつから神の血の共鳴は一切感じなかった。
 だが、今はそれまで感じななかったのが不思議なほど強大な力を感じる。
 あの防壁こそ、あいつが覚醒しその力を使いこなしてって事だろ……。
 そして気がかりなのはあいつの周囲に時間の歪みは感じないって事だ……。
 つまりあいつの力はダイヤのものじゃない。当然オレでもプルートでもない。
 ならあいつの力は誰のものだ? 考えられるのはクラゲ共かルーツ様になるわけか……。
 だが、ルーツ様の下僕のクラゲ共が禁忌を犯してるとは考えづらい……。
 消去法を使うとルーツ様しか残っていないが本当にそうなのか?
 あれだけ神の力を授けるのを拒んでいた、ルーツ様自身が神の力を一般のポケモンに授けたのか?
 ルーツ様は何を考えてるか分からないところがあるしな……。可能性は十分にあるな。だが、そうだったら厄介だな。
 しかし空間の神の最大の攻撃が防げるものかな? これはダイヤにだって防げない一撃だ。
 勿論、避けそう何て考えてないよな? 避けたら後ろに居るサイの命は保障出来ないぞ。
 別に今のお前ならこの一撃くらいじゃ死にはしないだろ? これで決着付けようじゃないか」

ミナヅキは勝利を確信し不敵に笑う。
流石に空間の神、最大の一撃を防ぐ自身がなかったのかライガは避けようと考えていた。
しかし、ミナヅキの言葉通りライガの後ろにはサイの休む木陰ある。
ライガは腹をくくり、衝撃に耐えるべくライガは身構えると亜空切断の刃が目の前に迫った。
だが、亜空切断の刃はライガの触れること無く、防壁に触れた瞬間に消滅した。
ライガの防壁は確かにダイヤですら防げなかった一撃を防ぐことに成功したのだ。

「……嘘だろう? 確かに今のオレは力は落ちている。だが亜空切断を防ぐなんて!?
 はぁ~。つまりオレに攻撃を通す手段はないってことかよ……。
 やめだやめ。もうオレに勝てる手段はないからオレはここで帰るわ」
「お、おい!? そんなにあっさり帰って良いのかよ!? そっちから喧嘩を売ってきたんだろ!?」
「まぁ、それはそうなんだけどな……。オレは別に戦いたいわけじゃないからな。
 このまま消耗戦をするのは御免だからな。それともオレが勝てそうなサイだけ蹴散らしてほしいのか?」

ミナヅキの皮肉めいた質問にライガは殺意をこめて睨みつけた。
その反応自体がミナヅキの予想通りだったのか笑いながら「冗談だよ」と呟く。
流石にこれ以上からかうと危険と思ったのか、ミナヅキは空間転移してこの場を後にした。
ライガはミナヅキが居なくなったのを確認したらサイの元へと駆けつける。

「姉さん。滅びの歌を使ったみたいだけど身体は平気?」
「……なんとかな。でもまさかお前も神の力が使えたなんて正直驚いたぞ」
「……あはは。俺も初めてでここまで使いこなせるとは思ってなかった。
 でも、姉さんが無事で良かった。もうあんな無茶はしないでくれよ?
 俺には姉さんが必要なんだ。だからもう滅びの歌を使うのは止めてくれ」

そんなライガの甘い言葉に顔を赤くしてサイは「ああ、分かったよ」と一言だけ呟いて顔を背けてしまう。
ライガは動けないサイをそっと背中に乗せる。

「……大きくなったなライガ。初めて会ったときはコリンクで私の半分も身長がなかったのにな。
 今は進化したのもあるが私よりも大きくなって……。逞しい背中だ」
「これで姉さんを守れるくらいには強くなったかな?」
「ふふ。十分過ぎるぞライガ」

サイはライガの背中の温もりを更に感じようと体をより密着させる。
背中から感じるサイの体温に照れながらもライガは喜んでいた。


75 時 対 心 


心の神々はウズキを睨みながら戦闘態勢を取った。
三匹が戦闘態勢を取ったことでウズキも戦闘態勢を取る。

「クラゲって言うなって言ってもボクは君達の名前知らないし……。
 せめて名前ぐらいでも教えてくれないと呼びようがないんだけど?」
「そうですね。私は知識の神ユクシーのノウレッジ、赤いのが感情の神エムリットのフィール。
 青いのが意志の神アグノムのウィル。創造神に創られし心を司る神です」

