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時の後継者 5

/時の後継者 5

時の後継者 

by蒼空


41 冥界の強者 


プルートはエイガの姿へと戻り冥界へと来ていた。
エイガが入り口の門を通ろうとすると二匹の門番に呼び止められる。
門番は二匹とも三十五歳位で雄のウィンディと雌のブースターだった。
ウィンディの方は凄い形相でエイガを睨む。

「貴様……どこから来た……。死んでる様には感じないが……」
「プルート様の命によりすんなり通すわけにはいかないんだよね~」

ウィンディは真面目に答えるがブースターの方は少しふざけている。
エイガは門番の二匹を睨みつけた。

「だからワタシが通るのにも検問が必要だと言うのか? レッカ、エターナル。
 姿が違うとはいえ主も解らないのか?」
「その声は!? プルート様でしたか。ご無礼をお許しください」
「いや~。プルート様すみません」

レッカと呼ばれたウィンディは頭を下げ謝る。
エターナルと呼ばれたブースターはお気楽に謝った。

「二匹とも相変わらずだな……。お前達を蘇生させ今度はワタシについて来てもらう。
 反論は認めない。準備しておけ」
「自分達が出ると言うほどの相手ですか?」
「そんな奴まだ存在するんですか~。反乱分子は大体は片付けたんでしょ?」

門番の二匹はエイガに反論と言うよりは質問した。
エイガは面倒そうに説明を始める。

「相手はダイヤ……ディアルガとその子孫だ。仲間にはパール……パルキアも一緒だ。
 過去に逃げたためそれを追跡するがこちらの戦力が足りないからな。
 それとこの姿のワタシはプルートではなくエイガと呼ぶように」
「ディアルガの子孫ですか……。それは自分とエターナルも同じですが……。
 ですから他の者をつれて行った方が良いのでは……」
「同じ一族とは戦えないかレッカ? お前も随分と惰弱になったな……。
 生前は群の中でも屈指の実力とカリスマで仲間を率いてきたのにな。
 とは言えそれが理由で事故に見せかけて殺されたんだったな……」

エイガの一言にレッカは悩んでいる。
流石に同属と戦う事に抵抗があるらしい。
エターナルは特に悩んではいなかった。

「にはは~。やってやろうじゃん! 邪魔な相手は倒す。それで良いんでしょプルート様?
 相手が僕等と同じディアルガの子孫だろうと関係な~い!!」
「こういう時はエターナルの方が扱いやすいか……。だがこれは言ったらどうする?
 子孫の中にレッカの息子グレンとエターナルの娘フィニティがいる」
「え!? フィニティが!? それは……どうしようかな~。
 流石にフィニティを傷つけるのはな~」

子供の名を出されたエターナルも流石に悩みだした。
しかしレッカは逆に吹っ切れたようだ。

「グレンの力を試すには良い機会か……。自分に行かせてください」
「ん~。まぁ拒否権は僕に無いし……。行くしかないんだよね?」
「まぁそういう事だ。相手に不足は無いだろう? 過去へ飛べばワタシとパールの能力は一気に落ちるだろう……。
 そのために冥界でも屈指の能力者のお前達に来てもらう。ワタシへの忠誠を示せ」

エイガはそれだけ言って門の中へ入っていった。

「さてエターナル……本当にお前は戦えるのか? 相手は同族なんだぞ!
 何の抵抗もないのか? プルート様の前ではああ言ったが……。
 俺はやっぱり賛成できないな……」
「ふ~ん。烈火の閃光と呼ばれたレッカ殿も随分と甘い事を言うんだね~。
 戦う相手を選ぶ権利は僕等にはない……。同族だからってのは理由にはならないね。
 僕等は神の子孫を理由に群の仲間に皆殺しにされたからね~。
 フィニティも僕の前に立ちはだかるのなら……殺す……」

エターナルの表情に先ほどまでのふざけた気配は感じられない。
今のエターナルは敵を全て葬る死神のような表情をしていた。


42 過去へ飛ぶ力  


パールはミナヅキの姿へと戻り空を眺めていた。
場所的には他者が侵入してくることはほぼないがそれでも原身では目立ってしまう。
そんなミナヅキの前にエイガが現れる。
冥界の仕事を終わらせここに来たらしい。
しかし、まだレッカとエターナルの姿は見えなかった。

「パールまだ悩んでるのか? お前らしくないな」
「悩んでないと言ったら嘘になるな……。今この時間にダイヤはいない。
 オレ達が奴を追いかける理由があるのか? オレが今この世界を変える事もできる」
「なら何でそうしない? それが可能だと分かっていて……。
 それとワタシは個人的にあいつが嫌いでね……。今度はワタシが言おうか……。
 パール……お前の力をワタシに貸せ……。そうすれば過去に飛ぶ事も可能だ……」

エイガはミナヅキに近づき囁く。
ミナヅキはそんなエイガに蔑みの笑みをした。

「オレとお前の能力を使えば確かに可能だろう……。
 だがそれは出来ても五千年程度……奴が逃げた九千年には及ばない……。
 つまりお前のしようとしてる事は無駄なんだよ……」
「ふっ。確かに今のワタシとパールの力ではそうだろう……。
 だが一つ方法がある……。ダイヤはどうやって神の力を与えた?」
「それはダイヤがクウコってキュウコンと交わってだろ? ……まさかお前!?」

