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春、来たる

/春、来たる

こんにちは。今ここに南十字、回帰せん。
まことにお待たせいたしました。ん?待ってる人が居ない?? うん、いないね(´・ω・`)
さて、絵筆と共にこちらの筆も執り直し、初心に帰り短編を一つリハビリがてら書きました。
そのため非常に拙い文を載せることお許しください。 あ、拙い絵も載りますね^p^シヌ
それでははじまりはじまり~♪


南十字


!!注意!!
ハハコモリでファイアローに挑むほど(性的に)危険な描写があります。気をつけましょうね。
サザンドラでマリルリに挑むほど(技術的に)危険な絵があります。気をつけましょうね。
以前のような文が書けなくなっております。「誰だお前」ってなるかもしれません。

コジョ扉.jpg







 コトリと木と陶器のぶつかる音が狭い室内に響いた。木目がそのまま覗く木のテーブルの上には、暖かそうな湯気が立ち上る紅茶の淹れられたカップが置かれている。 そのテーブルの前に座っているのはコジョンド。僕が淹れた紅茶の入ったカップの取っ手をそっとつかむと口元へと運んでいった。一口飲むのを見て、僕は思わず聞いた。
「味はどう?」
 コジョンドは少し顔をあげて僕の顔を見るが、目が合ってからそう立たないうちに目を逸らして紅茶を飲み干した。 毎回、この反応にひやひやさせられながらも飲んでくれている。途中で飲むのをやめられるのもなんとなく後味悪いし。 最初のうちは一口飲んで残りは残して帰ってしまっていたから、自身の向上もなんとなくわかる。



「今日はこの辺で帰る」
 クッキーを一つ口の中に放り込んで素っ気なくそういった。気の利いた話の一つや二つすら満足にできない僕じゃ、こうしてほとんど無言のお茶しかできない。コジョンドが帰る時間も、日が傾き始める頃である。これ以上引き止めるのも、なんとなくあらぬ噂が立ちそうで困りものだとは思うのだけれども。
「それじゃあ、また今度ね」
 僕は立ち上がると木のドアを開けてそう言い、コジョンドを見送る。外に出ると、僕の方をちらりと見てから木の上に飛び移ってあっという間に姿を消してしまった。そういえば、コジョンドの家を僕は知らないな、なんて考えながら寒い冬の空気を締め出すかのようにドアを閉めた。
 菓子類を片付けて、コジョンドの使っていた空のカップを手に取る。コジョンドが口を付けていたカップ、などと考えると得体のしれない恥ずかしさといくらかの罪悪感が湧いてくる。それを振り切るように冷たい水の張った流しにカップを入れる。首を振るとさっさとカップを洗おうと思い直し、自分の分のカップも一緒に入れると水の中に自分の手を入れた。 水の冷たさと一緒に、何となくさびしい、そんな気持ちが心に芽生えていた。


 早めに寝る支度を始める僕。基本的にコジョンドが帰ってからすることと言っても何も思いつかない。気分が悪いわけでもないし、僕にこれといった趣味がないのもあって今こうして布団を敷いている。
 コジョンドとは、会ってそこまで経っているわけでもない。どんな出会い方をしたか、実は覚えていなかったりもする。覚えていないのだから、奇跡的で運命的な出合い方をしたわけでもない、そう思う。ただいつだったか、僕が家に招いてお話をし始めたのが、今も続いているというわけだと思う。
 僕自身、実はコジョンドのことは気になっている。結構な頻度で僕の家に訪れるため、他のポケモンともこうしているというのも何分考えにくかった。 一度友人に相談したことがあるのだけれど、僕に気があるのかどうか少し気になって話を持ちかけてみたところ、童貞の雄がよくやる勘違い、だと笑われてしまった。イロイロ経験豊富な彼の言うことだから間違ってはいないのかもしれないけれど、本人に確認しようにもあの態度じゃあ……カウンターパンチもらった時の僕の心が心配だよ。

 いろいろ考えても仕方ないよね。 そう心の中でまとめると僕はそっと鏡の前に立った。














 トントンと軽い音を聴きながら木々の枝を駆けてゆく。冷たい風が頬を掠める。 夕焼けの綺麗な陽を背中に受けながら、次の枝次の枝へと飛び移っていく。気分は非常によかった。イリュージョンで他のポケモンを化かさない不思議で素直で奥手なゾロアーク。そいつの家から帰るときはここ最近非常に気分がいい。
 今日飲んだ紅茶、また腕を上げたな。ぺろりと口元を舐める。クッキーの味しか残っていなかったが、甘さ控えめのいい紅茶だったことは記憶に残っている。最初の頃は酷く渋かったり妙に甘かったりと散々なものを飲まされた。もう出すのはやめてくれと言おうかと思ったくらいだったが、言わなくて正解だったな。

 私の家は少し遠い。この森を越え、切り立った岩場にできた自然の洞窟を一応のねぐらにしている。こうして家を空けることが多ければ、空き巣に家を荒らされてはかなわない。必要最低限の、価値があるのかどうかも怪しい物しか家には置かれていない。 木のテーブルがあって、綿の入ったクッションがあって、綺麗な白いカップがあって、それを入れる棚がある。ゾロアークの家にはいつも新しいものがあった。それが少し羨ましく、そんなものに囲まれている彼もまた羨ましい。
 ……気が付けばゾロアークの方に話や思考がずれる。全く、ここ最近の私は少し変だ。 と言っても、ゾロアークの家に通っているだけでもそこそこおかしいことくらいは自覚していた。特に込み入った話もせず、ただ一緒に居るだけ。たまに2匹で森を散歩したり、買い物に行くくらいでその時も特に会話はない。 でも、一緒に居ると落ち着くのだった。

 私の知人、ヘルガーは1週間前そりゃあ恋だと私を茶化しに来たが多分違う。そもそもドキドキもしなければ、ゾロアークが隣にいなければ落ち着かなくて仕方がないわけでもない。なにやら以前迷えるブースターの恋を成就させた、恋のスペシャリストだとか自称していたが、全くあてにもならないやつだ。むしゃくしゃしたのでとび膝蹴りをくらわせておいた。
 恋愛対象にしてはゾロアークはいささか淡白すぎる。直球で言って雄らしくない。岩場を歩きつつそう思った。 雌らしいというわけでもない、見間違えようのない雄なのだが。だが、どうも余所に行った子供のようにおとなしい。彼氏にするぐらいなら弟にした方がよっぽどそれらしく思えてくるほどだった。


 寝るための藁を少し手直しする。あまりゾロアークのことばかり考えていても仕方がない。彼氏でなければ弟でもない、いうなればただの友人。そこまでいろいろ考えたところでこの関係が崩れはしないだろうし、崩したくはない。こうして日に日においしくなる紅茶をいただきに行く関係がちょうどいい。 甘すぎず渋くなく、そんな彼の淹れる紅茶のような関係で私はいい。そう心の中でまとめると少し早目の就寝についた。
 陽はすでに落ち、綺麗な星達が私を空から見ていた。