ノウレッジは三度目の自己紹介をする。
ウズキは『創造神』という単語に反応した。

「……なるほど。ライガに接触したり部下を送り込んできたり創造神は本気でボク等を排除する気か……」
「ルーツ様も禁忌を犯した神々に世界は任せられないのでしょう。ここであなたには封印されてもらいます」

ウズキとノウレッジは睨み合いながら話を続けていた。
ウィルとフィールはまったく相手にされていないので愚痴をこぼしている。

「……絶対に俺達のこと忘れてるよな」
「ウィルの言うとうりだよ。これじゃあ僕等の出番がないよね」

ウィルとフィールはノウレッジの左右の肩をそれぞれ叩く。
無論それは「さっさとはじめよう」という無言の頼みであった。

「そっちの二匹が暇を持て余してるみたいだしそろそろ始める?
 実際ボクは君等と話すことなんて何もないしね。じゃあ行くよ!!」

ウズキは相手の答えを聞く前に火炎放射を放つ。
三匹は散会して攻撃を避け三方向からウズキを包囲する。

「私達はまだあなたの質問に答えてはいませんよ!
 これだから不完全な神は野蛮で困ります」
「まぁ良いじゃないか。どうせこういう結果になるんだろ?
 俺は初めからこうしてれば良いと思ってたけどな」
「行け行け! 不完全なエロ神は僕等で封印しちゃいましょ~!!」

三匹の周囲の空間が揺れたと思うと同時にサイコキネシスを放つ。
周囲を囲まれていたウズキは動くことができず爆煙が舞う。

「けほ。煙が凄いね。これならダイヤも流石に木端微塵かな?」
「いや~愉快愉快。意外に呆気なかったね」
「弱ったダイヤを確認するまで油断はできませんよ」

煙が晴れるとそこにウズキの姿はない。
代わりに地面に大きな穴が開いていた。

「しまった!? 穴を掘って地面に逃げるなんて!?」
「くそ! ウズキは今、地面の中か!?」
「……ノウレッジ、ウィル。でも僕等って特性は『浮遊』だからそこまで慌てなくても良いんじゃない?」

ノウレッジとウィルはフィールの言葉に「そうだった!!」と言いたげに顔を合わせる。
この事で焦っていたノウレッジとウィルは冷静さを取り戻す。
三匹は気配を感じ上へ振り向くとそこにはキュウコンの姿へと変わったウズキが木の上にいた。
ウズキは紅い目で三匹を見下ろしている。

「気がついたけれどもう遅い! ボクは既に地面の中にはいないんだよね!!」
「おい、嘘だろ!? だって穴は一つしか開いてないんだぞ!?」
「……ダイヤも能力が使えるまでに回復してたのですね。ロコンだったので油断していました……。
 穴を掘った瞬間に何か細工をしたんでしょうね。高速で動いたとか、時を止めたとか……」

ウィルとノウレッジはウズキと穴を交互に見ていまだに信じられないようだ。
フィールは何が起きたのか分からないという顔をして驚きで声も出ない。
ウズキは自らの身体に炎を纏い木を勢い良く蹴って三匹へ突撃する。
自らもぶつかる事で相手に衝撃と激しい炎を与える炎系の技でも一位二位を争う高威力の技。
しかし、高威力の反面その反動は大きく自らも傷つける諸刃の剣フレアドライブ。
三匹はウズキのフレアドライブを避けるため大きく散開しその後ウズキを囲む。

「またボクを囲んだね? 予想通りかな。もっともボクは君達の過去を知ることが出来る。
 一秒前も過去。つまり考えてることはお見通しなんだけどさ」

ウズキは三匹の中央で一気に体内のエネルギーを開放する。
放たれたエネルギーはウズキを中心に大爆発を起こした。

「……この位置でオーバーヒートなんて!? ありえないよ~」
「くそ! なんでこいつ高威力でハイリスクの技ばっかり使うんだよ!」
「ウィル。そこはダイヤの最終技『時の咆哮』があなたの言ったような高威力でハイリスク技だからでしょう」

