ポケモン小説wiki
新たな日々へ

/新たな日々へ

新たな日々へ
          作者かまぼこ
※注意
官能描写(人×ポケ♀)です。


「もう春なんだなぁ……」
 独り言を呟きつつ、彼―ヨシトは友人と川の土手を歩いていた。
「そうだな。そこらへんのシキジカもメブキジカもすっかりピンク色だ」
 返答したのは、彼の友人ヒロタ、そしてその足元にいる
綿に包まれたフワフワの物体―『エルフーン』も彼に続いて言った。
「わたし達草ポケモンも、春が来ると心が躍るなぁ……」
 長く寒い冬が終りを告げ、最近はすっかり暖かくなってきていた。

「あと数日で卒業だな…ヨシトは大学進むんだよな?」
「ああ……」
 卒業か――
 長かったようで短かった3年間の高校生活は、あと数日で終わり、
もうクラスメートと駄弁ったり、こうして友人と話し合うことも無くなる。
そう考えると、なんとなく寂しさを感じて、表情が曇る。
「ヒウン大とかって所……ヨシト、一応受かったんだし、もう少し嬉しそうにしなさいって。
電話の番号だって知ってるんだし、わたし達いつでも会えるじゃない」
 そんなヨシトを見て、ヒロタのエルフーン「ファーラ」が元気付けようと話しかけた。

 ヨシトは何とか大学に推薦合格が決まり、ヒロタは就職することになっている。
 どうにか二人とも進路は決まったのだが、ヨシトはもうしばらく学生でいられる。
ヨシトは、自分と違い立派な社会人となる友の前で嬉しがるのは、なんだか悪い気がしていた。
「卒業もそうだけど……お前もそろそろポケモン持ったらどうだ? お前くらいだぞ?ポケモン持ってないの」
 ヒロタは話を切り替える。

 ああ、またこの話だ――
 今まで、何度も彼に言われてきたことで、ヨシトにとっては鬱陶しい話だった。
「でもなぁ……」
 そのように、ヨシトが渋るのも、いつものことだった。


 ヨシトは子供のとき、初めて持ったポケモンに愛想を付かされて、逃げられてしまった経験があった。
それ以来自信がなく、また見限られるかも知れないと思うと持つのを躊躇ってしまうのだった。
だから、彼はそれ以来ポケモンを持っていない。

「昔のことだろ? 今だったら大丈夫だって……っと、ほら、お出ましだぜ?」
 そういってヒロタは、振り返って今来た道を見る。
 すると、舗装されていない土手の道を、土煙を上げてこちらに爆走してくるものがあった。
それが近づくにつれて、はっきりと判るようになる。
 あれはポケモン――『ライチュウ』だ。
特徴的な長い稲妻型の尻尾は、先端が欠けている。牝の証拠だ。

「ヨシトおおおおおおぉぉぁ!!覚悟おおおおおおぉ!!」
 そう叫びながらライチュウは『ボルテッカー』で、こちらに突進してきていた。

 攻撃をヨシトに命中させようと、ライチュウは尻尾をバネがわりにして使い
ジャンプ。その勢いのまま宙を飛び、電気の幕に身を包み彼に突っ込む――
が、ヨシトは目を細めつつひょいと回避すると、ライチュウは
その先にあった橋の親柱に衝突して小爆発を起こした。
 親柱が少々焦げ、ライチュウは目を回して倒れていたが、
すぐさま立ち上がりそのコッペパンのような手で、
「ヨシトぉぉ……今日こそ、覚悟しなさいぃ……!」
 と、橋の親柱を指差していた。
「俺はこっちだアホゥ……一昨日から何度も…何なんだお前は……?」
 ようやく回復したのか、ライチュウは彼のほうに向き直る。
「さぁヨシト!! バトルよ!? 今日こそあたしに倒されなさい!!」
「俺……お前に何かした覚えは無いんだけど……」
「……!!」
 そう言うと、ライチュウは黙り込む。
一昨日からずっとこんな感じで、理由を聞くと黙ってしまうのだった。
おまけにポケモンを持ってないと説明しても、聞き入れてくれない。


 このライチュウと出会ったのは一昨日、サンヨウシティの路地裏で、
空腹で倒れていた彼女に、ヨシトが気紛れに昼のサンド・イッチを半分やっただけで
恨みを買うようなことはしていないハズだった。
 その日以来、このようにヨシトを付け狙うようになり、正直かなり鬱陶しい。