ミナヅキはエイガの言いたい事を理解して大声を上げる。
エイガは『良く出来ました』と言いたげな顔をしてミナヅキを押し倒した。

「お前……前と同じ事を言うが禁忌を犯す気か……と言いたいが……それも悪くないか……。
 ここ数日プルートお前の事考えてた……。あの日お前がいなくなって妙な感情に込み上げてきてな……。
 オレは……多分だけど……お前が好きだ……。お前はオレの事を力を得るための道具としか思ってないか?」
「……それは……ワタシも……パールの事が……好きだよ……。
 そうじゃなきゃ……こんな事しない……。ワタシだって始めての雄くらい選ぶさ……
 流石にこんなところじゃ原身って訳にはいかないけどさ……。
 パールは始めてがワタシでも良いのか?」
「だからオレもお前が好きと言ったろう……。今は創造主の事は忘れよう……。
 今のオレはミナヅキでお前はエイガ……。神ではなく二匹のポケモンとしてオレはお前としたい……」

ミナヅキの思いもよらない告白にエイガは顔を真っ赤にした。
ミナヅキはそんなエイガを見て微笑んだ。

「ところでさ……一つ質問しても良いか?」
「ワタシが答えられる事ならしても良いよ」
「じゃあ質問する……。オレは体系が似てるからサンドパンの姿に擬態した。
 ダイヤもまぁ、数の多い尻尾が原身の扇状の腰部に似てるからだと思うんだ……。
 でもお前ってなんでグラエナに擬態したんだ? 全然似てないだろう……。
 初めてお前の擬態を見た時から思ってたんだが中々聞く機会がなくてな……」

ミナヅキは真面目な顔をして質問した。
けしてボケで聞いてる訳ではなさそうだ。
エイガはミナヅキの質問を聞いて呆れた。

「なんだそんな事か……。ワタシの姿に似たポケモンはいないからな……。
 良くてボーマンダだが……流石にダイヤとパールの擬態と並んで見ろ……。
 どう考えてもワタシ一匹浮くだろう? だからだ……。
 グラエナの理由はまぁ番犬ぽいイメージがあったからかな……。
 ヘルガーでも良かったんだが角がゴツイし……。だからグラエナにした。
 後、色合いも黒と灰色の毛並みがまぁ似てなくもないだろう?
 こんな答えで満足か? 不満でもこれ以上の理由はないがな」
「ああ一応満足って事にしておく……。でもなぁ。そんな理由か……」
「答えてやったんだ。ありがたいと思え。ワタシに付き合ってもらうぞ……」

エイガはそう言うとミナヅキに口付けをする。
いきなりの行動にミナヅキは目を丸くした。


43 愛し合う二匹 


ミナヅキはエイガの突然の行動に戸惑っていた。
正確にはこうなる事は予想してたが、ミナヅキはまだ話があったようだ。
エイガは当然ミナヅキに舌を侵入させる。
ミナヅキは会話を諦めたのか自らも舌を絡めた。
エイガはミナヅキの行動に満足そうにしている。

「なんだパール。やれば出来るじゃないか」
「だから今の俺はミナヅキでお前はエイガだ。
 目的は互いの神の力ってのはオレはやだぞ」

ミナヅキはエイガの言葉に「やれやれ」と言いたげな顔をする。
エイガは「そうだな」と呟き仰向けになった。

「じゃあ、ミナヅキ……まずはワタシにしてくれ……。
 そうしないとお前の気が変わるかもしれないからな」
「もう、気なんか変わらないって……。でもお前がそれを望むなら」

ミナヅキはエイガの言葉に呆れた。
エイガは「さて、どうだか……」と皮肉を言う。
ミナヅキは仰向けになり秘所を丸見えになった秘所に顔を近づける。
そして始めて見るをじっと見つめた。

「あんまりじろじろ見るな……。恥ずかしいだろ……」
「自分から誘っておいて何を今更……」
「う、うるさい! さっさとワタシを気持ち良くしろ!」

エイガは顔を真っ赤にし怒鳴る。
ミナヅキは素直に言葉に頷き秘所を爪で弄り始めた。

「んぁ! 良いぞミナヅキ……」

ミナヅキは爪で秘所を傷付けない様に慎重に弄る。
その慎重さはまるで焦らしているようにも見えた。

「あ、あんまり焦らすな……」
「す、すまん。こういう時は長い爪は不便だな……」

エイガの言葉にミナヅキは素直に謝った。
そして爪での愛撫を諦め、秘所に舌をはわせる。

「あぁん! さ、最初からそうすれば良かったんだ……」
「全く……注文が多いなお前は……」
「そう言う正確だからな。ワタシは基本的に指示を出す立場にいるからな」

ミナヅキは舌のスピードを変えながら秘所を舐める。
エイガは初めて味わう気持ち良さにうっとりとしていた。

「んあああ!! ミナヅキィイイイ!!」

エイガはミナヅキの愛撫に耐えられず絶頂を向かえる。
当然、秘所を舐めていたミナヅキにエイガの愛液が顔面にかかった。

「中々良い顔してるじゃないかエイガ……」
「……はぁはぁ。今度はワタシがお前の恥ずかしい顔を見てやるからな……」

エイガはミナヅキを押し倒し、ミナヅキのモノを舐め始めた。

「エ、エイガ!? お前いきなり……」
「お前は焦らしたがワタシは初めから一気に攻めてやる……」

エイガは宣言通り、雄の敏感なところを舐めていく。
迫り来る快楽にミナヅキは顔を歪めた。

「ほらほら。余裕なんてないくせに……出しちゃいなよ」
「く、くそ……。オレにも雄としての意地が……。まだだ……まだ出す訳には……」

エイガの攻めにミナヅキは必死に耐える。
エイガはそんなミナヅキを見て更に激しくモノを舐めた。

「……これで終わりだな。ふふ、お前の負けだ……」
「うわぁ!! くそぉ出るぅう!!」

エイガは止めとばかりにミナヅキのモノを咥え一気に吸った。
ミナヅキはその刺激に負けエイガの口内に精液をぶちまける。
エイガはそのまま口を離さずにミナヅキの精液を嬉しそうに飲み干していく。