ノウレッジ達はそれぞれ光の壁を張りオーバーヒートをやり過ごした。
ウズキは数でこそ負けているもその力は三匹とほぼ互角である。
ノウレッジ達はウズキを囲う陣形をやめフィールを中心に集まった。

「……固まったらかえって的になるんじゃない?」
「確かにそうかもしれませんね」
「でも僕等は三匹揃って能力を発揮するように創られてるんだよね」

ウィルは二匹の言葉に「そうそう」と言いながら首を立てに振る。
三匹の余裕の笑みにウズキは不振に思い距離を取ることにした。


76 赤い鎖 


ウズキはあまりに余裕の笑みを浮かべる三匹に不気味さを感じていた。
しかし、距離を取ったことが逆にウズキをピンチへと陥れる事になる。
着地した瞬間にウズキの身体に無数の尖った岩が突き刺さった。

「ぐわぁあ!! これはステルスロック!? 何でこんな所に!?」
「何でって? 僕等は心を司る神々だよ。相手の心を読んで未来予知くらい簡単だよ。
 心を覗けるっていうのは、そっちだけの特権じゃないんだよね~」
「でもって、後は相手の着地地点に罠なんか仕掛けちゃえば良いわけさ。
 単体の能力は劣ってても俺達はチームだからな」

ステルスロックを食らい叫ぶウズキを見てフィールとウィルが笑いながら答える。
笑っているフィールとウィルを見てノウレッジは溜息をつく。

「……まったく。何であの二匹は当然の結果であんなに喜べるのかしら。
 しかも、こちらは三匹。相手は時の神と言っても所詮は不完全な状態。
 私達に負ける理由は何一つないのだから、もう少し落ち着いて行動できないのでしょうか。
 まぁ、今はステルスロックで傷付いたダイヤの処理をしないといけませんね。
 ステルスロックは属性の影響を受けるから、現在炎タイプのダイヤは相当のダメージのはず」

ノウレッジの読み通りウズキは相当にダメージを負っている。
それでも、ウズキは戦闘態勢を取ってノウレッジ達を睨みつけた。

「……ボクにも時の神としての意地はある。こんな簡単にやられるわけにはいかない!!
 時間を狂わせるボクの叫びを聞けぇええええええええ!!!!」
「あそこまで体力を消耗していてこんな大技を出すなんて……。予想外ですね」

ウズキは己の力を振り絞り時の咆哮を放つ。
ノウレッジ達は素早く木の影に隠れ時の咆哮を防ごうとする。
ウズキの叫びは容赦なく周囲の木々を吹き飛ばし、彼女の周りに存在するのは抉れた大地だけだった。
三匹が隠れた木は時の咆哮の射程外だったらしく何とか無事だったようである。

「うわぁ~。流石としか言えない破壊力だよ。僕はあれの直撃だけは嫌だね……」
「それは俺も同感だな……。あんなの食らったら俺達ですら本気で消滅するんじゃないか?」
「確かに……。実際に試してみる気にはなれないですね。しかし、今のダイヤは動けないはず。
 フィール、ウィル! ダイヤを拘束します。準備をしてください!」

フィールとウィルは「了解」と素直に返事をしてウズキを三角形で囲む。
何をされるかは分からないが嫌な予感を感じたウズキは逃げようとするも時の咆哮の反動で一歩も動く事が出来ない。

「……反動が大きくて身体が言うことをきかない」
「それは残念でしたねダイヤ。こんな場面で時の咆哮なんて大技を使用したのがあなたの敗因です」

ノウレッジはダイヤを鼻で笑い、何かを呟き始める。
それを確認したフィールとウィルもノウレッジに合わせ呟き始めた。
しばらくすると三匹の身体が光りだし、空中に赤い鎖が出現する。
出現した鎖は一直線にウズキを縛り付け拘束した。
ウズキを拘束した瞬間に鎖は眩く輝きだす。
その瞬間に鋭い痛みが全身に走り、ウズキは叫びだした。