 何が目的なんだ、コイツ―――そう考えていたとき、ヒロタが、
「なぁ、そいつトレーナーもいない様だし、お前が捕まえちゃえば?」
「そーよ。丁度いいじゃない、あなたのポケモンにしちゃいなよぉ」
と、ファーラまで彼にそう進めてくる。
「冗談じゃないっての……」
 理由もわからずに攻撃してくるようなポケモンなぞ、危なくて仕方ないだろうと、
ヨシトは否定的に考える。

「お前がファーラに指示を出してバトル……お? 誰だ……?」
 言いかけたところで、ヒロタは何かに気付き、振り返った。
見ると、こちらに一人の男が息をきらして走ってくるのが見えた。
男は追いつくと、ライチュウを叱りつけた。
「何で逃げ出すんだ……何度も何度も、ほら! 帰るぞ」
 男はライチュウの手を取って、この場を離れようとする。
ライチュウは首を振り否定の意を示すが、結局連れて行かれた。

(ほれみろ、やっぱりトレーナーがいたじゃないか)
 そもそもここ、イッシュ地方には、ライチュウと、その進化前である
ピチューやピカチュウの野生個体は存在しない。
だから、このライチュウは誰かのポケモンだろうとヨシトは薄々思っていた。
 まったく、このトレーナーは何をしているんだか――
と胸中で呟きながら、ヨシトはようやくトレーナーがライチュウを連れ戻してくれて安心していた。

「なんだ、誰かの手持ちだったか……残念だったな」
「静かになってくれて大助かりだ」
 残念そうに言うヒロタに、ヨシトはそう返したが、少々気掛かりではあった。
しかし、あいつは何故トレーナーを嫌がっていたのだろう――?
「まぁいいか……ヒロタ、早く例の店とやらに連れてってくれよ」
ヨシトがそう言ってから、二人と一匹は歩き始めた。


 シッポウシティにある喫茶店。
 この町はかつて物流で賑わっていて、当時の倉庫や鉄道輸送時代の引込み線跡など、
その痕跡が今も数多く残る。ここは、そんな空いた倉庫を利用して出来た店だ。
今日は水曜日のサービスデーとあって、そこそこ人が入っている。

「うふふ……ヒロタぁ……」とテーブル上に座ったエルフーンのファーラが、
ジュースのストローを咥えながら、うっとりとヒロタを見つめている。
「ファーラ……」
 ヒロタも同様にファーラを見つめていて、二人ともなにやら顔がほんのり赤い。
「お前たち……こういうところでイチャつくなよな……」
 だが、ヨシトの声は二人には届いていないようだった。
そう。この二人、正確には一人と一匹であるが、『恋人同士』なのだった。

 一人と一匹は数分間見つめあったあと、ヒロタがヨシトに話かけた。
「あのライチュウ、お前のこと好きなんじゃないのか……? トレーナーの所を逃げ出してまでさ」
「有り得るね……ヨシトに一目惚れでもしたんじゃあないの? あの子」
そんな……こいつらじゃあるまいし、ポケモンに惚れられてもなぁ―――
 と、彼は横に座っているヒロタをチラー見ィして、胸中で呟く。

「あ、今俺をみてまぁた変なヤツだと思ったろうお前」
「思ったよ……ったく」
 ヨシトにとってヒロタは友達だが「ポケモンに恋する変なヤツ」でもあった。
別に悪いとは思わなかったが、見ててやはり変だった。
(でもまぁ、ファーラだって、ポケモン達から見れば「人間に恋する変なポケモン」なんだろうな)
などと考えながら、ヨシトはアイスコーヒーのストローを口に付けた。
「まぁ、ヨシト……周りの客をよく見てみろって……」
「周り……?」
 そう(いぶか)ってから、彼は店内を見回してみた。
カップルなどもいるが、所々にポケモン連れの姿も見える。

 ポケモン連れの一組をよく見てみると、先ほどのヒロタ達と同じようにうっとり見つめあい、
二つに分かれたストローの片方を男が。もう片方をリーフィアが咥えている。牝だろうか。
やはり、その二人の顔は赤い。
「……」
 半目になって更に見回せば、その逆、人間の女性と雄ポケモンのカップルらしき連中もいた。
大型のポケモンと寄り添いあってイチャイチャとしている者達の姿もある。
そんな感じのカップルが店内に2.3組はいて、どれもなかなかいい雰囲気であるようだ。

