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時の後継者 6

/時の後継者 6

時の後継者 

by蒼空


51 忠誠 


レッカは二匹を睨んだまま戦闘態勢を取らないままでいた。
グレンとライガはその威圧感に動けないでいる。
いやライガはそうかもしれないがグレンは別の理由で動けないでいた。

「どうした? 勝負は始まっている……。仕掛けてこないのか?」
「なんで睨まれてるだけでこうも威圧感を感じる……」
「この威圧感……。間違いない……父さんなんでしょ!」

グレンの言葉にライガは驚いたようだがレッカは表情を変えない。
レッカは睨むのを止めると戦闘態勢を取った。

「……だからどうした? 今の俺はお前の敵でしかない。かかって来いグレン……」
「どうして父さんがここに居るの!? 七年前の事故で亡くなったってのは嘘だったの!?」
「……敵の質問に答える必要はない……。戦場で互いに敵同士で会ったのならば戦うのみ。
 それが血縁者でもだ。質問に答えて欲しければ力ずくで俺から聞き出すんだな」

レッカは火炎放射をグレンに放つ。
茫然とするグレンをライガが突き飛ばし火炎放射は何かを焦がす事はなかった。
ライガは素早く態勢を立て直しグレンを睨みつける。

「馬鹿! 避けなきゃ死んじまうぞ!! まさかグレン……お前が烈火の閃光の息子だったなんてな……。
 レッカの息子はレッカと血縁者になろうって奴の道具として見られてったって話……本当なんだな?」
「僕はグレンだよ……。決して『レッカの息子』っていう父さんとの縁結びの道具じゃない……。
 皆そうやって僕を道具としてしか見ない……。僕は……僕は……道具なんかじゃない……」
「ならばこの俺を超えて自分と言う存在を切り開くんだな。この俺を超えられないのなら……死ね。
 この世界はお前のような惰弱な奴が生きていけるほど優しくも美しくもない……。
 俺の血を引いていながら息子がこんなにも惰弱な存在。だからお前は『レッカの息子』と言われ続けたんだ」

グレンは気づいていないだろうがレッカの表情は息子を『殺し』に来たのではなく『試し』に来た……そんな表情である。
ライガはレッカの表情を見てその事に気づき始めていた。

「……優しいのはあんたじゃないのかレッカ? 俺達を殺しに来たのなら初めの一撃でやれただろう?
 でも、あんたはそれをしなかった……。あんたの目……誰かを殺せる目じゃないな……。
 本当は嫌なんだろう? なのにあんたは何故ここに来てまで戦っている……」
「……ふっ。中々鋭いな……。だが、そういう鋭い奴は速く死ぬ……。主の為に戦うのは群の一員として当然の事だ。
 今の俺の主はエイガ様……いや、プルート様だ。その主がお前達を殺せと言っている。
 ならば俺に選択権はない。群で求められるのは命令を忠実にこなせる者だけだ」
「でも、そのあんたは事故に見せかけられて殺されたんだよな?
 それって今のお前の考えと違うじゃないか……。お前も自分の考えに素直になったらどうだ?
 お前って強がっても結局はグレンと何も変わらないじゃないか?」

ライガの言葉にレッカは図星をつかれたようでそれを誤魔化すようにライガを睨んだ。
正直、今のライガとグレンではまともに戦ってレッカに勝ち目はない。
ライガの言葉は全て時間稼ぎをしているにすぎなかった。

「さて、時間稼ぎはそれで良いだろう? 俺と話しててずっと冷や汗が出てたからな。
 と言っても……エイガ様とエターナルはもう撤退したみたいだな……。
 ミナヅキの所も戦闘は終わってるようだし後は俺達だけか……」

レッカは周囲を見渡し他者の戦闘状況を判断する。
その事でレッカはこれ以上の戦闘は無意味と判断し戦闘態勢を解く。

「レントラー……」
「ライガだ。……覚えておけ」

レッカが何かを言い出そうとしてライガが口を挟む。
レッカはライガの名前を聞くと楽しそうな笑みを浮かべた。

「……覚えて置こう。ライガ……お前とは敵同士でなければ良い仲間になれただろうな……
 それとグレン……。今のお前ではイーブイの少女は守りきれないぞ。
 後悔したくないなら強くなれ! 俺を超えるくらいにな……」

レッカはそう言って振り返っていく。
グレンとライガはその背中を睨み続けていた。

「……そうだグレン強くなれ。出来なければ俺のようになる……。
 あの時の俺には群の掟を破ってあいつを守ってやれるほど強くなかった。
 俺は今でもあいつと共に生きていけなかったことを今でも後悔している……」

力……それは鍛える事で自分の道を無限にする可能性。
レッカは二匹に聞こえないように呟いていた。


52 心のよりどころ 


エイガはウズキに受けた火傷を押さえながら座っている。
ミナヅキが空間を裂きエイガの隣に現れた。

「エイガ……大丈夫か?」
「この火傷の性で大丈夫と言うと嘘になるな……」
「えらく派手にやられたな……」

エイガは火傷をミナヅキに見せる。
ミナヅキは素直な感想を述べた。

「ウズキがロコンだと思って甘く見すぎたかもしれないな……」
「まぁ、あれでもあいつも神だからな……。でも、あの淫乱な性格はどうにかしたほうが良いよな……」
「それについてはワタシも同意見だな……。ダイヤ自身に神であるという自覚が足りていない……」

