by蒼空
何の無い島で二匹のポケモンがにらみ合っていた。
「お前の見守るだけのやり方はぬるいんだよ!」
一匹のポケモンが叫ぶ――そのポケモンは桃色の体に紫のライン両肩に付いた真珠が特徴のポケモン。その名はパルキア。
世界を統べるための存在として生まれたポケモン。
「力による世界の支配はその者達のタメにならないと言っている!」
もう一匹のポケモンも負け時と叫び返した。
そのポケモンは藍色の体をしていて蒼のライン胸に付いた金剛石が特徴のポケモン――ディアルガだ。
「やはりボク達は戦う運命の元に生まれた存在……」
「そうだ。オレ達のどちらかがこの世界を支配する。
そんな事はあのお方に生み出された時から解っていたはずだ」
二匹ともこうなる事は最初から解っていた。
この時二匹は悲しい眼をしていたのかもしていた。
二匹が生まれてきたその時から運命は決まっていた。
そう既に決まっていた。互いに違う考えで生みだれた存在。
互いを受け入れる事が出来ないように創りだされた。ある神によって……。
「どちらかが倒れるまで戦いは終わらない……という事か……。
運命はどうしてこうも残酷なんだ……」
その一言こそがディアルガの本心だったのかもしれない。
ディアルガは自分と言う存在について気付いてた。
戦いで勝利する事こそが自分達の存在理由。
神によってどちらが優れた存在かを決めるゲーム。
戦う事でした世界を変えられない存在。
「お前はまだ戦う覚悟が無いのか。フッ……優しすぎるんだよ……
だがその中途半端な優しさは残酷なだけだ。
オレ達には世界を治めるために生み出された。
当然……全ての者を救うことは出来ないだろう。
特にお前のやり方は強者と弱者を分けるだけだ。
だからオレはオレ自身が世界の強者となる!」
限りなく同じでまるっきり違う世界への考え。
互いは違う信念を持ち、違う世界を望んでいた。その先の答えが同じでも……。
「ここで朽ち果てろ!」
パルキアはもう話すことは無いらしくディアルガにに攻撃を仕掛ける。
その攻撃は単純なもので自らの質量を使った体当たり。
しかしその体格から繰り出される一撃は思ったよりも大きくディアルガに強い衝撃を与える。
ディアルガもすぐ体制を立て直し仕返しと言わんばかりに体当たりをする。
パルキアは数メートル吹き飛び今度は波導弾を撃ってくる。
避けきれないと思うとディアルガは自分の周りの時間を狂わしはじめる。
そう『波導弾なんて最初から存在しない』と強く念じる。
その念は形となり『波導弾は最初から存在しなかった』事になる。
「防いだか……。成らばこれでどうだ!」
パルキアの両肩の真珠が眩く光だし、空間が切り裂かれる。
自分の周りの空間が刃となりディアルガに飛んでいく。
亜空切断――空間の刃は高確率で相手の急所を切り裂く。
パルキアの最強にして最後の切り札。
ディアルガは再び時間を狂わすも亜空切断の前には無力だった。
亜空切断の一撃はディアルガの体をズタズタに切り裂いた。
「……ボクはここで倒されるのか?
それも悪くない……。全てあいつに任せれば良いんだ……」
ディアルガは消えすこうとする意識の中ぼんやりと自分の未来を考えて呟いていた。
「嫌と言いながら随分ネバルじゃないか……」
しかしディアルガは立ち上がっていた。
この二匹にはには自分の信じた世界を創る義務がある。
ここでパルキアを肯定すればディアルガに存在する理由は無くなる。
「ボクにも君と同じく信念がある……。
たとえやり方がぬるいと言われようとも!!」
ディアルガは残りの持てる力の限りを尽くし叫んだ。
胸の金剛石が眩く輝きだし、時間が狂いだす。
狂いだした時間は過去と干渉し相手の存在すらも消し去る恐ろしい技となる。
時の咆哮――それは強大な力故に撃った本人すらも動けなくなってしまう危険な技。
しかし、その威力は亜空切断とは比べ物にならない。
「馬鹿な! どこにそんな力が……」
時の咆哮が来るのを予測していなかったパルキアは狂った時間に飲み込まれ姿を消した。
パルキアも神によって生み出されたポケモン。死にはしないだろう。
しかし永遠かもしれない長い間……空間の狭間を彷徨う事にはなるだろう。
「勝った……のか?」
これでこの戦いに決着が付いた。
長い間の戦いに幕が下ろされた
しかしディアルガには実感が沸かないでいた。
「ボクがこの世界を変える……いや世界を変えた……」
これからディアルガの求める世界が動き始める。
ディアルガはただぼんやりと空を眺めていた。
朝の日差しが照りつけて一匹のポケモンが目を覚ました。
「ふわぁ~。また変な夢を見たよ……。ディアルガとパルキアが戦う夢……。
一万年以上も前の神話の夢なんて何で見るんだろう?」
そのポケモンは首を捻り考えるが答えは出ない。
そして、巣の近くの小川に顔でも洗いに行こうと立ち上がった。
小川の水面にはの赤い体毛に黒い縞模様、頭には黄色い鬣の子犬の様なポケモン――ガーディの姿が映った。
まだ幼さを残す顔付きだが立派な体格の雄である。年齢は十七歳前後といったところだ。
ガーディは水面を見ながら鬣を整えた。
しばらくするとこの辺りでは見かけないポケモンが水を飲みに来た。
水を飲んでいるポケモンは朱色の体に六本の尻尾、頭の巻き毛が可愛らしい狐のようなポケモン――ロコンだった。
そのポケモンは美しい毛並みに気品のある態度、細い体付きをしていて雄でも雌でも虜にしてしまう魔性の魅力を持っていた。
そのせいでガーディにはそのロコンの性別が解らなかったが年齢はガーディよりも一、二歳若い感じだった。
「……あ。始めまして。僕グレンって言います。最近この近くに住み始めたんです。よろしくお願いします……」
グレンと名乗ったガーディがロコンに恐る恐る話しかける。
体格の割には臆病な性格の用でロコンに話しかけた声は凄く小さかった。
ロコンは一瞬グレンを方を見たがすぐに水飲みを再開する。
「あの……。名前……なんて言うんですか?」
ロコンはようやく自分に話掛けているのだと気付いた様にグレンを見る。
「……ウズキ……」
ウズキと名乗ったロコンは一言だけ言ってまた水飲みを続ける。
グレンは気まずそうに話掛けるも相手にされることは無かった。
「ボクに何の用でもあるの? さっきから話しかけて来て……。他人とかかわると面倒な事が多くなるから嫌なんだよ。
