この作品は狼さんのリクエスト作品です。
作者COM
この世界には様々な『伝説のポケモン』と呼ばれるポケモン達がいる。
それは世界を創造するほどの力を持つ者であったり、生命の誕生と終焉を司る者であったり、世界に時を創り、昼夜を、海と陸を、生み出したこの世界を象る者であったり、秩序や理性を生み出す者でもある。
いうなれば、世界を形創る必要不可欠な存在であると言っても過言ではない存在だ。
しかし、そういったポケモン達は普段はなかなか姿を現してはくれない。
ただひっそりと世界の、人とポケモンの営みを見守っているのかもしれない。
だが、中には人の前に姿を現す幻のポケモンもいるようだ。
そのポケモンの名はジラーチ。
ねがいごとポケモンと呼ばれるそのポケモンは決して自ら人の前に好んで姿を現しはしない。
というのも1000年もの間、ジラーチは深い眠りに就き、その内7日間のみ目を覚ますからだ。
それまでは強固な守りに包まれて眠りについているため出会うことは不可能に近い。
そして眠りから覚めたその七日間に出会った者の願いをなんでも3つまでは叶えるという、まさにその名の通りねがいごとポケモンである。
1000年もの間眠り続ける理由は恐らくその能力のせいなのだろうが、その能力ゆえ、目覚めると幼子のような容姿に違わず、見える景色全てに興味を惹かれフラフラと動き出してしまう。
「ふあ~ぁ……。よく寝た」
そして丁度その千年の眠りを終えたジラーチは目を擦り、小さく伸びをしてふわふわと辺りを散策し始めた。
ジラーチの目覚めたその場所は何の変哲もない森の中だったが、ジラーチにしてみれば1000年もの時が経ち、眠る前とは全く違う景色になっているため、起きる度に新たなワクワクが目の前に用意されているようなものだった。
今日も新しくなったその土地をウキウキ気分で風に流れるように飛んでいた。
「わぁ~! なんだろうあれ? キラキラと光って綺麗だなー。お星様みたいだ!」
ジラーチが目覚めたのは丁度夜だったため、森の近くに出来ていた街の街灯が灯っていた。
1000年前にはそんな景色は拝めなかったため、ジラーチにとってそれはとても美しい物に見えた。
森の中からゆっくりと移動しながら眺めるそれは明滅する色鮮やかな光はたとえジラーチでなくても心奪われる景色だろう。
「やっぱりここからの風景は綺麗だな。自然と人工物の融合とでも言うべきなのかな? さて、写真でも撮るか……」
ジラーチと同じようにこの森の中から街の風景を眺める者がいた。
彼はその街で生活しているカメラマンで、今日もそのお気に入りの風景を一枚写真に収めに来ていた。
カメラを構えたまま少し移動し、写真写りの良いベストポジションを探しながら少しずつ場所を移動していき
「よし! ここだ!」
そう呟いてから一呼吸置き、シャッターを切った。
パシャリという音と共に一瞬視界が暗くなり、もう一度開けたそのレンズの向こうには興味津々でこちらを覗き込む不思議な物体の姿があった。
「うわぁ!? なんだ!?」
写りこんだその不思議な物体に驚き、彼は思わず大事にしているカメラを落としてしまいそうになった。
それを見ていた不思議な物体……、ジラーチはクスクスと笑い、彼に話しかけた。
「驚かせてゴメンね。あなたの持ってるソレが気になって近づいちゃった」
最初は彼も突如現れたお化けのようなものに驚いたが、その姿をしっかりと確認し、彼はさらに驚いた。
「ジ……ジジジジジジラーチ!? ほ、本物!? 見間違いじゃないよな!? 何度も図鑑では確かめてたけど……本当に出会えるなんて……」
「本物だよー。初めまして。この時代の人間さん」
彼は様々なポケモンや風景を撮って生計を立てているカメラマンだった。
彼がカメラマンになった切欠は幼い日に見た、伝説のポケモンが収められた美しい一枚の写真だった。
それで彼の人生が決まってしまうほどだったのだから美しいことは言うまでもないだろう。
それから彼はポケモンカメラマンになり、美しいと感じたものを全て写真に収めていた。
しかしそれとは別に彼には一つの夢があった。
自分が心奪われた伝説のポケモンの写真のように、自分も誰かを魅了できる伝説のポケモンの写真を撮ることだった。
「一枚! 一枚撮らせて! お願い!!」
伝説のポケモンはなかなか人前に姿を現さないことと、伝説のポケモンについて記された図鑑を熟読していた彼は一目でそれが本物であると理解し、同時になんとか一枚だけでも撮らせてもらえないかジラーチに懇願した。
「それが君のお願い?」
必死に頭を下げている彼に対し、ジラーチはそんなことを言って普通のことのように聞き返した。