「思った以上に濃いのが出たな……。ミナヅキ、お前ちゃんと処理してるか?」
「処理って何をだよ?」
「なるほど。通りで濃い訳だ……」

エイガはミナヅキの反応に呆れていた。
ミナヅキはエイガの言った事の意味が本気で解っていない。

「では今日はたっぷり楽しめそうだな……」
「だから処理って何の話だよ」
「……もう、その話は良い。ワタシが処理してやるから安心しろ」

ミナヅキは納得いかない顔をしているがエイガはこの話を打ち切った。
エイガは再び仰向けになる。

「その……当然初めてだから優しくしろよ……」
「ああ。自信はないが善処して見る……」

ミナヅキはエイガに覆いかぶさりモノを秘所にあてがう。
モノをあてがった時エイガは不安そうな顔をしていた。
ミナヅキはエイガに「平気か?」と声をかけ、エイガも「ああ」と素っ気無く答える。
短い言葉だが互いの思いは同じだった。
ミナヅキはモノを少しづつ秘所に挿入していく。

「んぁあ!! これが……」

エイガの顔が苦痛で歪む。
ミナヅキはエイガを気づかいながらも挿入を続ける。
そして、半分程度モノが入ったところで停止した。
エイガの初めての証がモノをこれ以上侵入させまいと立ちはだかる。

「本当にオレで良いんだなエイガ……」
「今更そんな事を聞くな……。それに聞かなくてもお前なら解るだろ? ワタシの心と言う空間は……」
「ふ。そうだな……。でもエイガ……お前の口から聞いておこうと思ってな……」

エイガは馬鹿にしたように「お前は優しいな……」と囁いた。
ミナヅキは再度挿入を再開する。
エイガは苦痛で顔を歪めながらも幸せそうに微笑んでいた。
初めての証は最後までミナヅキのモノを拒み続け、やがて破れ去る。

「エイガ……全部入ったぞ……」
「不思議だな……。こうしてお前と交わる時が来るなんて一万年前は思わなかった……」
「それはオレも同じだな……。あの時はオレにとってお前は創造主に仕える同じ神でしかなかった……」

二匹はそんな会話を繰り返し時間をつぶす。
それはエイガの痛みがひくのを待つミナヅキの優しさだった。

「ミナヅキ……もう動いても平気だ。痛みは大分ひいたからな……」
「……そうか。じゃあ動くぞ……」

ミナヅキはゆっくりと腰を振り始めた。
今のエイガの表情に苦痛の色はない。

「あぁあ!! ミナヅキィイ! 良いぞぉ!! もっとワタシを!!」
「くぁ!! お前の中……オレをきつく絞めてきて……」

ミナヅキは加速し一気に絶頂へと向かわせようとする。

「ミナヅキ……ワタシ……も、もうイクゥウ!!」
「オレも……エイガァアア!!!」

ミナヅキの加速に耐えられずエイガは絶頂を向かえる。
絶頂を向かえたエイガの秘所はミナヅキのモノを更に締め付けた。
その締まりにミナヅキもエイガと同様に絶頂を向かえる。
射精された精液はエイガの中に注ぎ込まれエイガの腹を膨らませた。
ミナヅキはエイガからモノを向くと疲れからか座り込んだ。
ミナヅキのモノという栓を失ったエイガの秘書からは僅かに赤みをおびた白い液体が垂れる。

「ミナヅキ……夜はまだ長いんだ……。まさかここで『疲れたのでももう無理』とか言わないよな?」
「そこまでは言わないが……少し疲れたな……。こんな疲労感は初めてだ……」
「……そうか。では少し休んだらまた再開だな……」

エイガはミナヅキに微笑んだ。
二匹の夜はまだ終わらない……。
ミナヅキとエイガは神としてではなく愛し合う恋人として一晩を楽しんだのだった。


44 追跡 


ミナヅキとエイガは一晩の夢を終え本題へと戻っていた。

「さて、パール。これでワタシ達もダイヤを追いかける事が可能になった。
 だが、その力の消費で多分原身にはしばらく戻れなく可能性が高い」
「そこまで解ってんなら初めから諦めろよ……」

エイガはミナヅキを睨みつけた。
睨まれたミナヅキは慌てて「……冗談だ」と前言を撤回する。

「今更だけどオレ達がダイヤと戦う理由ってもうないんじゃ?」
「それは、ワタシの雌としてのプライドを傷付けたダイヤが許せないんだよぉ!!
 文句あるかパール? ……あるって言うのなら無理矢理でも従わせる……」
「ないです。文句なんてないですよプルートさん。自分もダイヤとは決着を付けたいと思ってたんですよ。
 いや~奇遇ですね。利害の一致してるのに争う理由なんてないじゃないですか!?」

ミナヅキはエイガの顔色を見て慌てて話を合わせる。
エイガはミナヅキの反応を渋々納得した。

「……取り合えず話を戻そう。そこで冥界から二匹の強者をワタシ達に同行させようと思う」
「そんな事したら、かえって力を消費しないか?」
「……まぁそれはそうだが……。原身になれないで二対七で勝負になると思うか?」

ミナヅキの言葉にエイガは素直に納得した。
しかし、エイガが言う事もまた事実である。

「それに信用できるんだろうなその二匹……」
「にはは。僕等が信用できないって~。僕等はエイガ様には絶対服従だよ~」
「信用とは実績の積み重ね……。その忠誠は戦場で証明する」