「ぐわぁ! な、何この鎖!? ボクがボクでなくなるような……。段々意識が朦朧と……」
「私達は三匹であなた達を拘束するためにルーツ様に創られました。
 その能力がこの『赤い鎖』です。神々の心を壊し私達の支配下に置く。
 個々の能力が低い代わりに創造神に与えられし私達の能力です。
 暴走する神々を止めるのが役目の私達に相応しい能力ですよね?」

抵抗を続けていたウズキもやがては大人しくなる。
開かれているその目にまるで人形のようで生気は感じられない。

「まぁ、心が壊れたあなたにはもう感じてはいないでしょうけど……。
 ダイヤを回収後、私達はこの場を撤収します。フィール、ウィル良いですね?」
「あれ? 他の仲間はどうするのさ? 僕達だけ帰っちゃうの?」
「……フィール。俺達の今回の目標はあくまでこいつ。他はどうでも良いの。分かる?
 まぁ、確かにこれだけじゃ呆気ないような気もするけど。無駄にリスクを負う必要もないし」

ノウレッジの言葉にフィールは首を傾げ質問した。
その質問に二匹は呆れ、ウィルはウズキの肩を叩きながら説明する。
フィールが納得したところでウズキを連れて三匹はこの場を後にした。


77 ウズキの存在 


戦いを終えたグレン達は休息を取っていた。
いつまで経ってもウズキが帰ってこない事に皆は疑問を感じ始める。
……サイとムオンは顔を真っ青にしていてそれどころではなさそうだ。
二匹は滅びの歌と覚醒の影響で立っているのがやっとの状態にまで消耗していた。

「流石にもう戦闘の音は聞こえないしウズキさんが帰ってこないのは不自然……だよね?」
「確かにそうですね。歩けないほどの重症を負われたというのはかもしれません……」
「母様にかぎってそれはないと思います。もし、そうならば母様は自分の能力で傷を治せます。
 他の理由があるはずだと思うんですが……。それが何かは私にも検討ができなんです」

グレンは質問を投げかけフィニティとアマツはそれぞれの考えを述べた。
ウズキについての皆で話し合い、手分けして探し出すことに決定する。
それぞれ、ウズキを探す場所を決めていると、聞きなれない声が背後から聞こえてきた。

「ダイヤはこの近くには居ないぞ。探すだけ無駄だと思うぞ」

声を聞いた一同は一斉に声の主の方へと振り向く。
そこにはカレンが静かにたたずんでいた。
グレンとフィニティとアマツはカレンを睨み戦闘態勢を取る。
サイとムオンは振り向くだけで精一杯で睨むほどの余裕はなかった。
ライガはカレンが居る事に驚いて立ち尽くしている。

「……貴様、何者だ……」
「ウズキの場所を知っているのか?」

ムオンとサイの迫力のない威嚇。
そんな二匹を見てカレンは呆れていた。

「なんだ。ワレはさっき名乗ったばかりなのに、また自己紹介か……。
 まぁ、良かろう。ワレの名はルーツ。この世界と神々を創りし創造神。神王アルセウス。
 ワレが創りしダイヤの大体の場所は特定できている。汝等が知りたいのであれば教えても構わんぞ。
 あと、ダイヤがウズキと名乗っておるのと同じなよう、この姿のときはカレンと呼んでもらおう。
 ……それと、そんな迫力のない威嚇をされても誰も屈服しないと思うぞ」
「……創造神? つまり、それは僕等の始末を冥王に命令したって言う……」

グレン達はカレンの自己紹介に困惑する。
そんな視線を気にせずカレンはゆっくりとライガに近づいていく。

「……そう。つまりは、汝等の敵……という事になるのだろうな。
 少なくとも、今汝等がワレに攻撃をしなければワレは汝等に手は下さん。
 汝等の力などワレの前では赤子のようなもの。倒したところで意味などありはせん」
「……なら、カレン。それなら何で俺達の前に現れた? 目的があったからこそ、ここに来たんじゃないのか?」