 私の朝はそこそこ早い。寝つきがよく、寝起きも苦労したことがあまりない。この時期だと日が昇り始めの頃に目を覚ます。外はまだ薄暗い中でも、もう起きているポケモンはいた。今日は何をしようか、もう決めてあった。ゾロアークの家には午後を過ぎてから行くのが習慣になっていた。午前中から押しかけるほど私も暇じゃない。 森とは別方向の湖のほとりへと向かう。まだ約束の時間には少し早かったが、こうして座っていても時間がもったいない。散歩もかねて私は腰を上げた。














 僕はどうも朝が苦手。カーテンの隙間から差し込んでくる日の光が目に入るだけでも痛い。この時期布団から出たくないのは、誰だって共感してくれるものだと思っている。あともう少し、あともう少しだなんて思っているとあっという間に時間が過ぎてゆく。そして慌てて起き出すのも僕の習慣になりかけていた。いけないなぁ、もう少し規則正しく生活を送らないとね。 寝癖を軽く撫でて直しつつ洗面台の前までふらふら歩いて行く。鏡には眠たそうな目をした自分がうつっていた。

 眠気を飛ばすというのは結構難しいことで、朝ごはんだか昼ごはんだかよくわからない食事を寝ぼけ眼をこすりながら食した。前日作っておいた残り物を引っ張り出しただけのご飯。前日の残りがなければ、諦めて食事を抜きたくなるぐらいには活気というか生気が抜けている。
 欠伸を一つするとテーブルの前で伸びをする。クッションを枕にして寝たい衝動に駆られるけど、そんなことしたら夕方まで眠りこける自信がある。コジョンドにその間に来られたらゴミを見るような目で見られる自信もある。実際ズボラだとは思っているけれどね、でも少しはシャキっとしていないと。

 徐々にコジョンドが来るであろう時間が迫ってくる。もう眠気は残ってない。そこまで寝ぼすけじゃないよ僕も。悪タイプはどうにも夜型寄りな傾向があるらしい。それでも夜は普通に眠れるのはなんでだろう。なんか損している気分になる。
 そろそろお菓子の準備とかをしておこう。コジョンドが家を訪れるようになってからはお菓子も一人で食べたりすることがなくなった。一緒に食べている方が、少し得している気がする。相変わらず会話は弾まないんだけど。 もうそろそろお菓子がなくなりそうだった。コジョンドに好評だったクッキーが今日の分くらいしかない。寝ぼけてないで買いに行っていればよかったな。


 コンコンと木の扉がノックされる。お昼過ぎのこの時間、この家を訪ねるポケモンなんて、コジョンド以外いない。 別に友達が少ないとかそういうわけじゃない、と思うんだけど……。ともかく、この時間は決まってコジョンドがやってくるのだ。
「はーい」
 せかせかと立ち上がって木の扉を引く。肌寒い外気が家の中へと流れ込み、一瞬腕がぞわっとする。 しかし、今日はそんなこともあまり気にはならなかった。コジョンドを見ると、見慣れない空色のマフラーをしているのだった。すっかり気を取られていたが、コジョンドがつかつかと家の中へ早く入れろと言わんばかりに歩いてくる。マフラーのことには触れず外気と一緒にドアを閉めた。

「マフラー、似合ってるね」
「…どうも」
 先ほどまで僕が座っていたクッションを横にずらすと他のクッションに腰を落ち着けるコジョンド。褒めたつもりなんだけど、素っ気ない答えが返ってくるもので。そんなやり取りに慣れちゃってる僕もまた意気地がないもので。マフラーを外して近くに畳む姿を見ながらそう思った。
 それ以上の会話には発展せず紅茶を淹れる準備だけする。コジョンドの好きな味に近づけられるように。 そして、高望みも甚だしいけれど、コジョンドの好きな自分に近づけるように。今日もコジョンドと一緒にお茶をする。進展はないけれど、焦っても仕方がない。もしかしたら雄として見られてないんじゃないかと言う説が僕の中で最有力なのも雄としてどうなんだろう。 コジョンドに好意を持っているかと聞かれたら小一時間悩み続ける自信がある。僕だってよくわかってない。そもそも女の子と一緒に居る時間がコジョンドといる時間以外に思い浮かばない。  でも、好かれていなくとも嫌われるのは避けたかった。


 今日も紅茶は好評。飲み干してくれれば好評なのだと思ってなければ紅茶を淹れ続ける意志力がもたない。 美人なのに、表情が人形のように変わらない。眉をひそめたり目を瞑ったりはするのだけれど、笑ってるところっていうのは見せてもらったことがない。笑い話は……したことあるんだけど、思い出したくない。
 無愛想。これほどピッタリ合う言葉はなさそうってくらい。 それでも、小さな仕草ひとつひとつからコジョンドの気持ちは拾える、と思う。ほら、今だってチョコクッキーかプレーンクッキーかで迷って手が少し止まって……。なんか冷たい目で見られたから自分の紅茶に視線を落とした。



 コジョンドが帰る時間になった。陽が傾き始めたその時間。 いつものように木々に飛び移るコジョンドを見送ってから家の中へ入る。お菓子にカップ。他に片づけるものはさほどないけれど、それを棚に戻したり流しに持っていったり。 この時間が、僕にとっては少し寂しかった。コジョンドは物静かだけど、いなくなると家が静まり返ったようにひっそりとする。 僕しかいないのだから、当然かもしれないけれど。それでも隣に、目の前に、誰かがいるっていうことはそれだけで安心できるものなのかもしれない。

 そんな寂しさを紛らわす方法。本当はこんなことしてちゃいけないんだけど、僕に与えられた能力をこういう形で使い始めてしまうと歯止めが利かなくなる。 僕はいつものように鏡の前に立った。鏡に映るゾロアークの目をじっと見ると目を瞑った。













 しまった。
 私としたことが、うっかりしていた。岩場にもうすぐ到着と言うところで、首がどうも寒い理由に気が付いた。今日仕入れてもらったばかりの綺麗な空色のマフラーをゾロアークの家に置いてきてしまった。
 この位置だったら引き返してもさほど時間はかからない。今からでも取りに行こうと進行方向を真逆にとった。 日が暮れたからの訪問、と言ってもついさっきまでいたのだが。夕日に照らされるこの木の上を渡るのは初めてかもしれなかった。夜にゾロアークの家に押しかけたところで、他のポケモンにあらぬ誤解を受けるだけ。そんなのはごめんだった。
 でも、今の最優先はマフラーだった。結構気に入っていたのだ。似合っていると言われるだけで、お気に入りの一つに入れてしまうなんてどうかしていると思ったが。それでも言われれば言われただけ嬉しいものだ。あのゾロアークが嘘と笑い話が絶望的なまでに苦手なのはよく知っている。悪タイプらしくないゾロアークだ。