エイガとミナヅキが話しているとレッカが木の実をくわえてやってくる。
レッカはエイガの前に木の実を置き頭を下げた。

「エイガ様……火傷に効くチーゴの実です。食べれば火傷を治せるのでどうぞ」
「ああ。すまないなレッカ……。感謝している……」
「これが自分の役目ですからお気遣いなく。エターナルが心配ですので自分はこれで失礼します」

エイガはチーゴの実を受け取るとレッカにお礼を言う。
レッカはエイガの言葉に戸惑いながらもこの場を後にした。
エイガはチーゴの実を食べると傷が完全に消えたわけではないが痛みは引いていく。

「……役目か。あいつもオレと同じか……。生き物は誰かに縋っていかないと生きられないのか……」
「ワタシはあいつが役目ではなく自分の意志で戦う理由を見つけて欲しいものだ……。
 それがワタシを裏切る結果となっても文句は言わないさ……。ワタシ達はルーツ様を裏切っているのだからな……」
「……エイガ……。誰でも必ず心のよりどころが必要なんだ……。当時のオレにはルーツ様がそうだった。
 今のあいつはお前にしか心のよりどころがないんだろう。結局はレッカもエターナルも群や個人に利用されてただけなんだ……。
 神じゃない心のよりどころを見つければあの二匹は変われるさ……。今のオレのようにな……。
 今のオレ達はあいつらのよりどころを見つけるまで居場所を守ってやれば良い……。そうだろうエイガ?」

ミナヅキの言葉にエイガは驚いている。
封印を解く前のミナヅキならばこの様な事は言わなかっただろう。
そんなエイガを見てミナヅキは不思議そうにしていた。

「オレ……何か変な事言ったか?」
「そんな事はない……。変わったなミナヅキ……。いや、空間の神パール……。今でもダイヤと分かり合えないか?」
「ダイヤと分かり合うか……。今は無理でもいずれは出来るんじゃないかと思う。互いに平和な世界を望んでいるのは同じだからな。
 だが……いや、だからこそ互いの思いを知る為に今は互いの意見をぶつけ合う必要があるんだ。
 後、オレが変わったとすればお前のおかげだな……。冥王プルート……。誰でも些細な事で簡単に変われるさ……。
 オレはお前と言う存在に心奪われた一匹のポケモンだ……。真に愛せる者が居れば誰でも変われる……」

ミナヅキはエイガに顔を近づける。
エイガはミナヅキの言葉に顔を真っ赤にさせ俯いてしまう。

「……で、これからだがやはり数のハンデはあるな……」
「あ、話変えやがった……。まぁオレ達の力が戻れば数のハンデは何とかなるとして……。
 心配なのはあの二匹だろう? 二匹共、戦う理由を見つけられないでいる。
 あれじゃあ本来の能力を出し切れないだろう。あいつ等が覚醒の力を出し切れれば今のオレ達より強いはずだしな……」

レッカとエターナルの素質はあんなものではない……。
ミナヅキの言葉にエイガは首を縦に振った。


53 新しい味方 


エイガとミナヅキは数に対する問題について話し合っていた。
しかし、その問題を解決する良い案は出てこない。

「後三匹……いや二匹でも良い……神の力に匹敵する力を持つ者が仲間に出来れば……」
「それは無理な話だろエイガ……。この時代ではそんな奴は居ない……」
「じゃあ、もしもそれが可能だったらどうする?」

二匹が同じ結論に達すると何者かに声をかけられた。
声をかけられた方に二匹は慌てて振り向く。
当然、戦闘態勢を取って……。
声をかけたのは青い頭に灰色の体のポケモンだった。
そう、声をかけたのはウィルである。
勿論ノウレッジとフィールも一緒に居た。

「私達はあなた達と敵対するつもりありません」
「そうだよ~。人の話はきちんと聞くって習わなかったの?」
「……ク、クラゲ?」

ノウレッジとフィールは互いに敵でない事を主張する。
ミナヅキはその三匹を見て自然に言葉が口から漏れていた。
その『クラゲ』という一言は三匹を怒らせるには十分な言葉である。

「だぁれぇがクラゲだぁあああ!!!」
「その一言は非常に失礼です。言葉の撤回を要求します!」
「その言葉……僕達への挑戦と受け取って良いんだよね?」

ウィル等三匹が怒りを隠さずミナヅキを睨む。
エイガはミナヅキの言葉に声には出さないものの納得している。

……確かにあの三匹、クラゲに見えない事もないな……。
そもそもこいつ等は誰なんだ?
さっきの言葉が真実ならこいつ等は神の力……もしくはそれに匹敵する能力を持っていることになる……。

エイガが三匹について考えているとフィールがそれに気づき説明を始める。

「そうそう! 僕等の素性が知りたいんだね? 僕はエムリットのフィール。
 そっちの青いのがアグノムのウィルで黄色い細めの方がユクシーのノウレッジ。
 僕達もルーツ様に生み出されし心を司る神達だよ。決してクラゲではないよ」
「ルーツ様に生み出されし心の神……。戦力としては申し分ないか。
 だが、何故ワタシ達に協力する? ワタシ達もダイヤと同様に禁忌を犯している。
 この事でルーツ様もワタシ達を排除する立場になったわけだろう。
 何故貴様等は敵であるワタシ達に協力する理由は何だ?」