ライガはカレンの不振な行動に苛立ち睨み付ける。
他の者が何を言っても表情を変えなかったのにカレンが眉間に皺を寄せた。

「ワレは汝との契約を果たしに来ただけぞライガ」
「……っち。そういう事かよ」

カレンの答えにライガは舌打ちをした。
そんなライガの舌打ちに気にする事無くカレンは話始める。

「汝等にとってダイヤはどういう存在だ? あやつは汝等にとってこの戦いに巻き込んだ元凶であろう。
 それなのに何故、汝等はダイヤと行動を共にする? 元の時代に帰りたいと言うのであればワレが元の時代に送り届けても良いぞ。
 無論、その後ワレは汝等に干渉しないと約束しよう。そうでなければ送り帰す意味がないからな。
 汝等にとって都合の悪い取引ではなかろう? それにワレにとっても邪魔者が減るからのう」
「……つまり、それは母様を見捨てれば私達を元の時代に送り返し、安全を保障するという意味ですか?」
「結論はそういう事になるな。ワレにとって汝等など、もうどうでも良いしのう。
 答えは明日の朝で良い。それまでじっくり考えておくのじゃな」

カレンの言葉に一同は考え出す。
一同は自分達にとってウズキがどういう存在かを改めて考えていた。

「では、ライガ。他の者が丁度考え事をしているようだし、ワレ等も契約を果たしに行くぞ」
「……そう……だな」

カレンはライガを連れて少し離れた森へと歩いて行く。
皆はウズキの事を考えてサイですらライガ達の行動に気づいてはいなかった。


78 契約 


カレンとライガは喋る事無く森を進んでいく。
少し開けた所へ出るとカレンが急にその歩みを止める。
振り向くことなくカレンはライガに問いかけた。

「ここまで離れれば問題はなかろう。ライガ、覚悟は……出来ているな?」
「……あんたは契約通り、俺に王の力をくれた。今度は俺が契約を守る番だ」
「ふむ。それで良い。では、始めるぞ」

質問の答えを聞いたカレンは振り返ると同時にライガを押し倒しその唇を奪う。
力を授けたときとは違い、カレンは自らの舌をライガの口内へ侵入させる。
カレンの行動を予測していなかったライガは目を大きく開き驚く。
数分経って満足したのかカレンは口を離す。

「カカ、カレン!? い、一体何をいきなり!?」
「何をいきなりとは失礼じゃな。ワレは汝にその身を捧げよと申したぞ。
 それにワレは汝に惚れたと言ったはずだがな」
「身体を捧げよってそう意味でなのか!? 俺はてっきり死ねって言う意味かと……。 
 それに、俺に惚れたなんて、そんな事言ってたか? 俺はそんな事聞いた覚えはないぞ!!」

ライガの言葉を聞いてカレンは眉間に皺を寄せる。
カレンはライガを押し倒したままその質問に答え始めた。

「汝の名前を聞く前にワレは惚れたと言っておったぞ。
 それに汝を殺すのであれば初めから王の力など授ける意味がないではないか。
 死ねと言うのなら『その命を捧げよ』と言っておるわ」
「……つまり、初めから俺と……その、性行為が目的だったと?」
「うむ。結論を言うとそういう事になるな。汝は神王に選ばれたのだ。光栄であろう。
 それとも彼女が居る汝にとっては素直に喜べないかな?」

カレンの言葉にライガが顔を赤くしながら考え出す。
そんなライガを見てカレンは微笑んでいた。

「う~ん。まぁ、確かにカレンは容姿は良いほうだと思うけどな。
 それに神王に選ばれたって言っても、俺はカレンの原身を見てないし。
 寧ろ、俺はカレンの事はなんにも知らないわけで……。
 正直に言うとあまりにスケールが大きくて実感がないんだよな……。
 ……その、今回の事は姉さんには黙ってってくれると嬉しいんだけど」
「つまり、ワレについて知りたいのか。それは好奇心か? それとも敵の大将の情報としてか?
 まぁ良い。そんな事、ワレにとってはどうでも良いことだしな。惚れた雄の折角の質問だ。簡単に答えておいてやろう」