 少し急ぎ目で引き返す。夜目が利くが夜道はあまり好きじゃない。自業自得とはいえ、溜息をつきたくなってくる気分だった。 ゾロアークの家が見えてくる。木の下の草地に飛び降りると受け身を取る。体に付いた葉っぱをさっさと払うと明かりのついているゾロアークの家に近づく。 …が、そこで足を止めた。何者かが家の中にいる。ゾロアークにしてはやけに明るい色の毛並みで、細い体。忍び足でカーテンが半開きになっている窓に近寄ってみる。この時間に泥棒と言うのも考えにくかったが、ゾロアークがイリュージョンしている方がもっと考えにくかった。

「な……」
 小さく声が漏れた。ゾロアークのイメージががらっと変わりかけた。鏡の前にいたのは、コジョンドだった。しかし、そこら辺のコジョンドじゃない。背丈に肉付き、尻尾の分かれ目までそっくりな、"私"が鏡の前に立っていた。
 いったい何をしているのだゾロアークは。妙な苛立ちと、変な羞恥に苛まれた。自分の体をまじまじと見られてはたまったものじゃない。ましてや、雄が雌に化けていると思うと、心の中でゾロアークにひどい罵倒を浴びせかける自分もいた。すぐにやめさせるべく向かうべきだ。そんな選択肢に頷くと移動しようとしたその時、思わず私はぎょっとしてしまった。
 下半身のイリュージョンか解けかけていた。腰の辺りにふさふさな黒い体毛がのぞく。これでもう、ゾロアークではないという塵のような小さな可能性が吹き飛んだのだが、それだけではなかった。なんだろう、あの赤っぽいような、ピンクっぽいような棒は。しばらく思考が停止する。答えは分かりきっている。しかし、いざそれを思い浮かべてしまうとかぁっと顔が、体が熱くなる。 でも、今更目を逸らせなかった。なぜだろう。本能?好奇心?私には分からなかった。でも、その雄の象徴が、魔性の力を持っているように見えたのは間違いなかった。きゅんっと下腹部が切なく疼く。
 私は抗うことができなかった。ゾロアークが私の姿を借りて、その象徴を扱いていた。私の手が、ゾロアークのそれを艶めかしく、慣れた手つきで撫で上げる。その光景が私を見えない力で釘づけにしていた。顔は艶やかに、赤く頬を染めている。その顔を見ながら、普段の私が見せることのないその顔を見ながらゾロアークは自分を慰めていた。
 単調なその作業、しかし最後まで私は見届けてしまった。雄の象徴から欲望の液体が鏡を汚していくのを。 そして、私も彼と同じなのだと、しっとりと濡れたそこに手を当て、思ってしまった。 今更、彼をとがめるだなんておこがましい。自分を棚の上にあげてまでゾロアークを叱責できるほど、私は自分勝手になりたくなかった。

 そして、私は今さらになって気が付いた。 彼は雄だったんだということに。私の弟でもないし、借りてきた子供でもない。私は雌で、彼は雄だった。少なくとも、ゾロアークは私のことを雌だと思っていたのだろう。 私は彼を一体どう思っていただろう。彼を勝手に素直な子供のように思いこんで、距離を置きすぎていたんじゃないか。ゾロアークの好意を、ただ受け取っていただけで私は何かしてやっていたのだろうか。
 急に後悔と、謝りたい気持ちで胸が締め付けられる。自分はなんて都合のいいことばかりをしてきていたのだろう。もうゾロアークを責める自分はどこにもいなかった。確かについさっきまでの光景はショックだったが、それ以上に自己嫌悪が今の私を支配していた。

 ふらふらとその場から離れ、逃げるようにして自身の洞窟へ戻った。息が上がっている。なんでこんなに全力疾走したのだろう。やり場のない思いが勝手に足を動かしたのだろうか? そのまま倒れるように藁に身を預ける。  でも、心臓がバクバク鳴っていて、寝つけない。頭の中で叱責や羞恥や、彼のことがグルグル回っていて落ち着かない。そっと目を開ける。三日月と、腹が立つほど綺麗な星空が私を見下ろしていた。












 珍しくコジョンドは今日、我が家を訪れなかった。起きて朝食兼お昼ご飯を食べている最中マフラーに気が付いて、来たら渡そうと思っていたのだけど。コジョンドが我が家に来ないのはそう珍しいことではなかった。そりゃあ、コジョンドだって暇じゃないと思う。僕には僕の生活があるように、コジョンドにもコジョンドの私生活がある。でも、忘れ物に気が付いていないのか、せめて取りに寄るぐらいはしてもいいような気がするけれど…。
 せっかく買ってきたクッキーを棚に入れる。仕方がないかな、なんて考えつつもどこか寂しい。 もう夕日が沈みかける。茜色の光が窓から差し込んできて、少しまぶしかった。小さくため息をつくと、クッションに腰掛けた。一人で暇をつぶせるものなんて、この家にはあいにく何もなかった。







 気が付けばクッションにもたれかかったまま寝てしまっていた。変な恰好のまま寝付いていたせいか腰が痛い。体も冷えていて、くしゃみを一つした。伸びをするとずるずると這うようにベッドの近くまで行き、さっさと布団にもぐる。風邪を引いては仕方がない。
 布団は冷たかった。ひんやりとする。窓から覗く星空がとても綺麗だった。 布団が温まるまで少しもそもそと動きつつ、明日はコジョンド来てくれるかな、なんて考えながら僕は目を瞑った。さっきまで寝ていたせいか、寝つきは早かった。二度寝は、得意技だったねそう言えば……。

 翌日、目覚めはそこそこ良かった。カーテンを閉めていなかったせいで、顔に朝日が降り注いだのも原因だと思う。久しぶりの寝起きからシャキッとしている僕だったが、あいにく午前中は特にやることと言っても何もない。 一応僕も、木の実を育てたりと仕事はしてる。でも、季節っていう物があって、冬は当然育ちが悪い。というか、枯れちゃう。だから、冬は嫌でも引き籠りのようになってしまう。誰か冬眠だなんて言って笑ったポケモンもいたっけ。間違えてない気もするんだけど。
 少し時間もあるし、外の空気を吸ってきてもいいかもしれない。起き上がってみても腰は痛くなかったし、大きな伸びをする。これと言った防寒具を僕は持ってない。首と背中は妙に温かいけれどおなかが冷える。種族柄仕方がないのだけど、おなかだけ温める防寒具、なんてものがあるなら見てみたい。ホルードみたいな腹巻は流石に着けたくないかな…。
 外に出て、寒い空気に身を震わせる。やっぱり家の中に閉じこもってた方がいいかな、なんてことを考えつつ、冬の間はお休みしている仕事場、畑の方へと足を運ぶのだった。