ボクは面倒が嫌いなんだ。話しかけないでくれる?」
ウズキがグレンを睨みつける。その迫力にグレンは何も言えなくなってしまった。
しばらく二匹の沈黙を続けていると一匹の雌のポケモンがグレンに抱きつく。
そのポケモンは茶色い体毛に首の周りと尻尾の先が白い毛で覆われたポケモン――イーブイだ。
恐らく年齢はウズキと大して変わらないだろう。
グレンは突然抱きつかれてパニックに陥る。
「君……誰?」
「すいません。追われているんです。助けて……」
グレンが慌てていると一匹のレントラーが走って来た。
鬣が長いのを見ると雄である事が解る。年齢は二十前後だろう。
「もう逃がさねえぞ。覚悟しなお譲ちゃん。お前達も大人しくそいつを渡しな」
「……達?」
どうやらこのレントラーこそがイーブイを追いかけていたようだ。
ウズキが辺りをキョロキョロと見渡して質問する。
この周辺にいるのはグレン、イーブイ、レントラー、ウズキの四匹である。
当然『お前達』と言うレントラーの言葉の中にイーブイと自分自身は含まないだろう。
消去法を使うと当然『お前達』とはグレンとウズキの事になる。
ウズキは誰が見ても解るくらい嫌そうな顔をした。
「ボクは面倒が嫌いだから……。三匹で勝手にやってれば……。
そのイーブイとは何の関係も無いしね」
「そんな言い方は無いんじゃない! 目に前で困ってる人が居るんだよ!」
ウズキの言葉にグレンが怒り出す。
その言葉に対しウズキは無言で睨み返す。
「何ゴチャゴチャ言ってやがる! てめえ等まとめてぶっ飛ばしてやる」
レントラーが遂に怒り出し放電する。
無差別による雷は容赦無く三匹のポケモンを襲う。
イーブイは木に隠れ放電から身を守りグレンは身を屈め避ける。
「面倒な事に巻き込まれたな……。しょうがない……」
ウズキは文句を言いながらも身を屈め戦闘態勢をとる。
「なんだ俺とやり合おうってか。舐めた事してくれるじゃねえか! ……ってこれは!?」
話が終わる前にウズキは怪しい光を出す。
レントラーはその事に気付き目を咄嗟に隠す。
ウズキはそれを狙っていた用でそのまま電光石火でグレンを背中に乗せ、イーブイを口に咥え一目散に逃げてゆく。
レントラーがウズキがいた方に向けた時には既に誰もいなかった。
「……ちくしょう……逃げられたか。今日はついてねぇな~。姉さんになんて言い訳しよう……。いや、まだ明日がある」
レントラーは悔しそうに小川を後にした。
ウズキはレントラーを撒いたのを確認しグレンとイーブイを降ろす。
「あ、ありがとうございます。私、フィニティっていいます。
名前は無限を意味するインフィニティから取ってるんですよ」
「僕はグレン、こっちのロコンはウズキさん。でも何で追われてたの?」
フィニティと名乗ったイーブイとグレンが話を始める。
ウズキは面倒くさそうに離れた木陰で座り込んでるいる。
フィニティが事情を説明しようとするとウズキが立ち上がり話し出す。
「……どうせ、その首にかけられたディアルガの胸を模したダイヤのネックレスでしょ?」
「このネックレスに気付いてたんですか?」
フィニティは首からネックレスを外し二匹に見せた。
ウズキは「当たり前だよ」相槌を打ち話を続ける。
グレンは何とか話に付いていこうとする。
「それにあのレントラーはこの辺じゃ有名な窃盗組だ。
名前はライガ。もう一匹はサイって名前のアブソル。
正直、グレンあんたが勝てる相手じゃ無かったって事。
勝負をするにも相手を選ばないと長生きできないよ。
ボクの話は終わり。後は二匹で楽しくやってれば」
「そこまで解ってたんだ……僕全然知らなかったよ……」
グレンはウズキの言葉を感激しながら聞いていた。
ウズキは話し終わるとまた座り込んでしまう。
グレンとフィニティは他愛も無い会話をして盛り上がっていた。
その笑い声は離れていてもウズキの耳に入っていた。
「……紅蓮の子犬と無限の進化……。これは単なる偶然? ……いや、違うだろうな……。
多分あの二匹は……。そうだとしたら二匹は神の……」
ウズキは楽しそうに話合っている二匹を無表情で見ていた。
グレンとフィニティが話し続けていると辺りは暗くなっていた。
「所でウズキさん、ここってどこ?」
グレンとフィニティはウズキにこの場につれてこられた為現在地が解らなかった。
肝心のウズキは「さぁ?」と言って首を捻った。
「解らないの? こんな所でどうするの!?」
「今日は野宿だね。フィニティもそれで良い?」
「はい。私はそれでも構いません。助けていただかなけばどうなってたかも解りませんし……」
「そんな、野宿って……」
フィニティは納得するがグレンは納得がいかないようだ。
「でも帰れないじゃそうするしかないと思うけど」
「それはそうだけど……」
「じゃあ、そうしよう。そうするしかないし」
グレンは渋々納得し、三匹はとりあえず雨の防げそうな木の下で野宿する事にした。
木は探すと案外近くに見つかった。しかも障害物も多く他者からは見つかりにくく野宿には最適だった。
「フィニティが可愛いからって夜……襲うなよグレン」
「そ、そんな事しないよ!!」
「そうですよ! グレンさんがそんな事するわけ無いじゃないですか!!」
ウズキがグレンをからかう。そのことでグレンのみならずフィニティも顔を紅くする。
ウズキは二匹の反応を見て楽しそうに笑う。
「そ、それだったらウズキさんだってそうじゃないか」
「ボクはフィニティを襲う理由がないからね」
「……それだったら僕も同じだよ」
ウズキの言葉にグレンが珍しく怒りウズキをにらむ。
フィニティはグレンを必死に宥めようとする。
「グレンも雄だからね。それにボクは同姓を襲う趣味は無いんでね」
ウズキの言葉にグレンとフィニティが唖然としウズキを見る。
二匹とも自分を『ボク』と言っていたウズキを雄だと思っていたらしい。
「あれ? 気付いて無かった? それにロコンは雌の方が生まれやすいし。
寧ろボクが雌の方が自然だと思うけど? まあ目の前に珍しい雌のイーブイがいるけどね」
「なんか納得いかない……。それにウズキさんさっきから良く喋るね……」
「……君達を友って認めただけだよ……」
ウズキのその言葉に二匹は妙に嬉しそうにする。その事を言ったウズキは二匹の反応に顔を紅くする。
「じゃあ、もう晩い。二匹とも今日は寝たほうが良い」