ライガの素直な言葉にカレンは妙に嬉しそうな顔をする。
何気なく言ったライガの言葉もカレンは『自分に興味を持ってくれた』と解釈していた。

「ワレは創造神アルセウスのルーツ。神々を統べる神王。まぁ、これは自己紹介の通りじゃな。
 冥王と空間の神が組んだ事により世界は変わろうとしている。今のワレの役割はその世界の行末を監視すること。
 もっとも、ワレ等は現在過去に居るのだから世界のではなく神々の監視と言ったほうが正しいじゃろうな……。
 分かってるいる者もいると思うが神々を創った理由はその時が来たら追々話していくとしようか。今はそういう気分ではないのでな。
 ふむ。いざ自己紹介しろと言われても、これ以上何を話せば良いものか……。何か質問はあるかライガ?
 おっと。今回の件はサイには言う気はないから安心するが良い。ワレも汝に嫌われたくはないからな」
「……いきなり質問って言われても急には思いつかないな。
 それと……カレンは強引な割には謙虚なんだな。その気になれば俺の心でも弄って従わせる事も出来たはずだろ?」
「……中々鋭いな。無論、ワレの力を持ってすれば心に干渉するなどいくらでも出来る。
 じゃが、それでは意味はないと思わないか? ワレが惚れたのは汝の心だ。故に汝の心を踏み躙ることは出来ん。
 そろそろ、初めても良いかなライガ? 夜は永遠に続くわけではないのだかな……」

カレンはライガの答えを聞く前にその口を自らの口で塞ぐ。
二匹の交わした真の契約は今から始まる。


79 王との交わり 序曲 


カレンの口付けによってライガの理性は崩れ始めていた。
それに満足したカレンは押し倒していたライガから退く。
ライガの目の前でカレンは後ろ足を開脚し秘所を見せ付ける。

「ワレが何を望んでいるかは言わなくても分かるよなライガ」
「……雌にそんな格好をされて分からないほど鈍感じゃないつもりだからな」
「ふむ。ならばよろしく頼むぞ」

ライガは顔をゆっくりとカレンの秘所に近づけていく。
そしてじっくりとカレンの秘所を覗きこむ。
秘所を見られてるという恥ずかしさからカレンは顔を赤くする。

「……そんな、視姦ばかりしてないで早くしてほしいのだが……」
「ふ~ん。神王様がそんな事を頼んじゃうんですか?」
「そうは言うが、神とて汝等と大して変わりはしないのだぞ。
 嬉しければ笑う。悲しければ泣く。腹が立てば怒る。
 違うと言えば……終わる事のない永遠の命か……。
 だからこそ、ダイヤはクウコという一匹の雄を愛し、永遠の命を彼にも与えた。
 そして、パールとプルートは共に永遠の命を持つもの同士が結ばれたであろう?
 ワレはライガ……汝を愛した。神とて孤独では生きては行けぬのじゃ。
 汝がサイを愛しているのは無論、承知しておる。心までワレに捧げろとは言わん
 だから、今夜だけで良いのじゃライガ。今だけワレと恋人に……」

今まで余裕の笑みばかり浮かべていたカレンの顔が急に暗くなった。
しばらく考えたがライガは何を言って良いのか思いつかず素直にカレンが望む事を始める。
ライガはカレンの秘所をゆっくりと舐めた。

「ふふ。まだ、話は終わってはいなかったがようやくその気になりおったか」
「カレンがその気にさせたんじゃないか。それに夜は永遠には続かないんだしな。
 最後にもう一度確認して置くが、俺の心は姉さんのものだ。それで構わないんだなカレン?」
「うむ。勿論じゃ。ワレは汝の心を捻じ曲げる気はないからな。
 汝がワレに惚れないのであればそれでも良い。
 だが、ワレも汝の心を手に入れようとは努力させてもらうがな。
 では、契約はしっかり果たしてもらおうかライガ」

ライガは「カレンを愛さない」と宣言すかのようにカレンに確認をとる。
そのライガの言葉にカレンは嫌がるどころか逆に笑っていた。
カレンの笑った顔を見て、ライガは顔を赤くする。
それを隠すかのようにライガはカレンの秘所を貪り始めた。
舌で割れ目を愛撫しながら右前足では敏感な豆を弄る。

「んぁああ!! 良いぞぉライガァアアア!! こんなに気持ち良いのは初めてじゃぁああ!!」
「そうか? じゃぁ、もっと激しくやらせてもらうぞ」
「そ、そんなに激しくされるとイってしまう……あぁあああん!!」