「……」
 木の扉をノックする。コンコンと綺麗な音が家の中に響くが、その家の中からは何の音も返ってこない。もうこうして何度目のノックをしただろう。私の心の中で焦燥感が募る。結局、丸一日苦しい思いをし続けていた。早く私の伝えるべきことを吐き出さなければどうかしてしまいそうなほど私は行き詰っていたのだった。 そして、早く伝えなければ、こんな私など置いて彼が行ってしまうのではないか。そんな悪いことばかりが私の頭の中であふれだす。心臓がバクバクと鳴っていた。 私は落ち着いていることができずに家の前をうろうろと歩き回った。



「あ…………」
「ん? ど、どうしたのこんな時間に?」
 ぽかーんとした顔でゾロアークが帰ってきたのは、太陽が私の真上にやってくるころだった。だが、こんなに焦っている私に向かってゾロアークはにっこりと笑って見せたのだ。




 結局、早めの訪問のような扱いになってしまった。マフラーを返されると待たせてしまったことを謝られた。普段なら、謝られて当然くらいに図々しいことを考えていた私だったが、今の私には、逆に早くに来て申し訳ないと思える心が芽生え始めていた。それは自分が丸くなっていくようにも、自分が弱くなっていくようにも感じた。
 ゾロアークは変わってはいなかった。新品のクッキーを取り出すと紅茶を淹れにキッチンに立っている。 むしろ、ここ数日で私が変わりすぎただけなのか。どっちでもいい。ゾロアークがいて、こんなに安心できるなんて、少し前の自分では考えすらしないことだった。 当たり前を、当たり前のように享受しすぎていたんだ。

 何も話さないまま、幾らかの時が過ぎた。ゾロアークは紅茶のはいったカップを起用に持ち上げて飲んでいる。私は、手が付けられないでいた。 ゾロアークがカップを持ちながら、私に向かって口を開いた。
「……どうしたの? 具合、悪い?」
「……いや」
 私は短くそう答えることしかできなかった。しかし、話は切りださなければいけなかった。何のためにここまで来たのか、何のために一日中苦しい中頭を整理してきたのか、それを思い出すと後には引けなかった。 私は、返答に困っているゾロアークを前に言葉を紡ぎ始めた。最初から、順番に。

「……ゾロアーク」
「ん……? なに?」
 彼の声は優しかった。私の声とは大違いだった。

「私は、謝らなければならないことがある」
 彼は黙った。私の今まで見せたことのない雰囲気に戸惑っているのか。 私だって戸惑っている。先ほどから止まらなかった。声の震えが、心臓の早鐘が。
「……2日前、私は夜にここに戻った」
「2日前……」
「そこで、鏡の前にいるゾロアークを見た」
「……!」
 そこまで聞いてゾロアークの体がびくっと揺れる。動揺してか、中身のはいったままのカップが手から滑り落ちた。木のテーブルにカップが衝突する派手な音と、まだ湯気の立つ紅茶がこぼれゾロアークの上げる情けない声が部屋に響いた。私は身を乗り出すと声をかけた。
「ちょっと……平気?」
「あ……う、うん、ごめんね……」

 そこで、二匹の間に沈黙が生まれた。話を続けるべきは自分だろうと言い聞かせて、私は濡れた足を拭くゾロアークに話しかけた。
「……拭きながら聞いてていい。……私は、そのことについて責める気はない」
「……なんで?」
 驚き、というよりも純粋に疑問に思っているのか不思議そうな、でも怯えた眼をして私を見ていた。そんな目で見てほしくはなかったが、最後まで伝えてみれば変わる。そう信じていた。
「謝らなくちゃならないのは、そこ。 ……私は、ゾロアークを雄として見れていなかった」
「……雄」
「そう。 ……ゾロアークは私を雌として、見ていた?」
「…………」
 そこでゾロアークは答えに詰まった。言いにくかったのだろう。認めてしまえば、私がゾロアークを貶す理由ができてしまう。とんでもない変態だと。 だが、私にはそんな気は毛頭に無かった。

「私は、2日前の夜、初めてゾロアークを雄として見れた」
「それって……」
「つまりだ!」
 ゾロアークに言われるのはやはり恥ずかしかった。私はそこで言葉を遮ると面と向かってゾロアークに言った。
「……ゾロアークが、よければだが……。 ……雄と雌の関係に、なれないか?」
「……!」
 ゾロアークが目を丸くしてこちらを見る。私は直視することができずにすぐに顔を逸らしてしまったが、言いたいことは伝えることができた。
「それは……番ってことで……いい、かな?」
「…………」
 恐る恐る私に訊き返す。こういう変なところで石橋を叩きまくるのがゾロアークだ。……もっとも、私に対して変な勘違いをしないように努めている表れだとも思うが。 私は小さく頷いた。その拍子に、私は何か温かい物に包まれた。

「よかった、よかった……。僕、ずっとこうしたくって……」
 こんなことでぐずつくんじゃない。雄のくせに……。私まで、ちょっと視界がぼやけてきたじゃないか。 私の想いも伝えるように、私もしっかりとゾロアークを抱き返した。いろいろ理屈をこねまわした告白だったと思う。いろいろな遠回りに、勘違いを重ねてここまで来たと思う。でも、そんなことはちっとも重要じゃなかった。 なぜなら、私たちには"これから"があるからだった。













 今日はいろいろなことがあった。僕はティーカップを洗いながらそう思った。手が震えていた、寒さで震えているわけじゃない。 ……僕の後ろでクッションに座ってくつろいでいるコジョンド、僕と番になると言った彼女がそこにいる。そんな現実にまだ動揺している。 これが夢だなんて言われたら信じてしまいそうなほど、それほど突然で驚嘆せざるを得なかったことであった。
 もうすでに陽は落ちかけていたけれど、コジョンドはずっとそこに座っていた。……実は、今の今まで会話らしい会話はしていない。向かい合わせじゃなくて、隣同士に座っていたこと以外は普段と変わっていなかった。こういう物静かなところも不安に思えていたこともあったのだけれど、コジョンドに感情がないわけじゃないって言うのは、最初から知ってた。コジョンドの尻尾がいつもより揺れていたのも、コジョンドの表情の一つなんだと僕は確信している。