「こっここって一体……」
「驚いたようだな……わりと居るんだよ、そういう奴らってさ」
 だがやはり、そうした変なカップルであっても、そんな様子を見せられては
恋人のいないヨシトにとって気分がいいものではなく、かなり居心地が悪い。
 ヨシトは目つきを悪くして、ラブラブムードの重圧に耐えていた
「ヨシトにも悪いし……そろそろ出ようかファーラ」
「わかった……♪」
 とファーラはうれしそうに返事をした。

 レジで支払いを済ませて、店を出ようとする。
 ああイライラする―――ここに来て、ますます自分のストレスが溜まったような気さえする。
そう思いながらヨシトは、扉を押して、店の外に出ようとしたとき――

そこには、あのライチュウがいた。

「んなぁ!?」
 ライチュウはすでに技を放つ姿勢を取り――
次の瞬間、ヨシトの鳩尾に、『電光石火』が決まっていた。

ヨシトは めのまえが まっくらに な―――――


らなかった
 なぜなら、なんとか腹とライチュウの間に、間一髪手を割り込ませて
多少は衝撃を和らげることが出来たからだった。
「ぐ……おおぉ……っく……!」
 だが、かなりの速度でぶつけられた為に、腹も手も痛く、右手は真っ赤になっている。
ヨシトは腹が立って、ライチュウに掴みかかりたかったが、右手はじんと痺れていう事を聞かなかった。
「ええい!! またお前か! 何だってんだよ!」
 ライチュウに怒鳴りつける。
「……ふふんっ、どぅお? あたしの攻撃、スゴイでしょ」
「勝ち誇るなバカタレ! いい加減理由を説明しろ! 何故俺を目の仇にする!?」
 そう言うとライチュウの表情が曇る。
「……なんでよ……なんでわかってくれないの……」
 しまいには、目まで潤ませ始め、今にも……

 俺に何をわかって欲しいというのだろう?何をして欲しいのだ――?
ヨシトには皆目見当が付かなかった。
「わからない………って」
 彼がそう呟いたとき、あるものが目にとまる。

 ライチュウの左頬に、痣が出来ている。

 先ほどトレーナーに連れて行かれた時には、確かなかったハズだ。
それに、あれからまだ一時間も経過していない。
「おまえ……!?」
 何があったのかを察したヨシトは困惑して、これ以上何と言ったらいいのかわからなくなる。
「ヨシト……こいつの話を聞いてやれ」
 ヒロタは彼にそう言った。どうやら彼も事情を察したらしい。
「なんだか心配になってきたわ……ヨシト、お願い……」
 と、足元に居たファーラも心配そうに言ってきた。
なにやら、このライチュウには複雑な事情があるようだった。


 ヒロタたちと別れ、ライチュウを自分のアパートに連れて行った。
とりあえず、手当てをしてやってから、ライチュウを机の椅子に座らせて、話しかける。
「何故あのトレーナーから逃げ出すんだ? 何故俺を付け狙う? ちゃんと説明してくれ。
でないと、分からんからさ……」
 なんとなく予想はついていたが、おそらくトレーナーから制裁をうけたのだろう。
あの時は、一見普通のトレーナに見えたが、どうもそうではないらしい。
 ライチュウは俯きながら、話し始める。
「あたし、あのひと……厳しくて、ぶったりするから嫌なの、だから逃げ出していたの」

 やはりそうだったか――と、ヨシトは思った。
 ライチュウは続けた。
 どうやら一昨日、路地裏で倒れていたのは、逃げ出してから既に何日か経った後で、飢えて行き倒れており、
そこをヨシトが見つけ、ライチュウは食べ物をくれた自分を頼ろうとしていたのだという。
逃げているワケをを知られたくなくて、勝負を理由にしてヨシトに突っかかっていたのだとも。

「『何で勝てないんだ!』って負ける度にビンタされるし………さっき、あたしをまた………ぶってぇ………ううぅ………」
 ライチュウの目から、とうとう涙がこぼれる。
どうやら相当ひどいトレーナの様だが、自分は第三者だ。良かれ悪しかれ、
他人の事情に介入するのはよくないと思った。ヨシトはライチュウの頭を撫でて言う。
「でもさ、ライチュウ、暴力は確かにいけないと思うが、あのトレーナーだって必死なんだろう、
それに、ちゃんとお前を探しに来てくれただろ?あの人はお前を心配してるんだよ」
「………うぅ………でも……」
 涙目で彼を見るライチュウ。なんだか気の毒だが、彼自身、あのトレーナーがそんな人間とは
思いたくなかったし、現場を見たわけじゃないので、そう思えない。

