この作品には、官能表現が含まれます。
さらに、自慰表現などが含まれます。
ネタバレ等が嫌だという方はドラッグ非推奨です。
the author狐のうどん
これは、とある日の出来事。
事の始まりは、ある友人の言葉からだった。
「ねぇ、今度一緒に噂の森に行かない?」
噂の森、と言うのも、最近そこで神隠しが起きたらしい。
正直、その件に関してはあまり興味がない。私が被害にあったわけでもなく、知り合いが被害にあったわけでもない。
しかしその一方、目の前の友人は私といく気でいっぱいのようだ。
「それじゃ、明日の朝、学校で待ち合わせね!」
ほら、この通り。いつも私はこいつの用心棒にされる。
しかも、付き合いが長いのは伊達ではない。
こいつは、私が頼み事を断れない
ああ、明日はモンスターボール持ちか……。
母親に出かける趣旨を伝え、動きやすい服装で歩く。
背中には、非常食や懐中電灯、文房具、メモ帳、……etc,etc。
腰には、ベルトとそれに付いているモンスターボール。
勿論、ポケモンは忘れない。
普段入れていないので落ち着かないのか、小刻みに揺れるボール。
この中に入っているのはリオルのティール。意味は、"勝利"だったと思う。
そういえば、まだ私自身の自己紹介がまだだった気がする。
……でも、別にどうでもいいでしょ?私の名前なんて。
ああ、学校が見えてきた。あまり乗り気じゃないのだけれどなぁ……。
「遅いよー!何分待ったと思ってるの!?」
「……十分ぐらい?」
「三十分だよ!」
お前は早く来過ぎなんだ。もう少し落ち着け。
今日のこいつの服装は、ミニスカートに半袖のブラウス。
森に入るというのに、何とも軽装だ。
「さ、行こっ!」
手を引かれ、森へと走った私達。
勿論、足取りが重かったのは言うまでもない。
その森は、かなり木が生い茂った場所だった。
木が日光の邪魔をしているのか、中は真っ暗。正直、こんな所に入る奴の気が知れなかった。
でも、そんな中でもピクニック気分で鼻歌を歌っているのは私の友人。
迷わないように木に目印を付けてるあたり、しっかりしてるんだけど……。
スキップまでしてるあたり、マイペースというか、なんというか……。
「ちょっと、ここで神隠しが起きたんでしょ?そんなに余裕してないで警戒でもしたら?」
「えー?だって、ポケモンの一匹も出てこないんだよ?大丈夫だって!」
一匹も出てこない事に不信感を持ちなさいよ!
こういうの、なんて言うんだっけ……。ああ、『嵐の前の静けさ』だ。
その『嵐』は、もうすでに私達の寸前まで来ていたのかも知れない。
だって、本当に生き物の音がしない。
風も吹いていない。がさがさと、私達が進む音だけ。
……念のため。
ボールのスイッチを押す。出てきたティールは、一瞬でこの不穏な空気を感じたのか、私によじ登ってきた。
「ん?ティール君出したの?」
「念のため。本当は何も起こらないのが一番いいのだけど……」
ちらっと後ろを見る。木。木、だけ。
振り返って前を見る。木。木、だけ。
気になり左右を見る。木。木、だけ。
「ねえ、帰り道って分かる?」
不安になり、聞いて見た。さっきから、木に傷を付けてたから大丈夫、よね?
「勿論!そこの木にだって、目印、が……あれっ?」
見てみると、傷なんて無かった。
ぐるっと見てみるけど、周りの木も見てみるけど、傷なんて無かった。
……おかしい。
訳が分からない。
でも、分かった事がいくつかある。
これは嵐なんかじゃなく、台風。
それと、私達は、帰れなくなったという事だ。
結局、かなりの時間が過ぎた。
食べ物はもしもの非常食を持ってきてたから大丈夫だったけど、とうとう尽きてしまった。
周りは薄暗くなっており、ちょと泣きたい。
皆口数も少なくなっており、ただ歩く音だけが響いていた。
そんな時、私たちの前に、古びた洋館が現れた。
友人に目をやると、向こうもまた、こちらを見ていた。
二人で頷き、意を決して入ることになった。
中は、意外と綺麗だった。まるで、誰かが住んでいるかのように。
その事実が、私たちを安堵させた。
「どなたか、いらっしゃいませんか?」
……返事がない。留守のようだ。
どうしようか……。探すしかないよね?