「あの~。ウズキさんはどうするのですか?」
フィニティの質問にグレンも「そうだよ」と同意する。
ウズキは呆れた様に前足を額に当て首を振る。
「ここは必ずしも安全な場所とは限らない。ボクは寝ずに見張ってるから二匹は寝ててって言ってるんだ。
ボクの優しさを解って欲しいんだけどね」
二匹とも素直にウズキの好意を受け取り眠りについた。
二匹が眠りについてから数時間が経った。
しかし辺りは暗いまま。本当にウズキは寝ずに番をしていた。
すると突然グレンが目を覚ました。
「どうした? 起きるにはまだ早いと思うけど?」
「なんか目が覚めちゃってね……」
グレンが起き上がりウズキの隣に座る。
「ウズキさんは寝ないで平気なの?」
「体の鍛え方が君とは違うからね。フィニティを襲うなよ?」
「だから襲わないよ!」
ウズキはグレンをからかう。
寝る前と同様に顔を真っ赤にする。
大声を上げた割にはフィニティは目を覚ます事無くぐっすりと眠っている。
「ねぇグレン。変な質問かもしれないけど、君はこの世界の神ディアルガをどう思う?」
「どうって言われても……。 正直、僕は何とも思ってないよ。別に僕には直接は関係無いし……
一万年前のいたって神話があるだけじゃない。僕はこの世界にいないんじゃないっかて思う」
グレンの答えにウズキは暫く考え口を開いた。
「なるほどね。なら、フィニティと一緒にいないほうが良い。当然ボクとも。
このまま一緒にいれば君達は運命から逃れられなくなる」
ウズキは真剣な表情のままグレンを真っ直ぐに見つめる。
グレンもまたウズキから目を逸らさなかった。
「それどう言う意味?」
「聞いてどうする? 知らないほうが良い事もある……。これ以上ボク等に関わるな。これは警告だ。
ここで分かれれば君は今までの生活に戻れる。それ以上は言えない」
グレンもウズキの真剣な眼差しに負け「解ったよ」と軽く返事した。
「じゃあ、まだ夜は長い。グレン寝たほう良い」
「うん。おやすみウズキさん」
グレンはウズキから離れ再び眠りにつく。
「警告は……無駄に終わるんだろうな……」
ウズキは眠るグレンを見て溜息をついた。
ウズキが番をしているとグレンが目を覚ます。
フィニティはまだ目を覚まさない。
「ウズキさんおはよう」
「おはようグレン」
二匹は朝の挨拶を交わす。
しばらくするとフィニティも目が覚める。
「グレンさん、ウズキさんおはようございます」
「おやようフィニティさん」
「おはよう。良かったねフィニティ襲われなくて」
ウズキの言葉にグレンが睨む。フィニティは苦笑いをする。
ウズキは「冗談だよ」と軽く謝り話を始める。
「とりあえず朝にはなった。二匹ともこれからどうする?
昨日も言ったとおりボクは帰り道は解らないよ。ライガを撒くのでやっとだったから」
二匹が今後を考えていると誰かの声が聞こえてくる。
三匹はとっさに木陰に隠れた。
「この辺だと思うんだよな。あのイーブイのペンダントを奪わなきゃ姉さんに顔向けできねえしなぁ。本当についてねぇよ」
その声の主は昨日フィニティを追っていたライガのものだった。
ライガはグレン達が隠れてる木陰を見て不敵な笑みを浮かべる。
「やっと見つけた。お前らそこにいるのは解ってる。大人しくペンダントを渡しな」
ライガは木陰の方に大声を張り上げる。
「どうしよう見つかったの?」
「完全にね……。ライガはレントラーだからね。目が金色に光ってるから自慢の透視能力でしょ」
「これだけは……渡せないんです」
三匹は木陰に隠れたまま会話を続ける。
「がんばれグレン!」
「え! 僕!? そう言うウズキさんは!?」
「ボクはまだフィニティと話があるから。せめて時間を稼いで」
グレンが嫌そうにウズキに訴えかけるも全て無視される。
「……さっさと行け。でなければボクがグレンを……」
「はい。行きます……」
ウズキはグレンを睨み脅迫じみた声でつげる。
グレンはその形相に負け渋々とライガに向かっていく。
「さてフィニティ。まあ昨日の夜グレンにも言った事ではあるんだけど……。
いや、結論から言おう。そのペンダントをボクに渡せ……。
君がそれを持っていれば逃れられない運命が君を飲み込む」
「このペンダントについて何か知ってるんですか?」
「……君はそのペンダントについて何も知らないの?」
質問を質問で返されフィニティは黙り込んでしまう。
「その沈黙からして何も知らないんだ……。そのペンダントはディアルガとその血をひく者の力を増幅する物だ。
君が何処でそれを手に入れたかは知らないけど持っていれば君は神の戦いに巻き込まれる事になる」
「神が復活するんですか!? 信じられない!」
フィニティが驚いた顔でウズキを見る。ウズキは冗談を言ってるようにはとても見えなかった。
「そう遠くない未来にそうなるね。神の封印は確実に弱まってるから。
ましてそのペンダントで力を増幅すればもっと早い段階でも可能になるはず。
そうなればライガじゃなくてもペンダントを狙うものは確実に現れる。
神の戦いに巻き込まれたくなければそのペンダントをボクに渡せ」
「あなたは何者ですか!? なぜこんな事を知ってるんですか!?」
フィニティの質問にウズキはしばらく考え口を開く。
「……ボクは……ディアルガの血をひく者だ。信じて欲しい」
「仮にそうだとしてこのペンダントをどうするつもりですか?」
ウズキはフィニティから目を逸らさないで答えを言う。
「神を再び封印する。正確には神を……ディアルガを一度復活させたのちパルキアを封印してもらい再び眠りについてもらう。
おそらく……ディアルガの復活よりもパルキアの復活の方が難しいと思うから……。
なにしろパルキアは封印された場所は解らない。なら、先に復活するのはディアルガだろう。
仮にパルキアが先に復活したとしてもディアルガは過去パルキアに勝利し眠りについている。
どちらにしろ協力してもらう事は十分可能だと思う」
ウズキの答えを聞いてフィニティは考える。
もしウズキにペンダントを渡しウズキの言ってる事が嘘だとしたら……。
嘘でないにしろ世界が滅ぶ可能性だってある。
「……私はあなたを信用できません。これは私の一族が守ってきた物。
神の戦いに巻き込めるんならそれも本望です。私もディアルガ様の血をひく者ですから」
「……なるほど。知っててそのペンダントを持ってたんだ。ならボクは何も言わない。