「もうすこし、お前もあの人をよく見て、観察して………考え直してみればいいよ………明日、帰るんだぞ………?」
「うん……」
しばらくして、ライチュウは椅子の上で丸くなって眠ってしまった。

 その姿を眺めながら、ヨシトはふと考える。
昔、自分はポケモンに愛想を付かされて、逃げられた。
『もう君についていけない………一緒に居たくない』と、そのポケモンは去っていった。
 当時はバトルが面白くて仕方なく、毎日のようにバトルしていた。
「調子に乗りすぎて、ポケモンのこと、分かってやれなかったんだよなぁ……
そう考えると、コイツも、主人にわかってもらえない……そんなポケモンなのかも」


 次の朝、目覚めると窓が開いていて、ライチュウは既にいなかった。
おそらく、トレーナーの元に帰ったのだろう。
 学校に行き、ヒロタ達にも報告する。
「なるほどな……でも大丈夫かな、あのライチュウ……暴力振るわれてたのが本当なら、
返すべきじゃなかったとおもうんだけどな……」
 ヒロタはそういったが、彼女は他人のポケモンなのだし、
救ってやりたいがこれ以上はなにも出来ない。
 ライチュウのことが気になりつつも、ヨシトは残り少ない学校での一日を過ごした。

 夕方、アパートに戻ると、彼の部屋の前に―――彼女がいた。
「……!? ライチュウ!!?」
「えへへ……来ちゃった……」
 と、ライチュウはボロボロの姿で微笑んだ。
 見ると、体に何枚か『葉』が刺さって血が出ている。草タイプの技を受けたのだろう。
「なんで……こんな……! どうしたんだお前!!」
 とにかく、治療しなければいけない。彼はライチュウを連れて、ポケモンセンターに向かった。

 外傷だけだったようで、治療はすぐに終わり、今のライチュウは傷一つない。
夕方で人の少なくなったポケモンセンターのラウンジで、ヨシトは再び問う。
するとライチュウはまた涙目になって、言った。
「帰ったら……あの人……あたしは用済みだから、知らない牡と『育て屋』行けって……」
 それを聞いて、ヨシトはその先の想像がなんとなくついた。
「用済み」で「育て屋」……つまりバトルに使うつもりは無くなったということだろう。
それに「知らない牡と」とくれば、意味する事は一つ。
 どうやら、あのトレーナーは俗に言う「廃人トレーナー」というやつらしい。
そうなると、このライチュウは――
「お前、兄弟とか居るか……?」
「うん、いたわ、いっぱい。でも…あたし以外のお兄ちゃんお姉ちゃん……
弟や妹はいつの間にかどんどん居なくなって……あたし、お父さんやお母さんの顔も知らない……」
 ライチュウは、今にも泣き出しそうだった。
 やはり―――
 このライチュウは、厳選された末に生まれた個体で、
おそらくあのトレーナはバトルでの使用は諦め、このライチュウを、
さらなる繁殖用母体として、育て屋に預けようとしていたのだろう。
 廃人トレーナーの噂は聞いたことがあるし、そうした厳選の末に捨てられたポケモンの話も聞いた
ことがあった。話の中だけだったことが今、現実としてヨシトの前にあった。

「これって……あたしが知らない牡のタマゴ産めってこと……よね?
いやだよ……あたし、産むなら好きな牡との子を産みたいよぅ……」
 ライチュウも薄々気付いていたのか、そういってすすり泣く。
「だから、今日も逃げたのか……?」
 ライチュウは頷く。
 前回は勝てない事で暴力を振るわれるのが嫌で逃げ回り、ヨシトに出会い頼ったが、
今回は繁殖用にされる事を拒み、再び逃げ出した…という事だった。
「逃げ出すときに……グスっ……『リーフストーム』撃たれて……
それに……あの人、ノウリョクチだ何だって、いつも呟いてて……怖いよぉ」
 これまでの事情を聞いたヨシトは、可哀想だと思うと同時に、なんだか許せなくなって、
ポケモンセンターの係員に話しかける。彼女のトレーナーは今どこにいるかを聞いて、
会ってみるつもりであった。
 ライチュウのことを話すと、係員は手元のパソコンでチェックを行ってくれた。
 しかし―――