エイガが睨むとフィールはウィルの後ろに隠れてしまう。
逆にノウレッジはエイガの言葉に感心していた。

「その注意深さは流石ですね。ルーツ様は恐らく自ら手を下す必要はないと判断されているのでしょう。
 私達はルーツ様に好きな方の味方につき、ダイヤもしくはパール、プルートを封印せよと命じられているだけなので。
 ですのであんた達に味方するのはダイヤより信用できるからと言っておきます。それだけでは不服ですか?」
「つまり味方につくにはルーツ様の意志だと……。正直に言えば信用できないが今は少しでも戦力が欲しい。
 少なくても今は味方だという事だろう? いずれどうなるかは知らないが……」
「ええ、そうです。少なくてもダイヤを封印するまでは私達三匹はあなた達の味方です。
 私達はダイヤの封印以降の指示は受けておりません。ですのでそれ以降も味方は言い切れないのませんので。
 ですので、今は仲間と言うより同じ目的を持つグループ程度の認知で構いません。
 ダイヤの封印が終われば次はあなた達かもしれませんから」

ノウレッジはエイガに微笑む。
無論、優しい笑みではない。『いずれ覚悟しておけ』というような表情だった。
エイガもノウレッジを睨みんだ。
そんな中、パールとウィルの空気を読まず、まだ口論を続けていた。


54 レッカの初恋 


レッカはエイガから少し離れたところに居るエターナルのところへ向かっていた。
しばらく歩くと顔色を悪くしたエターナルが見えてくる。

「……エターナル。少しエイガ様から離れすぎではないか?」
「……にはは。……そうかもね。でも、あまり心配はかけたくないからさ……」

エターナルはレッカの方を向き無理に笑う。
その口元からは血が垂れていて、地面には少量の血だまりを作っていた。
明らかに吐血した後がレッカの表情を真剣なものへと変える。

「……エターナル。それは明らかに戦闘で受けたものじゃないな……」
「御名答。僕は生まれつき体が弱くてね。進化してこれでも吐血は減ったんだよ。
 イーブイの頃なんて一週間に一回は吐血してたけど今は一ヵ月に一回だから。
 まぁ、持病ってやつだから気にしないで。その内良くなるからさ」
「何故、今まで黙っていた?」

レッカの真剣な態度にもエターナルは半分ふざけて質問に答えた。
その態度にレッカは腹を立てながらも質問を続ける。
しかしエターナルから帰ってきた言葉は「……別に言う必要がなかった……」と素っ気無いものだった。

「お前はそうやって! もし、その事を知らずにチームが窮地に陥ったらどうするつもりだ!!」
「……レッカっていつもそうだね……。自分の事は話したがらないのに自分は他人の素性を知ろうとする……。
 僕は体が弱いからすぐに親に捨てられた……。だから誰かとのふれあいは苦手なの。
 でも君は違うよね? 群で育ってチームワークも知っている。
 でも、自分の意見は言わずに黙々と上司について行く。いつまでそんな『出来の良い部下』でいるの?」
「……お前に俺の何が分かる!」

普段は落ち着いているレッカが珍しく感情をむき出しにする。
その表情にもエターナルは表情を変えない。

「……何が分かるって? 君の記憶という時間は僕の能力で知ることが出来る。
 物や誰かの時間を見る事が出来るのがディアルガの血を継いだ僕が操る時の能力だから。
 群を捨てて初恋のイーブイの少女と一緒に居られないのが悔しくて強くなったのも僕は分かる。
 その初恋の少女に群でも貴重な炎の石を渡して怒られたんだね~」
「……貴様! 俺を馬鹿にして!!」

レッカはエターナルを押し倒し首元に前足を乗せる。
その行為は「お前はいつでも殺せる」そういう警告だった。

「石を渡したのはそのイーブイが病魔に侵されていて進化しないと命に係わるから……。
 結局、そのイーブイは石を受け取ると君にお礼も言わずにどこかへ居なくなってしまった……。
 それが、レッカが他者を信じない理由でもあるんでしょ? 健気だよね~。助けた少女に逃げられるなんてさ」
「それ以上、彼女の事を侮辱すれば貴様を殺す!!」
「別に今更、命なんて惜しくないよ……。どうせ一度死んだ身だし。
 それで自分の妻にはそのイーブイに似た娘を選んだよね~。
 君は今でもそのイーブイの少女が好きなんでしょ~。名前も知らないのに馬鹿みたい」

レッカはエターナルの言葉に怒りを覚え踏みつけている前足に力をこめる。
エターナルはそれでも顔色を変えなかった。

「俺は警告したはずだ」
「……殺せば? でも、それはエイガ様に命令に背くことになる。君自身のプライドを傷付けるよ~」

エターナルの言葉にレッカを力を抜く。
しかし、それ一瞬ですぐにまた前足に力をこめた。

「……ふふふ。面白い。君は怒られたんじゃなくて虐待されたって言った方が正しいもんね~。
 リーダーに歯向かえばこうなるっての体に教えられてる……。それで優秀な道具になった……。
 本来、君の人生を狂わしたのはその少女じゃない? なのに何故、今でも好きで居られるの?」
「誰かを好きになるのに理由なんて要らないだろう。そうだ俺は今でもその少女を愛している。
 群での妻なんかそのイーブイに少し似ていたからに過ぎない……。愛してなどいなかった……。
 たとえ俺の人生を狂わした元凶だとしても……俺はあいつを愛している」
「……そう。そこまで好きなんだ……」

エターナルはレッカの言葉を聞いて初めて表情を変えた。
しかし、それは痛みで苦しいからではなく何処となく悲しい顔をしている。
その表情の変化にレッカはまだ気づいて居なかった。


55 互いの思い 


レッカとエターナルはにらみ合いを続けていた。
エターナルに先ほどの悲しそうな表情は既にない。
しかし、レッカに押し倒された状態のエタナールにそれ以上の抵抗は出来ないでいた。