ミナヅキが文句を言っているとレッカとエターナルが歩いてきた。
レッカとエターナルはミナヅキの言葉に顔色一つ変えないでエイガへと近づく。

「紹介しよう。ウィンディのレッカとブースターのエターナルだ」
「……こいつ等……ダイヤの子孫じゃないか……。本当に大丈夫なのか?」
「ワタシの人選が信用できないか? まぁ確かにダイヤの子孫ってのは大きいか……。
 しかし、それ故にこの二匹の能力は保障できる。このためにワタシが禁忌を犯してまで蘇生させたんだからな」

ミナヅキはエイガの質問に納得がいっていないようだった。
エイガはそんなミナヅキを見てこれ以上の説明はしない。

「特にさ……そっちのブースターのエターナル……だっけ?
 何となくダイヤを思い出すんだよな……。何考えてるか解らないって言うか……。
 雰囲気があいつに似てないか?」
「……何か随分と酷い言いようだね~。……調子に乗ってると痛いめ見るぞ、ハリネズミ……」
「……口の利き方がなってないようだな小娘……。外見はオレの方が若いがこっちは貴様等の何倍も生きてるんだ……」

ミナヅキとエターナルが互いの感情をむき出しにして睨み合う。
その光景を見ているエイガとレッカは唖然としていた。

「エターナルもういいだろう。俺達の相手はパルキアではなくディアルガだろ……」
「止めるなレッカ! これは僕とミナヅキの問題だ!」
「エイガは『様』付けでオレは呼び捨てか? 随分とオレを舐めてないか?」

ミナヅキの反応にエターナルは蔑みの目をする。
ミナヅキはエターナルの顔を見て更に怒った。

「貴様……そんなにオレを怒らせたいか?」
「ふん。ディアルガに封印された空間の神が偉そうに……」
「ガハァ!! そ、それは!?」

エターナルの言葉がミナヅキの心の急所に当たった……。
ミナヅキは膝を付いて落ち込む。

「も、もう良いな……エターナル……。と言うか、それ以上は止めてやれ……。
 お前がこんな性格とは思ってなかったよ……。こんな親でよく娘がまともに育ったな……」
「む~。エイガ様がそう言うなら止めますよ~。それに、今フィニティは関係ないですよ~」
「エ、エターナル……そ、そう言えば娘は父親似か?」

エイガが初めて見るエターナルの自分以外への対応に戸惑っている。
レッカは話をそらそうと質問したがその質問はかえってエターナルを刺激する言葉だった。

「……あいつの話はするな……。あの裏切り者め……。一時でもあいつを信じた僕が馬鹿だったんだ……。
 あいつのせいで僕等の一族は……。あいつさえ居なければ……」
「そ、その……悪かった。謝る。許してくれると嬉しいんだが……」
「別にレッカは悪くないよ……。フィニティにはあいつの血が流れてる……。
 だから僕はフィニティが敵に回るなら娘だろうと容赦はしない……」

エターナルの言葉には完全に殺意が込められていた……。
レッカはこれ以上話をややこしくしないように黙っている。
既にこの三匹からミナヅキの存在は忘れられていた……。

「さて、そろそろ本題だが……ワタシ達は九千年前にタイムスリップし、ダイヤとその一行を討伐する。
 何か質問はあるか? まぁ質問するほどの内容ではないか……」

三匹は今回の作戦の内容を確認しあう。
その時にようやくミナヅキにの存在を思い出し、九千年前へとタイムスリップしたのだった。



45 創造神 


エイガ一行がタイムスリップしたの丘の上から三匹のポケモンが見ていた。
三匹は共通して灰色の体に赤い水晶を額に付けた三十センチ程度の大きさのポケモンである。
違うところは頭部が黄、赤、青であることだろうか。
ユクシー、エムリット、アグノム……この三匹のまた創造主によって生み出された神であった。
ユクシーとエムリットが雌でアグノムが雄。年齢は比べる個体が居ないため判断できない。

「ふ~ん。あいつ等もやっぱダイヤを追いかけたか。ノウレッジの知識は正しかった訳だ」
「私は過去の彼女等の行動を知っての判断ですから。それ故に私の知識から導く答えに間違いはありません。
 ウィルも意志を持っているなら現在の神の行動はどう思います?」
「どうって言われてもね……。俺はプルート達の考えの方が好きだな。
 と言っても既にあいつら神が世界に干渉するかどうかなんて、もう蚊帳の外だよな……。
 だからあいつ等は心が不完全な欠陥品なんだよ」

ノウレッジと呼ばれたユクシーは解りきった事を聞いたため動じていない。
ウィルと呼ばれたアグノムはノウレッジの質問に迷いなく答えた。ついでに愚痴も一緒に……。

「まぁまぁ。僕等は創造主の命があるまで時空の神達と冥王を見張ってれば良いんだから。自分の感情は後、後!」
「それはそうでしょうけど……。フィールはそれで良いのですか?」
「俺達もそろそろ動いても良いと思うだけど? もう既に神達は創造主ルーツ様の考えを破り好き放題やってんだからよ。
 神としての最初の目的を忘れて個人的な感情で動いてるからな」

フィールと呼ばれたエムリットは二匹の考えを否定すると逆に質問される。
二匹の質問にフィールは考えていた。

「まぁ。それはルーツ様の判断に任せるって事で……。僕等が騒いでもルーツ様の許可が無いんじゃしょうがないし……。
 僕等が勝手に動いたら不完全なあいつらと同じになっちゃうよ?」

フィールの言葉にウィルとノウレッジは「それもそうか……」「そうですね……」と納得しきっていないが賛成した。

「では、ワレ等も過去へ飛ぶ。それからの汝等の行動をワレは止めん……。好きにするが良い。
 あやつらの行動を制限するも手助けするも汝らの自由だ」

背後から声をかけられ三匹は慌てて振り向く。
そこには創造神……ではなく一匹の雌のエネコロロがいた……。
年齢は二十五前後で恐らくダイヤ達の外見に合わせたのだろう。