「そのポケモンちゃんは、トレーナー登録が無いみたいです」

「………」
 それを聞いたライチュウは、黙ったままだった。
登録が無い。これはトレーナーの手持ちポケモン登録から抹消され
誰のポケモンでもなくなったことを意味する。
つまり、逃がされ捨てられたという事だ。

「うぅ……うぇ……うわぁぁぁぁぁあぁああああ…」
 ライチュウは号泣し、涙で顔を濡らしていた。
 おそらく、彼女程度の個体なら、いつでも産ませられると逃げ出した彼女に見切りを
付けたのだろう。
 タマゴからここまで育てたポケモンを、こうも簡単に――
ヨシトは、このライチュウを救ってやりたいと思うと同時に、
『こんなトレーナーにはなるまい』と、決心した。

 ライチュウの手を取って、ポケモンセンターをあとにする。
「ねぇ……あたし……」
 彼女が泣きながら聞いてきたので、ヨシトは決心し、力強く言った
「お前が野生になりたくないってんなら、俺はお前の力になるよ」
 ここで自分が手を差し伸べなければ、彼女は不幸になるだろう。
 ヨシトは先ほどセンターのショップで購入した1つのモンスターボールを
取り出して、微笑んでみせた。
「だから、俺のポケモンに……ならないか?」
 それを聞いたライチュウの表情が、見る見る明るくなる。
「………! ありがとう、ヨシトぉ!! 大好き!」
 そういって、彼の足にがっしと抱き付いた。転びそうになったが、久しぶりのポケモンと
共にいる感覚は、とても暖かだった。


 翌日、河原にヒロタとファーラを呼び、ライチュウを捕まえるため、
ヒロタからファーラを借り、バトルを行うことにした。

「行くわよぉ……『ボルテッカー』!!」
電気の幕に身を包み、ファーラに突進する。
「ファーラ、『コットンガード』!」
「はい!」
 返事をしてから、ファーラの左手に『綿の盾』が出来上がる。
エルフーンはその特性『悪戯心』によって、変化技を相手より先に繰り出せる。
その盾でファーラはボルテッカーを受けた。
「くうぅ!!」
 ライチュウは悔しそうにして、次の攻撃に備える。もう一度ボルテッカーを撃つつもりのようだ。
ボルテッカーは強力だが反動で自分の体力も減らしてしまう技だ。何発も撃つと自滅の恐れもある。
おまけに、草タイプのエルフーンには効果が薄い。
「そこで『宿木の種』だ!」
「ふふん、甘いわねライチュウ……『宿木の種』ぇ!」
 ファーラは、右手でライチュウに小さな種を投げつけた。
ライチュウに当たった種は一気に発芽して、蔓がライチュウに絡みつき、体力を奪う。
「あああぁぁ!」
 ライチュウは再びボルテッカーを使ってきたが、相性が悪く僅かしかダメージを与えられない。
 ヨシトは更にコットンガードを指示。
 ヨシトの指示を受け、ファーラの『綿の盾』がさらに厚く大きくなる。
この技は防御力を一気に高めるもので、二回行えばかなりの強度になる。
 これで、物理攻撃では、もはや大したダメージを与えられない。おまけに宿木の種によって
ボルテッカーの反動で余計にダメーシを負っているライチュウの体力は吸われ続け、
倒れるのは時間の問題だった。

 しかしどうも気になることがある。先ほどからライチュウは物理技のボルテッカーしか使ってこない。
大ダメージを与える技がこれ以外に無いのだろうか?
 ファーラの防御力は上昇し、なかなかダメージを与えられなくなった上に、
徐々に体力を削られていく。このまま成すすべもなく、倒されるのか?
そうヨシトが考えたときに、ライチュウはにやりと笑った。
「そろそろね……食らいなさい!!」
 ライチュウは、蔓が絡まった状態でファーラに向かってダッシュ。
ファーラの直前まで辿り着くと、両手を組んで、それをファーラに打ち下ろした。
「『起死回生』!!」
 ガゴッという鈍い音がして、ファーラがフラフラとする。どうやら急所に当たったらしい。
しかし、コットンガードにより防御力が上がっていたおかげで、持ちこたえてくれたようだ。
『起死回生』は自分の体力が少ないほどダメージが大きくなる一発逆転を狙う技。
それゆえリスクも大きく、扱うタイミングが難しい。
「くっ……これでも、ダメなの!?」
「甘いってんでしょ……!」
 そんなファーラの言葉が悔しいのか、ライチュウは顔をしかめる。