そこで彼は頭を上げてジラーチをキラキラとした眼差しで見つめた後、ブンブンと首を縦に振った。
彼は伝説のポケモンを撮りたいだけだったので伝説のポケモンの名前と姿だけを脳裏に焼き付けて、その特色の方はほとんど覚えていなかった。
そのためジラーチがなんでも願いを叶えてくれるポケモンだということを知らない。
「それならお安い御用だよ!」
そう言い、クルクルと回りながら少しだけ高く浮き、まるで何かを願うかのようなポーズをとった。
するとジラーチは淡く発光し、光が集中していくと頭に付いている短冊の一つに彼の思いが文字としてそのまま浮かび上がった。
「お待たせ。それじゃ願い事を叶えたよ」
そうジラーチはポカーンとした表情の彼に伝えた。
「叶えた? ってどういうこと?」
彼はジラーチにそう尋ねると、ジラーチは短冊に浮かび上がった文字を読ませた。
写真を一枚撮る。とだけ書かれた短冊がそこにはあった。
そこで彼はようやくジラーチの特性を思い出したようだ。
「そうか! てことは絶対に失敗は許されないな! 撮るから自然に、自然にお願いね!」
そう言ってカメラをジラーチに向けて構えた。
パシャリとシャッターを切る音が聞こえ、彼はすぐにその写真を確認した。
そこにはにこやかな笑顔を浮かべるジラーチが暗い森の中にひっそりと浮かぶものだった。
それだけでもかなり幻想的で素晴らしい写真だったのだが、彼はどうやら納得がいかなかったようだ。
『う~ん……。これじゃあダメだ。あの時僕が見たような神々しさが足りない……』
そう思いもう一度撮れないかと考えたが、彼は先程お願いしたため撮らせてもらえたことを思い出す。
「もう一枚撮っちゃダメ?」
「別に構わないけど? 僕もソレが気になるし」
彼がそうお願いすると、今度はジラーチはそう答えた。
お願いとは受け取らなかったというわけではなく、短冊に浮かんだ時点でその願いは叶うのだ。
実は彼が先ほど撮った写真の前にジラーチが光り輝きながら願いを込めている時点でその美しい輝きを放つジラーチを写真に収めていたのだが、彼は気が付いてはいなかった。
そうとも知らず、彼はその後も何枚も駄目だ駄目だと言っては取り直していた。
そしてついに諦めて、何枚も撮った内の一番いい物を選んでいる内に、その写真を見つけてガッツポーズをして喜んだ。
「不思議な人だね、君。そのカメラっていうものだったっけ? それで撮りたいだけだなんて。他に何かお願いはないの?」
笑いながらジラーチは彼にそう聞いた。
そこで彼は少し唸りながら考え込んだ。
「あの時、僕が見た写真のような、誰かを魅了できるような美しい写真を撮れるカメラマンになりたいね。……でも、それは誰かに叶えてもらう夢じゃないかな?」
ゆっくりと語った彼はそう言い、ニッコリと笑ってみせた。
それを見てジラーチも微笑んだ。
そしてゆっくりと光り輝き始める。
「大丈夫だよ。カメラマンっていうのがどういう仕事なのかは知らないけれど、そうやってはっきりと夢を語れる人間は、僕が叶えなくても必ず成し遂げるから。……でも、僕も楽しかったからその願いは叶えるよ。まあ、諦めない限りチャンスはあるって程度に思っておいて」
そう言ってジラーチはもう一度願いを叶えた。
彼は少しだけ驚いた表情を見せたが、それでも笑顔なのに変わりはなかった。
「それなら安心して頑張るよ」
その後、彼は逆にジラーチからお願いされ、今の時代の事を色々と話した。
だがジラーチは1000年に七日ずつしか世界を見ていないため、生きた時の長さは圧倒的だが、知識で言うならその見た目通りまだ幼子の程度だったため、半分以上は彼の話を理解できなかった。
逆に彼もジラーチに1000年前の世界の話などを聞きたかったが、1000年前も七日間しか活動していないジラーチではその時代の事を詳しく語ることはできなかった。
「色々教えてくれてありがとう! そういえば、あと一つだけ願いを叶えてあげることができるけど、叶えて欲しい事はない?」
今の時代について教えてくれたお礼と言わんばかりに、ジラーチは叶えることのできる三つ目のお願いのことも彼に話した。
そう言われ、また彼は考え込む。
普通の人間なら『大金持ちになりたい』だとか、『一国の王になりたい』だとか言い出すのだろうが、彼には先程のカメラマンの夢然りそういった欲はあまりないようだった。
しかし、そういった欲にまみれた考えでないからこそ、ジラーチに出会う事が出来たのかもしれない。
結局、彼は考えに考えて、一つ思いついたのかハッとした表情を見せてジラーチの方に向き直した。
「強いて言うなら……。もしも好きな人ができた時……。あわよくばエッチな事とかできたらいいな~なんて……」