話はこれで終わり。グレンを助けに行こう。彼も長くは持たないでしょ」
ウズキの言葉にフィニティは「はい」と笑顔で返事をして二匹は木陰から飛び出した。
グレンはライガの攻撃を避けるのが精一杯でいた。
しかし時間稼ぎが目的のためそれでも十分役にはたっていた。
「まだ話は終わらないの? 僕だけじゃ無理だよ……」
「ハハハ。チビ勢いが良かったのは最初だけか?」
ライガ余裕で寧ろグレンで遊んでいた。
攻撃をわざと外しグレンの恐怖に歪んだ顔を見て楽しんでいる。
「ん? 後の二匹も出てきたか? ならこのチビの使い方は……」
ウズキとフィニティが出てきたのを確認しライガはグレンに近づき前足でグレンを押さえ付ける。
「……う」
「苦しいかチビ? まあ楽にしてやっても良いんだがお前には利用する価値があるんでな。
大人しくしてないと殺しちゃうぞ~」
グレンを押さえ付けたライガは楽しそうにする。明らかに他者を痛めつけ喜んでいる。
その様子にウズキとフィニティは出てきたが動けないでいた。
「お利口さんだね~。なら、さっさとペンダントを渡しな。
渡さないとこのチビがどうなるか解るよな? まあ少しだけ時間をやろう……」
ライガはグレンを押さえ付けてる前足に力を込める。
グレンは苦しそうに顔を苦痛で歪めた。
「ウズキさんどうしますか?」
「迂闊には動けない。ボク等が動くよりライガがグレンを殺すほうが速い……」
ウズキとフィニティはライガに聞こえないように話し合う。
しかしグレンを助け、ペンダントを渡さない良い方法が思い浮かばないでいた。
「残念時間切れだ。こいつには死んでもらってそれからペンダントを頂こう。
あばよチビ。怨むんならペンダントを渡さなかったお譲ちゃんを怨みな」
ライガはどんどん前足に力を込めていく。
恐らく二匹が近づけば一気に力を込めグレンは死ぬだろう。
二匹にはこの光景をただ見ていることしか出来なかった。
グレンは恐怖で顔が青ざめている。
脚をバタつかせる必死の抵抗もライガの力の前では無力だった。
殺される。それはグレンも含め三匹とも解っていた。
しかしペンダントを渡してしまえば世界の混乱は免れない。
ウズキとフィニティが目を瞑ったその時、突然ライガの悲鳴が聞こえてきた。
二匹は何があったのか確認するため目を開けた。
そこには信じられない光景が写っていた。
そう、さっきまで無力だったグレンがライガを吹き飛ばしていた。
さっきのグレンと違うところは目が真紅になり瞳が漆黒になっていた。
「……あのディアルガのような目は? まさかグレンが覚醒した?」
ウズキはグレンの異変の正体に気付いてるようで驚いている。
「何だ!? 一体どうなってるんだ!?」
「この力は何? これは僕の力?」
吹き飛ばされたライガだけでなくグレン自身もその力に驚いている。
ライガは接近戦は危険と判断しグレンに向かって放電する。
グレンは今の力に過信していたのか避けようとしなかった。
しかし、ライガの放った電撃がグレンに当たる事は無かった。
電撃はグレンの前で消滅する。まるで始めから存在しなかったように……。
「っち! 何だこいつ!? 今日は勘弁してやる! この借りは絶対返してやるからな!」
危険な空気を感じたライガは負け台詞を言って逃げていった。
ライガがさった後グレンは糸の切れた操り人形の様に倒れた。
倒れたグレンをフィニティが看病していた。
ウズキは何やら深刻な顔をして何かを考えている。
「……そのウズキさん。グレンさんは大丈夫なのでしょうか?」
「それに関しては大丈夫。疲れて眠っただけだから。でもグレンが覚醒するなんて……」
「良かった……。でも覚醒って一体何ですか?」
「グレンが起きたら説明する」
その言葉を聞いてフィニティは再びグレンの看病を続ける。
「運命の輪が動き始めた。それにグレンもフィニティも巻き込まれた。ごめん……」
「それはウズキさんもそうでしょう? 謝る事はありませんよ。ですがグレンさんもディアルガ様の子孫だったなんて……」
「ボクは気付いてたけどね。だから君達には冷たく接した。巻き込みたくなかったから。でも君達はボクに話しかけてきた」
ウズキは二匹の能力について解っていた。だからこそあえて冷たくした。
フィニティもウズキの優しさは解っているつもりだった。
フィニティにはウズキがまだ何かを隠しているような気がしたがあえて質問しなかった。
それは時が来ればウズキが教えてくれるだろうと信じていたから。
ライガは悔しそうに座り込んでいた。その目線は空を眺めていた。
グレンに負けたことよりペンダントが手に入らなかった事の方が悔しいらしい。
「はぁ~。今日は姉さんの誕生日なのに……。あのペンダントは惜しかったな……。
今から別の物を探すってのもな。プレゼントどうすっかな……」
ライガは溜息をついて今からプレゼントを手に入れる手段を考える。
が、フィニティの持っていたペンダント以上の物が見つかるはずも無いと諦めていた。
すると一匹の雌のアブソルがライガに近づく。年齢は若干アブソルの方が高く見える。
「お前らしくないな。溜息なんてついてどうした?」
「姉さん? いや、何でもないよ……」
このアブソルこそがウズキの言っていた窃盗組のもう一匹サイだった。
サイはライガの隣に座る。
「お前は考えてる事がすぐ顔に出るな……。プレゼントは要らないって言ったろう」
「うっ! そんなに俺って解り易いかな?」
「ふふ。何年お前の姉をしてると思ってるんだ? 血は繋がってなくてもお前は私の弟だ」
「はは。姉さんには敵わないな」
二匹は楽しそうに笑いあった。傍から見ればこの二匹が悪党には見えないだろう。
いや二匹とも好きで窃盗をしているわけでは無かった。親に捨てられた二匹はこうすることでしか生きていけなかったのだ。
そう意味ではこの二匹も恐れられてはいても弱者なのかもしれない。他者から奪う事でしか生きられないのだから……。
「でもプレゼントは俺からの気持ちの問題だから……」
「そうか。じゃあ私が寝るまでに頼むぞ。頑張れよライガ」
サイは立ち上がりライガから離れていく。
ライガはサイがいなくなったのを確認しまた溜息をついてしまう。
「はぁ~。姉さんにはあんな事言っちゃたけど……どうしよう……。
何か形の残る物が良いんだよな……。いっそ自分で作るか?