「……ヨシト!! 早くボール投げろ!」
 ヒロタに言われ、彼ははっとする。
これは捕獲のためのバトルであり、倒してしまっては意味がない。
 ヨシトはライチュウに向けてボールを投げる。
彼女の頭に当たって弾かれたボールが開き、ライチュウは赤い光になってボールへ吸い込まれる。
そのまま地面に落ちて3回揺れ……

 コチッ
とボールのロック音がして、ライチュウの捕獲に成功した。


 ファーラをヒロタに返してから、2匹の回復のためにポケモンセンターへ寄ったあと、
以前訪れた喫茶店に再び訪れた。
「出て来いライチュウ」
 ヨシトはライチュウをボールから出して自分の横に座らせる。
「ようやくヨシトもポケモン持つ気になったのねー」
 ファーラがライチュウを見ながら言った。
「なんか、ほっとけなくなってさ……可哀想だなって」
「ヨシト、やさしいね」
 ファーラはヨシトに微笑んでみせる。
「……で? ヨシト、こいつにニックネーム付けるのか?」
 ヒロタが聞く。ヨシトは考えていなかったが、確かに
種族名で呼ぶのも失礼かなと思い、適当にニックネームを考える
「じゃぁ……『ミラ』かな……それでいいか、ライチュウ?」
「……うん、ヨシトがいいなら、それでいいよ」
「じゃ、決定だな……よろしくな、ミラ」
「うん……これから……よろしく、ヨシト」
彼女――ミラは頬をほんのり朱に染め、もじもじとしながら微笑んで返事をした。

「あっミラ、なんか顔赤いよ~?どうしたのかなぁ~?」
 赤くなっているミラを見て、ファーラが悪戯心を発動させ、からかった。
「えっ! あ、あ……」
 指摘されたミラは恥ずかしくなったのか、オロオロ。
ファーラは構わず続け、
「もしかして……ヨシトのこと、好きだったり~?」
「……!!!」
 ミラはビクっとして、顔を俯けてしまう。図星のようだった
「あ……う……うん。ヨシトのこと、あたし好きよ……」
 とうとうミラは認めて、2人と1匹の前で告げる。それを聞いた
ヨシト本人は、複雑な気持ちだったが、救ってやりたい気持ちは本物であったし、
こんな彼女を愛してあげたい、と思っていたので、照れつつも、
「そ、そうだな……俺も、ミラが好き……かな。恋人として」
 と認めた。

 次の瞬間、ワッと歓声があがり、なぜか店内にいた人とポケモンのカップルが立ち上がって、
二人に拍手をくれた。従業員たちがクラッカーを鳴らし、「おめでとう」とか「お幸せにー」とかの
祝いの言葉を貰った。
「え? え? ……何? 何?!」
 何故か祝われて困惑するヨシトの所へ、ウエイトレスのドレディアがトレイに何かを乗せてやってくる。
「カップル成立記念に、イアの実ケーキとイアの実ジュースの『ラブラブセット』を無料で
お出ししております。どうぞ!」
 とケーキとジュースをテーブルに置いた。

「はいよ、ミラ」
 ヨシトはフォークに刺したケーキを、ミラに食べさせた。
もむもむと嬉しそうに食べるミラ。そんな二人を、店内の人やポケモンがニヤニヤと見てくる。
「うわぁ……なんか、俺すっげぇ恥ずかしいんだけど……」
「耐えろ。俺もここでファーラに告られたら祝われた」
 悪い気はしないが恥ずかしすぎる…公開処刑でもされてる気分だ。
「ホント何なんだ、この店……」
「俺もよく知らないが、いつの頃からか、こういうカップルが増えたらしい」
 ヨシトの問いに、ヒロタはホットコーヒーを飲みつつ応えた。
「ホント、不っ思議よねぇー」
 とファーラは二人のケーキをつまみ食いしながら言った。

 ミラと二人でケーキとジュースを食べ終わり、喫茶店を出てから
「じゃ、お二人さん……お幸せにねー」
 とひやかして、ファーラとヒロタは自宅に帰っていった。

「帰るか……ミラ」
「うん……ヨシト♪」
 ミラは嬉しそうにヨシトと手をつないで、スキップなどしている。
こんな恥ずかしい思いをしたのは初めてだ……と落ち込みたい気分だったが
嬉しそうにしているミラを見て、ああ、そうもいかないんだな、と苦笑した。