「あの~。ルーツ様その格好は?」
「僕にはどう見てもエネコロロに見えるんですけど……」
「私の知識では間違いなくエネコロロですよフィール。と言わなくても解るでしょうけど……」

創造主の姿に三匹が戸惑っている……。
こんな時にもまったく動じないルーツの精神はまさしくエネコロロに相応しい。

「過去に飛んだらワレも行動を起こそうと思ってな。流石に汝等と違って原身では目立つ。
 そこで、あやつ等と同様にワレも擬態したわけだ。似合っておろう?」

ルーツは一回転し自分の姿を三匹に見せ付ける。
三匹はルーツの奇抜な行動にどう反応していいか考えていた。

「ええ……まぁ。似合ってると思いますよ……。とっても……」
「何だウィル? まだ、何か言いたそうではないか?」
「そ、そんな! 別にルーツ様の神経の太さがエネコロロにそっくりだなぁ~なんて思ってないですよ!! ……あ……」

ウィルが思いっきり口を滑らした……。
ノウレッジとフィールはウィルの無事を祈るだけである。

「そうか、そうか……。ウィル……汝はワレをそんなふうに思っておったのか……。その言葉……万死に値するぞ」
「あ、いや! それは!」
「……まぁ良い。今回だけは許してやろう……。だが次に同じ事を言ったら……覚悟しておくがよい」

ルーツはウィルを睨むが今回は許した。
ウィルは許された事に安心している。

「は、はい! 以後気をつけます!!」

ウィルは慌ててルーツから離れる。
ルーツはそんなウィルを見て呆れていた。

「ダイヤとパールそれにプルート……。あやつらはワレの……思惑通り……。
 それにワレの忠実な下部も行動を開始させる。
 さぁ、この世界は何を望み、何を拒む。その先に何がある。
 その世界をワレに示せ……。ワレに見せてみろ……」

全ては彼女の思惑通りに事は進んでいる……。
ルーツは不敵な笑みを浮かべていた。


46 戦う理由 


九千年前にたどり着いたエイガ一行は現状を確認している。

「ふぅ~。ようやく着いたなエイガ。やはり原身は無理か……。でも、サンドパンなだけましか……」
「それについてはワタシも同感だな。ポチエナに戻ると能力的に心配だからな」
「にはは。ポチエナのエイガ様も見てみたかったかも? ……ミナヅキがサンドだったら苛めてやったのに」

まだ進化後の姿を保てた事にエイガとミナヅキは安心する。
エターナルはそんな二匹を見て少しがっかりしていた。
ミナヅキは無言でエターナルを睨みつけている。

「エイガ様……この辺りの状況ですが……」

レッカはどうやら辺りを調査していたらしい。エイガに得た情報を伝えている。
エイガも真面目にレッカの報告を聞いていた。
ミナヅキはレッカから半分無視されつつレッカの報告をエイガの隣で聞いている。

「なるほど……。この時代のダイヤはまだ力を持ってるわけか……。後は逃げ込んだダイヤの情報も欲しいところか」
「でも、ミナヅキ。これだけの情報が手に入ったのは良い事だろう? どっちかと言えば知りたいのはダイヤの居場所だな」
「にはは。それに関しては僕の能力の出番ですよ~。まずはポケモンの集まりそうな木の実の多い森から捜索しますね~」

エターナルが笑いながら森へ向かおうとするとエイガが止める。

「ここは全員で動いたほうが良い。分かれて行動して会えなくなりましたじゃ話にならないからな。
 レッカ……お前も以後の単独行動は控えるように……」
「解りましたエイガ様。では、自分達も出陣の準備を」
「確かにオレとエイガは互いの場所は解るが……レッカとエターナルの場所は解らんからな……。
 でも、随分と急ぐじゃないか。別にそんなに焦らなくても良いんじゃないか?
 オレ達が原身に戻れないからなおさらだろう……。何を焦っている?」

ミナヅキはエイガが行動に焦りを感じているのを見抜いていた。
その言葉にエイガは考えたものの、考えは変えない。

「ワタシは……焦ってなどいない。いや、焦っているんだろうな。ここまで禁忌を犯すと創造主がそろそろ心配じゃないか?」
「ルーツ様か……。確かにオレ達三匹が禁忌を犯したと考えると……動くかもしれないな……」
「速く行動を起こして損はないだろうな。だからワタシは今から捜索する」

ミナヅキも「分かった」と素直に返事をして準備をする。
そんなミナヅキを見てエターナルが「速くしろ」と言いたげな視線を送った。

「エターナル……お前、オレの事嫌い?」
「好きか嫌いかで聞かれたら僕ははっきり『嫌い』って答えるよ~。
 そもそも僕も神自体が嫌いなポケモンなんだよ~。……僕はお前には従わないから……。
 僕が従うのはエイガ様だからね。お前の指示は聞く気は無いからそのつもりで……」
「こんな奴を味方に連れて来て良かったのか疑問に思うな……。まぁ一応仲間だからよろしく頼むぞ……。
 お前がそう言うなら俺は何も指示を出さないさ……。だが、これだけは聞いておく……。
 お前は何故戦う? それは命令されたからか? それとも……」

ミナヅキの質問にエターナルは一瞬驚いたがすぐに質問の答えを考える。

僕は何の為に戦っている……。
理由はエイガ様に蘇生されたからだけ?
……違う。僕は……。

「……誰かに必要とされたかったかもしれない……。それが道具としてでも……」
「……悲しいな……。だがな、お前もそれが間違ってるって解ってるんだろ?
 だからこそ、協力するんじゃないのか? オレ達に……。
 お前はダイヤに似てるんじゃない……前のオレに似てるんだ……。
 だからかな……お前が気になるのは……」
「そうだね。僕も見つけられると良いな……。最高のパートナーを……。
 にはは~。でも、それはミナヅキ……お前じゃないからね~」