ここは力を借りよう。生物の気配を感じる力を持ったポケモンがいることだし*1。
「ティール。誰かいないか、探せる?」
「んー……、こっち、かなぁ?」
少し迷った様子を見せたが、何となく感じたようだ。スタスタと走って行った。
ティールの行く方向へついていってみよう。
着いたのは、何もない質素な部屋だった。
…………誰もいないみたいだけど……?
当のティールは、おっかしーなー?というように首をかしげていた。
そしてふと目に入ったのは、大きなパイプだった。
「これ、何に使うんだろうね」
そう言いながら友人は歩く。危ないぞ、言う前にもう近くまで寄っていた。
友人を引きはがそうとついて行く。
と、その時!
私がその近くに寄った途端、謎の白い煙が出てきた!?
慌てて飛び退くも、もう既に大量の煙を吸ったあとだった。
これ、不味いでしょ。などと考えている内にだんだんその煙は部屋に充満し、自分の体も見えないほどになった。
「大丈夫!?どこにいるの!?」
「ここにいるよ!そっちこそ大丈夫!?」
よかった。向こうには何の異常もないみたい。
でも、すぐに異常は起きた。激しい頭痛と感覚の麻痺。
足取りもおぼつかなくなり、床に倒れ込んでしまった。
ああ、意識が……。
わたしがこの計画を立てたのは、ある切っ掛けがあってだ。
わたしを捕獲しようとする人間に失望し、そんな人間に見切りを付けた。
だが、そのような人間と対になるような性格の人間もいることは分かっている。
だからこそ、そのような悪しき人間に人間をやめるように仕組んだ。
至る所にこの世界への入り口を設け、この館へ入るように仕組んだのだ。勿論、悪しき心の者は入れぬようにしてある。
そして、この館に入ったが最後。決して外には出られない。
何とか出る方法を探し、この部屋に入れば、私の妖力のこもった煙が放出され、彼の者は人間をやめる。
……今日も二人、入って来た。
わたしのいた部屋にまっすぐに向かってきたのには焦ったが、見つかることもなく成功した。
だが、なんと、その人間どもは私の思うような悪しき心の持ち主ではなかったのだ。
……兎も角、別の空間へ飛ばさなければ。
まだ、悪しき人間はいるのだ。
この程度でいちいち止めていては、決心も揺るぐ。
早々に、別の空間に移さなければ。
どうなったんだっけ……?
確か、変なお屋敷に入って、誰か居ないか探して、パイプから煙が出てきて……!
そうだ。あの後、意識が朧気になってしまったんだ。
体が重い。気怠い。
誰かが寄ってくる気配がする……。
「ねぇ、起きて」
誰かの声がする。
いつも聞いているようで、全く聞き覚えのない声だ。
「起きて、ご主人」
ご主人?
人違いでもされているのだろうか。
体に何か柔らかい物が当てられる。体が激しく揺すられる。
あ、ちょっと気持ちいいかも……。
閑話休題。
兎も角、目を開けてみよう。
目を開けた私の目に飛び込んできたのは、あの館の壁ではなく森。そして……。
「あっ!やっと起きた!」
やけに大きい、リオルだった。
……。
…………。
………………。
は?
脳内思考停止。なんでリオルが大きいの?なんでこのリオルは私に馴れ馴れしいの?
観察してみよう。そうだ、それがいい。
心の中で謝ってから、観察を始める。
「……」
「……」
お互い無言。
ま、喋る必要も無いし。観察を続けて―――。
こちらを見るそのリオルを見て、心当たりが一匹見つかった。
まさか、と思いながら声を出すと……。
「ねえ、……えっ!?」
自分では普通に言ったつもり。でも、変な声が出た。私の普段の声より数段高い……?