それもなぁ。俺の頭じゃ良い考えなんて浮かばないよ……」
サイは溜息はつくライガを物陰に隠れて見ていた。
ライガも完全に油断していたのかサイの存在には気付いていなかった。
「考えなくても平気だよ……。私は最初から考えていたんだからな……」
サイはライガを見て何かを企む嫌らしい笑みを浮かべていた。
結局ライガはプレゼントが見つからず夜になってしまった。
もうすぐ姉さんが寝る時間。手ぶらで行くのは悔しいが報告に行く。
そういう意味ではサイの思惑通りになった。
「何か良い物は見つかったのか?」
「う! それが……その……見つからなくて……」
サイの鋭い質問にライガが落ち込む。完全に図星をつかれていた。
サイは落ち込んでいるライガに近づく。
「気にするなと言ったろう……。私が貰うものは決めてあったからな……」
「姉さん? どういう意味?」
「こういう意味だ」
サイはライガを押し倒し唇を奪う。それだけでは終わらず舌をライガに侵入させる。
ライガはサイの突然の行動に目を見開き、驚きを隠せないでいた。
「ね、姉さん!? 俺達姉弟だよ!? その……こんなの可笑しいよ……」
「昼に血は繋がってないと言ったろう。私はお前が……好きだ……。
お前が欲しい……。ライガは私の事が嫌いか? こんな姉は嫌か?」
姉の突然の告白。確かに血は繋がってはいない。ライガは一匹で泣いてる所をサイに拾われただけの存在。ライガは必死に己の答えを探していた。
確かに姉は好きだ。しかしそれは姉弟の話である。姉は今姉弟の話を抜きに異性として好きと言ってきた。
でも姉弟の壁を壊してしまえば今までのような関係も壊れてしまうんじゃないか。ライガにはそんな不安もあった。
「私にはお前しかいないんだ……。ライガ……頼む」
サイは涙目になりライガを見つめる。ライガはまだ結論を出せないでいた。
確かにサイは綺麗で魅力的だ。姉が今まで異性に迫られてるのは何度も見ていた。
でもそのたびに姉は断わっていた。「好きな雄がいるから」と言って。
その好きな雄がまさか自分だなんて思ってもいなかった。
「これが姉さんへの恩返しになるのならば……」
「私はお前の体が欲しいわけじゃない……。嫌なら無理とは言わない……」
サイは後ろを向いてしまう。ライガにはその背中がいつもより小さく感じた。
よく見れば地面に水滴が落ち水溜りを作っている。姉は泣いている……。
この姿を見てライガは決心がついた。自分は姉が異性として好きだと。
「……姉さん。俺も姉さんの事が……好きだ……。愛してる……サ、サイ」
「……ライガ……。別に無理して呼び捨てじゃなくて姉さんでも構わない」
ライガはいつもと変わらない姉に安心した。
そして今度はライガからサイにキスをし舌を入れる。
「じゃあ、もう一度言わせて欲しい。愛してる姉さん……」
「私は幸せも者だ……。こんな素敵なプレゼントが貰えるんだからな……」
二匹は見つめ合い互いの愛を確認しあう。
もう二匹に姉弟と壁を壊す不安は無かった。
ライガは前足をサイの腹から秘所へなぞっていく。
サイは顔を赤らめるが声には出さない。それは姉であるサイの意地だった。
「……聞きたいな。姉さんの喘ぎ声……」
「ふ……だったら……もっと私を気持ちよくさせるんだな……」
ライガはサイの耳元で囁く。
サイは口ではそう言っても体は快楽を得ていた。
ライガは何度もサイの秘所を焦らすようになぞる。
段々とサイも我慢できなくなって声を出し始めた。
「あぁ! やればできるじゃないか……」
「姉さんの声が聞きたいからね」
ライガがサイの秘所をなぞるたびサイが声をあげる。
姉のこんな声を聞けるのは自分一人だけと考えるとライガは更に興奮した。
「……私ばかりじゃ不公平だろう。お前にもしてやろう」
「そ、そんな……お、俺のを……姉さんが!?」
ライガ姉の言葉に一瞬動きが止まった。
サイはその隙を見のがさず前足をライガの股間へと伸ばす。
サイの声を聞いて興奮して大きくなったモノがサイに触られる事で更に大きくなる。
「あぁっ!」
「お。まだ大きくなるのか……。こいつは楽しみだ……」
サイは妖艶な笑みを浮かべ前足でライガのモノを扱き出す。
触れられただけで感じたモノは扱かれる事でさらに大きく、固くなる。
ライガは快楽を我慢できず体を震わせていた。
「そ、そんなにされたら……」
「何だ……もう出すのか? そうか……なら」
ライガの言葉を聞いてサイは扱くのをやめ、顔をモノの前を持っていく。
姉の行動にライガは疑問を持ちながらも姉を見ていた。
するとサイはライガのモノを咥え始めた。
「ねねね、姉さん!? そ、そんな事したら汚いよ!」
サイはライガに視線で「そんな事はない」とでも言うように見つめ返す。
ライガ先ほどと比べ物にならない快楽で口から涎を垂らしている。
サイの舌がライガのモノを這うたびにライガはビクビクと体を震わす。
扱かれて限界に近づいてため咥えられたらひとたまりもない。
「姉さん、俺!! も、もう!!!」
ライガはサイの口の中に熱い精液を流し込んだ。
サイは嫌がる素振りなど微塵も見せず寧ろ嬉しそうにライガの精液を飲みほす。
「……姉さん……ごめん……俺のなんか飲ませちゃって……」
「なんだそんな事か……。中々良い味だったぞライガ」
サイが笑うとライガは顔を真っ赤にする。
「まだいけるだろう。今度は私も気持ち良くさせてくれ……」
サイはライガに腰を突き出す。ライガはサイの腰に前足を置き立ち上がる。