 夜、もう寝ようと電気スタンドを消した時、ミラが布団の中に入り込んできた。
追い出そうとも思ったが、出来る限りやさしくしてやらなければと思い、
そのままにした。ついでに、腕を回して抱きしめてみる。
 触れてみてわかったが、ミラの体は肉付きがよく、かなりむちむちであった。
ミラは仰向けのヨシトの上にうつぶせになって寝転び、彼の顔を見つめる。
体の上に寝そべられて重かったが彼女の体温で暖かく、気持ちよい。
「ヨシト……ありがとうね」
 言いながら、彼女はヨシトの顔に2度ほどキスをする。
そんなミラを見ていると、とても可愛いと思えた。
「あたし、ヨシトがパートナーになってくれて、よかった……」
「そうか……」
 だが一度ポケモンに見捨てられている。やはり自信が持てず再確認のため
「本当に俺がトレーナーでいいのか?」とミラに聞くが、
「あたしは……ヨシトが好きになったの! ……絶対一緒にいるからね!」
 と、力強く言う彼女に対してヨシトは今度こそ決心した。思えば何度もバトルと称して
自分に会いに来て、頼ろうとしたのだ。頼られるのは、悪い気はしない。ヨシトは
「わかった……」
 そう一言だけ言って眠りに落ちようとしたときに
口に違和感を感じて、閉じかけた目を再び開く。
ミラが、ヨシトの口に自分の口を重ねてきた。それも、舌まで絡めてくる。
「あたしたち、恋人なんでしょ? だったらこういうこと、してもいいよね」
 そう言って、ミラはヨシトの顔にお尻を向ける。そして、掛け布団をはいで
ヨシトの寝巻きのズボンを下ろそうとする。
「ちょ……! ミラ?」
 困惑しているうちに寝巻きをずりおろされ、己の証が露わになる。
「やっ……見るな! んなモノ……ぅあ゛?」
 と、ミラの美しい桃色のクレバスが目に入って、ヨシトの証は一気に猛り出す。
「ひゃ……?すごい……一気におっきく……」
 そういわれて、ヨシトは赤面する。さっきの喫茶店の時より恥ずかしい――
「お前……そんなとこ丸見せで恥ずかしくないのか?」
 と、ミラに問うと、
「恥ずかしいけど、ヨシトに見られるなら、嬉しいかな……」などと彼女は言うではないか。
明らかに様子が変だった。どうしたんだこいつは――?
 そう思った所で、喫茶店での出来事を思い出す。
たしか、イアの実ケーキとジュースがタダで出てきて――
「……そういう事かあのセットぉぉ!!」
 たしか媚薬になる木の実。カップル成立記念にとか言ってたがあのウエイトレスめ――!