「……エターナル。ならば俺が道具でない事を今、証明してやろうか?」
「お好きにどうぞ……。でも、最後にこれだけは言わせてもらおうかな……。
 君が愛したイーブイの少女……突然居なくなったけど君に感謝してるよ……」
「何故、お前がそうだと言える……。答えろ!!」

レッカはエターナルの言葉に怒鳴った。
無論、前足は首元に置いたままである。
エターナルはゆっくりと口を開いた。

「……君の初恋のイーブイは僕だからだよ……」
「……はは。そんな……。冗談だろ?」
「信じるか、信じないかは君の判断だよ……。僕に証明するものはないからね……。
 僕と君が出あったのは三十年前……。今でも覚えてくれてて嬉しかったよレッカ……。
 ……僕も君が初恋だったから……。好きだったから……。ううん。違う。今でも好きだから……」

レッカは無言で前足をどかした。
エターナルは立ち上がり今度はレッカを押し倒しす。
エターナルの突然の行為にレッカはエターナルを睨んだ。

「こんな事をして! 貴様! やはり、今の話は嘘か!?」
「信じる、信じないは君の自由っていったはずだよ?
 僕はブースター。つまりイーブイの進化系……。確かに君の記憶に漬け込むのは簡単だよ。
 でも、今の話は嘘じゃない……。信じてほしい……とは言わないよ」
「……だが俺は信じる事にしよう……。お前が言う事を……。お前自身を……」

エターナルはレッカに抱きつき、そして唇を奪う。
エターナルの突然の行為にまたもレッカは振り回された。

……この思いつきでの行動。
姿は変わったとしても変わらないもの……それが心。
俺は彼女のそんなところに惚れたんだ。
考えが行動に移せる彼女に憧れていたんだ……ずっと。
妻の事はもう忘れよう……。あいつも俺の我儘に付き合わされてただけ……。
実際に俺以外の雄を好きだったのに半ば無理矢理俺に嫁いだんだよな……。
今思うとあいつにも悪い事したな……。俺が居なくなったことで幸せになってれば良いが……。
……本人には言いにくいが……血の味がするな……。

エターナルは勿論舌をレッカに侵入させる。
レッカは戸惑いながらも彼女を受け入れた。
互いの舌を絡ませ合い水音が辺りに響く。
しかし、そんな事はお互い気にしない……。
今はただ初恋の相手と再会し共に愛し合っていた事を喜んでいる。
そして名残惜しそうに唇を離した。

「……なぁ。エターナル。あの日何でお前は石を受け取り突然居なくなったんだ?」
「……何だそんな事。簡単な事だよ。簡単だけど……どうしようもなかった」

エターナルはレッカの質問に呆れる。
レッカは不機嫌な顔をしてエターナルを睨んだ。
しかし、その行為に先ほどまでの敵意はない。

「君の群の事は知ってた……。あの群はガーディとウィンディのみで構成された群。
 そして、他の種族を受け入れない事を……。君と結ばれない事を……。
 君の顔を最後に見たら分かれるのが辛くなると思った……。だから……何も言わずに出て行った……。
 それが悪いってのも分かってた……。君をこうして今まで苦しめていたのは僕なんだってのも分かってた。
 実は冥界で初めて会った時から君の事に気づいてけど……話すのが怖かった。
 何も知らずに一から始めれば、互いに傷つくことはないって……。
 それが自己満足なのも分かってる……。でも……それでも僕はレッカの傍に居たかった……。
 たとえ、僕が君の初恋の相手だって分からなくても傍に居たかった……」
「……エターナル。俺はもうお前を離さない……。お前は俺のものだ……。
 もう俺は迷わない。今の俺は俺にはお前を守ってやるほどの力がある。
 世間が俺達の関係を認めなくても俺とお前で暮らしていける……。
 お前の能力は分かってる。でも、俺の口から言わせてほしい……。
 好きだ。愛しているエターナル。世界中の誰よりも……」
「嬉しい。僕も愛してるよレッカ……。僕を君だけのものして……。僕にレッカの愛を感じさせて……」

レッカとエターナルはもう一度、唇を合わせる。
それは三十年前に互いが望んだことだった。


56 繋がる初恋の思い 


レッカも今回のキスはそこまで戸惑わなかった。
寧ろ、今回はレッカの方から舌を口内へと侵入させる。

「にはは。今回はレッカから舌を入れてくれるなんて。嬉しいな」
「……エターナルは三十年前と随分性格が変わったよな。俺にはもっと清楚で儚いイメージがあったが……」
「ん? そうかな? あの時は病気で元気がなかっただけで今とそこまで変わってないけど?」

レッカはその言葉を聞いて唖然としている。
レッカの中では三十年前のエターナルは清楚で儚いイメージだったようだ。

「まぁ、病弱なのは変わってないから儚いってのは正しいか……」
「でも、レッカはそんな僕にもモノをビンビンに固くしてるじゃん」
「お、お前! 俺に乗ったままで分かるのか?」

レッカの反応にエターナルが呆れる。
エターナルはレッカの顔を見て楽しそうにした。

「だって、レッカのモノ……僕の尻尾に当たってるけど?」

レッカの大きくなったモノはエターナルの尻尾に当たっていた。
それに気づいたレッカは顔を真っ赤にして黙ってしまう。

「にはは。レッカてば可愛い! ……今夜は僕が起たなくなる位抜いてあげるからね」
「ここはよろしく頼むって言えば良いのか?」
「任せておいてよ! ……でも僕にもしてくれるよねレッカ?」