彼にしてはとても下心のあるお願いを彼は顔を真っ赤にしてそんなことを言った。
今はまだ彼はカメラマンとして専念したいため、恋をしたりなどはしていないそうだ。
「よく分からないけどそれがお願いなんだね?」
どうするか悩んでまだもじもじとしていた彼にジラーチはそう聞いてきた。
ジラーチとしては彼がどんなお願いをしているのかはよく分からないが、それを叶えることは無欲な彼の願いのため、容易にできるだろうということだけが分かっていたため、そう答えたのだろうが彼からするとあまりに早い返答にかなり恥ずかしくなってしまったようだ。
彼は真っ赤になって必死にジラーチのお願いをやっぱり止めようとしていたが、もちろん間に合うはずも無くジラーチはまた輝き始め、あっという間に願いを叶えてしまった。
そしてついにジラーチの頭に付いている短冊全てに彼の願いが書き込まれた。
「これで僕のお仕事も終わりだね。それじゃあ、君はこれからも頑張って生きてね。さよなら」
そう言ってジラーチは少しだけ寂しそうな表情を見せて森の奥へと消えていった。
彼にはその言葉の意味がよく分からなかったが、それでも伝説のポケモンであるジラーチにもう一度会うことができないことは分かっていたので彼も素直にさよならを送った。
彼にとってはただの別れだが、ジラーチにとっては彼はもう二度と会うことのできない存在だ。
この七日間が終わればまた1000年の眠りに就くため、次に目覚める時にはまた1000年後の世界だ。
その世界に人間がいるとは限らない上に、また人間に出会えたとしてもそれは彼ではない上に、持っている知識も今とは全く違うものだ。
「さよなら……」
そしてジラーチは誰もいなくなった森の中でもう一度、そう呟いた。
◇ ◇ ◇
その後、ジラーチはまだ森の中をふらふらとしていた。
本来ならば七日間の間活動するか、願い事を三つ叶えると再び眠りに就くといわれているのだが、叶えた願いがあまり大きなものではなかったためか十分活動できるほどの力が残っていたのだろう。
そのためジラーチはまだ森の中を楽しそうにフヨフヨと漂っていた。
すると、ジラーチの元に同じように淡く発光するポケモンが一匹、近寄ってきた。
「あれ? 初めて見るポケモンだ。初めまして、ミュウです」
そのポケモンはミュウと自ら名乗り、ジラーチに挨拶をした。
返事をするとミュウはジラーチに遊ぼう! と誘ってきたのだった。
ミュウはしんしゅポケモンと呼ばれる不思議なポケモンで、全てのポケモンの祖先ではないかと言われる幻のポケモンだ。
そんな伝説のポケモン二匹がそんな街のすぐそばの森で遊んでいるというだけでもありえないような状況だが、それを知る者はいない。
「ねえ、もう追いかけっこは疲れたよ。何か他のことしよう!」
二人はしばらくの間、森の中を飛び回って追いかけっこをして遊んでいたが、ミュウよりもジラーチの方が幼そうな姿をしているが、ミュウの方が加減を知らず、絶対に追いつけないような速度で逃げ回っていたため、疲れたジラーチがそう言った。
「他って……何か面白い遊びでも知ってるの?」
そう聞かれてジラーチは答えに詰まる。
ジラーチも長い時を生きてはいるが、なにせ活動している時間は七日間だけなのでほとんど何も知らない。
強いて言うなら今まで出会った数少ない人間と語ったことによって手に入れた知識と、彼らがジラーチにお願いしたことぐらいしか知らない。
その上大半のお願いの内容や、教えてもらったことは言葉は知っていても内容は知らないようなものばかりだった。
そこでジラーチも悩んだが、一つの答えに辿りついた。
「ならエッチっていうのしてみよう!」
それが何を意味しているのか知らないジラーチは純粋にそう言った。
先ほど手に入れたばかりのほぼ無知の知識だが、彼が語っていた様子から、それは一人では行うものではないということだけを推測してそう言った。
「なにそのエッチって? 面白いの?」
その言葉の意味を知っていれば、確実に怒っていただろうが、残念なことにミュウもその言葉の意味を知らなかった。
それもそのはず、ミュウも幻のポケモンであるため性別がない上に『エッチ』とは交尾の人間が付けた隠語のようなものだからだ。
そうとも知らずジラーチの発言に興味津々になったミュウは早くそれをしようと急かすほどだった。
だが、性別のない二匹がエッチを行うことはできないはずだ。
「分からないけど、気持ちいいんだって」
そう言ってジラーチは先ほどのように空に浮かび上がり発光した。
今度は先ほど彼のために叶えた力をミュウを対象にして使ったのだ。