 陽は完全に落ちてしまった。部屋の灯りが僕たちを照らし出す。ああ、夜にコジョンドと一緒に居るなんて、変に顔が赤くなってたりしてないか心配になってくる。ともかく、このまま一泊していくのだろうと考えた僕は寝床の話を持ちかけた。
「えっと…ベッド一つしかないんだけど。 ……僕が床で寝ようか?」
「……ベッドが一つあるなら、そこに私も入ればいいだろう」
「えっ……」
 ……正直、淡い期待はあった。だって雄だもん、仕方がないじゃないか。 でも、まさか本当にそうなってしまうと、嬉しさよりも動揺が大きかった。 コジョンドの訝しげな目線が僕を捉える。断るのも、勇気とか我慢とかいろいろ要るし……お言葉に甘えてしまおうという自分に流されてしまった。
「コジョンドが、それでいいなら……そうしよっか」
「……うん」
 コジョンドにしては珍しく口籠りながらの返答だった。いつもは黙ってるかはっきり言うかのどっちかなのに、なんか新鮮な気分だった。 この時コジョンドも緊張してたんだって気が付くのは、もう少し後になってからだったのだけど。


 就寝の時間になった。それでもいつもより少し遅めだったんだけどね。定時にいつも通りに布団に潜り込むなんて、こんな状況で出来るわけがなかった。なかなか踏ん切りがつかずに隣のコジョンドをちらちら見ながらクッションに座っていた。 だって、好きな子と一緒に一匹用のベッドで寝るなんて。しかも、番にまでなるってことになると……。 許してほしい。雄はこういう時、破廉恥な方向に想像が働いてしまう物だと思う。もしかしたらとか、かもしれないとか。そんな単語ばかり頭に浮かんでくる。
 でも、ずっと起きているわけにはいかない。そんな考えが僕を後押しして、なるべく何も考えずに寝ることにしたのだった。コジョンドももう寝るつもりなのか、先にベッドに潜り込んでいる。いくらコジョンドがすらっとした綺麗な体型だとしても、狭いことには変わりがなかった。僕がその場で戸惑っている間に、視線が交わってしまう。とりあえず、部屋の明かりを消さないとどうしようもない。
 しかし、ベッドに背をむけて灯りを消しに行こうとした途端、右手をしっかりとつかまれてしまう。……薄明るい程度の灯り、寝ること自体に支障はないけれど、寝ることができるのかが一番大きな問題だった。

 灯りをそのままにベッドの中へと潜る。なんというか、布団の中ってこんなにあたたかい物だったっけ。体の芯からぽかぽかとした気分になる。コジョンドは手を握ったままだった。僕と目は合わせてはくれなかったものの、向き合ってベッドで横になるだけでもすでに僕はのぼせてしまいそうだった。 僕は少しだけコジョンドに近寄った。お互いの膝が軽くぶつかり合うほどまで近づいた。近づくたびに胸の高鳴りは無視できないほどまでに大きく、抑えがたいものになった。
 細い腰に腕を回す。今度は正面から、コジョンドを抱きたかった。腕を引くと、コジョンドと僕の間隔はどんどん狭まってゆく。ぴとっと、おなか同士が触れ合って、体同士が密着する。顔もお互い近いところにあった。僕が少し俯くと、コジョンドは僕の鼻の頭に軽い口付をしてくれた。くすぐったいような、キスされた場所がじんじんと熱くなるような、不思議な感覚だった。

 しなやかな体に、ふわふわとした体毛。僕がイリュージョンで写し取っていたあれはコジョンドとは似てもつかない別物だったことに気が付く。こうしてじかに触れてみると、なんて柔らかくてあたたかい体なのだろうと驚いてしまう。密着すると、彼女の胸から鼓動が伝わってくる。僕と同じリズムを刻む鼓動、それは僕と同じ高鳴りをコジョンドも感じているのだという確信へとつながった。
 先ほどのキス、やっぱり口同士でしたいと思ってしまう。コジョンドの柔らかそうな唇を見てそう思わざるを得なかった。お互い近い位置にある顔、僕はそっとコジョンドの顔に自分の顔を近づける。コジョンドも察してくれたのか、黙って目を閉じてくれる。少し体がこわばってコジョンドを強く抱きしめてしまう。でも、ここまで来たら引き返せない。僕も目を閉じ顔を近づけていく。


 互いの唇が触れあう。ふっくらとした唇だった。僕を受け止めてくれる唇に思わず感嘆の声が上がるのを堪える程だった。唇同士を押し付けるようなキスから、少し浮かして舌を絡める深いキスまではじめてしまった。お互いの唾液が混じり、お互いの歯を舐めあい舌が絡みつく。頭が沸騰してしまったのかと思えるほど顔が熱く、思考は容易く溶かされていった。
 理性がよみがえったのは、僕の雄としての象徴が主張を始めたころだった。密着するほど強く抱き合っていた僕に、それを悟らせずにいることなんてできなかった。コジョンドの太ももに僕のモノの先端が触れてしまう。ゾクッと冷や汗が噴き出しそうなほど背筋が冷えたけど、コジョンドは何も言わずに抱きしめ返し、キスを続けてくれていた。
 柔らかい彼女の毛がつんつんと敏感な肉棒を刺激してくる。最初感じていたこそばゆいような気持ちも今はひとつひとつが快感に変わっていた。

 長い長い接吻を終えた。僕らの理性は蕩け切っていた。相手を求めるのに邪魔な感情は一片たりとも残っていなかった。コジョンドが下半身をくねらせる。その度に僕の下腹部に電流のような快楽が走った。僕は思わず体を震わせた。でも、次に来た感覚は、しっとりとした柔らかい何かに僕のが包まれるような感覚だった。
 思わず下を見て、どくんと大きく脈打った。コジョンドの秘所に僕のが触れているように見えた。それだけじゃなく、ふとももがそれをきゅっと挟み込む感覚が僕を襲った。思わずコジョンドの顔をちらっと見てしまう。ふいっと顔をそむけるコジョンド。恥ずかしいのか目を合わせようとしてくれない。 いや、僕もコジョンドから視線を送られたら目を逸らしてしまうかもしれない。なんだかんだ言って僕はこういうことは初めてで、手慣れているわけじゃないのだから。