レッカはエターナルの質問に一言「……ああ」と恥ずかしそうに答える。
素っ気無く聞こえる言葉ではあるがレッカにとってはそれでも精一杯の一言だった。
エターナルにもその事は伝わったらしく、いつも通り「にはは」と笑っている。

「にはは。まずは僕からしてあげるからね」
「まぁ、お手柔らかに頼む」
「にはは。それは約束できないね」

エターナルは笑いながらレッカに乗ったまま、モノの方へと体を回転させる。
そしてモノをじっくり見たかと思うと躊躇なくモノにしゃぶりついた。
ブースターとウィンディでは体格差から先端を口に咥えるのがやっとの状態である。

「ん~。先端だけでごめんねレッカ……」
「くぅ。……いや、十分だエターナル」
「……レッカは優しいね」

エターナルは腰を捻りレッカの顔の方へ向く。
レッカが感じている事に安心したのはエターナルは再びモノを舐める。
咥えきれないほど大きなモノをエターナルは必死に舐めていた。
目の前で厭らしく動く腰を見て我慢できず、レッカは前足をエターナルの秘所へと伸ばす。

「ひゃっ! レ、レッカ!?」
「少しは俺もお前を気持ち良くさせようかと思ってな……残念ながら俺の舌は腹までは届かんからな」
「……むぅ。こうなったら僕の方が先にイカせるからね」

エターナルはいきなり来る刺激に驚きモノを放してしまう。
レッカはエターナルの反応を見て笑っていた。
エターナルはレッカに秘所を弄られたまま再びモノを咥える。
しかし、先ほどよりも高速でモノを奉仕していた。
レッカも負けじとエターナルの秘所を弄る。
お互いに弄り、弄られながら興奮は最高潮へと達しようとしていた。

「……くぅ。すまないエターナル。俺はもう耐えられそうにない」
「んぁああ! 僕も……もうダメ! 僕もレッカと一緒にぃい!!」

レッカとエターナルは同時に果てた。
レッカの精液はエターナルの顔面を汚し、エターナルの愛液はレッカの腹部を汚す。
しかし、お互いにそんな事は気にしない。
寧ろ、エターナルは顔に付いた精液を指ですくいながら美味しそうに舐めていた。

「はぁはぁ。……エターナル。その……イッたばかりで悪いんだがお前と……」
「……はぁはぁ。うん。言わなくても大丈夫。だってレッカのまだビンビンだもんね……」

エターナルはレッカの上から退く。
レッカは飢えた獣のようにエターナルを押し倒した。

「にはは。盛った獣は僕が鎮めてあげるからね」
「ふふ。頼もしい言葉だな。……いくぞエターナル」

レッカはゆっくりと自らのモノをエターナルの秘所へと挿入していく。
エターナルは侵入を開始するモノを見つめながら言葉とは裏腹に不安な顔をしている。
当然と言えば当然だろう。エターナルは娘が居る為、無論処女ではないが相手はサンダースだった。
ウィンディのレッカとはそもそも大きさが違いすぎる。
しかし、レッカの気づかいもありモノは秘所をスムーズに通過していく。

「んぁああ! レッカの大きいのが僕の中にぃい!! 凄いよぉおお!!」
「くぅう。エターナルの中……流石にきついな……。大丈夫か?」
「うん。僕は大丈夫だから……。動いてレッカ……。僕にレッカを感じさせて」

レッカはエターナルを気づかいながらゆっくりと腰を動かしはじめる。
レッカが腰を動かたびに結合部から卑猥な水を音が辺りに木霊した。

「あぁあぁぁ!! す、凄いよ……凄すぎるよ……レッカの固くて太いのが僕を……僕を激しく突いてくるよぉ!!
 もっと……もっとレッカを僕に感じさせてぇええ!!」
「はぁはぁ……。俺も凄く気持ち良いぞ……。俺なんかもう……また出そうだ……」
「んあぁああ!! 出して! レッカの熱いの僕の中にぃ! レッカの子を孕んじゃうくらい僕の中に出してぇええ!!」

レッカは更に腰を早く動かし、エターナルの中に精液を流し込んだ。
エターナルは体を痙攣させながら秘所に流れ込んでくる精液を感じながら嬉しそうにしている。
レッカが肩を動かしながら息をしている。そんなレッカを見てエターナルは不敵な笑みを浮かべた。
レッカは余韻に浸っていてエターナルのその表情には気づいていない。
エターナルはチャンスとばかりにレッカと繋がったままレッカを押し倒した。

「にはは。レッカに動いてもらって気持ちよかったんだけど……。やられっぱなしってのは嫌いなんだよ~」
「ま、待ってくれ! そんな連続だなんて!! 夜はまだ長いんだ! 少しくら……い……」
「待ったなし~。動くよ」

エターナルはレッカの願いを聞き入れず、腰を動かす。
レッカは再度くる快楽に意地があるのか声は出さないが表情はだらしなくなっている。

「にはは。烈火の閃光も雌に腰振られたらこんなに弱いんだね~」
「くぅう……。お、俺は……弱くなんか……かはぁあ!!」
「……意地になっちゃって~。レッカたら可愛いな~」

エターナルは追い討ちをかけるように更に腰を激しく振った。
レッカの顔は快楽でだらしなくなり口からは涎を垂らしている。
今のレッカに『威厳』の言葉は似合わなかった。
今はただ快楽に溺れた一匹の雄に過ぎない……。