どう考えても、人間の声ではないそれ。
しかし、私が声を出せばその、
少なくとも、目の前のリオルには通じているようだ。
「ね、ねぇ?」
「何?」
「もしかして、ティール?」
そのリオルが取った行動は頭を縦方向に振ること。
ふいに手を引かれ、引っ張られる。
その私の手は、朱かった。朱い毛が生えていた。
……もう、訳が分からない。
ティールに連れられ、着いたのは湖だった。
水が綺麗で、周りには誰の気配もない。
水を覗くように促され、そっと覗く。
そして、理解する。いや、してしまった。
もう既に、薄々気付いていた。
でも、認めたくなくて。自分は、人間。そう思っていたくて。
でも、理解してしまった。
何度見ても同じ。
その水面には、瞳を揺らす一匹のロコンが映っていた。
私は、ポケモンになってしまったようだ。
何故って、そりゃ、あの白い煙でしょ。
アイツと変なパイプに近寄ったから……あっ!
重要なことを忘れてしまっていた。アイツ……ミライは!?
「ティール!ミライは!?」
「あー、うん。落ち着いて、ご主人様。ミライさんは無事だよ。向こうにいる」
ああ、よかった。
あ、でも、ミライもポケモンになってるんじゃ……?
「とりあえず、行こ?多分、待ってると思うから」
そう提案され、重い足取りで動いた。
着いたのは、大きな樹だった。
でも、ミライの姿は見あたらない。ぐるっと回って……?
……いきなり何かが飛び出してきた。茶色い、何かが。
その【何か】は、私に抱きついて一言。
「コイナはロコンになったんだね!私はイーブイになったんだよ!」
~登場人物~
・
・
・
ミライはイーブイに、私はロコンになってしまったわけで。
全員でこれからどうするかを話し合ったところ、全然まとまらない。
「ご主人、これからどうするの?」
「どうって言われても、ねぇ。自力では元に戻る手段がないわけだし」
「えー?私はこのままでもいいけどー?」
「駄目。家族に会えなくなってもいいの?私みたいに親がいないならともかく」
「別にいいもん。あんな親」
「あー、そう言えばあんたの親は碌でなしだったわね」
「そ。だから、こっちの方がいいの」
「でもねぇ。現実的な話をすると、食事とか色々どうすんのよ。そう考えると、戻った方がいいでしょ」
「僕はご主人やミライさんとお話しできるこっちの方がいいけど?」
「そう言われても、ねぇ」
こんな感じだ。ミライが『多数決ー』とか言い出す前に、何か目的を見いださなければ。
と、その時、ミライとティールが同時に口を開いた。
それは、話すという意味ではなく、本当に口を開けるだけ。でも、何をしているかは分かった。
「……二人とも、眠いの?」
「うん……」
「コイナ、今日はもう寝ない?この洞の中だったら静かに眠れそうだよ」
二人がしたのは、欠伸。
ここは常に薄暗いから分からないけど、今はそんな時間なのだろうか。
正直私は全然眠くないのだけれど……。
仕方ない。
「分かった。今日はもう寝よう。明日のことは明日考えよう」
私達は、その樹の洞の中に入ったのだった。
その中は、私達全員が足を広げて寝るには狭かった。
一応、なんとか寝られる程度だろう。
で、全員が寝ようと横になったのだが、その配置が何とも言えなかった。
まず、入り口から見て一番左が私。
真ん中がティールで、右がミライ。
女で男を挟むという、人間だったらあまりしない物だった。
ティールは、確か私達と同じくらいの年齢のはず。寝づらくないのだろうか?
と、取り留めのないことを考えている内に、なんだか眠くなってきた。
今日は、もう、寝よう……。
……。
どうも、ご主人の手持ちのティールです。
とても静かな森に入ったり、ご主人達がポケモンになっちゃったり、その二人に説明をしたり、大変な一日でした。
そうして、やっとゆっくり眠れると思っていた夜。
寝ようと皆で寝転がると、見事に元人間サンドに。
どっちを向いても、牝の匂いがする。
僕だって牡だし、他のトレーナーさんのポケモンと、『そういう話』はしたことがある。
だから、今の僕の状況は大変よろしくないわけで。
ご主人もミライさんも寝ちゃったみたい。僕も眠たい、のだけど……。
僕の下半身の『ソレ』は、すでに大きくなってきてしまっている。
ええい、静まれ、静まれー。
夜とかに、外に抜け出して、一人で『シ』たことはあるけどさ。
さすがに今は不味いでしょ。
冷静に、冷静に、落ち着いて、寝るんだ。じきに収まる。
『コレ』も寝ていれば落ち着くだろう。
寝ろ、寝るんだ……。
翌朝。いや、朝と呼べるのかも分からないような早い時間。
どんな夢を見たのかは覚えてないけど、今僕は極地に陥っている。
下半身に違和感を感じて起きてみると、そこは悲惨だった。
足に白い液体がついている……!