ライガのモノとサイの秘所が一直線に並ぶ。
二匹は無言で頷き合いライガはゆっくりとサイに挿入していく。
「んあぁぁ!! ライガァァ!!」
サイは迫る快楽に耐え切れず悲鳴のような声を上げる。
ライガは目を瞑り快楽をグッと堪える。
ライガのモノが半分くらい入った所で何か壁のようなものにぶつかる。
「……姉さん……まさか……」
「……そのまさかだ……。お前のタメに取って置いたんだぞ……」
「姉さん……良いんだね……」
「ああ。ライガ来い……」
ライガはサイと最終確認を取り、少しづつ奥に進む。
サイは苦痛で顔を歪める。ライガはサイの顔を見て挿入を止める。
「ダメだ! 止めるな! 私は大丈夫だ……」
「でも! ……いや、解ったよ……」
サイは涙目になってライガに懇願した。
ライガは姉の言葉を信じ一気に挿入する。
「ああぁぁあ!!!!」
サイの純潔を突き破りライガのモノは最奥に到達する。
サイはその事を確認するとライガに微笑んだ。
「姉さん……全部入ったよ……」
「……そうだな。動いても良いぞ……」
ライガは姉の言葉を聞き前後に腰を動かし始める。
ライガは自らのモノを包み込む熱い肉壁に意識を失いそうになる。
それはサイも同じでライガが動くたび甘美の声を上げた。
ライガの腰が動くたび愛液が地面へと落ち水溜りを作っていく。
二匹とも絶頂の時は近い。
「……姉さん! 俺……また!!」
「いいぞ!! このまま……中に……。抜くなよ……」
ライガはサイの言葉に頷き、一気に加速しラストスパートをかける。
「ああああぁあ!!! ライガのが……ライガのがぁぁぁ!!!」
「ねぇえええさぁぁぁぁああんんんん!!!!」
サイは急の加速に耐えられずそのまま絶頂を迎えた。
サイが絶頂を迎えた事により秘所がライガのモノを更に締め付ける。
ライガも締め付けに耐えられず二度目の絶頂を迎えた。
ライガの精液はサイの中へ注ぎ込まれた。
ライガはモノを抜きそのまま倒れこむ。
サイの秘所から愛液、精液そして純潔の証の混ざった液体が溢れ出す。
サイもライガの隣に倒れこんだ。
「……ハァハァ。最高のプレゼントだったぞライガ」
「姉さん……誕生日おめでとう」
二匹は抱き合いキスをして眠りに落ちていった。
グレンは夢を見ていた……。
二匹のロコン……誰かも解らない……。
でも知ってるような気がする……。
一匹のロコンが思いつめた顔をして崖の前に立っていた。
そのロコンの体毛は美しい金色だった。年齢は十六歳前後である。
しかし、美しい体毛とは裏腹に全身は殴られたような痣が沢山あった。
ロコンの目からは涙が溢れていた。
「ひっく。何で……皆……私を苛めるの?」
理由は解っていた……。自分は皆と違う……。
誰かに会うたびに苛められた……。それは金の体毛だから……。
それだけだった……。それだけで十分だった……。
「私は誰にも必要とされさい……。親だって私を苛める……。
生きてる理由なんてない……。私が死んでも誰も悲しまないから……」
ロコンは一歩前に踏み出し崖から飛び降りようとする。
すると一匹の朱色の毛のロコンがのしかかってきた。
朱色のロコンはウズキと瓜二つでとても他人には見えなかった。
「お嬢さん、少し気が早いんじゃない?」
「離して! 私は楽になりたいの! 私なんて死んだほう良いに決まってます!」
「まぁまぁ……そんな寂しい事言わないでボクとどっか遊びに行かない?
この近くでも中々良い所あるんだよね。ねぇ行こうよ」
のしかかったロコンの目的はどうやらナンパのようだった。
金毛のロコンは振りほどこうと激しく暴れまわる。
「私はお嬢さんじゃない! これでも雄なんです! だからどこかにいってください!」
「そんなの知ってるよ……。逆にボクは雌なんだよね。ずっと君を見てた……」
金毛のロコン雌のロコンの言葉に困惑して暴れるのをやめる。
雌のロコンは暴れなくなったのを確認し金毛のロコンから離れた。
「ボクはウヅキ。君は……クウコだよね? クゥって呼んでも良いかな?」
「……はい、クウコです……。別に好きなように呼んでください……。
金毛でもオカマでも構いませんから……」
ウヅキと名乗ったロコンはクゥの素っ気無い返答に苦笑いを浮かべた。
「ところでさっきの答え……聞いてないんだけど?」
「私と一緒にいるとあなたも苛められますよ……。それでも良いんですか?」
「寧ろ望むところだ。君といられるなら安い代価でしょ」
クゥはクスクスと笑った。それはクゥが他人に見せた初めての笑顔だった。
ウヅキはクゥの笑顔を見て安心しているようだった。
「やっと笑ってくれたね。……笑ったの初めてでしょ?」
「え? 私……笑ったんですか?」
クゥは自分が笑った事にさえ気付いていなかった。
ウヅキもクゥの笑顔を見て微笑む。
「そうだ! これクゥにプレゼント。受け取ってよ」
ウヅキはそう言って一つの木の実を取り出す。
その木の実はオボンの実だった。
「これは? 私は見たこと無いんですけど……」
「それはオボンの実っていって傷に傷を治す効果があるから食べるといいよ」
ウヅキはオボンの実について簡単に説明しクゥに手渡す。
クゥはオボンの実を受け取り観察し、見たことの無い木の実に困惑する。
「オボンの実ってあの高価な木の実ですか!? そんな物私は受け取れません!」
「まぁ確かにこの辺じゃ珍しいけど……高価ってほどでは……無いと思うけど?