 思い出している間にも、ミラは彼の顔におしりを押し付けてくる
牝特有の香りがして、顔がどんどん熱を帯びていくのがわかった。
 ミラはついにヨシトの分身を手にして、口に含んだ。
ちゅばちゅばと音が響き、あまりの快感に「あぁ……」と情けない声が出てしまう。
「ヨシトも……触っていいんだよ?」
 と、ミラはこちらをちらりと見て言う。そんなミラを見て、
やばい…超カワイイ。可愛すぎる――そんな彼女に彼はヒートし、
彼女のお花をゆっくりと開花させる。既に濡れて、益々綺麗だった。
試しに彼女の大豆に舌を触れさせると「ぅ……んああああぁぁあぁぁぅ!」と
かわいい声で鳴くものだから、今度は飴玉を舐めるように絶妙に動かす。
「んゅやぁぁぁあああ! らぁ……めぇええええええぇ……」
 彼女は勢いよく透明液を噴射し、ヨシトの顔面はびっちゃびちゃになる。
ミラは力尽きヨシトに倒れこんだが、息を荒げ痙攣しながらも、ヨシトの分身を舐めようとする。
「ヨシトほ……ひもちよきゅ……したげりゅうぅ……」
「すごいな……あのケーキ……」
 などと独りごちつつ、濡れた顔のままミラを抱き上げて、仰向けに寝かせ、
そして、彼女の胸を擦る。フカフカの体毛の下に、僅かに2つ膨らみがあり、
硬くなったピンクの蕾があるのがわかった。膨らみを指先で揉んでみる。
「ふぅ……んっ……やぁん……ヨシトぉぉ……」
 感じて、ミラは少し身をよじった。さらに蕾を舌で転がす。
(ライチュウの中では、胸は大きい方なのかな?)
 そんなことを考えながらも、硬くなった蕾をぷりっと弾く。
「んぁぁ……きゃんっ……」
(ああ……たまらないなぁ……コレ)
 しばらく胸を弄ぶが、彼ははやくミラを自分のものにしたかった。
「いい、よな……ミラ……我慢できそうにない……」
対するミラは嬉しそうに笑って見せた。
「うん……いいよ……好きなヨシトとなら、したいな……」
 と、彼女は長い尻尾をヨシトの腕に絶対に離すまいと、ギュッと絡み付けた。
ヨシトは無言のまま、彼女のお花に猛るそれを近づけて、ゆっくりと進ませる。
 しっとりとしたそこに入ったヨシトの『メガホーン』は初めてを突破する。
「んぐぅ……」痛みに耐えつつ、ミラは身を任せる。
「おお……あっついなぁ……ミラの中は……」
 そのまま前後運動をはじめ、連続してヨシトの角が出入りする。
ぶびっ、じゅぷ……と音をたてながら、スピードを上げミラを何度も突き上げる。
「ん……あぁ……あっ……あっ……あああぅ……!」
 ミラは感じ始め喘ぎ声をあげると、ヨシトは幸福感に包まれて限界点に到達する。
「出るぅ!! ……ミラぁ!!」
「いいよ……?ほしぃ! ……出してぇヨシトぉ!!」
よし……これで、止めだミラ―!
 そんなセリフを頭の片隅に思い浮かべつつ、最後の一撃をミラに打ち込むと、
ヨシトの分身は彼女の中で『大爆発』した。自分でも信じられない程の
愛の証がミラの内へと入り込む。
 ヨシトは心配になって、息を切らしながら「大丈夫か」と聞くが、ミラは
「大丈夫……いまのあたし……幸せ……」とうつろな目で微笑んだ。


 卒業式を終えて、桜の舞い散る中、卒業証書を片手にヨシトとヒロタは例の喫茶店を目指し歩いていた。
 当然ファーラも、ミラも一緒だ。
ファーラが「で……ミラとはどーだったの?」
などと聞いてきて、恥ずかしくなってヨシトはあわてる。
「あっ……えっとー……」
 なにか別の話に変えようとしゃべり始めようとしたときに、ミラが
「うん……痛かったけど、おっきくて……気持ちよかっ……!」
 と顔を赤くして言ったものだから、彼は慌ててミラの口を塞ごうとしたが遅かった。
「もがぐっ……――!」
「ほう、やったんだな?お前はどうだったよヨシト」
 ヒロタまで話に食いついてきたから、ヨシトは顔を完全に下に向けた。
(穴があったら入りたい…)
「でも……俺、よかったよ。お前にパートナーが出来てさ」
「え?」
「このままずっと、ポケモンと関わらないでいくのかと思ってさ……あれから
なんとなくお前、明るくなったじゃないか」
「……」
確かに。いまとなってはミラなしでの生活は考えられない。
ミラと一緒に飯を食べ、買い物に行って、お風呂に入って――
 まだたった数日だが、ミラがそばに居ることで、一人暮らしの暗い雰囲気も払拭され、
ポケモンがいた昔のような楽しい感じが戻ってきたように思えた。
「……そうだな、これからもきっと、こうして過ごすんだろうな、俺とミラは」
 自分はミラを。ミラは自分という新しいパートナーを得て、
自分達二人はこれから新しい日々へ歩み出すのだな――
 そう考えるとなんだか嬉しくなって、ついクスリとした。
「ヨシトの、新たな第一歩だな……おめでとう」
 ヒロタが祝福の言葉をくれる。
「よっし……がんばろう!」
 最愛のパートナーが、隣にいるのだから――
 そう思い、ヨシトは気合を入れなおし、ヨシトは喫茶店の扉を開く。
店内には相変わらずそういうカップル連中がいたが、
ファーラがまたミラをからかって、
「そのうち、ヨシトとのタマゴ、できたりして♪」
 などといったときにはまた店内が拍手喝采に包まれ「初めて記念」と称して
また客や店員に祝われひやかされたのは、言うまでもない。

~おしまい~


卒業シーズンということでこんな作品を。
とりあえず長編(もしかしたら書くかも)をやる時のため、簡単にバトル描写の練習。

感想・指摘等、何かありましたら↓


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-07-20 (金) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.