微かに、何とも言えない臭いが漂ってくる。
量も多くて、大量に地面に染みこんでいる……。
ええと、よその子と猥談をしたときに言ってたっけ。夢精、だよね。
これどうしよう。まず、自分の体を洗って、精液が染みこんだ土を外に出して……。
やることがいっぱいだよ……。どうしよう……!?
急いで、まず土を出して、換気をして……。
悪いけど、あの湖で体を洗おう。
湖に着いた僕は、まず足を洗う。
膝にあたる部分も、太ももにあたる部分も、丁寧に洗う。
さて。最後に残ったのは、僕の『ソレ』。
洗っている間に、また大きくなってきていて……。
……これは、一回収まらせよう。そうでもしないと、ご主人を襲いかねない。
改めて、それを見る。
完全に大きくなったそれは、とても卑猥だった。
両手で挟んで、上下に扱く。
「ん……くっ、ふぁ……!」
つい声が出てしまう。
精液が潤滑油になり、とても気持ちいい……!
その棒からは、すでに透明の液体が出ていて、今にも出してしまいそうだ。
一気にスパートを掛ける。扱くスピードを早くして、絶頂を促す。
「ふぁぁあぁ!」
遠くに聞こえない程度だけど、大声で叫んでしまった。
棒からは白い液体、精液が出て飛び散る。
折角洗った体にも飛び散って、体がだるくなる。
ああ、幸せ……。
幸せとそれと同等の罪悪感を感じながらも、また体を洗って戻る。
思ったより時間がかかっちゃったな。どう考えても『シ』たからだけど。
二人とも起きてないといいけど……。
朝みたい。まだまぶたが重いわね。
うっすら開けて、見てみる。……ん?樹?
……ああ、そうか。ロコンになっちゃったんだっけ。
夢だったら良かったのに。心からそう思う。
完全に脳が覚醒してきたので、体を起こす。
まず目に入ってきたのは、ティールだった。
何があったのか、ほんのり頬を赤く染めている。ああ、女……ポケモンだから、牝?に挟まれて寝たのだから当然か。
次にミライを見てみると、幸せそうな顔をしてまだ眠っていた。
全く。もう少し危機感を持って欲しい物だ。
「あ、ご、ご主人。おはよう」
「おはよう。ちゃんと眠れた?」
「う、うん。ぐっすりだよ」
明らかに様子がおかしい。やっぱり、ぐっすりじゃなかったのだろうか。
んまあ、とりあえず、ミライを起こしましょう。
近寄って、体を揺さぶる。
「おーい、ミライー。そろそろ起きなさーい」
「ん……あと一億光年……」
「馬鹿な事言ってないで、早く起きなさい」
「しまった ! こうねんは じかん じゃない …… きょりだ !」
今のこいつの言葉、どっかで聞いたことあるわね。*2
いや、今はそんな事関係無い。閑話は、休題だ。
「で、これからどうするかなんだけど……」
「ん……?ああ、そうか。私達、ポケモンになっちゃったんだっけ。お腹すいたー」
「ああ、さっき、そこに木の実がなってるのを見たよ」
イッツマイペースなミライの言葉。それに対応できるティールは凄いと思う。
気分転換に散歩でもしてたのだろうか。まあ、いい。
まずは朝ご飯にしよう。朝ご飯がないと、頭がしっかり働かないから。
「じゃあ、それを採って朝ご飯にしましょうか」
「分かったー。ティール君、案内して」
「えーっと、こっちだよ」
さて、ティールについていった訳だが、私達は今ポケモンであることを覚えているだろうか。
歩行は、人間の時の感覚ですんなり出来た。おそらく、ここだけ見てもらえば人間とは気付かれないのではないか。
でも、できる事は人間と比べて少なくなっている。
例えば、今回。
確かに、木の実の生る木はあった。
でも、問題はそこからだ。
「あ」
「んん?どうしたの?」
「この体じゃあ、木、登れないよね」
「え、あ」
「……あ、安心して!僕がご主人達の分まで採ってくるから!」