それにクゥの為に手に入れてきたから受け取ってもらわないとボクが困る」
クゥはウヅキの言葉を聞き素直にオボンのみを受け取り食べ始めた。
ウヅキはクゥの顔を見つめていた。
クゥはウヅキに見られている事を恥ずかしがりながら食べる。
「あの、私何か変な食べ方でもしましたか?」
「いやそんな事はないよ。乙女の食事は絵になるなって思っただけ」
「だから私は雄です。乙女ではないですよ」
クゥはウヅキの言葉に頬を膨らませ怒る。
ウヅキは笑いながらクゥに謝っていた。
グレンが覚醒し眠りについてから既に三日が経ってしまった。
フィニティはグレン事を看病し続けていた。
「あれから三日……。グレンさんは本当に大丈夫なのでしょうか?」
「神の力を使ったんだ……。疲労は相当きただろうね……。今のボク等は見守る事しかできない……」
「あの力は私達も使えるのですか?」
「条件はあるけど可能だ……」
ウズキはフィニティの言葉に首を縦に振る。
フィニティは答えを聞いて不安になったのか下を向いた。
「お前達また会ったな! チビは寝てるか……。なら、こないだの借りはきっちり返してやるぜ」
「フ。弟が世話になったそうだな。私もお礼がしたい」
ふいに二匹のポケモンがフィニティとウズキに話しかけてきた。
友好的とは言い難い言葉にフィニティはパニックに陥る。
ウズキは表情をまったく変えず、寧ろ見下していた。
「今度は二匹がかりでボク等の相手をするの? 大人気ないねぇ」
「ほざけ! ガキだからって容赦しないぜ!」
「私達に喧嘩を売ったこと……後悔させてやろう!」
ウズキはだるそうに体を起こし戦闘態勢をとった。
ライガとサイもつられて戦闘態勢をとる。
「フィニティは足手纏いだからグレンと一緒に隠れてて……」
フィニティはウズキの言葉を素直に聞きグレンを動かし安全な場所に隠れる。
ウズキはフィニティが隠れたのを確認し電光石火でライガに近づく。
二匹の能力はロコンを遥かに上回る。まず一匹を戦闘不能にする作戦のようだ。
ウズキはライガに密着し大文字を放つ。
ライガの体に灼熱の大の文字が全身を焦がす。
「手応えが薄い……。やっぱり密着しても無理か……」
「……当然だな。ライガがそんな簡単に倒れる訳無いだろう」
サイの余裕の笑みに答えるかのようにライガが立ち上がる。
ライガは大したダメージをおっていない……。しかしウズキの顔に焦りの色はなかった。
ライガは全身に電気を纏いウズキに突っ込んでいく。
ウズキは地面を蹴りジャンプしてライガの攻撃を避けた。
「姉さん任せた!」
「フフ。こちらの読み通りか……」
サイはウズキがジャンプするの読んでいてかまいたちを放っていた。
ウズキは避けきれず全身を切り付けられ地面に落下する。
「……なるほど……。チームワークはバッチリか……。
ならボクも本気でいかせてもらおうか……」
ウズキはそう言って目を瞑る。
ライガはチャンスとばかりにウズキに接近した。
「様子が可笑しい……。離れろライガ!」
サイの忠告は遅くライガは激しい衝撃を受け吹っ飛んだ。
再び目を開けたウズキの目は紅く黒い瞳をしていた。
「能力が使えるのはグレンだけじゃないんだよね……。
ボクも神の力……使えるんだよ」
「神の力? 馬鹿なそんなものあるはずが無い……。
この世に神なんて……いるはずが……」
サイはウズキの言葉に驚きを隠しきれない。
ライガは吹き飛ばされた衝撃で気を失っている。
「まぁ驚くのは無理は無いよね……。圧倒させてもらうよ!」
ウズキがサイに接近する。
電光石火を使ったわけでもないのに一瞬で間合いを詰める。
サイが気付いたときにはウズキは目の前にいた。
ウズキはそのまま尻尾でサイを薙ぎ払う。
サイは数メートル離れた木に叩きつけられる。
「……なんて力だ……」
「大人しく逃げた方が良いんじゃい?」
ウズキが近くで倒れていたライガを前足で無造作に踏みつける。
「ライガを置いて逃げれば助かるでしょ?」
「貴様! ライガを離せ!」
サイはウズキを睨みつけ叫ぶ。
ウズキは困ったように首を振る。
そして前足に力を込めていく。
「どっちの立場が上か……解ってる?」
「……私の弱みを握って……何が望みだ……」
「もうボク等を襲わないでくれればそれで良いんだよ」
「解った……従おう……」
サイは素直に戦闘態勢を解いた。
ウズキはそれを確認しライガをサイの方に放り投げる。
サイはライガを受け止め優しく地面に降ろした。
ウズキは戦闘態勢を解かずにサイの様子をじっと見ていた。
ウズキはサイがライガを降ろし看病を始めたのを見て戦闘態勢を解いた。
目の色もいつも通りに戻っている。
フィニティもその事を確認し木の影から出てきた。
グレンも目を覚ましたようだが状況が分かっていないのかキョロキョロと辺りを見渡す。
「正直……サイ、君は窃盗組みに向いてないよ。優しすぎる……」
「私達だって好きでこんな事をしてる訳じゃない! お前に何が分かる!」
「何も分からないね。ボクは君達の事情なんて知らない」
サイはウズキ向かって叫んだ。その瞳からは涙が溢れていた。
ウズキはサイの言葉を聞かず話を続ける。
「確かに大体の事情は予想はできるよ……。でもやって良い事と悪い事はあるだろう?」
「親に捨てられた私たちが生きていくには……こうするしかなかったんだ……」
「……理由は……アブソルだからですか? アブソルが災いをもたらすって信じる者はまだ多いですから……」
ウヅキはサイを説得しようとする。
サイはフィニティも質問に無言で首を縦に振った。
「だから私の名前は災(サイ)って付けられた……。親に愛されるような名前じゃない事くらい……分かってた
神がいるのなら救ってほしかった……」
「神は万能じゃないよ……。パルキアはディアルガに敗北し封印された……。
ディアルガはなぜ封印されたと思う?」
ウズキの質問にサイだけでなくフィニティも考える。
確かにそうだ。ディアルガはなぜ封印されたのだろう……。
戦いの勝利者なら封印される理由はないはずだった。
いくら考えても答えは出ない。
「その……答えは何なんですか?」
フィニティの言葉にウズキはしばらく沈黙していたが口を開く。
「ディアルガは禁忌を犯した。
だから創造主の命令によって封印された……
神だって過ちを犯すんだ……。完璧な者なんていないよ……」
「神が……過ちを……。そうかなら私達が過ちを犯すのは当然……か。
世話になったな……。脚を洗う決心がついた……。ありがとう。
今度会えたならば笑って話せれば良いな。これでお別れだ」
サイはライガを背中に乗せ走り去っていった。
その背中は前よりも一段と逞しく見えた。
「……禁忌ですか。神がそのような愚行を?」
フィニティは二匹が去ったのを確認し話の続きをする
ウズキはフィニティの質問に対し呆れた顔をした。
「愚行? 違うディアルガは生物としては正常だよ。
ただ恋をして子を育んだ。それだけだよ。
つまりボク達はその創造主に言わせれば異分子ってわけ。
神の力を不用意に使う危険なポケモンだと」
「え~と僕等は存在すら許されないポケモンってこと?」
グレンの質問にウズキは首を縦に振る。
その事を聞いたグレンとフィニティは顔が真青になった。
「でもボク等は生きている……。その事を誰にも否定させない。
否定される理由は無いはずだ……」
「では私達の相手は神……ということになるのですか?