 この恥ずかしい格好のまま、しばらく僕たちは固まっていた。抱き付いているんだから、下手に動けないって言うのもあるんだけれど、それよりもお互いの熱くなったその場所が触れ合っている状況に、これからどうすればいいのか分からなくなっているのかもしれなかった。 実際、僕がそうだった。そりゃあ、イメージトレーニングくらいは結構していた。でも、現実はだいぶ違っていて。勝手に息は上がるし、心臓は破裂しそうなほど早く鼓動を刻んでいて、求めていたコジョンドですらまともに見ていられなかった。
 ……そうして固まってから数分。僕らにとっては数十分にも感じたその時間、先に動いたのは僕だった。といっても、少し腰を引いただけだった。でも、それがお互いに火を付けて行くなんて思ってもしなかった。 ずっと密着させっぱなしだったその場所を動かすと、布団の中から少し粘着質な水音が聞こえてきた。
「あっ……!」
 コジョンドの漏らした声に思わず顔を上げる。見れば顔を真っ赤にして目をきゅっと瞑っている。ふるふると小さく体を震わせているところを見ると、コジョンドの別の一面を見れたような気がして嬉しくなるのと同時に、その愛くるしさに目が眩むような感覚を覚えた。 腰を引いたままコジョンドの頬を撫でて僕は聞いた。
「その……触ってもいい?」
「……」
 ぴくっと僕の言葉を聞いてコジョンドの耳が揺れる。口元に手を当てて戸惑うように瞳が揺れる。少しだけ目が合うとコジョンドがこくりと小さく頷く。僕は「ありがと」と囁くように声をかけて、腰に回していた手を正面からコジョンドの下腹部へと近づける。爪で傷つけないようにゆっくり、湿り気を帯びた筋に手を這わせる。
 初めて触れる雌の大切な場所、やわらかくもそこそこの弾力があって、辺りをなぞっているだけでも不思議な気分になってくる。そして僕の耳に届くのはコジョンドの口から漏れる嬌声。声を上げてしまうのを堪えているのか、息が漏れるような音がしきりに聞こえる。
 すりすりと割れ目に沿って手を這わせ始める。ぬるぬると溢れるコジョンドの愛液をその場所に広げるように塗りたくった。布団の中から普通にくちゅっという淫靡な水音が聞こえるようになってきた。こんなにも雌は濡れるものなのかな、なんて思いつつも僕と一緒だからこんなになってくれてたら嬉しいなぁ、と僕は希望的観測をしているわけで。どっちかは結局分からなかったのだけれども。
 更に愛撫を続ける。正直言ってやめたくはなかった。いちいちコジョンドの反応がかわいくて、もっと見たくなってしまう。彼女の顔がここまで変化したのを見るのは、今まででもなかったことであった。 大洪水、と喩えるのに十分なほどの水気が僕たちの秘部を包み込むんでいた。僕はその肉唇を左右に広げてみる。
「やっ…あっ、ちょっと……!」
 途端に体を揺らして黄色い声を上げるコジョンド。制止するようにコジョンドの手が僕の腕に触れる。でも、無理やり止めようとしているような様子が見えなかったし、何回か広げては閉じてを繰り返してみる。その度にコジョンドの口から呻き声のような音が漏れる。どうやら、この動作がなかなかの刺激になっているようで、コジョンドの熟れた果実からいやらしい果汁がとめどなく溢れて、僕の手をびしょびしょにしていくのが分かった。

「……あ、ばかっ…」
 さっきまで弄っていた手をするりと抜くと、自分の目の前に持ってきて観察している僕に恥ずかしそうな声音を洩らすコジョンド。見るなと言わんばかりに僕の手を布団の中げ押し戻す。
 その様子がおかしくって僕が軽く笑ってみせると、コジョンドはそれを見て、「ふんっ」と言いながら顔をそむけてしまった。紅く染まっている頬を見て、恥ずかしいだけなのかな、と思いコジョンドの頬に軽く唇を押し当てる。



 僕はそっと、自分の竿を後ろへ引くと密着した体を少しずつ離していく。コジョンドの瞳がチラリとこちらを見た。何をしたいのかわかっていないようで、少しだけ不安そうな色が見える。そんな不安を拭うのと同時に、僕たちはさらに深く交わっていくことになる。
 コジョンドの肩を少し押す横向き寝のような恰好でこちらを見ていたコジョンドが、少し戸惑いながらも仰向けになる。その上に、体重を両腕両足で支えながらのしかかる一歩手前のような恰好でコジョンドに乗る。 ようやく、何をしたいのかわかったようで、瞳を揺らすコジョンド。不安なのは僕も同じだったけれど……でも、雌は痛いとも聞くし、無理に求めてはいけないような気がした。
「……平気、かな?」
「…………うん」
 やっぱり瞳が揺れている。気丈なコジョンドでも、繋がるのは怖いのかもしれない。それでも、首肯してくれたコジョンドを僕は信じたかった。布団はどけず、下腹部を近づけていく。コジョンドの花弁であろう場所に先端が触れる。自分の手で竿を握ると、その花びらに割って入れようとする。
「う……、あれ?」
「んんんぅ……っ」
 コジョンドがもどかしそうな声を上げる。僕ももどかしかった。ぐっと腰を押し付けると割れ目に沿ってつるりとモノが滑ってしまい、蜜壺にはいることなく空振りしてしまう。結果、お互いに変な快感が走るばかりでうまく行かない。 コジョンドがおずおずと布団の中へ手を入れる。何をしているかは見えなかったけれど、コジョンドがこちらをじっと見て小さく頷いたのを見ると、もう一度してほしい、と言うことなのだろう。