ライガは舌を秘所に入れたり敏感な豆を吸ったりする。
激しい攻めに成す術もなく簡単にイってしまった。

「うぅう。激しすぎるぞライガ……」
「でも、気持ち良かったんだろ? なら良いじゃないか」
「それはそうだが……。今度はワレが汝の身体を堪能しよう」

目の前の相手をイかせ、優越感に浸っていたライガをカレンは押し倒す。
カレンの目の前に丁度ライガの股間があり、雄の象徴は刺激を欲しそうに天高くそびえていた。
その天高くそびえるモノを見てカレンは嬉しそうにしている。

「ほぉ。ワレの秘所を舐めて興奮したか?」
「当たり前じゃないか。それで興奮しない雄はゲイだな」
「ふふ。そうか。では、いくぞ」

カレンは呟くと同時にライガのモノを咥えた。
いきなり咥えられるとは思っていなかったのかライガは息を荒くする。

「かはぁああ!! カ、カレン……い、いきなりそんなぁあ!!
 お、俺のなんか咥えたら汚いぞカレン!!」
「ワレは汚いなんて思っておらんぞ。それに汝だってワレのを舐めていたではないか」
「お、雄と雌のじゃ違うじゃないか……」

カレンの言葉にライガは顔を真っ赤にする。
そんなライガを見てカレンは「可愛い奴じゃ」と呟いた。

「ん? カレン、何か言ったか?」
「いや、何も言ってはおらんぞ。では、続きと行くか……」

不思議そうに首を傾げるライガを見てカレンが顔を赤くさせた。
そんな照れを隠すようにカレンはライガのモノを咥え奉仕する。
舐めてたり吸ったりしながらカレンはライガのモノ弄ぶ。
モノから刺激を与えられるたびにライガは嬌声を上げる。

「くぅうう!! カレンもうもたない!! 離れ……」

ライガは「離れてくれ」と言い終わる前に絶頂を向かえ、己の精液をカレンの口内へと解き放つ。
突然の来客にカレンは慌てることも、嫌がることもせずライガの精液を飲み込んでいく。
ライガの精液を飲み干すとカレンはライガの方を向き微笑んだ。


80 王との交わり 終曲 


微笑を浮かべるカレンを見てライガは困惑していた。
流石に本人の許可なく口内に精液を放ってしまった事にライガは罪悪感を感じている。
ライガは何を言って良いのかしばらく悩み、やがて口を開いた。

「えっと……その……カレン悪かった」
「別に気にしてはおらん。ライガの濃いのをたっぷりと堪能させてもらったしな。
 では、そろそろ本番といこうではないか。ここで終わる気ではなかったのだろう?」

カレンは腰を突き出しライガを誘惑する。
その誘いを断わる事無くライガは自らのモノをカレンの秘所に宛がう。
深呼吸をしてライガはゆっくりとモノを秘所へと挿入していく。
すんなりと奥まで入ると思っていたら途中で何かにぶつかった。
カレンの思いもよらなかった事実にライガは慌てふためく。

「お、おい! その、カレンって……。つまり……」
「……なんじゃライガはワレが生娘では不服か?」
「いや、不服なんて事は絶対にない! ……じゃなくて正直、かなり意外だなって思ってさ」

ライガの発言にカレンは不機嫌そうにした。
不機嫌そうなカレンを見てライガは慌ててカレンに謝る。

「……ワレは時空の神々と冥王に他者との交わりを禁じておったのだぞ。
 ワレ自身がそんな命令をしておいて真っ先に破っている訳ないだろう?
 理由は神の力を使う者達が、この世界を乱すと思っておったから。
 しかし、グレン達を見ているとあたつ等が世界を支配したり、滅ぼしたりなんぞ考えんだろう……。
 ……だから、少しあやつ等を信用しても良いかと思ったのじゃ。
 無論、ライガもそうであろう? 故にこうして、ライガに力を与えた。
 ……汝との契約時にした接吻も、ワレには初めての経験だったのじゃぞ……。
 少し考えれば分かりそうな気がするのじゃが……。正直、ワレは傷付いたぞライガ」
「いや、だって……。あまりにも積極的だったからさ。経験してるのかと……。
 俺達は神の力を得ても神になる気は無い。ただ、愛する者と静かに暮らししたいだけだ。
 だから、その力をくれたカレンには感謝してる。だから、今カレンの力になってやりたい……」
「では、無駄話はここまでにしておいて続きを楽しもうではないか。汝にワレの初めて捧げるぞ……」