「も、もうやめてくれエターナル……。ま、また出そうなんだぁあ!!」
「にはは。三回目は随分と早いですね~。さっきも言ったけど僕……レッカの子供が欲しいなぁ……。
 それにさっき自分で僕の中に出してるのに今更そんな事言うの?」
「そ、そんな!? お前だって気づいてるだろ!? グレンとお前の娘は……かはぁあああ!!!!」

レッカの説得は虚しくエターナルは腰を振り続けた。
迫りくる快楽にレッカは呆気なく三度目の射精を再度エターナルの中で果たす。
エターナルもレッカの顔を見て満足したのか三度目の絶頂を向かえる前にレッカのモノを抜いた。
レッカは先ほどとは違い罪悪感で顔を俯かせている。
エターナルは満足そうにレッカを見ていた。


57 幸せ 


表情を暗くしているレッカを見てエターナルは口を開いた。

「……勿論、僕だってフィニティの事は気づいてるよ……。でも、レッカは子供を言い訳に僕を捨てるの?」
「捨てるなんて……。俺はそう意味で言ったわけじゃ!」
「だってそうでしょ!? 子供同士が愛し合ってるから僕とはこれ以上進まないって!!」

エターナルはいつもと変わらない口調だが目には涙が溢れている。
レッカはそんなエターナルを見て何を言って良いのか分からなくなっていた。

……俺はエターナルを愛している。その事に偽りはない……。
でも、それと同時にグレンにも幸せになって欲しいと思う自分が居る……。
俺がエターナルと結ばれればあいつ等は義兄妹になってしまう。
それは、俺があいつ等から幸せを奪うことになるんじゃないか?

レッカが悩んでいるとエターナルがそっと近づいてきた。

「……変な言い方してごめんレッカ。君は優しいんだね。
 今、答えは聞かないから。ゆっくり考えてから答えを聞かせてね。
 僕はずっと……君の答えを待ってるから……。今までのように……」
「……俺は優しくなんてないさ。偽善者なんだよ……。
 自分の幸せよりも他者の幸せを願っていながら、他者の幸せを奪ってきた。
 俺は群が領土を広げるために弱者の土地や命を……幸せを奪ってきてたんだ……。
 ずっと、分かってはいたんだ。それがいけないことぐらい。
 でも、俺は……。そうするしか出来ない不器用な奴だった。
 俺はそうしなきゃ生きていけない……弱くて非道な最低の雄さ……」

レッカの目には自然と涙が溢れている。
今まで自分の弱さをずっと隠してきたレッカにとってそれは珍しいことだった。
エターナルはそんなレッカを抱きかかえる。

「……レッカは弱くなんかないよ……。ずっと一匹で群全体の罪を抱え込んできたんだから。
 普通のポケモンならきっと潰れちゃってるよ? でもレッカはずっと耐えてきた……。
 もう自分に気持ちに嘘をつくのは終わりにしようよ……。
 本当は息子とだって戦いたくないんでしょ? 僕、レッカと一緒ならダイヤに寝返っても……」
「違うなエターナル……。俺はグレンと戦いたくないんじゃなく殺したくないだけだ。
 敵として対峙するのならグレンも俺も命を賭けた戦いだ……。俺はグレンの成長を見てみたい。
 だが、今はまだあいつに俺を倒せる力はない……。だから戦いたくないないだけだ」
「にはは。じゃあ、お互いの思いも話してすっきりした事だしさ……続きをしようか?
 さっき自分で言ったもんね、夜はまだ長いって。これって朝まで僕としてくれるんでしょ?」

レッカがさっきエターナルの押し倒された時に言った言葉を思い出し顔を真っ赤にしていた。
エターナルはそんなレッカを見て楽しそうに笑う。

「レッカの心の整理がつかなくても……性処理だけはした方が良いでしょ?
 だって三回とも凄く沢山射精してくれたし、まだまだ出るよね?」
「……冗談だろ? こんなシリアスな会話をした後にまた交尾なんて……。
 いや、寧ろ冗談だと言ってくれエターナル!!」
「にはは。僕、冗談は嫌いなんだよ~。やると言ったことはしっかりやらないとね~。有言実行だよ。
 覚悟してもらおうかなレッカ……。起たなくくらい僕が抜いてあげるからね~。楽しみだな~」

エターナルは拒むレッカに色っぽく近づいていく。
レッカは口では拒絶してもモノは再度大きく太くなっている。
自分のモノを見たレッカは慌てて前足でモノを隠す。
しかし、大きくなったモノを隠しきれず、モノの頭は丸見えだった。

エターナルはレッカに飛び掛る。
二匹の夜はまだ始まったばかりだ……。


58 平和への願い 


ウズキ一行はエイガ一行の猛攻を退けひと時の休息を取っていた。
ウズキは負傷したムオンとサイを自らの時の能力で癒している。
しかし、傷は治せても体力は戻らないためムオンとサイは意識を取り戻さない。
日が沈んだこともありウズキ一行は広場を見つけ野宿することにした。

「……随分派手にやられたみたいだね。傷はボクが治したから後は目を覚ますの待つだけだね」
「……母様、ムオンは大丈夫ですよね……」
「安心して。ムオンもサイも心配要らないよ」

アマツはウズキの言葉を聞いて安心していた。
ライガはその言葉を聞いてもまだ不安そうにしている。

「……少し一匹になりたい。姉さんの事を頼むウズキ……」
「まぁそれは良いけど……。でも、変な気をおこすなよ。今のライガ……凄い焦ってるように見えるから」
「……すまない」