「えっ…あぁっ…!?」
 ぐっと腰を入れた途端、ぬるっとモノが温かく湿ったそれに滑り込むように吸い込まれ、包まれた。腰まで電撃が走り、一気に射精感がこみあげてくる。思わず声を堪えることなく漏らしてしまったのも下半身に注力していたからで。今、下手に気を抜いたら、それだけで果ててしまいそうなほどには衝撃的な感覚が僕を襲った。
 コジョンドは目を瞑り、体を震わせて堪えていた。しかし、辛くはなさそうだと、吐息に混ざっている甘い声が物語っていた。 腰に力を入れながら、ゆっくりと肉棒を沈めていく。それだけで水音が響くほどには濡れそぼっている秘所、その膣壁をかき分け進んでいくが、予想していた通りの純潔の証が、僕の侵入を拒む。コジョンドもそれを感じ取ったのか、体を強張らせた。 僕は動きを止めると、コジョンドの顔を覗き込む。うっすらと目を開けたコジョンドから不安の色が混じる瞳が僕を見返した。こういうときはどうすればいいんだったっけ、安心させてあげなきゃ。独りよがりの行為をしたいわけじゃなかった。コジョンドにも、気持ちよくなってほしかった。 僕は唇をそっと近づける。僕なんかで安心できるかわからないけれど、でもこれしか思いつかなかった。すると、コジョンドの方から顔を持ち上げて、僕らの唇は重なり合った。
 キスを始めてから、幾らかの時が経つ。蠢く膣壁を感じ、止めていた腰を少しだけ下へと沈める。僕のモノの先端を刺激していた薄い膜の抵抗が、一気になくなる。
「んっ…! ……んぅ…?」
 キスで口を塞がれていたコジョンドが声を洩らしそうになるけど、それは言葉にはならずに空気だけが僕らの口の間から洩れる。口を離すと、コジョンドの顔を覗き込んで僕は口を開いた。
「平気?」
「あ、うん……。 ……そんなに、痛くはない」
 力んでいた分、拍子抜けしてしまったようにコジョンドはそう答えた。それを聞くと、ほっと僕の体から力が抜けかける。でも、まだまだこれから、コジョンドを気持ちよくしていかないと。そう思ってその場で腰を左右に揺らしてみる。キツめの膣内を広げるように、中をかき回すとコジョンドが艶っぽい声を上げる。その声が魅力的で、扇情的で、さらに求めてしまいたくなる。さらに腰を深めに突きだす。奥まで収めると下半身が、密着する。
 お互いの息が顔にかかるほど顔を近づけながら、交わり続ける。僕の方から腰を動かし始めた。その度に快感がモノを震わせ、腰を揺らす。 ……体力に自信はなかったんだけれど、これが本能なのか腰が勝手に動く。ベッドのスプリングがリズミカルに軋む。その音の感覚もだんだん狭くなりつつあった。
「くぁぁっ……!」
 堪えていた声が口から溢れだす。コジョンドは堪えられていたけれど、吐息には僕の心を融かしてしまいそうな色気が混じっていた。徐々に早くなっていくピストン、僕の限界が近いのか息が浅くなってくる。下半身の感覚も、熱がこもったモノにばかり集中して快楽が一気に僕を追い詰めていく。
 そこから果てるのを我慢するだなんて、僕にはできなかった。止まることのない自分の腰と、波のようにモノに襲い掛かる悦楽に焦りを感じる僕。我慢も虚しく、奥へと肉棒を突っ込むとそこで大きく脈打ち、コジョンドに受け止めてもらいたかった欲望の塊を解き放つ。
「うぁっ…ひやぁぁっ!?」
 歯を食いしばって吐精した僕は、声を出すことができずに荒い息をついていた。コジョンドはあられもない声を出す。その声と同時にモノを包み込んでいたコジョンドの秘部が僕をきゅぅきゅぅと締め付けた。思いもよらない追撃に射精が止まることはなく、白濁液はコジョンドの中を満たしていった。









 熱い。おなかの中に火をつけられたのではないかと思えるほどの熱さだった。体中から汗が噴き出る。口から漏れる息も、炎タイプ顔負けの熱さだと思えた。 だんだん激しくなってきたかと思ったら、急におなかの中に何か熱い物をぶつけられた。その途端、頭が真っ白になって、体が宙に浮くような感覚が私を襲っていた。 何を出されたのかは、私にも何となくわかる。酸素が体中に行きわたってないような気がしながらも、手で自分の腹部をさする。あたたかい。そして、ゾロアークのそれが、脈打って私の中にあるのが分かった。 ついに、ゾロアークとひとつになれた。不安ばっかりだったものの、優しく抱いてくれたり、キスをしてくれたり、彼は優しい彼のままで私と繋がってくれた。そう思うと瞳が潤む。
 お互いの息が少しずつ落ち着いてくる。徐々に心臓も落ち着きを取り戻していたが、体の火照りはそのままだった。何を言うわけでもなく、再び私たちは濃く深いキスをする。ゾロアークが腰を上げ始めたのか、私の中からそれが抜け始める。少し反るような形をしたゾロアークのそれは、抜くときにも私を悶えさせる。おなかの中にあった熱い物が、栓が抜けていくのと同時に外へと向かって流れてゆこうとする。完全に抜けきると、思わず両手でソコを押さえた。シーツが汚れるとか、そういうことを考えてたわけじゃなくて、純粋にもったいないとさえ思えてしまっていた。

 ゾロアークは私の上から退くと隣で仰向けになって寝転がった。肩を揺らして息をする私達。ゾロアークはもう満足してしまったのか、などと思ったが私の火照りは消え失せていなかった。少し視線を下に落とす。結局布団はかけっぱなしでお互いの大切な場所は見えなかったが、ここからでもゾロアークの布団が盛り上がっているのが見て取れた。きっとまだ勢いは衰えてはいないのだろう。私はこっそり自分のソコから片手を離すとゾロアークの方へとこっそり手を伸ばす。こんな状況だし、我慢したり恥ずかしがったり、そんなことをしてもどうしようもないと思った。  後から考えてみれば、とんでもなく思い切ったことをしちゃったものだと、顔を覆いたくなる程の行為だったと気が付くのは言うまでもないと思う。
 ゾロアークの下腹部辺りに手が到達する。落ちないように押さえていた自分の手の先のふさふさを離すとゾロアークのそれを一気につかんだ。びくっと隣でゾロアークが体を跳ね上げたのが見えたが、驚きたいのは私の方だった。
「ちょ、ちょっと……」
 こんなに大きなものが私の中に入っていただなんて、考えられもしなかった。ぬるぬるといやらしく濡れたそれを上から下まで撫で下ろしてみた。 前に見たときはこんなに大きかっただろうかと思わず首を傾げる。ゾロアークの困ったような声は私に届いてはいなかった。
「ねえってば……」
 とんとんと肩を叩かれる。そこでやっとゾロアークに視線を移した。気恥ずかしげに頬を赤く染めた顔がこちらを見ていた。多分に私の顔も赤かったのだろが、この時の私にそれを気に掛けるほどの余裕はなかった。
 ゾロアークは私を呼んだもののそれ以上の言葉を続けることなく目で何かを訴えてきていた。何か、というか、恥ずかしいからやめてほしいとかその辺りなのはあらかた見当もついている。しかし、お互いここで止まれるような雰囲気でもなかった。

 力の抜けたような姿で仰向けになりながらこちらに顔を向けているゾロアーク。私はその視線を感じながらも自分の上体を起こした。その拍子にお互いにかかっていた布団が少し捲れる。まだお互いの腰ほどまでを隠していてはくれているものの、これ以上動くのには勇気が要る。今まで見せていなかった私の場所も、この薄明かりの中ゾロアークに見られてしまうだろうと思うと躊躇わずにはいられなかった。
 ただ、続きをしたいなどと言う劣情が私の中にある、誤魔化しきれないその感情に私は気が付きはじめていた。もうここまでしてしまったのだから、いまさら躊躇う必要もないだろうという言い訳も。
 体を起こしたまま寝転がっているゾロアークに視線を向ける。私たちの視線が混じる中、ゾロアークは緊張した面持ちで私を見ていた。私もきっと似たような顔をしていたのだろう。いつものすまし顔でいられるような状況とは、とても言い難かった。 私はゾロアークに何も言わずに布団を剥ぎ取った。ゾロアークが隣で「わわっ」とか声を漏らしていたが、布団を私たちの足元に畳むようにして置くと私はそのゾロアークの上に乗る。ちょうどゾロアークのへその上のあたりに馬乗りになるような形だった。
 ゾロアークが傍目から見てもほどに狼狽しきっていた。私からのアプローチがそんなにものめずらしいのか、じっとゾロアークの顔を眺めながらそう心の中でつぶやいた。改めて、雄らしい期待の眼差しとか私を下からでもリードしてくれるような気概とか、そういうものを求めてもゾロアークには似合いそうもないと感じる。そこもまたゾロアークらしい。今は私からのそれを楽しもうかと、視線を後ろへと移した。