ディアルガ様やパルキア様と戦うのですか?」
「……ディアルガはともかくパルキアは十分にありえる……」
ウズキの言葉にグレンは考えていた。
なぜ彼女はここまでディアルガを信じようとするのだう……。
彼女はディアルガについてもっと重要な事を知っているのではないか……。
「ねえ、なんでウズキさんはディアルガと戦う事を想定としないの?
確かに僕等はディアルガの血をひいてるよ……。でもそれだけが理由なんて思えないんだけど?」
「……ボクが怪しい。ボクが黒幕って言いたい回りくどい言い方だねグレン。
ボクが信用できないならそれでも良い。ボクは一匹でも神と決着をつける……」
グレンとフィニティの睨み合いにフィニティはどうして良いか分からず慌てふためく。
「短い付き合いだったけど楽しかったよ。次に会ったらフィニティ……君のペンダントをボクが頂く。
……そうだ、最後に覚醒についてだけ教えておいてあげる。約束だからね。
覚醒は本人の能力を数倍に跳ね上げ時を操る能力が使用できる。しかし使った場合は体力を著しく消耗する諸刃の剣。
使うんなら慎重にね。もっとも自分の意思で君達が発動できるかどうかだけどね……。さよなら……」
ウズキはグレンとフィニティに背中を向けは走り去っていく。
もう辺りは暗くなっていてウズキの姿はすぐに見えなくなる。
グレンはその背中を睨み続けていた。
フィニティは走り去っていくウズキを止められなかった事を後悔していた。
確かに彼女は不自然なまでにディアルガについて知っていた。
その意見にはグレンに賛成できる。でも言いすぎだ。
「グレンさん。少し言いすぎじゃありませんか……」
「ウズキさんは僕等に言えない事があるから……信頼してないから去ったんでしょ!」
フィニティはグレンの言葉に考える。
そうかもしれない。信頼していたなら全て教えてくれたはず……。
しかし彼女は何も言わずに去った。それは信頼されていなかった証ではないか。
「彼女は僕等を利用しようとだけだったんだよ! そうやって皆僕を……。
僕は道具なんかじゃない! 道具なんかじゃ……」
グレンは頭を抱え込みうずくまる。
その目からは涙が溢れていた。
「僕は生きている! 僕は道具じゃない!」
フィニティは泣き続けるグレンをそっと抱きしめる。
辛い事を思い出しているのだろう……。
過去に何があったかは聞かない。ここで聞く必要はない。
今、彼に必要なのは優しさだ。
グレンはフィニティの行動に目を丸くした。
そしてその目から涙は消える。
「私達は道具じゃありません……。だから神に勝たなければなりません……。
私達の存在理由を神に見せなければなりません……。
そのためにはウズキさんの力は必要なんです……。
だからグレンさんも私と一緒にきてくれますか?」
「……フィニティさん?」
フィニティはグレンを抱きしめたまま話を続ける。
グレンはフィニティの話を静かに聞いていた。
「私の一族はディアルガ様の血をひいてることを誇りにしてきました。
そのため周りの目は冷ややかなものでした。あいつ等は神を名乗り神を愚弄したって……。
そして一族全員……殺されたんです……。私に残ったのはこのペンダントだけでした……。
ディアルガ様の血をひくことを誇りにし……その性で全てを失いました……。
私もあなたと同じなんです……。ずっと一匹で……一匹にも見られず……。
だからグレンさんとウズキさんに会えたとき嬉しかったんです。
仲間に出会えたんだって……。でもそれは私の一方的な片思いだったんです。
そうでしょ? ウズキさんは私たちを置いて……行ってしまったんですから……」
今度はフィニティが泣き出してしまう。
グレンは先ほどのフィニティのように優しく抱きかかえた。
彼女も自分と同じなんだ……。ずっと一匹で生きてきたんだ……。誰かを必要としていたんだ……。
慰めの言葉を言おうと口は開いたとたん何かに口を塞がれた。
それはフィニティの唇だった……。ただ唇が触れただけ……
グレンはその事を……フィニティの行動を理解できなかった。
「……グレンさん。私はずるい雌かもしれません……。
今だけでも私を愛してくれませか? 今誰かの愛が欲しいんです……
そうじゃないと私……不安に押し潰されそうで……怖いんです。
本当は名前……無限って意味じゃないんです。逆に終焉を意味してるんです……。
誰にも必要とされないまま死んだらどうしようってずっと考えてて……。
だからあなたが私をどう思っていようと構いません。
……私を抱いてください……」
グレンはフィニティの言葉の意味を理解しようとする。
抱きしめる――かかえて包み込む。これではないだろう。これなら今もやっている。
ならばフィニティの言う抱くとは……性行為の事だろうか……。
いや、こんな純粋な少女がそんなこと言うはずが……。
しかしグレンの期待はフィニティの言葉が完全に打ち砕く。
「その……意味が解らないって顔してるので直球で言います……。
わ、私と性行為をしてください!」
フィニティは顔を真っ赤にし恥ずかしそうにする。
グレンは口を開けたまま硬直した。
そして思考をフル回転させる。
ここまましても良いのか? それは向こうが了承している。問題ない。
親になんか言われないのか? フィニティの一族は殺されている。僕の親も事故で亡くなってる。問題ない。
僕はフィニティが好きか? 顔も性格も良い。正直、好みの少女だ。問題ない。
他にも脳がいくつかの質問を提示するが答えは全て――問題ない。
グレンも顔を紅くしてフィニティに答える。
「その、僕で……僕なんかで……良いのなら喜んで」
それで彼女の心が救われるのなら僕は彼女を受け入れよう……。
フィニティは笑顔でもう一度キスをした。
コメント頂けると嬉しいです。