ライガは立ち去ろうとするとフィニティがライガに声をかけた。
フィニティに声をかけられライガは立ち止まる。

「……その、サイさんの事すみませんでした……」
「やったのはフィニティの母親だからフィニティが謝ることじゃない……。
 今回の事は俺と姉さんの力がなかっただけだ……。
 こうなる事は何となく分かってたんだ。俺と姉さんだけ神の力を使えない普通のポケモン。
 グレンに負けた時点で初めから神の能力を使う奴に勝てないことは分かってた……」
「ですが……」

フィニティは何かを言おうとするがライガはそのまま立ち去っていく。
立ち去るライガをフィニティは見ていることしか出来なかった。
グレンはフィニティの横にそっと近づく。

「……フィニティは悪くないよ。怖いけど……これが戦いなんだ。
 僕等は生きるために親を……神を超えなくちゃいけないんだ」
「そうですね……。でも戦い続けて本当に私達の居場所が見つけられるんでしょうか?
 話し合いでは解決出来ないのでしょうか? 傷付け合わなくても良い方法だって……」
「フィニティ。残念だけど理想論だけじゃ世界は変わらない……。
 そうしたいと願うなら結局は何かと戦わなくちゃいけないんだ。
 ……嘗てこの世界を変えたボクのように……。
 でもパールは変わった。時間はかかるかもしれないけど神の変われるんだ。
 ボク等が真に分かり合えたなら……世界はもう一度変わるかもしれない」

グレンはフィニティを抱きしめ慰める。
しかし、ウズキはそんな二匹に厳しい現実を言う。
長年生きてきたウズキ……ダイヤだからこその重みのある言葉を二匹は理解していた。
だが、理解はしていたが納得はしたくない。
フィニティとグレンは何かを訴えるようにウズキを見ていた。

「……これはボク達、時空と冥王の三匹の神の問題だった。
 やっぱり君達はこの無意味な戦いに巻き込んだボクが憎い?
 そう思われても当然な事をしたんだ。この戦いが終わればボクもそれなりの報いは受けるつもりさ……。
 ボクの命に代えても君達は守って見せるさ。それがボクの君達への礼になるのかな……。
 自分勝手なのは分かってる。でも、これがボクの性格だからさ……」
「どうしたんですかウズキさん……」
「そうだよ。いつものウズキさんらしくない……。まるで遺言みたいだよ」

ウズキの不審な言動にフィニティとグレンは困惑する。

「……嫌な予感がするんだよね……。時の神だからってわけじゃないと思うけど……。
 近い将来にボクがボクでなくなるようなそんな予感が……。
 その前にちょっと伝えておきたくてね。不安にさせるような事言ってごめんね」

ウズキはそれを言い終わると背中を向けサイの近くに座り込んだ。
グレンとフィニティはそのウズキの背中をじっと見つめていた。


59 可憐 


ライガは一匹当てもなく森の中を歩いていた。
ただ、そうしていれば気がまぎれる。

「……俺は大切な者すら守れない弱い雄だ。もっと力があれば……俺にも神の力が使えれば……」

ライガは誰でもない自分自身に怒りを覚えていた。
そんな中、気が付くと何者かの歌声が聞こえてくる。
ライガは考える前に自然とその歌声が聞こえる方へと進んでいた。

進んでいくと目の前に二五歳前後の雌のエネコロロが居る。
ライガは声をかけるわけでもなくただ、エネコロロの歌声を聞いていた。
しかし、時間はあっという間に過ぎエネコロロの歌は終わってしまう。

「ふふ。ワレの歌声は汝に届いたか……」
「……あんたは何故こんなところで歌なんか歌ってたんだ?」
「そういう気分もある。では今度はワレの質問に答えてもらおうか。
 汝はこの世界が何色に見える。心で感じたままに言えば良い」

ライガはエネコロロの質問に困惑する。
しかし、エネコロロはそれ以上の言葉を言おうとしない。
ライガはしばらく考え、自分が一番合っていると思う言葉を見つける。

「……黒かな」
「ほぅ……。随分と面白い風に言うな……。しばらく考えたんだ。何となくと言うだけでないのだろう?
 是非、汝がそう思った理由をワレに聞かせてほしい」
「世界には大勢の者が住んでいる。当然その一匹一匹は皆違う考えを持っていると思う。
 この世界に住む者の考えを色だとするなら様々な考えが交じり合った色は……最終的には黒になると思った。
 黒く染まった世界は歪み、不の感情で充満する……。それが世界の歪みじゃないかと俺は思う」

ライガの話にエネコロロは真面目な顔つきになる。
先ほどまでとは違う雰囲気にライガはエネコロロを不思議そうに見ていた。

「実に面白い答えだ。ワレは汝に惚れたぞ。汝、名をなんと言う?」
「俺はライガ。そういうあんたの名前は?」

ライガは質問に答えるとエネコロロに逆に質問する。

「ふむ。今のワレに名はない。良ければ汝がつけてはくれぬか?」
「……訳あって名乗れないって事か。名前ねぇ……」

名前を考えるライガをエネコロロは嬉しそうに見つめていた。
ライガはしばらく考え、良い考えが浮かぶと口を開く。

「……カレンなんてどうだ? その、歌を歌ってた姿が俺には可憐に見えたからさ……」
「良い響きの名だな。気に入ったぞ。良しワレは今からカレンだ。よろしく頼むぞ!」

ライガの提案した名前が気に入ったのか、カレンは嬉しそうにする。
そんな無邪気なカレンを見てライガはてれていた。

「では、ワレもこう見えて忙しい身なのでな……。残念だが今日はここでお別れじゃ。
 またどこかで会えると良いなライガ。次はもっとゆっくり話をしたいものだ。
 汝にもらったこの名……大事に使わせてもらうぞ。何せワレにとって始めての贈り物だからな。
 別れるときはこの世界ではこう言えば良いのであったな。汝に時の神ダイヤの加護があらんことを……」
「おい! ちょっと待ってくれ! ダイヤって……。カレン! あんたは一体!?」