 相も変わらずそそり立っている。遠くで見たり、手で触ったりはしたもののこうして間近で実物を見てみるとやはり違う。根元は所々ごつごつしたようになりながらも先端に近づくにつれつややかになっている。 ふとゾロアークの顔へ視線を戻すと、ゾロアークも首を持ち上げてある一点を見続けていた。考えることは一緒、それにしても見られるというのはなかなかに恥ずかしいことで、さっさと続けようと自身の腰を上げた。
 とくとくと脈打つゾロアークのそれと私のが触れ合う。いまさらになって、改めてこんなに大きなものを入れることができるのだという事実が不思議でならなかった。先ほど入っていたのだから今回も入るだろうというのは頭でわかっていながらも、腰を下ろすのを躊躇わざるを得なかった。
 時折ゾロアークが少し腰を持ち上げるようにしてそこをつついてくる。彼なりの催促なのだろうか、どうせなら言ってくれた方が踏ん切りがつくという物なのに。私はゾロアークの胸板に両手を置くと息を吸い、そのまま腰を下ろした。ぴったりとそこの真下に捉えていたゾロアークのそれを私の体が飲み込んでいく。尻尾の先から首筋まで背筋を伝いゾクゾクと走る快感を堪え根元まで腰を下ろす。たったこれだけで息が上がってしまう。どくどくと脈打つ自分の鼓動が鮮明に聞こえる、不思議な感覚だった。体中火照りながらも、私の下腹部には私の体温を超えるゾロアークが在るのがはっきり分かった。

 その感触を楽しんでいる時間などなかった。身体の疼きがとっくにピークに達していることに今更気が付いた。1回目の感覚を覚えてしまってから体が雄を欲しているのだろうか、それとも私の心がゾロアークを欲しているのか。後者のような気もするが今はそんなことどうでもいい。この快楽をゾロアークと一緒に、共有したいとそう思えていた。

 「ふっ…ふっ…」と荒い息を続けるゾロアーク。私も口を開けて息をしていないと、酸欠で倒れてしまいそうなほど行為は激しかった。互いを繋ぐ場所から聞こえる粘着質のある音、鼻孔をくすぐる汗と雄のにおい、湿っぽさを帯びた吐息。どれも2度目と言う現実を忘れさせるぐらいに私たちを昂めた。
 腰を上下させるという少しキツい運動だったが、半ば勝手に腰が動いていた。自分の快楽を求めてか。否、今のゾロアークの顔を見たら、頑張って気持ちよくさせたくなってしまうものだ。身体全部を使って好きな相手を楽しませる。私はそれが楽しくて嬉しくてたまらなかった。

 私が喜びに浸っていられたのは、それから少しの間だけであった。不意にゾロアークの両手が私の腰へと伸びてゆく。軽くそこを押さえると、私が腰を下ろすタイミングに合わせてゾロアークから突き上げてきたのだった。 奥を貫かれる感覚に私は思わず声を洩らし、目を白黒させた。思考が止まりかけ、先ほど中に出された時と似たような感覚に襲われる。
 思いもよらない突然の不意討ちに私の身体がぴくぴく跳ねるなか、ゾロアークの2度目の突きが私の最奥を襲った。私の体重分が加わったそれが容赦なく私を責めた。情けのないことに私は、この状況でよがることしかできなかった。

 それから突き上げられるたびに私は、慣れることのないその感覚にどうかしてしまいそうなほどの快楽を感じ続けた。ゾロアークの突きの感覚が狭くなってゆく。その度に私の余裕も消えてゆく。 怖いのか嬉しいのか、私の視界がぼやけてくる。何度も責められ身体が言うことを聞かなくなってしまったのか、膝まで濡れきっていたのが分かった。
「待って……待って…っ」
 蚊の鳴くような声でそんな言葉を発した。ゾロアークに届いたかはその時分からなかった。しかし、彼は着実に私の思考を支配しつつあった。我慢を忘れてしまった私のあられもない声と、ぬちゃぬちゃと響く粘着質のある水音が徐々に意識から遠ざかりつつある中で、切羽詰まった彼の声が聞こえた。
「ごめんっ……もう、イくっ……!」
「ふゎっ、わ、私も…私も…っ…ふあぁっ、あぁぁあぁあぁぁぁっ!!!」
 彼の声で意識を取り戻しかけるも、呂律の回らない私の返答中に彼の熱い液が、私の中で暴れまわった。奥へと打ちつけられるも入りきらず、結合部から大量のそれが私のと混じりあって流れ落ちた。
 その衝撃に、感覚に私は耐えることができず、えび反りに反った身体を痙攣させると、腕の力が抜けてゾロアークの上に倒れ込んだ。彼のふさふさした首周りの毛が、意識を手放す寸前の私を受け止めた。 そのまま、私の視界は暗転し気絶か眠りか分からない暗闇に落ちていった。








 僕は疲労を感じながらも、倒れ込んできたコジョンドを抱える。余韻と一緒に感じる彼女の温もりを感じて僕は目を閉じる。急に襲ってきた睡魔に身を任せて、僕は重い瞼を閉じた。小さくお休み、とつぶやくとコジョンドの耳が少しだけ揺れたような気がした。



























 カーテンの隙間から朝日が僕の顔に降り注ぐ。いつもと変わらない寒空の広がる外の風景。でも僕の家の中はとても暖かかった。 僕の上で寝ていたコジョンドが、ふるふると顔を横に振ると、眠そうな目を開けた。
 しばらく、無言のまま僕らは見つめ合った。照れくささとか気恥ずかしさとか、そういう感情は不思議と湧いてこなかった。

 何も言わずに、僕らはそっと顔を近づけ唇を重ねる。


 朝日に照らされ部屋に映し出される相愛の2匹。 冬の寒さを溶かす、少し早目の春の訪れだった。







あとがキングはひとり!! この俺だァ!!



来いよタイトル。意味なんか捨ててかかってこい!!
→読者の皆様「ヤローブッコロシテヤラアアアアア!!!!」

はい、グダグダでしたすみません。 長編もまだまだ先が長いというのに何という体たらく!!
頑張ります(´・ω・`)

本編では出なかった体位で描いちゃったんでちょっと端っこに

コジョゾロ.jpg






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Last-modified: 2014-08-07 (木) 18:46:59
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