ミナヅキはエターナルの反応に安心していた。
二匹の会話を見ていたエイガが睨んでいたのは言うまでもない……。

「なるほどね……。神も僕等と同じなんだ……。レッカ……僕は……今でも、君が……」

エターナルは目を瞑り何かを思い出している。
ミナヅキはこの後エイガに文句を言われ、続け頭を下げ続けていた。


47 交わる刃 


ウズキはクゥ達と別れた後食事を取っていた。
一匹で食事をしている姿はなんとも物悲しい……。
そんな中ウズキは森に忍び寄る気配に気付きつつあった。

「ん? この気配……まさか、パールとプルートがもう追って来た!?
 ありえない……。あの二匹がボクに匹敵する能力を出せるわけが……。いや、あるか……。
 なるほど……ボクを追うのに創造主の意志はもう関係ないって事か……。
 ならば、創造主も動くか……。さぁ、ルーツ様……禁忌を犯したボク等三匹をどう裁く?」

ウズキはこの状況を寧ろ楽しんでいるように思えた。
ウズキが笑っていると背後からウズキへと攻撃が繰り出される。
二本の火炎放射がウズキを捕らえ火の海へと誘う。
しかし、ウズキは寸前のところで避け当たる事はない。

「随分速かったじゃないか……。禁忌を犯してまでボクを追う理由が君達にあったのか?」
「それはオレ達の意地だな……。今度こそお前を封印してやる……。ってお前ロコンかよ!?」
「ワタシをあそこまで侮辱したんだ……。それなりの覚悟はしてもらうぞ……」

ミナヅキとエイガはウズキを睨みつける。
攻撃を放ったはずのレッカとエターナルは既に無視されていたのだった……。

「何か僕達……無視されてない? すっごい不愉快なんだけど……」
「ぼやくなエターナル……。俺達の役目は初めからダイヤ一行のダイヤ以外の連中だ。
 今、ダイヤ本人しかいないのなら本来俺達の役目はない……そうだろう?」
「そりゃ~そうだけどさ~。僕等にも獲物がいても良いと思うんだけど?」

エターナルは自分達が無視されている事が気に食わないらしい。
レッカは落ち着いて辺りに耳を澄ませ状況を確認していた。

「エターナル安心しろ……と言う、言い方は変化もしれんが……俺達の獲物も来たようだ」
「にはは~。ギッタギタだね~」

レッカとエターナルは足音のした方へと振り向く。
しばらくするとグレン達、残りの六匹が現れる。

「あれは……ミナヅキ!? ムオン! 行きますよ!!」
「……排除……」
「ん? 何だお前等はオレが狙いか? しゃぁない……オレが相手をしてやるよ。
 アマツ団長様にムオン隊長様……。だが、こっちも手加減はしないぜ?」

ミナヅキはアマツとムオンに睨まれてウズキとの戦闘をエイガに任せた。
三匹は睨み合い戦闘態勢を取っている。

「にはは~。じゃあ、僕の相手は……フィニティとアブソルのお嬢さんにお願いしようかな~」
「あのブースター……まさか……お母さん?」
「何を考えている!? 来るぞフィニティ!!」

エターナルは対戦相手にフィニティとサイを指名した。
サイとフィニティが戦闘態勢を取る前にエターナルは火炎放射で攻撃を仕掛ける。
しかし、それは攻撃を当てるためのものではなく二匹を分断させるためのものであった。

「さて……余った二匹はこの俺が相手をするわけか……。まぁ良いだろう」
「父さん!? それとも……似てるだけ?」
「あいつは確か……俺達の時代でウィンディの群でも屈指の実力の烈火の閃光じゃないか……。
 似てるだけってわけじゃねえな……。この、突き刺さるような威圧感……本物だろう……。
 確か事故で亡くなったって聞いたが……流石は冥王が相手ってわけか……。嫌な奴が相手だな……」

グレンとライガは戦闘態勢を取るがレッカはまだ戦闘態勢を取らず二匹を睨んでいる。
その視線だけでも威圧感があり、流石は歴戦の勇者といったところであった。

ウズキ一行とエイガ一行の両者の意地と誇りを賭けた戦いが始まろうとしていた。



48 渦姫 対 影牙 


ウズキとエイガは睨みあいを続けていた。
ウズキが現在キュウコンになれない事を考えればロコンとグラエナでは勝負は見えている。
ならばウズキが取る行動は一つであった。

「エイガも大人気ないよね。ロコン一匹にムキになるなんてさ……。弱い者と戦って恥ずかしくないの?」
「相手が普通のロコンなら、こうもムキにはならないさ……。ダイヤ……いや、ウズキ」

ウズキはエイガを挑発したがエイガは冷静なままだった。
それを見てウズキは残念そうにし、自然に言葉が漏れる。

「あ……挑発には乗ってくれないんだ? 一度して自分に自信でもついた?」
「そ、それは!? そ、そりゃ~ワタシだって雌だし……って!! 貴様、何を言わせるんだ!?」
「いや~。やっぱりプルートはこうじゃないと。ここまでからかって楽しい奴はそうそういないよ」

ウズキのぼやきにエイガは顔を真っ赤にして怒鳴る。
そんなエイガを見るウズキは凄く楽しそうだった。

「貴様……。ワタシをからかってそんなに楽しいか?」
「うん。ここまで過敏に反応すると楽しくて楽しくて。笑いが止まらないよ」
「絶対に封印してやるからな……ダイヤァアアア!!!」