「お願いするわ」
木に、登れない。
人間の頃は登れたけど、というか登る必要がなかったけど*3、今回は事情が違ってくる。
心の中で、ティールに謝っておこう。
その木にあったのは、モモンの実だった。
モモンの実と言えば、強い甘みと柔らかい実体、食べたり塗ったりすれば解毒の効果があるという特徴の木の実だ。
前見たときは、十分手のひらに収まる程度。でも今見ると、今の私の五分の一*4の大きさはあるのではないだろうか。
「ありがと。さ、食べるわよ」
『いただきまーす』
二人……二匹?同時に食べ始めた。私もそれに続く。
うん、美味しい。でも甘い。美味しいけどやっぱり甘い。
甘い物は好きでも嫌いでもない*5けど、ミライは好きらしい。*6
ティールは……私と同じく好きでも嫌いでも、かな。*7
「んー!この甘さが格別!」
「ちょっと甘すぎる気もしないでもないけど」
「結構熟してるね」
一つ食べたらもうお腹いっぱい。体……小さいもんね。
私の体でお腹いっぱいなのに、ミライはもう三つ目に入っている。食べ過ぎだわね。
まあ、余った分は乾燥させて保存食にするとして、本題に入りましょう。
「で、これからどうするよ」
「えー?もうこのままでいいじゃん」
「駄目。さっきも言ったでしょ?ここが何処かも、どんな場所なのかも、一切分からないのよ?」
「……むぅ」
「選択肢は三つ。
あの館を探すか、とりあえず出口を探すか、ここでこのまま暮らすか、よ」
まあ、三つ目の選択肢は却下したばっかりだから受け付けないけど。
ミライはかなり悩んでいる。……そぶりを見せる。
こら、チラチラ見たってここで暮らすのは受け付けないわよ。
私が首を横に振ると、ミライは溜息をついた。
「……分かった。あのお屋敷を探そっか」
「よし!じゃあ、探すわよ」
「ねぇ、その前に、口とか洗っていい?ほら、あの湖でさ」
言われて気がついた。確かに、手……前足?も口の回りもベトベトね。
湖の場所は分かるのかしら?
「覚えてるよ。あの樹の洞から、ここと反対方向にあったはず」
「んじゃ、いこっか!」
二人が元気よく走り出したのを見て、私も続く。
昔から変わらないわね、この状況。いっつも誰かが先に行って、私が後に続いて。
この感覚は、嫌いじゃないんだけどね。
湖に着いた。ティールの記憶は正しかった訳ね。
で、着いたら……ティールがなんか焦っていた。
「どしたの?」
「うわぁっ!?ご、ご主人!?来ちゃ駄目!」
「きゃっ!」
ティールに押し戻されてしまった。
少しばかりの反抗で、湖を見ると……白い何かが浮かんでいた。
何あれ?あれを隠したかったのだろうか。
いや、それより、私には隠すのに何故ミライには隠さないのだろうか。
ミライはなんでこっちに来ないのかな?
と思ったら、ミライも来た。それから湖への道に座り込んで……通せんぼですね、はい。
心なしか、頬が赤い気がする。
「ねえ、なんで駄目なの?」
「どうしても、駄目。見て得する物じゃないよ」
「損する物でもないでしょ?」
「損する物だよ」
そんな攻防を続けていると、もういいよ、と声が聞こえてきた。
行ってみると、あの白い物はもう無くなっていた。ついでに、ティールの口周りのよごれも無くなっていた。
なんだったんだろう?
見られた……!
完全に見られた……!
どうしよう、どうしよう!?
まず、あれを隠して……あれって固まるものなの!?
ああもう、とりあえずくみ上げて、土の中に……。
どうしよう……ミライさんにもご主人様にも見られた……!
ご主人様はミライさんが足止めしてくれてるみたいだけど……。
ああもう、気まずいなぁ。
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