カレンは言葉では強がっていても、かすかに震えていた。
そんな弱々しい姿を見てライガはカレンにキスをする。
互いの唇が触れ合うだけの軽いキス。
それでもカレンの震えは収まりライガは挿入を再開した。
カレンの純潔の証も抵抗をやめライガを受け入れる。

「全部入ったけど大丈夫かカレン?」
「そ、そうか……。痛みはあるがそれ以上に嬉しいぞライガ。これが愛する者と一つになるという事か……。
 ライガ、まだ痛むが動いてくれないか? ワレはもっと汝の存在を感じたいのじゃ……」
「分かった。でも、本気で痛かったなら言ってくれ。俺はカレンと一緒に気持ち良くなりたいからな」

ライガの気づかいにカレンは「良かろう」と一言だけ答える。
気づかいを受けたカレンの顔は赤く染めていて、それを見たライガは微笑む。
カレンの要求通りライガはゆっくりと腰を動かし始めた。
始めは痛みで顔を歪めていたカレンも次第に快楽の方が上回り嬌声を上げはじめる。

「んぁあああ!! 気持ち良過ぎて変になってしまいそうだ!! ライガァアアアア!!」
「お、俺ももう長くは持ちそうにない……」
「ぜ、絶対に抜くでないぞライガァアア!! 果てるならワレの中で果てるがぁああ!!」

カレンは最後まで言う前に絶頂を向かえる。
絶頂を迎えたことによりカレンの秘所は更にライガのモノを締め付けた。
限界が近かったライガもその刺激に耐えられるはずもなく、絶頂を向かえカレンの中に精液を吐き出す。

「くわぁああ!! ラ、ライガの熱いのがワレの中にぃいい!!」

ライガは射精が収まるとモノをカレンの秘所から抜き去った。
モノが抜かれたカレンの秘所からは収まりきらなかったライガの精液が滴り落ちる。

「……随分と沢山出しおったな。それともこれぐらい雄からすれば普通なのか?」
「普通かって聞かれても俺も他の雄の射精の量なんて知らないしな……。少なくても自慰の時よりは多く射精したけどな……」
「ふむ、成る程な。その答えでワレの身体は自慰よりは気持ち良かったということは分かったぞ」

カレンの質問にライガは顔を真っ赤にして答える。
その答えでカレンも満足したのか嬉しそうにしていた。

「……そころでカレン。中に出せって言ったけど……その妊娠なんてしないよな?」
「どうだろうな。もし、汝の子を孕んでおったなら責任を取ってくれるのかライガ?」
「……え? じょ、冗談だよなカレン? 平気だったから中に出せって言ったんだよな?
 そうだと言ってくれよカレン!? そう言ってくれなきゃ俺は姉さんとまともに顔を合わせられないじゃないか!」

ライガの質問にカレンはまともに答えず、質問で返した。
その質問の内容にライガの顔は見る見るうちに青ざめていく。
カレンはそんなライガを見て楽しそうに笑っていた。

「くく。予想以上の慌てようじゃな。今日は平気だったから安心せい。
 それに仮に孕んでおっても別に汝に責任を取れとは言わん。ワレが望んだ事だからな」
「そ、そうか……。本当に心配しなくても良いんだな?」
「何じゃ? ライガはワレの言葉が信じられんか? ワレとて神じゃ。これしきの事で嘘などつかん」

カレンはライガの質問に不満そうな顔をする。
機嫌を悪くさせたことをライガは素直に謝った。

「……今日だけは汝の隣で眠らせてもらうぞライガ。今日だけで良いのじゃ……」
「……カレン。ああ、分かった」

カレンはライガに寄り添い丸くなる。
そんなカレンをライガは優しく包み込んだ。
ライガの行動にカレンは驚きながらも嬉しそうにする。
カレンとライガは静かに眠りについた。


コメント頂けると嬉しいです。




トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2010-02-28 (日) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.