エイガは前と同様にウズキにからかられてキレる。
どうやらエイガ自体がウズキと相性が悪いらしい……。

怒りに我を忘れたエイガの攻撃は単調になりロコンのウズキにすんなりと避けられる。
ウズキは間合いを開け、エイガの振り向きに合わせ火炎放射を放つ。

「隙あり!! 地獄の業火に飲ませて消えろ!!」
「……っち。そう来るか……」

エイガが振り向いたときには既に火炎放射は目の前に迫っている。
普通のポケモンならば避ける事のできない正確な狙いだった。
しかし、エイガは普通のグラエナではない。

「だが、ワタシの能力を甘く見てもらっては困るな……」

エイガも冷静さを取り戻し、空間の狭間へと消える。
ウズキの放った火炎放射は虚しく空を焦がすだけだった。

「消えた!? タイムスリップをしたばかりのプルートにこれだけの力がまだ使えるなんて……」

ウズキが驚いているとエイガが背後から再度現れウズキを強襲する。
不意に背後を取られたウズキは防ぐ間もなくエイガの右前足の鋭い爪の餌食になった。

「っく!! ……やるじゃないかエイガ……。でもね、ボクも……やらっれぱなしじゃない!!
 この至近距離ならボクの攻撃は避けれないよね?」

ウズキはエイガに至近距離から鬼火の炎を当てた。
怨念によってつくられた炎は直接は身を焦がす事は無いが深い火傷となり相手を苦しめる。
エイガは避けようとするも左前足に大きな火傷ができた。

「……やるな。ロコンだと思って甘く見ていたのはワタシの方だったみたいだな……」
「ふふふ。ボクが擬態した体を一番使ってるんだ……。自身の有利な戦い方くらい分かるさ」

能力的にはエイガの方が高いが今のウズキの実力もエイガに負けていない。
ウズキがキュウコンだったならば確実に勝負は決まっていただろう。

「後、エイガ……。ボクは優しいから忠告してあげる。……時間が経てば不利になるのは火傷だけじゃないよ」
「どう言う意味だ……」
「周りを見れば解ると思うけど? ここは森なんだから……火を放てばどうなるか言わなくても分かるでしょ?
 それにここまで来ると木の実もないから被害は少なくて済むしね~」

ウズキの忠告通り二匹の周りは火の海になっていた。
ウズキは初めに放った火炎放射は、木々を燃やし尽くす業火となって二匹を囲んでいる。

「やっぱりお前はやる事に、ためらいがないな……」
「ちなみにボクの特性はもらい火……これ位に炎のなら自身を強化する……。エイガ……君の負けだよ……」
「っふ……。悔しいが今回はワタシの負けだ……。だが、次はこうは行かないぞ……」

エイガは負けを認め、消えていった。
ウズキはエイガがいなくなったのを確認し溜息をつく。

「危ない、危ない。これでハッタリがばれたらどうしようと思ったよ……。
 鬼火の時の怪しい光での幻覚効果……うまくいったみたいだね……」

ウズキが前足で地面を叩くと炎は存在しなかったように消える。
エイガは二重にかけられたウズキの仕掛けには気づいていなかったようだ……。
ウズキは戦闘の疲れからそのまま座り込んで休息を取っていた。


49 時の教団の内乱 


ムオンとアマツは戦闘態勢でミナヅキを睨んでいる。
睨まれたミナヅキは面倒そうな顔をしていた。無論、戦闘態勢は取っていない。

「最初に言っておくがオレの能力が落ちてても、お前達が二匹がかりでもオレには勝てないぞ」
「……そんなのやってみなければ解らないでしょ? しばらくは一緒にいたのだから私の性格は解っているでしょう?」
「……勝負……」

ミナヅキはアマツの言葉を聞いて呆れている。

「はぁ~。せっかく穏便に済ませてやろうって言ってるのに……。元仲間でも容赦しないからな」
「あら? 神の血をひく私は邪魔だったのではないのですか?」
「今のオレに創造主の命令は関係ない。オレは用があるのはダイヤ……ウズキだけだからな」

ミナヅキの言葉を聞いてアマツは嫌味を言う。
その事にミナヅキは表情を変えないで素直に質問に答えた。
エイガは相変わらずミナヅキを睨んでいる。

「……それとムオン……オレも心が読めるからな、演技はしなくても構わないんだが?」
「う、うるさい!! それは俺の勝手だろ!!」
「あ。普通にしゃべった……。その方が雌にモテると思うだがな。ムオンは元が良いから……」

ミナヅキは初めて見るしゃべるムオンを見て満足そうにしている。
それをからかわれたムオンは目を吊り上げて怒っていた。

「お前と話す事はない! 行くぞアマツ!」
「あ! それは私の台詞ですよムオン!!」

ムオンの言葉をゴング代わりに三匹の戦闘が開始される。
ミナヅキは迫るムオンをあっさりと避け、すれ違いざまに爪をムオンに突き立てた。

「っぐぅ! 貴様……」
「怒ると誰でも動きは単調になる……。少しは冷静になったらどうだムオン隊長?
 いつものあんたらしくない。嫁の前で良い格好でもしたいのか?」
「ムオン!!」

アマツは叫ぶとムオンごと火炎放射でミナヅキを焼き払う。
しかし、ムオンはもらい火の特性で傷を負うことはなくミナヅキだけが焼き払われる。

「くっそ! 調子に乗るな!! 一発当てただけで!!」
「ふん。冷静になったらどうだミナヅキ?」
「っち。そうだな……。人の台詞をそのまま使いやがって……」

アマツに攻撃を当てられたことで冷静さを失う。
だが、ムオンの一言で腹を立てながらも冷静さを多少は取り戻していた。

「じゃあ、こっちから攻めさてもらおうか。空間の力……見せてやる」

ミナヅキの右手が薄紫色に輝き始める。
それはパルキア最大の攻撃、亜空切断を連想させた。

「原身の時ように空間の刃を飛ばすことは出来ないが……接近戦でならば!」
「そんな攻撃……何!?」

ミナヅキは素早くムオンに近づき空間の力を宿した右手を振りかざす。
ムオンはギリギリのところでミナヅキの攻撃を避けた。
……いや、避けたはずだった。
ムオンは確かに振りかざされた右手は避けている。
しかし、右手に纏った空間の力はムオンを襲っていた。
ムオンは不意の攻撃にそのまま倒れてしまう。