カレンはそう言うと振り向いて歩き出す。
ライガはカレンの言葉を不振に思い呼び止めようと思うと強風がふき目を閉じる。
もう一度目を開けた時にはカレンの姿はどこにもなかった。

「……まさか幽霊? そんな事ないよな……。夜風を当たって頭も冷えたし戻るか……。
 でも、カレンは時の神をディアルガではなくダイヤと呼んだ……。嫌な予感がする。カレンは一体何者なんだ」

ライガはカレンの事を考えながら来た道を戻っていった。


60 護るための力 


ライガが皆のところに戻るとすでにウズキを抜かして全員寝ていた。
ウズキはライガが戻ってきたのを確認すると声を掛ける。
声をかけられたライガはウズキの隣に座った。

「……ライガ、無事に戻ってきて安心したよ。もしかしたらもう帰ってこないと思ったから」
「姉さんが居るところが俺の帰る場所だから……帰ってくるに決まってるだろ」
「相変わらずのシスコンだね~。まぁ血は繋がってないから問題はないけどさ。
 そんな事言ったらボクは自分の子孫とやった経験があるわけだけど……」

ウズキの反応にライガは呆れて何もいえないようである。
が、血は繋がっていないこと指摘されたライガは少し怒っているようにも見えた。
ライガに暗い表情が消えたのを確認してウズキは安心している。

「他者の記憶を勝手に読み取って言うのも悪いとは思うけどさ……。
 ライガは神の力が本気で欲しい? ボクはディアルガだから君が望めば可能だけど。
 戦いで誰かを傷つけるのに必要だって言うならボクもこんな事は言わないけどさ。
 ライガはサイを守るために力が欲しいんでしょ? だから君が望むなら……。
 君達をこの戦いに巻き込んだのはボクの責任だからさ。お詫びって言ったら変だけど」
「俺は力が……いや、ウズキの気持ちだけもらっておく。
 誰かに与えられるだけじゃ、だめなんだ。俺自身の手で強くならなきゃ意味がない。そうだろう?」
「なるほど。ならボクはこれ以上何も言わない。夜も遅いしライガも寝ると良いよ」

勝手に心を覗かれたがライガは特に気にしていないようだ。
ウズキもライガとの会話のネタが尽きたのかライガに寝るようにすすめる。
ライガはウズキの寝たところを見た事のに疑問を感じ質問した。

「なぁ、ウズキっていつ寝てるんだ? 冗談じゃなくて真面目に答えてほしいんだが……。
 ウズキが寝てないって言うなら夜の見張りは俺がするからさ。
 いつもウズキに見張り役を押し付けるのも悪いからな」
「うわぁ~。ライガ君優しい~。惚れちゃいそ~。……真面目に答えてほしかったんだよね。
 質問の答えだけどボクは確かに寝てないよ。理由は別に見張りが必要ってわけじゃないんだ。
 仮眠位はするけど普段は眠らないよ。寝るとさ……嫌な思い出が夢になって出てくるんだ……。
 ボクはこの時代でクゥとアマツを守れなかった。ボクは自分も持てる力を全て使ったのに。
 覚醒ではなくディアルガとして力を使っても僕は家族をプルートから守れなかったんだ。
 だから、ライガがサイを守れなかった気持ちは痛いほど分かるつもり……。
 ボクは眠らなくても体は丈夫に出来てるから問題ないし。神も意外に便利でしょ?」

ウズキはライガに笑ってみせる。
ライガはその時ウズキが無理に笑っているのを理解していた。
いくら神でも辛い過去を語って笑顔で居られるはずはない。
神も心までは普通のポケモンと変わらないのだから……。

「……そうか。じゃあ見張りはウズキに任せて俺も寝るとしようかな……。
 俺と姉さんは神の血すらひかない普通のポケモンだからな。
 じゃあ、おやすみウズキ。姉さんの事だけど……ありがとう」
「おやすみ。サイの事は気にしなくても良いよ。ボク達仲間だろう?
 あいつ等がこの時代に居る以上いつ戦闘になるか分からない。
 明日を得るために今日をしっかり生きないとね」
「仲間か……。ずっと姉さんと二匹で暮らしてきたけどこういう大人数も悪くない。
 これでも、足を洗うきっかけをつくってくれたウズキには感謝してるんだ」

ウズキはライガの本心を聞いて、てれ隠しに顔を背ける。
ライガはウズキの普段しないような反応を見て楽しそうにしていた。
楽しそうにしているライガをウズキが不快に思ったのか睨みつける。
ライガは慌ててサイが眠っている隣まで移動し横になり眠りにつく。
ウズキはライガが寝むるとぼんやりと空を眺める。

「エイガ達だけじゃない……。ライガから微かに感じたあの感じ……。
 ルーツ様は確実にこの時代に居て、理由は不明だけどライガと接触した……」

空を眺めるウズキは不安そうな顔をいている。
今日の夜空はまるでウズキの不安を煽るように星が全く出ておらず一面は真っ暗だった。


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Last-modified: 2018-02-24 (土) 17:58:07
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