辺りが今までよりも一層眩しい光に包まれて、一瞬見えなくなるほど白く光った。
ようやくのことで目を開けると……
「何か変わったの?」
ミュウはゆっくりと目を開きながらそう聞いた。
ジラーチもゆっくりと周りを確認するが、特に何も起こった様子はなかった。
それもそうだろう。
元々性別のない二人に、実は生殖器がいつの間にか付いていることなど気付きもしない。
だが『願いは叶うもの』だ。
それもいつか叶うというあやふやなものではなく、必ず叶うようになっている。
「ねえ……ジラーチ……。なんだかさっきからお股が熱いんだ……」
息を荒くしながらミュウはそう言った。
ジラーチもミュウの方を見ると、なんとミュウの股間には先程までなかったはずの男性器、つまりペニスが生えて雄々しくそそり立っていた。
それを見た途端、ジラーチも体の奥から湧き上がるような疼きを感じた。
「僕もよく分からないけど……お腹の辺りが……」
そうジラーチはミュウに答えた。
それを聞いてミュウはジラーチの方を向くと、丁度二匹の目が合った。
たったそれだけのことだったが、それだけでその先のことが何をしたのかもうほとんど覚えられないほどにひどく興奮した。
ミュウはそのままスーッとジラーチの方へ飛んでいき、しっかりとジラーチに抱きついた。
「ひゃん!」
ジラーチがミュウに触れられただけでそんな声を出したが、お構いなしにミュウはジラーチの口に舌を滑り込ませた。
本来ならいきなりそんなことをされればびっくりして突き放そうとでもするが、なぜか今はその行為が嬉しいのかジラーチも自分から舌を絡めた。
クチュクチュと口からは二人が激しく舌を絡ませる音が聞こえ、その間にミュウは本能に導かれるようにジラーチの股の間に新しくできた隙間へ自らのモノを滑り込ませた。
ジュプリと音を立てて滑り込んだミュウのモノは、初めて味わう不思議な快感を受けていた。
二匹ともそこでほとんど頭の中が真っ白になるが、それでもそのままその行為は続いた。
舌を絡めたまま、ミュウはジラーチにしっかりと抱きつき、更に激しく腰を振る。
そうやって激しく出し入れを繰り返される度に、二匹ともに恐ろしい程の快感が訪れていた。
『エッチって……こんなに気持ちいいんだ……』
そんなことを二匹ともうっすら考えていたことを覚えているが、その先のことはもうほとんど覚えていなかった。
暗い森の中に二匹の交わる水音だけがわずかに聞こえ、淡く発光する二匹が中空で交わるその姿はまさに幻想的な姿だった。
そしてそのまま二匹は崩れるように口を離し、叫ぶように絶頂を迎えた。
◇ ◇ ◇
空も白み始めた頃に、二匹はようやく意識を取り戻した。
昨日何をしたかを正確に覚えてはいなかったが、とにかく気持ちが良かったことだけははっきりと覚えていた。
「おはよう……」
ミュウはジラーチにそう声を掛けたが、ジラーチからの返事はなかった。
『おはようミュウ。昨日は楽しかったね』
代わりにジラーチはミュウの心の中に直接口に出したかった言葉を伝えた。
「どうしたの? ジラーチ」
昨晩、あまりにも激しい行為をしたためか、ジラーチはもう深い眠りに就いていた。
それを知らないミュウが少し驚いていたのでジラーチは自分のことを大まかに説明した。
それを聞いて納得したのか、ミュウはそれ以上深くは問わなかった。
しばらくの間はそうやって不思議な会話をしていたが、そろそろ疲れからか、性別のない二匹に性別を与えるなどという大きすぎる力を使い過ぎたからか、もうそろそろテレパシーも使えないほどの眠りが来ることを伝えた。
「そうなんだ……。じゃあね! またどこかで!」
そう言ってミュウは手を振りながら空高く飛び上がっていくジラーチを見送った。
『また……どこかで……あい……た……』
最後にジラーチはそんな途切れ途切れのテレパシーを送り、空の彼方へ消えていった。
ジラーチが彼はミュウともう一度会えることは決してない。
それでも今日の一日は、今までの七日間に比べてとても充実した一日だった。
だからこそそう思ったのだろう。
『またどこかで……二人に会いたい』と……。
初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。COMです。
今回は狼さんからのリクエストで、ミュウ×ジラーチという作品になりました。
ジラーチもミュウも伝説や幻と呼ばれるまだまだ不思議の多いポケモンのため、全体的に幻想的に仕上げました。
喜んでもらえたら嬉しいです。
では、またどこかで(´・ω・`)ノシ
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