「接近戦って言っても直接相手に当てる必要はないんだよ。まぁ直接当てればこんな傷じゃ済まなかっただろうがな。
 さてと……。アマツ様、ムオン殿も倒れたことですし大人しく撤退してもらえませんか?
 こちらも無駄な労力は使いたくないですよ。ムオンの方があなたより強いのですから勝てないのはお解かりでしょう?
 昔の仲間として、今大人しく退くならあなた達に手は出しませんよ」
「私は……。解りました……。悔しいですが勝てない戦いと負ける戦いは違いますから……」

アマツはムオンを背負うとミナヅキを睨んで戦場を後にする。
ミナヅキはその光景を寂しそうに見ていた。

「やっぱり悪者ってのは好きになれないな……。戦い続ける事で世界は変えられない……。
 ルーツ様……あなたは何故、オレ達をそのように創ったのですか?」

ミナヅキはアマツが見えなくなると呟いていた。
だが、その問いに答えるものは誰もいない……。


50 一族の仇 


火炎放射を避けたフィニティとサイはバラバラの位置に着地した。
それがエターナルの狙いとも知らずに……。

「っち。いきなり攻撃とは卑怯な奴め!」
「にはは。この戦いにルールなんてない。命を賭けた殺し合いだよ?
 それとも……もしかして君達、殺す覚悟がないのに神と戦ってたの?
 神は元々、君達を殺すべく派遣された存在だよ。そんな甘い考えで……」
「私達は分かり合えます! では何故、パルキア様とギラティナ様は手を組んでいるのですか?
 それは互いを理解し分かり合ったからです!」

サイがエターナルを侮辱する。
エターナルはその言葉を気にせず淡々と今の現状を語った。
フィニティはエターナルの言葉に反発する。

「甘いねフィニティ……。この世界は嘘と偽りの塊だよ……。
 所詮は僕等は自分を傷付けられたくないから相手と話を合わせ分かり合ったつもりでいる。
 その嘘の綻びを見つければ互いの関係なんて脆い……。嘗ての僕とあいつのように……。
 フィニティ……お前も分かっているだろう? 五年前の僕等の一族の末路を……」
「お前のくだらない御託など聞きたくない!」
「にはは。お前……邪魔だよ。少し大人しくしてくれるかな?」

サイは話しの途中でエターナルにかまいたちを放つ。
エターナルはかまいたちを避けきれず頬に一本の傷が入る。
その事で腹を立てたエターナルは電光石火でサイに近づく。
電光石火で近づく一瞬だけエターナルの瞳は紅くなっていた。
すれ違いざまにエターナルは右前足でサイの頭を掴み地面へと叩きつける。
一瞬の出来事にサイは受身を取る前に地面に叩きつけられ気絶してしまう。

「にはは。雑魚のお掃除かんりょ~」
「今……一瞬だけ覚醒した? それに私達の一族の末路って……。
 じゃあ、やっぱりお母さんなの? 何で生きているの?」
「にはは。やっと気づいたみたいだね。質問の答えだけど僕は生きてたんじゃない……蘇ったのさ。
 冥王プルート様の力により僕とレッカは再びこの世界へと戻ってきたってわけ。
 フィニティ……敵として戦う以上……死んでもらうから……。
 あいつの血を引くお前に情けはいらない……。暴れなければ一撃で楽にしてあげる……。
 ……大丈夫。冥界も悪い所じゃないよ……。住めば都って言うしね」

エターナルはゆっくりとフィニティに近づいていく。
エターナルが一歩近づくたびにフィニティは一歩下がっていった。
フィニティが下がり続けると木にぶつかりもう下がれない。
退路を失ったフィニティの顔は恐怖で引きつっていた。

「お母さんはお父さんがそんなにも憎いんですか?」
「ああ、憎いね。あいつは僕等を裏切った……。僕等の一族があんなになったのもあいつの性だ……。
 教えてあげるよフィニティ……。僕等がディアルガの血を引いてるって群に言ったのってサンダースなんだよね。そう、つまり君の父さんだよ。
 あいつは浮気をしていてね……。愛人のシャワーズとつきあうのに僕が邪魔になったから僕等の一族の秘密を話した……。許せないだろ?
 勿論あいつには制裁を下したけどね……。浮気相手共々僕の手で始末したからね……」
「お父さんが!? そんな……そんな事って……。だってあんなに優しくて……」

フィニティは初めて知る一族の滅亡に驚いている。
エターナルはそんなフィニティを慰める事などしない。

「……おやすみフィニティ……。好きだったよ……。全てはあいつが悪いんだ……」

エターナルはフィニティの首へと右前足をもっていく。
しかしフィニティはそんな事に気付いていない。
だが、突然エターナルの顔色が悪くなる。

「っう……。何でこんな時に……。何でこんな絶妙なタイミングで……。
 フィニティ……次は君の命をもらうから……」

エターナルは捨て台詞を言うと走り去っていった。

「お父さんが私達の一族を群に売ったなんて……。私は何を信じて……何を疑えば良いの……」

彼女がどれだけ悩もうとも現実は変わらない……。
フィニティは現実を受け入れられず茫然としていた。


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Last-modified: 2009-12-17 (木) 00:00:00
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